説明

光学部材及び液晶表示装置

【課題】経時変化により剥離することが困難になる程度が低い光学部材、並びに薄型化が可能で、耐久性に優れながら、リサイクルが容易である液晶表示装置を提供する。
【解決手段】偏光板、第1粘着層、位相差フィルム、第2粘着層、及び円偏光分離素子を有する光学部材で、偏光板と第1粘着層との界面の25℃における初期剥離力P11及び150℃8時間エージング後の25℃における剥離力Q11、位相差フィルムから円偏光分離素子までの間の25℃における初期剥離力PX、及び位相差フィルムから円偏光分離素子までの間の150℃8時間エージング後の25℃における剥離力QXについて、(PX−P11)<(QX−Q11)が成り立ち、且つ、第1粘着層がシリコーン系組成物の硬化物である光学部材;ならびにこれを有する液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の表示装置において、輝度を向上させるための光学素子を設けることが知られている。例えば、液晶表示装置の液晶セルの視認側からみて裏側、すなわちバックライト側に、輝度向上フィルムを設けることが提案されている。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライト等の光源から光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定螺旋軸方向の円偏光を透過し、他の光は反射する特性を示すものを備えるものである。
【0003】
バックライト等の光源から入射された光が輝度向上フィルムに入射すると、前記光のうち所定偏光状態の光は透過する。一方、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射され、バックライトに戻る。バックライトに戻った光は、そこに設けられた反射板等により、偏光状態が変化する。そして、この偏光状態が反転された光が、輝度向上フィルムに再度入射すると、前記光のうち所定偏光状態の光は輝度向上フィルムを透過することになる。このサイクルを繰り返すことにより、輝度向上フィルムを透過する光量や、偏光板に吸収されにくい偏光を供給して液晶表示装置等に利用しうる光量を増大することができ、それにより液晶表示装置の輝度を向上させることができる。
【0004】
液晶表示装置内においては、装置の薄型化、フィルムの変形防止等の観点から、かかる輝度向上フィルムを、液晶パネルの偏光板上に貼付して一体化することが知られている(特許文献1)。かかる貼付に際しては、アクリル系の接着剤や粘着剤が広く用いられている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−149634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶表示装置を製品として使用した後に廃棄する際、その中から有用な資源を回収してリサイクルすることが行なわれる。ところが、輝度向上フィルムが液晶パネル上の偏光板に貼付された構造を有する液晶表示装置の場合、そのようなリサイクルを行なう際、輝度向上フィルムを剥離することが困難であるという問題点がある。粘着剤を介してフィルム上の材料を積層した製品は、使用に伴う粘着剤の変質によって、層間の接着がより強固になる場合があり、そのような場合に、輝度向上フィルムの剥離が特に困難になる。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、経時変化により剥離することが困難になる程度が低い光学部材を提供することにある。
【0008】
本発明のさらなる目的は、薄型化が可能で、耐久性に優れながら、リサイクルが容易である液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明者らは、偏光板、位相差フィルム及び円偏光分離素子の間に介在する粘着層として特定のものを採用することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明によれば、下記の〔1〕〜〔6〕が提供される:
〔1〕 偏光板、第1粘着層、位相差フィルム、第2粘着層、及び円偏光分離素子を有する光学部材において、前記偏光板と前記第1粘着層との界面の、25℃における初期剥離力P11及び150℃8時間エージング後の25℃における剥離力Q11、前記位相差フィルムから前記円偏光分離素子までの間の25℃における初期剥離力PX、及び前記位相差フィルムから前記円偏光分離素子までの間の150℃8時間エージング後の25℃における剥離力QXについて、下記式(1):
(PX−P11)<(QX−Q11) (1)
が成り立ち、且つ、前記第1粘着層がシリコーン系組成物の硬化物であることを特徴とする光学部材。
〔2〕 下記式(2)及び(3):
11<PX (2)
11<QX (3)
がさらに成り立つ、前記光学部材。
〔3〕 P11が0.1〜5N/インチである、前記光学部材。
〔4〕 前記シリコーン系組成物の硬化物が、前記シリコーン系組成物が付加反応により硬化してなるものである、前記光学部材。
〔5〕 前記円偏光分離素子が、基材、配向膜及びコレステリック規則性を有する樹脂層がこの順で積層されてなる、前記光学部材。
〔6〕 前記光学部材、及びその前記偏光板の側の面に液晶パネルを有してなる液晶表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学部材は、輝度向上フィルムと偏光板とが一体化されていることに基づく、装置の薄型化が可能であり耐久性に優れる等の利点を有する上、使用に伴い粘着剤が変質してもなお輝度向上フィルムの剥離が容易であり、リサイクルが容易な液晶表示装置を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の光学部材は、偏光板、第1粘着層、位相差フィルム、第2粘着層、及び円偏光分離素子を有する。
【0013】
本発明の光学部材の一具体例を、図1を参照して説明する。図1に示す例においては、偏光板111、位相差層131及び円偏光分離層132が、第1粘着層121及び第2粘着層を介して積層され、本発明の光学部材100を構成している。これが液晶パネルなどの基板101上に貼付され、液晶表示装置の部品の一部を構成する。
【0014】
1.偏光板
【0015】
本発明に用いる偏光板は、特に限定されず、従来の液晶表示装置等に用いられている公知の偏光子の片面又は両面を保護フィルムで被覆したものを用いることができる。
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるもの、またはポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるものなどが挙げられる。
【0016】
本発明に用いる偏光子に自然光を入射させると一方の偏光だけが透過する。本発明に用いる偏光子の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の平均厚みは好ましくは5〜80μmである。
【0017】
前記偏光子を被覆する保護フィルムとしては、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、脂環式オレフィンポリマー、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチレンメタクリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂を含むフィルムを、横一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、斜め延伸法などの常法により延伸したもの、無延伸の熱可塑性樹脂フィルム上に光学異方性層を形成した後、さらに延伸したもの等を用いることができる。延伸フィルムは単層の形態であっても、複数積層した形態のものであっても良い。この中でも透明性に優れる事などにより、セルロースエステル、脂環式オレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート樹脂が好ましく、前記偏光子との接着性に優れる事により特にセルロースエステルが好ましい。
【0018】
2.位相差フィルム
本発明に用いる位相差フィルムとしては、(i)フィルム状のポリマーを延伸したもの、又は(ii)液晶性の材料を透明樹脂基材上に塗布し、配向させ、硬化させたものを用いることができる。(ii)の位相差フィルムを用いる場合は、適当な基材上に液晶性の材料を塗布し、配向させ、硬化させて得た当該位相差フィルムを用いることができる。
【0019】
本発明に用いる位相差フィルムの好ましい例として、以下に述べる光学異方性素子を挙げることができる。
【0020】
