説明

光導波路を備えたセキュリティドキュメント

本発明によるセキュリティドキュメントは、基材(1)と光導波路(7)とを備えている。カプラ(10a,10b)を光導波路(7)内に設けて、光を光導波路に入射させ、光導波路から出射させる。カプラ(10a,10b)を、例えばグレーティング、散乱体、ホログラム、発光色素、または穿孔とすることができる。ドキュメントの真正性は、前記導波路の特性を利用する方法を用いて確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、パスポート、またはクレジットカードのようなセキュリティドキュメントの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティドキュメントはフレキシブルな基材を有し、この基材上に、またはこの基材内に、セキュリティドキュメントの真正性を検証するための少なくとも1つのセキュリティフィーチャが配置される。
【0003】
ボリュームホログラムまたは表面ホログラム、または屈折率グレーティングがとりわけセキュリティフィーチャとして、特に紙幣、クレジットカード、またはパスポートに関して提案されている。このようなフィーチャは、偽造され難いのではあるが、これらのフィーチャは、精巧な偽造を偽造者が行なう場合には、模造される可能性もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べた形式のセキュリティドキュメントにおいて、偽造防止セキュリティをさらに向上させることにある。
【0005】
本発明によればこの課題は、基材と、この基材上および/またはこの基材内に配置された光導波路とを備えるセキュリティドキュメントによって達成される。この場合、導波路は、光を導波路に入射させるように、および/または光を導波路から出射させるように構造化されかつ適合された、少なくとも1つのカプラを含む。
【0006】
導波路は一般に製造するのが難しいので、この手段によってセキュリティを強化することができる。上述のカプラによって、光を導波路に入射させることができ、または導波路内を案内される光を観測することができる。
【0007】
導波路は、例えば基材が1枚以上の紙シートにより形成される場合、この基材とは別の構造物とすることができる。しかしながら、例えば基材がポリマー薄片のような透明材料により形成される場合には、導波路を基材の一部とすることもできる。
【0008】
ドキュメントが第1及び第2のカプラを備えていると有利である。これらの2つのカプラは、導波路に第1のカプラを介して入射する光が少なくとも部分的に透過して第2のカプラに到達し、そこから出射するように配置され構造化されている。これにより、導波路を光源によって動作させることができ、導波路の外側の観測手段(人間の眼または検出器など)によって照合することができる。
【0009】
有利には基材は不透明であり(すなわち導波路内を案内される光を吸収し)、かつウィンドウまたはハーフウィンドウを有する。少なくとも1つのカプラはウィンドウ内に配置される。これにより、カプラから出射された光を容易に観測することができ、および/または光を導波路にカプラを介して容易に入射させることができるとともに、カプラの殆どの部分を基材によって保護することができる。
【0010】
さらに基材に2つのウィンドウまたはハーフウィンドウを設けることができる。この場合、第1のカプラは第1のウィンドウまたはハーフウィンドウ内に配置され、第2のカプラは、第2のウィンドウまたはハーフウィンドウ内に配置される。導波路は、第1のウィンドウと第2のウィンドウとの間に延在している。この構成によって、光を導波路に、これらのウィンドウのうちの一方のウィンドウを介して入射させることができ、導波路から第2のウィンドウを介して出射する光を観測することができる。
【0011】
別の有利な実施形態によればドキュメントは、導波路内に配置された、または導波路上に配置された発光色素を備えることができ、この色素は、光例えば導波路を介して案内される光で照射された状態で発光することにより、この色素を利用して導波路内の光の伝搬を可視化することができる。別の構成としてこの発光色素を、導波路を照らす光で照射された状態で発光させることができ、発光した光の少なくとも一部が、ついで導波路に沿って伝搬して他のいずれかの場所から出射する。
【0012】
導波路を基材内に少なくとも部分的に埋め込むことができるので、取り替えまたは取り外しを一層困難にすることができる。
【0013】
