説明

光導波路型電圧センサ

【課題】簡単な構成で精度よく電圧を測定することを実現した光導波路型電圧センサを提供することを目的とする。
【解決手段】光導波路型電圧センサ10のコア部12には、被測定回路18の電圧が印加される電極16、17が設けられている。コア部12の第2の屈折率n2は、コア部12の外周部を覆う透明なクラッド部11の第1の屈折率n1より大きく、コア部12に入射された光がコア部12内を伝播可能となっている。また、コア部12はポッケルス効果を有する材料から形成されており、被測定回路18の電圧が電極16、17に印加されると、ポッケルス効果によってコア部12内の光がクラッド部11に透過して外部に漏出する。漏出した光の強度は光受信部19によって検知され、検知された光の強度に基づいて電圧が求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電圧センサにかかり、特に、電気光学効果を有する材料から形成された光導波路を利用して電圧を測定する光導波路型電圧センサの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定回路の二点間に電気的に接続して電圧を測定する電気式の電圧計において、測定値は電圧計の内部抵抗の影響を受けるため、この内部抵抗が無限大であることが理想的とされる。しかしながら、実際の電圧計の内部抵抗は有限であり、僅かではあるが電圧計の内部に電流が流れてしまうため、その分の誤差が測定値に生じる。そこで、近年、ポッケルス効果やカー効果と呼ばれる電気光学効果を利用して電圧の測定を行う光学式の電圧センサが用いられる。ポッケルス効果とは、ある物質に電圧を印加して電場をかけると、電場の強さに比例して物質の屈折率が変化する現象である。一方、カー効果では電場の強さの2乗に比例して物質の屈折率が変化する。
【0003】
例えば特許文献1には、ポッケルス効果を有するポッケルス材料を用いて電圧を測定する光ファイバ型電圧センサが開示されている。これによれば、入力用及び出力用の光ファイバが、複屈折材料であるルチル平板を介してロッドレンズの一端側に接続されている。また、ロッドレンズの他端側には、ポッケルス材料、1/8波長板及び反射板が設けられており、ポッケルス材料に被測定回路の電圧が印加されている。入力用光ファイバに入射された光はルチル平板を通過する際に直線偏光に変換され、ポッケルス材料及び1/8波長板を通過する。次いで、光は反射板に反射され、再び1/8波長板及びポッケルス材料を通過してからルチル平板に達する。
【0004】
その際、ポッケルス材料の屈折率は印加されている電圧に応じて変化しているため、ポッケルス材料を通過する光には電圧に応じた位相変化が生じる。また、1/8波長板を二度通過する際に1/4波長の位相差が与えられることにより、反射板に反射されてルチル平板に達する光は楕円偏光に変換される。このように、電圧に応じて位相変化が生じた状態の楕円偏光は、ルチル平板を再び通過する際に常光と異常光とに偏光分離され、異常光が出力用光ファイバに導かれる。また、この異常光の強度変化は、被測定回路の電圧に応じた位相変化に応じたものとなる。すなわち、出力用光ファイバ内を伝播する異常光の強度を測定することにより、被測定回路の電圧が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−198769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の光ファイバ型電圧センサでは、ルチル平板によって偏光分離した異常光の強度に基づいて被測定回路の電圧を測定している。そのため、電圧を測定するためには、電気光学効果を有するポッケルス材料の他に、ルチル平板、1/8波長板及び反射板等が必要となり、電圧センサの構成が複雑になるという問題点を有していた。
【0007】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、簡単な構成で精度よく電圧を測定することを実現した光導波路型電圧センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る光導波路型電圧センサは、被測定回路の電圧を測定するセンサであって、第1の屈折率を有し、光が透過可能なクラッド部と、第1の屈折率より大きい第2の屈折率を有し、クラッド部の内部に設けられるコア部と、コア部に設けられ、電圧が印加される電極と、コア部からクラッド部の外部に漏出する光の強度を検知可能な光受信部とを備え、コア部は、電極に印加された電圧に応じて第2の屈折率が変化する電気光学効果を有する材料から形成されることを特徴とするものである。
【0009】
コア部の第2の屈折率はクラッド部の第1の屈折率より大きいため、電極への電圧の非印加時にコア部に光が入射されると、光はコア部とクラッド部との境界面で反射されながらコア部内を伝播する。一方、電極に電圧が印加されると、コア部の第2の屈折率が電気光学効果によって変化し、第1の屈折率と第2の屈折率との差が小さくなるため、コア部内を伝播する光がクラッド部に透過されて外部に漏出するようになる。電気光学効果による第2の屈折率の変化量は印加された電圧に応じたものであるため、クラッド部の外部に漏出する光の量も電圧に応じたものとなる。すなわち、漏出した光の強度を光受信部で検知することにより、被測定回路の電圧が求められる。
