説明

光導波路の組み合わせ構造体

【課題】光導波路を用いた光学式タッチパネル製造時の発光側コアと受光側コアの位置合わせを、容易にかつ短時間で行う。
【解決手段】発光側光導波路と受光側光導波路に相欠き接合のための切欠き部11a、12aを設け、両者を相欠き接合13により組み合わせると、精度の良い組み合わせ構造体が容易に実現できる。これにより組み立て後の微調整の時間が大幅に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式タッチパネルなどに用いられる光導波路の組み合わせ構造体に関し、特に高い組み合わせ精度が容易に得られる組み合わせ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
光導波路は軽量で高速信号伝送が可能であるため、将来各種の電子デバイスに利用されることが期待されている。光学式タッチパネルは抵抗膜式タッチパネルや静電容量式タッチパネルに比べて表示画面が鮮明で信頼性に優れるため、銀行のATMや駅の券売機などに広く使われている。光学式タッチパネルとして、座標入力領域の周囲に多数の発光ダイオードとフォトトランジスタを並べたものが知られている(特許文献1)。また座標入力領域の周囲に光導波路とマイクロレンズを設けたものも知られている(特許文献2)。光導波路を用いた後者の光学式タッチパネルは前者の光学式タッチパネルに比べて部品点数が少なくコストダウンがしやすい。しかし光導波路を用いた光学式タッチパネルは、発光側光導波路のコアから出射された光を受光側光導波路のコアで正確に受光できるようにするため、コア同士の位置合わせをしなければならない。しかし従来はコア同士の位置合わせを行なうため、発光側光導波路と受光側光導波路の位置決めを細かい微調整を繰り返しながら手作業で行なっており、煩雑で時間がかかるという問題があった。
【特許文献1】特開平11−232024号公報
【特許文献2】特開2004−295644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光導波路を用いた光学式タッチパネルでは、発光側光導波路のコア(発光側コア)から出射された光を、受光側光導波路のコア(受光側コア)で正確に受光できるようにするため、発光側コアと受光側コアの位置合わせをしなければならない。しかし従来はコアの位置合わせのために、発光側光導波路と受光側光導波路の位置決めを微調整を繰り返しながら手作業で行なっており、煩雑で時間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発光側光導波路と受光側光導波路に相欠き接合のための切欠き部を設け、両者を相欠き接合により組み合わせると、精度の良い組み合わせ構造体が容易に実現できる。これにより組み立て後の微調整の時間が大幅に低減できる。
【0005】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)本発明の光導波路の組み合わせ構造体は、複数の光導波路が組み合わされた光導波路の組み合わせ構造体であって、光導波路はクラッド層とクラッド層に埋設されたコアを有し、クラッド層はコアを含まない部分に切欠き部を有し、組み合わせ構造体は光導波路同士が切欠き部の相欠き接合により組み合わされたことを特徴とする。
(2)本発明の光導波路の組み合わせ構造体は、光導波路は、コアの長軸に垂直な断面において、コアの中心とクラッド層の中心が一致しないことを特徴とする。
(3)本発明の光導波路の組み合わせ構造体は、光導波路は、コアの長軸に垂直な断面において、クラッド層の中心がコアの外部に在ることを特徴とする。
(4)本発明の光導波路の組み合わせ構造体は、複数の光導波路が互いに直交するように組み合わされたことを特徴とする。
(5)本発明の光導波路の組み合わせ構造体は、複数の光導波路が矩形をなすように組み合わされたことを特徴とする。
(6)本発明の光導波路の組み合わせ構造体は、クラッド層の光出射端および光入射端の一方または両方がレンズ形状をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
