説明

光学部品及び光学機器

【課題】良好な光学特性が得られる光学部品及び光学機器を提供する。
【解決手段】
撥水性を有する第1領域46と、前記第1領域よりも撥水性が低い第2領域48とを含み、光透過性を有する透過部34と、少なくとも一部が前記第1領域に備えられ、前記透過部を振動させる振動部42と、前記振動部に固定される第1部分44aと、前記透過部の前記第2領域に固定される第2部分44cとを含み、前記透過部と前記振動部とを固定する固定部材44とを有する光学部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル一眼レフカメラに代表される撮像装置を有する光学機器では、光路中の透光部材に塵埃が付着し、撮影された像に前記塵埃が写り込むという問題が発生する場合がある。
【0003】
この問題に対応した撮像装置として、透光部材表面への塵埃の付着を防止する撥水膜と、透光部材を加振して透光部材表面に付着した塵埃を除去する加振部材とを備えるものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、従来技術に関する撮像装置では、撥水膜表面の接着性が劣っているため、加振部材を撥水膜表面に直接固定することが難しく、加振部材から撥水膜へ効率的に振動を伝えるという点で問題があった。また、加振部材を撥水膜表面に直接固定したとても、接着性が劣るため接着不良や剥離が発生しやすく、信頼性に問題があった。
【特許文献1】特開2007−183366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、その目的は、良好な光学特性が得られる光学部品及び光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る光学部品は、
撥水性を有する第1領域(46)と、前記第1領域よりも撥水性が低い第2領域(48)とを含み、光透過性を有する透過部(34)と、
少なくとも一部が前記第1領域に備えられ、前記透過部を振動させる振動部(42)と、
前記振動部に固定される第1部分(44a)と、前記透過部の前記第2領域に固定される第2部分(44c)とを含み、前記透過部と前記振動部とを固定する固定部材(44)とを有する。
【0007】
また、例えば、前記透過部の前記第2領域と、前記固定部材の前記第2部分とは、接着剤で固定されていてもよい。
【0008】
また、例えば、前記透過部は、基材(36)を有し、
前記透過部の前記第1領域は、前記基材の表面のうち、前記撮像部が配置されている側と反対側の基材表面に形成された撥水膜(40)の表面であってもよい。
【0009】
また、例えば、前記固定部材の前記第1部分は、前記振動部に接着されていてもよい。
【0010】
また、例えば、前記固定部材の前記第2部分は、前記透過部の前記第2領域に接着されていてもよい。
【0011】
また、例えば、前記固定部材は、当該固定部材の少なくとも一部と、前記透過部の前記第1領域との間に、前記振動部材を挟んで配置されていてもよい。
【0012】
また、例えば、本発明に係る光学部品は、前記撥水膜と、前記基材との間に形成された導電膜(41)をさらに有していてもよい。
【0013】
本発明に係る光学機器は、いずれかの上記光学部品を含む。
【0014】
なお上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は、本発明の第1〜第4実施形態に係る防塵ユニットを備えるデジタル一眼レフカメラの概略断面図
図2Aは、本発明の第1実施形態に係る防塵ユニットの平面図、
図2Bは、図2Aに示すIIB-IIB線に沿う概略断面図、
図2Cは、図2Bに示す防塵ユニットの拡大断面図、
図3Aは、本発明の第2実施形態に係る防塵ユニットの要部平面図、
図3Bは、本発明の第3施形態に係る防塵ユニットの要部平面図
図4Aは、本発明の第4実施形態に係る防塵ユニットの平面図、
図4Bは、図4Aに示すIVB-IVB線に沿う概略断面図、
図4Cは、本発明の第5実施形態に係る防塵ユニットの平面図、
図5は、本発明の第6実施形態に係る防塵ユニットを備えるデジタル一眼レフカメラの概略断面図、
図6は、本発明の第7実施形態に係る防塵ユニットを備えるデジタル一眼レフカメラの概略断面図、
図7Aは、本発明の第7実施形態に係る防塵ユニットの概略断面図、
図7Bは、本発明の第7実施形態の変形例に係る防塵ユニットの概略断面図である。
第1実施形態