【0010】
電気光学効果を利用して被測定回路の電圧を測定するため、被測定回路と光導波路型電圧センサとの間における電気の授受がなく、電圧測定の精度が向上する。また、被測定回路の電圧を、クラッド部の外部に漏出する光の強度の変化量、すなわちコア部の第2の屈折率の変化量に基づいて測定するため、ルチル平板等の複屈折材料や波長板及び反射板等を必要とすることなく、電圧センサを構成できる。したがって、光導波路型電圧センサにおいて、簡単な構成で精度よく電圧を測定することが可能となる。
【0011】
上記電気光学効果による第2の屈折率の変化は、第2の屈折率が小さくなるような変化でもよい。
また、電極は、光が透過可能な材料から形成され、光受信部は、クラッド部の外側において電極に対応する位置に設けられてもよい。尚、クラッドの外側において電極と対応する位置に光受信部を設けることとは、電極に電圧が印加された場合に、クラッドの外側において、印加された電圧に応じた強さの電場がかかる位置に光受信部を配置することを指し、例えば、クラッド部を介して電極と光受信部とが対向して設けられるような場合を指す。この場合、コア部内の光を、電極及びクラッド部を透過して外部に漏出させることができるため、電極及び光受信部の配置に自由度を持たせることができる。
【0012】
コア部は、少なくとも一部が湾曲する湾曲部を有し、湾曲部には、電極及び光受信部が設けられてもよい。湾曲部を形成することにより、クラッド部とコア部との境界面に対して臨界角以下の角度で進入する光が増加し、このような光は、電極への電圧の非印加時においてもクラッド部に透過されて外部に漏出する。したがって、電極への電圧の印加時にクラッド部の外部に漏出する光は、湾曲部を形成したことによって外部に漏出するようになった光と、電気光学効果によって外部に漏出するようになった光とを含む。すなわち、光受信部に供給される光の量が増加するため、電圧の測定精度をさらに向上することが可能となる。
また、光受信部は、湾曲部の凸面側に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、光導波路型電圧センサにおいて、簡単な構成で精度よく電圧を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係る光導波路型電圧センサの構成を示す概略図である。
【図2】図1のII−IIに沿った断面図である。
【図3】実施の形態1に係る光導波路型電圧センサにおいて光がコア部を伝播する様子を示す概略図であり、(a)はコア部の直線部、(b)はコア部の湾曲部を示す。
【図4】この発明の実施の形態2に係る光導波路型電圧センサの構成を示す概略図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る光導波路型電圧センサの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、この発明の実施の形態について添付図に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1に、この実施の形態1に係る光導波路型電圧センサ10(以下、電圧センサ10と略称する)の構成を概略的に示す。
電圧センサ10は、光が透過可能な透明な材料から形成されたクラッド部11を備えている。クラッド部11の内部には略L字状のコア部12が設けられており、コア部12の外周部をクラッド部11が覆った状態となっている。コア部12の一端には、光ファイバ13を介して光源14が接続されており、光源14が発した光をコア部12に入射可能となっている。また、コア部12の他端には光ファイバ15が接続されており、コア部12を通過した光が光ファイバ15内を伝播するようになっている。尚、コア部12は、光ファイバ13が接続された直線部12aと、光ファイバ15が接続された直線部12cとが、所定の半径で湾曲した湾曲部12bを介してつながれることによって略L字状に形成されている。
【0016】
クラッド部11とコア部12とは互いに異なる屈折率を有しており、クラッド部11の第1の屈折率n1に対し、コア部12の第2の屈折率n2が大きくなっている。したがって、光源14からコア部12に入射された光のうち、クラッド部11とコア部12との境界面Sに対して臨界角α(図3参照)以上の角度で進入する光は、境界面Sで全反射されてコア部12内を伝播するようになっている。尚、臨界角αは、第1の屈折率n1と第2の屈折率n2とに応じて定まる角度であり、境界面Sに対して臨界角α以下の角度で光が進入する場合、その光はコア部12からクラッド部11に透過される。
【0017】
