説明

光導波板用液状シリコーンゴム組成物

【解決手段】(A)M、Q、D及びT単位から選択される単位からなり、M及びQ単位の合計量が80mol%以上で、Q単位に対するM単位のモル比が0.5〜1.5の範囲であるアルケニル基を含有するシリコーン樹脂
(B)アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン
(C)ケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(D)ヒドロシリル化反応触媒
(E)シリカ
を必須成分とする光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【効果】本発明の組成物の硬化物フィルムは、高透明であるが適度な光拡散性を備えているため、携帯電話のキーパッド照光用バックライト装置の光導波板として最適である。本発明の光拡散剤としてのシリカは、シリコーンゴム組成物の補強効果も担うので、強度や可撓性を損なわない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンを主成分とし、ヒドロシリル化(付加)反応によって硬化する光導波板用液状シリコーンゴム組成物に関し、特に高透明、高硬度の成型物が得られるため、携帯電話のキーパッド照光用バックライト装置の光導波板に好適に用いられる光導波板用液状シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の夜間使用のため、多くのキーパッドは照光用バックライト装置を備えているが、従来は発光ダイオード(LED)をキーパッドの裏側に多数個配置する構成であった。しかし、最近の携帯電話の高機能化に伴い、照光用バックライト装置にも薄型化、軽量化、高輝度化、コストダウンの要求が高まっており、液晶ディスプレイ(LCD)でも採用されている光導波板による照光用バックライト装置が提案された。これは、LED光源と、該光源に対向する端面から光を内部に導入して拡散し、照光したいキー部分に設置した反射面で光を反射して反射光を外部に投射する光導波板から構成されている(特許文献1:特開2003−59321号公報参照)。この装置の特徴は、LEDを横方向に設置することで薄型化が可能になり、従来の裏側にLEDを設置したタイプに比べてLED個数を減少してもキーパッド全面を均一に、高輝度に照光可能となった。また、消費電力も低下したので電池の小型、軽量化も進み、低コスト化にも寄与した。
【0003】
LCDバックライト装置の光導波板は、光学的特性のみを要求されるが、キーパッド照光用バックライト装置の光導波板は、キー入力の変位(クリック)をスイッチング素子に伝達する役目も担うので、高透明であることに加え、弾性やその温度依存性が小さいこと、薄く均一な厚みで表面平滑なフィルムを成型できること等も必要となる。一般にアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂は高透明でフィルム成型性は良好であるが、弾性の温度依存性、特に低温領域では脆化のため、キー入力時にクラックが発生することがあった。そこで、LEDの封止材等の光学材料にも応用されている高透明なシリコーン系樹脂(特許文献2:特開2002−265787号公報、特許文献3:特開2006−202952号公報、特許文献4:特開2006−342200号公報参照)が低温特性に優れている点で注目された。中でも、シリカを全く含まないために高透明、かつ低温でも弾性を損なわず、熱硬化によるフィルム成型も比較的容易なヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物がキーパッド照光用バックライト装置の光導波板として採用されるようになった。
【0004】
ここで、シリカを全く含まない高透明なヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物からなる光導波板では、端面からの入射光がそのまま透過してしまい、照光したいキー部分に設置した反射面に光が集まらない場合があった。
これを解決するために、高透明な樹脂中に光拡散剤として異質微粒子を分散含有させ、光導波板内の光拡散をコントロールする(特許文献5:特開平4−161448号公報)ことが一般に行われている。しかし、異質微粒子を高度に均一に分散することは困難を極め、また、異質微粒子を配合することにより樹脂自体の強度や可撓性が損なわれるという弊害が発生してしまう。
【0005】
【特許文献1】特開2003−59321号公報
【特許文献2】特開2002−265787号公報
【特許文献3】特開2006−202952号公報
【特許文献4】特開2006−342200号公報
【特許文献5】特開平4−161448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高透明なヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物に所定量の光拡散剤としてのシリカを配合したものであって、高透明でありながら適度な光拡散性を持ち、またシリカはヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を補強する効果も担うため、成型された光導波板に強度や可撓性を付与することを可能とし、特にバックライト装置用として好適な光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、高透明なヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の強度や可撓性を損なわずに適度な光拡散効果を付与するためには、所定範囲の少量のシリカを配合、分散させることが最適であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0008】
即ち、本発明は、
(A)R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2SiO2/2単位(D単位)、及びRSiO3/2単位(T単位)から選択される単位からなり、これらの全構成単位のうちM単位及びQ単位の合計量が80mol%以上であり、かつQ単位に対するM単位のモル比(M/Q)が0.5〜1.5の範囲であるシリコーン樹脂 100質量部