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る防塵ユニットを備えたデジタル一眼レフ型カメラに関する概略断面図であり、カメラボディ4の側断面を表している。カメラボディ4の筐体6には開口部8が形成されており、開口部8の周辺にはレンズマウント10が形成されている。撮影時には、開口部8を覆うように交換レンズ(不図示)が設置され、交換レンズによって導かれた撮影光が、筐体6内部に導入される。
【0017】
カメラボディ4の筐体6内部には、クイックリターンミラー12、ファインダスクリーン14、ペンタプリズム16、接眼レンズ22、シャッタ20、駆動回路24および撮像ユニット30等が具備してある。撮像ユニット30は、防塵ユニット32および撮像素子38を有する。
【0018】
なお、各部材の配置については、開口部8を覆うように設置される交換レンズによって導入された撮影光が、撮像素子38に向かって、進行する方向をX軸の正方向として説明を行う。また、クイックリターンミラー12で反射された撮影光が、ペンタプリズム16に向かって進行する方向をZ軸の正方向、X軸方向およびZ軸方向に直交する方向をY方向として説明を行う。
【0019】
防塵ユニット32は、図2Bの断面図に示すように、基材部36および撥水膜40を有する透過部34と、振動子42と、固定部材44とを有している。防塵ユニット32は、図1に示すように、撮像素子38のX軸負方向側に配置されている。また、防塵ユニット32の基材部36は、撮像素子38のX軸負方向側に形成されている受光面を覆うように配置されている。防塵ユニット32の基材部36は、撮像素子38の受光面に対して密着するように、接着剤等によって固定されている。
【0020】
本実施形態に係る防塵ユニットに備えられる基材部36は、撮像に際して偽色(色モアレ)の発生を防止する光学ローパスフィルタである。撮影時においてシャッタ20が開放されると、当該シャッタ20を通過した撮影光は、光学ローパスフィルタである基材部36を有する透過部34を透過したのち、撮像素子38の受光面に入射し、撮像素子38によって光電交換される。
【0021】
防塵ユニット32の振動子42は、透過部34のX軸負方向側の表面に配置されている。振動子42は、圧電素子等によって構成されており、図1に示すように、配線26を介して駆動回路24に接続されている。駆動回路24は、不図示のボディCPUからの信号を受けて振動子42を駆動し、透過部34の表面に振動を発生させることができる。
【0022】
図2Aは、図1に示す防塵ユニット32の平面図であり、防塵ユニット32をX軸負方向側から観察したものである。矩形平板形状を有する透過部34のX軸負方向側の表面には、撥水性を有する撥水領域46と、撥水領域46より撥水性の低い非撥水領域48とが形成されている。
【0023】
非撥水領域48は、透過部34のX軸負方向側の表面において、Y軸方向両側の2カ所に形成されている。また、撥水領域46は、2つの非撥水領域48に挟まれる範囲に形成されている。撥水領域46は、図2Bに示すように、透過部34のX軸負方向側の表面のうち、基材部36の上に撥水膜40が形成されている部分に対応する。それに対して、非撥水領域48は、透過部34のX軸負方向側の表面のうち、撥水膜40が形成されておらず、基材部36の表面が露出している部分に対応している。撥水領域46は、当該撥水領域46を透過した撮影光が、基材部36のX軸正方向側の表面に配置された撮像素子38の受光面に入射するように、透過部34の中央部分に形成されている。
【0024】
撥水膜40の表面によって構成される撥水領域46は、低表面エネルギーであるため塵埃のような異物との付着力が小さい。また、撥水領域46は、水との液架橋力が小さいため、湿度の高い環境において浮遊する塵埃や水分を含有する塵埃に対する付着力が小さい。
【0025】
したがって、本実施形態に係る防塵ユニット32は、撥水領域46に塵埃が付着しにくく、撮像素子38に記録される像に塵埃が写り込むこと現象を防止できる。また、撥水領域46に塵埃が付着した場合でも、振動子42を駆動し、透過部34の表面に振動を発生させることによって、塵埃を容易に除去することができる。なお、撥水領域46における水の接触角は、異物等の付着力を低減させる観点から、90度以上とすることが好ましい。
【0026】
図2Aに示す撥水領域46の形成方法としては、特に限定されないが、フッ素系薄膜、シリカ系薄膜、ダイヤモンド・ライク・カーボン等、もしくはこれらの混合薄膜からなる撥水膜40を、基材部36の表面に成膜する方法が挙げられる。撥水膜40の成膜方法としては、特に限定されないが、例えばスピンコート法、蒸着法、ディップ法、スパッタ法等を用いることができる。また、撥水領域46は、基材部36の表面にナノメートルオーダーの微細な凹凸構造を形成することによって形成されてもよい。
