説明

光学鏡胴、結像光学システム、および撮像装置

【課題】省スペース化が実現されるとともに光量調整の工夫が施された光学鏡胴、その光学鏡胴を用いた結像光学システム、および透過率の影響や画質劣化を抑制して画像を形成する撮像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 被写体光を結像させる光学系を収容した光学鏡胴10において、光学系が接合レンズ302を備えるとともに、接合レンズ302を構成する隣接する2つのレンズ素子に挟まれることにより接合レンズ302と一体に形成された、電圧の印加開放を受けて接合レンズ302の透過光の光量を制御するエレクトロクロミック素子40を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体光を結像させる光学系を収容した光学鏡胴、その光学鏡胴と被写体光を制御する制御手段とを備えた結像光学システム、およびその結像光学システムを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮像素子の撮像面上に被写体像を結像する結像光学システムを備え、撮影操作に応じて撮影データを生成する撮像装置には、撮影場所の明るさなどに応じて被写体光の光量を調整するための絞りが備えられているものがある。絞りは、予め開口が空けられた板を、開口が光軸上に来るように挿入して光量を絞るものや、複数の絞り羽で光軸を取り囲むことで絞りの開口を形成し、その開口の大きさを変化させて、その開口を通過する光の光量を制御するものなどが知られている。このような光量調整手段が適用されることによって、使用者は、撮影場所の明るさに適した露光で撮影を行うことができる。
【0003】
ところで、絞りの開口を通過する光の光量を制御する他の手段として、透過率可変部材であるエレクトロクロミック素子からなる絞り装置が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0004】
このエレクトロクロミック素子からなる絞り装置は、電極、エレクトロクロミック材料、電解質などの薄膜を積層して形成され、電極間への電圧印加により電解質から移動したイオンとエレクトロクロミック材料が電気化学的に反応して着色する物性素子である。このエレクトロクロミック素子に印加する電圧を変化させることで、光の透過率を段階的に変化させたり遮光させたりすることができる。
【0005】
ここで、電極としては、例えば、SnO、In、ITO(SnOとInとの混合物)、ZnO等の透過性の材料が採用されている。
【0006】
ところが、電極に用いられる材料は、光の透過率が一般に低いために薄くする必要があり、そのため、強度を確保するために、例えば、一対のガラス基板をエレクトロクロミック素子に挟む方式が採用されている。
【0007】
図7は、ガラス基板に挟まれたエレクトロクロミック素子を備えた光学鏡胴における光学系の一例を示す図である。
【0008】
図7(a)に示す光学系には、前方から順に、第1群レンズ201、エレクトロクロミック素子202、第2群レンズ203、および第3群レンズ204が光軸を揃えて並べられてなる撮影レンズが配備されている。また、第3群レンズ204の後段には、撮像素子であるCCD205が配備されている。また、エレクトロクロミック素子202は一対のガラス基板206_1、206_2に挟まれている。
【0009】
また、図7(b)に示す光学系には、前方から順に、第1群レンズ201、第2群レンズ203、第3群レンズ204、およびエレクトロクロミック素子202が光軸を揃えて並べられてなる撮影レンズが配備されている。また、エレクトロクロミック素子202の後段には、CCD205が配備されている。また、エレクトロクロミック素子202は、図7(a)と同様に、一対のガラス基板206_1、206_2に挟まれている。
【0010】
上記図7(a)および図7(b)に示すように、エレクトロクロミック素子202を光学系に配備することで、絞り装置が実現する。
【特許文献1】特開平8−220568号公報
【特許文献2】特開2003−315837号公報
【特許文献3】特開2004−94052号公報
【特許文献4】特開2005−352318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記方式を採用したエレクトロクロミック素子は、上述した通り、所定の厚さのガラス基板を必要とする。そのため、携帯が便利であるような薄型構造を持つ装置、例えば、デジタルカメラに上記方式を採用したエレクトロクロミック素子を採用する場合には、空間的な制約を受けるという問題が生じる。