導波路が第1の層及び第2の層を含み、第1の層が第2の層よりも大きい屈折率を有するならば、第1の層を利用して光波を案内することができ、他方、第2の層は、案内される光波を周囲から孤立させるために用いられる。具体的には、第2の層を第1の層と基材との間に配置することができるので、光波が基材によって吸収されたりまたは散乱したりするのを防止することができる。有利な点として導波路は更に第3の層を含み、この場合も同じように第1の層は第3の層よりも大きい屈折率を有する。第1の層は第2の層と第3の層との間に配置されるので、第1の層内を案内される光波を両側で孤立させることができる。このことが殊に有用となるのは、導波路が少なくとも導波路の長さの一部に亘って基材内に埋め込まれる場合である。
【0014】
以下の詳細な説明を考察すれば本発明をいっそう深く理解することができ、これまでに説明した課題以外の目的も明らかになる。以下の説明では添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】セキュリティドキュメントの第1の実施形態を示す図
【図2】図1のカットラインII−IIに沿ってカットしたときの断面図
【図3】第2の実施形態の断面図
【図4】第3の実施形態の断面図
【図5】第4の実施形態の断面図
【図6】セキュリティスレッドを含む実施形態を示す図
【図7】導波路の拡大断面図
【図8】導波路を製造するための第1の方法を示す図
【図9】導波路を製造するための第2の方法を示す図
【0016】
注記:これらの図面は寸法通りには描かれていない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義:
「セキュリティドキュメント(security document)」という用語は、再現を困難にするセキュリティフィーチャを含むあらゆる種類のドキュメントを含む。この種類のセキュリティドキュメントの例として、紙幣、パスポート、小切手、株券、切符、クレジットカード、またはIDカードを挙げることができる。
【0018】
「光(light)」という用語は、赤外線領域、可視光領域、または紫外線領域の波長を有する光として理解されるべきである。有利な実施形態では、「光」という用語は可視光のみを指す。
【0019】
「光導波路(optical waveguide)」とは、実質的に透明な材料のボディのことであり、このボディは屈折率がボディ周囲に比べて高いので、光を案内することができる。
【0020】
基材内の「ウィンドウ(window)」とは、透明領域を表し、ウィンドウ以外の基材領域では実質的に不透明である。このウィンドウを不透明基材によって完全に取り囲むことができ、またはこのウィンドウを基材のエッジに配置することができる。
【0021】
基材内の「ハーフウィンドウ(half-window)」とは、基材が2つの不透明層を備え、導波路がこれらの不透明層の間に埋め込まれていることを意味する。ハーフウィンドウは、これらの層のうちの一方の層に開口が形成される領域であり、他方の層は開口を設けずにそのままにしている。
【0022】
「不透明(non-transparent)」基材または層という用語は、所定の基材または層がその第1の側から照射されたときに、この基材または層が光の50%未満をこの基材または層の第2の側に透過させることであると理解されるべきである。光の残りの部分は、吸収されるか、または散乱されるかのいずれかである。
【0023】
第1の実施形態:
本発明の第1の実施形態が図1及び2に示されおり、これらの図面は紙幣の形態のセキュリティドキュメントを示している。
【0024】
図示されているセキュリティドキュメントは、紙またはプラスチックから成る可撓性の基材1または剛性の基材1を含んでおり、この基材1の上に、例えば偽造防止セキュリティデザイン2、イラスト3、及び数値表示4の形状のグラフィカル要素が公知の方法で印刷されている。更にこのドキュメントはセキュリティフィーチャ5を有しており、このセキュリティフィーチャ5のデザインについて以下で説明する。
【0025】
図1及び2の実施形態によれば、基材1は第1の紙層6a、第2の紙層6b、及び第1の紙層6aと第2の紙層6bとの間の透明プラスチック層の形態の導波路7を積層した積層体から成る。これらの紙層6a、6bは不透明である。2つのウィンドウ8a、8bが基材1に設けられている。これらのウィンドウは、2つの紙層6a、6bの穴により形成されていて、導波路7は紙層6a及び紙層6bの両方を通って延在している。
【0026】
ウィンドウ8a、8bの位置において、導波路7に第1のカプラ10a及び第2のカプラ10bがそれぞれ設けられている。これらのカプラの目的は、光を導波路7に入射させることであり、および/または光を導波路7から出射させることである。
【0027】
図2の実施形態によれば各カプラ10a、10bは、グレーティング11、具体的には表面グレーティングにより形成され、このグレーティングは例えばエンボス法によって、導波路7に凹版印刷法で形成されている。各グレーティングは、有利には規則的な間隔で、互いに平行に延びる複数のグレーティングラインから成る。
