説明

光定着用トナー、並びに、これを用いた電子写真用現像剤及び画像形成方法

【課題】赤外線吸収剤に起因する色域シフトを補正し、色再現性に優れた光定着用トナーを提供すること。
【解決手段】L***表色系におけるa*が0より小さい赤外線吸収剤と、トナー色を決定する主色着色剤と、結着樹脂とを少なくとも含む光定着用トナーにおいて、前記主色着色剤が、イエロー着色剤、シアン着色剤、ブラック着色剤、ブルー着色剤、または、グリーン着色剤のいずれかであり、且つ、マゼンタ着色剤および/またはレッド着色剤からなる補色着色剤を含むことを特徴とする光定着用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられる光定着用トナー、並びに、これを用いた電子写真用現像剤及び画像形成方法
【背景技術】
【0002】
高速で画像の形成が可能な電子写真方式の画像形成装置では、フラッシュランプ等により光を照射することによりトナーを溶融し、用紙等の記録媒体上に転写されたトナー像を定着する光定着方式が利用されている。
光定着方式においては、従来の熱定着方式のトナーをそのまま用いても光吸収率が低いため良好な定着性が得難い。
【0003】
従って、光定着方式に利用されるカラートナーでは、光吸収率を向上させるために赤外線吸収剤が添加されている。しかし、赤外線吸収剤は、可視域で完全に透明ではなく薄い緑色や茶色等に着色しているため、各色のトナーの重ね合わせにより所望の色を表現するカラー画像の形成に際しては、色再現域が狭くなり、所望の色を再現できなくなる問題が発生する。
例えば、イエロートナーに可視域の長波長側(約500〜700nm)に若干の吸収を有する赤外線吸収剤を添加した場合、イエロートナーの色は、本来よりもやや青味を帯びた黄色に色域がシフトしてしまう。
【0004】
このような問題を解決するために、イエロートナーからなるトナー像を、記録媒体上に転写・積層される各色のトナー像の最上層に位置するように転写・積層することで、定着性を確保しつつ、このイエロートナーに添加する赤外線吸収剤の量を減らし、更に色再現性も向上させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−174924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法を利用しても、イエロートナーには赤外線吸収剤が含まれるため色再現域が狭くなることは避けられない。
加えて、イエロートナー以外の他の赤外線吸収剤を含むトナーにおいても程度の差はあれ、同様の問題が発生するため、複数の色のトナーを用いてカラー画像を形成する場合、いずれか1色のトナーの色調のみを補正しても、形成されるカラー画像の色再現性が悪化してしまうことは避けれない。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、赤外線吸収剤に起因する色域シフトを補正し、色再現性に優れた光定着用トナー、並びに、これを用いた電子写真用現像剤および画像形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1>
***表色系におけるa*が0より小さい赤外線吸収剤と、トナー色を決定する主色着色剤と、結着樹脂とを少なくとも含む光定着用トナーにおいて、
前記主色着色剤が、イエロー着色剤、シアン着色剤、ブラック着色剤、ブルー着色剤、または、グリーン着色剤のいずれかであり、且つ、
マゼンタ着色剤および/またはレッド着色剤からなる補色着色剤を含むことを特徴とする光定着用トナー。
【0008】
<2>
前記主色着色剤が、イエロー着色剤であることを特徴とする<1>に記載の光定着用トナー。
【0009】
<3>
前記赤外線吸収剤の含有量に対する前記補色着色剤の含有量の割合が、重量比で2.0以下であることを特徴とする<1>または<2>に記載の光定着用トナー。
【0010】
<4>
前記主色着色剤がイエロー着色剤であり、該イエロー着色剤の含有量に対する前記補色着色剤の含有量の割合が、重量比で0.25以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1つに記載の光定着用トナー。
【0011】
<5>
<1>〜<4>のいずれか1つに記載の光定着用トナーを含む電子写真用現像剤。
【0012】
<6>
潜像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像担持体表面に形成された静電潜像を、赤外線吸収剤と、着色剤と、結着樹脂とを少なくとも含む光定着用トナーを含む現像剤を少なくとも用いて現像しトナー像を形成する現像工程と、前記潜像担持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を記録媒体表面に光定着し、画像を形成する定着工程と、を含む画像形成方法において、
前記現像剤として、<5>に記載の電子写真用現像剤を用いることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0013】
以上に説明したように本発明によれば、赤外線吸収剤に起因する色域シフトを補正し、色再現性に優れた光定着用トナー、並びに、これを用いた電子写真用現像剤および画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(光定着用トナー)
本発明の光定着用トナー(以下、単に「トナー」と略す場合がある)は、L***表色系におけるa*が0より小さい赤外線吸収剤と、トナー色を決定する主色着色剤と、結着樹脂とを少なくとも含む光定着用トナーにおいて、マゼンタ着色剤および/またはレッド着色剤からなる補色着色剤を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のトナーにおいては、赤外線吸収剤に起因する色域シフトが、補色着色剤によって補正されるため、色再現性に優れた光定着用トナーを得ることができる。