(ここで、Rは炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、かつ全R基のうち、一分子中の少なくとも2個はアルケニル基である。)
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する室温で液状のオルガノポリシロキサン 50〜250質量部
(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分及び(B)成分中のケイ素原子と結合した
アルケニル基1個当たり、ケイ素原子に結合した
水素原子の数が1.0〜10.0個となる量
(D)ヒドロシリル化反応触媒 触媒量
(E)シリカ 0.1〜10質量部
を必須成分とすることを特徴とする光導波板用ヒドロシリル化(付加)硬化型液状シリコーンゴム組成物
を提供する。
【0009】
この場合、(B)成分が、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。また、(E)成分として、表面処理されたシリカを用いることができる。(E)成分のシリカを配合するに当たり、予め(B)成分のオルガノポリシロキサンと混練してペースト状とし、これを添加すること、あるいは予め(B)成分のオルガノポリシロキサン、(E)成分のシリカ、(F)シリカ表面処理剤を加熱下で混練、ペースト状とし、これを添加することができる。更に、本発明組成物の硬化物のゴム硬度はデュロメータAで70度以上であることが好ましく、また厚さ2mmの硬化物シートの全光線透過率が90〜98%であること、厚さ2mmの硬化物フィルムのヘイズ値が2〜10であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物フィルムは、適度な光拡散効果を持ち、フィルム自体の強度や可撓性も低下しないため、携帯電話のキーパッド照光用バックライト装置の光導波板として最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の(A)成分のシリコーン樹脂は、R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2SiO2/2単位(D単位)、及びRSiO3/2単位(T単位)から選択される単位からなり、これらの全構成単位のうちM単位及びQ単位の合計量が80mol%以上であり、かつQ単位に対するM単位のモル比が0.5〜1.5の範囲である、分岐状又は三次元網状構造のものである。ここで、Rは炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、かつ一分子中の全R基のうち少なくとも2個はアルケニル基である。
【0012】
上記シリコーン樹脂の炭素数1〜6の一価炭化水素基Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、並びにフェニル基等のアリール基等の非置換の一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換の一価炭化水素基が挙げられ、(A)成分のシリコーン樹脂に含まれる複数のRは同じでも異なってもよいが、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の他の成分との相溶性の観点から、Rの80mol%以上、特にはアルケニル基以外の全てのR基がメチル基であることが好ましい。各成分の相溶性が悪化すると、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の透明性が低下するためである。また、アルケニル基としてはビニル基が好ましいが、これも他の成分との相溶性を保つことが理由である。
【0013】
上記の(A)成分のシリコーン樹脂において、上記四種の構成単位のうちR3SiO1/2単位(M単位)とSiO4/2単位(Q単位)は必須であり、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の硬さを向上させるためには、全構成単位に占めるこの2種の構成単位の割合が80mol%以上であることが必要であり、好ましくは90mol%以上、より好ましくは100mol%である。R2SiO2/2単位(D単位)及びRSiO3/2単位(T単位)は含まれていてもいなくてもよい。
【0014】
また、SiO4/2単位(Q単位)に対するR3SiO1/2単位(M単位)のモル比(M/Q)が0.5より小さいと、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の他の成分との相溶性が悪化し、1.5よりも大きいとヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の硬さが低下してしまう。従ってQ単位に対するM単位のモル比は0.5〜1.5の範囲にあることが必要とされ、好ましくは0.7〜1.2の範囲である。
【0015】
上記の(A)成分のシリコーン樹脂として具体的には、ビニルジメチルシロキシ基を有するM単位とQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基を有するM単位とトリメチルシロキシ基を有するM単位とQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基を有するM単位とジメチルシロキサン単位とQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基を有するM単位とフェニルシルセスキオキサン単位とQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基を有するM単位とジメチルシロキサン単位とフェニルシルセスキオキサン単位とQ単位の共重合体、トリメチルシロキシ基を有するM単位とビニルメチルシロキサン単位とQ単位の共重合体等が挙げられる。
