説明

光導波路及びその製造方法

【課題】複数のコア層がクラッド層を中間層として積層された多層構造を有し、複雑なデザインの光配線を可能とし、情報信号の高速、高容量伝送化を可能とする光導波路を提供すること。
【解決手段】クラッド部11A及びコア部11Bを有する複数のコア層11がクラッド層10を中間層として積層されており、コア層11及びクラッド層10がそれぞれ樹脂成分を含有してなる層であり、コア部11Bがクラッド部11A及びクラッド層10よりも相対的に高い屈折率を有し、且つ、クラッド層10が紫外線吸収成分を含有することを特徴とする光導波路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路及びその製造方法に関し、より詳しくは、多層構造の光導波路及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器においては、電子部品間の情報信号の高速、高容量伝送化の要求が高まっている。近年では、このような情報信号の高速、高容量伝送化に対応するために、電子部品間を光信号によって接続することが検討されてきている。そして、電子部品間を光信号によって接続するために、電子部品間を光導波路で接続することが研究されてきた。
【0003】
このような光導波路の製造方法としては、例えば、特開2008−122898号公報(特許文献1)において、基材上において第1のクラッド層を形成する第1の工程と、前記第1のクラッド層上にコア層を積層する第2の工程と、前記コア層を露光現像し、光導波路のコアパターンを形成する第3の工程と、第2のクラッド層形成用樹脂フィルムのラミネートによってコアパターンを第2のクラッド層形成用樹脂中に埋め込む第4の工程と、前記クラッド層形成用樹脂を硬化し、第2のクラッド層を形成する第5の工程とを含む方法が開示されている。しかしながら、このような特許文献1に記載のような従来の光導波路の製造方法においては、フォトリソグラフィーを利用してコアを形成するため、エッチング工程が必要であり工程が煩雑であるという問題があった。また、このような従来の光導波路の製造方法においてはコアを形成した後、第2のクラッド層をラミネートしてコアを第2のクラッド層に埋め込むため、第2のクラッド層の表面にコアの形状に由来した凹凸形状が生じ、その表面を平滑にすることが困難であった。このように、従来の光導波路の製造方法においては、フォトリソグラフィーを利用してコアを形成する必要があるばかりか、第2のクラッド層の上に更にコア及びクラッド層を配置して多層構造の光導波路を製造するためには、第2のクラッド層の表面を平滑にする必要もあり、工程が煩雑であった。
【特許文献1】特開2008−122898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、複数のコア層がクラッド層を中間層として積層された多層構造を有し、複雑なデザインの光配線を可能とし、情報信号の高速、高容量伝送化を可能とする光導波路を提供すること、並びに、複数のコア層がクラッド層を中間層として積層された多層構造を有する複雑なデザインの光導波路を簡便な工程で効率よく製造することが可能な光導波路の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、先ず、コア層上に紫外線吸収成分を含有するクラッド層を形成する工程(A)と、クラッド層上にコア前駆体層を形成し、該コア前駆体層にフォトマスクを介して紫外光を照射し、紫外光の照射領域と非照射領域とにそれぞれクラッド部とコア部とを形成せしめてクラッド部とコア部とを有するコア層を形成する工程(B)とを実施する光導波路の製造方法により、工程(A)において形成されるクラッド層が紫外光を吸収する層となることから、工程(B)において前記コア前駆体層に紫外光を照射する際に、コア前駆体層が形成されている前記クラッド層のもう一方の面に積層されているコア層(既に形成されているコア層)には紫外光の影響が及ばないため、コア層上に形成されたクラッド層の上に、紫外光を利用しながら新たなコア層を形成することが可能となり、ポリマーからなるコア層及びクラッド層を備える多層構造の光導波路の製造することが可能となることを見出した。なお、従来の光導波路の製造方法において、樹脂成分を含有してなるコア層を形成する工程として紫外光を照射してコア層を形成する工程を採用しつつ、得られる光導波路の構造を複数のコア層がクラッド層を中間層として積層された構造(多層構造)とすることができるような方法は未だ見出されていなかった。そして、このような工程(A)及び(B)を実施する方法によって、複数のコア層がクラッド層を中間層として積層されている複雑なデザインを有する光導波路を簡便に効率よく製造でき、更には、得られる多層構造の光導波路が情報信号の高速、高容量伝送化を達成することが可能なものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の光導波路は、クラッド部及びコア部を有する複数のコア層がクラッド層を中間層として積層されており、前記コア層及び前記クラッド層がそれぞれ樹脂成分を含有してなる層であり、前記コア部が前記クラッド部及び前記クラッド層よりも相対的に高い屈折率を有し、且つ、前記クラッド層が紫外線吸収成分を含有することを特徴とするものである。
【0007】
上記本発明にかかる紫外線吸収成分としては、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出する第一の光酸発生剤及び該第一の光酸発生剤に由来する成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分であることが好ましい。
【0008】
上記本発明の光導波路においては、前記第一の光酸発生剤の吸収極大波長は300〜400nmであることが好ましい。また、前記第一の光酸発生剤としては、アルミン酸塩、アンチモン酸塩、ホウ酸塩、ガリウム酸塩、カルボラン類及びハロカルボラン類からなる群から選択される少なくとも1種の光酸発生剤であることが好ましい。更に、前記第一の光酸発生剤としては、式:−S(Ph)、−S(Ph)、−I(Ph)及び−I(Ph)[前記式中、Phはフェニル基を示す。]で表される構造のうちの少なくとも1つの構造を有する化合物からなることが好ましい。
【0009】
また、上記本発明の光導波路においては、前記クラッド層がノルボルネン系ポリマーを含有することが好ましい。
【0010】
さらに、上記本発明の光導波路においては、前記コア部が前記クラッド層中の樹脂成分よりも相対的に高い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーを含有し、且つ、前記クラッド部が前記コア部に含有されるノルボルネン系ポリマーよりも相対的に低い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーを含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明の光導波路の製造方法は、下記工程(A)及び(B):
[工程(A)] コア層上に紫外線吸収成分を含有するクラッド層を形成する工程;
[工程(B)] クラッド層上にコア前駆体層を形成し、該コア前駆体層にフォトマスクを介して紫外光を照射し、紫外光の照射領域と非照射領域とにそれぞれクラッド部とコア部とを形成せしめてクラッド部とコア部とを有するコア層を形成する工程;
を含み、複数のコア層がクラッド層を中間層として積層されている光導波路を得ることを特徴とする方法である。
【0012】
上記本発明の光導波路の製造方法においては、前記工程(A)及び(B)を実施する前に、基材上又は基材上に形成されたクラッド層上に、コア前駆体層を形成し、該コア前駆体層にフォトマスクを介して紫外光を照射し、紫外光の照射領域と非照射領域とにそれぞれクラッド部とコア部とを形成せしめて、クラッド部とコア部とを有するコア層を形成することが好ましい。
【0013】
上記本発明の光導波路の製造方法においては、前記工程(A)が、コア層上に紫外線吸収剤を含有するクラッド層形成用ワニスを塗布してクラッド層を形成する工程であることが好ましく、コア層上に紫外線吸収剤を含有するクラッド層形成用ワニスを塗布した後に紫外光を照射してクラッド層を形成する工程であることがより好ましい。
【0014】
上記本発明の光導波路の製造方法においては、前記コア前駆体層を形成する工程が、クラッド層上にコア層形成用ワニスを塗布してコア前駆体層を形成する工程であることが好ましい。
【0015】
上記本発明の光導波路の製造方法においては、前記クラッド層形成用ワニスが、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出する第一の光酸発生剤と、第一のポリマーとを含有することが好ましい。
【0016】
上記本発明の光導波路の製造方法においては、前記第一の光酸発生剤の吸収極大波長が300〜400nmであることが好ましい。また、前記第一の光酸発生剤としては、アルミン酸塩、アンチモン酸塩、ホウ酸塩、ガリウム酸塩、カルボラン類及びハロカルボラン類からなる群から選択される少なくとも1種の光酸発生剤であることが好ましい。更に、前記第一の光酸発生剤としては、式:−S(Ph)、−S(Ph)、−I(Ph)及び−I(Ph)[前記式中、Phはフェニル基を示す。]で表される構造のうちの少なくとも1つの構造を有する化合物からなることが好ましい。
【0017】
上記本発明の光導波路の製造方法においては、前記第一のポリマーが、重合性基を含有する側鎖を有するノルボルネン系ポリマーであることが好ましく、エポキシ基を含有する側鎖を有するノルボルネン系ポリマーであることがより好ましい。
【0018】
上記本発明の光導波路の製造方法においては、前記コア層形成用ワニスが、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出する第二の光酸発生剤と、前記第二の光酸発生剤が放出する酸によって離脱する離脱性基を含有する側鎖を有する第二のポリマーとを含有することが好ましい。
【0019】
上記本発明の光導波路の製造方法においては、前記第二のポリマーが、前記脱離性基を含有する側鎖を有するノルボルネン系ポリマーであることが好ましく、前記離脱性基としては、式:−O−、−Si−及び−O−Si−で表される構造のうちの少なくとも1つの構造を含有する基が好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数のコア層がクラッド層を中間層として積層された多層構造を有し、複雑なデザインの光配線を可能とし、情報信号の高速、高容量伝送化を可能とする光導波路を提供すること、並びに、複数のコア層がクラッド層を中間層として積層された多層構造を有する複雑なデザインの光導波路を簡便な工程で効率よく製造することが可能な光導波路の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
図1は、本発明の光導波路の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。図1に示す光導波路1は、クラッド層10と、クラッド部11A及びコア部(導波路チャンネル)11Bを有するコア層11とを備え、2層のコア層11がクラッド層10を介して積層された構造を有する。このような構成により、コア部11Bが導光路として機能する。
【0023】
クラッド層10は樹脂成分を含有してなる層である。
【0024】
このようなクラッド層10中の樹脂成分としては、特に制限されず、光導波路中のクラッド層を形成させるために用いることが可能な公知のポリマーを適宜用いることができ、例えば、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール等のポリマーや、これらのポリマーの1種又は2種以上を組み合わせたポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、架橋体等が好適なものとして挙げられる。なお、このような樹脂成分を含有するクラッド層10を備える光導波路において、コア部11Bを導光路として十分に機能させるためには、クラッド層10の屈折率をコア部11Bの屈折率よりも低くする必要がある。そのため、クラッド層10中の樹脂成分としては、コア層11Bを形成する材料よりも屈折率が低い樹脂成分を選択して用いることが好ましい。
【0025】
このようなクラッド層10中の樹脂成分としては、可撓性、耐熱性、耐湿性の観点から、主鎖中に下記一般式(1):
【0026】
【化1】

【0027】
で表される構造単位を有するノルボルネン系ポリマーを含有していることが好ましい。また、クラッド層10中の樹脂成分は、後述するクラッド形成用ワニス中の第一のポリマーに由来して形成される樹脂(例えば、第一のポリマーそのもの、第一のポリマーどうしの反応物、第一のポリマーとクラッド形成用ワニス中のモノマーや架橋剤等とが反応して形成される樹脂等)であることが好ましい。
【0028】