発光側光導波路と受光側光導波路に相欠き接合のための切欠き部を設け、両者を相欠き接合により組み合わせると、精度の良い組み合わせ構造体が容易に実現できる。これにより組み立て後の微調整の時間が大幅に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[光導波路の組み合わせ構造体]
本発明の光導波路の組み合わせ構造体は、クラッド層とクラッド層に埋設されたコアを有し、クラッド層内のコアを含まない部分に切欠き部を有する複数の光導波路の、切欠き部同士が相欠き接合により組み合わされたものである。図1に本発明の光導波路の組み合わせ構造体10の一部を模式的に示す。図1(a)に、組み合わせ前の横方向の光導波路11と縦方向の光導波路12を示す。各光導波路11,12にはその厚みの1/2の深さの切欠き部11a,12aが設けられ、互いの切欠き部11a,12aが隙間無くはまり合う。この構造は一般に相欠き接合と呼ばれる。図1(b)は横方向の光導波路11と縦方向の光導波路12を相欠き接合したものの模式図である。相欠き接合は切欠き部の位置や寸法が正確であれば、容易に精度よく組み合わせ構造体を作製することができる。本発明の光導波路11,12の場合、例えばモールド金型を用いて切欠き部11a,12aを正確に形成することができる。このため光導波路の組み合わせ構造体10が精度良く作製でき、光導波路11,12の位置調整を短時間で完了させることができる。
【0008】
図1に示されるように、本発明の光導波路の組み合わせ構造体10に用いられる光導波路11,12は、コア11b、12bがクラッド層11c、12cの切欠き部11a,12aを通過しない位置にある。そのためコア11b、12bは切欠き部11a,12aによって切れたり露出したりすることはなく、コア11b、12bを通る光は切欠き部11a,12aの影響を受けない。図1(b)のように、二本の光導波路11,12を相欠き接合した場合、コア11b、12bは相欠き接合部分13ではすれ違うように交差する。したがって途中に相欠き接合があってもコア11b、12bは影響を受けることなく、光の伝送は各コア11b、12bについて問題なく行なわれる。
【0009】
本発明の光導波路の組み合わせ構造体は、光導波路同士が互いに直交するように組み合わされたものが好ましく、矩形をなすように組み合わされたものがさらに好ましい。矩形をなす光導波路の組み合わせ構造体としては、例えば図2(a)に示すような4個の直線型光導波路を井形に組み合わせた光導波路の組み合わせ構造体20や、図2(b)に示すような2個のL字型光導波路を組み合わせた光導波路の組み合わせ構造体21が挙げられる。
【0010】
[光導波路]
本発明に用いられる光導波路はクラッド層とクラッド層の埋設されたコアを有し、クラッド層のコアを含まない部分に切欠き部を有する。図3に示す光導波路のコアの長軸に垂直な断面において、光導波路の高さHは、好ましくは50μm〜40mmであり、さらに好ましくは100μm〜20mmである。光導波路の幅Uは、好ましくは50μm〜40mmであり、さらに好ましくは100μm〜20mmである。
【0011】
光導波路は、コアの長軸に垂直な断面において図3に示すようにコア31の中心31aとクラッド層32の中心32aが一致しないものが好ましく、特に図示のようにクラッド層32の中心32aがコア31の外部にあるものが好ましい。このようにすることにより、クラッド層32のコア31を含まない部分に、クラッド層32の高さの1/2に及ぶ深い切欠き部を有する光導波路を作製することができ、複数の光導波路を相欠き接合によって、接合部分で2本の光導波路の外面の高さが同じ(面位置)であるように組み合わせることができる。なお図3ではコア31の中心31aがクラッド層32の中心32aの下方に外れた例を示すが、コア31の中心31aの外れる方向は上下左右のいずれでもよい。コア31の中心31aとクラッド層32の中心32aの距離Lは、好ましくは20μm〜5mmであり、さらに好ましくは30μm〜1mmである。
【0012】
本発明に用いられるコア31はクラッド層32よりも屈折率が高く、伝播する光の波長で透明性の高い材料からなる。コア31を形成する材料は、好ましくはパターンニング性に優れた紫外線硬化樹脂である。紫外線硬化樹脂としては、好ましくはアクリル系紫外線硬化樹脂、エポキシ系紫外線硬化樹脂、シロキサン系紫外線硬化樹脂、ノルボルネン系紫外線硬化樹脂、ポリイミド系紫外線硬化樹脂などが挙げられる。
