光導波路素子、光ハイブリッド回路及び光受信機
【課題】作製トレランスの大きな構造の光導波路素子を提供する。
【解決手段】第1の光カプラと、第2の光カプラと、前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであることを特徴とする光導波路素子により上記課題を解決する。
【解決手段】第1の光カプラと、第2の光カプラと、前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであることを特徴とする光導波路素子により上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子、光ハイブリッド回路及び光受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気通信よりも高速で大容量の情報の通信が可能な光通信システムが普及している。光通信システムでは、様々な光信号処理を行なうために、光信号を分岐させる場合があり、このような場合、光を等分に分岐するのではなく、任意の比率で光信号を分岐することが必要となる場合がある。このように光信号を分岐し、また、結合するための素子(光分岐・結合素子)に求められる条件としては、光分岐・結合素子における作製トレランスが大きいことが挙げられる。即ち、光分岐・結合素子を製造する際、製造マージンが狭いと、所望の均一な特性の光分岐・結合素子を得ることが困難となり、歩留まり等が低下することとなり、製造コストも上昇してしまうからである。
【0003】
ところで、任意の光分岐比が得られる光分岐・結合素子としては、2つの2×2の光カプラの間に位相差を与える2本の光導波路を備えた光導波路素子が報告されている。例えば、図1に示すように、2×2光カプラ611及び612の間に設けられた光導波路613及び614において、各々の光導波路は幅が狭くなった領域を有し、幅が狭くなった領域の長さ又は幅を狭くするためのテーパを相互に異なる形状とした構造のものがある。このように、二つの光導波路613及び614において、光導波路の幅が狭くなった領域の長さ等を異ならせることにより、二つの光導波路613及び614において位相差を生じさせることができる。このため幅が狭くなった領域の長さ等を調整することにより、位相差を変化させ任意の光分岐比を得ることができる。
【0004】
また、図2に示すように、2×2光カプラ621及び622の間に設けられた光導波路623及び624において、一方の光導波路624には、光導波路の幅が狭くなった領域を設け、他方の光導波路623には、このような領域を設けていない構造のものがある。この場合も、二つの光導波路623及び624において位相差が生じ、光導波路の幅が狭くなった領域の長さ等を調整することにより、位相差を変化させ任意の光分岐比を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−144963号公報
【特許文献2】特開2005−249973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図1及び図2に示す光導波路素子では、形成される光導波路の幅が設計値からずれてしまうと、光導波路の幅が狭くなった領域における位相変化が所望の値からずれてしまい、所望の分岐比が得られなくなってしまう。具体的には、図2に示す構造の光導波路素子において、特性劣化の度合い(FM1)は、数1に示す式により表わされる。尚、k0は真空中の波数、LPSは位相変化領域長、δn1及びδn2は、2つの光導波路の幅のズレに対する屈折率変化を示す。ブラケット<>は、2つの光導波路の幅が一定ではないため、局所的に屈折率変化が異なることを示す。
【0007】
【数1】
【0008】
数1に示す式より、光導波路の幅のズレに対する特性劣化を緩和するためには、(<δn1>−<δn2>)の値、または、LPSの値を低減させる必要がある。しかしながら、この2つのパラメータは、所望の位相差を得るため、一方を低減させると、他方が増大する関係にあり、作製トレランスを増大させるには限界があった。
【0009】
従って、光導波路を長く形成することなく、また、作製トレランスの大きな光導波路素子、及び、このような光導波路素子を有する光ハイブリッド回路及び光受信機が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施の形態の一観点によれば、第1の光カプラと、第2の光カプラと、前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであることを特徴とする。
【0011】
また、本実施の形態の他の一観点によれば、第1の光カプラと、第2の光カプラと、前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有していることを特徴とする。
【0012】
また、本実施の形態の他の一観点によれば、第1の光カプラと、第2の光カプラと、前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有し、前記第3の光導波路または前記第4の光導波路のいずれか一方には、局発光が入力され、他方には、QPSK信号光が入力され、前記第5の光導波路及び前記第6の光導波路からは同相信号が出力され、前記第7の光導波路及び前記第8の光導波路からは直交位相信号が出力されるものであって、前記同相信号及び前記直交位相信号を検出する二つの検出部を有し、前記検出部に接続されたデジタル信号処理回路を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
開示の光導波路素子、光ハイブリッド回路及び光受信機によれば、光導波路を長く形成することなく、また、作製トレランスを大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の光導波路素子の構造図(1)
【図2】従来の光導波路素子の構造図(2)
【図3】光導波路素子の構造図
【図4】第1の実施の形態における光導波路素子の構造図
【図5】第1の実施の形態における他の光導波路素子の構造図
【図6】光導波路素子における光導波路のオフセットの説明図
【図7】光導波路をオフセットさせた光導波路素子の構造図
【図8】第1の実施の形態における光導波路をオフセットさせた光導波路素子の構造図
【図9】オフセットと光の透過量との相関図
【図10】第1の実施の形態における光導波路素子の光導波路の構造図
【図11】光導波路素子における光導波路の他のオフセットの説明図
【図12】光導波路素子における光導波路の幅のズレの説明図
【図13】光導波路の幅のズレと光の透過量との相関図
【図14】第2の実施の形態における90度ハイブリッドの構造図
【図15】図14に示す90度ハイブリッドにおける波長と光の透過量との相関図
【図16】図17に示す90度ハイブリッドにおける波長と光の透過量との相関図
【図17】図3の光導波路素子を有する90度ハイブリッドの構造図
【図18】図14に示す90度ハイブリッドにおけるオフセット依存性を示す特性図
【図19】図17に示す90度ハイブリッドにおけるオフセット依存性を示す特性図
【図20】図14に示す90度ハイブリッドにおける光導波路の幅のズレ依存性を示す特性図
【図21】第2の実施の形態における他の90度ハイブリッドの構造図(1)
【図22】第2の実施の形態における他の90度ハイブリッドの構造図(2)
【図23】第2の実施の形態における他の90度ハイブリッドの構造図(3)
【図24】第3の実施の形態における光受信機の構造図
【図25】第4の実施の形態における90度ハイブリッドの構造図
【図26】第5の実施の形態における光受信機の構造図
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0016】
〔第1の実施の形態〕
光導波路素子としては、図1及び図2に示す構造のものとは、別の構造のものも考えられる。例えば、図3に示すように、2×2光カプラ631及び632間に形成される2本の光導波路を互いに同じ幅で形成し、一方の光導波路633を直線的に形成し、他方の光導波路634を屈曲させることにより、位相差を生じさせた光導波路素子が考えられる。この場合、この光導波路素子における特性劣化の度合い(FM2)は、数2に示す式により表わされる。尚、k0は真空中の波数、neqは光導波路の実効屈折率、ΔLPSは遅延導波路長(光導波路634と光導波路633との長さの差)を示す。
【0017】
【数2】
【0018】
数2におけるneqの値は、数1における(<δn1>−<δn2>)の値よりも、2桁程大きいものの、数2におけるΔLPSの値は、数1におけるLPSよりも3桁程小さいため、FM2は、FM1よりも小さくなる。即ち、図3に示す構造の光導波路素子は、図1及び図2に示す構造の光導波路素子に対し、特性劣化が抑制されたものとなる。しかしながら、図3に示す光導波路素子の場合では、光導波路634において曲げられている領域における伝搬モードの制御が必要不可欠である。即ち、光導波路634の曲げられている領域においてモード揺らぎが生じると、所望の位相差から大幅にずれてしまう可能性があり、安定して使用することは困難なものとなる。
【0019】
次に、第1の実施の形態における光導波路素子について説明する。本実施の形態における光導波路素子は、図4に示すように、1×2MMI(Multi-Mode Interference)カプラ11及び2×2MMIカプラ12と、1×2MMIカプラ11と2×2MMIカプラ12との間に設けられた2つの光導波路21及び22を有している。第1の光カプラである1×2MMIカプラ11は、光導波路23から入射した光を2つに分岐し第1の光導波路である光導波路21及び第2の光導波路である光導波路22へと出射するものである。また、第2の光カプラである2×2MMIカプラ12は、光導波路21及び22より入射した光を干渉させ光導波路24及び25に出射するものである。尚、光導波路21及び22は、同じ向きに曲げられており、円弧状に形成されている。具体的には、光導波路21は、曲率半径R1で曲げられており、光導波路22は、曲率半径R2で曲げられおり、光導波路21を含む曲率半径R1で描かれる円の中心と、光導波路22を含む曲率半径R2で描かれる円の中心とは略一致するように形成されている。尚、曲率半径R1及びR2は、数3に示す式で表わされるものであり、R0は、曲率半径R1とR2との平均値であり、本願においては平均曲率半径と称する。このため、光導波路21と光導波路22は、ともに曲げ導波路を有しており、光導波路21における光路長と光導波路22における光路長とは異なるものとなる。
【0020】
【数3】
【0021】
1×2MMIカプラ11及び2×2MMIカプラ12に接続されている光導波路21及び22が、曲率半径R1及びR2における角度θの円弧となる領域に形成されたものと仮定した場合、光導波路21と光導波路22との長さの差は、2×θ×δRとなる。よって、この差だけ位相差を生じさせることができる。即ち、光導波路21及び22において、角度θ、曲率半径R1及びR2を調整することにより、所望の位相差を得ることができる。このように形成された光導波路素子の特性劣化の度合いは、数2に示す場合と同様であり、図1及び図2に示す場合と比較して、特性劣化を抑制することができる。尚、δRは、R0(平均曲率半径)に対し極めて小さいため、2本の光導波路21及び22における伝搬モードの曲率半径依存性は殆どないものと考えられる。
【0022】
また、曲げられている2本の光導波路21及び22において、双方とも同様に曲げられて形成されているため、モード揺らぎが生じた場合であっても、双方とも同様の影響を受けることから、2本の光導波路21及び22における位相差を実質的に一定に保つことができる。よって、2本の光導波路21及び22は、光導波路の形成される領域が短く、また、モード揺らぎの影響にも鈍感であるため、安定して使用することができる。尚、光導波路21及び22は、1×2MMIカプラ11及び2×2MMIカプラ12に対し実質的に垂直となるように接続されているものとする。
【0023】
図4は、2×2光カプラ12からの出力に接続される光導波路24及び25が直線的な形状のものについて示している。しかしながら、図5に示すように、2×2光カプラ12からの出力に接続される光導波路34及び35を曲率半径R2及びR1で曲げることにより、光導波路23の延びる方向と光導波路34及び35の延びる方向とを実質的に同じ方向にすることも可能である。
【0024】
(光導波路素子の特性)
次に、本実施の形態における光導波路素子の特性について説明する。通常、図6に示すように、光導波路素子においては、光カプラ111に光導波路121を接続する際、光導波路121を直線導波路121aと曲げ導波路121bにより形成し、直線導波路121aと曲げ導波路121bとの間にオフセット部121cが設けられる。これは曲げ導波路を伝搬するモードの電界分布は、曲げ導波路の外側にシフトする傾向にあるため、直線導波路を伝搬するモードの電界分布値と曲げ導波路を伝搬するモードの電界分布とは整合しなくなり、これにより過剰損失やモード揺らぎが生じてしまう。このため直線導波路121aと曲げ導波路121bとの間にオフセット部121cを設け、所定の位置オフセットさせることにより、直線導波路121aの中心と曲げ導波路121bの中心とを意図的にずらし、モードのシフトの影響を抑制するものである。即ち、曲げ導波路121bを伝搬するモードの電界分布は、曲げ導波路121bの外側にシフトする傾向にある。従って、曲げ導波路121bを直線導波路121aに対し所定のオフセットの値ΔSオフセットさせることにより、モードのシフトの影響を抑制するものである。尚、このオフセット部121cは、直線導波路121aと曲げ導波路121bとの境界部分に設けられるものであって、本願においては段部とも称する。
【0025】
図7は、図3に示す構造の光導波路素子であるマッハ・ツェンダ干渉計において、光導波路634をオフセットさせた構造のものである。図7に示す構造の光導波路素子は、光導波路634が直線導波路634aと曲げ導波路634bにより形成されており、直線導波路634aと曲げ導波路634bとの間をΔSオフセットさせたものである。尚、曲げ導波路634b間においては、変曲点においてもオフセットがされるため、計4ヶ所でオフセットがされている。
【0026】
図8は、本実施の形態における光導波路素子であるマッハ・ツェンダ干渉計において、光導波路31及び32をオフセットさせた構造のものである。即ち、図8に示す構造の光導波路素子は、光導波路31及び光導波路32が各々直線導波路31a及び32aと曲げ導波路31b及び32bにより形成されており、直線導波路31a及び32aと曲げ導波路31b及び32bとの間をΔSオフセットさせたものである。よって、光導波路31及び32においては、各々2ヶ所でオフセットがされている。
【0027】
図9には、図7に示す光導波路素子(光導波路素子A)と、図8に示す本実施の形態における光導波路素子(光導波路素子1)において、オフセットの値ΔSと出力される光の分岐量(光の透過量、トランスミッタンス)との関係を示す。尚、オフセットの値ΔSは、光導波路素子Aにおいては、直線導波路634aと曲げ導波路634bにおけるオフセット及び曲げ導波路634b同士間におけるオフセットの値である。また、光導波路素子1においては、直線導波路31a及び32aと曲げ導波路31b及び32bとの間におけるオフセットの値である。
