説明

光学部品収納トレイ

【課題】収納された光学部品をピックアップすることが容易であり、保管中や輸送中のキズや異物の付着から光学部品を保護できる光学部品収納トレイを提供することを目的としている。
【解決手段】レンズとレンズを保持する鏡筒と鏡筒の一方の端面に配置された鍔部とを有する光学部品を収納する光学部品収納トレイであって、鍔部を保持する天面と、天面に開口をもち鏡筒を収納する凹部と、凹部を閉塞する側壁及び底面と、を有し、底面は前記レンズと空隙を介して対向するように設けられているとともに、側壁は底面の面積より開口の面積のほうが大きい順テーパー形状に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品収納トレイに関し、特に、収納された光学部品をピックアップすることが容易で、保管中や輸送中のキズや異物の付着から光学部品を保護できる光学部品収納トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
光学部品収納トレイは、光学部品を保管し、あるいは輸送する際に、光学部品の品質を維持するために使用される。一般的に、光学部品を収納する凹部を有する収納トレイが用いられ、とくに長期保管や輸送時はゴミが付着しないように光学部品を収納した状態で蓋に覆われて梱包されている。さらに、レンズとレンズを保持する鏡筒からなる光学部品では、レンズ面にキズがつかないように保護する収納トレイが必要であった。
【0003】
たとえば、特許文献1に開示されているように、フランジ(鍔部)が設けられた鏡枠(鏡筒)と光学素子(レンズ)とを有するレンズユニットを収納する、レンズユニット収納トレイが知られている。
【0004】
特許文献1に開示された収納トレイは、トレイ本体が鏡枠の側周面とフランジの下面とを保持し、蓋部材が鏡枠の側周面と上面とを保持することによって、トレイと光学素子とが接触することなく、小型でフランジ部が比較的小さいレンズユニットを収納でき、ピンセット等でレンズユニットを取り出すことが容易である。さらに、レンズユニットの両側を目視することができるようにトレイ本体と蓋部材とに開口が設けられた光学部品収納トレイ及び蓋部材であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−202883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トレイ本体と蓋部材に開口を設けるようにしたので、製品を次工程で光学装置に組み込んだり、製品を保管もしくは輸送したりする場合には問題を生じていた。たとえば、工程中で、開口部から進入した突起物がレンズユニットに接触してキズをつけたり、周辺の塵埃でレンズ面に異物が付着したりすることが起こりやすかった。
【0007】
したがって、小型で鍔部が比較的小さい光学部品に対して、レンズ面を接触させることなく鍔部で保持する収納トレイで、かつ、レンズ面をキズや異物の付着から保護できる収納トレイが必要とされた。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、特に、収納された光学部品をピックアップすることが容易であり、保管中や輸送中のキズや異物の付着から光学部品を保護できる光学部品収納トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学部品収納トレイは、レンズと前記レンズを保持する鏡筒と前記鏡筒の一方の端面に配置された鍔部とを備える光学部品を収納する光学部品収納トレイであって、前記鍔部を保持する天面と、前記天面に開口をもち前記鏡筒を収納する凹部と、前記凹部を閉塞する側壁及び底面と、を有し、前記底面は前記レンズと空隙を介して対向するように設けられているとともに、前記側壁は前記底面の面積より前記開口の面積のほうが大きい順テーパー形状に設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
これにより、凹部に収納した鏡筒の本体は一方の端面にある鍔部を保持する天面によって支持される。天面から鍔部が突出するとともに天面と鍔部の突出高さは一定に維持され、鍔部の側面でピックアップする治具を用いた移載装置の使用に適している。さらに、鍔部が天面に載置されていることで、鏡筒に保持されたレンズは凹部の底面との間に空間を保ち接することがない。また、側壁は輸送中の振動等での鏡筒の本体の傾きを制限できるようテーパー状に設けられている。
【0011】
したがって、収納された光学部品をピックアップすることが容易であり、保管中や輸送中のキズや異物の付着から光学部品を保護できる。
【0012】
さらに、前記側壁は、前記鏡筒の他方の端面位置での前記凹部の横断面の開口形状が前記鏡筒より大きい形状に設けられていることが好適である。こうすれば、光学部品収納トレイの側壁と鏡筒とが擦れることなく光学部品を収納できるので、擦れたときに懸念される異物の発生が抑制される。したがって、光学部品への異物の付着を低減できる。