【0028】
図1及び2のセキュリティデバイスの動作は以下の通りである:光がカプラ10a、10bのうちの一方のカプラに、例えばカプラ10aに入射すると、光はそのカプラによって散乱される。散乱光の一部は、そのカプラから離れて導波路7に全反射されるような角度で入射し、導波路7に沿って伝搬する。光が第2のカプラ10bの位置に到達した場合にのみ、光が再び散乱されることにより、その光の一部が導波路7から出射するようになり、その光の一部を、光の波長によって異なるが、適切な検出器によって、または眼で観測することができる。
【0029】
従って、これらのウィンドウのうちの一方のウィンドウ、例えば第1ウィンドウ8aを、光源で照射すると、第2ウィンドウ8bに位置する第2カプラが発光し始める。
【0030】
デバイスの効率を高めるために、カプラ10a、10bのグレーティングラインを、これらのカプラを結ぶ直線に直交させる。
【0031】
これらのグレーティングラインの間隔は、光の波長よりも著しく長くすることができ、その際、このグレーティングは、散乱を長い波長領域に亘って生じさせる複数の古典的散乱体を成している。別の構成として、これらのグレーティングラインの間隔が光の波長と同じであるか、またはこの波長よりも若干長い場合、回折グレーティングが形成され、この回折グレーティングは、光を、特定のブラッグ条件でしか散乱しないので、色彩効果が得られる。具体的には、第2のグレーティング10bすなわち導波路7から光を出射させるグレーティングが回折グレーティングである場合、グレーティングを異なる角度から眺めるときにレインボー効果を観察することができる。
【0032】
第2の実施形態:
図3には、導波路をベースとしたセキュリティデバイスの第2の実施形態が示されている。この図には、利用可能な種々のタイプのカプラだけでなく、種々のタイプの基材が示されている。
【0033】
図3によれば、まずは基材1は実質的にもっぱら導波路7によって形成されており、紙シート6a、6bの替わりに、インク層12a、12bが用いられ、これらのインク層は、例えば導波路7の両側に、オフセット印刷のような印刷法により塗布されている。この場合も同じように2つのウィンドウ8a、8bが、対応する領域へのいかなる印刷も行われないようにすることにより、または低吸光度のインクまたはワニスのみを塗布することにより、ドキュメントに形成される。
【0034】
第1のウィンドウ8aの領域では第1のカプラが、散乱体を導波路7に埋め込むことにより(または導波路7の上に配置することにより)形成される。これらの散乱体は、例えば散乱粒子を導波路7に埋め込むことにより、または導波路7を局所的に、例えばレーザ照射によって変質させることにより形成することができる。
【0035】
第2のウィンドウ8bの領域では、第2のカプラ10bもまた、導波路7内に埋め込まれ、第2のカプラ10bは、例えば以下の手段のうちの1つ以上の手段により形成することができる:
a)ボリュームホログラム。このようなボリュームホログラムは、国際特許出願第WO 2005/124456号(Xetos AG)に記載されている方法を用いて、例えばプラスチック層内にコヒーレント光を照射することにより形成することができる。このようなホログラムは、適切な角度で、かつ適切なグレーティング間隔で配置される場合、導波路7からの所定の波長領域の光を効率的に回折させることにより、強い色彩効果が得られる。
【0036】
b)導波路7内を案内される光の照射の下で発光する発光色素。このような色素は、導波路7に埋め込むことができる、または参照番号10b’で示すように、導波路7の表面に、例えば印刷法を用いて塗布することができる。光を導波路7に第1カプラ10aを介して入射させる場合、この光によって色素が基本的に全空間方向に発光することにより、色素によって観察者の眼に対し明るい光を放つ。
【0037】
なお、ここで述べておくと、本明細書において説明するほとんどの実施形態では、第1及び第2カプラ10a、10bの役割を逆にする、すなわち第2カプラ10bを使用して光を導波路7に入射させることもできるとともに、第1カプラ10aを使用して光を導波路7から出射させることもできる。例えば、ボリュームホログラムを使用して、光を導波路7に入射させることもできる。また、導波路7の上または導波路7内に配置される発光色素を照射する場合、色素が発光する光の一部は、導波路7に沿って伝搬し、第1のカプラ10aの位置で出射することになる。
【0038】
適切な色素の例としてマクロレックスレッド(Macrolex red:Bayer AG製、赤色光を発光する)、またはフルオロール(Fluorol:Sigma-Aldrich社製、緑色金色光を発光する)を挙げておく。