【0027】
基材部36が透過部34の表面に露出している非撥水領域48の形成方法についても、特に限定されないが、例えば以下のような方法で形成することができる。撥水膜40を基材部36の表面全体に成膜したのち、非撥水領域48に対応する表面部分に成膜された撥水膜40を、エッチング、研磨研削等によって除去し、非撥水領域48を形成することができる。また、撥水膜40を形成する前の基材部36の表面に、非撥水領域48に対応する透過部34の表面に、マスキング等の適切な保護処理が施し、非撥水領域48には撥水膜40が形成されないようにしてもよい。
【0028】
図2Aに示すように、撥水領域46のY軸方向両側には、撥水領域46と非撥水領域48の境界に沿って、略直方体形状を有する2つの振動子42が配置されている。振動子42は、図2Bに示すように、撥水膜40のX軸負方向側の表面に対して接触するように配置されている。振動子42と撥水膜40とは、接着剤等を用いて違いに固着されていても良く、また、後述の固定部材44によって等撥水膜40に向かって押し付けられているのみで、接着剤等によって固着されていなくてもよい。
【0029】
防塵ユニット32は、振動子42を透過部34に固定する固定部材44を有している。防塵ユニット32には、撥水領域46のY軸方向両側に配置された2つの振動子42に対応して、2つの固定部材44が配置されている。固定部材44は、図2Cに示すように、階段状の断面形状を有している。
【0030】
固定部材44は、振動子42の長側面(X軸方向に沿って配置される面のうちY軸方向に垂直な面)に沿って配置される中央部44bと、中央部44bに対して略90度折り曲げられた第1端部44aおよび第2端部44cを有する。第1端部44aは、振動子42の前面(X軸方向に垂直であって、X軸負方向側の面)に沿って配置される。第2端部44cは、中央部44bに対して第1端部44aと反対側に略90度折り曲げられ、基材部36の前面(X軸方向に垂直であって、X軸負方向側の面)に沿って配置される。
【0031】
固定部材44の第2端部44cは、透過部34の非撥水領域48に配置されており、非撥水領域48に露出している基材部36に対して、接着剤等によって固定されている。固定部材44を非撥水領域48に固定するための接着剤としは、特に限定されないが、例えばエポキシ系接着剤等を用いることができる。さらに、中央部44bのX軸方向の幅Dは、振動子42および撥水膜40のX軸方向の幅D2と略一致するように形成されている。したがって、振動子42は、固定部材44の第1端部44aと、撥水膜40とに挟まれて固定される。
【0032】
振動子42は、固定部材44の第1端部44aまたは中央部44b、あるいは第1端部44aと中央部44bの両方の部分に対して、接着剤等によって固着されることが好ましい。振動子42をより確実に固定することができるからである。ただし、振動子42は、固定部材44の第1端部44aが、当該振動子42を撥水膜40に向かって押し付ける力によって固定されてもよい。
【0033】
図2Bに示すように、本実施形態に係る防塵ユニット32では、撥水膜40によって構成される撥水領域46に、振動子42が取り付けられている。このような構成とすることによって、振動子42の振動が、撥水領域46に伝搬するまでの間に起きる振動の減衰を抑制することができる。したがって、実施形態に係る防塵ユニット32は、振動子42の振動を、高効率でロスを少なく撥水膜40に伝え、撥水領域46を効率的に振動させることができる。このため、本実施形態に係る防塵ユニット32では、振動子42を駆動することによって、撥水領域46に付着した塵埃を効率的に除去することができる。
【0034】
本実施形態に係る防塵ユニット32は、透過部34と振動子42とを固定する固定部材44を有するため、透過部34の撥水領域46に、振動子42を確実に密着させておくことができる。また撥水領域46は、低表面エネルギーであるため、接着剤との結合力も弱い傾向にあるが、振動子42は固定部材44によって撥水領域46に固定されているため、透過部34に対して強固に固定される。さらに、本実施形態に係る防塵ユニット32は、固定部材44が振動子42の一方の面の位置を保持するため、振動子42の変形によって発生する力を効率的に撥水膜40に伝えることができる。
【0035】
またさらに、防塵ユニット32において、振動子42と透過部34が接着剤により固着されている場合には、固定部材44によって接着剤の結合力が補強されるため、振動子42の接着不良や剥離を低減することができる。また、固定部材44と振動子42が固定されているため、振動子42が透過部34から剥離し、防塵ユニット32から分離脱落することを防止できる。
