説明

光安定化コポリエーテルエステル組成物

二酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化亜鉛から選択された少なくとも1種のナノ粒子状鉱物と少なくとも1種の有機紫外線安定剤とを含む紫外線安定化コポリエーテルエステル組成物。該組成物から成形された物品も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化亜鉛から選択された少なくとも1種のナノ粒子状鉱物と1種または複数種の有機紫外線安定剤とを含む紫外線安定化コポリエーテルエステルエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマーは、それらの優れた引裂強度、引張強度、曲げ寿命、耐磨耗性および末端使用温度の広い範囲に対する適性の結果として、多くの自動車用途を含む広い範囲の用途において用いられている。しかし、これらの用途の多くは屋外で用いられ、コポリエーテルエステルから製造された物品が通常使用中に紫外線(UV)に照射されることが不可避である。コポリエーテルエステルはUV線に特に影響されやすいことが知られている(例えば、(非特許文献1)を参照のこと)。熱可塑性樹脂組成物の中で用いられる典型的なUV線安定剤の存在下でさえもUV線に長く照射されると、コポリエーテルエステルは分解することがあり得るため、物理的特性の損失および劣化した表面外観につながる。カーボンブラックなどのUV線吸収剤の添加は、屋外用途のためにUV線に十分な安定性を有する組成物を提供することが可能であるが、カーボンブラックの存在は、こうした組成物が色において必然的に黒またはほぼ黒であることを意味する。多くの用途において、コポリエーテルエステル組成物の自然色で、または黒以外の色を有する着色剤と合わせてコポリエーテルエステル組成物を使用できることが望ましいであろう。
【0003】
(特許文献1)には、UV防止特性を有する熱可塑性材料から製造された薄い包装フィルムが開示されている。この熱可塑性材料は、少なくとも1種の有機UV防止化合物と少なくとも1種の無機UV防止化合物とを含有する。ここで、無機化合物は微粉化酸化亜鉛または微粉化二酸化チタンであってもよい。
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/27914号パンフレット
【非特許文献1】F.ググムス(F.Gugumus)、R.ゲヒター(R.Gaechter)、H.ミューラー(H.Mueller)(編)「プラスチック添加剤ハンドブック(Plastics Additives Handbook)」、第三版、ハンサー・パブリッシャーズ(Hanser Publishers)、ミュンヘン(Munich)、1990年、170頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
光安定化コポリエーテルエステル組成物であって、
該組成物は、以下の成分(a)約92〜約99.8重量%、(b)約0.1〜約4重量%及び(c)約0.1〜約4重量%の溶融混合ブレンドを含み、
成分(a)は、エステル結合を通して頭−尾接合した多数の反復する長鎖エステル単位と短鎖エステル単位とを含む少なくとも1種のコポリエーテルエステルであって、
前記長鎖エステル単位が式(I)によって表され、
【0006】
【化1】

【0007】
前記短鎖エステル単位が式(II)によって表され、
【0008】
【化2】

【0009】
式中、Gは、約400〜約6000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端ヒドロキシ基の除去後に残る二価基であり、Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からのカルボキシル基の除去後に残る二価基であり、Dは、約250未満の分子量を有するジオールからのヒドロキシル基の除去後に残る二価基であり、前記短鎖エステル単位が前記コポリエーテルエステルの約15〜約99重量%を構成し、前記長鎖エステル単位が前記コポリエーテルエステルの約1〜約85重量%を構成するものであるコポリエーテルエステルであり、
成分(b)は、二酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化亜鉛から選択された少なくとも1種のナノ粒子状鉱物であり、
成分(c)は、少なくとも1種の有機紫外線安定剤であり、
全ての重量%が(a)+(b)+(c)の合計重量を基準にしていることを特徴とする光安定化コポリエーテルエステル組成物が本明細書において開示され、権利請求されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の組成物は、少なくとも1種の熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマーと二酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化亜鉛から選択された少なくとも1種のナノ粒子状鉱物と1種または複数種の有機紫外線安定剤とを含む。
【0011】
本発明において用いられるコポリエーテルエステルは、エステル結合を通して頭−尾接合した多数の反復する長鎖エステル単位と短鎖エステル単位とを有するコポリマーである。前記長鎖エステル単位は式(I)によって表される。
【0012】
【化3】

【0013】
前記短鎖エステル単位は式(II)によって表される。
【0014】
【化4】

【0015】
式中、Gは、約400〜約6000の間、または好ましくは約400〜約3000の間の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端ヒドロキシル基の除去後に残る二価基であり、
Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からのカルボキシル基の除去後に残る二価基であり、
Dは、約250未満の分子量を有するジオールからのヒドロキシル基の除去後に残る二価基であり、
ここで、前記コポリエーテルエステルは、好ましくは約15〜99重量%の短鎖エステル単位と約1〜約85重量%の長鎖エステル単位を含むか、または前記コポリエーテルエステルは、より好ましくは約25〜約90重量%の短鎖エステル単位と約10〜約75重量%の長鎖エステル単位を含む。