【0028】
また、光導波路素子Aは、光導波路635と光導波路633との位相差が−π/4となるように形成されており、光導波路素子1は、光導波路31と光導波路32との位相差が−π/4となるように形成されている。これにより、設計上、光導波路素子Aは、光導波路635と光導波路633との光出力を85(約0.7dB損失):15(約8.3dB損失)で分岐することができ、光導波路素子1は、光導波路31と光導波路32との光出力を85:15で分岐することができる。
【0029】
更に、光導波路素子A及び光導波路素子1における各々の光導波路は、図10に示すように、ハイメサ導波路構造により形成されている。具体的には、InP基板211上にGaInAsPコア層212、InPクラッド層213を積層し、GaInAsPコア層212及びInPクラッド層213、InP基板211の一部を除去することにより、ハイメサ導波路構造となるように形成されている。このGaInAsPコア層212におけるバンドギャップ波長λgは、1.05μmであり、形成される光導波路の幅は、ともに、2.5μmであり、単一モードの条件を満足するものである。尚、光導波路素子1は、R0が500μm、δRが1.5μmとなるように形成されている。
【0030】
図9に示されるように、本実施の形態に係る光導波路素子1は、オフセットの値ΔSに依存することなく、光導波路31と光導波路32とにおける光出力を略85:15となるように分岐することができる。しかしながら、図7に示す光導波路素子Aは、オフセットの値ΔSが0.04μm前後においては、光導波路643と光導波路644とにおける光出力を85:15となるように分岐させることができるが、オフセットの値ΔSが変化すると分岐比も変化してしまう。即ち、オフセットの値ΔSを0〜0.1μmの範囲で変化させた場合に、本実施の形態に係る光導波路素子1における分岐比は、85:15で略一定である。これに対し、光導波路素子Aは、85に分岐される光は約±6%変化し、15に分岐される光は約±27%変化し、分岐比はオフセットの値ΔSに依存し変化してしまう。
【0031】
このように、図7に示す光導波路素子Aにおいて、光出力の分岐比が大きく変化するのは、曲げ導波路において高次モードまたは高次漏洩モードが励振し、ΔLPSに起因する位相変化量が変化することによるものと考えられる。
【0032】
一方、図8に示す本実施の形態に係る光導波路素子1では、オフセットの値ΔSを0〜0.1μmの範囲で変化させても、光出力の分岐比の変化量は±1%以内であり、殆ど変化していない。これは光導波路31と光導波路32とは、極めて近い曲率半径により曲げ導波路が形成されており、曲げ導波路において高次モードまたは高次漏洩モードが励振されるものの、光導波路31と光導波路32とで、同じモードが励振されるからであると考えられる。これにより光導波路31と光導波路32とにおいては、所定の位相変化量が保たれ、光の分岐比を実質的に一定にすることができるものと考えられる。
【0033】
以上のように、本実施の形態における光導波路素子においては、直線導波路と曲げ導波路とのオフセットの値ΔSに依存することなく、光の分岐比を一定にすることができ、製造する際に、オフセットの値ΔSが多少ずれても、光の分岐比に影響を与えることはない。更に、本実施の形態における光導波路素子では、光の分岐比はオフセットの値ΔSに依存しないため、直線導波路と曲げ導波路との間にオフセット部を設ける必要がない。
【0034】
また、上記においては、光導波路が直線導波路と曲げ導波路とにより形成されている場合について説明したが、図11に示すように、光導波路141が曲げ導波路のみにより形成されており、カプラ131と接続されている場合も同様である。具体的には、光導波路141とカプラ131との接続位置を所定の位置よりもΔMずれている位置で接続している場合、ΔMはオフセットの値ΔSと同様に考えることができる。即ち、本実施の形態における光導波路素子では、光導波路141とカプラ131との接続位置が製造誤差等により多少ずれて形成されても、所望の光出力の分岐比を得ることができ、製造マージンを広くすることができる。
【0035】
次に、図12に基づき、形成される光導波路の幅が製造誤差等の影響により変動する場合について説明する。このような場合として、図12(a)に示すように、製造誤差等の影響により、光導波路151aが設計値の幅Wよりも広く幅W+δWで形成される場合、図12(b)に示すように、光導波路151bが設計値の幅Wよりも狭く幅W−δWで形成される場合がある。
【0036】
図13に、光導波路の幅と分岐された光出力との関係について説明する。尚、上述のとおり、光導波路素子1は、本実施の形態に係る光導波路素子であり、光導波路素子Aは、図3に示す構造の光導波路素子であり、光導波路素子Bは、図2に示す構造の光導波路素子である。また、光導波路素子1、光導波路素子A及び光導波路素子Bは、光出力が85:15となるように形成されている。図13に示すように、δWを−0.05〜0.05μmの範囲で変化させた場合、光出力が15となる出力ポートでは、光導波路素子Bにおける光出力の変化率は±11%であり、光導波路素子Aにおける光出力の変化率は約±2.5%である。これに対し、光導波路素子1における光出力の変化率は約±2.5%以下である。このように、本実施の形態に係る光導波路素子1は、形成される光導波路において幅のずれの影響をあまり受けることなく、光出力を所望の分岐比で分岐することができる。言い換えれば、光導波路素子1は、製造誤差等により、形成される光導波路の幅が多少太く形成された場合、また、細く形成された場合においても、所望の分岐比で光出力を分岐することができる。このように、本実施の形態に係る光導波路素子1においては、光導波路の幅における製造誤差等の影響を受け難いため、製造マージンを広くすることができる。
【0037】
以上、光導波路素子において2つのMMIカプラ間に設けられる2つの光導波路における位相差が、−π/4の場合について説明したが、本実施の形態における光導波路素子においては、任意の位相差に設定することができる。従って、これら任意の位相差においても、上記と同様に製造マージンを広くすることができ、作製トレランスを飛躍的に向上させることができる。
【0038】
また、本実施の形態においては、1×2光カプラ11と2×2光カプラ12との間における光導波路21及び22は、同心円の一部である円弧において形成した場合について説明したが、上記構造に限定されるものではない。例えば、上述したように光導波路21及び22は、直線導波路、曲げ導波路、直線導波路が連続して接続されている構造のもの、曲げ導波路、直線導波路、曲げ導波路が連続して接続されている構造のものでもよい。
【0039】
また、光導波路21及び22の幅は、一定の幅で形成されているものでなくてもよく、1×2光カプラ11または2×2光カプラ12の一方から他方に向かって、幅が広がるように形成されていてもよく、また、幅が狭くなるように形成されていてもよい。
【0040】
更に、本実施の形態における説明では、R0の値が500μmである場合について説明したが、R0の値は100μm以上の任意の値においても同様の効果を得ることができる。即ち、R0の値が小さくなると、各々の曲げ導波路の曲率半径が小さくなり、光導波路における曲げが急激なものとなることから、双方の光導波路において同じモードが励振しなくなる場合がある。このような場合には、製造誤差等の影響により安定した光導波路素子を得ることが困難なものとなり、僅かな製造誤差等の影響を受けやすくなる。よって、十分な製造マージンを得ることができ、所望の作製トレランスを得るためには、平均曲率半径R0の値は、100μm以上であることが好ましい。
【0041】
(製造方法)
次に、図10に基づき本実施の形態における光導波路素子の製造方法について説明する。
【0042】
最初に、InP基板211上に、MOVPE(Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)法により、アンドープのGaInAsPコア層212及びInPクラッド層213をエピタキシャル成長により形成する。InP基板211は、n型またはアンドープのInPである。また、形成されるGaInAsPコア層212は、バンドギャップ波長が1.05μm、膜厚0.5μmであり、形成されるInPクラッド層213は、n型またはアンドープのInPであり、膜厚2.0μmである。
【0043】
次に、InPクラッド層213上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)等によりSiO2膜を成膜し、更に、SiO2膜上にフォトレジストを塗布し、フォトマスクを用いて露光装置による露光、現像を行なうことにより、レジストパターンを形成する。レジストパターンは、光導波路素子における導波路領域に形成される。この後、レジストパターンの形成されていない領域のSiO2膜をRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングにより除去することにより、不図示のSiO2マスクを形成する。
【0044】
次に、SiO2マスクの形成されていない領域のInPクラッド層213、GaInAsPコア層212及びInP基板211の一部をICP−RIE(Inductive Coupled Plasma-RIE)等のドライエッチングにより除去する。このようにして、高さが約3.0μmとなるハイメサ導波路構造を形成する。
【0045】
尚、上述した説明では、InP系化合物半導体材料を用いた場合について説明したが、GaAs系化合物半導体材料、Si系半導体材料、誘電体材料、高分子材料等を用いた場合においても、同様の光導波路素子を製造することが可能である。
【0046】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における光導波路素子と同様の構造の光導波路素子を含む光ハイブリッド回路である90度ハイブリッドである。図14に、本実施の形態における90度ハイブリッドを示す。
【0047】
本実施の形態における90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312を有しており、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312との間には光導波路321及び322が設けられている。尚、この光導波路321及び322は、第1の実施の形態における光導波路21及び22と同様の構造により形成されている。
【0048】
本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、第1の光カプラとなる2×4MMIカプラ311の入力側には、第3の光導波路及び第4の光導波路である2本の光導波路331及び332が接続されている。光導波路331には、四位相偏移変調(QPSK:quadrature phase shift keying)信号光が入力し、光導波路332には、局発(LO:local oscillator)光が入力している。光導波路331に入射する四位相偏移変調信号は、基準となる信号(位相差が0)と、π/2、π、−π/2の位相差がある4つの信号を含むものである。光導波路331及び332に、これらの信号光を入力すると、2×4MMIカプラ311において4つの信号光に分岐され、この4つの信号光は2×4MMIカプラ311に接続されている4つの光導波路333、334、321、322に出力される。尚、本願においては、光導波路333及び334は、第5の光導波路及び第6の光導波路であり、光導波路321及び322は、第1の光導波路及び第2の光導波路である。具体的には、光導波路333には、位相差πの信号が出力され、光導波路334には、位相差のない信号が出力され、光導波路321には、位相差のない信号が出力され、光導波路322には、位相差πの信号が出力される。よって、2×4MMIカプラ311からは、2つの同相信号(In-phase)が出力される。ところで、本実施の形態における90度ハイブリッドでは、光導波路321及び光導波路322は、2×2MMIカプラ312と接続されており、光導波路322は光導波路321に対し、位相差がπ/4遅れるように長く形成されている。これにより、2×2MMIカプラ312に接続されている第7の光導波路及び第8の光導波路である光導波路335及び336には、直交位相信号(Quadrature)が出力される。即ち、光導波路335には、位相差π/2の信号が出力され、光導波路336には、位相差−π/2の信号が出力される。尚、2×4MMIカプラ311において、第1の光導波路となる光導波路321は、第2の光導波路となる光導波路322よりも内側に設けられており、光導波路322は、光導波路321に対しπ/4位相差が生じるように、長く形成されている。また、位相差はπ/4生じていればよいため、(2n+1/4)πであってもよい(nは0を含む自然数)。
【0049】
従って、前述のとおり光導波路333及び334からは、同相信号を出力させることができ、光導波路335及び336からは、直交位相信号を出力させることができる。尚、本実施の形態における光導波路素子において、光導波路333及び334からの光信号出力をI(In-phase)チャンネル、光導波路335及び336からの光信号出力をQ(Quadrature)チャンネルという。
【0050】
ところで、光導波路321及び光導波路322においては、製造誤差等の影響により、所定の値よりもずれて形成されると、直交位相信号成分において特性劣化が生じてしまう。しかしながら、本実施の形態における90度ハイブリッドでは、第1の実施の形態と同様の構造の光導波路素子を含んでいるため、製造誤差等の影響による特性劣化を低く抑えることができ、製造マージンを広くすることができる。
【0051】
次に、本実施の形態における90度ハイブリッドの特性について説明する。通常、エラーを伴わない光信号処理を行なうためには、光信号受信時において同相信号雑音比(CMRR:common-mode contrast ratio)を20dB以下に抑えることが求められている。このように20dB以下のCMRRを得るためには、90度ハイブリッドにおけるIチャンネル及びQチャンネル間における偏差を0.9dB以内に抑える必要がある。尚、受信感度のバラツキを考慮するならば、90度ハイブリッドのIチャンネル及びQチャンネル間における偏差は、より厳しいものが要求される。
【0052】