さらに、クラッド層10中の樹脂成分の含有比率はクラッド層の全質量に対して80質量%〜99質量%であることが好ましい。このような比率が前記下限未満では、樹脂成分の特性に由来するクラッド層の特性が低下する傾向にあり、例えば、樹脂成分としてノルボルネン系ポリマーを用いた場合には、ノルボルネン系ポリマーの特性に由来するクラッド層の柔軟性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、UV吸収材や光酸発生剤成分を十分に添加することができないため、クラッド層のUV吸収性能や耐熱性が低下する傾向にある。
【0029】
また、クラッド層10は紫外線吸収成分を含有する層である。このような紫外線吸収成分としては、紫外線を吸収できるものであればよく特に制限されず、例えば、パラメトキシケイ皮酸2エチルヘキシル、パラジメチルアミノ安息香酸2エチルヘキシル、オキシベンゾン、4−tert−ブチル−4−メトキシ−ベンゾイルメタン等のUV吸収材や、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出する第一の光酸発生剤及び前記第一の光酸発生剤に由来する成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分であってもよい。
【0030】
このような紫外線吸収成分としては、クラッド層の製造効率等の観点から、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出する第一の光酸発生剤、及び前記第一の光酸発生剤に由来する成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分が好ましい。なお、ここにいう「第一の光酸発生剤に由来する成分」とは、第一の光酸発生剤が熱や光の照射等によって分解又は他の成分と反応して得られる成分であって、紫外領域に吸収極大波長を有する成分をいう。
【0031】
また、このような第一の光酸発生剤としては、吸収極大波長が300〜400nmにあるものが好ましい。このような吸収極大波長が前記下限未満では通常の高圧水銀ランプやメタルハライドランプから照射される紫外線波長の下限未満となるため実質的に紫外線吸収能力を示さなくなり、クラッド層に紫外線吸収性能を発揮させることが困難となる傾向にある。他方、前記上限を超えると、クラッド層が可視光領域の光を吸収することになるため、光導波路位置を左右上下に精密に制御して積層するプロセスにおいて、下部の光導波路形状を上部からクラッド層を通して識別することが困難になり、製造工程が煩雑となる傾向にある。また、このような第一の光酸発生剤としては、吸収しきれなかった紫外光をクラッド層で散乱させて、より効率よくコア層の導波路パターンに紫外線による影響が及ばないようにすることが可能である観点から、紫外光の照射により着色するものがより好ましい。
【0032】
また、このような第一の光酸発生剤としては、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出することが可能なものであればよく、特に制限されないが、化学的な安定性とポリマー材料への溶解性の双方を両立させることが可能であるという観点から、アルミン酸塩、アンチモン酸塩、ホウ酸塩、ガリウム酸塩、カルボラン類、ハロカルボラン類が好ましく、例えば、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩等が挙げられる。また、このような第一の光酸発生剤としては、市販の光酸発生剤を用いてもよい。このような光酸発生剤の市販品としては、例えば、Rhodia USA社から入手可能な「RHODORSIL(登録商標)PHOTOINITIATOR 2074(CAS番号第178233−72−2番)」、東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−372R((ジメチル(2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル)スルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:CAS番号第193957−54−9番))、みどり化学株式会社から入手可能な「MPI−103(CAS番号第87709−41−9番)」、東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−371(CAS番号第193957−53−8番)」、東洋合成工業株式会社から入手可能な「TTBPS−TPFPB(トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルフォニウムテトラキス(ペンタペンタフルオロフェニル)ボレート)」が挙げられる。なお、第一の光酸発生剤としてRHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を用いる場合、紫外光の照射手段として、高圧水銀ランプ又はメタルハライドランプを用いることが好ましい。これにより300nm未満の十分なエネルギーの紫外光を供給することができ、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を効率よく分解して酸を発生させることが可能となる。
【0033】
また、このような第一の光酸発生剤としては、その第一の光酸発生剤に由来する成分(前記第一の光酸発生剤が分解して得られる成分、前記第一の光酸発生剤が他の物質と反応して得られる成分)により十分に紫外光を吸収する機能を発揮させることができるという観点から、紫外光を吸収して赤外光や可視光に変換して光を放出することが可能な構造部分を含むものが好ましい。このような構造部分としては、例えば、式:−S(Ph);−S(Ph);−I(Ph);−I(Ph);で表される構造[前記式中、Phはフェニル基を示す。]等が挙げられる。
【0034】
さらに、クラッド層中の紫外線吸収成分の含有比率は、クラッド層10の全質量に対して1質量%〜10質量%であることが好ましい。このような比率が前記下限未満では十分な紫外線吸収性能を付与することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとクラッド層そのものの屈折率が高くなり、コア層との屈折率差が低下するために光導波路内への光閉じ込めが不十分となる傾向にある。
【0035】
また、このようなクラッド層10は後述するクラッド層形成用ワニスにより得られる層であることが好ましく、後述する本発明の光導波路の製造方法において採用されている工程(A)を実施して得られる層であることがより好ましい。
【0036】
また、クラッド層10の平均厚さZとしては特に限定されないが、1〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましく、10〜60μmであることが更に好ましい。また、このようなクラッド層10の平均厚さZは、コア層11の平均厚さXの0.1〜1.5倍であることが好ましく、0.3〜1.25倍であることがより好ましい。クラッド層10の平均厚さZを前記範囲となるようにすることにより、光導波路1が不要に大型化(厚膜化)することを防止しつつ、クラッド層10としての機能がより十分に発揮される傾向にある。
【0037】
コア層11は樹脂成分を含有してなる層である。このようなコア層を形成する樹脂成分としては特に制限されず、光導波路のコア層を形成させるために用いることが可能な公知のポリマーを適宜用いることができ、例えば、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール等のポリマーや、これらのポリマーの1種又は2種以上を組み合わせたポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、架橋体等が好適なものとして挙げられる。なお、このようなコア層11中の樹脂成分とクラッド層10中の樹脂成分とは、同一のものを用いてもよいが、より容易に屈折率差を生じせしめることが可能であるという観点から、異なる種類のもの(主鎖が同一で側鎖の種類が異なるもの等も含む)であることが好ましい。
【0038】
また、コア層11中の樹脂成分としては、850nm近傍の波長領域の光線透過率に優れ、且つ耐熱性と柔軟性を兼ね備えているという観点から、主鎖中に上記一般式(1)で表される構造単位を有するノルボルネン系ポリマーを含有していることが好ましい。
【0039】
さらに、このようなコア層11のコア部11B中の樹脂成分としては、コア部11Bを導光路としてより効率よく機能させるという観点から、クラッド層10中の樹脂成分よりも相対的に高い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーを用いることが好ましい。また、クラッド部11A中の樹脂成分としては、コア部11Bを導光路としてより効率よく機能させるという観点から、コア部11B中のノルボルネン系ポリマーよりも相対的に低い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーを含有することが好ましい。このような各部位におけるノルボルネン系ポリマーの屈折率差は、ポリマー中の繰り返し単位の種類を変更したり、同じ繰り返し単位を含有するポリマーであってもその繰り返し単位の含有比率を変更したりすること等によって調整することが可能である。
【0040】
また、コア層11中の樹脂成分は、後述するコア形成用ワニス中の第二のポリマーに由来して形成される樹脂(例えば、第二のポリマーそのもの、第二のポリマーのどうしの反応物、第二のポリマーとコア形成用ワニス中のモノマーや架橋剤等とが反応して形成される樹脂等)であることが好ましい。また、コア層11は、後述するコア形成用ワニスにより得られる層であることが好ましく、後述する本発明の光導波路の製造方法において採用される工程(B)を実施して得られる層であることがより好ましい。
【0041】
コア層11の平均厚さXとしてはその用途に応じてその設計を適宜変更できるものであり、特に限定されないが、1〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましく、10〜60μmであることが更に好ましい。また、コア部11Bの横断面形状としては特に制限されないが、略正方形状又は略矩形(略長方形)であることが好ましい。このようなコア部11Bの幅Yとしては、その用途に応じてその設計を適宜変更できるものであり、特に限定されないが、1〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましく、10〜60μmであることが更に好ましい。また、コア部11Bは、直線状であっても途中で湾曲、分岐等してもよく、目的とする用途に応じてその形状を適宜変更することができる。
【0042】
また、コア層11中のコア部11Bは、クラッド部11A及びクラッド層10よりも相対的に高い屈折率を有する。このようなコア部11Bとクラッド部11Aとの屈折率差としては特に限定されないが、クラッド部11Aが樹脂成分を含有するものである場合には、0.3〜5.5%であることが好ましく、0.8〜2.2%であることがより好ましい。前記屈折率差が前記下限未満ではコア部により光を伝達する効果が低下する傾向にある。なお、ここにいう「屈折率差」としては、クラッド部11Aの屈折率をnとし、コア部11Bの屈折率をnとしたときに下記式:
屈折率差(%)={(n/n)−1}×100
を計算して求められる値を採用する。
【0043】
また、このようなコア部11Bとクラッド層10との屈折率差としては、クラッド層10の屈折率がコア部11Bの屈折率よりも低ければよく特に限定されないが、クラッド層10が樹脂成分を含有する層である場合には、0.2〜20%であることが好ましく、0.5〜10%であることがより好ましい。前記屈折率差が前記下限未満ではコア部により光を伝達する効果が低下する傾向にある。
【0044】
また、本実施形態の光導波路1は、コア部11Bの屈折率が空気の屈折率よりも相対的に高くなっている。このようにコア層11が空気と接する層である場合にコア部11Bの屈折率を空気の屈折率よりも相対的に高くすることによって、コア部11Bを導光路としてより効率よく機能させることが可能である。
【0045】
また、コア部11Bが空気と接する場合においては、コア部11Bの屈折率を空気の屈折率よりも相対的に高くして、コア部11Bと空気との屈折率差を50〜60%とすることが好ましい。このような屈折率差が前記下限未満ではコア11Bの光を伝播する性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、光の散乱が増して光の伝搬損失が大きくなる傾向にある。
【0046】
さらに、このような光導波路1の好適な用途としては、コア部11Aの材料の光学特性等によっても異なるものであるため一概には言えないが、例えば、600〜1550nm程度の波長領域の光を使用したデータ通信において使用することが好ましい。また、使用時においては、各種基板上に光導波路1を設置して使用してもよい。更に、このような光導波路1は、使用目的等に応じて導体層等を適宜設けて使用してもよい。