【0016】
ポリマー鎖の中の単位に適用される本明細書で用いられる「長鎖エステル単位」という用語は長鎖グリコールとジカルボン酸の反応生成物を意味する。適する長鎖グリコールは、末端(または可能な限りほぼ末端)ヒドロキシ基を有するとともに約400〜約6000、好ましくは約600〜約3000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールである。好ましいポリ(アルキレンオキシド)グリコールには、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、これらのアルキレンオキシドのコポリマーグリコールおよびエチレンオキシド−封止ポリ(プロピレンオキシド)グリコールなどのブロックコポリマーが挙げられる。これらのグリコールの2種以上の混合物を用いることが可能である。
【0017】
コポリエーテルエステルのポリマー鎖の中の単位に適用される「短鎖エステル単位」という用語は約550未満の分子量を有する低分子量化合物またはポリマー鎖単位を意味する。それらは、低分子量ジオールまたはジオールの混合物(約250未満の分子量)とジカルボン酸を反応させて上の式(II)によって表されるエステル単位を形成させることにより製造される。
【0018】
非環式ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物および芳香族ジヒドロキシ化合物は、コポリエーテルエステルを調製するために用いるのに適する短鎖エステル単位を形成させるために反応する低分子量ジオールの中に含まれる。好ましい化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソブチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−ペンタメチレングリコール、2,2−ジメチルトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールおよびデカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレンなどの約2〜15の炭素原子を有するジオールである。特に好ましいジオールは2〜8個の炭素原子を含む脂肪族ジオールであり、より好ましいジオールは1,4−ブタンジオールである。ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタンおよびビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパンは、用いることが可能であるビスフェノールの中に含まれる。ジオールの等価エステル形成誘導体も有用である(例えば、エチレンオキシドまたはエチレンカーボネートをエチレングリコールの代わりに用いることが可能であるか、またはレゾルシノールジアセテートをレゾルシノールの代わりに用いることが可能である)。本明細書で用いられる「ジオール」という用語は、上述したものなどの等価エステル形成誘導体を含む。しかし、あらゆる分子量要件はジオールの誘導体でなく、対応するジオールに関連する。
【0019】
前述した長鎖グリコールおよび低分子量ジオールと反応してコポリエーテルエステルを生成させることが可能であるジカルボン酸は、低分子量、すなわち、約300未満の分子量を有する脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸である。本明細書で用いられる「ジカルボン酸」という用語は、コポリエーテルエステルポリマーを生成させる際にグリコールおよびジオールとの反応において実質的にジカルボン酸のように働く2個のカルボキシ官能基を有するジカルボン酸の官能性等価物を含む。これらの等価物には、エステルおよび酸ハロゲン化物と酸無水物などのエステル形成誘導体が挙げられる。分子量要件は酸に関連し、その等価エステルまたはエステル形成誘導体には関連しない。従って、300を上回る分子量を有するジカルボン酸のエステルまたは300を上回る分子量を有するジカルボン酸の官能性等価物は、対応する酸が約300未満の分子量を有するかぎり含まれる。ジカルボン酸は、コポリエーテルエステルポリマーの生成および本発明の組成物の中のポリマーの使用を実質的に妨げないあらゆる置換基または組み合わせを含むことが可能である。
【0020】
本明細書で用いられる「脂肪族ジカルボン酸」という用語は、飽和炭素原子に各々が結合された2個のカルボキシル基を有するカルボン酸を意味する。カルボキシル基が結合されている炭素原子は飽和されており、環の中にあり、こうした酸は脂環式である。共役不飽和を有する脂肪族酸または脂環式酸は、単独重合のゆえに、しばしば用いることができない。しかし、マレイン酸などの幾つかの不飽和酸を用いることが可能である。
【0021】
芳香族ジカルボン酸は、この用語が本明細書において用いられるとき、炭素環式芳香族環構造の中の炭素原子に各々が結合された2個のカルボキシル基を有するジカルボン酸である。両方の官能性カルボキシル基が同じ芳香族環に結合されることが必ずしも必要ではない。2個以上の環が存在する場合、それらは、脂肪族二価基または芳香族二価基あるいは−O−または−SO−などの二価基によって接続されることが可能である。
【0022】
用いることが可能である有用な代表的な脂肪族酸および脂環式酸には、セバシン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、グルタル酸、4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、2−エチルスベリン酸、シクロペンタンジカルボン酸、デカヒドロ−1,5−ナフチレンジカルボン酸、4,4’−ビシクロヘキシルジカルボン酸、デカヒドロ−2,6−ナフチレンジカルボン酸、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)カルボン酸および3,4−フランジカルボン酸が挙げられる。好ましい酸は、シクロヘキサン−ジカルボン酸およびアジピン酸である。
【0023】