【0013】
また、前記天面での前記開口は六角形または八角形の形状であることが好ましい。あるいは、前記天面での前記開口は、前記鍔部を保持する多角形の少なくとも2辺と、前記鍔部よりも大きい円形と、を組み合せた形状であることが好ましい。
【0014】
これらの開口の形状であれば、鍔部を載置できる天面と鏡筒の本体を収納できる凹部とを有する光学部品収納トレイを容易に製作することが可能である。
【0015】
さらに、前記底面は円形であることが実際的である。光学部品の鏡筒は円筒状であるので、その外周を保護する側壁の形状は底面に向かって円形となることが好ましい。こうすれば、鏡筒を側壁の内周面で安定して保護できる。
【0016】
前記光学部品収納トレイは導電性を有する材料で形成されていることが好適である。こうすれば、帯電して集塵する心配がないので、異物の付着が少ない。
【0017】
前記光学部品収納トレイは全面にわたって略均一の膜厚を有することが実際的である。薄く略均一の膜厚であれば、成形が容易で、軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光学部品収納トレイによれば、収納された光学部品をピックアップすることが容易であり、保管中や輸送中のキズや異物の付着から光学部品を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態の光学部品収納トレイを示す模式平面図である。
【図2】第1の実施形態の光学部品収納トレイを示す模式図であり、(a)部分平面図と(b)部分断面図である。
【図3】第1の実施形態の光学部品収納トレイに光学部品を収納した説明図であり、模式的に示した部分断面図である。
【図4】第1の実施形態の光学部品収納トレイに光学部品を収納して蓋部材を取り付けた説明図であり、模式的に示した部分断面図である。
【図5】第2の実施形態の光学部品収納トレイを示す模式図であり、(a)部分平面図と(b)部分断面図である。
【図6】第3の実施形態の光学部品収納トレイを示す模式図であり、(a)部分平面図と(b)部分断面図である。
【図7】第3の実施形態の光学部品収納トレイに光学部品を収納した説明図であり、模式的に示した部分断面図である。
【図8】光学部品収納トレイを製作する工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態の光学部品収納トレイ1を示す模式平面図である。図2は図1A部の(a)部分平面図と、図2(a)においてII−II線に沿って切断した(b)部分断面図である。図3は本実施形態の光学部品収納トレイ1に光学部品10を収納した説明図であり、図4はさらに蓋部材8を取り付けた説明図であり、それぞれ模式的に示した部分断面図である。なお、各断面図は、分かりやすいように寸法を適宜変更している。
【0021】
図2に示すように、光学部品収納トレイ1は天面2、凹部3、開口4、側壁5、及び底面6を少なくとも有する樹脂部材である。図3に示すように、本実施形態の光学部品収納トレイ1は光学部品10を凹部3に収納できるように成形されており、凹部3が側壁5と底面6とによって閉塞された空間になっている。
【0022】
図2(a)の部分平面図で示すように、開口4は八角形の形状を有し、底面6は円形の形状を有して、凹部3が形成されている。また、図2(a)及び(b)のように、側壁5は底面6の面積より開口4の面積のほうが大きい順テーパー形状に設けられている。なお、本発明において、「八角形」とは同じ長さの8辺を有する正八角形であるが、8つの角部は鋭角でなく丸みがついたものを含むものとする。同様に、天面2と側壁5とが形成する角部(コーナー部)も丸みがついている。この丸みは樹脂部材において「R」と呼ばれる一般的な技術である。
【0023】
ところで、図3に示すような、レンズ20とレンズ20を保持する鏡筒30と鏡筒30の一方の端面に配置された鍔部36とを備える光学部品10は、鏡筒30の長さが4mm程度で、鏡筒30の外周も4mm程度の直径であり、鍔部36は鏡筒30の本体外周から外方に0.3mm程度突出しているにすぎない。鏡筒30の他方の端面近傍にはレンズ20が保持され、図3に示すように鏡筒30からレンズ20が突出している場合がある。
【0024】
このような光学部品10のレンズ20をキズから保護するため、レンズ20が光学部品収納トレイ1と接触しないよう、図3のように底面6はレンズ20と空隙を介して対向するように設けられて、凹部3に収納した鏡筒30の本体は一方の端面にある鍔部36を保持する天面2によって支持されている。これによって、天面2から鍔部36が突出するとともに天面2と鍔部36の突出高さは一定に維持される。したがって、光学部品10の収納高さを一定にしておくことができるので、光学部品収納トレイ1に収納された光学部品10を移載装置によってピックアップすることが容易である。
【0025】