【0016】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の(B)成分のオルガノポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有するもので、通常、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物のベースポリマーとして使用されている公知のものであり、25℃での粘度が1〜100Pa・s、好ましくは5〜100Pa・sの粘度を有するものである。なお、ここでの粘度は回転粘度計によるものである。
【0017】
また、(B)成分は平均重合度が2,000以上の、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する、室温で生ゴム状のオルガノポリシロキサンであっても良い。これは、通常、ミラブルタイプのシリコーンゴムコンパウンドのベースポリマーとして使用されている公知のものである。平均重合度は、好ましくは2,100〜100,000、より好ましくは3,000〜10,000である。
【0018】
(B)成分の平均重合度は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算による重量平均分子量から算出される平均値(重量平均重合度)等を適用することができる。
【0019】
上記の(B)成分はアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであり、これらは通常、下記平均組成式(I)
1aSiO(4-a)/2 (I)
(ここで、R1は炭素数1〜6の置換又は非置換の一価炭化水素基で、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基等の非置換の一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換の一価炭化水素基である。複数の置換基は異なっていても同一であってもよいが、分子中にアルケニル基を2個以上含んでいることが必要である。また、aは1.9〜2.4、好ましくは1.95〜2.05の範囲の数である。)
で表され、直鎖状であっても分岐していてもよい。好ましくは主鎖がジオルガノポリシロキサン単位(D単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(M単位)で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンであるものが例示され、ケイ素原子に結合した置換基はメチル基又はフェニル基が好ましい。また、一分子中に2個以上含有することが必須であるケイ素原子と結合したアルケニル基はビニル基が好ましく、これは分子鎖末端にあっても側鎖にあってもよいが、両末端に2個(即ち、各末端にそれぞれ1個ずつ)含有するものが好ましい。
【0020】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化後の成型フィルムの硬さと可撓性を両立させるため、(A)成分100質量部に対し、(B)成分は50〜250質量部が好適である。(B)成分がこの範囲未満の組成では可撓性のない脆いフィルムとなり、逆にこの範囲を超える組成では柔らかくて表面粘着性のあるフィルムとなるため適さない。好ましくは、(A)成分100質量部に対し、(B)成分は80〜150質量部である。
【0021】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子(SiH基)を含有するもので、下記平均組成式(II)
2bcSiO(4-b-c)/2 (II)
(ここで、R2は炭素数1〜6の置換又は非置換の一価炭化水素基で、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものである。具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基等の非置換の一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換の一価炭化水素基である。bは0.7〜2.1、cは0.18〜1.0、かつb+cは0.8〜3.0、好ましくはbは0.8〜2.0、cは0.2〜1.0、かつb+cは1.0〜2.5を満足する正数で示される。)
で示される従来から公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが適用可能である。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜200個程度の室温で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)は分子鎖末端にあっても側鎖にあっても、その両方にあってもよく、一分子中に少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個)、より好ましくは4〜150個程度含有するものが使用される。
【0022】
上記の(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体等や上記各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基等のアリール基で置換されたものなどが挙げられる。
【0023】
(C)成分の配合量については、本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化後の成型フィルムの硬さと可撓性を両立させるため、(A)成分及び(B)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基1個当たり、ケイ素原子に結合した水素原子の数が1.0〜10.0、好ましくは1.5〜5.0の範囲となるように(C)成分の量を調整する必要がある。この範囲未満では柔らかく、表面粘着性のあるフィルムとなり、この範囲を超えると可撓性のないフィルムとなる。
【0024】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の(D)成分のヒドロシリル化反応触媒は、公知のものが適用可能で、例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、このヒドロシリル化反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属の質量として(A)成分及び(B)成分に対し、0.5〜1,000ppm、好ましくは1〜200ppm程度である。