代表的な芳香族ジカルボン酸には、フタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸、二安息香酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタンなどの2個のベンゼン核を有する置換ジカルボキシ化合物、p−オキシ−1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホニル二安息香酸およびC〜C12アルキルおよびハロ誘導体、アルコキシ誘導体およびアリール誘導体などのその環置換誘導体が挙げられる。芳香族ジカルボン酸も用いられることを条件として、p−(β−ヒドロキシエトキシ)安息香酸などのヒドロキシル酸も用いることが可能である。
【0024】
芳香族ジカルボン酸は本発明のために有用なコポリエーテルエステルポリマーを調製するために好ましい類である。芳香族酸の中で、8〜16の炭素原子を有する芳香族酸、特にテレフタル酸単独、またはフタル酸および/またはイソフタル酸の混合物と合わせたテレフタル酸は好ましい。
【0025】
コポリエーテルエステルは、好ましくは、上の式(II)に対応する約15〜約99重量%の短鎖エステル単位を含み、残りは上の式(I)に対応する長鎖エステル単位である。コポリエーテルエステルは、より好ましくは、約20〜約95重量%、なおより好ましくは約25〜約60重量%の短鎖エステル単位を含み、ここで、残りは長鎖エステル単位である。より好ましくは、上の式(I)および(II)においてRによって表された基の少なくとも約70%は1,4−フェニレン基であり、上の式(II)においてDによって表された基の少なくとも約70%は1,4−ブチレン基であり、1,4−フェニレン基ではないR基と1,4−ブチレン基でないD基の百分率の合計は30%を超えない。コポリエーテルエステルを製造するために第2のジカルボン酸を用いる場合、イソフタル酸は好ましく、第2の低分子量ジオールを用いる場合、1,4−ブテンジオールまたはヘキサメチレングリコールは好ましい。
【0026】
2種以上のコポリエーテルエステルエラストマーのブレンドまたは混合物を用いることが可能である。ブレンドの中で用いられるコポリエーテルエステルエラストマーは、個々に基づいて、エラストマーに関して前に開示された値内になる必要はない。しかし、2種以上のコポリエーテルエステルエラストマーのブレンドは、重み付き平均に基づいてコポリエーテルエステルに関して本明細書で記載された値に従わなければならない。例えば、2種のコポリエーテルエステルエラストマーの等量を含有する混合物において、45重量%の短鎖エステル単位の重み付き平均のために、60重量%の短鎖エステル単位を含有することが可能であるコポリエーテルエステルもあり、30重量%の短鎖エステル単位を含有することが可能であるコポリエーテルエステルもある。
【0027】
好ましくは、コポリエーテルエステルエラストマーは、テレフタル酸とイソフタル酸のエステルまたはエステルの混合物と1,4−ブタンジオールおよびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールまたはエチレンオキシド封止ポリプロピレンオキシドグリコールから調製されるか、またはテレフタル酸のエステル、例えば、ジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールおよびポリ(エチレンオキシド)グリコールから調製される。より好ましくは、コポリエーテルエステルエラストマーは、テレフタル酸のエステル、例えば、ジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールおよびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールから調製される。
【0028】
本明細書に記載されたコポリエーテルエステルエラストマーは、従来のエステル交換反応を用いることによるなどの当業者に知られている方法によって便利に製造することが可能である。好ましい手順は、触媒の存在下で芳香族酸のエステル、例えば、テレフタル酸のジメチルエステルをポリ(アルキレンオキシド)グリコールとモル過剰の低分子量ジオールである1,4−ブタンジオールと合わせて加熱し、その後、交換反応によって形成されたメタノールを蒸留除去することを含む。メタノール発生が完了するまで加熱を続ける。温度、触媒およびグリコールの過剰に応じて、この重合は、数分以内から数時間までに完了する。この製品は、以下で記載される手順によって高分子量コポリエーテルエステルに移行することができる低分子量プレポリマーの調製をもたらす。こうしたプレポリマーは、多くの代替エステル化プロセスまたはエステル交換プロセスによって調製することも可能である。例えば、長鎖グリコールは、無秩序化が起きるまで触媒の存在下で高分子量または低分子量の短鎖エステルホモポリマーまたはコポリマーと反応させることが可能である。短鎖エステルホモポリマーまたはコポリマーは、上のようにジメチルエステルと低分子量ジオールから、または遊離酸とジオールアセテートからエステル交換によって調製することが可能である。あるいは、短鎖エステルコポリマーは、適切な酸、酸無水物または酸塩化物と例えばジオールからの直接エステル化によって、または酸と環式エーテルまたはカーボネートの反応などの他のプロセスによって調製することが可能である。明らかに、プレポリマーは、長鎖グリコールの存在下で、これらのプロセスを行うことにより調製することも可能であり得る。
【0029】
その後、得られたプレポリマーは、過剰の短鎖ジオールの蒸留によって高分子量に移行される。このプロセスは「重縮合」として知られている。この蒸留中に追加のエステル交換が起きて、分子量を増加させ、コポリエーテルエステル単位の配列を無秩序化させる。最善の結果は、1,6−ビス−[3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオンアミド]−ヘキサンまたは1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス[3,5,−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル]ベンゼンなどの酸化防止剤の存在下で1mm未満の圧力および240〜260℃で2時間未満にわたりこの最終の蒸留または重縮合を行う場合に通常得られる。最も実際的な重合技術は重合反応を完了させるためにエステル交換に頼る。起きうる不可逆熱分解を伴う高温での過度な保持時間を避けるために、エステル交換反応のために触媒を用いることが有利である。多様な触媒を用いることが可能である一方で、単独でまたは酢酸マグネシウムまたは酢酸カルシウムと組み合わせて用いられるテトラブチルチタネートなどの有機チタネートは好ましい。アルカリ金属アルコキシドまたはアルカリ土類金属アルコキシドとチタネートエステルから誘導されたような複合チタネートも非常に効果的である。ランタンチタネートなどの無機チタネート、酢酸カルシウム/三酸化アンチモン混合物ならびにリチウムアルコキシドおよびマグネシウムアルコキシドは、使用できる他の触媒の代表的なものである。スタナス触媒も好ましい。