図3に示すように、側壁5はテーパー状に設けられて、鏡筒30の他方の端面位置での凹部3の横断面の開口形状が鏡筒30の外周形状(鍔部36を除く鏡筒本体)より大きい形状に設けられていることが好適である。こうすれば、側壁5と鏡筒30とが擦れることなく光学部品10を収納できるので、擦れたときに懸念される異物の発生が抑制される。また、輸送中の振動等を受けても、鏡筒30の本体の傾きを制限することで、接触する際の衝撃が強くならないので、鏡筒30の外周にキズを生じる心配が無くなり、また、側壁5が削れて異物を発生させることも抑制される。したがって、保管中の不用意な取り扱いまたは輸送中の衝撃によるキズや異物の付着から光学部品10が保護されている。
【0026】
本実施形態の光学部品収納トレイ1の開口4は八角形の内接円の大きさが光学部品10の鏡筒30の本体外周より大きく、鍔部36よりも小さくなるように設計される。図2(a)に示すように、底面6は円形の形状である。開口4が八角形の内接円の大きさである場合の側壁5のテーパー角度よりも、開口4が八角形で8つの角部と底面6とを結ぶ側壁5のテーパー角度は大きくなる。テーパー角度は天面2及び底面6に垂直な軸からの傾斜角度として定義される。本実施形態においては、このテーパー角度は3度〜4度である。こうすれば、開口4が円形の場合に比べて、テーパー角度が大きいので、光学部品収納トレイ1の製作が容易になる。
【0027】
さらに、開口4から側壁5の中間深さの位置までは徐々に円形の横断面に近づくようにして、側壁5の中間深さの位置から底面6までは円形の横断面になるように設けてもよい。光学部品10の鏡筒30は円筒状であるので、その外周を保護する側壁5の形状は底面6に向かって円形となることが好ましい。こうすれば、鏡筒30を側壁5の内周面で安定して保護できる。
【0028】
図4に示すように、光学部品10を収納した光学部品収納トレイ1の保管中及び輸送中は、蓋部材8を取り付けた状態であることが好ましい。蓋部材8には鍔部36と接しない構造または鍔部36を固定する構造のいずれかを適用することができるが、輸送中の振動に対しては鍔部36を固定する構造のほうが好適である。さらに、光学部品収納トレイ1に収納された光学部品10は、蓋部材8を取り付けてから、包装部材で気密に封止されることが望ましい。より好ましくは、減圧に保持して封止されていることが望ましい。こうすれば、外部環境からの汚染を防止でき、内部での発塵やキズを抑制できる。
【0029】
したがって、本実施形態の光学部品収納トレイ1によれば、収納された光学部品10をピックアップすることが容易であり、保管中や輸送中のキズや異物の付着から光学部品10を保護できる。
【0030】
本実施形態において、開口4は八角形に限らず、六角形にすることができる。また、その他の多角形でも開口4は鍔部36が天面2に保持できるものであればよい。
【0031】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態の光学部品収納トレイ1を示す模式図であり、(a)部分平面図と(b)部分断面図である。本実施形態は、第1の実施形態と開口4の形状が異なる以外は、第1の実施形態と同様に構成されている。
【0032】
図5(a)に示すように、開口4は八角形の4辺4aと、円形4bと、を組み合せた形状である。円形4bは光学部品10の鍔部36よりも大きいが、八角形の4辺4aの対向する2辺の間隔は鍔部36よりも小さくなるように設計される。このため、円形4bの領域においては、鍔部36は天面2と接しない。しかし、八角形の4辺4aの領域においては、図3と同様、鍔部36が天面2と接して保持され、これによって光学部品10を支持することができる。
【0033】
本実施形態においても、天面2から鍔部36が突出するとともに天面2と鍔部36の突出高さは一定に維持される。したがって、光学部品10の収納高さを一定にしておくことができるので、光学部品収納トレイ1に収納された光学部品10を移載装置によってピックアップすることが容易である。
【0034】
側壁5は底面6の面積より開口4の面積のほうが大きい順テーパー形状に設けられている。第1の実施形態に比べ、鍔部36よりも大きい円形4bに接している側壁5ではテーパー角度を大きくできる領域が増加している。こうすれば、光学部品収納トレイ1の製作がさらに容易であり、寸法精度を向上させることができる。
【0035】
本実施形態においても、側壁5は、鏡筒30の他方の端面位置での凹部3の横断面の開口形状が鏡筒30の本体外周形状より大きい形状に設けられていることが好適である。側壁5と鏡筒30とが擦れることなく光学部品10を収納できるので、擦れたときに懸念される異物の発生が抑制される。また、輸送中の振動等を受けても、鏡筒30の本体の傾きを制限することで、接触する際の衝撃が強くならないので、鏡筒30の外周にキズを生じる心配が無くなり、また、側壁5が削れて異物を発生させることも抑制される。
【0036】