【0013】
コア31とクラッド層32の屈折率差は、好ましくは0.01以上であり、さらに好ましくは0.02〜0.2である。コア31およびクラッド層32を形成する樹脂の屈折率は、樹脂に導入する有機基の種類や含有量によって適宜増加ないし減少させることができる。例えば環状芳香族性の基(フェニル基など)を樹脂分子中に導入するか、あるいは樹脂分子中の含有量を増加させることにより、樹脂の屈折率を大きくすることができる。逆に例えば直鎖または環状脂肪族系の基(メチル基、ノルボルネン基など)を樹脂分子中に導入するか、あるいは樹脂分子中の含有量を増加させることにより、樹脂の屈折率を小さくすることができる。
【0014】
コア31の長軸に垂直な断面の形状は特に制限はないが、パターンニング性に優れた台形または四角形が好ましい。コア31の底辺における幅は好ましくは10μm〜500μmであり、コア31の高さは好ましくは10μm〜100μmである。なおコア31が台形または四角形の場合、その高さとはコア31の長軸に垂直な断面においてコア31の上底の中点と下底の中点を結ぶ線分の長さをいう。
【0015】
本発明に用いられるクラッド層32は、コア31より屈折率の低い材料から形成される。クラッド層32を形成する材料は特に制限はないが、成形性に優れた紫外線硬化樹脂が好ましい。紫外線硬化樹脂は、例えば上述のものから適宜、適切なものが選択できる。
【0016】
クラッド層32がアンダークラッド層(図示なし)とオーバークラッド層(図示なし)からなる場合、アンダークラッド層の厚みは、好ましくは5μm〜10mmである。オーバークラッド層の厚みは、好ましくは10μm〜30mmの範囲でアンダークラッド層よりも厚く設定される。
【0017】
図4に一例を示すように、クラッド層41に形成される切欠き部42はコア43を含まない部分に設けられる。切欠き部の深さDは、光導波路の高さHに対して、好ましくは0.4H〜0.6Hである。複数の光導波路を相欠き接合によって同じ高さ(面位置)で凹凸なく組むためには、切欠き部の深さDが0.5Hであることが好ましい。切欠き部の幅Wは光導波路の幅にほぼ等しいことが好ましい。切欠き部42の形状は、そこに噛み合わされる光導波路の対応する断面の形状と等しく、例えば光導波路の噛み合わされる部分の断面が台形であれば切欠き部も台形である。
【0018】
図5に本発明に用いられる光導波路50の一部を模式的に示す。図5(a)は斜視図、図5(b)は断面図である。切欠き部は図示しない。クラッド層51内部に複数のコア52があり、コア52を光が伝送する。クラッド層51は光線を出射する出射端53、または光線を入射する入射端(図示せず)を有し、出射端53または入射端がレンズ形状をなすことが好ましい。出射端53または入射端がレンズ形状をなすクラッド層51を有する光導波路は、光を平行光線54に変換して出射したり、拡散した光を集光してコアに入射させたりすることができたりするため好都合である。このような光導波路50を後述する図6に示す光学式タッチパネルに用いた場合、高さ方向の位置調整の許容範囲が広くなる。
【0019】
出射端53または入射端のレンズ形状をなす部分は、好ましくは凸形状(凸レンズ)であり、さらに好ましくは、光導波路の長軸に垂直な断面がほぼ1/4円弧の凸形状(レンチキュラーレンズを長手方向に1/2に切断した形状)である。その曲率半径は、好ましくは300μm〜5mmであり、さらに好ましくは500μm〜3mmである。
【0020】
[光導波路の製造方法]
本発明に用いられる光導波路はプラズマを用いたドライエッチング法、転写法、露光・現像法、フォトブリーチ法などの方法により作製される。本発明に用いられる光導波路は、好ましくは次の工程(a)〜工程(c)を含む製造方法により作製される。
工程(a):アンダークラッド層の上にコアを形成する工程
工程(b):アンダークラッド層の上のコアを含む部分に、注入孔を有する凹型モールド型を設置し、注入孔から後にオーバークラッド層を形成し得る液状の活性エネルギー線硬化樹脂を注入して樹脂層を形成する工程。