【0012】
また、上記方式を採用したエレクトロクロミック素子では、被写体光をガラス基板に透過し結像させるため、透過率の影響やフレア、ゴーストなどによる画質劣化を招くというおそれがある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、省スペース化が実現されるとともに光量調整の工夫が施された光学鏡胴、その光学鏡胴を用いた結像光学システム、および透過率の影響やフレア、ゴーストなどによる画質劣化を抑制して画像を形成する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明の光学鏡胴は、
被写体光を結像させる光学系を収容した光学鏡胴において、
上記光学系が接合レンズを備えるとともに、上記接合レンズを構成する隣接する2つのレンズ素子に挟まれることによりその接合レンズと一体に形成された、電圧の印加開放を受けてその接合レンズの透過光の光量を制御するエレクトロクロミック素子を備えたことを特徴とする。
【0015】
透過光の光量を制御するエレクトロクロミック素子が接合レンズと一体に形成されることにより、従来のようなガラス基板が不要になる。そのため、被写体光がガラス基板を透過する際の透過率の影響やフレア、ゴーストなどによる画質劣化を招くというおそれが解消される。加えて、ガラス基板が不要な分、光学鏡胴の省スペース化が実現される。
【0016】
また、上記エレクトロクロミック素子が、絞り径を同心的に複数段階に変化させるように電圧の印加開放により透過率を変化させる、同心的に配列された複数のセグメントを有するものであることが好ましい。
【0017】
同心的に配列された複数のセグメントを有することにより、絞り径を複数段階の大きさに調整することができ、光量調整の自由度を高めることができる。
【0018】
さらに、上記エレクトロクロミック素子が、電圧の印加開放を受けて、絞り径内を中央と周辺との光量分布を平坦化するための透過率分布に変化させるものであることが好適である。
【0019】
このようにすると、絞り径の制御を行いながら結像面上での中央と周辺の光量分布を平坦化することができる。
【0020】
ここで、上記目的を達成する本発明の結像光学システムは、
請求項1記載の光学鏡胴と、
上記エレクトロクロミック素子への電圧の印加開放により絞り径を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
上記制御手段を備えることにより、絞り径を変化させて被写界輝度などをコントロールすることができる。
【0022】
ここで、上記目的を達成する本発明の撮像装置は、
請求項4記載の結像光学システムと、
上記光学系における被写体像の結像面に配備された撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明の撮像装置は、上記本発明の光学鏡胴と、上記本発明の結像光学システムとを備えたものであるため、透過率の影響やフレア、ゴーストなどによる画質劣化を抑制して画像を形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、省スペース化が実現されるとともに光量調整の工夫が施された光学鏡胴、その光学鏡胴を用いた結像光学システム、および透過率の影響やフレア、ゴーストなどによる画質劣化を抑制して画像を形成する撮像装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の撮像装置の一実施形態であるデジタルカメラの、前方斜め上から見たときの外観斜視図である。
【0027】
図2は、本発明の光学鏡胴がデジタルカメラの前面から繰り出された状態を示す図である。
【0028】
図1および図2に示すデジタルカメラ1の前面11には、撮影レンズが内蔵されたレンズ鏡胴10、被写体に向けて閃光を発光するための閃光発光窓12、被写体を見るためのファインダ対物窓13、および音声を録音するためのマイク14が配備されている。また、このデジタルカメラ1の上面15には、レリーズボタン16が備えられている。
【0029】
なお、レンズ鏡胴10の内部については後述する。
【0030】
図3は、図1および図2に示すデジタルカメラの、後方斜め上から見たときの外観斜視図である。
【0031】
また、図3に示すように、このデジタルカメラ1の背面21には、電源ボタン22、モードスイッチ23が設けられている。この電源ボタン22は、デジタルカメラ1の電源をON/OFFするものであり、このモードスイッチ23は、撮影モードと再生モードとを切り替えるスイッチである。