本実施形態においても、図5(a)に示すように、光学部品収納トレイ1の底面6は円形の形状である。光学部品10の鏡筒30は円筒状であるので、その外周を保護する側壁5の形状は底面6に向かって円形となることが好ましい。こうすれば、鏡筒30を側壁5の内周面で安定して保護できる。
【0037】
したがって、本実施形態の光学部品収納トレイ1によれば、収納された光学部品10をピックアップすることが容易であり、保管中や輸送中のキズや異物の付着から光学部品10を保護できる。
【0038】
本実施形態において、開口4は八角形の4辺4aに限らず、対向する2辺のみと円形とを組み合せてもよく、また、他の多角形の辺と円形との組み合わせであってもよい。開口4の一部で鍔部36を天面2に保持できればよい。
【0039】
<第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態の光学部品収納トレイ1を示す模式図であり、(a)部分平面図と(b)部分断面図である。図7は、第3の実施形態の光学部品収納トレイ1に光学部品10を収納した説明図であり、模式的に示した部分断面図である。本実施形態は、第2の実施形態と底面6の形状とそれに伴う側壁5が異なる以外は、第2の実施形態と同様の形状に構成されている。
【0040】
本実施形態においては、底面6は、開口4の形状と同じように、八角形の4辺6aと円形6bと、を組み合せた形状であり、その各寸法が開口4よりも小さくなっている。すなわち、側壁5は底面6の面積より開口4の面積のほうが大きい順テーパー形状に設けられている。側壁5は膜厚が0.2mmの薄いシート状のポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されている。
【0041】
一方、図7に示すように、側壁5は、鏡筒30の他方の端面位置での凹部3の横断面の開口形状が鏡筒30の外周形状(鍔部36を除く鏡筒本体)とほぼ同じで、わずかに接するように設けてある。この位置での凹部3の横断面は、鏡筒30の外周の円周長さより、わずかに長い周辺長であることが好ましい。こうすれば、側壁5と鏡筒30とが擦れるが、側壁5が柔らかい材料であり、鏡筒30の外周の形状に沿って円形に変形できるので、光学部品10を問題なく収納できる。また、輸送中の振動等を受けても、鏡筒30の本体を側壁5が支持していることで、鏡筒30の外周にキズを生じる心配が無い。
【0042】
さらに、本実施形態では、第1の実施形態に比べ、開口4の全周にわたって側壁5のテーパー角度を大きくすることができる。こうすれば、光学部品収納トレイ1の製作が容易になり、寸法精度を向上させることができる。
【0043】
なお、上述のように光学部品10を収納可能な範囲内で、底面6を八角形の形状とすることも可能である。また本実施形態の開口4を八角形の形状とすることも可能である。
【0044】
本実施形態においても、光学部品10のレンズ20をキズから保護するため、レンズ20が光学部品収納トレイ1と接触しないように、底面6はレンズ20と空隙を介して対向するように設けられて、天面2から鍔部36が突出するとともに天面2と鍔部36の突出高さは一定に維持される。したがって、光学部品10の収納高さを一定にしておくことができるので、光学部品収納トレイ1に収納された光学部品10を移載装置によってピックアップすることが容易である。
【0045】
したがって、本実施形態の光学部品収納トレイ1によれば、収納された光学部品10をピックアップすることが容易であり、保管中や輸送中のキズや異物の付着から光学部品10を保護できる。
【0046】
第1の実施形態〜第3の実施形態において、光学部品収納トレイ1は、全面にわたって略均一の膜厚を有することが実際的である。薄く略均一の膜厚であれば、成形が容易で、軽量化を図ることができる。
【0047】
図8は、光学部品収納トレイ1を製作する工程の説明図である。図8は模式的に示した部分断面図であり、説明を分かりやすくするため、トレイ断面の膜厚を厚く、側壁5のテーパーを大きくしている。
【0048】
凹部3を成形するための金型41に真空引きのための加工がおこなわれたものが準備される。図8(a)に示すように、熱可塑性シート40をヒーター42によって加熱し、軟化させた状態で金型41に密着させる。熱可塑性シート40は膜厚0.25mmのポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることができる。
【0049】
続いて、図8(b)に示すように、密着を確実にするために、金型41と熱可塑性シート40との隙間を真空(減圧)にする。これによって、金型41の形状が、軟化させた熱可塑性シート40に転写される。
【0050】
冷却後、図8(c)に示すように、成形された熱可塑性シート40を取り出すことで、光学部品収納トレイ1を製作することができる。
【0051】
この工程は、成形用の金型41として雄型を用いるだけでよいので、製作が容易で低コストである。より高精度に成形するために、熱可塑性シート40の他方の面から同時に加圧成形してもよい。また、雌型を用いてもよいし、雄型と雌型を同時に用いて成形してもよい。真空成形以外の方法でも製作することができる。