【0047】
次に、このような図1に示す光導波路1を製造するための方法として好適に採用することが可能な本発明の光導波路の製造方法の好適な一実施形態について、図2〜図6を参照しながら説明する。
【0048】
このような本発明の光導波路の製造方法の好適な一実施形態においては、基材上にコア層が形成された図2に示すようなコア層積層基材を準備した後、下記工程(A)及び(B):
[工程(A)] 前記コア層上に紫外線吸収成分を含有するクラッド層を形成する工程;
[工程(B)] 前記クラッド層上にコア前駆体層を形成し、該コア前駆体層にフォトマスクを介して紫外光を照射し、紫外光の照射領域と非照射領域とにそれぞれクラッド部とコア部とを形成せしめてクラッド部とコア部とを有するコア層を形成する工程;
を順に実施して、図1に示すような3層構造の光導波路1を製造する方法である。
【0049】
先ず、前記コア層積層基材のコア層11上にクラッド層を形成する工程について説明する。このような工程は、コア層11上に紫外線吸収成分を含有するクラッド層10を形成する工程(工程(A))である。なお、図2に示すコア層積層基材は、基材20上にコア層11を積層させて得られるものであり、その製造方法については後述する。
【0050】
このようなクラッド層を形成させる工程(工程(A))においては、クラッド層形成用ワニスを用いてクラッド層を形成することが好ましい。このようなクラッド層形成用ワニスとしては、前記紫外線吸収剤と、第一のポリマーとを含有するものが好ましい。
【0051】
このような紫外線吸収剤としては、クラッド層形成後において、その紫外線吸収剤に由来する成分(前記紫外線吸収剤が分解して得られる成分、前記紫外線吸収剤が他の物質と反応して得られる成分及び前記紫外線吸収剤そのもの)が、クラッド層10中に存在する前記紫外線吸収成分となるものであればよく、特に制限されず、例えば、パラメトキシケイ皮酸2エチルヘキシル、パラジメチルアミノ安息香酸2エチルヘキシル、オキシベンゾン、4−tert−ブチル−4−メトキシ−ベンゾイルメタン等のUV吸収材や、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出する第一の光酸発生剤が挙げられる。このような紫外線吸収剤の中でも、より効率よくクラッド層を形成できるという観点から、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出する第一の光酸発生剤であることが好ましい。なお、このような第一の光酸発生剤は、上述の紫外線吸収成分として好適な第一の光酸発生剤と同様のものである。また、第一の光酸発生剤の好適なものは、紫外線吸収成分として好適な第一の光酸発生剤の好適なものと同様である。
【0052】
また、前記第一のポリマーとしては、例えば、環状オレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等を含む)、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等)用いることができる。これらの中でも、上記式(1)で表される構造を主鎖中に有するノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主として含有するものが好ましい。また、このようなノルボルネン系ポリマーとしては特に制限されず、クラッド層を形成する際に用いることが可能な公知のノルボルネン系ポリマーを適宜用いることができる。
【0053】
このようなノルボルネン系ポリマーは耐熱性と密着性とのバランスに優れる傾向にあるため、これをクラッド層10の構成材料として使用した場合には、光導波路に導体層等を形成する場合等に加熱してもクラッド層10が軟化して変形することが十分に防止される傾向にある。また、このようなノルボルネン系ポリマーは、高い疎水性を有するためクラッド層10の吸水による寸法変化等が生じ難くなる傾向にある。更に、このようなノルボルネン系ポリマーは、その原料であるノルボルネン系モノマーが比較的安価で入手が容易であることからも好ましい。
【0054】
また、前記クラッド層形成用ワニスにおいて第一のポリマーに主としてノルボルネン系ポリマーを含有させることで、曲げ等の変形に対する耐性に優れ、繰り返し湾曲変形した場合でも、クラッド層10とコア層11との層間剥離が生じ難く、しかもクラッド層10の内部にマイクロクラックが発生することが十分に防止される傾向にある。また、コア層11にもノルボルネン系ポリマーを用いた場合には、クラッド層10とコア層11との密着性がより高度なものとなり、クラッド層10とコア層11との間における層間剥離をより十分に防止できる傾向にある。このようにノルボルネン系ポリマーを用いることによって、光導波路の光伝送性能を十分に維持しつつ耐久性に優れた光導波路を得ることが可能となる。
【0055】
このようなノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。また、このようなノルボルネン系ポリマーの中でも、耐熱性及び可撓性がより十分なものとなるという観点から、付加(共)重合体がより好ましい。
【0056】
また、このようなノルボルネン系ポリマーは、その設計に応じて公知のノルボルネン系のモノマーからモノマーを適宜選択して用いて、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカル又はカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等の公知の重合方法を採用して製造することができる。
【0057】
また、このようなノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、ブチルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ブチルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、デシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ブチルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ブチルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、メチルグリシジルエーテルノルボルネンとのターポリマー、ブチルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、メチルグリシジルエーテルノルボルネン、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ブチルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー等が挙げられる。
【0058】
更に、このようなノルボルネン系ポリマーとしては、重合性基を含有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位、アリール基を含有する側鎖を有するノルボンネンの繰り返し単位、及び、アルキル基を側鎖に有するノルボンネン(アルキルノルボルネン)の繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含むものが好ましく、重合性基を含有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位を少なくとも1種含有するものがより好ましい。
【0059】
このような重合性基を含有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位を含む場合には、クラッド層10中においてノルボルネン系ポリマー同士をその重合性基により直接または架橋剤を介して架橋させることや、コア層に用いるポリマーの種類等によってはコア層に用いるポリマーとノルボルネン系ポリマーとを架橋させること等が可能となり、クラッド層10自体の強度やクラッド層10とコア層との密着性の更なる向上を図ることが可能となる。このような側鎖の重合性基としては、反応性の観点から、エポキシ基、(メタ)アクリル基、および、アルコキシシリル基のうちの少なくとも1種が好ましく、着色性の観点から、エポキシ基が特に好ましい。すなわち、第一のポリマーとしてはエポキシ基を含有する側鎖を有するノルボルネン系ポリマーを用いることが特に好ましい。なお、前記ノルボルネン系ポリマーにおいては重合性基を側鎖に有するノルボルネンの繰り返し単位に関して、1種の繰り返し単位のみを含むものであってもよく、あるいは、それぞれ異なる重合成基を有する2種以上の繰り返し単位を含むものであってもよく、中でも、架橋密度をより向上させることができ、前記効果がより顕著となることから、それぞれ異なる重合性基を有する2種以上のノルボルネンの繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0060】
また、前記ノルボルネン系ポリマーがアリール基を含む側鎖を有するノルボンネンの繰り返し単位を含む場合には、アリール基は極めて高い疎水性を有するため、吸水によるクラッド層10の寸法変化等を防止できる傾向にある。また、アリール基は脂溶性(親油性)に優れるため、コア層に用いられるポリマーとの親和性を向上させることができ、これによりクラッド層10とコア層との間での層間剥離を防止することが可能となり、より耐久性に優れた光導波路を得ることが可能となる。
【0061】
さらに、前記ノルボルネン系ポリマーがアルキルノルボルネンの繰り返し単位を含む場合には、600〜1550nm程度の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れる傾向にあるとともに、ノルボルネン系ポリマーの柔軟性が高くなってクラッド層10により高いフレキシビリティ(可撓性)を付与できる傾向にある。なお、このようなアルキルノルボルネンの繰り返し単位中の側鎖のアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、また、置換基を有していてもよい。このようなアルキル基としては特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。また、前記アルキル基が有していてもよい置換基としては特に制限されないが、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0062】
また、このようなアルキルノルボルネンの繰り返し単位中の側鎖のアルキル基の炭素数は特に制限されないが1〜20(より好ましくは3〜12)であることがより好ましい。このような炭素数が前記下限未満では、ポリマーから可撓性が損なわれ、柔軟性を要求される用途への適用が困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリマーの耐熱性が低下する傾向にある。なお、このようなアルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、比較的屈折率の高いアリール基を含む側鎖を有するノルボンネンの繰り返し単位を更に含む場合においても、クラッド層の屈折率の上昇を防止することが可能となる。
【0063】
また、このようなノルボルネン系ポリマーの中でも、アルキル基を側鎖に有するノルボルネンの繰り返し単位(アルキルノルボルネンの繰り返し単位)と、重合性基を含有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位とを含有するものがより好ましく、中でも、アルキルノルボルネンの繰り返し単位とエポキシ基を含有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位と含有する下記一般式(2):
【0064】
【化2】

【0065】
[式中、Rはアルキル基を表し、aは0〜3の整数を表し、bは1〜3の整数を表し、p及びqは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ20以下の整数を示す。]
で表される構造を有するノルボルネン系ポリマーがより好ましい。なお、前記一般式(2)中においてRで表されるアルキル基は前記アルキルノルボルネンの繰り返し単位中の側鎖のアルキル基と同様のものである。
【0066】
このような一般式(2)で表される繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーの中でも、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、aおよびbがそれぞれ1である化合物(例えば、ブチルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー)がより好ましい。