第2実施形態
【0036】
図3Aは、本発明の第2実施形態に係る防塵ユニット32の要部平面図である。図3Aには、防塵ユニット32におけるY軸負方向側の部分が図示されている。Y軸正方向側の部分については、Y軸負方向側の部分に対して略対称な構造であるため、図示を省略している。なお、本発明の第2実施形態に係る防塵ユニット32は、第1実施形態に係る防塵ユニットと同様に、図1に示すデジタル一眼レフカメラに搭載することができる。
【0037】
透過部34のX軸負方向側の表面には、第1実施形態と同様に、撥水性を有する撥水領域46と、撥水領域46より撥水性の低い非撥水領域48とが形成されている。非撥水領域48は、透過部34のX軸負方向側の表面において、Y軸方向両側の2カ所に形成されており、撥水領域46は、2つの非撥水領域48に挟まれる範囲に形成されている。なお、撥水領域46および非撥水領域48の形成方法については、第1実施形態と同様である。
【0038】
第2実施形態に係る防塵ユニット32に備えられる振動子42は、2つの部分固定部材44dによって、透過部34に固定されている。2つの部分固定部材44dは、振動子42の両端部付近を固定できるように、Z軸方向に互いに離間して配置されている。なお、部分固定部材44dも、図2Cに示す固定部材44と同様に、振動子42の長側面に沿って配置される中央部44bと、中央部44bに対して略90度折り曲げられた第1端部44aおよび第2端部44cを有する。
【0039】
図3Aに示す部分固定部材44dの第2端部44cは、透過部34の非撥水領域48に配置されており、当該非撥水領域48に露出している基材部36に対して、接着剤等によって固定されている。また、振動子42は、固定部材44の第1端部44aまたは中央部44b、あるいは第1端部44aと中央部44bの両方の部分に対して、接着剤等によって固着されていることが好ましい。
【0040】
第2実施形態に係る防塵ユニット32は、透過部34と振動子42とを固定する部分固定部材44dを有するため、第1実施形態と同様に、透過部34の撥水領域46に、振動子42を確実に密着させておくことができる。また振動子42は部分固定部材44dによって固定されているため、透過部34に対して確実に固定され、固定不良や剥離が発生しにくい。
【0041】
さらに、第2実施形態に係る防塵ユニット32は、第1実施形態に係る防塵ユニット32が有する効果に加えて、以下に示す効果を有する。すなわち、第2実施形態に係る防塵ユニット32に備えられる部分固定部材44dは、第1実施形態の固定部材44より小型で軽量であるという利点を有する。また、第2実施形態に係る防塵ユニット32に備えられる振動子42は、部分固定部材44dと透過部34とによって挟まれていない部分が大きいため、より効率的に振動することができる。
第3実施形態
【0042】
図3Bは、本発明の第3実施形態に係る防塵ユニット32の要部平面図である。図3Bには、図3Aと同様に、防塵ユニット32におけるY軸負方向側の部分が図示されている。Y軸正方向側の部分については、Y軸負方向側の部分に対して略対称な構造であるため、図示を省略している。なお、本発明の第3実施形態に係る防塵ユニット32は、第1実施形態に係る防塵ユニットと同様に、図1に示すデジタル一眼レフカメラに搭載することができる。
【0043】
透過部34のX軸負方向側の表面には、第1および第2実施形態と同様に、撥水性を有する撥水領域46と、撥水領域46より撥水性の低い非撥水領域48とが形成されている。ただし、非撥水領域48は、透過部34のX軸負方向側の表面において、各振動子42が配置される位置をZ方向に挟むように4カ所(各振動子42に対して2カ所ずつ)に形成されている。撥水領域46は、透過部34のX軸負方向側の表面のうち、非撥水領域48以外の部分に形成されている。このように、非撥水領域48は、第2端部44cを透過部34に接着する部分に形成されればよく、その形状は適宜変更することができる。なお、撥水領域46および非撥水領域48の形成方法については、第1実施形態と同様である。
【0044】
第3実施形態に係る防塵ユニット32に備えられる振動子42は、第2実施形態と同様に、2つの部分固定部材44dによって、透過部34に固定されている。2つの部分固定部材は、振動子42の両端部を固定できるように、Z軸の正方向および負方向から振動子42を挟むように配置されている。第3実施形態に係る防塵ユニット32に備えられた部分固定部材44dの中央部44bは、第1または第2実施形態とはことなり、振動子42の短側面(X軸方向に沿って配置される面のうちZ軸に垂直な面)に沿って配置される。
【0045】