なお、L***表色系とは、JISZ8729に規定される表色系を意味する。また、本発明において、「主色着色剤」とは、トナー色を決定するもので、マゼンタおよびレッドを除く公知の着色剤が利用でき、主色着色剤としては実用上最も多用されているイエロー、シアン、ブラック、ブルー、または、グリーンのいずれかの色の着色剤を利用することができる。但し、当該「トナー色」とは、相対的に幅広い色域全体の色を意味するもので、例えば、黄色の中でも赤味がかった黄色や、青味がかった黄色等、同じ黄色でも微妙な色調の違いまでも区別するほど狭い色域の色を意味するものではなく、微妙な色調の違いによらず一見して黄色と大まかに分類できる程度の色域の色を意味する。
【0016】
また、「補色着色剤」とは、赤外線吸収剤の添加による色域のずれを、赤外線吸収剤が添加されない場合の本来の色に近づけるために添加される着色剤を意味し、マゼンタおよび/またはレッドの着色剤が利用される。すなわち、これら2色の着色剤は、L***表色系におけるa*が0よりも大きいため、L***表色系におけるa*が0より小さい赤外線吸収剤の添加による色域シフトを打ち消す機能を有するものである。なお、マゼンタ着色剤およびレッド着色剤の双方共に、色域シフトの補正という点では、トナーに対する単位添加量当たりほぼ同等の効果を有するものである。
【0017】
このように、本発明のトナーでは、赤外線吸収剤による色域シフトを、主色着色剤と全く色域の異なる補色着色剤を用いて補正するため、主色着色剤および補色着色剤として市販の着色剤を用いても、色域シフトの補正が容易である。また、本発明のトナーは、マゼンタおよびレッド以外の全てのトナー色のトナーに適用できるため、複数の色のトナーを用いてカラー画像を形成する場合に、(マゼンタおよびレッドを除く)各色のトナーとして本発明のトナーを用いればカラー画像の色再現性をより向上させることができる。
【0018】
なお、色域シフトの程度は、使用する赤外線吸収剤の種類や、主色着色剤の色や含有量等にも左右されるが、トナー中に含まれる赤外線吸収剤の量に強く左右される傾向にある。このため色域シフトをより正確に補正するためには、赤外線吸収剤の含有量(IR)に対する補色着色剤の含有量(SC)の割合(SC/IR比)が、重量比で2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。
SC/IR比が2.0を超える場合には補色着色剤による色域シフトの打ち消し効果が強くなり過ぎてしまい、いずれの場合においても色再現性が悪化してしまう場合がある。
【0019】
一方、主色着色剤と補色着色剤との組み合わせのように全く色の異なる2色の着色剤を混合した場合には、通常は色が濁ってしまう。しかし、本発明者らが鋭意検討したところ、このような濁りの発生は、2色の着色剤の混合割合が1:1前後である場合に顕著にみられる現象であり、本発明のトナーでは、トナー中の主色着色剤の含有量に対する補色着色剤の含有量が相対的に微量であるためこのような濁りは起こり難いことを確認した。なお、濁りを確実に防止する場合には、主色着色剤の含有量に対する補色着色剤の含有量の割合を、色域シフトの補正がある程度確保できる範囲内で減らすことが好ましい。
【0020】
なお、色の濁りを確実に防止するためには、主色着色剤がイエロー着色剤である場合には、イエロー着色剤の含有量(MCy)に対する補色着色剤(SC)の含有量の割合(SC/MCy)が、重量比で0.25以下であることが好ましく、0.1以下であることが好ましい。
イエロー着色剤の含有量(MCy)に対する補色着色剤(SC)の含有量の割合(SC/MCy)が、上述した値を超える場合には濁りが発生してしまう場合がある。
【0021】
以上に説明したような本発明のトナーのみを用いて電子写真法により紙等の記録媒体表面に形成される単色ベタ画像の色域は、赤外線吸収剤を含まない熱定着方式に用いられる色域シフトの無いトナーを用いて形成された単色ベタ画像とほぼ同様の色域に調整することができる。
【0022】
次に、本発明のトナーについて、これを構成する各種材料や製法についてより詳細に説明する。
−着色剤(主色着色剤および補色着色剤)−
本発明のトナーには、主色着色剤および補色着色剤として市販されている公知の顔料等の着色剤が利用できる。
例えば、黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、Raven7000、Raven5750、Raven5250、Raven5000 ULTRA II、Raven3500、Raven2000、Raven1500、Raven1250、Raven1200、Raven1190 ULTRA II、Raven1170、Raven1255、Raven1080(以上、コロンビア社製)、Regal400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、Black Pearls L、Black Pearls 1300、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black 18、Color Black FW200、Color Black S150、Color BlackS160、Color Black S170、Printex35、PrintexU、PrintexV、rintex140U、Printex140V、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等が挙げられる。
【0023】
シアン顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigmet Blue−3、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:34、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられる。
【0024】
イエロー顔料としては、C.I.Pigment Yellow−1、C.I.Pigment Yellow−2、C.I.Pigment Yellow−3、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−73、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−75、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられる。