【0025】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の(E)成分のシリカは、公知のものが適用可能で、例えば、四塩化ケイ素に水素と酸素を供給しながら燃焼して得られる乾式シリカや、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)を塩酸や硫酸で中和して得られる湿式シリカが例示される。このうち乾式シリカは、湿式シリカに比べて光拡散効果が小さいので比較的多量配合が可能であり、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物への補強効果も大きくなるため好ましい。特に、BET法による比表面積が150m2/g以上、好ましくは200〜400m2/g、より好ましくは150〜350m2/gの乾式シリカが適している。
【0026】
また、(E)成分のシリカは、予め表面処理剤で表面処理されているものを使用しても良い。該表面処理剤は、以下に記載する(F)成分としても使用される。
【0027】
(E)成分のシリカは、(A)成分のシリコーン樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜8質量部、より好ましくは0.3〜6質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部の範囲で配合することが必要である。この配合量が少なすぎると、光導波板としての所望のヘイズ値を得ることができず、また配合量が大きすぎると、光導波板として好適な光透過率(透明性)が得られない。
【0028】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の(F)成分のシリカ表面処理剤は、一般にシリカの表面処理剤として知られているものが使用可能である。例えば、アルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステル類などが例示される。これらは、1種又は2種以上を選択して用いることができる。
【0029】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物に(E)成分のシリカを配合する方法としては、粉体のシリカをそのまま添加して混合分散しても良いが、予め(B)成分のオルガノポリシロキサンとシリカを混練してペースト状としてから添加することが、シリカの分散性を良好とするためには好ましい。その際、(F)成分のシリカ表面処理剤を一緒に添加する、及び/又は、混練中に100〜180℃に加熱することが、更に好ましい態様である。また、本発明の組成物と比較してシリカが高充填された一般のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を添加することも、上述のシリカをペースト状として添加することと同様の効果が期待されるため、好ましい方法である。ここで、「一般のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物」とは、市販されているヒドロシリル化室温硬化型液状シリコーンゴム組成物や射出成型用ヒドロシリル化熱硬化型液状シリコーンゴム組成物のことを指す。これらと本発明の組成物では、シリカの役割が異なり、従って含有量も大きく相違している。即ち、一般のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物におけるシリカ配合はシロキサンポリマーを補強してゴム強度や硬さを付与することが目的であるため、シリカ配合量は一般的に10〜50質量%であるのに対し、本発明組成物のシリカは光透過を適度に拡散させる役割を担うものでシロキサンポリマーへの補強効果はなく、シリカ配合量は(A)〜(E)成分の合計量中約0.03〜6質量%である。
【0030】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、アルコキシシリル基を含有するアルコキシシラン系化合物、シランカップリング剤、チタン系やジルコニウム系等の縮合触媒等を架橋補助剤として配合してもよい。
【0031】
また、例えば、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサンや1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(トリアリルイソシアヌレート)等の多官能アルケニル化合物、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール誘導体等のヒドロシリル化反応抑制剤を、ポットライフの確保のために添加してもよいし、例えば、トリメチルクロロシランやオクタメチルテトラシクロシロキサンで表面処理した処理シリカ等の無機充填剤を、硬化物の硬さや強度を向上させるために配合してもよい。更に染料、顔料、難燃剤、離型剤等の配合も、本発明の効果を損なわない範囲ならば可能である。
これらの各任意成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物は、通常の混合攪拌器、混練器等を用いて上記の各成分を均一に混合することにより調製することができる。
【0033】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物からなる光導波板、特にバックライト装置用光導波板は、各成分を均一に混合した上記のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を80〜350℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜150℃で加熱硬化することにより得られる。成型法は公知の熱硬化樹脂によるフィルム成型法を用いることができ、例えばプレス成型法ならば、2枚の樹脂フィルム(ライナー)の間に本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を流し込み、所定の金型、条件で加圧加硫させればよい。また延伸成型法の例としては、2枚の連続樹脂フィルムの間に本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を供給しながらロールにより一定厚みに延伸し、加熱炉に連続的に供給して常圧熱気加硫させる。硬化後、冷却してからライナーを剥離すれば、光導波板が得られる。