図3Bに示す部分固定部材44dの第2端部44cは、透過部34の非撥水領域48に配置されており、当該非撥水領域48に露出している基材部36に対して、接着剤等によって固定されている。また、振動子42は、部分固定部材44dの第1端部44aまたは中央部44b、あるいは第1端部44aと中央部44bの両方の部分に対して、接着剤等によって固着されていることが好ましい。
【0046】
図2A、図3Aおよび図3B等に示すように、本発明に係る防塵ユニット32において、固定部材44,44dの形状および配置は、振動子42および透過部34の設計に応じて適宜変更することができる。第3実施形態に係る防塵ユニット32は、非撥水領域48の範囲が小さいため、第1および第2実施形態に係る防塵ユニット32が有する効果に加えて、塵埃がさらに付着しにくいという効果を有する。
第4実施形態
【0047】
図4Aは、本発明の第4実施形態に係る防塵ユニット32の平面図であり、防塵ユニット32をX軸負方向側から観察したものである。第4実施形態に係る防塵ユニット32は、図4Aに示すように、円形平板形状の透過部34と、リング形状の振動子42と、振動子42を透過部34に固定するための固定部材44を有する。なお、本発明の第4実施形態に係る防塵ユニット32は、第1実施形態に係る防塵ユニットと同様に、図1に示すデジタル一眼レフカメラに搭載することができる。
【0048】
透過部34のX軸負方向側の表面には、第1実施形態と同様に、撥水性を有する撥水領域46と、撥水領域46より撥水性の低い非撥水領域48とが形成されている。非撥水領域48は、透過部34のX軸負方向側の表面における外周縁部近傍に、リング状に形成されている。撥水領域46は、透過部34の中心から非撥水領域48の内周に接する領域に形成されており、撥水領域46と非撥水領域48とは、略同心円状に形成されている。なお、撥水領域46および非撥水領域48の形成方法については、第1実施形態と同様である。
【0049】
図4Bは、図4Aに示す防塵ユニット32のVIB-VIB線に沿う断面図である。撥水領域46は、第1実施形態と同様に、基材部36表面に形成された撥水膜40のX軸負方向側の表面に対応している。振動子42は、撥水膜40の表面に接するように配置されており、固定部材44によって透過部34に固定されている。リング状の振動子42の外径は、撥水領域46の直径に略一致するように形成されており、振動子42の外周は、撥水領域46の外周と略一致するように配置されている。
【0050】
防塵ユニット32の断面図(図4B)に示されるように、固定部材44は、階段状の断面形状を有している。固定部材44は、振動子42の外周面に沿って配置される中央部44bと、中央部44bに対して略90度折り曲げられた第1端部44aおよび第2端部44cを有する。第1端部44aは、振動子42の前面(X軸方向に垂直であって、X軸負方向側の面)に沿って配置される。第2端部44cは、中央部44bに対して第1端部44aと反対側に略90度折り曲げられ、基材部36の前面(X軸方向に垂直であって、X軸負方向側の面)に沿って配置される。
【0051】
固定部材44の第2端部44cは、透過部34の非撥水領域48に配置されており、当該非撥水領域48に露出している基材部36に対して、接着剤等によって固定されている。また、振動子42は、固定部材44の第1端部44aまたは中央部44b、あるいは第1端部44aと中央部44bの両方の部分に対して、接着剤等によって固着されていることが好ましい。
【0052】
第4実施形態に係る防塵ユニット32は、第1実施形態に係る防塵ユニット32と同様の効果を奏する。このように、本発明に係る透過部34、撥水領域46、非撥水領域48、振動子42および固定部材44の形状は、撮像ユニット30やカメラの構成に合わせて、適宜変更することができる。
第5実施形態
【0053】
図4Cは、本発明の第5実施形態に係る防塵ユニット32の平面図であり、防塵ユニット32をX軸負方向側から観察したものである。第5実施形態に係る防塵ユニット32は、図4Cに示すように円形平板形状の透過部34と、リング形状の振動子42と、振動子42を透過部34に固定するための3つの部分固定部材44dとを有する。なお、透過部34に形成される撥水領域46および非撥水領域48の形状等については、図4Aに示す第4実施形態と同様である。
【0054】
第5実施形態に係る防塵ユニット32に備えられる振動子42は、3つの部分固定部材44dによって、透過部34に固定されている。3つの部分固定部材44dは、振動子42の周方向に沿って略等間隔(略120度おき)に配置されている。なお、部分固定部材44dも、図4Bに示す固定部材44と同様に振動子42の外周面に沿って配置される中央部(不図示)と、中央部に対して略90度折り曲げられた第1端部44aおよび第2端部44cを有する。