【0025】
マゼンタ顔料としては、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.PigmentRed 48、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.PigmentRed 57、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 123、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 202等が挙げられる。
【0026】
レッド顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 9、C.I.Pigment Red 11、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 81、C.I.Pigment Red 97、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 123、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 149、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 177、C.I.Pigment Red 180、C.I.Pigment Red 192、C.I.Pigment Red 209、C.I.Pigment Red 213、C.I.Pigment Red 215、C.I.Pigment Red 216、C.I.Pigment Red 217、C.I.Pigment Red 220、C.I.Pigment Red 223、C.I.Pigment Red 224、C.I.Pigment Red 226、C.I.Pigment Red 227、C.I.Pigment Red 228、C.I.Pigment Red 240、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 255、C.I.Pigment Red 264、C.I.Pigment Red 270、C.I.Pigment Red 272、等が挙げられる。
【0027】
本発明のトナーに含まれる主色着色剤の含有量(総量)は特に限定されないが、0.1〜20重量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜15重量%の範囲内であることがより好ましい。
また、本発明のトナーに含まれる補色着色剤の含有量(総量)は、色域シフトの補正や濁りが防止できるように赤外線吸収剤や主色着色剤に対する配合割合に留意する必要がある。この観点からは、主色着色剤の含有量に対する補色着色剤の含有量の割合は0.25以下が好ましい。
【0028】
−赤外線吸収剤−
本発明のトナーには、赤外線吸収剤として、L***表色系におけるa*が0より小さく、(分光光度計により測定した際に)750〜2000nmの近赤外領域に少なくとも1つ以上の強い光吸収ピークを有するものが用いられる。
【0029】
このような赤外線吸収剤であれば、公知の無機材料や有機材料等を利用することができるが、具体的には以下のような材料を利用することができる。
例えば、赤外線吸収剤としては、オニウム系化合物(アミニウム誘導体、ジイモニウム誘導体)、シアニン化合物、フタロシアニン系化合物、イッテルビウム化合物等を利用することができる。
これらの赤外線吸収剤の中でも、特に、オニウム系化合物(アミニウム誘導体、ジイモニウム誘導体)、フタロシアニン誘導体がフラッシュ定着のような光定着方式における赤外線の吸収効率が高く、トナーの定着性を向上させることができるため望ましい。さらに、好ましくはフタロシアニン誘導体とオニウム系化合物(アミニウム誘導体、ジイモニウム誘導体)とを併用することにより、それぞれの材料の補間によって、着色を最も少なくでき、さらに定着性も良好である。
なお、市販品としては、例えば、フタロシアニン化合物としてYKR−5010(山本化成社製)、オニウム化合物としてAM1(帝国化学社製)、IRG003(日本化薬社製)、シアニン化合物としてCTP−1(富士写真フイルム社製)等を利用することができる。
【0030】
トナー中に含まれる赤外線吸収剤の含有量(総量)はトナー色によりトナーの赤外線吸収効率が異なるため一概には特定できないが、0.01〜15重量%の範囲内であることが好ましく、0.1〜5重量%の範囲内であることが好ましく、0.25〜1重量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0031】
赤外線吸収剤の含有量が0.01重量%未満の場合には、光定着した際に、トナーが赤外線を十分に吸収することができないため、定着不良が発生する場合がある。また、赤外線吸収剤の含有量が15重量%を超える場合には、赤外線吸収剤による着色効果が顕著になり、赤外線吸収剤に起因する色域シフトを、これを補正するために添加される補色着色剤により打ち消すことが困難になる場合がある。
【0032】
また、本発明に用いられる赤外線吸収剤は、その表面がカップリング剤等により処理されていてもよい。この場合、赤外線吸収剤100重量部に対し、0.01〜20重量部の範囲内、好ましくは0.05〜10重量部の範囲内、さらに好ましくは0.1〜5重量部の範囲内でカップリング剤を用いて処理することが好ましい。
【0033】
−結着樹脂−
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、公知の樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、ポリ乳酸樹脂等を用いることができ、特にポリエステル樹脂が好ましい。
【0034】