【0032】
また、このデジタルカメラ1の背面21には、メニュー切替えおよび実行キー24が備えられている。このメニュー切替えおよび実行キー24は、撮影モード時には静止画撮影や動画撮影、再生モード時には静止画再生や動画再生に使用されるメニューを自在に切り替えて設定条件を選択して実行するキーである。
【0033】
さらに、このデジタルカメラ1の背面21には、広角ズームキー25、望遠ズームキー26、液晶表示パネル27、光学式ファインダ接眼窓28、スピーカ29が備えられている。広角ズームキー25は、焦点距離を広角側に変更するためのキーであり、望遠ズームキー26は、焦点距離を望遠側に変更するためのキーである。液晶表示パネル27は、被写体の画像、メニュー切替えおよび実行キー24のメニュー等を液晶表示するものである。光学式ファインダ接眼窓28は、使用者が撮影の際に被写体を覗く窓である。
【0034】
次に、本発明の光学鏡胴について説明する。
【0035】
図4は、本発明の光学鏡胴を光軸に沿って切断した際の光学系の断面図である。
【0036】
この光学鏡胴10の内部空間には、前方から順に、前群レンズ301、接合レンズ302、および後群レンズ303の3群が光軸を揃えて並べられてなる撮影レンズが収容されている。
【0037】
ここで、上記撮影レンズは、接合レンズ302が光軸に沿って移動することにより焦点距離が変化し、後群レンズ303が光軸に沿って移動することによりピント調節が行われる構成となっている。
【0038】
また、後群レンズ303の後方には、CCD304が配置されている。
【0039】
ここで、接合レンズ302には、第1のレンズ素子302_1および第2のレンズ素子302_2に挟まれることにより接合レンズ302と一体に形成された、電圧の印加開放を受けて接合レンズ302の透過光の光量を制御するエレクトロクロミック素子40が備えられている。
【0040】
このエレクトロクロミック素子40は、電解質層を挟んで形成されたエレクトロクロミック材料の薄膜40_1を一対の電極40_2、40_3が挟んだ構造体からなるものである。
【0041】
図5は、エレクトロクロミック素子の正面図である。
【0042】
このエレクトロクロミック素子40は、絞り径を同心的に複数段階に変化させるように同心的に配列された4つのセグメント40_a、40_b、40_c、40_dを有している。
【0043】
図5(a)は、4つのセグメント40_a、40_b、40_c、40_dに電圧が印加されず開放状態にある様子を示す図である。
【0044】
この場合、エレクトロクロミック素子40のすべてのセグメントについては、透過率は共に高い状態(透明状態)にある。
【0045】
図5(b)は、セグメント40_dのみ電圧を印加した状態を示す図である。この場合、セグメント40_dは電気化学反応により着色し、セグメント40_dに入射した被写体光を遮光される。
【0046】
また、図5(c)は、2つのセグメント40_c、40_dに電圧を印加した状態を示す図である。この場合、2つのセグメント40_c、40_dに入射した被写体光は遮光される。
【0047】
また、図5(d)は、3つのセグメント40_b、40_c、40_dに電圧を印加した状態を示す図である。この場合、3つのセグメント40_b、40_c、40_dに入射した被写体光は遮光される。
【0048】
なお、セグメントの数は4つに限られるものではなく、絞り径をより細かく変化させたい場合は、セグメントの数を増やすことができる。
【0049】
このエレクトロクロミック素子40への電圧の印加開放により絞り径を制御する本発明の結像光学システムについては後述する。
【0050】
次に、本発明の撮像装置の一実施形態であるデジタルカメラ1の内部構成について説明する。
【0051】
図6は、図1に示すデジタルカメラ1の概略的な内部構成図である。
【0052】
このデジタルカメラ1にはメインCPU110が備えられており、すべての処理がメインCPU110によって制御される。
【0053】
このメインCPU110には、EEPROM110_1が備えられている。このEEPROM110_1は書き換え可能な不揮発性メモリで構成されている。また、このメインCPU110にはROMが内蔵されており、このROM内にはプログラムが格納されている。このプログラムの手順にしたがってデジタルカメラ1の動作がメインCPU110により制御される。
【0054】