工程(c):活性エネルギー線を凹型モールド型の外側から活性エネルギー線硬化樹脂に照射して、オーバークラッド層を硬化させる工程。
【0021】
工程(c)に用いられる活性エネルギー線は、好ましくは紫外線である。紫外線の照射量は、好ましくは100mJ/cm〜8000mJ/cmである。この範囲であればオーバークラッド層を十分に硬化させることができる。
【0022】
光導波路に切欠き部を設ける方法は特に制限はないが、例えばクラッド層の一部を切欠き部形状に切削してもよいし、切欠き部を形成するような形状の凹型モールド型を用いてもよい。
【0023】
[光学式タッチパネル]
本発明の光導波路の組み合わせ構造体は、好ましくは光学式タッチパネルに用いられる。図6に一例を示すように、光学式タッチパネル60は座標入力領域61と、発光素子62および受光素子63と、発光素子62に結合した発光側光導波路64と、受光素子63に結合した受光側光導波路65とを備える。発光側光導波路64および受光側光導波路65は各々クラッド層64b、65bとクラッド層64b、65bに埋設されたコア64c、65cを有し、クラッド層64b、65b内のコア64c、65cを含まない部分に切欠き部(図示しない)を有する。さらに発光側光導波路64と受光側光導波路65は切欠き部同士が相欠き接合により、矩形の座標入力領域61をなすように組み合わされる。図6は、4個の直線型光導波路を井形に組み合わせた光学式タッチパネルの例であるが、これに限らず、2個のL字形光導波路を組み合わせたものでもよい。図6は図面を見やすくするため、コア64c、65cが発光側光導波路64および受光側光導波路65にそれぞれ4本ずつしか描かれてないが、実際の光学式タッチパネルではサイズ、分解能に応じて、より多数のコアが用いられる。
【0024】
光学式タッチパネル60において、発光側光導波路64の出射端64aは受光側光導波路65の入射端65aと座標入力領域61を隔てて対向する。発光素子62から出射された光を、座標入力領域61を横断させて、受光素子63に入射させることができる。座標入力領域61を通過する特定箇所の光を指やペンで遮断すると、受光素子の特定位置に入射する光の強度が低下する。これを検知することにより指やペンの位置座標の認識ができる。
【0025】
相欠き接合部分では各光導波路64,65のコア64c、65cの高さが異なるため、コア64c、65c同士が衝突することなく、すれ違いながら交差することができる。そのため図6に示すように、発光素子62を一隅に、受光素子63を別の一隅に集めて配置することもできる。
【0026】
[発光素子、受光素子]
発光素子62は、好ましくは発光ダイオードまたは半導体レーザであり、さらに好ましくは垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)である。VCSELは基板面の垂直方向に光を共振させて基板面の垂直方向にレーザ光を出射させることができるため、光伝送に優れる。受光素子63は光信号を電気信号に変換する素子であり、好ましくは一次元アレイの受光素子であり、さらに好ましくはCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサまたはCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。
【0027】
[用途]
本発明の光導波路の組み合わせ構造体の用途に特に制限はないが、例えば光配線板、光コネクタ、光電気混載基板、光学式タッチパネルなどに好適に用いられる。
【実施例】
【0028】
[クラッド層形成用ワニスの調製]
(成分A)脂環骨格を有するエポキシ系紫外線硬化樹脂(アデカ社製 EP4080E) 100重量部
(成分B)光酸発生剤(サンアプロ社製 CPI−200K) 2重量部
を混合してクラッド層形成用ワニスを調製した。
【0029】
[コア形成用ワニスの調製]
(成分C)フルオレン骨格を含むエポキシ系紫外線硬化樹脂(大阪ガスケミカル社製 オグソールEG) 40重量部
(成分D)フルオレン骨格を含むエポキシ系紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製 EX−1040) 30重量部