本発明のトナーはフラッシュ定着等の光定着方式に用いられるものである。このため、本発明のトナーに用いられる結着樹脂の数平均分子量Mnは、ヒートロール等を用いた熱定着方式に用いられるトナーに含まれる結着樹脂と異なり耐オフセット性をを考慮することなく、シャープメルト性の点で選択することができる。具体的には、数平均分子量Mnは、1000〜2500の範囲内であることが好ましく、1200〜1500の範囲内であることが特に好ましい。数平均分子量Mnが1000未満の場合には、光定着時に結着樹脂が昇華し消臭用の脱煙フィルタに詰まってしまう場合がある。また、数平均分子量Mnが2500を超える場合には定着性が劣化してしまう場合がある。
【0035】
−その他の成分−
本発明のトナーには、赤外線吸収剤、主色着色剤、補色着色剤、および、結着樹脂以外にも、必要に応じて他の成分(ワックス類、微粒子、帯電制御剤等)を内添したり外添したりすることができる。
例えば、公知のポリエチレン、ポリプロピレン、エステルワックス、カルナバ、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、ライスワックス、ポリエステルワックス、ポリグリセリンワックスなどの汎用のワックス類を併用することができる。
【0036】
また、本発明のトナーは、流動性向上剤等の白色の無機微粒子を混合して用いることもできる。トナーに混合される割合は0.01〜5重量部の範囲内が好ましく、0.01〜2.0重量部の範囲内がより好ましい。このような無機微粒子を構成する材料としては例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素などが挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好ましく、これに、チタン、樹脂微粉、アルミナ等の公知の材料を併用することもできる。また、クリーニング活剤としてステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の微粒子粉末をトナーに添加してもよい。
【0037】
また、帯電制御剤としては、公知のカリックスアレン、ニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、アミノ基含有のポリマー、含金属アゾ染料、サリチル酸の錯化合物、フェノール化合物、アゾクロム系、アゾ亜鉛系などが使用できる。その他にも、イエロートナーに磁性を付与するために、鉄粉、マグネタイト、フェライト等の磁性材料を使用することもできる。
【0038】
−製造方法−
次に、本発明のトナーの製造方法について説明する。本発明のトナーは、粉砕法や重合法等の公知のトナー製造方法と同様の方法で作製することが可能である。
粉砕法を利用する場合には、例えば以下のように本発明のトナーを作製することができる。まず、上述の主色着色剤、補色着色剤、赤外線吸収剤および結着樹脂に、必要に応じてWAX組成物、帯電制御剤などの成分を混合した後、ニーダー、押し出し機などを用いて上記材料を溶融混練する。この後、得られた溶融混錬物を粗粉砕した後、ジェットミル等で微粉砕し、風力分級機により、目的とする粒径のトナー粒子を得る。さらに、必要に応じてこのトナー粒子に外添剤を添加して、本発明のトナーを得ることができる。
【0039】
また、重合法を利用する場合には、主に懸濁重合法あるいは乳化重合法が利用できる。
懸濁重合法を利用して本発明のトナーを作製する場合には、例えば以下のように本発明のトナーを作製することができる。まず、上述の主色着色剤、補色着色剤、赤外線吸収剤に、スチレン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのモノマー、ジビニルベンゼンなどの架橋剤、ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤、重合開始剤に加えて、必要に応じて、帯電制御剤、WAX組成物などをさらに混合してモノマー組成物を作製する。
その後、リン酸三カルシウム、ポリビニルアルコール等の懸濁安定剤、界面活性剤が入った水相中に、前記モノマ組成物を投入し、ローターステータ式乳化機、高圧式乳化機、超音波式乳化機などを用いてエマルションを作製した後、加熱によりモノマーの重合を行い、粒子を得る。重合終了後、得られた粒子の洗浄、乾燥を行い、必要に応じて外添剤を添加して本発明のトナーを得ることができる。
【0040】
また、乳化重合法で作製する場合には、例えば以下のように本発明のトナーを作製することができる。まず、過硫酸カリウムなどの水溶性重合開始剤を溶解させた水中に、スチレン、ブチルアクリレート、2エチルヘキシルアクリレートなどのモノマーを加え、さらに必要に応じてドレシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を添加し、攪拌を行いながら加熱することにより重合を行い、樹脂粒子を得る。
その後、上述の主色着色剤、補色着色剤および赤外線吸収剤に加えて、さらに必要に応じて、帯電制御剤、WAX組成物などの粉末を樹脂粒子が分散したサスペンション中に添加し、サスペンションのpH、攪拌強度、温度などを調整することにより樹脂粒子と、主色着色剤粉末、補色着色剤着剤粉末および赤外線吸収剤粉末などをヘテロ凝集させてヘテロ凝集体を得る。さらに、反応系を樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して、ヘテロ凝集体を融着させトナー粒子を得る。その後、このトナー粒子の洗浄、乾燥を行い、必要に応じて外添剤を添加して本発明のトナーを得ることができる。
【0041】
(電子写真用現像剤)
次に、本発明の電子写真用現像剤について説明する。本発明の電子写真用現像剤(以下、「現像剤」と略す場合がある)は、本発明のトナーからなる一成分現像剤、あるいは、キャリアと本発明のトナーとからなる二成分現像剤のいずれであってもよい。以下、本発明の現像剤が二成分現像剤である場合について詳細に説明する。
【0042】