このデジタルカメラ1には、操作部20、および電源104が備えられている。この操作部20は、図3において既に説明したデジタルカメラ1の背面21および上面14に備えられている各操作子の操作を受け付けてメインCPU110に各操作子の処理の命令を出すものである。この電源104は、電源投入操作を受けて各ブロックへ給電するものである。
【0055】
このデジタルカメラ1には、撮影光学系を構成する撮像部30が備えられている。この撮像部30には、既に説明した通り、光学鏡胴10、CCD304が備えられている。
【0056】
このデジタルカメラ1には、CDSAMP120、A/D変換部121、ホワイトバランス・γ(ガンマ)処理部122、光学制御CPU123、およびクロックジェネレータ124が備えられている。CDSAMP120は、CCD304から出力されたアナログ画像信号の雑音を低減する処理等を行ない、A/D変換部121は、このアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するものである。ホワイトバランス・γ処理部122は、被写体像における画像データの白色の色を調整するとともにその被写体像の階調特性における直線の傾き(γ)を調整するものである。光学制御CPU123は、本発明の結像光学システムの一実施形態であり、エレクトロクロミック素子40への電圧の印加開放により絞り径を制御するものである。また、メインCPU110からの指示に従って、モータ(不図示)を制御することで光学鏡胴10を繰り出したり、光学鏡胴10内部の撮影レンズを移動させたりするものである。クロックジェネレータ124は、メインCPU110からの指示に基づいて光学制御CPU123を介してタイミング信号を出力するものである。CCD304、A/D変換部121、およびホワイトバランス・γ処理部122では、クロックジェネレータ124から発せられるタイミング信号に同期して順序良く画像信号の処理が流れるように行われる。
【0057】
このデジタルカメラ1には、AF検出部111、AE検出部112が備えられている。AF検出部111は画像のピント情報を検出し、AE検出部112は画像の輝度情報を検出するものである。
【0058】
このデジタルカメラ1には、バッファメモリ125、YC処理部126、YC/RGB変換部127、ドライバ128、およびデータバス130が備えられている。バッファメモリ125は、ホワイトバランス・γ処理部122において画像処理が施されたRGB画像データを一時的に記憶するものである。YC処理部126は、データバス130を介して入力されたデジタルの画像信号を輝度(Y)と色(C)とで表されるYC信号に変換するものであり、YC/RGB変換部127は、YC信号をRGB画像データに変換するものである。ここで、バッファメモリ125に記憶された低解像度なスルー画像データは、古い時刻に記憶されたスルー画像データから先に、バス130を経由してYC/RGB変換部127に供給される。スルー画像データはRGB信号であるため、YC/RGB変換部127では処理が行われずに、スルー画像データを高速に処理するドライバ128を介して液晶表示パネル27に伝えられ、液晶表示パネル27上に、スルー画像が表示される。
【0059】
このデジタルカメラ1には、音声処理部141、および音声再生部142が備えられている。音声処理部141は、マイクで収録された音声を音声データに変換処理するものであり、音声再生部142は、スピーカ29を介して適切な音声データを再生するものである。
【0060】
このデジタルカメラ1には、圧縮伸張部131、インターフェース(I/F)部132、メモリカード133、および閃光発光制御部134が備えられている。圧縮伸張部131は、メインCPU110の指示によりYC信号に変換された画像データを圧縮処理するものであり、インターフェース(I/F)部132は、圧縮された画像データをメモリカード133に記録できるように、様々な通信規格に準拠した通信インターフェースを提供するものである。閃光発光制御部134は、閃光発光窓12を通して、閃光発光をするものである。
【0061】
次に、デジタルカメラ1の撮影動作について説明する。
【0062】
先ず、使用者が電源ボタン22を押して電源投入操作をすると、操作部20が電源投入操作を受け付けて、メインCPU110では、ROMのプログラムの実行が開始され、液晶表示パネル27に画像が表示されるとともに、撮影条件の設定操作を受け付ける状態となる。
【0063】