【0039】
ドキュメントに、少なくとも2つの異なる発光色を有する色素を使うことにより、効果を一層際立たせることもできる。種々の色を、例えばそれぞれ異なる位置に配置することができる。従って、これらの色により多色画像を形成することができる。或いは、これらの色を、光を入射させる場所や光をどのようにして入射させるかによって異なるが、1度にこれらの色素のうち1つの色素しか励起されないように配置することもできる。
【0040】
第3の実施形態:
更に別の実施形態を図4に示す。この場合、これらのカプラのうちの一方のカプラ、例えば第2カプラ10bの替わりに、少なくとも1つの穿孔を用いることができ、複数の穿孔14を用いると有利である。各穿孔は、導波路7を貫通して延在しており、各穿孔によって、導波路7内で光の散乱を生じる端面がこの導波路7に形成される。従って、光が導波路7に沿って伝搬すると、その光の一部が、これらの穿孔14の位置で散乱させられ、これらの穿孔14が発光し始める。これらの穿孔14が、ドキュメントの両側に向けて発光することができるように、不透明基材1の厚み全体を貫通して延在していると有利である。
【0041】
これらの穿孔は、例えば国際特許出願第WO 2004/011274号に記載されているようなレーザドリル穿孔により形成することができる。
【0042】
第4の実施形態:
図5の実施形態によれば、第2カプラ10bは、例えば散乱体または蛍光色素の周期配列により形成される周期構造を有する。更に、周期的なマイクロレンズアレイ15が、カプラ10bの上に配置され、例えばマイクロレンズアレイを個別に形成し、マイクロレンズアレイを第2のウィンドウ8bに接着することにより形成される。これらのマイクロレンズの周期は、カプラ10bの構造の周期にほぼ等しい。ここで「ほぼ等しい」とは10%以下の偏差であることを表す。従って、光が導波路7内を伝搬している状態でドキュメントを、マイクロレンズアレイ15を通して眺めると、カプラ10bとこれらのマイクロレンズとの間の相互作用によって非常に特徴的な挙動が生じる。この挙動は、これらのレンズの周期、及びカプラ10bの周期がわずかに一致しない場合に一層顕著になる。
【0043】
更に図5には、ウィンドウ8a、8bのうちのいずれかを、図5のウィンドウ8bのようなハーフウィンドウとすることもできる様子が示されている。ハーフウィンドウを使用することは、光が出射する位置において特に有利になるが、その理由は、このハーフウィンドウによって、カプラ10bの所定の背景を実現できるからである。例えばこの背景を暗くなるように選択することができるので、出射光の視認性を高めることができる。図5ではハーフウィンドウを特定の種類のカプラと組み合わせて示しているが、ハーフウィンドウを他の何らかの種類のカプラと組み合わせることもできる。
【0044】
第5の実施形態:
図6の実施形態は、図1の実施形態にほぼ対応している。しかしながら、図1の実施形態では、導波路7は、紙シート6a、6bとほぼ同じ延在部分を有するプラスチックシートであったが、図6の実施形態によれば導波路7は、基材1内に少なくとも部分的に埋め込まれた薄いストライプであり、すなわちセキュリティスレッドである。このセキュリティスレッドは、ウィンドウ8a、8bを通して視認することができる。
【0045】
導波路:
図7は、導波路7の好適な構造を示している。導波路7は、第1の層7aと、第2の層7bと第3の層7cとを備え、第1の層7aは、第2及び第3の層7b、7cよりも高い屈折率を有している。屈折率ステップは、導波光を第1の層7a内に閉じ込めるために十分大きく、ほんの僅かな量の光しか層7b、7cに到達せず、かつ光は実際には殆ど層7b、7cよりも外に出て行くことがない。上述のようにこの設計により、損失及び減衰が小さくなる。
【0046】
有利な点として図7に示されているように層7b、7cは、第1層7aと、紙シート6a、6bまたはインク層12a、12bのような基材1の光吸収部分との間に配置される。
【0047】
導波路は、モノモード導波路またはマルチモード導波路のいずれかとすることができる。しかしながらマルチモード導波路が有利であり、その理由は、マルチモード導波路の方が製造が容易であるし信頼性も高く、この実施例のようなケースではいっそう高い結合効率を有しているからである。
【0048】
導波路の製造:
図8には、導波路を製造する第1のプロセスが示されている。このプロセスによれば、液化熱可塑性の透明ポリマー材料20が、送られてくる2枚の紙22の間にノズル21によって注入される。これら送られてくる紙22が、ローラ23によって互いに押し付け合わせられることにより、ポリマー層が2枚の紙層の間に形成される。この場合、欧州特許第EP2 000 321号(Lanqart AG)に記載されている方法を使用することができる。