図15は、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、波長と光の透過量との関係を示すものであり、図16は、図17に示す構造の90度ハイブリッドの波長と光の透過量との関係を示すものである。尚、図15は、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、光導波路331には光を入力することなく、光導波路332のみに光を入力したものである。この場合における光導波路333、334、335及び336における出力をCh−1、Ch−2、Ch−3、Ch−4として示すものである。また、図17に示す構造の90度ハイブリッドは、図3に示される光導波路素子を有するものである。即ち、図17に示す構造の90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ711と2×2MMIカプラ712を有しており、2×4MMIカプラ711と2×2MMIカプラ712との間には、光導波路721及び722が設けられている。この光導波路721及び722は、図3に示される光導波路633及び634と同様の構造で形成されている。図17に示される90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ711には、入力側に、光導波路731及び732が接続されており、出力側に、光導波路721、722、733及び734が接続されている。また、2×2MMIカプラ712には、入力側に、光導波路721及び722が接続されており、出力側に、光導波路735及び736が接続されている。尚、図17に示す構造の90度ハイブリッドに形成される光導波路は、オフセットの値ΔSが最適化されているものとする。尚、図16は、図17に示す構造の90度ハイブリッドにおいて、光導波路731には光を入力することなく、光導波路732のみに光を入力したものである。この場合における光導波路733、734、735及び736における出力をCh−1、Ch−2、Ch−3、Ch−4として示している。
【0053】
また、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッド及び図17に示す構造の90度ハイブリッドにおいて、光導波路は、すべて図10に示すようなハイメサ構造で形成されている。即ち、これらの光導波路は、InP基板211上に、バンドギャップ波長λgが1.05μmとなるGaInAsPコア層212を形成し、更に、InPクラッド層213を形成したものに、ドライエッチング等によりハイメサ構造を形成したものである。
【0054】
図15及び図16に示されるように、双方の90度ハイブリッドは、良好な分岐比を示しており、チャネル間偏差が小さいことが確認される。
【0055】
次に、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドと、図17に示す構造の90度ハイブリッドにおいて、図6に示すようなオフセットの値ΔSを変化させた場合について説明する。
【0056】
図18は、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、オフセットの値ΔSを変化させた場合における波長とQチャネル間偏差を示すものである。また、図19は、図17に示す90度ハイブリッドにおいて、オフセットの値ΔSを変化させた場合における波長とQチャネル間偏差を示すものである。図18に示されるように、本実施の形態における90度ハイブリッドでは、オフセットの値ΔSが0〜0.1μmの範囲で変化した場合においても、Qチャネル間偏差は、±0.3dB以内の範囲内である。一方、図19に示されるように、図17に示される構造の90度ハイブリッドでは、オフセットの値ΔSが0〜0.1μmの範囲で変化した場合のQチャネル間偏差は、±1dB以上であり大きく変化する。本実施の形態における90度ハイブリッドでは、前述したように、光導波路321及び322において、モード揺らぎが発生しても、殆ど影響を受けることがないため、Qチャネル間偏差を略一定に保つことができる。
【0057】
次に、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、図12に示すように光導波路の幅が変化した場合について説明する。図20は、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、所定の幅Wに対するズレ量δWが、−0.05μm〜0.05μmの範囲で変化した場合における波長とQチャネル間偏差を示すものである。図20に示されるように、光導波路の幅Wに対するズレ量δWが、−0.05μm〜0.05μmの範囲で変化しても、Qチャネル間偏差は、±0.15dB以内の範囲内であり、Qチャネル間偏差は極めて低い。
【0058】
以上より、本実施の形態における90度ハイブリッドにおいては、オフセットの値ΔS及び光導波路の幅Wが、製造誤差等により所定の値とは若干異なる値で形成されても、これらの製造誤差の影響による特性変化は少なく、製造マージンを広くすることができる。よって、作製トレランスを飛躍的に向上させることができる。更に、本実施の形態における90度ハイブリッドにおいては、光信号の分岐比はオフセットの値ΔSに依存しないため、オフセットをさせる必要がない。
【0059】
(変形例)
次に、本実施の形態における変形例について説明する。以下に示す変形例は、上述した90度ハイブリッドと同様に、作製トレランスを飛躍的に向上させることができるものである。
【0060】
最初に、図21に示される構造の90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312を有している。また、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312との間の光導波路341及び342が第1の実施の形態における光導波路21及び22と同様の構造で形成されている。更に、2×4MMIカプラ311には、入力側に、光導波路331及び332が接続されており、出力側に、光導波路341、342、353及び354が接続されている。また、2×2MMIカプラ312には、入力側に、光導波路341及び342が接続されており、出力側に、光導波路355及び356が接続されている。尚、光導波路342は光導波路341に対し、π/4遅延するように形成されている。即ち、2×4MMIカプラ311において、第1の光導波路となる光導波路341は、第2の光導波路となる光導波路342よりも内側に設けられており、光導波路342は、光導波路341に対しπ/4位相差が生じるように、長く形成されている。この90度ハイブリッドでは、光導波路353には、位相差πの信号が出力され、光導波路354には、位相差のない信号が出力され、光導波路355には、位相差π/2の信号が出力され、光導波路356には、位相差−π/2の信号が出力される。このように2×2MMIカプラ312が接続される位置を変えても、作製トレランスの大きい90度ハイブリッドを得ることができる。尚、光導波路353及び354は、第5の光導波路及び第6の光導波路に相当するものであり、光導波路355及び356は、第7の光導波路及び第8の光導波路に相当するものである。
【0061】
次に、図22に示される構造の90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312を有している。また、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312との間の光導波路361及び362が第1の実施の形態における光導波路21及び22と同様の構造で形成されている。更に、2×4MMIカプラ311には、入力側に、光導波路331及び332が接続されており、出力側に、光導波路361、362、333及び334が接続されている。また、2×2MMIカプラ312には、入力側に、光導波路361及び362が接続されており、出力側に、光導波路375及び376が接続されている。尚、光導波路362は、光導波路361に対し、3π/4遅延するように形成されている。即ち、2×4MMIカプラ311において、第1の光導波路となる光導波路361は、第2の光導波路となる光導波路362よりも外側で接続されており、光導波路362は、光導波路361に対し3π/4位相差が生じるように、長く形成されている。また、位相差は3π/4生じていればよいため、(2n+3/4)πであってもよい(nは0を含む自然数)。この90度ハイブリッドでは、光導波路333には、位相差πの信号が出力され、光導波路334には、位相差のない信号が出力され、光導波路375には、位相差−π/2の信号が出力され、光導波路376には、位相差π/2の信号が出力される。このように光導波路361及び362における曲がり導波路の方向を変えることにより、上述した効果の他、光導波路361及び362と光導波路333及び334とが衝突することなく配置することができる。これにより光導波路361、362、333及び334をより高密度に配置することができる。尚、光導波路375及び376は、第7の光導波路及び第8の光導波路に相当するものである。
【0062】
また、図23に示される構造の90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312を有している。また、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312との間の光導波路381及び382が第1の実施の形態における光導波路21及び22と同様の構造で形成されている。更に、2×4MMIカプラ311には、入力側に、光導波路331及び332が接続されており、出力側に、光導波路381、382、353及び354が接続されている。また、2×2MMIカプラ312には、入力側に、光導波路381及び382が接続されており、出力側に、光導波路395及び396が接続されている。尚、光導波路382は光導波路381に対し、3π/4遅延するように形成されている。即ち、2×4MMIカプラ311において、第1の光導波路となる光導波路381は、第2の光導波路となる光導波路382よりも外側で接続されており、光導波路382は、光導波路381に対し3π/4位相差が生じるように、長く形成されている。この90度ハイブリッドでは、光導波路353には、位相差πの信号が出力され、光導波路354には、位相差のない信号が出力され、光導波路395には、位相差−π/2の信号が出力され、光導波路396には、位相差π/2の信号が出力される。このような構造の90度ハイブリッドにおいても、図22に示される構造の90度ハイブリッドと同様の効果を得ることができる。尚、光導波路395及び396は、第7の光導波路及び第8の光導波路に相当するものである。
【0063】
尚、本実施の形態における光導波路素子の製造方法等については、第1の実施の形態と同様である。
【0064】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、図24に示されるように、コヒーレント光受信機である。本実施の形態におけるコヒーレント光受信機は、90度ハイブリッド410、LO光源411、バランスド光検出器421及び422、トランスインピーダンスアンプ431及び432、AD変換回路441及び442、デジタル信号処理回路451を有している。
【0065】
90度ハイブリッド410は、第2の実施の形態におけるいずれかの90度ハイブリッドにより形成されており、図24では、第2の実施の形態における90度ハイブリッドのうちの一つを一例として示している。また、LO光源411は、90度ハイブリッド410にLO光を入射するためのものである。バランスド光検出器(BPD:balanced photodiode)421及び422は、90度ハイブリッド410からの光信号を検出するためのものである。また、トランスインピーダンスアンプ(TIA:trans-impedance amplifier)431及び432は、電流信号を電圧信号に変換するためのものである。AD変換回路441及び442は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0066】
本実施の形態におけるコヒーレント光受信機において、QPSK信号光(QPSK信号パルス)と時間的に同期したLO光を90度ハイブリッド410に入射すると、90度ハイブリッドより4種類の各々の位相における信号光が分岐されて出力される。これらの信号光は、同相信号及び直交位相信号が各々入力するように接続されたバランスド光検出器421及び422において検出される。尚、バランスド光検出器421及び422は、各々2つのフォトダイオードを有しており、どちらか一方に信号光が入射した場合、1または−1に相当する電流が流れ、同時に信号光が入射した場合には、電流が流れない特徴を有している。従って、QPSK信号光における位相情報を識別することができる。バランスド光検出器421及び422により検出された光信号は電流信号となり、トランスインピーダンスアンプ431及び432において電流信号を電圧信号に変換し、AD変換回路441及び442においてアナログである電圧信号をデジタル信号に変換する。この後、このデジタル信号をデジタル信号処理回路451において、これらのデジタル信号を信号処理することにより、コヒーレント光受信機として機能するものである。
【0067】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は90度ハイブリッドであり、差分四位相偏移変調(DQPSK:differential quadrature phase shift keying)信号光に対応したものである。具体的には、第2の実施の形態における90度ハイブリッドは、QPSK信号光及びLO光を時間的に同時に入力するものであるのに対し、本実施の形態における90度ハイブリッドは、差分四位相偏移変調信号光を入力するものである。このため、LO光を必要としないため、LO光源は不要となる。
【0068】
図25に示すように、本実施の形態における90度ハイブリッドは、第3の光カプラとなる1×2MMIカプラ510、第1の光カプラとなる2×4MMIカプラ511、第2の光カプラとなる2×2MMIカプラ512を有している。1×2MMIカプラ510には、入力側に第9の導波路となる光導波路530が接続されており、出力側に第3の導波路及び第4の導波路となる光導波路531及び532が接続されている。2×4MMIカプラ511には、入力側に光導波路531及び532が接続されており、出力側に第1の光導波路及び第2の光導波路となる光導波路521及び522、第5の光導波路及び第6の光導波路となる光導波路533及び534が接続されている。2×2MMIカプラ512には、入力側に光導波路521及び522が接続されており、出力側に第7の光導波路及び第8の光導波路となる光導波路535及び536が接続されている。ここで、2×4MMIカプラ511、2×2MMIカプラ512、光導波路521、522、531、532、533、534、535及び536により形成されるものは、第2の実施の形態における90度ハイブリッドと同様のものであり、同様の機能を有している。また、1×2MMIカプラ510と2×4MMIカプラ511との間に形成される光導波路531は、光導波路532に対しDQPSK信号1ビット分遅延するように形成されている。
【0069】