上記二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができる。例えば芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリアを挙げることができる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0043】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
導電材料としては、金、銀、銅といった金属やカーボンブラック、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、カーボンブラック等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であることが好ましい。キャリアの芯材の体積平均粒径としては、一般的には10〜500μmであり、好ましくは30〜100μmである。
【0046】
またキャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、前記被覆樹脂、および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して適宜選択すればよい。
【0047】
具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられる。
【0048】
前記二成分現像剤における本発明のトナーと上記キャリアとの混合比(重量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲であり、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
【0049】
また、本発明の現像剤は、抵抗値が108〜1015Ωの範囲であるキャリアを用いる時には、トナー濃度が3重量%〜15重量%の範囲内となるようにして使用することが望ましい。また、このようにして調整された現像剤の抵抗値は、1010Ω以上とすることが好ましい。このような範囲内に、キャリアの抵抗値、トナー濃度、および、現像剤の抵抗値を調整することにより良好な帯電量を維持することができる。
【0050】
(画像形成方法)
次に、本発明の画像形成方法について説明する。本発明の画像形成方法は、本発明のトナー(これを含む現像剤)を少なくとも用いたものであれば特に限定されないが、具体的には以下のような画像形成方法であることが好ましい。
すなわち、本発明の画像形成方法は、潜像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像担持体表面に形成された静電潜像を、現像剤により現像しトナー像を形成する現像工程と、前記潜像担持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を記録媒体表面に光定着し、画像を形成する定着工程と、を含むものであることが好ましい。この際、現像剤としては本発明のトナーを含む現像剤が少なくとも1色について必ず用いられる。
【0051】
また、カラー画像の形成に際しては2色以上のトナー(現像剤)が用いられるが、この場合、1色のみならず2色以上、さらには、レッドおよびマゼンタ色以外の全ての色のトナー(現像剤)が本発明のトナー(現像剤)であることが好ましい。これにより、形成されるカラー画像の色再現性をより向上させることができる。
【0052】
上述の各工程は、いずれも従来の画像形成方法で採用されている公知の方法により行なうことができる。光定着に際しては、例えば、フラッシュ定着方式、赤外線照射定着方式等の公知の光定着方式を利用できる。また、本発明の画像形成方法は、例えば、潜像担持体表面をクリーニングするクリーニング工程等、上記した工程以外の工程を含むものであってもよい。
【0053】
本発明の画像形成方法による画像の形成は、潜像担持体として電子写真感光体を利用した場合、例えば、以下のように行うことができる。まず、電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等により一様に帯電した後、露光し、静電潜像を形成する。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、静電潜像にトナーの粒子を付着させ、電子写真感光体上にトナー像を形成する。形成されたトナー像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の被転写体表面に転写される。さらに、被転写体表面に転写されたトナー像は、光定着器により光定着され、記録媒体上に画像が形成される。
なお、感光体としては、一般に、アモルファスシリコン、セレンなど無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチンなど有機感光体を用いることができるが、特に、長寿命であることからアモルファスシリコン感光体が好ましい。
【0054】
このような画像形成に際し、例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のトナーを用いる場合、光定着は各色のカラートナー像を記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、4色全てのカラートナー像を積層した状態で記録媒体に転写した後、一度に同時に行ってもよい。また、この場合、マゼンタトナーを除く少なくとも1色のトナーとして本発明のトナーが用いられるが、マゼンタトナーを除く3色のトナー全てが本発明のトナーであることが好ましい。
【0055】
光定着の際の光エネルギー(以下、「フラッシュエネルギー」と称することがある)としては、各色のカラートナー像毎に転写し光定着を行なう場合(以下、「単色光定着」と称することがある)には、1〜3J/cm2程度の範囲内とすることが好ましく、4色のカラートナー像を積層した状態で転写し一度に光定着を行なう場合(以下、「4色一括光定着」と称することがある)には、2〜7J/cm2程度の範囲内とすることが好ましい。
フラッシュエネルギーが、単色光定着において1J/cm2未満、4色一括光定着において2J/cm2未満の場合には良好に定着できない場合がある。一方、単色光定着において3J/cm2を超える場合や、4色一括光定着において7J/cm2を超える場合には、トナーボイドや、記録媒体の焦げ等が発生する場合がある。