【0034】
この場合、本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物は、そのゴム硬度がデュロメータAで70度以上、特に75〜85度であることが好ましく、これは光導波板表面からタック性(粘着性)を除くために重要である。携帯電話のキーパッド照光用バックライト装置の光導波板は、上面のキートップと下面のメタルドームを備えた遮光シートに挟持されるが、タック性があると、スイッチングの際にキートップと光導波板、及び/又は光導波板と遮光シートが密着し、そこから光が拡散するために、光導波板全面の輝度が低下してしまうという不具合を生ずるからである。なお、上記ゴム硬度を得る手段としては、特に硬度を向上させるためには、(1)(A)成分含有量を増加する、(2)一分子中のケイ素原子と結合した水素原子(SiH基)数が多い(C)成分を使用する、(3)多官能アルケニル化合物を添加する等の方法があるので、これらを適当に組み合わせて硬度調整することが挙げられる。
【0035】
また、厚さ2mmの硬化物シートの全光線透過率が、スガ試験機(株)製直読ヘイズコンピューターHGM−2による測定値で90〜98%、特に94〜96%であることが好ましい。該全光線透過率が90%未満であると光導波板内の光拡散が強すぎ、入射光が光導波板の最遠部まで届かず、輝度にムラが生じてしまう。反対に、該全光線透過率が98%を超える場合は入射光がそのまま透過してしまい、照光したい部分に光を集めることが困難になる。上記全光線透過率を得る手段としては、(A)成分、(B)成分、(C)成分の配合割合を調整する方法がある。(A)成分、(B)成分、(C)成分の屈折率差が小さいほど高い光線透過率となるが、実際にはこれらの各成分は屈折率が異なるため、全光線透過率は低下する傾向にあるが、適切に組み合わせることにより、所望の全光線透過率を達成可能である。
【0036】
更に、厚さ2mmの硬化物シートのヘイズ値が、スガ試験機(株)製直読ヘイズコンピューターHGM−2による測定値で2〜10、特に3〜5であることが好ましい。該ヘイズ値が2未満であると入射光がそのまま透過してしまい、照光したい部分に光を集めることが困難になる。反対に、該ヘイズ値が10を超える場合は光導波板内の光拡散が強すぎ、入射光が光導波板の最遠部まで届かず、輝度にムラが生じてしまう。上記ヘイズ値とする手段としては、(E)成分の配合量調整が挙げられる。(E)成分を増量していくとヘイズ値は大きくなるので、所望のヘイズ値となる配合量で決定すればよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例と比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、配合量の単位は質量部である。また、重量平均分子量、重量平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算値である。粘度は回転粘度計による値である。
【0038】
[実施例1〜9、比較例1〜6]
ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の各例について、(A)シリコーン樹脂、(B)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(D)ヒドロシリル化反応触媒、(E)シリカ、(G)ヒドロシリル化反応制御剤、(H)シリカ含有ペースト、(I)シリカ含有ヒドロシリル化付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物、それぞれの配合量を表1,2に示した。各組成物は均一に混合撹拌、減圧脱泡した。なお、表中のSiH基量は、(A)成分及び(B)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基1個当たり、(C)成分のケイ素原子に結合した水素原子の数を示す。ここで、(I)成分のシリカ含有ヒドロシリル化付加反応硬化型液状シリコーンゴムとは、市販されている室温硬化型液状シリコーンゴムや射出成型用熱硬化型液状シリコーンゴムのことを指す。
【0039】
プレス板上に、ポリエチレンテレフタレート(PET)ライナー、厚さ2.2mmの枠を重ね、この枠内に上記のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を流し込み、この上に更にPETライナー、プレス板を積層して120℃で10分間プレス成型した。その後PETライナーごと取り出して冷却、PETライナーを剥離し、150℃オーブン中で1時間ポストキュアして、厚さ約2mmのシリコーンゴム製透明シートを得た。
【0040】
これらについて下記の物性を評価した。
・ゴム硬度:JIS−K6249(2mmシート)、デュロメータA
・透明性:2mmシートの全光線透過率、ヘイズ値を測定した。
・総合評価:ゴム硬度がデュロメータAで70以上、透明性が全光線透過率90〜98%、ヘイズ値が2〜10の3項目全てが満足された時○、それ以外を×とした。
【0041】
使用した材料
(A)シリコーン樹脂
A−1 (CH33SiO1/2単位、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位、SiO4/2単位の共重合体
モル比:(CH33SiO1/2/(CH2=CH)(CH32SiO1/2/SiO4/2=40/10/50
一分子当たりのアルケニル基数:4.2個(重量平均分子量=3,000)
A−2 (CH33SiO1/2単位、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位、SiO4/2単位の共重合体
モル比:(CH33SiO1/2/(CH2=CH)(CH32SiO1/2/SiO4/2=40/5/55
一分子当たりのアルケニル基数:3.5個(重量平均分子量=5,000)