1×2MMIカプラ510の入力側にDQPSK信号光を入力すると、1×2MMIカプラ510において2つに分岐され光導波路531及び532に出力され、2×4MMIカプラ511に入力する。上述のとおり、2×4MMIカプラ511には、光導波路532に対し1ビット遅延した光信号が光導波路531より入力されるため、光導波路531及び532より2×4MMIカプラ511に入力される光信号は、時間的に同期した信号となる。これにより、光導波路533には、位相差πの光信号が出力され、光導波路534には、位相差のない光信号が出力され、光導波路535には、位相差π/2の光信号が出力され、光導波路536には、位相差−π/2の光信号が出力される。本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に製造マージンを広くすることができるため、作製トレランスを向上させることができる。
【0070】
尚、上記においては、1×2MMIカプラ510を用いた場合について説明したが、1×2MMIカプラ510に代えてY分岐カプラ、2×2MMIカプラ、2×2方向性結合器を用いた場合においても、同様の90度ハイブリッドを得ることができる。
【0071】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様である。
【0072】
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第4の実施の形態における90度ハイブリッドを有する光受信機である。
【0073】
図26に基づき本実施の形態における光受信機について説明する。本実施の形態における光受信機は、第4の実施の形態における90度ハイブリッドに、バランスド光検出器421及び422、トランスインピーダンスアンプ431及び432、AD変換回路441及び442、デジタル信号処理回路451が接続されたものである。尚、バランスド光検出器421及び422、トランスインピーダンスアンプ431及び432、AD変換回路441及び442、デジタル信号処理回路451は、第3の実施の形態と同様のものである。
【0074】
本実施の形態における光受信機では、光導波路530にDQPSK信号光を入力すると、1×2MMIカプラ510において2つに分岐され光導波路531及び532を介し、2×4MMIカプラ511に入力する。上述のとおり、2×4MMIカプラ511には、光導波路532に対し1ビット遅延した光信号が光導波路531より入力されるため、光導波路531及び532より2×4MMIカプラ511に入力される光信号は、時間的に同期した信号となる。これにより、光導波路533、534、535、536には、各々位相差πの光信号、位相差のない光信号、位相差π/2の光信号、位相差−π/2の光信号が出力され、バランスド光検出器421及び422により検出される。このようにして、DQPSK変調信号を識別することのできる光受信機を得ることができる。
【0075】
尚、上記以外の内容については、第3の実施の形態と同様である。
【0076】
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0077】
上記の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであることを特徴とする光導波路素子。
(付記2)
前記第1の光導波路における円弧状の曲げ導波路の曲率半径により描かれる円の中心と、前記第2の光導波路における円弧状の曲げ導波路の曲率半径により描かれる円の中心とは、一致していることを特徴とする付記1に記載の光導波路素子。
(付記3)
前記第1の光導波路における曲げ導波路の曲率半径R1と前記第2の光導波路における曲げ導波路の曲率半径R2との平均である平均曲率半径R0は、100μm以上であることを特徴とする付記2に記載の光導波路素子。
(付記4)
前記第1の光導波路は、曲げ導波路と直線導波路とを有していることを特徴とする付記1から3のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記5)
前記第2の光導波路は、曲げ導波路と直線導波路とを有していることを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記6)
前記直線導波路と前記曲げ導波路との接続部分において、前記直線導波路の中心と前記曲げ導波路の中心とがずれて形成された段部を有していることを特徴とする付記1から5のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記7)
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路は、InPを含む基板上に形成されたGaInAsPを含むコア層、前記コア層上に形成されたInPを含むクラッド層により形成されているものであることを特徴とする付記1から6のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記8)
前記第1の光カプラは、1×2光カプラ、2×2光カプラまたは2×4光カプラのうち、いずれかの光カプラであることを特徴とする1から7のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記9)
前記第2の光カプラは、2×2光カプラであることを特徴とする1から8のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記10)
前記第1の光カプラは、MMIカプラであることを特徴とする付記8に記載の光導波路素子。
(付記11)
前記第2の光カプラは、MMIカプラであることを特徴とする付記8または9に記載の光導波路素子。
(付記12)
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、
前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、
前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、
前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、
前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、
前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有していることを特徴とする光ハイブリッド回路。
(付記13)
前記第1の光導波路の長さと前記第2の光導波路の長さの差は、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路に入力される波長の光の(2n+1/4)πまたは、(2n+3/4)πに相当するものであること(nは0を含む自然数)を特徴とする付記12に記載の光ハイブリッド回路。
(付記14)
前記第1のカプラは2×4の光カプラの出力側において、前記第1の光導波路が前記第2の光導波路よりも内側に設けられている場合には、前記第2の光導波路は前記第1の光導波路に対し、(n+π/4)長く形成されており、
または、前記第1のカプラは2×4の光カプラの出力側において、前記第2の光導波路が前記第1の光導波路よりも内側に設けられている場合には、前記第2の光導波路は前記第1の光導波路に対し、(n+3π/4)長く形成されている、
ことを特徴とする付記13に記載の光ハイブリッド回路。
(付記15)
前記第3の光導波路または前記第4の光導波路のいずれか一方には、局発光が入力され、他方には、QPSK信号光が入力されるものであって、
前記第5の光導波路及び前記第6の光導波路からは同相信号が出力され、
前記第7の光導波路及び前記第8の光導波路からは直交位相信号が出力されることを特徴とする付記12から14のいずれかに記載の光ハイブリッド回路。
(付記16)
入力側に第9の光導波路が接続された1×2の光カプラからなる第3の光カプラを有し、
前記第3のカプラの出力側には前記第3の光導波路及び前記第4の光導波路が接続されており、
前記第3の光導波路及び前記第4の光導波路のうちいずれか一方は他方に対し、前記第9の光導波路に入力される信号光のビットレートの一周期の相当する分長く形成されていることを特徴とする付記12から14のいずれかに記載の光ハイブリッド回路。
(付記17)
前記第9の光導波路には、DQPSK信号が入力されるものであって、
前記第5の光導波路及び前記第6の光導波路からは同相信号が出力され、
前記第7の光導波路及び前記第8の光導波路からは直交位相信号が出力されることを特徴とする付記16に記載の光ハイブリッド回路。
(付記18)
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、
前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、
前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、
前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、
前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、
前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有し、
前記第3の光導波路または前記第4の光導波路のいずれか一方には、局発光が入力され、他方には、QPSK信号光が入力され、
前記第5の光導波路及び前記第6の光導波路からは同相信号が出力され、
前記第7の光導波路及び前記第8の光導波路からは直交位相信号が出力されるものであって、
前記同相信号及び前記直交位相信号を検出する二つの検出部を有し、
前記検出部に接続されたデジタル信号処理回路を有することを特徴とする光受信機。
(付記19)
前記検出部は、前記同相信号及び前記直交位相信号を検出するためのバランスド光検出器が設けられていることを特徴とする付記18に記載の光受信機。
(付記20)
前記検出部は、前記バランスド光検出器に接続されたトランスインピーダンスアンプと、
前記トランスインピーダンスアンプに接続されたAD変換回路と、
を有し、各々の前記検出部における前記AD変換回路は、前記デジタル信号処理回路に接続されていることを特徴とする付記19に記載の光受信機。
【符号の説明】
【0078】
11 1×2MMIカプラ
12 2×2MMIカプラ
21 光導波路
22 光導波路
23 光導波路
24 光導波路
25 光導波路
R1 光導波路21の曲率半径
R2 光導波路22の曲率半径
R0 平均曲率半径(光導波路21の曲率半径と光導波路22との曲率半径の平均)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子、光ハイブリッド回路及び光受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気通信よりも高速で大容量の情報の通信が可能な光通信システムが普及している。光通信システムでは、様々な光信号処理を行なうために、光信号を分岐させる場合があり、このような場合、光を等分に分岐するのではなく、任意の比率で光信号を分岐することが必要となる場合がある。このように光信号を分岐し、また、結合するための素子(光分岐・結合素子)に求められる条件としては、光分岐・結合素子における作製トレランスが大きいことが挙げられる。即ち、光分岐・結合素子を製造する際、製造マージンが狭いと、所望の均一な特性の光分岐・結合素子を得ることが困難となり、歩留まり等が低下することとなり、製造コストも上昇してしまうからである。
【0003】
ところで、任意の光分岐比が得られる光分岐・結合素子としては、2つの2×2の光カプラの間に位相差を与える2本の光導波路を備えた光導波路素子が報告されている。例えば、図1に示すように、2×2光カプラ611及び612の間に設けられた光導波路613及び614において、各々の光導波路は幅が狭くなった領域を有し、幅が狭くなった領域の長さ又は幅を狭くするためのテーパを相互に異なる形状とした構造のものがある。このように、二つの光導波路613及び614において、光導波路の幅が狭くなった領域の長さ等を異ならせることにより、二つの光導波路613及び614において位相差を生じさせることができる。このため幅が狭くなった領域の長さ等を調整することにより、位相差を変化させ任意の光分岐比を得ることができる。
【0004】
また、図2に示すように、2×2光カプラ621及び622の間に設けられた光導波路623及び624において、一方の光導波路624には、光導波路の幅が狭くなった領域を設け、他方の光導波路623には、このような領域を設けていない構造のものがある。この場合も、二つの光導波路623及び624において位相差が生じ、光導波路の幅が狭くなった領域の長さ等を調整することにより、位相差を変化させ任意の光分岐比を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−144963号公報
【特許文献2】特開2005−249973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図1及び図2に示す光導波路素子では、形成される光導波路の幅が設計値からずれてしまうと、光導波路の幅が狭くなった領域における位相変化が所望の値からずれてしまい、所望の分岐比が得られなくなってしまう。具体的には、図2に示す構造の光導波路素子において、特性劣化の度合い(FM1)は、数1に示す式により表わされる。尚、k0は真空中の波数、LPSは位相変化領域長、δn1及びδn2は、2つの光導波路の幅のズレに対する屈折率変化を示す。ブラケット<>は、2つの光導波路の幅が一定ではないため、局所的に屈折率変化が異なることを示す。
【0007】
【数1】
【0008】
数1に示す式より、光導波路の幅のズレに対する特性劣化を緩和するためには、(<δn1>−<δn2>)の値、または、LPSの値を低減させる必要がある。しかしながら、この2つのパラメータは、所望の位相差を得るため、一方を低減させると、他方が増大する関係にあり、作製トレランスを増大させるには限界があった。
【0009】
従って、光導波路を長く形成することなく、また、作製トレランスの大きな光導波路素子、及び、このような光導波路素子を有する光ハイブリッド回路及び光受信機が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施の形態の一観点によれば、第1の光カプラと、第2の光カプラと、前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであることを特徴とする。
【0011】
また、本実施の形態の他の一観点によれば、第1の光カプラと、第2の光カプラと、前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有していることを特徴とする。
【0012】