【0055】
部分固定部材44dの第2端部44cは、透過部34の非撥水領域48に配置されており、当該非撥水領域48に露出している基材部36に対して、接着剤等によって固定されている。また、振動子42は、固定部材44の第1端部44aまたは中央部、あるいは第1端部44aと中央部の両方の部分に対して、接着剤等によって固着されていることが好ましい。
【0056】
第5実施形態に係る防塵ユニット32は、第2実施形態に係る防塵ユニット32と同様の効果を奏する。このように、本発明に係る円形平板形状の透過部34等を有する防塵ユニット32においても、固定部材44の形状は、撮像ユニット30やカメラの構成に合わせて適宜変更することができる。もちろん、振動子42の形状についても、図4Cに示すようなリング形状に限定されず、例えば複数の円弧形状の振動子が、撥水領域46の外周に沿って配置されていてもよい。
第6実施形態
【0057】
図5は第6実施形態に係る防塵ユニット32を備えたデジタル一眼レフカメラに関する概略断面図であり、カメラボディ4の側断面を表している。第4実施形態に係る防塵ユニット32では、防塵ユニット32が、撮像素子38および光学ローパスフィルタ37に対して密封空間を挟んで配置されている。図5に示すデジタル一眼レフカメラは、撮像ユニット30以外の部分については、図1に示すデジタル一眼レフカメラと同様である。
【0058】
また、防塵ユニット32に備えられる透過部34が有する基材部36は、光学ローパスフィルタ37および撮像素子38が配置されている密封空間内部への塵埃の侵入を防止するためのカバー部材である。カバー部材は、ガラスまたは樹脂等の可視光を透過する材料によって形成されている。透過部34のX負方向側の表面に形成された撥水領域46および非撥水領域48の形状および形成方法は、第1実施形態と同様である。また、透過部34のX軸負方向側の表面に配置されている振動子42および振動子42を透過部34に固定する固定部材についても、図1実施形態と同様である。
【0059】
第6実施形態に係る防塵ユニット32を備えるカメラでは、光学ローパスフィルタ37および撮像素子38が、防塵ユニット32に対して密封空間を挟んで配置されている。したがって撮像ユニット30は、光学ローパスフィルタ37および撮像素子38が防塵されているだけでなく、振動子42等によって発生する物理的な衝撃等からも保護されている。したがって第6実施形態に係る防塵ユニット32を含む撮像ユニット30は、第1実施形態に係る防塵ユニット32を含む撮像ユニット30が有する効果に加えて、耐久性または信頼性に優れているという効果を有する。
第7実施形態
【0060】
図6は第7実施形態に係る防塵ユニット32を備えたデジタル一眼レフカメラに関する概略断面図であり、カメラボディ4の側断面を表している。図6に示す撮像ユニット30は、塵埃捕獲部材52を有している点と、防塵ユニット32の透過部34が導電層を有しており、当該導電層には接地配線50が接続されている点で、図5に示す撮像ユニット(第6実施形態)と異なる。その他の部分については、図5に示すデジタル一眼レフカメラと同様である。
【0061】
図7Aは、図6に示す防塵ユニット32のZ軸方向に垂直な断面を表した断面図である。第7実施形態に係る防塵ユニット32に備えられる透過部34は、基材部36と撥水膜40との間に、導電性を有する導電層41を有する。なお、図7Aに示す透過部34のX負方向側の表面には、図2Aに示す透過部34(第1実施形態)と同様に、撥水領域46と非撥水領域48とが形成されている。また、撥水領域46が撥水膜40の表面によって構成されており、非撥水領域48が基材部36の表面によって構成されている点も、図2Aに示す防塵ユニット32(第1実施形態)と同様である。
【0062】
図7Aに示す導電層41の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)やZnOなどの透明導電材料を、基材部36のX軸負方向側の表面に成膜することによって形成される。撥水膜40の形成方法としては、例えば、フッ素系薄膜、シリカ系薄膜、ダイヤモンド・ライク・カーボン等、もしくはこれらの混合薄膜からなる撥水膜40を、導電層41のX軸負方向側の表面に成膜することによって形成される。
【0063】
撥水膜40の下層に形成された導電層41は、薄い撥水膜40の表面抵抗(X軸負方向側の表面)が低下させ、撥水領域46に発生する静電荷を逃がし易くするため、撥水領域46の帯電が防止される。したがって、本実施形態に係る防塵ユニット32は、第6実施形態に係る防塵ユニット32が有する効果に加えて、静電力による塵埃の付着力も抑制できるという効果を有する。