【0052】
成形後の光学部品収納トレイ1を金型41から離型させるために、側壁5は順テーパー形状としている。上述の真空熱成形の場合、テーパー角度θとして3度〜5度が好ましい。テーパー角度θが3度未満では離型が困難であり、5度より大きい場合は光学部品10に適した開口4の形状が得られなくなる。
【0053】
光学部品収納トレイ1は、膜厚0.1mm〜0.25mm程度で、全面にわたって略均一の膜厚を有することが好ましい。上述のように、成形前の熱可塑性シート40を金型41の形状に密着させると薄く延ばされて成形後の膜厚には多少の分布を生じる。成形後に、この程度の膜厚が得られる熱可塑性シート40であれば、成形が容易で、光学部品収納トレイ1の軽量化を図ることができる。
【0054】
光学部品収納トレイ1には熱可塑性樹脂であれば、ほとんどの材料が使用できる。たとえば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等であってもよい。また、他の製造方法を適用して熱硬化性樹脂で形成することも可能である。
【0055】
光学部品収納トレイ1は導電性を有する材料で形成されていることが好適である。こうすれば、帯電して集塵する心配がないので、異物の付着が少ない。
【0056】
導電性を有する材料で形成するには、熱可塑性シート40に導電性を有する材料を練り込んだ樹脂を用いて成形をおこなう方法や、成形後に導電性材料を塗布する方法が適用できる。表面抵抗値を1×10Ω以下、より好ましくは1×10Ω〜1×10Ωにすることが望ましい。
【0057】
なお、光学部品収納トレイ1は、レンズ20が光学部品収納トレイ1と接触しないように底面6がレンズ20と空隙を介して対向するように設けられ、かつ、天面2が鏡筒30をピックアップ可能な態様に設けられていれば、補強や成形容易性の目的で凹凸を形成したものであってもよい。たとえば補強用の凸部を凹部3から所定の間隔を設けて天面2より突出させて配置することが可能である。また、開口4の一部に接するように凹溝部を設けて、鏡筒30の本体外周面を一部露出させることも可能である。いずれも本発明の効果を損なうものではなく、本発明の光学部品収納トレイ1を実現できる。
【符号の説明】
【0058】
1 光学部品収納トレイ
2 天面
3 凹部
4 開口
5 側壁
6 底面
8 蓋部材
10 光学部品
20 レンズ
30 鏡筒
36 鍔部
40 熱可塑性シート
41 金型
42 ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと前記レンズを保持する鏡筒と前記鏡筒の一方の端面に配置された鍔部とを備える光学部品を収納する光学部品収納トレイであって、
前記鍔部を保持する天面と、
前記天面に開口をもち前記鏡筒を収納する凹部と、
前記凹部を閉塞する側壁及び底面と、を有し、
前記底面は前記レンズと空隙を介して対向するように設けられているとともに、
前記側壁は前記底面の面積より前記開口の面積のほうが大きい順テーパー形状に設けられている、
ことを特徴とする光学部品収納トレイ。
【請求項2】
前記側壁は、前記鏡筒の他方の端面位置での前記凹部の横断面の開口形状が前記鏡筒より大きい形状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学部品収納トレイ。
【請求項3】
前記天面での前記開口は六角形または八角形の形状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学部品収納トレイ。
【請求項4】
前記天面での前記開口は、前記鍔部を保持する多角形の少なくとも2辺と、前記鍔部よりも大きい円形と、を組み合せた形状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学部品収納トレイ。
【請求項5】
前記底面は円形であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の光学部品収納トレイ。
【請求項6】
前記光学部品収納用トレイは導電性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光学部品収納トレイ。
【請求項7】
前記光学部品収納用トレイは全面にわたって略均一の膜厚を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光学部品収納トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−184013(P2012−184013A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47252(P2011−47252)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】