また、本実施の形態の他の一観点によれば、第1の光カプラと、第2の光カプラと、前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有し、前記第3の光導波路または前記第4の光導波路のいずれか一方には、局発光が入力され、他方には、QPSK信号光が入力され、前記第5の光導波路及び前記第6の光導波路からは同相信号が出力され、前記第7の光導波路及び前記第8の光導波路からは直交位相信号が出力されるものであって、前記同相信号及び前記直交位相信号を検出する二つの検出部を有し、前記検出部に接続されたデジタル信号処理回路を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
開示の光導波路素子、光ハイブリッド回路及び光受信機によれば、光導波路を長く形成することなく、また、作製トレランスを大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の光導波路素子の構造図(1)
【図2】従来の光導波路素子の構造図(2)
【図3】光導波路素子の構造図
【図4】第1の実施の形態における光導波路素子の構造図
【図5】第1の実施の形態における他の光導波路素子の構造図
【図6】光導波路素子における光導波路のオフセットの説明図
【図7】光導波路をオフセットさせた光導波路素子の構造図
【図8】第1の実施の形態における光導波路をオフセットさせた光導波路素子の構造図
【図9】オフセットと光の透過量との相関図
【図10】第1の実施の形態における光導波路素子の光導波路の構造図
【図11】光導波路素子における光導波路の他のオフセットの説明図
【図12】光導波路素子における光導波路の幅のズレの説明図
【図13】光導波路の幅のズレと光の透過量との相関図
【図14】第2の実施の形態における90度ハイブリッドの構造図
【図15】図14に示す90度ハイブリッドにおける波長と光の透過量との相関図
【図16】図17に示す90度ハイブリッドにおける波長と光の透過量との相関図
【図17】図3の光導波路素子を有する90度ハイブリッドの構造図
【図18】図14に示す90度ハイブリッドにおけるオフセット依存性を示す特性図
【図19】図17に示す90度ハイブリッドにおけるオフセット依存性を示す特性図
【図20】図14に示す90度ハイブリッドにおける光導波路の幅のズレ依存性を示す特性図
【図21】第2の実施の形態における他の90度ハイブリッドの構造図(1)
【図22】第2の実施の形態における他の90度ハイブリッドの構造図(2)
【図23】第2の実施の形態における他の90度ハイブリッドの構造図(3)
【図24】第3の実施の形態における光受信機の構造図
【図25】第4の実施の形態における90度ハイブリッドの構造図
【図26】第5の実施の形態における光受信機の構造図
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0016】
〔第1の実施の形態〕
光導波路素子としては、図1及び図2に示す構造のものとは、別の構造のものも考えられる。例えば、図3に示すように、2×2光カプラ631及び632間に形成される2本の光導波路を互いに同じ幅で形成し、一方の光導波路633を直線的に形成し、他方の光導波路634を屈曲させることにより、位相差を生じさせた光導波路素子が考えられる。この場合、この光導波路素子における特性劣化の度合い(FM2)は、数2に示す式により表わされる。尚、k0は真空中の波数、neqは光導波路の実効屈折率、ΔLPSは遅延導波路長(光導波路634と光導波路633との長さの差)を示す。
【0017】
【数2】
【0018】
数2におけるneqの値は、数1における(<δn1>−<δn2>)の値よりも、2桁程大きいものの、数2におけるΔLPSの値は、数1におけるLPSよりも3桁程小さいため、FM2は、FM1よりも小さくなる。即ち、図3に示す構造の光導波路素子は、図1及び図2に示す構造の光導波路素子に対し、特性劣化が抑制されたものとなる。しかしながら、図3に示す光導波路素子の場合では、光導波路634において曲げられている領域における伝搬モードの制御が必要不可欠である。即ち、光導波路634の曲げられている領域においてモード揺らぎが生じると、所望の位相差から大幅にずれてしまう可能性があり、安定して使用することは困難なものとなる。
【0019】
次に、第1の実施の形態における光導波路素子について説明する。本実施の形態における光導波路素子は、図4に示すように、1×2MMI(Multi-Mode Interference)カプラ11及び2×2MMIカプラ12と、1×2MMIカプラ11と2×2MMIカプラ12との間に設けられた2つの光導波路21及び22を有している。第1の光カプラである1×2MMIカプラ11は、光導波路23から入射した光を2つに分岐し第1の光導波路である光導波路21及び第2の光導波路である光導波路22へと出射するものである。また、第2の光カプラである2×2MMIカプラ12は、光導波路21及び22より入射した光を干渉させ光導波路24及び25に出射するものである。尚、光導波路21及び22は、同じ向きに曲げられており、円弧状に形成されている。具体的には、光導波路21は、曲率半径R1で曲げられており、光導波路22は、曲率半径R2で曲げられおり、光導波路21を含む曲率半径R1で描かれる円の中心と、光導波路22を含む曲率半径R2で描かれる円の中心とは略一致するように形成されている。尚、曲率半径R1及びR2は、数3に示す式で表わされるものであり、R0は、曲率半径R1とR2との平均値であり、本願においては平均曲率半径と称する。このため、光導波路21と光導波路22は、ともに曲げ導波路を有しており、光導波路21における光路長と光導波路22における光路長とは異なるものとなる。
【0020】
【数3】
【0021】
1×2MMIカプラ11及び2×2MMIカプラ12に接続されている光導波路21及び22が、曲率半径R1及びR2における角度θの円弧となる領域に形成されたものと仮定した場合、光導波路21と光導波路22との長さの差は、2×θ×δRとなる。よって、この差だけ位相差を生じさせることができる。即ち、光導波路21及び22において、角度θ、曲率半径R1及びR2を調整することにより、所望の位相差を得ることができる。このように形成された光導波路素子の特性劣化の度合いは、数2に示す場合と同様であり、図1及び図2に示す場合と比較して、特性劣化を抑制することができる。尚、δRは、R0(平均曲率半径)に対し極めて小さいため、2本の光導波路21及び22における伝搬モードの曲率半径依存性は殆どないものと考えられる。
【0022】
また、曲げられている2本の光導波路21及び22において、双方とも同様に曲げられて形成されているため、モード揺らぎが生じた場合であっても、双方とも同様の影響を受けることから、2本の光導波路21及び22における位相差を実質的に一定に保つことができる。よって、2本の光導波路21及び22は、光導波路の形成される領域が短く、また、モード揺らぎの影響にも鈍感であるため、安定して使用することができる。尚、光導波路21及び22は、1×2MMIカプラ11及び2×2MMIカプラ12に対し実質的に垂直となるように接続されているものとする。
【0023】
図4は、2×2光カプラ12からの出力に接続される光導波路24及び25が直線的な形状のものについて示している。しかしながら、図5に示すように、2×2光カプラ12からの出力に接続される光導波路34及び35を曲率半径R2及びR1で曲げることにより、光導波路23の延びる方向と光導波路34及び35の延びる方向とを実質的に同じ方向にすることも可能である。
【0024】
(光導波路素子の特性)
次に、本実施の形態における光導波路素子の特性について説明する。通常、図6に示すように、光導波路素子においては、光カプラ111に光導波路121を接続する際、光導波路121を直線導波路121aと曲げ導波路121bにより形成し、直線導波路121aと曲げ導波路121bとの間にオフセット部121cが設けられる。これは曲げ導波路を伝搬するモードの電界分布は、曲げ導波路の外側にシフトする傾向にあるため、直線導波路を伝搬するモードの電界分布値と曲げ導波路を伝搬するモードの電界分布とは整合しなくなり、これにより過剰損失やモード揺らぎが生じてしまう。このため直線導波路121aと曲げ導波路121bとの間にオフセット部121cを設け、所定の位置オフセットさせることにより、直線導波路121aの中心と曲げ導波路121bの中心とを意図的にずらし、モードのシフトの影響を抑制するものである。即ち、曲げ導波路121bを伝搬するモードの電界分布は、曲げ導波路121bの外側にシフトする傾向にある。従って、曲げ導波路121bを直線導波路121aに対し所定のオフセットの値ΔSオフセットさせることにより、モードのシフトの影響を抑制するものである。尚、このオフセット部121cは、直線導波路121aと曲げ導波路121bとの境界部分に設けられるものであって、本願においては段部とも称する。
【0025】
図7は、図3に示す構造の光導波路素子であるマッハ・ツェンダ干渉計において、光導波路634をオフセットさせた構造のものである。図7に示す構造の光導波路素子は、光導波路634が直線導波路634aと曲げ導波路634bにより形成されており、直線導波路634aと曲げ導波路634bとの間をΔSオフセットさせたものである。尚、曲げ導波路634b間においては、変曲点においてもオフセットがされるため、計4ヶ所でオフセットがされている。
【0026】
図8は、本実施の形態における光導波路素子であるマッハ・ツェンダ干渉計において、光導波路31及び32をオフセットさせた構造のものである。即ち、図8に示す構造の光導波路素子は、光導波路31及び光導波路32が各々直線導波路31a及び32aと曲げ導波路31b及び32bにより形成されており、直線導波路31a及び32aと曲げ導波路31b及び32bとの間をΔSオフセットさせたものである。よって、光導波路31及び32においては、各々2ヶ所でオフセットがされている。
【0027】
図9には、図7に示す光導波路素子(光導波路素子A)と、図8に示す本実施の形態における光導波路素子(光導波路素子1)において、オフセットの値ΔSと出力される光の分岐量(光の透過量、トランスミッタンス)との関係を示す。尚、オフセットの値ΔSは、光導波路素子Aにおいては、直線導波路634aと曲げ導波路634bにおけるオフセット及び曲げ導波路634b同士間におけるオフセットの値である。また、光導波路素子1においては、直線導波路31a及び32aと曲げ導波路31b及び32bとの間におけるオフセットの値である。
【0028】
また、光導波路素子Aは、光導波路635と光導波路633との位相差が−π/4となるように形成されており、光導波路素子1は、光導波路31と光導波路32との位相差が−π/4となるように形成されている。これにより、設計上、光導波路素子Aは、光導波路635と光導波路633との光出力を85(約0.7dB損失):15(約8.3dB損失)で分岐することができ、光導波路素子1は、光導波路31と光導波路32との光出力を85:15で分岐することができる。
【0029】
更に、光導波路素子A及び光導波路素子1における各々の光導波路は、図10に示すように、ハイメサ導波路構造により形成されている。具体的には、InP基板211上にGaInAsPコア層212、InPクラッド層213を積層し、GaInAsPコア層212及びInPクラッド層213、InP基板211の一部を除去することにより、ハイメサ導波路構造となるように形成されている。このGaInAsPコア層212におけるバンドギャップ波長λgは、1.05μmであり、形成される光導波路の幅は、ともに、2.5μmであり、単一モードの条件を満足するものである。尚、光導波路素子1は、R0が500μm、δRが1.5μmとなるように形成されている。
【0030】
図9に示されるように、本実施の形態に係る光導波路素子1は、オフセットの値ΔSに依存することなく、光導波路31と光導波路32とにおける光出力を略85:15となるように分岐することができる。しかしながら、図7に示す光導波路素子Aは、オフセットの値ΔSが0.04μm前後においては、光導波路643と光導波路644とにおける光出力を85:15となるように分岐させることができるが、オフセットの値ΔSが変化すると分岐比も変化してしまう。即ち、オフセットの値ΔSを0〜0.1μmの範囲で変化させた場合に、本実施の形態に係る光導波路素子1における分岐比は、85:15で略一定である。これに対し、光導波路素子Aは、85に分岐される光は約±6%変化し、15に分岐される光は約±27%変化し、分岐比はオフセットの値ΔSに依存し変化してしまう。
【0031】
このように、図7に示す光導波路素子Aにおいて、光出力の分岐比が大きく変化するのは、曲げ導波路において高次モードまたは高次漏洩モードが励振し、ΔLPSに起因する位相変化量が変化することによるものと考えられる。
【0032】
一方、図8に示す本実施の形態に係る光導波路素子1では、オフセットの値ΔSを0〜0.1μmの範囲で変化させても、光出力の分岐比の変化量は±1%以内であり、殆ど変化していない。これは光導波路31と光導波路32とは、極めて近い曲率半径により曲げ導波路が形成されており、曲げ導波路において高次モードまたは高次漏洩モードが励振されるものの、光導波路31と光導波路32とで、同じモードが励振されるからであると考えられる。これにより光導波路31と光導波路32とにおいては、所定の位相変化量が保たれ、光の分岐比を実質的に一定にすることができるものと考えられる。
【0033】
以上のように、本実施の形態における光導波路素子においては、直線導波路と曲げ導波路とのオフセットの値ΔSに依存することなく、光の分岐比を一定にすることができ、製造する際に、オフセットの値ΔSが多少ずれても、光の分岐比に影響を与えることはない。更に、本実施の形態における光導波路素子では、光の分岐比はオフセットの値ΔSに依存しないため、直線導波路と曲げ導波路との間にオフセット部を設ける必要がない。
【0034】
また、上記においては、光導波路が直線導波路と曲げ導波路とにより形成されている場合について説明したが、図11に示すように、光導波路141が曲げ導波路のみにより形成されており、カプラ131と接続されている場合も同様である。具体的には、光導波路141とカプラ131との接続位置を所定の位置よりもΔMずれている位置で接続している場合、ΔMはオフセットの値ΔSと同様に考えることができる。即ち、本実施の形態における光導波路素子では、光導波路141とカプラ131との接続位置が製造誤差等により多少ずれて形成されても、所望の光出力の分岐比を得ることができ、製造マージンを広くすることができる。
【0035】
次に、図12に基づき、形成される光導波路の幅が製造誤差等の影響により変動する場合について説明する。このような場合として、図12(a)に示すように、製造誤差等の影響により、光導波路151aが設計値の幅Wよりも広く幅W+δWで形成される場合、図12(b)に示すように、光導波路151bが設計値の幅Wよりも狭く幅W−δWで形成される場合がある。
【0036】