図2に示すように、コア部12の湾曲部12bにおける上部と下部とには、一対の電極16、17が互いに対向するように設けられている。電極16、17は、電圧測定の対象である被測定回路18に電気的に接続されており、これらの電極間に被測定回路18の電圧が印加されると、その電圧に応じた強さの電場が湾曲部12bにかかるようになっている。また、クラッド部11の側部において、湾曲部12bの凸面12d側(外周側)に位置する部位(図1参照)には、例えばフォトカプラやフォトトランジスタ、あるいはフォトダイオード等、光の強度を検知可能な光受信部19が設けられている。後に詳述するように、電圧センサ10は、湾曲部12bからクラッド部11の外部に光を漏出可能となるように構成されており、このように漏出した光の強度が光受信部19によって検知される。
【0018】
以上のように構成される電圧センサ10において、コア部12は、印加された電圧に応じて第2の屈折率n2が変化する電気光学効果の1つである、ポッケルス効果を有する材料から形成されている。より具体的に説明すると、電極16と電極17との間に被測定回路18の電圧が印加されると、ポッケルス効果によってコア部12の第2の屈折率n2が小さくなるように変化し、第2の屈折率n2とクラッド部11の第1の屈折率n1との差が小さくなる。したがって、コア部12の湾曲部12b内において、被測定回路18の電圧に応じた量の光がクラッド部11に透過するようになる。
【0019】
ここで、クラッド部11は、光が透過可能な透明な材料から形成されているため、湾曲部12bからクラッド部11に透過した光は、図2の矢印Aで示すように、クラッド部11をそのまま通過して外部に漏出するようになる。このように漏出するようになった光の一部は光受信部19に到達し、その強度を検知される。尚、上述したようなコア部12の材料としては、例えばLiN(リチウムナイトライド)等のように圧電性があり、等方性且つ交換非対称性の結晶からなる材料が用いられる。また、クラッド部11の材料としては、例えばシリコン等が用いられる。
【0020】
また、コア部12に電場をかける一対の電極16、17は、所定の半径で湾曲した湾曲部12bに設けられている。ここで、図3(a)において一点鎖線の矢印Lで示すように、コア部12の直線部12aに入射された光の大部分は、クラッド部11とコア部12との境界面Sに対して臨界角α以上の角度で進入し、境界面Sにおける全反射を繰り返しながら直線部12a内を伝播する。一方、図3(b)において一点鎖線の矢印Lで示すように、コア部12の湾曲部12bでは、クラッド部11とコア部12との境界面Sに対して臨界角α以下の角度で進入する光が増加し、このような光は、電極16、17(図2参照)間に電圧が印加されていなくてもクラッド部11に透過される。すなわち、電圧センサ10において、電極16、17間への電圧の印加時にクラッド部11の外部に漏出する光は、コア部12に湾曲部12bを形成したことによって漏出するようになった光と、ポッケルス効果によって漏出するようになった光とを含むものとなる。したがって、ポッケルス効果のみを利用して光を外部に漏出させる場合と比較すると、光受信部19に供給される光の量を増加させることが可能となっている。
【0021】
次に、この発明の実施の形態1に係る光導波路型電圧センサ10を用いて被測定回路18の電圧を測定する方法について説明する。
図1に示すように、まず、光源14が光ファイバ13を介して電圧センサ10に接続され、光源14から発せられる光がコア部12の直線部12aに入射される。直線部12aを通過して湾曲部12bに到達した光の一部は、クラッド部11とコア部12との境界面Sに対して臨界角α(図3(b)参照)以下の角度で進入し、クラッド部11に透過されて外部に漏出する。残りの光、すなわち臨界角α以上の角度で境界面Sに進入した光は境界面Sで反射され、直線部12cを通過して光ファイバ15内を伝播する。尚、湾曲部12bにおいて、その湾曲方向における外周側に漏出した光は光受信部19に到達し、その強度を検知される。
【0022】
次いで、湾曲部12bに設けられた電極16、17(図2参照)と被測定回路18とが電気的に接続され、電極16と電極17との間に電圧が印加される。これらの電極16、17間に電圧が印加されて湾曲部12bに電場がかかると、コア部12の第2の屈折率n2がポッケルス効果によって変化し、第2の屈折率n2とクラッド部11の第1の屈折率n1との差が小さくなる。これらの屈折率の差が小さくなることにより、湾曲部12b内の光はクラッド部11に透過される。クラッド部11は、光が透過可能な材料から形成されているため、湾曲部12bからクラッド部11に透過した光は、クラッド部11をそのまま通過して外部に漏出する(矢印A参照))。このように漏出した光のうち、湾曲部12bの凸面12d側(外周側)に漏出した光は光受信部19に到達し、その強度を検知される。
【0023】
ここで、ポッケルス効果によってコア部12の第2の屈折率n2が変化する量は、湾曲部12bにかかっている電場の強さ、すなわち、電極16と電極17との間に印加されている被測定回路18の電圧の大きさに応じたものとなっている。すなわち、クラッド部11の外部に漏出する光の強度も被測定回路18の電圧の大きさに応じたものとなるため、光受信部19が検知した光の強度に基づいて、被測定回路18の電圧が求められる。光受信部19は、検知した光の強度に基づいて電圧を算出する図示しない測定部を有しており、この測定部によって被測定回路18の電圧が求められる。