【0042】
(B)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
B−1 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
重量平均重合度:約450(重量平均分子量=約33,000)
粘度:約5Pa・s
B−2 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
重量平均重合度:約1,100(重量平均分子量=約80,000)
粘度:約100Pa・s
B−3 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
重量平均重合度:約8,000(重量平均分子量=約600,000)
【0043】
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
C−1 両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン
粘度:20mPa・s
一分子当たりのSiH基数:40個(SiH基含有量0.016mol/g)
C−2 両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体
粘度:40mPa・s
一分子当たりのSiH基数:45個(SiH基含有量0.011mol/g)
【0044】
(D)ヒドロシリル化反応触媒
D−1 白金触媒
Pt濃度:1重量%
【0045】
(E)シリカ
E−1 乾式シリカ 比表面積(BET法):300m2/g
E−2 乾式シリカ 比表面積(BET法):200m2/g
E−3 湿式シリカ 比表面積(BET法):190m2/g
E−4 表面処理乾式シリカ 比表面積(BET法):170m2/g、表面処理剤:ジメチルジクロロシラン
E−5 表面処理乾式シリカ 比表面積(BET法):300m2/g、表面処理剤:ヘキサメチルジシラザン
【0046】
(F)シリカ表面処理剤
F−1 ヘキサメチルジシラザン
【0047】
(G)ヒドロシリル化反応制御剤
G−1 1−エチニルシクロヘキサノール
【0048】
(H)シリカ含有ペースト
H−1 30質量部のE−1を70質量部のB−1と混練したペースト
H−2 100質量部のH−1に5質量部のヘキサメチルジシラザン(F−1)を添加し、150℃で1時間混練したペースト
【0049】
(I)シリカ含有ヒドロシリル化付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物
I−1 KE−2000−60A 信越化学工業(株)製 射出成型用熱硬化型液状シリコーンゴムA液(シリカ含有率約25質量%)
I−2 KE−2000−60B 信越化学工業(株)製 射出成型用熱硬化型液状シリコーンゴムB液(シリカ含有率約25質量%)
注:KE−2000−60AとKE−2000−60Bは50:50(等重量)混合タイプの液状シリコーンゴムである。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2SiO2/2単位(D単位)、及びRSiO3/2単位(T単位)から選択される単位からなり、これらの全構成単位のうちM単位及びQ単位の合計量が80mol%以上であり、かつQ単位に対するM単位のモル比(M/Q)が0.5〜1.5の範囲であるシリコーン樹脂
100質量部
(ここで、Rは炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、かつ一分子中の全R基のうち、少なくとも2個はアルケニル基である。)
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン
50〜250質量部
(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分及び(B)成分中のケイ素原子と結合した
アルケニル基1個当たり、ケイ素原子に結合した
水素原子の数が1.0〜10.0個となる量
(D)ヒドロシリル化反応触媒 触媒量
(E)シリカ 0.1〜10質量部
を必須成分とすることを特徴とする光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(B)成分が、直鎖状のジオルガノポリシロキサンである請求項1記載の光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(E)成分が、表面処理されたシリカであることを特徴とする請求項1又は2記載の光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(E)成分のシリカを配合するに当たり、予め(B)成分のオルガノポリシロキサンと混練してペースト状とし、これを添加することを特徴とする請求項1,2又は3記載の光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(E)成分のシリカを配合するに当たり、予め(B)オルガノポリシロキサン、(E)シリカ、(F)シリカ表面処理剤を加熱下で混練、ペースト状とし、これを添加することを特徴とする請求項1,2又は3記載の光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
硬化物のゴム硬度がデュロメータAで70度以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
厚さ2mmの硬化物シートの全光線透過率が90〜98%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項8】
厚さ2mmの硬化物フィルムのヘイズ値が2〜10であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。

【公開番号】特開2010−18662(P2010−18662A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178777(P2008−178777)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】