【0067】
また、第一のポリマーに主としてノルボルネン系ポリマーを用いる場合において、第一のポリマー中のノルボルネン系ポリマーの含有比率は80〜100質量%であることが好ましく、95〜100質量%であることがより好ましい。このような含有比率が前記下限未満では、ノルボルネン系ポリマーを用いることにより得られる効果が十分に得られなくなる傾向にある。
【0068】
また、前記クラッド層形成用ワニスにおいては、前記紫外線吸収剤及び前記第一のポリマーの他に、必要に応じて、モノマー、プロカタリスト、増感剤、酸化防止剤を更に含有させてもよい。
【0069】
このようなモノマーとしては、前記第一のポリマーをマトリックスとして、紫外光の照射により反応して反応物を形成するような化合物が好ましい。このようなモノマーに由来する反応物としては、モノマーが第一のポリマー(マトリックス)中で重合して形成されたポリマー(重合体)、第一のポリマー同士を架橋する架橋構造、第一のポリマーに重合して第一のポリマーから分岐した分岐構造(ブランチポリマーや側鎖)等が挙げられる。
【0070】
また、このようなモノマーとしては、架橋性モノマーを含むものを用いることが好ましい。これによりクラッド層10において、架橋性モノマーを介して少なくとも一部のノルボルネン系ポリマー同士を架橋させることが可能となる。また、クラッド層10の形成に用いるポリマーの種類等によっては、クラッド層10中のノルボルネン系ポリマーとコア層の形成に用いるポリマーとを架橋させることも可能となる。このような架橋製モノマーとしては、公知のモノマーを適宜用いることができる。
【0071】
また、このようなモノマーとしては光導波路の形成に用いることが可能なものであればよく特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、モノマーとしては、耐熱性及び柔軟性に優れる光導波路が得られるという観点から、ノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。ここにいう「ノルボルネン系モノマー」とは上記式(1)で表される構造を骨格中に少なくとも1つ有するモノマーをいう。
【0072】
このようなノルボルネン系モノマーは、上記式(1)で表される構造に置換基が結合したものであってもよい。このような置換基としては特に制限されるものではないが、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基、直鎖状又は分岐鎖状のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のシクロアルケニル基、直鎖状又は分岐鎖状のアリール基、直鎖状又は分岐鎖状のアラルキル基であり、直鎖状又は分岐鎖状のアルキリデニル基、ハイドロカルビル基、ハロハイドロカルビル基、パーハロハイドロカルビル基等が挙げられる。このようなノルボルネン系モノマーとしては、例えば、プロピルノルボルネン、ヘキシルノルボルネン等を挙げることができる。
【0073】
また、このようなノルボルネン系モノマーは、複数のノルボルネン環が有機基を介して結合したものであってもよい。このような有機基としては、特に制限されないが、例えば下記式:−(CH−;−(CH−O−(CH−;−Ar−;又は;−(CH−O−Si(X)−O−(CH−[式中、nは1〜10の整数を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素を示し、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよい芳香族炭化水素のうちのいずれかを示す。]で表される基が挙げられる。なお、このような有機基を介して結合した複数のノルボルネン環は、それぞれ上記置換基を有していてもよい。また、このようなノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ビス−ノルボルネンメトキシジメチルシラン、ビス−ノルボルネンメトキシジエチルシラン、ビス−ノルボルネンメトキシジフェニルシラン等が挙げられる。
【0074】
なお、このようなモノマーとしては、国際公開第2005/052641号パンフレットに記載されているモノマーを用いることができる。
【0075】
また、前記プロカタリストは、前記モノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、紫外光の照射により活性化した光酸発生剤の作用により、活性化温度が変化する物質である。このようなプロカタリスト(触媒前駆体ともいう)としては、紫外光の照射に伴って活性化温度が変化(上昇又は低下)するものであればよく、特に制限されないが、紫外光の照射に伴って活性化温度が低下するものがより好ましい。このようなプロカタリストによって、光導波路の調製時に他の層に不要な熱が加わるような加熱を施す必要がなくなり、調製時の加熱処理により光導波路の特性(光伝送性能)が低下することを十分に防止できる。
【0076】
このようなプロカタリストとしては、下記一般式(Ia)及び(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
(E(R)Pd(Q) ・・・(Ia)
[(E(R)Pd(Q)(LB)[WCA] ・・・(Ib)
前記一般式(Ia)及び(Ib)において、それぞれ、E(R)は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(又はその同位体の1つ)又は炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレート及びジチオカルボキシレートからなる群から選択されるアニオン配位子を表す。また、一般式(Ib)において、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは1〜3の整数を表し、bは0〜2の整数を表し、aとbとの合計は1〜3であり、p及びrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。
【0077】
前記一般式(Ia)に従う典型的なプロカタリストとしては、Pd(OAc)(P(i−Pr)、Pd(OAc)(P(Cy)、Pd(OCCMe(P(Cy)、Pd(OAc)(P(Cp)、Pd(OCCF(P(Cy)、Pd(OCC(P(Cy)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpはシクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyはシクロヘキシル基を表す。
【0078】
また、前記一般式(Ib)で表されるプロカタリストとしては、p及びrが、それぞれ1及び2の整数うちのいずれかである化合物が好ましい。前記一般式(Ib)に従う典型的なプロカタリストとしては、Pd(OAc)(P(Cy)が挙げられる。ここで、Cyはシクロヘキシル基を表し、Acはアセチル基を表す。
【0079】
また、前記増感剤は、紫外光に対する光酸発生剤の感度を増大して、その活性化(反応又は分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、その活性化に適する波長に紫外光の波長を変化させる機能を有するものである。このような増感剤としては、光酸発生剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、例えば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen−9−ones)が挙げられる。増感剤の具体例としては、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)が挙げられる。これらの増感剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、9,10−ジブトキシアントラセン(DBA)は、川崎化成工業株式会社から入手が可能である。
【0080】
さらに、前記酸化防止剤はフリーラジカルの発生やポリマーの自然酸化を防止して得られた光導波路の特性の向上を図ることができるものである。このような酸化防止剤としては、Ciba Specialty Chemicals社から入手可能なCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1076及びCiba IRGAFOS(登録商標)168が好適に用いられる。また、他の酸化防止剤として、例えば、Ciba Irganox(登録商標)129、Ciba Irganox 1330、Ciba Irganox 1010、Ciba Cyanox(登録商標)1790、Ciba Irganox(登録商標)3114、Ciba Irganox 3125を用いることもできる。
【0081】
なお、前記クラッド層形成用ワニスには、形成させるクラッド層の効果を損なわない範囲で、クラッド層の形成させる際に用いることが可能な公知の他の添加剤(例えば、架橋剤、消泡剤、密着助剤等)を適宜含有させてもよい。
【0082】
また、前記クラッド層形成用ワニスの製造方法としては特に制限されないが、例えば、溶媒中にクラッド層形成用ワニスの材料(紫外線吸収剤、第一のポリマー、モノマー、プロカタリスト、増感剤、酸化防止剤等)を溶解してクラッド層形成用ワニスを製造する方法が挙げられる。このような溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
このようなクラッド層形成用ワニス中の紫外線吸収剤の含有量としては特に制限されないが1〜10質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。このような紫外線吸収剤の含有量が前記下限未満では、形成されるクラッド層10に十分な紫外線吸収性能を付与することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、クラッド層そのものの屈折率が高くなり、コア層との屈折率差が低下するために光導波路内への光閉じ込めが不十分となる傾向にある。
【0084】
また、前記クラッド層形成用ワニス中の第一のポリマーの含有比率としては特に制限されないが、5〜40質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましい。第一のポリマーの含有比率が前記下限未満では、粘度が低すぎるために所望の厚みのクラッド層を形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘度が高すぎて塗布時に泡を巻き込み易くなり、製造効率が低下する傾向にある。
【0085】
さらに、前記クラッド層形成用ワニスの粘度(常温)は特に制限されず、後述する塗布法及び所望の膜厚に応じて適宜調整することができる。このようなクラッド層形成用ワニスの粘度(常温)としては100〜10000cPであることが好ましく、150〜5000cPであることがより好ましく、200〜3500cPであることが更に好ましい。
【0086】
また、このようなクラッド層形成用ワニスを用いてクラッド層10を形成させる方法としては、例えば、コア層上にクラッド層形成用ワニスを塗布して、コア層上に紫外線吸収成分を含有するクラッド層10を形成する方法(I)、予めクラッド層形成用ワニスを用いてクラッド層のフィルム材料(クラッドフィルム材料)を形成して、そのクラッドフィルム材料をコア層上に積層させる方法(II)等が挙げられる。このような方法の中でも、コア層上に直接クラッド層を作成することができ、工程をより簡略化できるという観点から、コア層上にクラッド層形成用ワニスを塗布して、コア層上に紫外線吸収成分を含有するクラッド層10を形成する方法を採用することが好ましい。
【0087】
このような方法(I)において、クラッド層形成用ワニスを塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
【0088】
また、クラッド層形成用ワニスを塗布することで形成される塗膜の厚みとしては、光導波路の設計に応じて適宜変更できるものであり、特に限定されないが、乾燥前の状態で5〜200μm程度、好ましくは15〜125μm程度とすればよい。
【0089】
また、このような方法(I)においては、クラッド層形成用ワニスを塗布して塗膜を形成した後に、前記塗膜から少なくとも一部の溶媒を除去することが好ましい。このような溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、自然乾燥、加熱する方法、減圧下において放置する方法、不活性ガスを吹付ける(ブロー)方法、乾燥機を用いて溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。このようにして少なくとも一部の溶媒を除去することで乾燥塗膜を得ることが可能となる。
【0090】