(成分E)1,3,3−トリス(4−(2−(3−オキセタニル)ブトキシフェニル)ブタン(製法後述) 30重量部
・上記成分B 1重量部
・乳酸エチル 41重量部
を混合してコア形成用ワニスを調製した。
【0030】
[1,3,3−トリス(4−(2−(3−オキセタニル)ブトキシフェニル)ブタンの製法]
温度計、冷却管及び攪拌装置を備えた200mlの三口フラスコに、1,3,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン6.68g(20mmol)と、N−メチル−2−ピロリドン25mlとを入れ、窒素雰囲気下80℃に加熱しながら完全に溶けるまで攪拌した。溶解後、炭酸セシウム23.46g(72mmol)を加え、さらに30分攪拌した。そこに、先に合成した2−(3−オキセタニル)ブチルトシレート17.84g(66mmol)を加え、窒素雰囲気下80℃で20時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却したのち、酢酸エチル100mlと蒸留水50mlとを加え、その後放置し、水相と有機相に分離した。このように分離した有機相を抽出し、これを水でさらに洗浄し、無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。その後、硫酸マグネシウムを濾別し、さらに溶媒を留去することにより、反応粗生成物を得た。この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/アセトン)により分離精製し、無色透明の半固形体12.20g(収率97%)を得た。そして、このようにして得られた化合物は、 1H−NMRおよび13C−NMR(ともに日本電子社製)を用いて分析した結果、1,3,3−トリス(4−(2−(3−オキセタニル))ブトキシフェニル)ブタンであることが確認された。
【0031】
[光導波路の作製]
厚み188μmのポリエチレンナフタレートフィルムの表面にクラッド層形成用ワニスを塗布し、紫外線を1000mJ/cm照射したのち、80℃で5分間加熱処理して、厚み20μmのアンダークラッド層を形成した。アンダークラッド層の波長830nmにおける屈折率は1.510であった。
【0032】
アンダークラッド層の表面にコア形成用ワニスを塗布し、100℃で5分間加熱処理してコア層を形成した。コア層にフォトマスクをかぶせて(ギャップ100μm)紫外線(測定波長365nm)を2500mJ/cm照射し、さらに100℃で10分間加熱処理した。コア層の紫外線未照射部分をY−ブチロラクトン水溶液で溶解除去し、120℃で5分間加熱処理して、コア幅20μm、コア高さ50μmのコアを図6の直線型光導波路の得られるようにパターンニングした。コアの屈折率は波長830nmで1.592であった。
【0033】
次に、コア全体を覆うようにアンダークラッド層の表面に石英製凹型モールド型をかぶせて、凹型モールド型の注入孔からクラッド形成用ワニスを注入した。凹型モールド型はクラッド層に切欠き部を形成するための凸部を有する。凹型モールド型を通してクラッド形成用ワニスに紫外線を2000mJ/cm照射して、さらに80℃で5分間加熱処理した。クラッド形成用ワニスが硬化したため凹型モールド型を取り除いた。このようにして先端部の側断面形状がほぼ1/4円弧の長尺凸レンズ形状(レンチキュラーレンズを長手方向に半切した形状)であるオーバークラッド層を形成した。オーバークラッド層には切欠き部が形成された。オーバークラッド層の厚みは1mm、凸レンズ形状の曲率半径は1.5mm、オーバークラッド層の波長830nmにおける屈折率は1.510であった。
【0034】
クラッド層に切欠き部を有する上記の直線型光導波路を4個用意し、図6に示すように2個の光導波路の末端には、波長850nmの光を出射する発光素子(Optwell社製 VCSEL)を結合し、残る2個の光導波路の末端には受光素子(TAOS社製 CMOSリニアセンサーアレイ)を結合した。各光導波路の出射端、入射端が座標入力領域を隔てて対向するように配置し、対角4.2インチの光学式タッチパネルを作製した。
【0035】
[評価]