本発明において、光学異方性素子は、その正面方向のリターデーションRe(以下、「Re」と略記することがある。)を透過光の略1/4波長とすることができる。ここで、透過光の波長範囲は、本発明の輝度向上フィルムに求められる所望の範囲とすることができ、具体的には例えば400nm〜700nmである。また、正面方向のリターデーションReが透過光の略1/4波長であるとは、Re値が、透過光の波長範囲の中心値において、中心値の1/4の値から±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲であることをいう。
【0021】
また、光学異方性素子は、厚み方向のリターデーションRth(以下、「Rth」と略記することがある。)が0nm未満であることが望ましい。厚み方向のリターデーションRthの値は、透過光の波長範囲の中心値において、好ましくは−30nm〜−1000nm、より好ましくは−50nm〜−300nmとすることができる。このようなRe値及びRthを有する光学異方性素子を採用することにより、輝度を向上させ輝度ムラを低減させながら、出射光の色ムラをも低減させることができる。
ここで、前記正面方向のリターデーションReは、式I:Re=(nx−ny)×d(式中、nxは厚み方向に垂直な方向(正面方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値であり、厚み方向のリターデーションRthは、式II:Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(式中、nxは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxに直交する方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値である。
なお、前記正面方向のリターデーションRe及び厚み方向のリターデーションRthは、市販の位相差測定装置を用いて、光学異方性素子を長手方向及び幅方向に100mm間隔(長手方向又は横方向の長さが200mmに満たない場合は、その方向へは等間隔に3点指定する)で、全面にわたり、格子点状に測定を行い、その平均値とする。
【0022】
前記光学異方性素子を構成する材質は、特に限定されないが、スチレン系樹脂からなる層を有するものを好ましく用いることができる。ここでスチレン系樹脂とは、スチレン構造を繰り返し単位の一部又は全部として有するポリマー樹脂であり、ポリスチレン、又は、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシスチレン、p−フェニルスチレンなどのスチレン系単量体と、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、酢酸ビニルなどのその他の単量体との共重合体などを挙げることができる。これらの中で、ポリスチレン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体を好適に用いることができる。
【0023】
光学異方性素子に用いるスチレン系樹脂の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンの重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜300,000、好ましくは15,000〜250,000、より好ましくは20,000〜200,000である。
【0024】
前記光学異方性素子は、好ましくは、前記スチレン系樹脂からなる層と、他の熱可塑性樹脂を含む層との積層構造を有する。当該積層構造を有することにより、スチレン系樹脂による光学的特性と、他の熱可塑性樹脂による機械的強度とを兼ね備えた素子とすることができる。他の熱可塑性樹脂としては、脂環式オレフィンポリマー、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリル酸エステル−ビニル芳香族化合物共重合体樹脂、メタクリル酸エステル−ビニル芳香族化合物共重合体樹脂、ポリエーテルスルホンなどを挙げることができる。これらの中で、脂環式構造を有する樹脂やメタクリル樹脂を好適に用いることができる。
【0025】
脂環式オレフィンポリマーは、主鎖及び/または側鎖にシクロアルカン構造又はシクロアルケン構造を有する非晶性のオレフィンポリマーである。具体的には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物などが挙げられる。これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン系重合体がより好ましい。これらの脂環式構造を有する樹脂は、特開平05−310845号公報、特開平05−097978号公報、米国特許第6,511,756号公報に記載されているものが挙げられる。
【0026】
ノルボルネン系重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。
【0027】
メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、メタクリル酸エステルの単独重合体や、メタクリル酸エステルとその他の単量体との共重合体が挙げられる、メタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸アルキルが用いられる。共重合体とする場合は、メタクリル酸エステルと共重合するその他の単量体としては、アクリル酸エステルや、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物などが用いられる。
【0028】
本発明に用いる光学異方性素子の好ましい具体的態様として、ポリスチレン樹脂からなるフィルム(a層)の両面に、他の熱可塑性樹脂からなるフィルム(b層)を積層してなる複層フィルムを延伸してなる延伸複層フィルムを挙げることができる。以下、この具体的態様について説明する。
【0029】
前記a層を構成するポリスチレン樹脂しては、上記「スチレン系樹脂」と同様のものを用いることができる。
【0030】
a層を構成するポリスチレン樹脂は、ガラス転移温度が120℃以上であることが好ましく、120〜200℃であることがより好ましく、120〜140℃であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明において、前記ポリスチレン樹脂及び前記他の熱可塑性樹脂は、それらのガラス転移温度をそれぞれTg(a)(℃)及びTg(b)(℃)としたとき、Tg(a)>Tg(b)+20℃の関係を満たすことが好ましい。このような関係を満たすことにより、延伸した際にポリスチレン樹脂からなるa層に有効に光学的異方性を与え、良好な光学異方性素子を得ることができる。
【0032】
a層の材料である前記ポリスチレン樹脂及びb層の材料である前記他の熱可塑性樹脂を積層して、複層フィルムに成形する方法は、特に限定されないが、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出による成形方法、ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法、及びコーティング成形方法などの公知の方法が適宜利用され得る。中でも、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出による成形方法が好ましい。押出し温度は、使用する前記ポリスチレン樹脂、及び前記他の熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択され得る。
【0033】
複層フィルムは、前記a層の両面に、前記b層を積層してなる。a層とb層の間には、接着層や粘着層を設けることができるが、a層とb層とを直接に積層させる(つまり、b層/a層/b層の3層構成の積層体とする)ことが好ましい。また、複層フィルムにおいて、前記a層及びその両面に積層されたb層の厚みは特に制限はないが、好ましくはそれぞれ10〜300μm及び10〜400μmとすることができる。
【0034】
前記延伸複層フィルムは、前記複層フィルムを延伸してなる。前記延伸複層フィルムは、a層の延伸により設けられたA層、及びb層の延伸により設けられたB層を含むことができる。前記延伸複層フィルムは、前記複層フィルムのb層/a層/b層の3層構造の積層体を延伸してなり、B層/A層/B層の3層構造の延伸フィルムであることが好ましい。
当該延伸は、好ましくは一軸延伸又は斜め延伸により行うことができ、さらに好ましくはテンターによる一軸延伸又は斜め延伸により行うことができる。
【0035】