さらに、前記方法(I)においては、前記クラッド層形成用ワニスを塗布した後に紫外光を照射してクラッド層10を形成することが好ましい。このような紫外光照射工程を実施することで、前記クラッド層形成用ワニス中の前記紫外光吸収剤として第一の光酸発生剤を用い、第一のポリマーとしてエポキシ基を含有する側鎖を有するノルボルネン系ポリマーを用いた場合に、第一の光酸発生剤から酸を放出させることができ、かかる酸により第一のポリマー中のエポキシ基の開裂を引き起こすことが可能となり、これにより第一のポリマー同士を架橋させたり、コア層との密着性を向上させたりすることが可能となる。また、このような光酸発生剤の開裂および発生した酸により、クラッド材料中に含まれる分子の共役長が変化するため、結果的にクラッドフィルム材料を着色することが可能となり、これにより紫外線成分を吸収しやすくなる傾向にある。なお、このような紫外光照射工程は、前記溶媒除去工程の後に実施することが好ましい。
【0091】
また、このような紫外光照射工程における紫外光としては200〜400nmにピーク波長を有することが好ましく、300〜400nmにピーク波長を有することがより好ましい。このような紫外光のピーク波長が前記下限未満では紫外光の照射時間が長くなり生産性に乏しくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると可視光領域で感光してしまうため、化学的安定性に乏しくなる傾向にある。
【0092】
さらに、このような紫外光の照射量としては100〜9000mJ/cmであることが好ましく、200〜6000mJ/cmであることがより好ましい。前記紫外光の照射量が前記下限未満ではクラッド層を十分に形成することが困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、クラッド層の化学的劣化が進行し易くなる傾向にある。また、このような紫外光Lを照射するための光源としては特に制限されず、公知の光源(例えば高圧水銀ランプなど)を適宜用いることができる。
【0093】
なお、前記第一の光酸発生剤が熱によっても酸を発生するタイプのものである場合には紫外光照射工程を実施する代わりに、加熱する工程を実施して第一の光酸発生剤から酸を放出させて、前記紫外光照射工程と同様の効果を得てもよい。このような加熱の際の条件としては特に制限されないが、不活性ガス雰囲気下、150〜200℃、1〜2時間の条件で加熱することが好ましい。
【0094】
また、前記クラッド層形成用ワニスがモノマー及びプロカタリストを含有する場合には、前記乾燥工程及び/又は紫外光照射工程(又は加熱工程)を実施した後に、加熱して前記モノマーを重合させてクラッドフィルム材料を形成してもよい。このような加熱条件は特に制限されず、用いたモノマーやプロカタリストの種類等に応じて加熱条件を適宜調整すればよい。
【0095】
また、前記クラッドフィルム材料は、フィルム材料形成用の支持基材上にクラッド層形成用ワニスを塗布してフィルムを形成し、そのフィルムを前記支持基材から剥離することにより得ることができる。このような支持基材としては特に制限されず、フィルム材料を形成する際に用いることが可能な公知の基材を適宜用いることができ、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。また、このようなクラッドフィルム材料の製造方法としては、前記支持基材上にクラッド層形成用ワニスを塗布し、支持基材上にクラッド層10を形成した後に、これを支持基材から剥離してクラッドフィルム材料とすればよく、コア層上にクラッド層形成用ワニスを塗布する代わりに前記支持基材上にクラッド層形成用ワニスを塗布すること、並びに基材からフィルム材料を剥離すること以外は、上述のクラッド層10を製造する方法(I)と同様の方法を採用することができる。
【0096】
このようにして、クラッド層形成用ワニスを用いてクラッド層を形成することで、得られるクラッド層は、クラッド層形成用ワニス中の樹脂(好ましくは第一のポリマー)に由来する樹脂成分並びに前記紫外線吸収剤に由来する紫外線吸収成分を含有する層となる。
【0097】
次に、図3に示す2層積層基材のクラッド層10上にコア層11を形成する工程について説明する。このようなコア層11を形成する工程は、クラッド層10上にコア前駆体層13を形成し、コア前駆体層13にフォトマスク21を介して紫外光を照射し、紫外光の照射領域と非照射領域とにそれぞれクラッド部とコア部とを形成せしめてコア層を形成する工程である(工程(B))。
【0098】
このような工程(B)においては、先ず、クラッド層10上にコア前駆体層を形成する。これにより、図3に示す2層積層基材のクラッド層10上にコア前駆体層13が積層された図4に示す3層積層基材を得る。
【0099】
このようなコア前駆体層を形成する工程においては、コア層形成用ワニスを用いてコア前駆体層を形成することが好ましい。このようなコア層形成用ワニスとしては、紫外光の照射により屈折率が変化する材料を含有するものであればよく特に制限されず、後述するマスクを介した紫外光の照射によりコア部及びクラッド部を形成させることが可能な公知の材料を含有するものを適宜用いることができる。
【0100】
このようなコア層形成用ワニスは、保管時の化学的安定性と使用時の反応性の両立をより確実に図ることができるという観点から、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出する第二の光酸発生剤と、前記第二の光酸発生剤が放出する酸によって主鎖から離脱する離脱性基(離脱性ぺンダントグループ)を含有する側鎖を有する第二のポリマーとを含有することが好ましい。
【0101】
このようなコア層形成用ワニスに含有させる第二の光酸発生剤は、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出することができるものであればよく、特に制限されず、前述の第一の光酸発生剤と同様のものを好適に用いることができる。また、第二の光酸発生剤として好適なものは、前述の第一の光酸発生剤の好適なものと同様のものである。
【0102】
このようなコア層形成用ワニスに含有させる前記離脱性基を有する第二のポリマーとしては、透明性が十分に高く(無色透明であり)、且つ、光酸発生剤が放出する酸(好ましくはプロトン)の作用により離脱性基が側鎖から離脱(切断)して、その屈折率が変化(好ましくは低下)するポリマーを含有することが好ましい。
【0103】
このような離脱性基としては、光酸発生剤が放出する酸により比較的容易に離脱するという観点から、その分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが好ましい。このような離脱性基の中でも、離脱によりポリマーの屈折率を低下させることが可能であるという観点から、−Si−ジフェニル構造(式:−Si(Ph)[式中、Phはフェニル基を示す]で表される構造)及び−O−Si−ジフェニル構造(式:−O−Si(Ph)[式中、Phはフェニル基を示す]で表される構造)のうちの少なくとも一方の構造を含む基が好ましい。
【0104】
また、前記離脱性基を含有する側鎖としては、前記離脱性基を含有するものであればよく特に制限されないが、例えば、式:−(CH−CH(CF−O−Si(R;−(CH−CH(CF−O−CH−O−CH;−(CH−CH(CF−O−C(O)−O−C(R;−(CH−C(CF−OH;−(CHC(O)NH;−(CHC(O)Cl;−(CHC(O)OR;−(CH)n−OR;−(CH−OC(O)R;−(CH−C(O)R;−(CH−OC(O)OR;−(CHSi(R;−(CHSi(OR;−(CH−O−Si(R;−(CHC(O)OR;で表される基などが挙げられる。なお、このような式中のnはそれぞれ0〜10の整数であることが好ましく、Rは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、直鎖又は分岐のC−C20のアルキル基、直鎖又は分岐のC−C20のハロゲン化又はパーハロゲン化アルキル基、直鎖又は分岐のC−C10アルケニル基、直鎖又は分岐のC−C10アルキニル基、C−C12のシクロアルキル基、C−C14のアリール基、C−C14のハロゲン化又はパーハロゲン化アリール基及びC−C24のアラルキル基のうちのいずれかであることが好ましく、Rは、式:−C(CH;−Si(CH;CH(R)OCHCH;−CH(R)OC(CH;で表される基や環状基のうちのいずれかであることが好ましい。なお、式中:Rは水素原子または直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す。
【0105】
また、このような離脱性基を含有する側鎖としては、酸により脱離性基をより効率よく脱離させることが可能となるという観点から、式:−(CH−O−Si(R又は式:−(CH−Si(Rで表される基であることがより好ましい。なお、このような式中のn及びRは前記したものと同義である。また、このような式で表される側鎖の中でも、式中のRのうちの少なくとも2つがフェニル基であることが更に好ましい。なお、このような脱離性基を含有する側鎖を有する第二のポリマーは、ポリマー中に前記脱離性基を含有する側鎖を有する繰り返し単位を少なくとも1種含有していればよく、前記脱離性基を含有する側鎖を有する繰り返し単位の2種以上を含有していているものであってもよい。
【0106】
また、第二のポリマーとしては、例えば、前記脱離性基を含有する側鎖を有する、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等)用いることができる。また、このような第二のポリマーとしては、前記式(1)で表される構造を主鎖に有するノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主として含有することが好ましい。このように、第二のポリマーとして前記脱離性基を含有する側鎖を有するノルボルネン系ポリマーを用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有する光導波路を得ることが可能となる。また、このようなノルボルネン系ポリマーにより、吸水による寸法変化等を生じ難い光導波路を得ることが可能となる。
【0107】
さらに、このようなノルボルネン系ポリマーとしては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。このようなノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、又は他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
【0108】
また、このようなノルボルネン系ポリマーとしては、前記離脱性基を有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位を有するものであればよいが、前記第一のポリマーよりも相対的に屈折率が高いノルボルネン系ポリマーを用いることが好ましい。第一のポリマーよりも相対的に屈折率が高いノルボルネン系ポリマーを用いることにより、コア部を形成した際に、コア部がより優れた光伝送性能を有するものとなる傾向にある。
【0109】
また、このようなノルボルネン系ポリマーにおいては、前記離脱性基を有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位の他に、アルキル基を側鎖に有するノルボルネン(アルキルノルボルネン)の繰り返し単位を含有することが好ましい。このようなアルキルノルボルネンの繰り返し単位は第一のポリマーにおいて説明したものと同様のものである。
【0110】
また、このような離脱性基を有するノルボルネン系ポリマーとしては、下記一般式(3):
【0111】
【化3】

【0112】
[式中、Rはアルキル基を表し、Zは前記離脱性基を含有する側鎖を示し、X及びYは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ70以下の整数を示す。]
で表される構造を有するノルボルネン系ポリマーがより好ましい。なお、前記一般式(3)中においてRで表されるアルキル基は前記アルキルノルボルネンの繰り返し単位中の側鎖のアルキル基と同様のものである。
【0113】
また、このようなノルボルネン系ポリマーは、その設計に応じて公知のノルボルネン系のモノマーから適宜モノマーを選択して用いて、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカル又はカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等の公知の重合方法を採用して製造することができる。
【0114】
さらに、第二のポリマーに主としてノルボルネン系ポリマーを用いる場合において、第二のポリマー中のノルボルネン系ポリマーの含有比率は80〜100質量%であることが好ましく、95〜100質量%であることがより好ましい。このような含有比率が前記下限未満では、ノルボルネン系ポリマーを用いることにより得られる効果が十分に得られなくなる傾向にある。