【0064】
したがって、第7実施形態に係る防塵ユニット32は、導電層41を有しない場合に比べて撥水領域46に塵埃が付着しにくく、撮像素子38に記録される像に塵埃が写り込むこと現象をより効果的に防止できる。また、撥水領域46に塵埃が付着した場合でも、振動子42を駆動し、透過部34の表面に振動を発生させることによって、塵埃を容易に除去することができる。なお、導電層41を設けることによって撥水膜表面の表面抵抗が小さくなり、このとき、撥水膜の表面抵抗率が好ましくは1013(Ω/square)以下、さらに望ましくは1011(Ω/square)以下である。
【0065】
固定部材44は、第1実施形態と同様に階段状の断面形状を有しており、撥水領域46のY軸方向両側に配置された振動子42を、透過部34に固定している。固定部材44の第2端部44cは、透過部34の非撥水領域48に配置されており、当該非撥水領域48に露出している基材部36に対して、接着剤等によって固定されている。また、振動子42は、固定部材44の第1端部44aまたは中央部44b、あるいは第1端部44aと中央部44bの両方の部分に対して、接着剤等によって固着されていることが好ましい。
【0066】
第7実施形態に係る防塵ユニット32は、透過部34と振動子42とを固定する固定部材44を有するため、第1および第6実施形態と同様に、透過部34の撥水領域46に、振動子42を確実に密着させておくことができる。また振動子42は固定部材44によって固定されているため、透過部34に対して確実に固定され、固定不良や剥離が発生しにくい。
【0067】
図7Bは、第7実施形態の変形例に係る防塵ユニット32のZ軸方向に垂直な断面を表した断面図である。図7Bに示すように、導電層41は、基材部36のX軸負方向側の表面全体に形成されていてもよい。図7Bに示す変形例では、非撥水領域48が導電層41の表面によって構成されており、固定部材44の第2端部44cは導電層41に固定されている。
【0068】
図7Bに示すように、導電層41を基材部36表面全体に形成した場合(図7B)でも、導電層41を撥水膜40の下層部分のみに形成した場合(図7A)と同様の効果を有する。導電層41の形状は、例えば、固定部材44を透過部34に固定する際に用いる接着剤が、導電層41と基材部36のどちらに対してより強い結合力を有するかによって決定することができる。なお、他の変形例としては、導電層41を設ける代わりに、撥水膜の原材料に適当な物質をドーピング(微量に含有させること)することで撥水膜40の表面抵抗を低下させ、撥水領域46の帯電を防止することも可能である。
【0069】
防塵ユニット32の導電層41は、図6に示すように、接地配線50を介してカメラボディ4の筐体6と電気的に接続されている。防塵ユニット32の導電層41は、筐体6と同電位に保たれるため、図7Aに示す防塵ユニット32は、撥水領域46が帯電することをより効果的に防止することができる。このように、第7実施形態に係る防塵ユニット32は、第1および第6実施形態に係る防塵ユニット32が有する効果に加えて、静電力が作用する塵埃の付着をさらに効果的に防止できるという効果を有する。
【0070】
また、塵埃捕獲部材52は、図6に示すように、防塵ユニット32の周辺を囲うように配置されている。塵埃捕獲部材52は、たとえば粘着テープを有しており、粘着テープの粘着面によって、防塵ユニット32近傍の空間に浮遊する塵埃を捕獲できる。このように第7実施形態では、塵埃捕獲部材52によって防塵ユニット32に接近する塵埃を減少させることができるため、防塵ユニット32への塵埃の付着をより効果的に防止できる。また、透過部34に振動を発生させることによって、透過部34の表面から一度離れた塵埃が、透過部34の表面に再付着することを効果的に防止できる。
その他の実施形態
【0071】
上述の実施形態では、デジタル一眼レフカメラに備えられた防塵ユニット32を用いて説明を行ったが、本発明に係る防塵ユニット32はこれに限られず、ビデオカメラ、携帯電話等、その他の光学機器に備えられるものであってもよい。また、表面に撥水領域46および非撥水領域48等を形成される基材部36は、光学ローパスフィルタやカバー部材に限られず、赤外線カットフィルタやその他の部品であってもよい。
【0072】