光学異方性素子の正面方向リターデーションReや厚み方向のリターデーションRthは、延伸温度や延伸倍率等の延伸条件を適宜調整することにより製造することができる。延伸温度は、前記Tg(a)−10℃〜前記Tg(a)+20℃が好ましく、前記Tg(a)−5℃〜前記Tg(a)+15℃の範囲であることがより好ましい。延伸倍率は、1.05〜30倍が好ましく、1.1〜10倍であることがより好ましい。延伸温度や延伸倍率が、上記範囲を外れると、配向が不十分で屈折率異方性、ひいてはリターデーションの発現が不十分になったり、積層体が破断したりするおそれがある。
【0036】
光学異方性素子の厚みは、好ましくは50〜1000μm、より好ましくは50〜600μmである。
【0037】
本発明に用いるにあたり、位相差フィルムは、その一方又は両方の面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、EB処理等の表面処理を施すことができる。かかる表面処理を施すことにより、後述する本発明の所望の剥離強度を得ることができる。
【0038】
3.円偏光分離素子
本発明で用いる円偏光分離素子とは、入射する自然光のうち、特定波長の円偏光のみを反射し、残りの円偏光を透過する素子をいう。この反射された光を反射板等で前記樹脂層に再入射させることによって光の再利用ができ、特に、円偏光分離素子と、位相差フィルムとして1/4波長板とを組み合わせたものは、自然光を直線偏光に高効率で変換できる。
【0039】
本発明で用いる円偏光分離素子としては、以下に述べるコレステリック規則性を有する樹脂層(以下、単に「コレステリック樹脂層」ということがある。)を有するものを好ましく挙げることができる。
【0040】
本発明の光学部材におけるコレステリック樹脂層が有するコレステリック規則性とは、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるという具合に、分子が一定方向に配列している平面を進むに従って分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は光学的にカイラルな構造となる。
【0041】
コレステリック規則性を有する樹脂は、円偏光分離機能を有する。すなわち、ある特定波長域の左回転若しくは右回転の円偏光を透過し、それ以外の円偏光を反射する機能を有する。
【0042】
本発明においては、この円偏光分離機能を可視光の全波長領域にわたって発揮するコレステリック樹脂層を備えることが好ましい。例えば、青色(波長410〜470nm)、緑色(波長520〜580nm)、赤色(波長600〜660)nmのいずれの波長域の光についても円偏光分離機能を有するコレステリック樹脂層であることが好ましい。
【0043】
円偏光分離機能を発揮する波長は、コレステリック樹脂におけるカイラル構造のピッチに依存する。カイラル構造のピッチとは、カイラル構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離のことである。このカイラル構造のピッチの大きさを変えることによって、円偏光分離機能を発揮する波長を変えることができる。
【0044】
本発明に用いるコレステリック樹脂層は非液晶性の樹脂層であることが好ましい。非液晶性のものであると、周囲の温度や電界などによってコレステリック規則性が変化しないからである。非液晶性のコレステリック樹脂層は、液晶性を有し且つ重合性を有する化合物を含む組成物の層において、かかる液晶性化合物をコレステリック液晶相に配向させてから重合させることにより得ることができる。
【0045】
本発明に用いるコレステリック樹脂層としては、例えば、(i)カイラル構造のピッチの大きさを段階的に変化させたコレステリック樹脂層、(ii)カイラル構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層等が挙げられる。
【0046】
(i)カイラル構造のピッチを段階的に変化させたコレステリック樹脂層は、例えば、青色の波長域の光で円偏光分離機能を発揮するカイラル構造のピッチを有するコレステリック樹脂層、緑色の波長域の光で円偏光分離機能を発揮するカイラル構造のピッチを有するコレステリック樹脂層及び赤色の波長域の光で円偏光分離機能を発揮するカイラル構造のピッチを有するコレステリック樹脂層を積層することによって得ることができる。また、反射される円偏光の中心波長が470nm、550nm、640nm、及び770nmであるコレステリック樹脂層をそれぞれ作製し、これらのコレステリック樹脂層を任意に選択し、反射光の中心波長の順序で3〜7層積層することによって得ることができる。カイラル構造のピッチの大きさが異なるコレステリック樹脂層を積層する場合には、各コレステリック樹脂層で反射する円偏光の回転方向が同じであることが好ましい。また、カイラル構造のピッチの大きさが異なるコレステリック樹脂層の積層順序は、カイラル構造のピッチの大きさで、昇順又は降順になるようにすることが、視野角の広い液晶表示装置を得るために好ましい。これらコレステリック樹脂層の積層は、単に重ね置いただけでもよいし、粘着剤や接着剤を介して固着させてもよい。
【0047】
(ii)カイラル構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層は、その製法によって特に制限されないが、このようなコレステリック樹脂層の製法の好ましい例としては、コレステリック樹脂層を形成するための重合性液晶性化合物を含有するコレステリック液晶組成物を、好ましくは配向膜等の他の層上に塗布して液晶層を得、次いで1回以上の、光照射及び/又は加温処理により当該液晶層を硬化する方法が挙げられる。当該コレステリック液晶組成物の好ましい態様としては、下記に詳述するコレステリック液晶組成物(X)を挙げることが出来る。
【0048】
前記コレステリック液晶組成物(X)は、下記一般式(1)で表される化合物、及び特定の棒状液晶性化合物を含有する。これら各成分について順次説明する。
1−A1−B−A2−R2 (1)
【0049】
一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基である。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの意味である。
【0050】
前記アルキル基及びアルキレンオキサイド基は置換されていないか若しくはハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい。前記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基は炭素原子数1〜2個のアルキル基、アルキレンオキサイド基と結合していてもよい。
【0051】
1及びR2として好ましいものとしては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0052】
また、R1及びR2の少なくとも一方は反応性基であることが好ましい。R1及び/又はR2として反応性基を有することにより、前記一般式(1)で表される化合物が硬化時に液晶層中に固定され、より強固な膜を形成することができる。ここで反応性基とは、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、及びアミノ基を挙げることができる。
【0053】
一般式(1)において、A1及びA2はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。前記1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基は、置換されていないか若しくはハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基で1つ以上置換されていてもよい。A1及びA2のそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0054】
1及びA2として特に好ましいものとしては、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基が挙げられる。これらの芳香環骨格は脂環式骨格と比較して比較的剛直であり、後述する棒状液晶性化合物のメソゲンとの親和性が高く、配向均一能がより高くなる。
【0055】
一般式(1)において、Bは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−からなる群より選択される。
【0056】
Bとして特に好ましいものとしては、単結合、−OCO−及び−C=N−N=C−が挙げられる。
【0057】