図13に、光導波路の幅と分岐された光出力との関係について説明する。尚、上述のとおり、光導波路素子1は、本実施の形態に係る光導波路素子であり、光導波路素子Aは、図3に示す構造の光導波路素子であり、光導波路素子Bは、図2に示す構造の光導波路素子である。また、光導波路素子1、光導波路素子A及び光導波路素子Bは、光出力が85:15となるように形成されている。図13に示すように、δWを−0.05〜0.05μmの範囲で変化させた場合、光出力が15となる出力ポートでは、光導波路素子Bにおける光出力の変化率は±11%であり、光導波路素子Aにおける光出力の変化率は約±2.5%である。これに対し、光導波路素子1における光出力の変化率は約±2.5%以下である。このように、本実施の形態に係る光導波路素子1は、形成される光導波路において幅のずれの影響をあまり受けることなく、光出力を所望の分岐比で分岐することができる。言い換えれば、光導波路素子1は、製造誤差等により、形成される光導波路の幅が多少太く形成された場合、また、細く形成された場合においても、所望の分岐比で光出力を分岐することができる。このように、本実施の形態に係る光導波路素子1においては、光導波路の幅における製造誤差等の影響を受け難いため、製造マージンを広くすることができる。
【0037】
以上、光導波路素子において2つのMMIカプラ間に設けられる2つの光導波路における位相差が、−π/4の場合について説明したが、本実施の形態における光導波路素子においては、任意の位相差に設定することができる。従って、これら任意の位相差においても、上記と同様に製造マージンを広くすることができ、作製トレランスを飛躍的に向上させることができる。
【0038】
また、本実施の形態においては、1×2光カプラ11と2×2光カプラ12との間における光導波路21及び22は、同心円の一部である円弧において形成した場合について説明したが、上記構造に限定されるものではない。例えば、上述したように光導波路21及び22は、直線導波路、曲げ導波路、直線導波路が連続して接続されている構造のもの、曲げ導波路、直線導波路、曲げ導波路が連続して接続されている構造のものでもよい。
【0039】
また、光導波路21及び22の幅は、一定の幅で形成されているものでなくてもよく、1×2光カプラ11または2×2光カプラ12の一方から他方に向かって、幅が広がるように形成されていてもよく、また、幅が狭くなるように形成されていてもよい。
【0040】
更に、本実施の形態における説明では、R0の値が500μmである場合について説明したが、R0の値は100μm以上の任意の値においても同様の効果を得ることができる。即ち、R0の値が小さくなると、各々の曲げ導波路の曲率半径が小さくなり、光導波路における曲げが急激なものとなることから、双方の光導波路において同じモードが励振しなくなる場合がある。このような場合には、製造誤差等の影響により安定した光導波路素子を得ることが困難なものとなり、僅かな製造誤差等の影響を受けやすくなる。よって、十分な製造マージンを得ることができ、所望の作製トレランスを得るためには、平均曲率半径R0の値は、100μm以上であることが好ましい。
【0041】
(製造方法)
次に、図10に基づき本実施の形態における光導波路素子の製造方法について説明する。
【0042】
最初に、InP基板211上に、MOVPE(Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)法により、アンドープのGaInAsPコア層212及びInPクラッド層213をエピタキシャル成長により形成する。InP基板211は、n型またはアンドープのInPである。また、形成されるGaInAsPコア層212は、バンドギャップ波長が1.05μm、膜厚0.5μmであり、形成されるInPクラッド層213は、n型またはアンドープのInPであり、膜厚2.0μmである。
【0043】
次に、InPクラッド層213上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)等によりSiO2膜を成膜し、更に、SiO2膜上にフォトレジストを塗布し、フォトマスクを用いて露光装置による露光、現像を行なうことにより、レジストパターンを形成する。レジストパターンは、光導波路素子における導波路領域に形成される。この後、レジストパターンの形成されていない領域のSiO2膜をRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングにより除去することにより、不図示のSiO2マスクを形成する。
【0044】
次に、SiO2マスクの形成されていない領域のInPクラッド層213、GaInAsPコア層212及びInP基板211の一部をICP−RIE(Inductive Coupled Plasma-RIE)等のドライエッチングにより除去する。このようにして、高さが約3.0μmとなるハイメサ導波路構造を形成する。
【0045】
尚、上述した説明では、InP系化合物半導体材料を用いた場合について説明したが、GaAs系化合物半導体材料、Si系半導体材料、誘電体材料、高分子材料等を用いた場合においても、同様の光導波路素子を製造することが可能である。
【0046】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における光導波路素子と同様の構造の光導波路素子を含む光ハイブリッド回路である90度ハイブリッドである。図14に、本実施の形態における90度ハイブリッドを示す。
【0047】
本実施の形態における90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312を有しており、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312との間には光導波路321及び322が設けられている。尚、この光導波路321及び322は、第1の実施の形態における光導波路21及び22と同様の構造により形成されている。
【0048】
本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、第1の光カプラとなる2×4MMIカプラ311の入力側には、第3の光導波路及び第4の光導波路である2本の光導波路331及び332が接続されている。光導波路331には、四位相偏移変調(QPSK:quadrature phase shift keying)信号光が入力し、光導波路332には、局発(LO:local oscillator)光が入力している。光導波路331に入射する四位相偏移変調信号は、基準となる信号(位相差が0)と、π/2、π、−π/2の位相差がある4つの信号を含むものである。光導波路331及び332に、これらの信号光を入力すると、2×4MMIカプラ311において4つの信号光に分岐され、この4つの信号光は2×4MMIカプラ311に接続されている4つの光導波路333、334、321、322に出力される。尚、本願においては、光導波路333及び334は、第5の光導波路及び第6の光導波路であり、光導波路321及び322は、第1の光導波路及び第2の光導波路である。具体的には、光導波路333には、位相差πの信号が出力され、光導波路334には、位相差のない信号が出力され、光導波路321には、位相差のない信号が出力され、光導波路322には、位相差πの信号が出力される。よって、2×4MMIカプラ311からは、2つの同相信号(In-phase)が出力される。ところで、本実施の形態における90度ハイブリッドでは、光導波路321及び光導波路322は、2×2MMIカプラ312と接続されており、光導波路322は光導波路321に対し、位相差がπ/4遅れるように長く形成されている。これにより、2×2MMIカプラ312に接続されている第7の光導波路及び第8の光導波路である光導波路335及び336には、直交位相信号(Quadrature)が出力される。即ち、光導波路335には、位相差π/2の信号が出力され、光導波路336には、位相差−π/2の信号が出力される。尚、2×4MMIカプラ311において、第1の光導波路となる光導波路321は、第2の光導波路となる光導波路322よりも内側に設けられており、光導波路322は、光導波路321に対しπ/4位相差が生じるように、長く形成されている。また、位相差はπ/4生じていればよいため、(2n+1/4)πであってもよい(nは0を含む自然数)。
【0049】
従って、前述のとおり光導波路333及び334からは、同相信号を出力させることができ、光導波路335及び336からは、直交位相信号を出力させることができる。尚、本実施の形態における光導波路素子において、光導波路333及び334からの光信号出力をI(In-phase)チャンネル、光導波路335及び336からの光信号出力をQ(Quadrature)チャンネルという。
【0050】
ところで、光導波路321及び光導波路322においては、製造誤差等の影響により、所定の値よりもずれて形成されると、直交位相信号成分において特性劣化が生じてしまう。しかしながら、本実施の形態における90度ハイブリッドでは、第1の実施の形態と同様の構造の光導波路素子を含んでいるため、製造誤差等の影響による特性劣化を低く抑えることができ、製造マージンを広くすることができる。
【0051】
次に、本実施の形態における90度ハイブリッドの特性について説明する。通常、エラーを伴わない光信号処理を行なうためには、光信号受信時において同相信号雑音比(CMRR:common-mode contrast ratio)を20dB以下に抑えることが求められている。このように20dB以下のCMRRを得るためには、90度ハイブリッドにおけるIチャンネル及びQチャンネル間における偏差を0.9dB以内に抑える必要がある。尚、受信感度のバラツキを考慮するならば、90度ハイブリッドのIチャンネル及びQチャンネル間における偏差は、より厳しいものが要求される。
【0052】
図15は、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、波長と光の透過量との関係を示すものであり、図16は、図17に示す構造の90度ハイブリッドの波長と光の透過量との関係を示すものである。尚、図15は、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、光導波路331には光を入力することなく、光導波路332のみに光を入力したものである。この場合における光導波路333、334、335及び336における出力をCh−1、Ch−2、Ch−3、Ch−4として示すものである。また、図17に示す構造の90度ハイブリッドは、図3に示される光導波路素子を有するものである。即ち、図17に示す構造の90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ711と2×2MMIカプラ712を有しており、2×4MMIカプラ711と2×2MMIカプラ712との間には、光導波路721及び722が設けられている。この光導波路721及び722は、図3に示される光導波路633及び634と同様の構造で形成されている。図17に示される90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ711には、入力側に、光導波路731及び732が接続されており、出力側に、光導波路721、722、733及び734が接続されている。また、2×2MMIカプラ712には、入力側に、光導波路721及び722が接続されており、出力側に、光導波路735及び736が接続されている。尚、図17に示す構造の90度ハイブリッドに形成される光導波路は、オフセットの値ΔSが最適化されているものとする。尚、図16は、図17に示す構造の90度ハイブリッドにおいて、光導波路731には光を入力することなく、光導波路732のみに光を入力したものである。この場合における光導波路733、734、735及び736における出力をCh−1、Ch−2、Ch−3、Ch−4として示している。
【0053】
また、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッド及び図17に示す構造の90度ハイブリッドにおいて、光導波路は、すべて図10に示すようなハイメサ構造で形成されている。即ち、これらの光導波路は、InP基板211上に、バンドギャップ波長λgが1.05μmとなるGaInAsPコア層212を形成し、更に、InPクラッド層213を形成したものに、ドライエッチング等によりハイメサ構造を形成したものである。
【0054】
図15及び図16に示されるように、双方の90度ハイブリッドは、良好な分岐比を示しており、チャネル間偏差が小さいことが確認される。
【0055】
次に、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドと、図17に示す構造の90度ハイブリッドにおいて、図6に示すようなオフセットの値ΔSを変化させた場合について説明する。
【0056】
図18は、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、オフセットの値ΔSを変化させた場合における波長とQチャネル間偏差を示すものである。また、図19は、図17に示す90度ハイブリッドにおいて、オフセットの値ΔSを変化させた場合における波長とQチャネル間偏差を示すものである。図18に示されるように、本実施の形態における90度ハイブリッドでは、オフセットの値ΔSが0〜0.1μmの範囲で変化した場合においても、Qチャネル間偏差は、±0.3dB以内の範囲内である。一方、図19に示されるように、図17に示される構造の90度ハイブリッドでは、オフセットの値ΔSが0〜0.1μmの範囲で変化した場合のQチャネル間偏差は、±1dB以上であり大きく変化する。本実施の形態における90度ハイブリッドでは、前述したように、光導波路321及び322において、モード揺らぎが発生しても、殆ど影響を受けることがないため、Qチャネル間偏差を略一定に保つことができる。
【0057】
次に、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、図12に示すように光導波路の幅が変化した場合について説明する。図20は、図14に示す本実施の形態における90度ハイブリッドにおいて、所定の幅Wに対するズレ量δWが、−0.05μm〜0.05μmの範囲で変化した場合における波長とQチャネル間偏差を示すものである。図20に示されるように、光導波路の幅Wに対するズレ量δWが、−0.05μm〜0.05μmの範囲で変化しても、Qチャネル間偏差は、±0.15dB以内の範囲内であり、Qチャネル間偏差は極めて低い。
【0058】
以上より、本実施の形態における90度ハイブリッドにおいては、オフセットの値ΔS及び光導波路の幅Wが、製造誤差等により所定の値とは若干異なる値で形成されても、これらの製造誤差の影響による特性変化は少なく、製造マージンを広くすることができる。よって、作製トレランスを飛躍的に向上させることができる。更に、本実施の形態における90度ハイブリッドにおいては、光信号の分岐比はオフセットの値ΔSに依存しないため、オフセットをさせる必要がない。
【0059】
(変形例)
次に、本実施の形態における変形例について説明する。以下に示す変形例は、上述した90度ハイブリッドと同様に、作製トレランスを飛躍的に向上させることができるものである。
【0060】