また、上述の実施形態において、固定部材44,44dは透過部34のX軸負方向側の表面に配置されているが、固定部材44,44dの配置はこれに限定されない。例えば、固定部材44が、第1端部44aと第2の端部44cとの間に、振動子42および透過部34を挟んで配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、本発明の第1〜第4実施形態に係る防塵ユニットを備えるデジタル一眼レフカメラの概略断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の第1実施形態に係る防塵ユニットの平面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに示すIIB-IIB線に沿う概略断面図である。
【図2C】図2Cは、図2Bに示す防塵ユニットの拡大断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の第2実施形態に係る防塵ユニットの要部平面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の第3施形態に係る防塵ユニットの要部平面図である。
【図4A】図4Aは、本発明の第4実施形態に係る防塵ユニットの平面図である。
【図4B】図4Bは、図4Aに示すIVB-IVB線に沿う概略断面図である。
【図4C】図4Cは、本発明の第5実施形態に係る防塵ユニットの平面図である。
【図5】図5は、本発明の第6実施形態に係る防塵ユニットを備えるデジタル一眼レフカメラの概略断面図である。
【図6】図6は、本発明の第7実施形態に係る防塵ユニットを備えるデジタル一眼レフカメラの概略断面図である。
【図7A】図7Aは、本発明の第7実施形態に係る防塵ユニットの概略断面図である。
【図7B】図7Bは、本発明の第7実施形態の変形例に係る防塵ユニットの概略断面図である。
【符号の説明】
【0074】
6… 筐体
24… 駆動回路
30… 撮像ユニット
32… 防塵ユニット
34… 透過部
36… 基材部
38… 撮像素子
40… 撥水膜
41… 導電層
42… 振動子
44,44d… 固定部材
44a… 第1端部
44c… 第2端部
46… 撥水領域
48… 非撥水領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性を有する第1領域と、前記第1領域よりも撥水性が低い第2領域とを含み、光透過性を有する透過部と、
少なくとも一部が前記第1領域に備えられ、前記透過部を振動させる振動部と、
前記振動部に固定される第1部分と、前記透過部の前記第2領域に固定される第2部分とを含み、前記透過部と前記振動部とを固定する固定部材とを有することを特徴とする光学部品。
【請求項2】
請求項1に記載された光学部品であって、
前記透過部の前記第2領域と、前記固定部材の前記第2部分とは、接着剤で固定されていることを特徴とする光学部品。
【請求項3】
請求項1または2に記載された光学部品であって、
前記透過部は、基材を有し、
前記透過部の前記第1領域は、前記基材の表面のうち、前記撮像部が配置されている側と反対側の基材表面に形成された撥水膜の表面である特徴とする光学部品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された光学部品であって、
前記固定部材の前記第1部分は、前記振動部に接着されていることを特徴とする光学部品。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載された光学部品であって、
前記固定部材の前記第2部分は、前記透過部の前記第2領域に接着されていることを特徴とする光学部品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された光学部品であって、
前記固定部材は、当該固定部材の少なくとも一部と、前記透過部の前記第1領域との間に、前記振動部材を挟んで配置されていることを特徴とする光学部品。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載された光学部品であって、
前記撥水膜と、前記基材との間に形成された導電膜をさらに有することを特徴とする光学部品。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載された光学部品を含むことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2009−199025(P2009−199025A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43447(P2008−43447)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】