【0030】
エステル交換重合は溶媒を添加せずに溶融物で一般に行われるが、低温で塊状物からの揮発性成分の除去を促進するために不活性溶媒を用いることが可能である。この技術は、例えば、直接エステル化によるプレポリマーの調製中に特に有益である。しかし、特定の低分子量ジオール、例えばブタンジオールは、共沸蒸留によって重合中に便利に除去される。他の特殊な重合技術(例えば、ビスフェノールとビスアシルハロゲン化物およびビスアシルハロゲン化物封止線状ジオールの界面重合)は特殊なポリマーの調製のために有用な場合がある。コポリエーテルエステルポリマーの調製のあらゆる段階のために、バッチ法と連続法の両方を用いることが可能である。プレポリマーの重縮合は、真空中または不活性ガスのストリーム中で微細固体プレポリマーを加熱して遊離低分子量ジオールを除去することにより固相において実行することも可能である。この方法は、重合速度を基準として分解速度が遙かにより遅いプレポリマーの軟化点より低い温度で用いるので、分解を抑える利点を有することが考えられる。主たる欠点は、所定の重合度に達するのに要する長い時間である。
【0031】
コポリエーテルエステルエラストマーは、組み合わされたコポリエーテルエステルエラストマー、ナノ粒子状鉱物および有機紫外線安定剤の全量を基準にして約92〜約99.8重量%、または好ましくは約96〜約99.3重量%で存在する。
【0032】
本発明において用いられるナノ粒子状鉱物は、二酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化亜鉛の1種または複数種から選択される。
【0033】
鉱物は、好ましくは約10〜約175ナノメートル、または好ましくは約30〜約150nm、またはより好ましくは約50〜約125ナノメートルの数平均粒径を有する。
【0034】
ナノ粒子状鉱物は、鉱物の耐久性の特性および他の特性を改善するために添加された成分を含有してもよい。他の成分は、シリカ、アルミナ、酸化錫、酸化鉛および酸化クロムなどの含水酸化物を含んでもよい。
【0035】
特にナノ粒子状鉱物が二酸化チタンであるとき、ナノ粒子状鉱物は被膜を含んでもよい。二酸化チタンは、好ましくは無機塗料で被覆される。鉱物被覆二酸化チタンは、無機被膜の上にある有機塗料で更に被覆してもよい。好ましい無機塗料は金属酸化物を含む。有機塗料は、カルボン酸、ポリオール、アルカノールアミンおよび/またはケイ素化合物の1種または複数種を含んでもよい。
【0036】
有機塗料のために適するカルボン酸の例には、アジピン酸、テレフタル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ポリヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、サリチル酸、リンゴ酸およびマレイン酸が挙げられる。「カルボン酸」という用語は、カルボン酸のエステルおよび塩を更に意味する。
【0037】
有機塗料のために適するケイ素化合物の例には、シリケート、有機アルコキシシラン、アミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシランおよびポリヒドロキシシロキサンを含む有機シランおよび有機シロキサンが挙げられるが、それらに限定されない。適するシランは式RSi(R’)4−Xを有することが可能である。式中、Rは1〜20個の炭素原子を有する非加水分解性の脂肪族基、脂環式基または芳香族基であり、R’はアルコキシ、ハロゲン、アセトキシまたはヒドロキシ基などの1種または複数種の加水分解性基であり、Xは1、2または3である。
【0038】
有機塗料のために適する有用な適するシランには、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびそれらの2種以上の組み合わせの1種または複数種が挙げられる。他の有用なシランにおいて、Rは8〜18個の間の炭素原子を有し、R’はクロロ基、メトキシ基、エトキシ基またはヒドロキシ基の1種または複数種である。
【0039】
有機塗料が存在するとき、有機塗料は、ナノ粒子状鉱物の全重量を基準にして好ましくは約0.1〜約10重量%、またはより好ましくは約0.5〜約7重量%、またはなおより好ましくは約0.5〜約5重量%を構成する。
【0040】
適する無機塗料の例には、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、リン、亜鉛および希土類元素などの酸化物または含水酸化物を含む、金属酸化物および含水酸化物が挙げられる。好ましい金属酸化物はアルミナである。
【0041】
無機塗料は、ナノ粒子状鉱物の全重量を基準にして好ましくは約0.25〜約50重量%、またはより好ましくは約1.0〜約25重量%、またはなおより好ましくは約2〜約20重量%を構成する。
【0042】
ナノ粒子状二酸化チタンは、当業者に知られているいずれかの方法によって調製してもよい。ナノ粒子状二酸化チタンの結晶度、非晶質度または練り適性を制御するために、リン酸、金属ホスフェート、金属ハロゲン化物、金属カーボネート、金属スルフェートおよびそれらの組み合わせを用いることが可能である。前述のために適する金属には、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、錫または亜鉛が挙げられる。
【0043】
ナノ粒子状鉱物は、組み合わされたナノ粒子状鉱物、コポリエーテルエステルエラストマーおよび有機紫外線安定剤の全重量を基準にして約0.1〜約4重量%、または好ましくは約0.5〜約2重量%、またはより好ましくは約0.5〜約1重量%で存在する。