【0049】
導波路7が3つの層から成る図7に示したようなシステムを製造するためには、紙シート22をそれぞれ、低屈折率の透明ポリマー層で被覆しておくことができる。これらの紙シート22は、これらのポリマー層が互いに向かい合わせになるよう図8の機構に送り込まれる。従って、これらの低屈折率の透明ポリマー層により図7の層7b、7cが形成されるのに対し、いっそう高い屈折率を有するように選択された熱可塑性の透明ポリマー材料20により層7aが形成される。
【0050】
図9には別の製造方法が示されている。この場合、中身の詰まった可撓性ポリマー薄片24が送られてくる2枚の紙22の間に挿入され、これら送られてくる紙22に積層される。この場合も同じように、3つの層はローラ23によって圧縮される。薄片24と送られてくる紙22との間の接合部は、例えば接着剤により形成することができ、または薄片24を加熱して、薄片24を紙に溶着することにより形成することができる。接着剤が使用される場合、この接着剤をこの場合も同じようにして使用することにより、図7の実施形態の低屈折率の層7b、7cを形成することができる。
【0051】
注記:
これまで述べてきたように、蛍光色素または発光色素を使用して、光を導波路7に入射させることができる。このような発光色素は、導波路7に接続される光源として機能する。発光色素とは別に、国際特許出願第WO 2006/056089号に記載されているように、導波路7に隣接するドキュメント、または導波路7内のドキュメントに一体化される半導体光源またはOLED光源のような他のいずれかの種類の光源を用いることもできる。
【0052】
ドキュメントは、色変化を照射波長に依存して生じさせる2種類以上の蛍光色素または発光色素の組み合わせ(メタメリックインク)を含むこともできる。
【0053】
非線形光学材料のような周波数アップコンバータを色素の代わりに、または色素の他に使用することもできる。
【0054】
上に説明した例の殆どにおいて、2つのウィンドウ8a、8bは、カプラ10a、10bの位置に使用することができる。しかしながら、導波路7が、基材1の端面に至るまでずっと続いて延在している場合、その端面をカプラとして使用することもできる。例えば、図6の実施形態においては導波路7は、基材1の端面26に至るまでずっと続いて延在しており、カプラ10a、10bのうちの一方のカプラを通って入射する光を、端面26で視認することができるようになる。
【0055】
なお、ここで述べておくと、これまでの説明において様々なタイプの基材及びカプラについて説明してきたが、これらの基材のうちのいずれかの基材を、これらのカプラのいずれかのカプラと組み合わせることができる。また、いずれかの一連の異なるカプラを組み合わせることもでき、本発明はこれらの図に示す特定の組み合わせに限定されるものではない。
【0056】
これまで本発明の現時点で最も好適な実施形態を示し説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下の請求項の範囲内で多種多様に具体化し実施できることは自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(1)と、
該基材(1)の上および/または該基材(1)内に配置される光導波路(7)と、
光を該光導波路(7)に入射させる、または該光導波路(7)から出射させる少なくとも1つのカプラ(10a,10b)と、
を備える、セキュリティドキュメント。
【請求項2】
第1及び第2のカプラ(10a,10b)を備え、前記導波路(7)に前記第1のカプラ(10a)を介して入射される光は、少なくとも部分的に前記第2のカプラ(10b)に到達し、該第2のカプラ(10b)から出射する、請求項1に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項3】
前記カプラ(10b)は、前記導波路(7)を貫通して延在する少なくとも1つの穿孔(14)を含む、請求項1または2に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項4】
前記カプラ(10b)は、前記導波路(7)及び前記基材(1)を貫通して延在する複数の穿孔(14)を含む、請求項3に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項5】
前記基材(1)は不透明であり、かつ少なくとも1つの透明なウィンドウまたはハーフウィンドウ(8a,8b)を含み、少なくとも1つのカプラ(10a,10b)は、前記ウィンドウまたはハーフウィンドウ(8a,8b)内に配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項6】