【0056】
光定着に際し用いられる光定着器としては、水銀ランプ、ハロゲンランプや、キセノンランプ等、近赤外域の赤外線を照射することができる光源(ランプ)を利用でき、用いるランプは1つであってもよいし、2以上であってもよい。
なお、本発明に用いられる赤外線吸収剤の近赤外域における光吸収効率をより効果的に高め、良好な定着性が得られる点から、光源としてはキセノンランプを用いることが好ましい。
【0057】
なお、参考までに述べれば、キセノンランプ強度を示すフラッシュ光1回の単位面積当りの発光エネルギーは下式(1)で表される。
・式(1) S=((1/2)×C×V2)/(u×l)/(n×f)
但し、式(1)中、nはランプ本数(本)、fは点灯周波数(Hz)、Vは入力電圧(V)、Cはコンデンサ容量(μF)、uはプロセス搬送速度(mm/s)、lは印字幅(mm)、Sはエネルギー密度(J/cm2)を意味する。
【0058】
次に、本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の一例について図面を用いて説明する。
図1は本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の一例について示す概略模式図である。図1中、1a〜1dは帯電手段、2a〜2dは露光手段、3a〜3dは潜像担持体(感光体)、4a〜4dは現像手段、10は中間転写体、20はブラック現像ユニット、30はシアン現像ユニット、40はマゼンタ現像ユニット、50はイエロー現像ユニット、60a〜60dは第一転写手段(転写ロ―ラ)、61,62,63,64はローラ、70は第二転写手段(転写ロ―ラ)、71は一次転写電圧供給手段、72は二次転写電圧供給手段、80は光定着手段、90はクリーニング手段、100は画像形成装置、200は記録媒体を表す。
【0059】
図1に示す画像形成装置100は、帯電手段、露光手段、感光体、および現像手段を含む符号20、30、40、50で示される各色の現像ユニットと、中間転写体10およびこの内周面に接して配置され、中間転写体10を張架するロール61、62、63、64と、各現像ユニットの感光体を押圧するように中間転写体10を介してその内周面に接するように配置された転写ロール60a、60b、60c、60dと、これら4つの転写ロールに電圧を供給する一次転写電圧供給手段71と、中間転写体10を介して転写ロール64を押圧するように対向配置された転写ロール70と、転写ロール70に電圧を供給する二次転写電圧供給手段72と、中間転写体10の外周面をクリーニングするクリーニング手段90と、ロール64上の中間転写体10と転写ロール70とのニップ部分を図中の矢印方向に通過する記録媒体200の中間転写体10と接触する側に光を照射する光定着器80と、から構成されている。
【0060】
なお、ブラック現像ユニット20は、感光体3aの周囲には時計回りに帯電手段1a、露光手段2a、現像手段4aが配置された構成を有する。また、感光体3aの現像手段4aが配置された位置から時計回りに帯電手段1aが配置されているまでの間の感光体3a表面に接するように、中間転写体10を介して転写ロール60aが対向配置されている。このような構成は他の色の現像ユニットも同様である。
なお、本発明の画像形成方法においては、マゼンタ現像ユニット40を除く少なくとも1つ以上の現像ユニットの現像手段4d内に本発明のトナーを含む現像剤が収納される。
また、中間転写体10の外周面には、時計回りにブラック現像ユニット20、シアン現像ユニット30、マゼンタ現像ユニット40、イエロー現像ユニット50、クリーニング手段90(剥離爪側)、転写ロール70がこの順に外周面と接触するように配置され、中間転写体10の内周面には、時計回りに、転写ロール60a、60b、60c、60d、クリーニング手段90(ロール側)、ロール64、63、62、61がこの順に配置されている。
【0061】
次に、画像形成装置100を用いた画像形成について説明する。まず、ブラック現像ユニット20において、感光体3aを時計回り方向に回転させつつ、帯電手段1aにより感光体3aの表面を一様に帯電する。次に帯電された感光体3aの表面を露光手段2aにより露光することにより、複写しようとする元の画像のブラック色成分の画像に対応した潜像が感光体3a表面に形成される。さらに、この潜像上に現像手段4内に収納されたブラックトナーを付与することによりこれを現像してブラックトナー像を形成する。このプロセスは、シアン現像ユニット30、マゼンタ現像ユニット40、イエロー現像ユニット50においても同様に行なわれ、それぞれ現像ユニットの感光体表面にそれぞれの色のトナー像が形成される。
【0062】
感光体表面に形成された各色のトナー像は、転写ロール60a〜60dによる転写電位の作用により、反時計方向に回転する中間転写体10上に順次転写され、元の画像情報に対応するように中間転写体10の外周面上に積層されて、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローによるフルカラーの積層トナー像が形成される。
【0063】
次に、この中間転写体10上の積層トナー像が、ロール64と転写ロール70とのニップ部まで搬送された際に、転写ロール70による転写電位の作用により、記録媒体200上に転写される。そして、記録媒体200上に転写された積層トナー像は、光定着手段80のところまで搬送され、そこで光定着手段80から光の照射を受けて、溶融し、記録媒体200上に光定着されフルカラー画像が形成される。
なお、記録媒体200への積層トナー像の転写を終えた中間転写体10上に残留するトナーは、クリーニングブレード等の剥離爪を供えたクリーニング手段90により除去される。
【実施例】
【0064】
(1)トナーの製造