【0044】
本発明において用いられる有機UV線安定剤は、ベンゾトリアゾール光安定剤またはベンゾフェノン光安定剤などの1種または複数種のUV線吸収剤であってもよい。光安定剤は1種または複数種のヒンダードアミン型光安定剤(HALS)であってもよい。好ましいベンゾトリアゾール光安定剤はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から入手できる「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)327である。
【0045】
好ましいHALSは以下の一般式の化合物およびそれらの組み合わせである。
【0046】
【化5】

【0047】
これらの式において、R〜R(Rを含む)は独立して置換基である。適する置換基の例は、水素、エーテル基、エステル基、アミン基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、シクロアルキル基およびアリール基であり、それらの中で、置換基は次に官能基を含んでもよい。官能基の例は、アルコール、ケトン、酸無水物、イミン、シロキサン、エーテル、カルボキシル基、アルデヒド、エステル、アミド、イミド、アミン、ニトリル、エーテル、ウレタンおよびそれらのいずれかの組み合わせである。ヒンダードアミン光安定剤はポリマーまたはオリゴマーの一部を形成してもよい。
【0048】
好ましくは、HALSは、置換ピペリジン化合物から誘導された化合物、特にアルキル置換ピペリジル化合物、ピペリジニル化合物またはピペラジノン化合物および置換アルコキシピペリジニル化合物から誘導されたあらゆる化合物である。こうした化合物の例は、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ブチルマロネート、ジ−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)770)、N−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとコハク酸のオリゴマー(「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)622)、シアヌル酸とN,N−ジ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレンジアミンのオリゴマー、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)スクシネート、ビス−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート(「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)123)、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート(「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)765)、「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)144、「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)XT850、テトラキス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサン−1,6−ジアミン(「チマソーブ(Chimasorb)」(登録商標)T5)、N−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミン、2,2’−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノ]−ビス−[エタノール]、ポリ((6−モルホリン−S−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノヘキサメチレン−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノ)(「シアソーブ(Ciasorb)」(登録商標)UV3346)、5−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2−シクロ−ウンデシル−オキサゾール(「ホスタビン(Hostavin)」(登録商標)N20)、1,1’−(1,2−エタン−ジ−イル)−ビス−(3,3’,5,5’−テトラメチル−ピペラジノン)、8−アセチル−3−ドセシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ(4,5)デカン−2,4−ジオン、ポリメチルプロピル−3−オキシ−[4(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサン(「ウバシル(Uvasil)」(登録商標)299)、1,2,3,4−ブタン−テトラカルボン酸−1,2,3−トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−4−トリデシルエステル、α−メチルスチレン−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)マレイミドとN−ステアリルマレイミドのコポリマー、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸,β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノールを有するポリマー、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルエステル(「マーク(Mark)」(登録商標)LA63)、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノール、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸を有するβ,β,β’,β’−テトラメチル−ポリマー、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルエステル(「マーク(Mark)」(登録商標)LA68)、D−グルシトール,1,3:2,4−ビス−O−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニリデン)−(HALS7)、7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]−ヘンエイコサン−21−オン−2,2,4,4−テトラメチル−20−(オキシラニルメチル)のオリゴマー(「ホスタビン(Hostavin)」(登録商標)N30)、プロパン二酸,[(4−メトキシフェニル)メチレン]−,ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル(「サンデュボア(Sanduvor)」(登録商標)PR31)、ホルムアミド,N,N’−1,6−ヘキサンジイルビス[N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)(「ウビヌール(Uvinul)」(登録商標)4050H)、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン,N,N”’−[1,2−エタンジイルビス[[[4,6−ビス[ブチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]イミノ]−3,1−プロパンジイル]]−ビス[N’,N”−ジブチル−N’,N”−ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジニル)(「チマソーブ(Chimassorb)」(登録商標)119)、ポリ[[6−[(1,1,3,33−テトラメチルブチル)]アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]](「チマソーブ(Chimassorb)」(登録商標)994)、1,5−ジオキサスピロ(5,5)ウンデカン3,3−ジカルボン酸,ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ペリジニル)エステル(「シアソーブ(Cyasorb)」(登録商標)UV−500)、1,5−ジオキサスピロ(5,5)ウンデカン3,3−ジカルボン酸,ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ペリジニル)エステル(「シアソーブ(Cyasorb)」(登録商標)UV−516)、N−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−N−アミノ−オキサミド、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン,1,5,8,12−テトラキス[2’,4’−ビス(1”,2”,2”,6”,6”−ペンタメチル−4”−ピペリジニル(ブチル)アミノ)−1’,3’,5’−トリアジン−6’−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、HALS PB−41(クラリアント・フニング(Clariant Huningue S.A.)、「ニロスタブ(Nylostab)」(登録商標)S−EED(クラリアント・フニング(Clariant Huningue S.A.)、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ピロリジン−2,5−ジオン、「ウバソーブ(Uvasorb)」(登録商標)HA88、1,1’−(1,2−エタン−ジ−イル)−ビス−(3,3’,5,5’−テトラ−メチル−ピペラジノン(「グッドライト(Good−rite)」(登録商標)3034)、1,1’1”−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイルトリス((シクロヘキシルイミノ)−2,1−エタンジイル)トリス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン(「グッドライト(Good−rite)」(登録商標)3150)および1,1’,1”−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイルトリス((シクロヘキシルイミノ)−2,1−エタンジイル)トリス(3,3,4,5,5−テトラメチルピペラジノン(「グッドライト(Good−rite)」(登録商標)3159)である。(「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)および「チマソーブ(Chimassorb)」(登録商標)材料はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から入手でき、「シアソーブ(Cyasorb)」(登録商標)材料はサイテック・テクノロジー・コーポレーション(Cytec Technology Corp.)から入手でき、「ウバシル(Uvasil)」(登録商標)材料はグレート・レークス・ケミカル・コーポレーション(Great Lakes Chemical Corp.)から入手でき、「サンデュボア(Sanduvor)」(登録商標)、「ホスタビン(Hostavin)」(登録商標)および「ニロスタブ(Nylostab)」(登録商標)材料はクラリアント・コーポレーション((Clariant Corp.)から入手でき、「ウビヌール(Uvinul)」(登録商標)材料はバスフ(BASF)から入手でき、「ウバソーブ(Uvasorb)」(登録商標)材料はパーテシパジオニ・インダストリアリ(Partecipazioni Industriali)から入手でき、「グッドライト(Good−rite)」(登録商標)材料はB.F.グッドリッチ・カンパニー(B.F.Goodrich Co.)から入手でき、「マーク(Mark)」(登録商標)材料は株式会社ADEKA(Asahi Denka Co.)から入手できる。
【0049】