ここで、使用者が、デジタルカメラ1の背面21に設けられた広角ズームキー25もしくは望遠ズームキー26を使って撮影画角を指示すると、その指示された撮影画角がメインCPU110に伝えられ、さらに、メインCPU110を介して光学制御CPU123に伝えられる。光学制御CPU123は、モータ等(不図示)を制御することで、光学鏡胴10を繰り出し、撮影画角に応じた位置に接合レンズ302を移動させる。また、光学制御CPU123は、モータ等(不図示)を制御することで、図4に示す後群レンズ303を光軸に沿う方向に移動させる。
【0064】
また、この液晶表示パネル27上に表示されているスルー画像に基づいて使用者によって撮影が行なわれるため、このデジタルカメラ1を向けた方向の被写体がすぐにスルー画像として表示されるように、AF検出回路111で常に合焦点位置を検出して後群レンズ303をピント調整機構により合焦点位置に移動させている。
【0065】
ここで、使用者が、レリーズボタン16を半押し状態にすることで、AE検出部112によって被写界輝度が検出される。
【0066】
この被写界輝度に基づいて、光学制御CPU123がエレクトロクロミック素子40の電極に電圧を印加する。電圧の印加を受けたエレクトロクロミック素子40のセグメントは電気化学反応により着色され、その着色されたセグメントに入射した被写体光は遮光される。このように光学制御CPU123は、絞り径を同心的に複数段階に変化させることができる。
【0067】
ここで、F値(絞り値)を大きくする場合には、エレクトロクロミック素子40の3つのセグメント40_b、40_c、40_dに電圧を印加する(図5(d))。この場合、セグメント40_aのみ透明状態にある。このようにして大きなF値を実現することができる。
【0068】
一方、F値(絞り値)を小さくする場合には、セグメント40_dのみ印加することで小さなF値が得られる(図5(b))。ここで、結像面上での中央の光量のほうが周辺の光量よりも大きい場合(中央のほうが周辺よりも明るい場合)が多い。この場合、結像面上での中央と周辺の光量分布を平坦化する必要がある。そこで、本実施形態のデジタルカメラ1では、エレクトロクロミック素子40のセグメント40_aに電圧を印加する(図5(d))。ただし、この場合、光学制御CPU123は、セグメント40_aに低い電圧を印加することにより透過率をゼロにせず、結像面上での中央と周辺の光量分布の平坦化が実現されるように透過率を低める。このようにして、結像面上での中央の光量を比較的小さく抑えたまま、小さなF値を実現することができる。
【0069】
したがって、光学制御CPU123からの電圧の印加を受けたエレクトロクロミック素子40が着色することで、被写体光の透過光量が被写界輝度に基づく最適な透過光量となり、F値が調整される。
【0070】
続いて、使用者が、レリーズボタン16を全押しにすることで、CCD304に結像されている被写体を表わす画像データはCDSAMP120に出力される。CDSAMP120では、CCD304から出力された画像データの雑音の低減が行なわれその雑音が低減された画像データがA/D変換部121に供給される。このA/D変換部121では、アナログ信号からデジタル信号に変換されたRGBからなる画像データが生成される。生成された画像データは、ホワイトバランス・γ処理部122で画像処理が施されて、バッファメモリ125に記憶される。バッファメモリ125に記憶された画像データは、YC処理部126に供給されて、RGB信号からYC信号に変換される。YC信号に変換された画像データは、圧縮・伸張部131において圧縮処理が施される。また、メインCPU110は、画像データ、をメモリカード133に記憶する。
【0071】
また、メモリカード133に記憶された画像データは、圧縮・伸張部131において伸張処理が施された後、YC/RGB変換部127においてRGB信号に変換され、ドライバ128を介して液晶表示パネル27に伝えられる。液晶表示パネル27には、画像データが表示される。
【0072】
以上より、デジタルカメラ1の撮影動作が終了する。
【0073】
ここで、上記の説明においては、エレクトロクロミック素子40について開口径を制御する絞りとして説明したが、印加電圧を高めることによりエレクトロクロミック素子40のすべてのセグメントの透過率をゼロにすることで、シャッタ速度を機械的に制御するシャッタとしての機能も果たすことが可能となる。この場合、絞り羽根のような機械的な部材を用いずに済み、消音化が実現できる。また、装置の信頼性も向上する。
【0074】
また、印加電圧を制御することで透過率を変えることができるので、エレクトロクロミック素子40をNDフィルタとして動作させることも可能である。
【0075】