以下の表1に示したようなバインダ(結着樹脂)、帯電制御剤、ワックス、主色着色剤、補色着色剤、および、赤外線吸収剤からなるトナー原料をヘンシェルミキサーに投入し、予備混合を行った後、エクストルーダーにより混練し、ついでハンマーミルにて粗粉砕し、ジェットミルにて微粉砕して気流分級機にて分級を行い、体積平均粒径が8.5μmの着色微粒子を得た。次いで、この着色微粒子100重量部に対し、疎水性シリカ微粒子(R974、日本アエロジル社製):1.5重量部と酸化チタン(NKT90、日本アエロジル社製):0.5重量部とをヘンシェルミキサーにより着色微粒子に外添処理して、各実施例および比較例のトナーを得た。
【0065】
このようにして作製したイエロートナー作製に際して用いた主色着色剤であるイエロー着色剤、並びに、補色着色剤であるマゼンタ着色剤およびレッド着色剤のL*、a*、b*を表2に、赤外線吸収剤のL*、a*、b*を表3に示す。なお、赤外線吸収剤および着色剤のL*、a*、b*値は以下のようにして測定した。
まず、テトラヒドロフラン40gと、ポリエステル樹脂(FP118L、花王製)9.5gと、赤外線吸収剤または着色剤0.5gとを混合し、ペイントシェーカーにて1時間溶解または分散し、作製したトナー溶液を、バーコータを用いJIS K5101に規定された白紙(反射率80±1)にNo16のバーコータを用いて塗布し乾燥させたサンプルを準備した。次に、このサンプルの着色剤が塗布された面を分光計(938 Spectrodentitometer、X−Rite社)で測定してL*、a*、b*を求めた。
また、トナーの作製に用いた赤外線吸収剤の光吸収ピーク値(赤外域の最大吸収ピークの波長:λmax)を表3に示す。
【0066】
(2)評価装置および評価方法
評価装置としては、既述した図1に示す構成を有する画像形成装置(GL8300プリンタ(富士通製)にフラッシュプリンタPS2160(富士通製)のフラッシュ定着機を搭載した改造機)を用いた。
なお、参考までにこの画像形成装置の光定着器のフラッシュランプの発光波形を図2に示す。図2はフラッシュランプの発光波形を示すグラフであり、横軸が波長(nm)、縦軸が吸光度(a.u.)を表す。図2からわかるように、750nm以上の近赤外域に強い発光があることがわかる。また、画像形成時のフラッシュのエネルギーは3.2J/cm2とした。
【0067】
評価に際しては、各実施例および比較例のトナーのみからなる単色のベタ画像を普通紙(NIP1500LT、小林記録紙)上に、トナーの付着量が0.5mg/cm2となるように形成し、この際の光定着性、色再現性測定値(L*、a*、b*)、色再現性、濁りについてそれぞれ評価した。評価結果を表4に示す。
また、リファレンスサンプルとして、表4には、赤外線吸収剤を含まない市販の熱定着用のイエロートナー(DocuColor 1250用トナーおよびDocuCenter Color 400用トナー、いずれも富士ゼロックス社製)の色再現性測定値(L*、a*、b*)、色再現性、濁りについて評価した結果も示す。なお、熱定着用のトナーの単色ベタ画像は、熱定着方式の画像形成装置(DocuColor 1250およびDocuCenter Color 400、いずれも富士ゼロックス社製)を用いた以外は、上記と同様の用紙、トナー付着量で形成した。
【0068】
次に、光定着性、色再現性測定値(L*、a*、b*)、色再現性の評価方法および以下の表2〜4に示す評価基準について以下に説明する。
−光定着性の評価方法および評価基準−
光定着性の評価は次のようにおこなった。まず、トナー像が定着された普通紙上の画像ステータスA濃度を938 Spectrodentitometer(X−Rite社)を用い測定した。次いで、普通紙のトナー像上に剥離テープ(商品名「スコッチメディングテープ」(住友3M社製))を粘着させた後に剥離テープを剥離し、剥離後の普通紙上のステータス濃度を測定した。そして、剥離前の普通紙上の画像印字濃度を100とした場合、剥離後の普通紙上の画像印字濃度をパーセンテージで表し、これをトナー定着率(光定着性)として求めた。
なお、表4に示す光定着性の評価基準は以下の通りであり、実用レベルは80%以上である。
◎:定着率90%以上
○:定着率80%以上
△:定着率70%以上
×:定着率70%未満
【0069】
−色再現性測定値(L*、a*、b*)−
表2〜4に示すL*、a*、b*の測定は、上記のように画像が形成された印刷物を、白色シートを下に敷いて938 Spectrodentitometer(X−Rite社製)を用い測定して求めた。
【0070】
−色再現性−
表4に示す色再現性は、色再現性測定値(L*、a*、b*)の測定結果を元に、リファレンストナーとの色相の差を示すΔC*により評価した。ΔC*は下式(2)で表される。
【0071】
【数1】

【0072】
但し、ar*、br*はリファレンストナーのa*、b*測定値、at*、bt*は評価対象トナーのa*、b*測定値である.
このΔC*による色再現性評価基準を以下に示す。
−トナー色がイエローの場合−
○:ΔC*;3未満
×:ΔC*;3以上
【0073】
−濁り−
色の異なる主色着色剤と補色着色剤を混合して濁りが発生した場合、色相だけでなく、明度も大きく変化する。このことから,表4に示す濁りは、色再現性測定値(L*、a*、b*)の測定結果を元に、リファレンストナーとの明度の差を示すΔL*により評価した。ΔL*は下式(3)で表される。
【0074】
【数2】

【0075】
但し、Lr*はリファレンストナーのL*測定値、Lt*は評価対象トナーのL*測定値である。
このΔL*による濁りの評価基準を以下に示す。
−トナー色がイエローの場合−
○:ΔL*;6未満
×:ΔL*;6以上
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
(3)評価結果
表1〜表4から、以下のことがわかった。
(比較例1)
イエロートナーEは主色着色剤Aを5.0重量%、赤外線吸収剤Aを0.9重量%添加したトナーで、定着性は十分であるが、赤外線吸収剤のa*が0よりも小さいため、色調が緑がかってしまいリファレンスイエロートナーAとの色相の差を示すΔC*が3を超え基準を満たしていない。
【0081】
(実施例1)
イエロートナーAは比較例1のトナーに補色着色剤としてマゼンタ着色剤を0.40重量%添加したもので、補色着色剤を添加することによりΔC*が3未満となり、色再現性が良好な結果が得られた。また、濁りおよび定着性も良好であった。