最初に、図21に示される構造の90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312を有している。また、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312との間の光導波路341及び342が第1の実施の形態における光導波路21及び22と同様の構造で形成されている。更に、2×4MMIカプラ311には、入力側に、光導波路331及び332が接続されており、出力側に、光導波路341、342、353及び354が接続されている。また、2×2MMIカプラ312には、入力側に、光導波路341及び342が接続されており、出力側に、光導波路355及び356が接続されている。尚、光導波路342は光導波路341に対し、π/4遅延するように形成されている。即ち、2×4MMIカプラ311において、第1の光導波路となる光導波路341は、第2の光導波路となる光導波路342よりも内側に設けられており、光導波路342は、光導波路341に対しπ/4位相差が生じるように、長く形成されている。この90度ハイブリッドでは、光導波路353には、位相差πの信号が出力され、光導波路354には、位相差のない信号が出力され、光導波路355には、位相差π/2の信号が出力され、光導波路356には、位相差−π/2の信号が出力される。このように2×2MMIカプラ312が接続される位置を変えても、作製トレランスの大きい90度ハイブリッドを得ることができる。尚、光導波路353及び354は、第5の光導波路及び第6の光導波路に相当するものであり、光導波路355及び356は、第7の光導波路及び第8の光導波路に相当するものである。
【0061】
次に、図22に示される構造の90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312を有している。また、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312との間の光導波路361及び362が第1の実施の形態における光導波路21及び22と同様の構造で形成されている。更に、2×4MMIカプラ311には、入力側に、光導波路331及び332が接続されており、出力側に、光導波路361、362、333及び334が接続されている。また、2×2MMIカプラ312には、入力側に、光導波路361及び362が接続されており、出力側に、光導波路375及び376が接続されている。尚、光導波路362は、光導波路361に対し、3π/4遅延するように形成されている。即ち、2×4MMIカプラ311において、第1の光導波路となる光導波路361は、第2の光導波路となる光導波路362よりも外側で接続されており、光導波路362は、光導波路361に対し3π/4位相差が生じるように、長く形成されている。また、位相差は3π/4生じていればよいため、(2n+3/4)πであってもよい(nは0を含む自然数)。この90度ハイブリッドでは、光導波路333には、位相差πの信号が出力され、光導波路334には、位相差のない信号が出力され、光導波路375には、位相差−π/2の信号が出力され、光導波路376には、位相差π/2の信号が出力される。このように光導波路361及び362における曲がり導波路の方向を変えることにより、上述した効果の他、光導波路361及び362と光導波路333及び334とが衝突することなく配置することができる。これにより光導波路361、362、333及び334をより高密度に配置することができる。尚、光導波路375及び376は、第7の光導波路及び第8の光導波路に相当するものである。
【0062】
また、図23に示される構造の90度ハイブリッドは、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312を有している。また、2×4MMIカプラ311と2×2MMIカプラ312との間の光導波路381及び382が第1の実施の形態における光導波路21及び22と同様の構造で形成されている。更に、2×4MMIカプラ311には、入力側に、光導波路331及び332が接続されており、出力側に、光導波路381、382、353及び354が接続されている。また、2×2MMIカプラ312には、入力側に、光導波路381及び382が接続されており、出力側に、光導波路395及び396が接続されている。尚、光導波路382は光導波路381に対し、3π/4遅延するように形成されている。即ち、2×4MMIカプラ311において、第1の光導波路となる光導波路381は、第2の光導波路となる光導波路382よりも外側で接続されており、光導波路382は、光導波路381に対し3π/4位相差が生じるように、長く形成されている。この90度ハイブリッドでは、光導波路353には、位相差πの信号が出力され、光導波路354には、位相差のない信号が出力され、光導波路395には、位相差−π/2の信号が出力され、光導波路396には、位相差π/2の信号が出力される。このような構造の90度ハイブリッドにおいても、図22に示される構造の90度ハイブリッドと同様の効果を得ることができる。尚、光導波路395及び396は、第7の光導波路及び第8の光導波路に相当するものである。
【0063】
尚、本実施の形態における光導波路素子の製造方法等については、第1の実施の形態と同様である。
【0064】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、図24に示されるように、コヒーレント光受信機である。本実施の形態におけるコヒーレント光受信機は、90度ハイブリッド410、LO光源411、バランスド光検出器421及び422、トランスインピーダンスアンプ431及び432、AD変換回路441及び442、デジタル信号処理回路451を有している。
【0065】
90度ハイブリッド410は、第2の実施の形態におけるいずれかの90度ハイブリッドにより形成されており、図24では、第2の実施の形態における90度ハイブリッドのうちの一つを一例として示している。また、LO光源411は、90度ハイブリッド410にLO光を入射するためのものである。バランスド光検出器(BPD:balanced photodiode)421及び422は、90度ハイブリッド410からの光信号を検出するためのものである。また、トランスインピーダンスアンプ(TIA:trans-impedance amplifier)431及び432は、電流信号を電圧信号に変換するためのものである。AD変換回路441及び442は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0066】
本実施の形態におけるコヒーレント光受信機において、QPSK信号光(QPSK信号パルス)と時間的に同期したLO光を90度ハイブリッド410に入射すると、90度ハイブリッドより4種類の各々の位相における信号光が分岐されて出力される。これらの信号光は、同相信号及び直交位相信号が各々入力するように接続されたバランスド光検出器421及び422において検出される。尚、バランスド光検出器421及び422は、各々2つのフォトダイオードを有しており、どちらか一方に信号光が入射した場合、1または−1に相当する電流が流れ、同時に信号光が入射した場合には、電流が流れない特徴を有している。従って、QPSK信号光における位相情報を識別することができる。バランスド光検出器421及び422により検出された光信号は電流信号となり、トランスインピーダンスアンプ431及び432において電流信号を電圧信号に変換し、AD変換回路441及び442においてアナログである電圧信号をデジタル信号に変換する。この後、このデジタル信号をデジタル信号処理回路451において、これらのデジタル信号を信号処理することにより、コヒーレント光受信機として機能するものである。
【0067】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は90度ハイブリッドであり、差分四位相偏移変調(DQPSK:differential quadrature phase shift keying)信号光に対応したものである。具体的には、第2の実施の形態における90度ハイブリッドは、QPSK信号光及びLO光を時間的に同時に入力するものであるのに対し、本実施の形態における90度ハイブリッドは、差分四位相偏移変調信号光を入力するものである。このため、LO光を必要としないため、LO光源は不要となる。
【0068】
図25に示すように、本実施の形態における90度ハイブリッドは、第3の光カプラとなる1×2MMIカプラ510、第1の光カプラとなる2×4MMIカプラ511、第2の光カプラとなる2×2MMIカプラ512を有している。1×2MMIカプラ510には、入力側に第9の導波路となる光導波路530が接続されており、出力側に第3の導波路及び第4の導波路となる光導波路531及び532が接続されている。2×4MMIカプラ511には、入力側に光導波路531及び532が接続されており、出力側に第1の光導波路及び第2の光導波路となる光導波路521及び522、第5の光導波路及び第6の光導波路となる光導波路533及び534が接続されている。2×2MMIカプラ512には、入力側に光導波路521及び522が接続されており、出力側に第7の光導波路及び第8の光導波路となる光導波路535及び536が接続されている。ここで、2×4MMIカプラ511、2×2MMIカプラ512、光導波路521、522、531、532、533、534、535及び536により形成されるものは、第2の実施の形態における90度ハイブリッドと同様のものであり、同様の機能を有している。また、1×2MMIカプラ510と2×4MMIカプラ511との間に形成される光導波路531は、光導波路532に対しDQPSK信号1ビット分遅延するように形成されている。
【0069】
1×2MMIカプラ510の入力側にDQPSK信号光を入力すると、1×2MMIカプラ510において2つに分岐され光導波路531及び532に出力され、2×4MMIカプラ511に入力する。上述のとおり、2×4MMIカプラ511には、光導波路532に対し1ビット遅延した光信号が光導波路531より入力されるため、光導波路531及び532より2×4MMIカプラ511に入力される光信号は、時間的に同期した信号となる。これにより、光導波路533には、位相差πの光信号が出力され、光導波路534には、位相差のない光信号が出力され、光導波路535には、位相差π/2の光信号が出力され、光導波路536には、位相差−π/2の光信号が出力される。本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に製造マージンを広くすることができるため、作製トレランスを向上させることができる。
【0070】
尚、上記においては、1×2MMIカプラ510を用いた場合について説明したが、1×2MMIカプラ510に代えてY分岐カプラ、2×2MMIカプラ、2×2方向性結合器を用いた場合においても、同様の90度ハイブリッドを得ることができる。
【0071】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様である。
【0072】
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第4の実施の形態における90度ハイブリッドを有する光受信機である。
【0073】
図26に基づき本実施の形態における光受信機について説明する。本実施の形態における光受信機は、第4の実施の形態における90度ハイブリッドに、バランスド光検出器421及び422、トランスインピーダンスアンプ431及び432、AD変換回路441及び442、デジタル信号処理回路451が接続されたものである。尚、バランスド光検出器421及び422、トランスインピーダンスアンプ431及び432、AD変換回路441及び442、デジタル信号処理回路451は、第3の実施の形態と同様のものである。
【0074】
本実施の形態における光受信機では、光導波路530にDQPSK信号光を入力すると、1×2MMIカプラ510において2つに分岐され光導波路531及び532を介し、2×4MMIカプラ511に入力する。上述のとおり、2×4MMIカプラ511には、光導波路532に対し1ビット遅延した光信号が光導波路531より入力されるため、光導波路531及び532より2×4MMIカプラ511に入力される光信号は、時間的に同期した信号となる。これにより、光導波路533、534、535、536には、各々位相差πの光信号、位相差のない光信号、位相差π/2の光信号、位相差−π/2の光信号が出力され、バランスド光検出器421及び422により検出される。このようにして、DQPSK変調信号を識別することのできる光受信機を得ることができる。
【0075】
尚、上記以外の内容については、第3の実施の形態と同様である。
【0076】
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0077】
上記の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであることを特徴とする光導波路素子。
(付記2)
前記第1の光導波路における円弧状の曲げ導波路の曲率半径により描かれる円の中心と、前記第2の光導波路における円弧状の曲げ導波路の曲率半径により描かれる円の中心とは、一致していることを特徴とする付記1に記載の光導波路素子。
(付記3)
前記第1の光導波路における曲げ導波路の曲率半径R1と前記第2の光導波路における曲げ導波路の曲率半径R2との平均である平均曲率半径R0は、100μm以上であることを特徴とする付記2に記載の光導波路素子。
(付記4)
前記第1の光導波路は、曲げ導波路と直線導波路とを有していることを特徴とする付記1から3のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記5)
前記第2の光導波路は、曲げ導波路と直線導波路とを有していることを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記6)
前記直線導波路と前記曲げ導波路との接続部分において、前記直線導波路の中心と前記曲げ導波路の中心とがずれて形成された段部を有していることを特徴とする付記1から5のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記7)
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路は、InPを含む基板上に形成されたGaInAsPを含むコア層、前記コア層上に形成されたInPを含むクラッド層により形成されているものであることを特徴とする付記1から6のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記8)
前記第1の光カプラは、1×2光カプラ、2×2光カプラまたは2×4光カプラのうち、いずれかの光カプラであることを特徴とする1から7のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記9)
前記第2の光カプラは、2×2光カプラであることを特徴とする1から8のいずれかに記載の光導波路素子。
(付記10)