前記基材(1)は、少なくとも第1及び第2の透明ウィンドウまたはハーフウィンドウ(8a,8b)を含み、第1のカプラ(10a)が、前記第1のウィンドウまたはハーフウィンドウ(8a)内に配置され、第2のカプラ(10b)が、前記第2のウィンドウまたはハーフウィンドウ(8b)内に配置され、前記導波路(7)は、前記第1のウィンドウまたはハーフウィンドウ(8a)と前記第2のウィンドウまたはハーフウィンドウ(8b)との間に延在している、請求項5に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項7】
前記カプラ(10a,10b)はグレーティング(11)を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項8】
前記カプラ(10a,10b)は、前記導波路(7)内に埋め込まれた、または前記導波路(7)上に配置された、光散乱体を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項9】
光を前記導波路(7)に入射させるために、または前記導波路(7)から出射させるために、前記導波路(7)内または前記導波路(7)上に配置された蛍光色素または発光色素を備える、請求項1から8のいずれか1項に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項10】
少なくとも2つの異なる発光色の発光色素を備える、請求項9に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項11】
周期的なマイクロレンズアレイ(15)を備え、前記カプラ(10a,10b)は周期的な構造を有し、前記マイクロレンズアレイは、該周期的な構造と実質的に等しい周期を有する、請求項1から10のいずれか1項に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項12】
前記導波路(7)は、前記基材(1)内に少なくとも部分的に埋め込まれる、請求項1から11のいずれか1項に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項13】
前記導波路(7)は、少なくとも第1の層(7a)及び第2の層(7b)を含み、前記第1の層(7a)は、前記第2の層(7b)よりも大きい屈折率を有し、前記第2の層(7b)は、前記第1の層(7a)と前記基材(1)の光吸収部分との間に配置される、請求項1から12のいずれか1項に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項14】
前記導波路(7)は更に第3の層(7c)を含み、前記第1の層(7a)は、前記第3の層(7c)よりも大きい屈折率を有し、前記第1の層(7a)は、前記第2の層(7b)と前記第3の層(7c)との間に配置される、請求項13に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項15】
前記導波路(7)に接続される光源を備える、請求項1から14のいずれか1項に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項16】
前記導波路(7)は、前記基材(1)内に少なくとも部分的に埋め込まれるセキュリティスレッドである、請求項1から15のいずれか1項に記載のセキュリティドキュメント。
【請求項17】
前記導波路(7)は、前記基材(1)と略同じサイズを有するプラスチック薄片である、請求項1から16のいずれか1項に記載のセキュリティドキュメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−514200(P2013−514200A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543430(P2012−543430)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000405
【国際公開番号】WO2011/072405
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(505030443)オレル フュスリィ ズィヒャーハイツドルック アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】Orell Fuessli Sicherheitsdruck AG
【住所又は居所原語表記】Dietzingerstrasse 3, CH−8003 Zuerich, Switzerland
【Fターム(参考)】