【0115】
また、このようなコア層形成用ワニスにおいては、前記第二の光酸吸収剤及び第二のポリマーの他に、モノマー、プロカタリスト、増感剤、酸化防止剤を更に含有させることが好ましい。このようなモノマー、プロカタリスト、増感剤、酸化防止剤は、前記クラッド層形成用ワニスにおいて説明したものと同様のものを好適に用いることができる。また、前記コア層形成用ワニスには、形成させるコア層の効果を損なわない範囲で、コア層を形成させる際に用いることが可能な公知の他の添加剤(例えば、架橋剤、消泡剤、密着助剤等)を適宜含有させてもよい。
【0116】
また、このようなコア層形成用ワニスの製造方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、紫外線吸収剤の代わりに第二の光酸発生剤を用い且つ第一のポリマーの代わりに第二のポリマーを用いる以外は前述のクラッド層形成用ワニスの製造方法と同様の方法を採用することができる。
【0117】
さらに、このようなコア層形成用ワニス中の第二の光酸発生剤の含有量としては特に制限されないが1〜10質量%であることが好ましく、2〜5質量%であることがより好ましい。このような第二の光酸発生剤の含有量が前記下限未満では、十分に酸が発生せず、効率よく反応を進行させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると導波路としての光の損失が増加する傾向にある。
【0118】
また、前記コア層形成用ワニス中の第二のポリマーの含有比率としては特に制限されないが、70〜95質量%であることが好ましく、75〜85質量%であることがより好ましい。第二のポリマーの含有比率が前記下限未満では、屈折率を十分に変調させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとワニスの粘度上昇が著しく、ろ過が困難となる傾向にある。
【0119】
さらに、前記コア層形成用ワニスの粘度(常温)は特に制限されず、後述する塗布法及び所望の膜厚に応じて適宜調整することができる。このようなコア層形成用ワニスの粘度(常温)としては100〜10000cPであることが好ましく、150〜5000cPであることがより好ましく、200〜3500cPであることが更に好ましい。
【0120】
また、このようなコア層形成用ワニスを用いてコア前駆体層を形成する方法としては、例えば、クラッド層10上にコア層形成用ワニスを塗布して、クラッド層10上にコア前駆体層13を形成する方法(i)、予めコア層形成用ワニスを用いてコア層のフィルム材料(コアフィルム材料)を形成して、そのコアフィルム材料をクラッド層上に積層させて、クラッド層10上にコア前駆体層13を形成する方法(ii)等が挙げられる。このような方法の中でも、クラッド層上に直接クラッド層を作成することができ、工程をより簡略化できるという観点から前記方法(i)を採用することが好ましい。
【0121】
このような方法(i)において、コア層形成用ワニスをクラッド層10上に塗布する方法としては、前述のクラッド層形成用ワニスの塗布方法と同様の方法を採用することができる。このようにして、クラッド層上にコア層形成用ワニスを塗布することでコア前駆体層13を形成することができる。
【0122】
また、このような方法(i)を採用してコア前駆体層13を形成する際においては、コア層形成用ワニスを塗布した後に、その塗膜から少なくとも一部の溶媒を除去し、前記塗膜を乾燥せしめてコア前駆体層13を形成することが好ましい。このような溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、自然乾燥、加熱する方法、減圧下において放置する方法、不活性ガスを吹付ける(ブロー)方法、乾燥機を用いて溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。
【0123】
また、前記コアフィルム材料は、フィルム材料形成用の支持基材上にコア層形成用ワニスを塗布してフィルムを形成し、そのフィルムを前記支持基材から剥離することにより得ることができる。このような支持基材としてはクラッドフィルム材料の製造方法において説明したものと同様のものを用いることができる。また、このようなコアフィルム材料の製造方法としては、前記支持基材上にコア層形成用ワニスを塗布し、支持基材上にコア前駆体層13を形成し、これを支持基材から剥離してコアフィルム材料とすればよく、クラッド層上にコア層形成用ワニスを塗布する代わりに前記支持基材上にコア層形成用ワニスを塗布すること、並びに、コア前駆体層13を形成後に支持基材から剥離すること以外は、上述のコア前駆体層13を製造する方法(i)と同様の方法を採用する。なお、支持基材からフィルム材料を剥離する方法としては公知の方法を適宜採用できる。
【0124】
次に、工程(B)においては、コア前駆体層13にマスク21を介して紫外光Lを照射する工程を実施する(図5参照:図5は、コア前駆体層13に紫外光Lを照射する工程を模式的に示す概略縦断面図である。)。
【0125】
マスク(マスキング)21としては、形成させるクラッド部11Aの形状(パターン)と等価な開口部(窓)が形成され且つ開口部以外の部分において紫外光Lを遮光できるものを用いる。このようなマスク21を用いることで、開口部から紫外光Lを透過させつつ、開口部(透過部)以外の部分で紫外光Lを遮光して、開口部の形状に由来したクラッド部11を製造することが可能となる。また、マスク21は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)を用いてもよく、あるいは、コア前駆体層13上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものを用いてもよい。
【0126】
このようなマスク21としては、例えば、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等を適宜用いることができる。また、このようなマスク21の中でも、微細なパターンを精度良く形成できるとともにハンドリングがよく生産性が向上するという観点から、フォトマスクやステンシルマスクを用いることが特に好ましい。なお、このようなマスク21の構成材料としては特に制限されず、照射する紫外光Lのピーク波長により公知の材料の中から適宜選択すればよい。
【0127】
また、このような工程(B)において照射する紫外光Lとしては特に限定されないが、200〜400nmにピーク波長を有することが好ましく、300〜400nmにピーク波長を有することがより好ましい。このような紫外光のピーク波長が前記下限未満では紫外光の照射時間が長くなり生産性に乏しくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると可視光領域で感光してしまうため、化学的安定性に乏しくなる傾向にある。
【0128】
さらに、このような紫外光Lの照射量としては100〜9000mJ/cmであることが好ましく、200〜6000mJ/cmであることがより好ましく、200〜3000mJであることが更に好ましい。前記紫外光の照射量が前記下限未満では、クラッド部を十分に形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、クラッド部の化学的劣化が進行し易くなる傾向にある。また、このような紫外光Lを照射するための光源としては特に制限されず、公知の光源(例えば高圧水銀ランプなど)を適宜用いることができる。
【0129】
このようにしてマスク21を介してコア前駆体層13に紫外光Lを照射すると、紫外光の照射領域において、コア前駆体層13中に存在する第二の光酸発生剤が紫外光Lの作用により反応(結合)又は分解され、酸(好ましくはプロトン)を発生する。そして、このような酸は、コア前駆体層13中の前記紫外光の照射領域内の第二のポリマーから離脱性基を離脱させる(フォトブリーチ)。そのため、紫外光Lの照射領域では、紫外光Lの非照射領域と比較して、紫外光照射前に存在していた第二のポリマーと同様の状態にあるポリマー(側鎖から脱離性基が脱離していないポリマー)の数が減少する。そして、紫外光Lの照射領域では、第二のポリマーから脱離性基が脱離したポリマー及びこれに由来した成分の含有割合が多くなる。これにより、紫外光の照射領域は、紫外光の照射前と比較して屈折率が低下する。一方、紫外光Lの非照射領域においては、第二のポリマーがほぼ完全な状態で残存するため、当初からの屈折率が十分に維持される。このようにして、紫外光Lの照射領域と非照射領域とでは、存在するポリマーの状態が異なるものとなるため、層13中の紫外光Lの非照射領域の屈折率(第1の屈折率)と、層13中の紫外光Lの照射領域の屈折率(第2の屈折率)との間に屈折率差(第2の屈折率<第1の屈折率)が生じ、クラッド部14A(照射領域)とコア部11B(非照射領域)とが形成されたコア層11を形成させることが可能となる。
【0130】
なお、このようなコア層11を形成させる工程(工程(B))においては、コア前駆体層13に紫外光Lの照射する工程において、クラッド層10が紫外線吸収成分を含有していることから紫外光Lを吸収し、コア前駆体層13が形成されているクラッド層10のもう一方の面側に積層されているコア層11には紫外光Lの影響を低減することができる。そのため、本発明においては、工程(A)及び工程(B)を順次繰り返し実施することも可能であり、効率よく多層構造の光導波路を製造することができる。
【0131】
また、このようにして紫外光Lの非照射領域と照射領域とにそれぞれコア部14Aとクラッド部14Bとを形成させた後においては、形成されたコア層14に対して加熱処理を施すことが好ましい。このような加熱処理により、第二のポリマーから離脱(切断)した離脱性基を紫外光Lの照射領域から除去することや、第二のポリマー内において再配列または架橋させることが可能となる。また、このような加熱処理によって、クラッド部14B内のポリマーに結合している残りの離脱性基の一部がさらに離脱(切断)されるものと推察される。したがって、このような加熱処理を施すことによって、コア部14Aとクラッド部14Bとの間の屈折率差をより大きくすることが可能となる。
【0132】
また、このような加熱処理により、コア形成用ワニスに第二の光酸発生剤及び第二のポリマーとともに前記モノマー及びプロカタリストを含有させた場合には、以下のような現象が生じる。すなわち、先ず、紫外光Lの照射領域内においては、第二の光酸発生剤から発生した酸の作用によりプロカタリストの分子構造に変化(分解)が生じ、プロカタリストが活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化する。その後、コア前駆体層に対して加熱処理を施すと、活性潜在状態であったプロカタリストが活性状態となるため、紫外光Lの照射領域内においてモノマーの反応(重合反応や架橋反応)が引き起こる。そして、モノマーの反応が進行すると、紫外光Lの照射領域内におけるモノマー濃度が徐々に低下し、紫外光Lの照射領域と非照射領域940との間にモノマー濃度に差が生じる。そして、コア前駆体層13中においてはモノマー濃度の差を解消すべく、非照射領域からモノマーが拡散し、モノマーが照射領域に集まってくる現象が生じる。そのため、コア前駆体層13中の紫外光Lの照射領域においては、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加して、そのモノマーに由来の構造が当該領域の屈折率に大きく影響を及ぼすようになる。その結果、紫外光の照射領域においては紫外光照射後の加熱処理によって屈折率が低下する。一方、紫外光Lの非照射領域においては、その領域からモノマーが拡散するため、モノマー量が減少し、第二のポリマーの影響が大きく現れるようになり、より高い屈折率へと変化する。したがって、このような加熱処理を施すことによって、コア部14Aとクラッド部14Bとの間の屈折率差をより大きくすることが可能となる。
【0133】
さらに、このような紫外光L照射後の加熱処理の条件は特に制限されないが、加熱温度を70〜195℃(より好ましくは85〜150℃)とし、加熱時間を0.5〜3時間(より好ましくは0.5〜2時間)とすることが好ましい。なお、加熱処理を施す前の状態で、コア部14Aとクラッド部14Bとの間に十分な屈折率差が得られている場合等には、このような加熱処理は省略してもよい。
【0134】
次に、上記工程(A)及び工程(B)を実施する前に準備した図2に示すコア層積層基材を製造する工程について説明する。
【0135】
このようなコア層積層基材を製造する工程は、クラッド層10上にコア層11を形成する代わりに基材上にコア層11を形成する以外は、上記工程(B)と同様の工程を採用することが好ましい。すなわち、このようなコア層積層基材を製造する工程は、基材上にコア層前駆体層を形成し、前記コア前駆体層にフォトマスクを介して紫外光を照射し、紫外光の照射領域と非照射領域とにそれぞれクラッド部とコア部とを形成せしめて、基材上に、クラッド部とコア部とを有するコア層を形成する工程であることが好ましい。なお、このような基材としては特に制限されず、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。