前記第1の光カプラは、MMIカプラであることを特徴とする付記8に記載の光導波路素子。
(付記11)
前記第2の光カプラは、MMIカプラであることを特徴とする付記8または9に記載の光導波路素子。
(付記12)
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、
前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、
前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、
前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、
前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、
前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有していることを特徴とする光ハイブリッド回路。
(付記13)
前記第1の光導波路の長さと前記第2の光導波路の長さの差は、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路に入力される波長の光の(2n+1/4)πまたは、(2n+3/4)πに相当するものであること(nは0を含む自然数)を特徴とする付記12に記載の光ハイブリッド回路。
(付記14)
前記第1のカプラは2×4の光カプラの出力側において、前記第1の光導波路が前記第2の光導波路よりも内側に設けられている場合には、前記第2の光導波路は前記第1の光導波路に対し、(n+π/4)長く形成されており、
または、前記第1のカプラは2×4の光カプラの出力側において、前記第2の光導波路が前記第1の光導波路よりも内側に設けられている場合には、前記第2の光導波路は前記第1の光導波路に対し、(n+3π/4)長く形成されている、
ことを特徴とする付記13に記載の光ハイブリッド回路。
(付記15)
前記第3の光導波路または前記第4の光導波路のいずれか一方には、局発光が入力され、他方には、QPSK信号光が入力されるものであって、
前記第5の光導波路及び前記第6の光導波路からは同相信号が出力され、
前記第7の光導波路及び前記第8の光導波路からは直交位相信号が出力されることを特徴とする付記12から14のいずれかに記載の光ハイブリッド回路。
(付記16)
入力側に第9の光導波路が接続された1×2の光カプラからなる第3の光カプラを有し、
前記第3のカプラの出力側には前記第3の光導波路及び前記第4の光導波路が接続されており、
前記第3の光導波路及び前記第4の光導波路のうちいずれか一方は他方に対し、前記第9の光導波路に入力される信号光のビットレートの一周期の相当する分長く形成されていることを特徴とする付記12から14のいずれかに記載の光ハイブリッド回路。
(付記17)
前記第9の光導波路には、DQPSK信号が入力されるものであって、
前記第5の光導波路及び前記第6の光導波路からは同相信号が出力され、
前記第7の光導波路及び前記第8の光導波路からは直交位相信号が出力されることを特徴とする付記16に記載の光ハイブリッド回路。
(付記18)
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、
前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、
前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、
前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、
前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、
前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有し、
前記第3の光導波路または前記第4の光導波路のいずれか一方には、局発光が入力され、他方には、QPSK信号光が入力され、
前記第5の光導波路及び前記第6の光導波路からは同相信号が出力され、
前記第7の光導波路及び前記第8の光導波路からは直交位相信号が出力されるものであって、
前記同相信号及び前記直交位相信号を検出する二つの検出部を有し、
前記検出部に接続されたデジタル信号処理回路を有することを特徴とする光受信機。
(付記19)
前記検出部は、前記同相信号及び前記直交位相信号を検出するためのバランスド光検出器が設けられていることを特徴とする付記18に記載の光受信機。
(付記20)
前記検出部は、前記バランスド光検出器に接続されたトランスインピーダンスアンプと、
前記トランスインピーダンスアンプに接続されたAD変換回路と、
を有し、各々の前記検出部における前記AD変換回路は、前記デジタル信号処理回路に接続されていることを特徴とする付記19に記載の光受信機。
【符号の説明】
【0078】
11 1×2MMIカプラ
12 2×2MMIカプラ
21 光導波路
22 光導波路
23 光導波路
24 光導波路
25 光導波路
R1 光導波路21の曲率半径
R2 光導波路22の曲率半径
R0 平均曲率半径(光導波路21の曲率半径と光導波路22との曲率半径の平均)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであることを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
前記第1の光導波路における円弧状の曲げ導波路の曲率半径により描かれる円の中心と、前記第2の光導波路における円弧状の曲げ導波路の曲率半径により描かれる円の中心とは、一致していることを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記第1の光導波路における曲げ導波路の曲率半径R1と前記第2の光導波路における曲げ導波路の曲率半径R2との平均である平均曲率半径R0は、100μm以上であることを特徴とする請求項2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記第1の光導波路は、曲げ導波路と直線導波路とを有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記第2の光導波路は、曲げ導波路と直線導波路とを有していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記直線導波路と前記曲げ導波路との接続部分において、前記直線導波路の中心と前記曲げ導波路の中心とがずれて形成された段部を有していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光導波路素子。
【請求項7】
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、
前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、
前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、
前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、
前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、
前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有していることを特徴とする光ハイブリッド回路。
【請求項8】
前記第1の光導波路の長さと前記第2の光導波路の長さの差は、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路に入力される波長の光の(2n+1/4)πまたは、(2n+3/4)πに相当するものであること(nは0を含む自然数)を特徴とする請求項7に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項9】
入力側に第9の光導波路が接続された1×2の光カプラからなる第3の光カプラを有し、
前記第3のカプラの出力側には前記第3の光導波路及び前記第4の光導波路が接続されており、
前記第3の光導波路及び前記第4の光導波路のうちいずれか一方は他方に対し、前記第9の光導波路に入力される信号光のビットレートの一周期の相当する分長く形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項10】
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、
前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、
前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、
前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、
前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、
前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有し、
前記第3の光導波路または前記第4の光導波路のいずれか一方には、局発光が入力され、他方には、QPSK信号光が入力され、
前記第5の光導波路及び前記第6の光導波路からは同相信号が出力され、
前記第7の光導波路及び前記第8の光導波路からは直交位相信号が出力されるものであって、
前記同相信号及び前記直交位相信号を検出する二つの検出部を有し、
前記検出部に接続されたデジタル信号処理回路を有することを特徴とする光受信機。
【請求項1】
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであることを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
前記第1の光導波路における円弧状の曲げ導波路の曲率半径により描かれる円の中心と、前記第2の光導波路における円弧状の曲げ導波路の曲率半径により描かれる円の中心とは、一致していることを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記第1の光導波路における曲げ導波路の曲率半径R1と前記第2の光導波路における曲げ導波路の曲率半径R2との平均である平均曲率半径R0は、100μm以上であることを特徴とする請求項2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記第1の光導波路は、曲げ導波路と直線導波路とを有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記第2の光導波路は、曲げ導波路と直線導波路とを有していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記直線導波路と前記曲げ導波路との接続部分において、前記直線導波路の中心と前記曲げ導波路の中心とがずれて形成された段部を有していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光導波路素子。
【請求項7】
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、
前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、
前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、
前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、
前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、
前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有していることを特徴とする光ハイブリッド回路。
【請求項8】
前記第1の光導波路の長さと前記第2の光導波路の長さの差は、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路に入力される波長の光の(2n+1/4)πまたは、(2n+3/4)πに相当するものであること(nは0を含む自然数)を特徴とする請求項7に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項9】
入力側に第9の光導波路が接続された1×2の光カプラからなる第3の光カプラを有し、
前記第3のカプラの出力側には前記第3の光導波路及び前記第4の光導波路が接続されており、
前記第3の光導波路及び前記第4の光導波路のうちいずれか一方は他方に対し、前記第9の光導波路に入力される信号光のビットレートの一周期の相当する分長く形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項10】
第1の光カプラと、
第2の光カプラと、
前記第1の光カプラの出力側と前記第2の光カプラの入力側とを接続する第1の光導波路及び第2の光導波路と、を有し、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、ともに円弧状の曲げ導波路を有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とは光路長が異なるものであって、
前記第1のカプラは2×4の光カプラであって、
前記第2のカプラは2×2の光カプラであって、
前記第1のカプラの入力側に接続された第3の光導波路及び第4の光導波路を有し、
前記第1のカプラの出力側には、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の他、第5の光導波路及び第6の光導波路を有し、
前記第2のカプラの出力側には、第7の光導波路及び第8の光導波路を有し、
前記第3の光導波路または前記第4の光導波路のいずれか一方には、局発光が入力され、他方には、QPSK信号光が入力され、
前記第5の光導波路及び前記第6の光導波路からは同相信号が出力され、
前記第7の光導波路及び前記第8の光導波路からは直交位相信号が出力されるものであって、
前記同相信号及び前記直交位相信号を検出する二つの検出部を有し、
前記検出部に接続されたデジタル信号処理回路を有することを特徴とする光受信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−13886(P2012−13886A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149436(P2010−149436)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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