以上説明したように、本発明によれば、省スペース化が実現されるとともに光量調整の工夫が施された光学鏡胴、その光学鏡胴を用いた結像光学システム、および透過率の影響やフレア、ゴーストなどによる画質劣化を抑制して画像を形成する撮像装置が得られる。
【0076】
なお、本発明の撮像装置では、デジタルカメラにより実現した例で説明したが、これに限られるものではなく、例えば、ロール状の写真フイルム上に写真撮影を行うフイルムカメラや携帯電話に搭載されるカメラ、あるいは動画を撮影するビデオカメラ等の光学機器にも、本発明の光学鏡胴、結像光学システムを備えた撮像装置を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の撮像装置の一実施形態であるデジタルカメラの、前方斜め上から見たときの外観斜視図である。
【図2】本発明の光学鏡胴がデジタルカメラの前面から繰り出された状態を示す図である。
【図3】図1および図2に示すデジタルカメラの、後方斜め上から見たときの外観斜視図である。
【図4】本発明の光学鏡胴を光軸に沿って切断した際の光学系の断面図である。
【図5】エレクトロクロミック素子の正面図である。
【図6】図1に示すデジタルカメラ1の概略的な内部構成図である。
【図7】ガラス基板に挟まれたエレクトロクロミック素子を備えた光学鏡胴における光学系の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1 デジタルカメラ
10 光学鏡胴
11 前面
12 閃光発光窓
13 ファインダ対物窓
14 マイク
15 上面
16 レリーズボタン
20 操作部
21 背面
22 電源ボタン
23 モードスイッチ
24 メニュー切替えおよび実行キー
25 広角ズームキー
26 望遠ズームキー
27 液晶表示パネル
28 光学式ファインダ接眼窓
29 スピーカ
30 撮像部
40 エレクトロクロミック素子
40_a、40_b、40_c、40_d セグメント
110 メインCPU
110_1 EEPROM
111 AF検出部
112 AE検出部
120 CDSAMP
121 A/D変換部
122 ホワイトバランス・γ処理部
123 光学制御CPU
124 クロックジェネレータ
125 バッファメモリ
126 YC処理部
127 YC/RGB変換部
128 ドライバ
130 データバス
131 圧縮伸張部
132 インターフェース(I/F)部
133 メモリカード
134 閃光発光制御部
201 第1群レンズ
202 エレクトロクロミック素子
203 第2群レンズ
204 第3群レンズ204
205 CCD
206_1、206_2 ガラス基板
301 前群レンズ
302 接合レンズ
302_1 第1のレンズ素子
302_2 第2のレンズ素子
303 後群レンズ
304 CCD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光を結像させる光学系を収容した光学鏡胴において、
前記光学系が接合レンズを備えるとともに、前記接合レンズを構成する隣接する2つのレンズ素子に挟まれることにより該接合レンズと一体に形成された、電圧の印加開放を受けて該接合レンズの透過光の光量を制御するエレクトロクロミック素子を備えたことを特徴とする光学鏡胴。
【請求項2】
前記エレクトロクロミック素子が、絞り径を同心的に複数段階に変化させるように電圧の印加開放により透過率を変化させる、同心的に配列された複数のセグメントを有するものであることを特徴とする請求項1記載の光学鏡胴。
【請求項3】
前記エレクトロクロミック素子が、電圧の印加開放を受けて、絞り径内を中央と周辺との光量分布を平坦化するための透過率分布に変化させるものであることを特徴とする請求項2記載の光学鏡胴。
【請求項4】
請求項1記載の光学鏡胴と、
前記エレクトロクロミック素子への電圧の印加開放により絞り径を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする結像光学システム。
【請求項5】
請求項4記載の結像光学システムと、
前記光学系における被写体像の結像面に配備された撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−322604(P2007−322604A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151271(P2006−151271)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】