【0024】
以上のように、第1の屈折率n1を有するとともに光が透過可能なクラッド部11と、第1の屈折率n1より大きい第2の屈折率n2を有するとともに電極16、17が設けられた光導波路型電圧センサ10において、ポッケルス効果を有する材料からコア部12を形成したので、ポッケルス効果によってクラッド部11の外部に漏出した光の強度を光受信部19で検知することにより、被測定回路18の電圧が求められる。ポッケルス効果を利用して被測定回路18の電圧を測定するため、被測定回路18と光導波路型電圧センサ10との間における電気の授受がなく、電圧測定の精度が向上する。また、被測定回路18の電圧を、クラッド部11の外部に漏出する光の強度の変化量、すなわちコア部12の第2の屈折率n2の変化量に基づいて測定するため、ルチル平板等の複屈折材料や波長板及び反射板等を必要とすることなく、電圧センサ10を構成できる。したがって、光導波路型電圧センサ10において、簡単な構成で精度よく電圧を測定することが可能となる。
【0025】
また、コア部12は、電極16、17が設けられる湾曲部12bを含むため、湾曲部12bにおいて、境界面Sに対して臨界角α以下の角度で進入される光が増加し、このような光は、電極16、17への電圧の非印加時においてもクラッド部11に透過されて外部に漏出する。すなわち、湾曲部12bを形成することにより、光受信部19に供給される光の量が増加するため、電圧の測定精度をさらに向上することが可能となる。
【0026】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る光導波路型電圧センサについて説明する。
この実施の形態2に係る電圧センサは、実施の形態1に係る電圧センサ10が略L字状に形成されたコア部12を備えていたのに対し、直線状に形成されたコア部を備えるように構成したものである。尚、以下の実施の形態において、図1〜3に示される符号と同一の符号は同一または同様な構成要素であるため、その詳細な説明は省略する。
【0027】
図4に示すように、電圧センサ20は、直線状のコア部22を備えており、コア部22の外周部をクラッド部21が覆っている。コア部22の一部には、被測定回路18に接続された電極16、17が設けられている。また、クラッド部21の側部において電極16、17の近傍に位置する部位には、光受信部19が設けられている。クラッド部21は、実施の形態1におけるクラッド部11と同様に、第2の屈折率n2を有するとともに透明な材料から形成されている。また、コア部22も、実施の形態1におけるコア部12と同様に、第2の屈折率n2を有するとともにポッケルス効果を有する材料から形成されている。その他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0028】
すなわち、この実施の形態2に係る電圧センサ20は、コア部22からクラッド部21の外部への光の漏出を、電極16と電極17との間に印加される被測定回路18の電圧によるポッケルス効果のみによって発生させるように構成したものである。このように、直線状のコア部22を備えるように電圧センサ20を構成した場合、実施の形態1に係る電圧センサ10と比較すると、コア部22が湾曲部を含んでいない分、光の漏出量は少なくなる。しかしながら、クラッド部21の外部に漏出する光の強度自体は、被測定回路18の電圧に応じて変化するため、実施の形態1と同様に、簡単な構成で精度よく電圧を測定可能であるという効果を得ることができる。
【0029】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3に係る光導波路型電圧センサについて説明する。
この実施の形態3に係る電圧センサは、実施の形態1に係る電圧センサ10に対し、被測定回路の電圧が印加される一対の電極を透明な材料から形成したものである。図5に示すように、電圧センサ30は、湾曲部12bを含むコア部12を備えている。また、湾曲部12bにおいて、その湾曲方向の内周側と外周側となる両側部には電極36及び電極37が設けられており、これらの電極36、37と被測定回路18とが電気的に接続されている。その他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0030】
このように、コア部12の湾曲部12bに設けられる電極36、37を透明な材料から形成した場合、矢印Bで示されるように、湾曲部12b内の光は電極36、37を通過してクラッド部11に透過し、外部に漏出して光受信部19に到達する。すなわち、湾曲部12bの周方向において、いずれの方向にも光が漏出するようになるため、電極36、37及び光受信部19の配置に自由度を持たせることが可能となる。例えば、図2に示される電極16、17を透明とした場合、光受信部19をクラッド部11の側部ではなく、上部または下部等に配置することも可能となる。
【0031】