【0136】
このようにして、コア層積層基材を準備し、上記工程(A)及び工程(B)を実施することで、基材20上にコア層/クラッド層/コア層の順で各層が積層された図6に示すような第二の3層積層基材を得ることができる。そして、このような第二の3層積層基材から基材を剥離することで、図1に示す光導波路を得ることが可能となる。このような基材を剥離する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。
【0137】
以上、本発明の光導波路及び本発明の光導波路の製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明の光導波路及び本発明の光導波路の製造方法は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図1に示す光導波路1の実施形態は、コア層/クラッド層/コア層の順に積層された3層構造の光導波路であるが、本発明の光導波路においては、複数のコア層11がクラッド層10を中間層として積層されていればよく、その層の数は特に制限されず、目的とする用途に応じて様々な数の層を有する構成とすることができ、例えば、クラッド/コア層/クラッド層/コア層の順に積層された4層構造の光導波路、図7に示すようなクラッド層/コア層/クラッド層/コア層/クラッド層の順に積層された5層構造の光導波路、コア層/クラッド層/コア層/クラッド/コア層の順に積層された5層構造の光導波路、コア層/クラッド層/コア層/クラッド/コア層/クラッド層の順に積層された6層構造の光導波路等の複数のコア層11を有する3層以上の構造のものが挙げられる。また、本発明の光導波路は目的とする用途に応じて各種基板上に配置させたままの形態としてもよい。更に、本発明の光導波路は電気機器の基材上に直接形成した形態としてもよい。
【0138】
また、上記光導波路の実施形態においては、コア層11中においてクラッド部11A及びコア部11Bの大きさ(幅)及び配置位置が各コア層11とも同じとなっているが、本発明の光導波路においては、コア層11中におけるクラッド部11A及びコア部11Bの大きさや配置位置は特に制限されず、目的とする用途に応じてコア層ごとに適宜その設計を変更することができ、例えば、図8に示すような配置としてもよい。また、図1に示す実施形態においては、各コア層中のコア部11Bに光を伝播させる場合の光の光軸の方向が同じ方向を向いた状態となっているが、本発明においては、コア部11Bの向きは特に制限されず、コア部11Bによって伝送される光の光軸の方向が各コア層においてそれぞれ異なる方向となるようにしてもよい。
【0139】
また、上述の光導波路の製造方法の実施形態においては、図2に示すコア層積層基材を準備し、工程(A)及び工程(B)を1回ずつ実施する方法を採用しているが、本発明の光導波路の製造方法においては、工程(A)及び(B)を含み、複数のコア層がクラッド層を中間層として積層されている光導波路を得る方法であればよく、例えば、前記工程(A)及び(B)を実施する前に、基材上にクラッド層が形成されたクラッド層積層基材を準備して、クラッド層積層基材のクラッド層上にコア層を形成し、その後、工程(A)及び工程(B)を実施して、複数のコア層がクラッド層を中間層として積層された構造の光導波路を製造してもよい。このように、本発明の光導波路の製造方法においては、前記工程(A)及び(B)を実施する前に、基材上又は基材上に形成されたクラッド層上に、コア前駆体層を形成し、該コア前駆体層にフォトマスクを介して紫外光を照射し、紫外光の照射領域と非照射領域とにそれぞれクラッド部とコア部とを形成せしめて、クラッド部とコア部とを有するコア層を形成すればよい。なお、このようなクラッド層積層基材を準備する工程は、コア層上にクラッド層を形成させる代わりに基材上にクラッド層を形成させる以外は上述の工程(A)と同様の方法を採用できる。また、クラッド層積層基材のクラッド層上にコア層を形成する工程としては、上記工程(B)を採用することが好ましい。
【0140】
また、上述の光導波路の製造方法の実施形態においては、図2に示すコア層積層基材を準備し、工程(A)及び工程(B)を、工程(A)、工程(B)の順で1回ずつ実施する方法を採用しているが、本発明の光導波路の製造方法においては、工程(A)及び(B)を含んでいればよく、工程(A)及び(B)を実施する回数及び実施する順序は特に制限されず、例えば、工程(A)及び工程(B)のうちの一方を複数回実施してもよく、工程(A)及び工程(B)をそれぞれ複数回実施してもよく、更には、工程(B)を工程(A)の前に実施してもよい。このような工程(A)及び工程(B)のうちの一方を複数回実施する方法としては特に制限されないが、例えば、基材上にコア層が形成されたコア層積層基材を準備して工程(A)、工程(B)、工程(A)の順で各工程を実施して、基材/コア層/クラッド層/コア層/クラッド層の順に積層された4層構造の光導波路を製造する方法や、基材上にクラッド層が形成されたクラッド層積層基材を準備して、工程(B)、工程(A)、工程(B)の順で各工程を実施して、基材/クラッド層/コア層/クラッド層/コア層の順に積層された4層構造の光導波路を製造する方法等が挙げられる。また、工程(A)及び工程(B)をそれぞれ複数回実施する方法としては特に制限されないが、例えば、基材上にクラッド層が形成されたクラッド層積層基材を準備して工程(B)、工程(A)の順で各工程をそれぞれ2回実施して基材/クラッド層/コア層/クラッド層/コア層/クラッド層の順に積層された5層構造の光導波路を製造する方法、基材上にクラッド層が形成されたクラッド層積層基材を準備して、工程(B)、工程(A)の順で各工程をそれぞれ4回順次実施して基材/クラッド層/コア層/クラッド層/コア層/クラッド層/コア層/クラッド層/コア層/クラッド層の順に積層された9層構造の光導波路を製造する方法等が挙げられる。このように、本発明の光導波路の製造方法においては、工程(A)及び工程(B)を実施する回数及びその実施する順序は特に制限されず、目的とする光導波路の設計に応じて、工程(A)及び(B)をそれぞれ1回以上実施すればよい。なお、本発明の光導波路の製造方法においては、工程(B)においてコア前駆体層13に紫外光Lを照射する際に、クラッド層10が紫外光Lを吸収するため、コア前駆体層13が形成されているクラッド層10のもう一方の面に積層されているコア層11には紫外光Lが何ら影響を及ぼさない。そのため、工程(A)及び工程(B)を順次繰り返し実施することが可能で、効率よく多層構造の光導波路を製造することができる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0142】
(合成例1:ヘキシルノルボルネン(HxNB)/ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)系コポリマーの合成)
先ず、HxNB(CAS番号:第22094−83−3番)(9.63g、0.054モル)、diPhNB(CAS番号:第376634−34−3番)(40.37g、0.126モル)、1−ヘキセン(4.54g、0.054モル)及びトルエン(150g)を、ドライボックス内の500mL容シーラムボトルに入れて混合し、さらにオイルバスにおいて80℃に加熱しながら撹拌して溶液を得た。次に、前記溶液に、Pd(PCy(OAc)(CNMe)[Pd1446、1.04×10−2g、7.20×10−6モル]及びN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(略称:DANFABA、2.30×10−2g、2.88×10−5モル)を、それぞれ濃縮ジクロロメタン溶液(0.1mL)の形態で添加して混合物を得た。次いで、前記混合物を、マグネチックスターラで80℃において2時間撹拌した。その後、反応混合物(トルエン溶液)をより大きなビーカーに移し変え、これに貧溶媒であるメタノール(1L)を滴下し、繊維状の白色固形分を沈殿させた。次に、このようにして沈殿した固形分をろ過して60℃のオーブン内で真空乾燥させ、乾燥質量19.0g(収率38%)の生成物を得た。このようにして得られた生成物の分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:THF溶媒、ポリスチレン換算)で測定したところ、質量平均分子量(Mw)は118,000であり、数平均分子量(Mn)は60,000であった。また、得られた生成物を1H−NMRで測定し、下記構造式で表されるHxNB/diPhNB系コポリマー(下記構造式中:x=0.32、y=0.68、n=5)であることを同定した。このコポリマーの屈折率をプリズムカップリング法で測定したところ、波長633nmにおいて、TEモードが1.5695、そしてTMモードが1.5681であった。
【0143】
【化4】

【0144】
(合成例2:コア層形成用ワニスの調製)
先ず、イエローライト下、合成例1で得られたHxNB/diPhNB系コポリマーをメシチレンに溶解して10質量%のコポリマー溶液(30g)を調製した。また、これとは別に、100mL容ガラス瓶に、HxNB(42.03g、0.24モル)及びビス−ノルボルネンメトキシジメチルシラン(SiX、CAS番号:第376609−87−9番)(7.97g、0.026モル)を入れ、さらに2種類の酸化防止剤[Ciba社製Irganox1076(0.5g)及びIrgafos168(0.125g)]を加えてモノマー酸化防止剤溶液を得た。
【0145】
次いで、前記コポリマー溶液30.0gに、前記モノマー酸化防止剤溶液3.0gと、Pd(PCy(OAc)(Pd785)(メチレンクロライド0.1mLあたり、4.95×10−4g、6.29×10−7モル)と、吸収極大波長220nmの光酸発生剤[RHODORSIL(登録商標)PHOTOINITIATOR 2074(CAS番号:第178233−72−2番)](メチレンクロライド0.1mLあたり、2.55×10−3g、2.51×10−6モル)とを加えて均一に溶解させた後、細孔径0.2μmのフィルターでろ過してコア層形成用ワニスを調製した。
【0146】
(合成例3:デシルノルボルネン(DeNB)/メチルグリシジルエーテルノルボルネン(AGENB)系コポリマーの合成)
先ず、DeNB(CAS番号:第22094−85−5番)(16.4g、0.07モル)、AGENB(CAS番号:第3188−75−8番)(5.41g、0.03モル)及びトルエン(58.0g)を、ドライボックス内の500mL容シーラムボトルに入れて混合し、さらにオイルバスにおいて80℃に加熱しながら撹拌して溶液を得た。次に、前記溶液に、(η−トルエン)Ni(C(0.69g、0.0014モル)のトルエン溶液(5g)を添加し、混合物を得た。次いで、このような添加後の混合物をマグネチックスターラで室温において4時間撹拌し、撹拌後の混合物にトルエン(87.0g)を加え、激しく撹拌して反応混合物を得た。その後、反応混合物(トルエン溶液)をより大きなビーカーに移し変え、これに貧溶媒であるメタノール(1L)を滴下し、繊維状の白色固形分を沈殿させた。次に、このようにして沈殿した固形分をろ過して集め、60℃のオーブン内で真空乾燥させ、乾燥質量17.00g(収率87%)の生成物を得た。このようにして得られた生成物の分子量をGPC(THF溶媒、ポリスチレン換算)で測定したところ、Mwは75,000であり、Mnは30,000であった。得られた生成物を1H−NMRで測定し、下記構造式で表されるDeNB/AGENB系コポリマー(下記構造式中:x=0.77、y=0.23、n=10)であることを同定した。このようにして得られたコポリマーの屈折率をプリズムカップリング法で測定したところ、波長633nmにおいて、TEモードが1.5153、そしてTMモードが1.5151であった。
【0147】
【化5】

【0148】
(合成例4:クラッド層形成用ワニスの調製)
イエローライト下、上記DeNB/AGENB系コポリマー10gを脱水トルエンに溶解して20質量%のコポリマー溶液(50g)を調製した。この溶液に、2種類の酸化防止剤[Ciba社製Irganox1076(0.01g)及びIrgafos168(0.0025g)]と吸収極大波長335nmの光酸発生剤(東洋インキ製造社製、商品名「TAG−382」)(0.2g)とを加えて均一に溶解させた後、細孔径0.2μmのフィルターでろ過してクラッド層形成用ワニスを調製した。
【0149】
(実施例1)
先ず、水平台の上に配置した厚み100μmのPETフィルムの上に、合成例4で得られたクラッド用ワニスを10g注ぎ、ドクターブレードでほぼ一定の厚さになるように広げてクラッド用ワニスの塗膜を形成させた(乾燥前の厚み:30μm)。次に、形成された塗膜をPETフィルムと共に乾燥機に入れて50℃で15分間加熱し、トルエンを蒸発させて厚み20μmの乾燥塗膜からなるクラッド層を基材上に形成せしめ、クラッド層形成基材を得た。