一般式(1)の化合物は、少なくとも一種が液晶性を有することが好ましく、また、キラリティを有することが好ましい。また、コレステリック液晶組成物(X)は、一般式(1)の化合物として、複数の光学異性体の混合物を含有することが好ましい。例えば、複数種類のエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物を含有することができる。一般式(1)の化合物の少なくとも一種は、その融点が、50℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【0058】
一般式(1)の化合物が液晶性を有する場合には、高Δnであることが好ましい。高Δn液晶を含有させることによって、コレステリック液晶組成物(X)としてのΔnを向上させることができ、広帯域の円偏光分離シートを作製することができる。一般式(1)の化合物の少なくとも一種のΔnは好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上とすることができる。
【0059】
一般式(1)の化合物として特に好ましい具体例としては、例えば下記の化合物(A1)〜(A3)及び(A5)〜(A10)が挙げられる:
【0060】
【化1】

【0061】
【化2】

【0062】
上記化合物(A3)において、「*」はキラル中心を表す。
【0063】
前記コレステリック液晶組成物(X)は、Δnが0.18以上であって、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有する棒状液晶性化合物を含有する。
前記棒状液晶性化合物としては、式(2)で表される化合物を挙げることができる。
3−C3−D3−C5−M−C6−D4−C4−R4 式(2)
(式中、R3及びR4は反応性基であり、それぞれ独立して(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。D3及びD4は単結合、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。C3〜C6は単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−からなる群より選択される基を表す。Mはメソゲン基を表し、具体的には、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−等の結合基によって結合されて形成される。)
前記、メソゲン基Mが有しうる置換基としては、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R5、−O−C(=O)−R5、−C(=O)−O−R5、−O−C(=O)−O−R5、−NR5−C(=O)−R5、−C(=O)−NR5、または−O−C(=O)−NR5を表す。ここで、R5及びRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、アルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR6−C(=O)−、−C(=O)−NR6−、−NR6−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、R6は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。前記「置換基を有してもよい炭素数1〜10個のアルキル基」における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
本発明において、該棒状液晶性化合物は非対称構造であることが好ましい。ここで非対称構造とは、一般式(2)において、メソゲン基Mを中心としてR3−C3−D3−C5−と−C6−D4−C4−R4が異なる構造のことをいう。該棒状液晶性化合物として、非対称構造のものを用いることにより、配向均一性をより高めることができる。
【0064】
本発明において、前記棒状液晶性化合物は、そのΔn値が0.18以上、好ましくは0.22以上である。Δn値が0.30以上の化合物を用いると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高いΔn値を有することにより、高い光学的性能(例えば、円偏光分離特性)を有する円偏光分離シートを与えることができる。
【0065】
本発明において、前記棒状液晶性化合物は、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有する。前記反応性基としては、具体的にはエポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、フマレート基、シンナモイル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、オキサゾリン基、メルカプト基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、及びアクリル基が挙げられる。これらの反応性基を有することにより、コレステリック液晶組成物を硬化させた際に、安定した硬化物を得ることができる。1分子中に反応性基が1つ以下の化合物を用いると、コレステリック液晶組成物を硬化させた際に、架橋した硬化物が得られないため実用に耐えうる膜強度が得られない。後述する架橋剤を使用した場合でも、膜強度が不足してしまい実用は困難である。実用に耐えうる膜強度とは鉛筆硬度(JIS K5400)でHB以上、好ましくはH以上である。膜強度がHBより低いと傷がつきやすくハンドリング性に欠けてしまう。好ましい鉛筆硬度の上限は、光学的性能や耐久性試験に悪影響を及ぼさなければ特に限定されない。
【0066】
前記コレステリック液晶組成物(X)において、(前記一般式(1)の化合物の合計重量)/(棒状液晶性化合物の合計重量)の重量比は0.05〜1、好ましくは0.1〜0.65、より好ましくは0.15〜0.45である。前記重量比が0.05より少ないと配向均一性が不十分となる場合があり、また逆に1より多いと配向均一性が低下したり、液晶相の安定性が低下したり、液晶組成物としてのΔnが低下して所望する光学的性能(例えば、円偏光分離特性)が得られない場合があり好ましくない。なお、合計重量とは、1種を用いた場合にはその重量を、1種以上用いた場合には合計の重量を示す。
【0067】
前記コレステリック液晶組成物(X)において、前記一般式(1)の化合物の分子量が600未満、前記棒状液晶性化合物の分子量が600以上であることが好ましい。一般式(1)の化合物の分子量が600未満であることにより、それよりも分子量の大きい棒状液晶性化合物の隙間に入り込むことができ、配向均一性を向上させることができる。
【0068】
本発明において、前記コレステリック液晶組成物(X)等のコレステリック液晶組成物は、硬化後の膜強度向上や耐久性向上のために、任意に架橋剤を含有することができる。当該架橋剤としては、液晶組成物を塗布した液晶層の硬化時に同時に反応したり、硬化後に熱処理を行って反応を促進したり、又は湿気により自然に反応が進行して液晶層の架橋密度を高めることができ、かつ配向均一性を悪化させないものを適宜選択し用いることができ、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。架橋剤の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;が挙げられる。また、該架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。
前記架橋剤の配合割合は、コレステリック液晶組成物を硬化して得られる硬化膜中に0.1〜15重量%となるようにすることが好ましい。該架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られず、逆に15重量%より多いと液晶層の安定性を低下させてしまうため好ましくない。
【0069】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、任意に光開始剤を含有することができる。当該光開始剤としては、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる公知の化合物が使用できる。具体的には、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp’−ジクロロベンゾフェノン、pp’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。また、所望する物性に応じて2種以上の化合物を混合することができ、必要に応じて公知の光増感剤や重合促進剤としての三級アミン化合物を添加して硬化性をコントロールすることもできる。
該光開始剤の配合割合はコレステリック液晶組成物中0.03〜7重量%であることが好ましい。該光開始剤の配合量が0.03重量%より少ないと重合度が低くなってしまい膜強度が低下してしまう場合があるため好ましくない。逆に7重量%より多いと、液晶の配向を阻害してしまい液晶相が不安定になってしまう場合があるため好ましくない。
【0070】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、任意に界面活性剤を含有することができる。当該界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することができる。当該界面活性剤としては、具体的には、疎水基部分にシロキサン、フッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に使用でき、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤は、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652、ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D、セイミケミカル社サーフロンのKH−40等を用いることができる。界面活性剤の配合割合はコレステリック液晶組成物を硬化して得られる硬化膜中0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。該界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じる場合があるため好ましくない。逆に3重量%より多い場合には、過剰の界面活性剤が液晶分子間に入り込み、配向均一性を低下させる場合があるため好ましくない。
【0071】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、任意にカイラル剤を含有することができる。前記カイラル剤の具体例としては、特開2005−289881号公報、特開2004−115414号公報、特開2003−66214号公報、特開2003-313187号公報、特開2003−342219号公報、特開2000−290315号公報、特開平6−072962号公報、米国特許第6468444号公報、WO98/00428号公報、特開2007−176870号公報、等に掲載されるものを適宜使用することができ、例えばBASF社パリオカラーのLC756として入手できる。
【0072】
前記カイラル剤は、所望する光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。前記カイラル剤の含有割合は、前記コレステリック液晶組成物中、通常1〜60重量%である。
【0073】
本発明において、コレステリック液晶組成物は、必要に応じてさらに他の任意成分を含有することができる。当該他の任意成分としては、溶媒、ポットライフ向上のための重合禁止剤、耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を挙げることができる。これらの任意成分は、所望する光学的性能を低下させない範囲で添加できる。
【0074】
本発明におけるコレステリック液晶組成物の製造方法は、特に限定されず、上記各成分を混合することにより製造することができる。
【0075】
前記コレステリック液晶組成物(X)等のコレステリック液晶組成物を、配向膜等の他の層上に塗布して液晶層を得、次いで1回以上の、光照射及び/又は加温処理により当該液晶層を硬化することにより、コレステリック樹脂層を得ることができる。塗布は、公知の方法、例えば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等により実施することができる。
【0076】
前記塗布により得られた液晶層を硬化する前に、必要に応じて、配向処理を施すことができる。配向処理は、例えば液晶層を50〜150℃で0.5〜10分間加温することにより行うことができる。当該配向処理を施すことにより、コレステリック液晶層を良好に配向させることができる。
【0077】
前記硬化の工程は、1回以上の光照射と加温処理との組み合わせにより行うことができる。加温条件は、具体的には例えば、温度40〜200℃、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは50〜140℃、時間は1秒〜3分、好ましくは5〜120秒とすることができる。本発明において光照射に用いる光とは、可視光のみならず紫外線及びその他の電磁波をも含む。光照射は、具体的には例えば波長200〜500nmの光を0.01秒〜3分照射することにより行うことができる。また、例えば0.01〜50mJ/cm2の微弱な紫外線照射と加温とを複数回交互に繰り返し、反射帯域の広い円偏光分離シートとすることもできる。上記の微弱な紫外線照射等による反射帯域の拡張を行った後に、50〜10,000mJ/cm2といった比較的強い紫外線を照射し、液晶性化合物を完全に重合させ、コレステリック樹脂層とすることができる。上記の反射帯域の拡張及び強い紫外線の照射は、空気下で行ってもよく、又はその工程の一部又は全部を、酸素濃度を制御した雰囲気(例えば、窒素雰囲気下)中で行うこともできる。
【0078】
本発明において、配向膜等の他の層上へのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化の工程は、1回に限られず、塗布及び硬化を複数回繰り返し2層以上のコレステリック樹脂層を形成することもできる。ただし本発明においては、1回のみのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化によっても、良好に配向したΔnが0.18以上の棒状液晶性化合物を含み、かつ5μm以上といった厚みのコレステリック樹脂層を容易に形成することができる。
【0079】
本発明の光学部材において、コレステリック樹脂層の乾燥膜厚は好ましくは3.0μm〜10.0μm、より好ましくは3.5〜8μmとすることができる。前記コレステリック樹脂層の乾燥膜厚が3.0μmより薄いと反射率が低下してしまい、逆に10.0μmより厚いと、コレステリック樹脂層に対して斜め方向から観察した時に着色してしまうため、それぞれ好ましくない。なお、前記乾燥膜厚は、コレステリック樹脂層が2以上の層である場合は、各層の膜厚の合計を、コレステリック樹脂層が1層である場合にはその膜厚をさす。
【0080】
本発明に用いる円偏光分離素子は、さらに必要に応じて、上に述べた基材層及び配向膜を有することができる。
【0081】
前記基材層は、透明樹脂基材により構成することができる。前記透明樹脂基材は、特に限定されず1mm厚で全光透過率80%以上の基材を使用することができる。具体的には、脂環式オレフィンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンなどの鎖状オレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、変性アクリルポリマー、エポキシ樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂などの合成樹脂からなる単層又は積層のフィルムが挙げられる。これらの中でも、脂環式オレフィンポリマー又は鎖状オレフィンポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、脂環式オレフィンポリマーが特に好ましい。
【0082】
前記基材層の上に、前記配向膜を設けることができる。配向膜を設けることにより、その上に塗布されたコレステリック液晶組成物を所望の方向に配向させることができる。配向膜は、基材表面上に、必要に応じてコロナ放電処理等を施した後、配向膜の材料を水又は溶剤に溶解させた溶液等を、リバースグラビアコーティング、ダイレクトグラビアコーティング、ダイコーティング、バーコーティング等の公知の方法を用いて塗布し、乾燥させ、その後乾燥塗膜にラビング処理を施すことにより形成することができる。前記配向膜の材料としては、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどを用いることができるが、変性ポリアミドが特に好ましい。