実施例の光学式タッチパネルはクラッド層に切欠き部を有し、光導波路同士の相欠き接合を行なうことができる。実施例の光学式タッチパネルの組み立ての際、発光素子の光強度を100としたとき、受光素子にて強度10の光を検出するまでに組み合わせ位置の調整に約5分要した。これに対してクラッド層に切欠き部が無く、光導波路同士の相欠き接合を行なうことができない同形の直線型光導波路を用いて光学式タッチパネルを組み立てた場合、受光素子にて強度10の光を検出するまでに組み合わせ位置の調整に30分以上要した。
【0036】
[測定方法]
[屈折率]
クラッド層形成用ワニスおよびコア形成用ワニスをそれぞれシリコンウエハ上にスピンコートにより成膜して屈折率測定用サンプルを作製し、プリズムカプラー(サイロン社製 SPA−400)を用いて測定した。
【0037】
[コア幅、コア高さ]
作製した光導波路をダイサー式切断機(DISCO社製 DAD522)を用いて断面切断し、切断面をレーザー顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察測定した。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の光導波路の組み合わせ構造体の模式図
【図2】本発明の光導波路の組み合わせ構造体の模式図
【図3】本発明に用いられる光導波路の断面図
【図4】本発明に用いられる光導波路の断面図
【図5】本発明に用いられる光導波路の模式図
【図6】本発明の光導波路の組み合わせ構造体を用いた光学式タッチパネルの模式図
【符号の説明】
【0039】
10 光導波路の組み合わせ構造体
11 光導波路
11a,12a 切欠き部
11b、12b コア
11c、12c クラッド層
13 相欠き接合部分
20 光導波路の組み合わせ構造体
21 光導波路の組み合わせ構造体
31 コア
31a コアの中心
32 クラッド層
32a クラッド層の中心
41 クラッド層
42 切欠き部
43 コア
50 光導波路
51 クラッド層
52 コア
53 出射端
54 平行光線
60 光学式タッチパネル
61 座標入力領域
62 発光素子
63 受光素子
64 発光側光導波路
64a 出射端
64b、65b クラッド層
64c、65c コア
65 受光側光導波路
65a 入射端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光導波路が組み合わされた光導波路の組み合わせ構造体であって、
前記光導波路はクラッド層と前記クラッド層に埋設されたコアを有し、
前記クラッド層は前記コアを含まない部分に切欠き部を有し、
前記組み合わせ構造体は前記光導波路同士が前記切欠き部の相欠き接合により組み合わされたことを特徴とする光導波路の組み合わせ構造体。
【請求項2】
前記光導波路は、前記コアの長軸に垂直な断面において、前記コアの中心と前記クラッド層の中心が一致しないことを特徴とする請求項1に記載の光導波路の組み合わせ構造体。
【請求項3】
前記光導波路は、前記コアの長軸に垂直な断面において、前記クラッド層の中心が前記コアの外部に在ることを特徴とする請求項2に記載の光導波路の組み合わせ構造体。
【請求項4】
前記複数の光導波路が互いに直交するように組み合わされたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光導波路の組み合わせ構造体。
【請求項5】
前記複数の光導波路が矩形をなすように組み合わされたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光導波路の組み合わせ構造体。
【請求項6】
前記クラッド層の光出射端および光入射端の一方または両方がレンズ形状をなすことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光導波路の組み合わせ構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−39881(P2010−39881A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203748(P2008−203748)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】