【0150】
次に、クラッド層形成基材のクラッド層上に、合成例2で得られたコア層形成用ワニスを10g注ぎ、これをドクターブレードでほぼ一定の厚さになるように広げてコア層形成用ワニスの塗膜を形成させた(乾燥前の厚さ70μm)。次に、塗膜が形成された積層体を乾燥機に入れて50℃で45分間加熱することによりトルエンを蒸発させ、前記クラッド層上に厚さ50μmの乾燥塗膜からなるコア前駆体層を形成した。次いで、前記コア前駆体層に対して、所定の開口パターンを有するフォトマスクを通して、メタルハライドランプを用いて波長365nm以下の紫外光を照射した(照射量500mJ/cm)。次いで、紫外光照射後の塗膜をオーブンに入れ、最初に50℃で30分間、続いて85℃で30分間、その後150℃で60分間の加熱処理を施し、前記クラッド層上にコア部とクラッド部とを有するコア層を形成せしめた(以下、このようにしてクラッド層上にコア層を形成する工程を「コア層形成工程」という。)。このような加熱処理に際しては、最初の50℃で10分間加熱した時点で、塗膜内の導波路パターンを目視にて確認することができた。また、このような導波路パターンは用いたフォトマスクの開口パターンに由来するものであることが分かった。このようにして、クラッド層上にコア層を形成せしめることにより、基材上にクラッド層とコア層とがクラッド層/コア層の順で積層された2層積層体を得た。
【0151】
次いで、前記2層積層体のコア層上に、合成例4で得られたクラッド用ワニスを10g注ぎ、ドクターブレードでほぼ一定の厚さになるように広げてクラッド用ワニスの塗膜を形成させた(乾燥前の厚み:30μm)。次に、塗膜を形成させた積層体を乾燥機に入れて50℃で15分間加熱し、トルエンを蒸発させて、前記コア層上に、厚み20μmの乾燥塗膜からなるクラッド層を形成せしめた(以下、このようにしてコア層上にクラッド層を形成する工程を「クラッド層形成工程」という。)。このようにして、コア層上にクラッド層を形成せしめることにより、基材上にクラッド層とコア層とがクラッド層/コア層/クラッド層の順で積層された3層積層体を得た。
【0152】
次いで、上記コア層形成工程及び上記クラッド層形成工程を交互に3回ずつ実施して、前記3層積層体のクラッド層上にコア層とクラッド層とを交互に3層ずつ積層せしめて、基材上にクラッド層とコア層とが、クラッド層/コア層/クラッド層/コア層/クラッド層/コア層/クラッド層/コア層/クラッド層の順で積層された光導波路を製造した。なお、各コア層形成工程において、使用するマスクの開口部のパターンをそれぞれ変更した。このようにして積層された薄膜の状態を示す写真を図9に示す。
【0153】
図9に示す結果からも明らかなように、各コア層にそれぞれマスクパターンに応じたクラッド部及びコア部が形成されていることが分かる。また、このようにして形成された光導波路において、コア部の屈折率は1.54であり、クラッド部の屈折率は1.53であり、クラッド層の屈折率は1.51であった。また、このような光導波路の製造方法(実施例1)においてはコア層を形成する際に紫外光を照射しているが、新たにコア層を形成する際に照射した紫外光が既に形成されているコア層には何ら影響を与えていないことが分かった。このような結果から、本発明の光導波路の製造方法(実施例1)によれば、上記コア層形成工程及び上記クラッド層形成工程を連続で実施でき、簡便な工程で複数のコア層がクラッド層を介して積層された多層構造の光導波路を形成できることが確認された。
【0154】
また、このようにして得られた光導波路の各コア部の一端に、光ファイバーを通して面発光型レーザ(VCSEL)から発生させた光を入力したところ、全てのコア部において他端から光の出力があり、光の伝播が可能であることが確認された。このような結果から、本発明の光導波路(実施例1)によれば、各層に形成されたコア部を用いて情報信号の高速、高容量伝送化が図れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
以上説明したように、本発明によれば、複数のコア層がクラッド層を中間層として積層された多層構造を有し、複雑なデザインの光配線を可能とし、情報信号の高速、高容量伝送化を可能とする光導波路を提供すること、並びに、複数のコア層がクラッド層を中間層として積層された多層構造を有する複雑なデザインの光導波路を簡便な工程で効率よく製造することが可能な光導波路の製造方法を提供することが可能となる。そのため、本発明は光配線の高密度化に関する技術として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明の光導波路の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2】基材上にコア層が積層されたコア層積層基材の概略縦断面図である。
【図3】基材上にコア層とクラッド層とが積層された2層積層基材の概略縦断面図である。
【図4】基材上にコア層とクラッド層とコア前駆体層とが積層された3層積層基材の概略縦断面図である。
【図5】コア前駆体層に紫外光を照射している状態を模式的に示す概略縦断面図である。
【図6】基材上にコア層とクラッド層とコア層とが積層された第二の3層積層基材の概略縦断面図である。
【図7】本発明の光導波路の好適な他の実施形態(5層構造の光導波路)を示す概略縦断面図である。
【図8】本発明の光導波路の好適な他の実施形態(3層構造の光導波路)を示す概略縦断面図である。
【図9】基材上に積層された薄膜の状態を示す写真である。
【符号の説明】
【0157】
1…光導波路、10…クラッド層、11…コア層、11A…クラッド部、11B…コア部、20…基材、21…マスク、L…紫外光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッド部及びコア部を有する複数のコア層がクラッド層を中間層として積層されており、前記コア層及び前記クラッド層がそれぞれ樹脂成分を含有してなる層であり、前記コア部が前記クラッド部及び前記クラッド層よりも相対的に高い屈折率を有し、且つ、前記クラッド層が紫外線吸収成分を含有することを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記紫外線吸収成分が、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出する第一の光酸発生剤及び該第一の光酸発生剤に由来する成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分であることを特徴とする請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記第一の光酸発生剤の吸収極大波長が300〜400nmであることを特徴とする請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記第一の光酸発生剤がアルミン酸塩、アンチモン酸塩、ホウ酸塩、ガリウム酸塩、カルボラン類及びハロカルボラン類からなる群から選択される少なくとも1種の光酸発生剤であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光導波路。
【請求項5】
前記第一の光酸発生剤が式:−S(Ph)、−S(Ph)、−I(Ph)及び−I(Ph)[前記式中、Phはフェニル基を示す。]で表される構造のうちの少なくとも1つの構造を有する化合物からなることを特徴とする請求項2〜4のうちのいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項6】
前記クラッド層が、ノルボルネン系ポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項7】
前記コア部が前記クラッド層中の樹脂成分よりも相対的に高い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーを含有し、且つ、前記クラッド部が前記コア部に含有されるノルボルネン系ポリマーよりも相対的に低い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項8】
下記工程(A)及び(B):
[工程(A)] コア層上に紫外線吸収成分を含有するクラッド層を形成する工程;
[工程(B)] クラッド層上にコア前駆体層を形成し、該コア前駆体層にフォトマスクを介して紫外光を照射し、紫外光の照射領域と非照射領域とにそれぞれクラッド部とコア部とを形成せしめてクラッド部とコア部とを有するコア層を形成する工程;
を含み、複数のコア層がクラッド層を中間層として積層されている光導波路を得ることを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項9】
前記工程(A)及び(B)を実施する前に、基材上又は基材上に形成されたクラッド層上に、コア前駆体層を形成し、該コア前駆体層にフォトマスクを介して紫外光を照射し、紫外光の照射領域と非照射領域とにそれぞれクラッド部とコア部とを形成せしめて、クラッド部とコア部とを有するコア層を形成することを特徴とする請求項8に記載の光導波路の製造方法。
【請求項10】
前記工程(A)が、コア層上に紫外線吸収剤を含有するクラッド層形成用ワニスを塗布してクラッド層を形成する工程であることを特徴とする請求項8又は9に記載の光導波路の製造方法。
【請求項11】
前記工程(A)が、コア層上に紫外線吸収剤を含有するクラッド層形成用ワニスを塗布した後に紫外光を照射してクラッド層を形成する工程であることを特徴とする請求項8〜10のうちのいずれか一項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項12】
前記コア前駆体層を形成する工程が、クラッド層上にコア層形成用ワニスを塗布してコア前駆体層を形成する工程であることを特徴とする請求項8〜11のうちのいずれか一項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項13】
前記クラッド層形成用ワニスが、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出する第一の光酸発生剤と、第一のポリマーとを含有することを特徴とする請求項10又は11に記載の光導波路の製造方法。
【請求項14】
前記第一の光酸発生剤の吸収極大波長が300〜400nmであることを特徴とする請求項13に記載の光導波路の製造方法。
【請求項15】
前記第一の光酸発生剤がアルミン酸塩、アンチモン酸塩、ホウ酸塩、ガリウム酸塩、カルボラン類及びハロカルボラン類からなる群から選択される少なくとも1種の光酸発生剤であることを特徴とする請求項13又は14に記載の光導波路の製造方法。
【請求項16】
前記第一の光酸発生剤が−S(Ph)、−S(Ph)、−I(Ph)及び−I(Ph)[前記式中、Phはフェニル基を示す。]で表される構造のうちの少なくとも1つの構造を有する化合物からなることを特徴とする請求項13〜15のうちのいずれか一項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項17】
前記第一のポリマーが、重合性基を含有する側鎖を有するノルボルネン系ポリマーであることを特徴とする請求項13〜16のうちのいずれか一項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項18】
前記第一のポリマーが、エポキシ基を含有する側鎖を有するノルボルネン系ポリマーであることを特徴とする請求項13〜17のうちのいずれか一項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項19】
前記コア層形成用ワニスが、紫外領域に吸収極大波長を有し且つ紫外光照射により酸を放出する第二の光酸発生剤と、前記第二の光酸発生剤が放出する酸によって離脱する離脱性基を含有する側鎖を有する第二のポリマーとを含有することを特徴とする請求項12に記載の光導波路の製造方法。
【請求項20】
前記第二のポリマーが、前記脱離性基を含有する側鎖を有するノルボルネン系ポリマーであることを特徴とする請求項19に記載の光導波路の製造方法。
【請求項21】
前記離脱性基が式:−O−、−Si−及び−O−Si−で表される構造のうちの少なくとも1つの構造を含有する基であることを特徴とする請求項19又は20に記載の光導波路の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−122399(P2010−122399A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294917(P2008−294917)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】