実施の形態1、3におけるコア部は略L字形状に形成され、コア部の形状に沿うようにクラッド部も形成されたが、コア部及びクラッド部の形状を略L字状に限定するものではない。コア部は、光がクラッド部に透過可能となるような湾曲部を一部に含んでいればよく、例えば、直線状のコア部の途中に略U字状の湾曲部を形成すること等も可能である。また、クラッド部は、コア部からクラッド部に透過した光を外部に漏出させることが可能であればよいため、例えば矩形等の他の形状とすることも可能である。
【0032】
実施の形態1〜3におけるクラッド部は、光が透過可能な透明な材料から形成されたが、可視光線に対して完全に透明であることに限定するものではない。光受信部がクラッド部の外部に漏出した光の強度を検知できれば電圧の測定は行えるため、例えば半透明な材料等からクラッド部を形成することも可能である。
【0033】
実施の形態1、2におけるコア部は、電気光学効果としてポッケルス効果を有する材料から形成されたが、電気光学効果をポッケルス効果に限定するものではない。電場の強さの2乗に比例して物質の屈折率が変化するカー効果等を有する材料からコア部を形成することも可能であり、この場合においても、実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。尚、カー効果を有する材料としては、例えばPLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)やLiNbO(リチウムナイオベート)のように、六方晶や正方晶などの結晶構造を有する材料が挙げられる。
【0034】
また、実施の形態1〜3における光導波路型電圧センサの構成は、光ファイバに適用することも可能である。光ファイバは、被測定回路の電圧や電流の他に、例えば被測定物のひずみ、振動あるいは温度等、様々な物理量を測定するためのセンサとして適用することが可能である。このような特性から、近年、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)等の車両内に複数の各種センサや車両の制御機器等を設け、光ファイバを介してそれらを接続したセンサネットワークを構築することが注目されている。光ファイバに複数の波長の光を入射し、各波長を複数個所の電圧測定や電圧以外の物理量測定、あるいは測定した物理量以外の情報伝達に振り分ければ、車両内に1本の光ファイバを敷設するだけでセンサネットワークを構築できる。
【0035】
ここで、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)に搭載されるバッテリーは、数十個から数百個のセルを含んでいるが、これらのセルの電圧をチェックするために従来の電気式の電圧計を各セルに設けることは現実的ではない。一方、電気光学効果を有する材料から光ファイバのコアを形成し、本発明に係る光導波路型電圧センサと同様の構成を有する電圧センサ部を複数箇所に形成すれば、1本の光ファイバ内を伝播する光を利用して各セルの電圧測定を行うことが可能となる。すなわち、本発明に係る光導波路型電圧センサを光ファイバに適用した場合、従来の電気式電圧センサを各セルに設ける必要がなくなるため、電圧を測定するための消費電力を低減することも可能となる。尚、上述したように車両内に光ファイバを敷設した場合、光ファイバの敷設距離は短いため、光ファイバ内を伝播する光が減衰しても、電圧測定等の用途に問題は生じない。
【符号の説明】
【0036】
10,20,30 光導波路型電圧センサ、11,21 クラッド部、12,22 コア部、12b (コア部の)湾曲部、16,17,36,37 電極、18 被測定回路、19 光受信部、n1 第1の屈折率、n2 第2の屈折率。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定回路の電圧を測定する光導波路型電圧センサであって、
第1の屈折率を有し、光が透過可能なクラッド部と、
前記第1の屈折率より大きい第2の屈折率を有し、前記クラッド部の内部に設けられるコア部と、
前記コア部に設けられ、前記電圧が印加される電極と、
前記コア部から前記クラッド部の外部に漏出する光の強度を検知可能な光受信部と
を備え、
前記コア部は、前記電極に印加された前記電圧に応じて前記第2の屈折率が変化する電気光学効果を有する材料から形成されることを特徴とする光導波路型電圧センサ。
【請求項2】
前記第2の屈折率の変化は、前記第2の屈折率が小さくなることである請求項1に記載の光導波路型電圧センサ。
【請求項3】
前記電極は、光が透過可能な材料から形成され、
前記光受信部は、前記クラッド部の外側において前記電極に対応する位置に設けられる請求項1または2に記載の光導波路型電圧センサ。
【請求項4】
前記コア部は、少なくとも一部が湾曲する湾曲部を有し、
前記湾曲部には、前記電極及び前記光受信部が設けられる請求項1〜3のいずれか一項に記載の光導波路型電圧センサ。
【請求項5】
前記光受信部は、前記湾曲部の凸面側に配置される請求項4に記載の光導波路型電圧センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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