前記変性ポリアミドとしては、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドに変性を加えたものを挙げることができ、脂肪族ポリアミドに変性を加えたものが好ましい。具体的には例えば、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、3元ないし4元共重合ナイロン、脂肪酸系ポリアミド、又は脂肪酸系ブロック共重合体(例えばポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミド)に変性を加えたものを挙げることができる。当該変性としては、末端アミノ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシル変性などの変性、並びにアミド基の一部をアルキルアミノ化又はN−アルコキシアルキル化する変性を挙げることができる。N−アルコキシアルキル化変性ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、又はナイロン−12等の共重合ナイロンのアミド基の一部をN−メトキシメチル化したものが挙げられる。前記変性ポリアミドの重量平均分子量は、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜200,000とすることができる。
配向膜の厚さは、所望する液晶層の配向均一性が得られる膜厚であればよく、0.001〜5μmであることが好ましく、0.01〜2μmであることがさらに好ましい。
【0083】
4.粘着層
本発明の光学部材は、前記偏光板と前記位相差フィルムとの間に介在する第1粘着層、及び前記位相差フィルムと前記円偏光分離素子との間に介在する第2粘着層を有する。
【0084】
本発明の光学部材において、前記第1粘着層は、シリコーン系組成物の硬化物である。ここでシリコーン系組成物とは、必須成分としてシロキサン結合(Si−O−Si)を有する化合物を含む組成物である。より具体的には、−(Si(R1S)(R2S)−O)−の繰り返し単位を有し、末端に水素原子、水酸基又は後述する有機基を有する化合物とすることができる。ここでR1S及びR2Sは、独立に、水素原子又は有機基とすることができる。有機基としてはメチル基、エチル基等のアルキル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基等の置換アルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基等を例示する事ができるが、工業的観点から特に、R1S及びR2Sとしてメチル基、フェニル基等を有するオルガノポリシロキサンが好ましい。
かかる組成物としては、付加反応型のシリコーン粘着剤、ラジカル硬化型のシリコーン粘着剤等を挙げることができる。これらは1種以上の硬化剤と共に用いることができる。付加反応型のシリコーン粘着剤の硬化剤としては白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等のヒドロシリル化触媒を挙げることができ、ラジカル硬化型のシリコーン粘着剤の硬化剤としてはベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、4−モノクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド系触媒を挙げることができる。
前記第1粘着層におけるヒドロシリル化触媒の添加量はシリコーン系組成物100重量部に対して0.1〜5重量部で、特に0.5〜2.0重量部が好ましい。パーオキサイド系触媒の添加量はシリコーン系組成物100重量部に対して0.05〜5重量部で、特に0.2〜1.5重量部が好ましい。硬化剤の添加量が少ないと充分なる硬化が得られず、多いと粘着剤の変色等の不具合が生じる。
付加反応型のシリコーン粘着剤の具体的としては、東レ・ダウコーニング社製;SD4560、SD4570、SD4592、信越化学製;X-40-3229、X-40-3270、ラジカル硬化型のシリコーン粘着剤の具体的としては、東レ・ダウコーニング社製;SH4280、SD4284が挙げられる。
【0085】
かかるシリコーン系組成物を硬化させる方法は、特に限定されないが、組成物を構成する各成分及び必要に応じて前記硬化剤を混合した後、さらに必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲において、有機溶剤、粘着性向上剤、充填剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等の助剤を添加し、乾燥させ、加熱することにより行なうことができる。
有機溶剤は上記組成物を均一に溶解することができるものであれば特に限定されず、具体的にはトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系が例示される。
【0086】
本発明の光学部材において、シリコーン系組成物の硬化物は、シリコーン系組成物が付加反応により硬化してなるものであることが、より低温度、短時間で硬化が可能である点、また取り扱い上の利点から、好ましい。
【0087】
本発明の光学部材において、第2粘着層を構成する材料は、特に限定されないが、アクリル系溶剤型粘着剤、アクリル系エマルジョン型粘着剤、ウレタン系溶剤型粘着剤、エチレン-酢酸ビニル系ホットメルト接着剤、エポキシ系接着剤等の粘接着剤を好ましく用いることができる。かかるアクリル系溶剤型粘着剤、アクリル系エマルジョン型粘着剤の具体例としては、綜研化学;SKダイン2094、大同化成製;ビニゾールE−5301が挙げられる。必要に応じて硬化剤等の助剤を添加しても良い。
【0088】
本発明の光学部材においては、前記偏光板と前記第1粘着層との界面の、25℃における初期剥離力P11及び150℃8時間エージング後の25℃における剥離力Q11、前記位相差フィルムから前記円偏光分離素子までの間の25℃における初期剥離力PX、及び前記位相差フィルムから前記円偏光分離素子までの間の150℃8時間エージング後の25℃における剥離力QXについて、下記式(1):
(PX−P11)<(QX−Q11) (1)
が成り立つ。加えて、下記式(2)及び(3):
11<PX (2)
11<QX (3)
がさらに成り立つことがより好ましい。
【0089】
このようにエージング前後の剥離力を所定のものとすることにより、製品のリサイクルを容易にすることが可能となる。さらに、初期剥離力が上記式(2)を満たすことにより、製品の使用後のリサイクルにおける剥離のみならず、製品の製造時における不良品の再生即ちリワークの作業も容易となる。
【0090】
具体的には、図3に示す通り、基板101と偏光板111との積層体301を固定した状態で、位相差フィルム131及び円偏光分離素子132を含む積層体302を把持して剥離を行なった際に、良好に積層体302を剥離することができる。これに対して、上記本発明の特徴を具備しない積層体の場合、例えば図4に示すように、積層体401と402を剥離しようとした際に、亀裂412のような亀裂が生じるという不都合が生じる。
【0091】
ここで、「前記位相差フィルムから前記円偏光分離素子までの間の」剥離力とは、本発明の光学部材の、位相差フィルムを固定した状態で円偏光分離素子を把持して剥離を行なった際の剥離力である。位相差フィルムから円偏光分離素子までの間の剥離力は、位相差フィルムと第2粘着層との界面の剥離力、及び第2粘着層と円偏光分離素子との界面の剥離力のうちの小さいほうに依存する。
【0092】
「初期」剥離力とは、光学部材の製造直後に温度25℃、湿度60%で24時間放置した時の剥離力であり、一方、150℃8時間エージング後の剥離力とは、製造直後の光学部材を直ちに温度150℃の環境下に8時間置いてエージングした後に、初期剥離力の測定と同様に測定した剥離力をいう。
剥離力は、JIS Z0237に準拠し、引張試験機を用いて、定速度(300mm/分)で測定した値である。
【0093】
11及びQ11の剥離力の具体的な値は、特に限定されないが、P11が0.1〜5N/インチであることが好ましい。一方Q11の具体的な値は、特に限定されないが、7.5〜25N/インチであることが好ましい。
【0094】
本発明の光学部材においては、さらに、前記第1粘着層と前記位相差フィルムとの界面の25℃における初期剥離力P12、及び前記第1粘着層と前記位相差フィルムとの界面の150℃8時間エージング後の剥離力Q12について、下記式(4)及び式(5):
11<P12 (4)
11<Q12 (5)
の関係が成り立つ。このような関係を有することによって、剥離面の性状を、より良好なものとすることができる。
【0095】
本発明において、第1粘着層の厚さは、5〜30μmであることが好ましい。一方第2粘着層の厚さは、2〜50μmであることが好ましい。厚さを当該範囲内とすることにより、剥離をより容易とすることができる。
【0096】
5.その他の層
本発明の光学部材は、基本的な構成として、偏光板/第1粘着層/位相差フィルム/第2粘着層/円偏光分離素子という層構成を有するが、さらに、円偏光分離素子として第1の円偏光分離素子に加えて第2の円偏光分離素子を有し、これらの間に第3の粘着層を有する層構成、すなわち偏光板/第1粘着層/位相差フィルム/第2粘着層/第1の円偏光分離素子/第3粘着層/第2の円偏光分離素子という層構成を有していてもよい。具体的には、図2に示す例のように、偏光板111、第1粘着層121、位相差フィルム131、第2粘着層122、及び第1の円偏光分離素子132に加え、第3粘着層123及び第2の円偏光分離素子133を有する光学部材200のような構成をとることができる。