好ましいHALSには、約1000を上回る、好ましくは約2000を上回る分子量を有する高分子量オリゴマーHALSまたは高分子量ポリマーHALSが挙げられる。商用オリゴマーHALSの例には、「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)622、「ウバシル(Uvasil)」(登録商標)299、「シアソーブ(Cyasorb)」(登録商標)UV3346、「シアソーブ(Cyasorb)」(登録商標)UV3529および「チマソーブ(Chimassorb)」(登録商標)944が挙げられる。
【0050】
有機光安定剤は、組み合わされた有機紫外線安定剤、コポリエーテルエステルエラストマーおよびナノ粒子状鉱物の合計重量を基準にして約0.1〜約4重量%、または好ましくは約0.2〜約2重量%、またはより好ましくは約0.3〜約1重量%で存在する。
【0051】
本発明の組成物は、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、充填剤、強化剤、粘度調整剤、核剤、可塑剤、離型剤、難燃剤、澱粉、擦傷調整剤および衝撃性改良剤などの追加の添加剤を更に含んでもよい。追加の添加剤を用いるとき、追加の添加剤は、組成物の全重量を基準にして好ましくは約0.1〜約10重量%で存在する。好ましい添加剤はカーボンブラックである。カーボンブラックを用いるとき、カーボンブラックは、組成物の全重量を基準にして好ましくは約0.1〜約4重量%、またはより好ましくは約0.25〜約3.5重量%、またはなおより好ましくは約0.5〜約3重量%で存在する。
【0052】
本発明の組成物は、ブレンドが一体的な統一体を形成するように、高分子成分のすべてが互い内でよく分散され、非高分子成分のすべてがポリマーマトリックスに均質に分散され、ポリマーマトリックスによって結合される溶融混合ブレンドである。本発明の高分子成分と非高分子成分を組み合わせるためにいずれかの溶融混合方法を用いてもよい。ナノ粒子状鉱物は、好ましくは、マスターバッチとしてコポリエーテルエステルなどのポリマー中の成分に添加される。
【0053】
例えば、高分子成分および非高分子成分は、単一工程添加を通してすべて一度に、または段階的な方式で、例えば、一軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機、ブレンダー、ニーダーまたはバンバリーミキサーなどの溶融ミキサーに添加してもよく、その後、溶融混合してもよい。段階的な方式で高分子成分および非高分子成分を添加するとき、高分子成分および非高分子成分の一部は最初に添加され、溶融混合され、残りの高分子成分および非高分子成分は後で添加され、よく混合された組成物を得るまで更に溶融混合される。
【0054】
本発明の組成物は、例えば、射出成形、ブロー成形、押出、熱成形、溶融キャスティング、回転成形およびスラッシュ成形などの当業者に知られている方法を用いて物品に成形してもよい。異なる材料から製造された物品上に組成物をオーバーモールドしてもよい。組成物をフィルムに押し出してもよい。組成物をモノフィラメントに成形してもよい。
【0055】
本発明の組成物を含む物品には、エアーバッグドア、自動車ダッシュボード部品および他の成形された自動車内装部品、チューブ、オフィス家具、屋内家具および屋外家具などの家具部品、フットウェア部品、屋根ライナー、屋外服飾品、水管理システム部品およびケーブルとワイヤの外被を挙げることが可能である。好ましい物品は、本発明の組成物から成形された車両ダッシュボードスラッシュである。
【実施例】
【0056】
表1の成分を最初にドライブレンドし、次に約220〜235℃で設定されたバレル温度で運転している二軸スクリュー押出機内で溶融ブレンドした。溶融温度は約225℃であった。使用の前に、実施例1および比較例1〜3の調製において、マスターバッチが20重量%の二酸化チタンと80重量%の「ハイトレル(Hytrel)」(登録商標)4556を含有するように、ナノ粒子状二酸化チタンをブラベンダー(Brabender)ミキサー内で「ハイトレル(Hytrel)」(登録商標)4556とブレンドすることによりナノ粒子状二酸化チタンをマスターバッチに形成させた。
【0057】
表1において、「コポリエーテルエステルエラストマー」は、本願特許出願人によって供給された「ハイトレル(Hytrel)」(登録商標)4556コポリエーテルエステルエラストマーを指し、「ナノ粒子状二酸化チタン」は、ドイツ国ズイスブルグのサッチトレーベン・ケミー(Sachtleben Chemie(Duisburg,Germany))によって供給されたRM130Fを指し、「有機UV線安定剤」は、両方がニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY))によって供給されたヒンダードアミン光安定剤である「チマソーブ(Chimasorb)」(登録商標)944と「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)770の50/50重量%混合物を指す。
【0058】
実施例1および比較例1〜3の組成物を約225℃および約3000psiで運転しているプレス内で厚さ約4〜7ミルのフィルムに成形した。フィルムをミクロ引張ASTM D638型Vダンベルに切断した。
【0059】
ASTM D638を用いてミクロ引張ダンベルの破断点引張強度および破断点伸びを測定した。UVA340バルブを備えQ−パネルラボプロダクツ(Q−Panel lab Products)によって供給されたQUV促進暴露試験機内で紫外線を試験片に照射した。サンプルを周期的に取り出し、サンプルの破断点伸び特性を表2に示し、破断点引張強度特性を表3に示している。測定を2インチ/分の引張速度で行った。各サンプルの暴露の日数を表に示している。暴露前の測定(表2および3において「0日」として示している)に基づく物理的特性の%保持率を計算し、表2および3に示している。物理的特性を測定することが可能でない点までサンプルが劣化したとき、これを測定しなかった(「n/m」)として表に示している。
【0060】