【0082】
(実施例2)
イエロートナーBは比較例1のトナーに補色着色剤としてレッド着色剤を0.45重量%添加したもので、実施例1と同様に、補色着色剤を添加することにより色再現性が良好な結果が得られた。また、濁りおよび定着性も良好であった。
【0083】
(比較例2)
イエロートナーFは主色着色剤Aを5.0重量%、赤外線吸収剤Bを0.65重量%添加したトナーで、定着性は十分であるが、比較例1と同様に赤外線吸収剤により色調が緑がかってしまい、ΔC*が3を超え基準を満たしていない。
【0084】
(実施例3)
イエロートナーCは比較例2のトナーに補色着色剤としてマゼンタ着色剤を0.38重量%添加したもので、補色着色剤を添加することによりΔC*が3未満となり、色再現性が良好な結果が得られた。また、濁りおよび定着性も良好であった。
【0085】
(実施例4)
イエロートナーDは比較例2のトナーに補色着色剤としてレッド着色剤を0.44重量%添加したもので、実施例3と同様に、補色着色剤を添加することにより色再現性が良好な結果が得られた。また、濁りおよび定着性も良好であった。
【0086】
(比較例3)
イエロートナーKは主色着色剤Bを5.0重量%、赤外線吸収剤Aを0.9重量%添加したトナーで、定着性は十分であるが、赤外線吸収剤のa*が0よりも小さいため、色調が緑がかってしまいリファレンスイエロートナーBとの色相の差を示すΔC*が3を超え基準を満たしていない。
【0087】
(実施例5)
イエロートナーGは比較例3のトナーに補色着色剤としてマゼンタ着色剤を0.45重量%添加したもので、補色着色剤を添加することによりΔC*が3未満となり、色再現性が良好な結果が得られた.また、濁りおよび定着性も良好であった。
【0088】
(実施例6)
イエロートナーHは比較例3のトナーに補色着色剤としてレッド着色剤を0.43重量%添加したもので、実施例5と同様に、補色着色剤を添加することにより色再現性が良好な結果が得られた。また、濁りおよび定着性も良好であった。
【0089】
(比較例4)
イエロートナーLは主色着色剤Bを5.0重量%、赤外線吸収剤Bを0.65重量%添加したトナーで、定着性は十分であるが、比較例3と同様に赤外線吸収剤により色調が緑がかってしまい、ΔC*が3を超え基準を満たしていない。
【0090】
(実施例7)
イエロートナーIは比較例4のトナーに補色着色剤としてマゼンタ着色剤を0.26重量%添加したもので、補色着色剤を添加することによりΔC*が3未満となり、色再現性が良好な結果が得られた。また、濁りおよび定着性も良好であった。
【0091】
(実施例8)
イエロートナーJは比較例4のトナーに補色着色剤としてレッド着色剤を0.34重量%添加したもので、実施例7と同様に、補色着色剤を添加することにより色再現性が良好な結果が得られた。また、濁りおよび定着性も良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の一例について示す概略模式図である。
【図2】フラッシュランプの発光波形を示すグラフである。
【符号の説明】
【0093】
1a,1b,1c,1d 帯電手段
2a,2b,2c,2d 露光手段
3a,3b,4c,3d 潜像担持体(感光体)
4a,4b,4c,4d 現像手段
10 中間転写体
20 ブラック現像ユニット
30 シアン現像ユニット
40 マゼンタ現像ユニット
50 イエロー現像ユニット
60a,60b,60c,60d 第一転写手段(転写ロ―ラ)
61,62,63,64 ローラ
70 第二転写手段(転写ロ―ラ)
71 一次転写電圧供給手段
72 二次転写電圧供給手段
80 光定着手段
90 クリーニング手段
100 画像形成装置
200 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
***表色系におけるa*が0より小さい赤外線吸収剤と、トナー色を決定する主色着色剤と、結着樹脂とを少なくとも含む光定着用トナーにおいて、
前記主色着色剤が、イエロー着色剤、シアン着色剤、ブラック着色剤、ブルー着色剤、または、グリーン着色剤のいずれかであり、且つ、
マゼンタ着色剤および/またはレッド着色剤からなる補色着色剤を含むことを特徴とする光定着用トナー。
【請求項2】
前記主色着色剤が、イエロー着色剤であることを特徴とする請求項1に記載の光定着用トナー。
【請求項3】
前記赤外線吸収剤の含有量に対する前記補色着色剤の含有量の割合が、重量比で2.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光定着用トナー。
【請求項4】
前記主色着色剤がイエロー着色剤であり、該イエロー着色剤の含有量に対する前記補色着色剤の含有量の割合が、重量比で0.25以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光定着用トナー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の光定着用トナーを含む電子写真用現像剤。
【請求項6】
潜像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像担持体表面に形成された静電潜像を、赤外線吸収剤と、着色剤と、結着樹脂とを少なくとも含む光定着用トナーを含む現像剤を少なくとも用いて現像しトナー像を形成する現像工程と、前記潜像担持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を記録媒体表面に光定着し、画像を形成する定着工程と、を含む画像形成方法において、
前記現像剤として、請求項5に記載の電子写真用現像剤を用いることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−79018(P2006−79018A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266005(P2004−266005)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】