【0097】
かかる第3粘着層としては、第2粘着層を構成するものと同一の材料からなる層を用いることができる。また、第1の円偏光分離素子及び第2の円偏光分離素子では、製造の条件を変更することにより、選択反射帯域の異なる素子とすることができる。それらを組み合わせて用いることにより、広帯域にわたる選択反射を達成することができる。
【0098】
本発明の光学部材は、必要に応じて、前記第2の円偏光分離素子に加えて、第4粘着層を介してさらに第3の円偏光分離素子を設けることもでき、さらには同様の態様で4層以上の円偏光分離素子を設けることもできる。
【0099】
6.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の光学部材、及び前記光学部材の前記偏光板側の面を介して前記光学部材に貼付された液晶パネルを含む。より具体的には、液晶パネルの両面に設けられる偏光板のうち、視認側から遠い側の偏光板を、本発明の光学部材で置き換え、バックライト装置等の光源からの光が円偏光分離素子→位相差フィルム→偏光板→液晶パネル→偏光板の順に透過する装置を構成することができる。かかる構成により、円偏光分離素子と位相差フィルムによる輝度向上を達成しながら、装置を薄型化でき、経時的な劣化を抑えることができ、且つ製品のリサイクルを容易にすることができる。
【0100】
前記液晶パネルは、特に限定されず液晶表示装置に用いられているものを適宜用いることができる。例えば、TN(Twisted Nematic)型液晶パネル、STN(Super Twisted Nematic)型液晶パネル、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶パネル、IPS(In Plane Switching)型液晶パネル、VA(Vertical Alignment)型液晶パネル、MVA(Multiple Vertical Alignment型液晶パネル、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶パネルなどが挙げられる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0102】
(実施例1:1層のコレステリック樹脂層を有する輝度向上フィルムの作成 その1)
(1−1:第1の円偏光分離素子の調製)
脂環式オレフィンポリマーからなるフィルム(株式会社オプテス製;商品名「ゼオノアフィルムZF14−100」)の両面をコロナ放電処理した。5重量%の変性ポリアミド(FR105/CM4000の重量比70/30混合物、FR105:株式会社鉛市製 メトキシメチル化ナイロン CM4000:東レ株式会社製 共重合ポリアミド)の水溶液を当該フィルムの片面に♯2のワイヤーバーを使用して塗布し、塗膜を乾燥し、膜厚0.1μmの配向膜を形成した。次いで当該配向膜をラビング処理し、配向膜を有する透明樹脂基材を調製した。
【0103】
上記で調製した配向膜を有する透明樹脂基材の配向膜を有する面に、表1に示す配合割合で各成分を混合して調製したコレステリック液晶組成物を♯10のワイヤーバーを使用して塗布した。塗膜を100℃で5分間配向処理し、当該塗膜に対して0.1〜45mJ/cm2の微弱な紫外線の照射処理と、それに続く100℃で1分間の加温処理からなるプロセスを2回繰り返した後、窒素雰囲気下で800mJ/cm2の紫外線を照射して、乾燥膜厚5μmの、第1のコレステリック樹脂層を形成し、基材、配向膜及びコレステリック樹脂層がこの順に形成された、第1の円偏光分離素子を調製した。
【0104】
(1−2:位相差フィルムの調製)
メタクリル酸メチル97.8重量%とアクリル酸メチル2.2重量%とからなるモノマー組成物を、バルク重合法により重合させ、樹脂ペレットを得た。
【0105】
特公昭55−27576号公報の実施例3に準じて、ゴム粒子を製造した。このゴム粒子は、球形3層構造を有し、芯内層が、メタクリル酸メチル及び少量のメタクリル酸アリルの架橋重合体であり、内層が、主成分としてのアクリル酸ブチルとスチレン及び少量のアクリル酸アリルとを架橋共重合させた軟質の弾性共重合体であり、外層が、メタクリル酸メチル及び少量のアクリル酸エチルの硬質重合体である。また、内層の平均粒子径は0.19μmであり、外層をも含めた粒径は0.22μmであった。
【0106】
上記樹脂ペレット70重量部と、上記ゴム粒子30重量部とを混合し、二軸押出機で溶融混練して、メタクリル酸エステル重合体組成物A(ガラス転移温度105℃)を得た。
【0107】
上記メタクリル酸エステル重合体組成物A(b層)、及びスチレン無水マレイン酸共重合体(ガラス転移温度130℃)(a層)を温度280℃で共押出成形することにより、b層/a層/b層の三層構造で、各層が45/70/45(μm)の平均厚みを有する複層フィルムを得た。この積層フィルムを、テンター延伸機で、遅相軸がMD方向に対して45度傾いた方向になるように、延伸温度134℃、延伸倍率1.8倍で斜め延伸し、光学異方性層を得た。
【0108】
光学異方性層の正面方向のリターデーションは140nm、厚み方向のリターデーションは−85nm(各数値は延伸後の測定値である。)であった。さらにこの光学異方性層の両面を、濡れ指数が56dyne/cmになるようにコロナ放電処理を施した。この光学異方性層を、下記において位相差フィルムとして用いた。
【0109】
(1−3:偏光板の調製)
偏光子と保護フィルムとを有する偏光板を、ガラス基板に貼付した複合積層物を調製した。
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを2.5倍に一軸延伸し、ヨウ素0.2g/L及びヨウ化カリウム60g/Lを含む30℃の水溶液中に240秒間浸漬し、次いでホウ酸70g/L及びヨウ化カリウム30g/Lを含む水溶液中に浸漬すると同時に6.0倍に一軸延伸して5分間保持した。最後に、室温で24時間乾燥し、平均厚さ30μm、偏光度99.95%の偏光子を得た。
得られた偏光子の両面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、一方の面に三酢酸セルロース保護フィルム(富士写真フィルム社製;TF80UL)を、他方の面にガラス基板を貼り合せて、保護フィルム/ポリビニルアルコール系接着剤層/偏光子/ポリビニルアルコール系接着剤層/ガラス基板の層構成を有する、偏光板及び基板の複合積層物を調製した。
【0110】
(1−4:位相差フィルムと円偏光分離素子の貼付:輝度向上フィルムの調製)
上記(1−2)で得られた位相差フィルムの片面に、アクリル系粘着剤(大同化成製;E−5301)を平均厚みが40μmとなるようにアプリケーターを用い塗布した。この塗布面と、上記(1−1)で得られた第1の円偏光分離素子のコレステリック樹脂層面とを合わせ、ラミネーターを用いて、80℃において、2kgf/50mmのニップ圧にて貼り合わせて、第1の円偏光分離素子/第2粘着層/位相差フィルムの積層構造を有する輝度向上フィルムを得た。
【0111】
(1−5:光学部材の製造)
上記(1−4)で得られた輝度向上フィルムを長さ20cm×幅2.5cmの帯状の形状に切り出した。位相差フィルム側の面に、付加反応型のシリコーン粘着剤(商品名SD4560、東レ・ダウコーニング製)(以下、「シリコーン系組成物1」と記すことがある。)の主剤及び硬化剤(SRX212、東レ・ダウコーニング製)を主剤100重量部に対して0.8重量部混合したものを、アプリケーターを用い塗布した。この塗布面と、上記(1−3)で得た偏光板及び基板の複合積層物の偏光板側(保護フィルム側)の面とを合わせ、2kgfの荷重ローラーで貼り付け、100℃で3分間処理して硬化させ、第1の円偏光分離素子/第2粘着層/位相差フィルム/第1粘着層/偏光板/基板の積層構造を有する光学部材を得た。硬化後の第1粘着層の厚さは25μmであった。光学部材のサンプルは複数作成し、それぞれを下記の評価に供した。
【0112】
(1−6:評価:初期剥離力)
上記(1−5)の製造工程終了後温度25℃、湿度60%で24時間放置した後に、下記の評価を行なった。結果を表1に示す。
(イ)基板及び偏光板を固定し、前記帯状の形状の第1の円偏光分離素子〜位相差フィルムまでの層を、定速(300mm/分)の引張り試験機を用いて偏光板から180°で引き剥がし、第1粘着層における剥離に要した力(N/インチ)を測定した。さらに、剥離後の剥離面を観察し、偏光板面における糊残りなしに第1粘着層が完全に剥がれたものを◎、途中で糊残りが生じたものを○、破れが生じたものを×と評価した。
(ロ)基板、偏光板及び位相差フィルムを固定し、前記帯状の形状の第1の円偏光分離素子の層を、定速(300mm/分)の引張り試験機を用いて位相差フィルムから180°で引き剥がし、第2粘着層における剥離に要した力(N/インチ)を測定した。
【0113】
(1−7:評価:エージング後剥離力)
上記(1−5)の製造工程終了後、光学部材をオーブン中温度150℃で8時間放置し、エージング処理を行った。その後、温度25℃、湿度60%で24時間放置した後に、上記(イ)及び(ロ)と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0114】
(実施例2:1層のコレステリック樹脂層を有する輝度向上フィルムの作成 その2)
実施例1の(1−4)で得た輝度向上フィルムを長さ20cm×幅2.5cmの帯状の形状に切り出した。位相差フィルム側の面に、ラジカル硬化型のシリコーン粘着剤(商品名SH4280、東レ・ダウコーニング製)(以下、「シリコーン系組成物2」と記すことがある。)の主剤と、触媒(ベンゾイルパーオキサイド)を前記主剤100重量部に対して0.5重量部の割合で混合したものを、アプリケーターを用い塗布し、予備乾燥で粘着剤中の溶剤を蒸発させた。この塗布面と、実施例1の(1−3)で得た複合積層物の偏光板側(保護フィルム側)の面とを合わせ、2kgfの荷重ローラーで貼り付け、150℃で5分間処理して硬化させ、第1の円偏光分離素子/第2粘着層/位相差フィルム/第1粘着層/偏光板/基板の積層構造を有する光学部材を得た。硬化後の第1粘着層の厚さは25μmであった。光学部材のサンプルは複数作成し、それぞれを実施例1の(1−6)及び(1−7)と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例3:2層のコレステリック樹脂層を有する輝度向上フィルムの作成)
(3−1:第1及び第2の円偏光分離素子の調製)
コレステリック液晶組成物の配合割合を、表1中の「1層目」「2層目」のそれぞれに記載した通りに変更した他は、実施例1の(1−1)と同様に操作し、第1の円偏光分離素子及び第2の円偏光分離素子を調製した。
【0116】
(3−2:輝度向上フィルムの調製)
上記(3−1)で得た第2の円偏光分離素子のコレステリック樹脂層面に、アクリル系粘着剤(大同化成製;E−5301)を平均厚みが40μmとなるようにアプリケーターを用い塗布した。この塗布面と、上記(3−1)で得られた第1の円偏光分離素子の基板面とを合わせ、ラミネーターを用いて、80℃において、2kgf/50mmのニップ圧にて貼り合わせて、第2の円偏光分離素子/第3粘着層/第1の円偏光分離素子の積層構造を有する積層体を得た。
実施例1の(1−2)で得られた位相差フィルムの片面に、アクリル系粘着剤(大同化成製;E−5301)を平均厚みが40μmとなるようにアプリケーターを用い塗布した。この塗布面と、上記で得られた積層体の、コレステリック樹脂層(第1の円偏光分離素子のもの)面とを合わせ、ラミネーターを用いて、80℃において、2kgf/50mmのニップ圧にて貼り合わせて、第2の円偏光分離素子/第3粘着層/第1の円偏光分離素子/第2粘着層/位相差フィルムの積層構造を有する輝度向上フィルムを得た。硬化後の第2粘着層及び第3粘着層の厚さは40μmであった。
【0117】
(3−3:光学部材の製造)
上記(3−2)で得られた輝度向上フィルムを長さ20cm×幅2.5cmの帯状の形状に切り出した。位相差フィルム側の面に、前記シリコーン系組成物1の主剤及び硬化剤(SRX212、東レ・ダウコーニング製)を主剤100重量部に対して0.8重量部混合したものを、アプリケーターを用い塗布した。この塗布面と、実施例1の(1−3)で得た複合積層物の偏光板側(保護フィルム側)の面とを合わせ、2kgfの荷重ローラーで貼り付け、100℃で3分間処理して硬化させ、第2の円偏光分離素子/第3粘着層/第1の円偏光分離素子/第2粘着層/位相差フィルム/第1粘着層/偏光板/基板の積層構造を有する光学部材を得た。硬化後の第1粘着層の厚さは25μmであった。光学部材のサンプルは複数作成し、それぞれを下記の評価に供した。
【0118】
(3−4:評価:初期剥離力)
上記(3−3)の製造工程終了後温度25℃、湿度60%で24時間放置した後に、下記の評価を行なった。結果を表1に示す。
(イ)基板及び偏光板を固定し、前記帯状の形状の第2の円偏光分離素子〜位相差フィルムまでの層を、JIS Z0237に準拠し、定速(300mm/分)の引張り試験機を用いて偏光板から180°で引き剥がし、第1粘着層における剥離に要した力(N/インチ)を測定した。さらに、剥離後の剥離面を観察し、偏光板面における糊残りなしに第1粘着層が完全に剥がれたものを◎、途中で糊残りが生じたものを○、破れが生じたものを×と評価した。
(ロ)基板、偏光板及び位相差フィルムを固定し、前記帯状の形状の第2の円偏光分離素子〜第1の円偏光分離素子までの層を、JIS Z0237に準拠し、定速(300mm/分)の引張り試験機を用いて位相差フィルムから180°で引き剥がし、第2粘着層における剥離に要した力(N/インチ)を測定した。
【0119】
(3−5:評価:エージング後剥離力)
上記(1−5)の製造工程終了後、光学部材をオーブン中温度150℃で8時間放置し、エージング処理を行った。その後、温度25℃、湿度60%で24時間放置した後に、上記(イ)及び(ロ)と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0120】
(比較例1)
工程(1−5)において、粘着剤として、シリコーン粘着剤に変えて、アクリル系粘着剤(大同化成製;E−5301)を用いた他は、実施例1と同様にして、光学部材を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
表1及び表2中の略号は、それぞれ以下のものを示す:
化合物(1);化合物A2
化合物(2)A;Δn=0.18 1分子中の重合性基数2、平均屈折率1.645
化合物(2)B;Δn=0.20 1分子中の重合性基数2、平均屈折率1.638
光重合開始剤X;イルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ社)
【0123】
以上の通り、本発明の要件を満たす実施例1〜3においては、比較例1に比べて、製品のリサイクルに好都合な良好な剥離が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の光学部材の一具体例を示す断面図である。
【図2】本発明の光学部材の別の具体例を示す断面図である。
【図3】本発明の光学部材の積層の剥離の態様の例を示す断面図である。
【図4】従来技術の光学部材の積層の剥離の態様の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0125】
100、200 光学部材
101 基板
111 偏光板
121 第1粘着層
122 第2粘着層
131 位相差フィルム
132 (第1の)円偏光分離素子
133 第2の円偏光分離素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板、第1粘着層、位相差フィルム、第2粘着層、及び円偏光分離素子を有する光学部材において、
前記偏光板と前記第1粘着層との界面の、25℃における初期剥離力P11及び150℃8時間エージング後の25℃における剥離力Q11、前記位相差フィルムから前記円偏光分離素子までの間の25℃における初期剥離力PX、及び前記位相差フィルムから前記円偏光分離素子までの間の150℃8時間エージング後の25℃における剥離力QXについて、下記式(1):
(PX−P11)<(QX−Q11) (1)
が成り立ち、且つ、前記第1粘着層がシリコーン系組成物の硬化物であることを特徴とする光学部材。
【請求項2】
下記式(2)及び(3):
11<PX (2)
11<QX (3)
がさらに成り立つ、請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
11が0.1〜5N/インチである、請求項1又は2に記載の光学部材。
【請求項4】
前記シリコーン系組成物の硬化物が、前記シリコーン系組成物が付加反応により硬化してなるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項5】
前記円偏光分離素子が、基材、配向膜及びコレステリック規則性を有する樹脂層がこの順で積層されてなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学部材、及びその前記偏光板の側の面に液晶パネルを有してなる液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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