比較例1は、安定剤を含有していないコポリエーテルエステルエラストマーのサンプルにUV線を照射すると物理的特性の急速な劣化を示すことを示している。比較例2は、ナノ粒子状二酸化チタンを含有するコポリエーテルエステル組成物が物理的特性の急速な劣化を同様に示すことを示している。比較例3は、有機UV安定剤を含有するコポリエーテルエステル組成物が物理的特性のより急速でないが、なお著しい劣化を有することを示している。実施例1は、有機UV安定剤とナノ粒子状二酸化チタンの両方を含有するコポリエーテルエステル組成物がUV線を100日にわたり照射後でさえ物理的特性の優れた保持率を有することを示している。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光安定化コポリエーテルエステル組成物であって、
該組成物は、以下の成分(a)約92〜約99.8重量%、(b)約0.1〜約4重量%及び(c)約0.1〜約4重量%の溶融混合ブレンドを含み、
成分(a)は、エステル結合を通して頭−尾接合した多数の反復する長鎖エステル単位と短鎖エステル単位とを含む少なくとも1種のコポリエーテルエステルであって、
前記長鎖エステル単位が式(I)によって表され、
【化1】

前記短鎖エステル単位が式(II)によって表され、
【化2】

式中、Gは、約400〜約6000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端ヒドロキシ基の除去後に残る二価基であり、Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からのカルボキシル基の除去後に残る二価基であり、Dは、約250未満の分子量を有するジオールからのヒドロキシル基の除去後に残る二価基であり、前記短鎖エステル単位が前記コポリエーテルエステルの約15〜約99重量%を構成し、前記長鎖エステル単位が前記コポリエーテルエステルの約1〜約85重量%を構成するものであるコポリエーテルエステルであり、
成分(b)は、二酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化亜鉛から選択された少なくとも1種のナノ粒子状鉱物であり、
成分(c)は、少なくとも1種の有機紫外線安定剤であり、
全ての重量%が(a)+(b)+(c)の合計重量を基準にしていることを特徴とする光安定化コポリエーテルエステル組成物。
【請求項2】
前記ポリ(アルキレンオキシド)グリコールがポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールであり、前記ジカルボン酸がイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸またはそれらの混合物であり、前記ジオールが1,4−ブタンジオールであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ナノ粒子状鉱物が二酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ナノ粒子状鉱物が酸化セリウムであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ナノ粒子状鉱物が酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記紫外線安定剤が少なくとも1種のヒンダードアミン光安定剤であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノ粒子状鉱物が約10〜約175ナノメートルの数平均粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ナノ粒子状鉱物が約50〜約125ナノメートルの数平均粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記二酸化チタンが無機塗料で被覆されていることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記二酸化チタンが有機塗料で更に被覆されていることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記有機塗料が少なくとも1種の有機ケイ素化合物を含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記塗料が少なくとも1種のカルボン酸を含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記塗料がオクチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ポリヒドロキシステアリン酸またはポリヒドロキシシロキサンの1種または複数種であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記無機塗料がケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、リン、亜鉛および/または希土類元素の少なくとも1種の酸化物または含水酸化物であることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記無機塗料がアルミナであることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物から成形されることを特徴とする成形品。
【請求項17】
スラッシュ成形によって請求項1に記載の組成物から成形されることを特徴とする物品。
【請求項18】
車両のダッシュボードの形態を取っていることを特徴とする請求項16に記載の物品。
【請求項19】
エアバッグドアの形態を取っていることを特徴とする請求項16に記載の物品。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物から成形されることを特徴とするモノフィラメント。
【請求項21】
請求項1に記載の組成物から成形されることを特徴とする押出フィルム。

【公表番号】特表2008−528790(P2008−528790A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554161(P2007−554161)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/003329
【国際公開番号】WO2006/083817
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】