説明

光導波路装置の製造方法及び光導波路装置の製造装置

【課題】反射パルス幅の広がりを抑制することで、生成されたパルス列の光パルス間の干渉を抑制することができる光導波路装置の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】光導波路装置の製造方法であって、位相マスク法によりレーザ光を走査して光ファイバコア162に、周期的な屈折率変調を持つ単位回折格子部165を複数形成する工程と、レーザ光の照射位置が、いずれかの隣り合う2つの単位回折格子部の間に到達したときに、位相マスクを長さ方向に瞬時に移動させることによって位相シフト部166を形成する工程と、レーザ光の走査と並行して、位相マスクを長さ方向に振動させ、単位回折格子部165ごとに振動の振幅をレーザ光の照射位置に応じて連続的に増加又は減少させることによって、光ファイバコア162に形成される屈折率変調の振幅を複数の単位回折格子部165ごとに連続的に増加又は減少させる工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラック回折格子が形成された光導波路を有する光符合器又は光復号器のような光導波路装置の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファイバブラッググレーティング(FBG)は、光ファイバコアに周期的な屈折率変調のブラッグ回折格子を形成したものであり、特定の波長の光を反射するフィルタである。FBGは、光ファイバで作られるため、光通信用デバイスに応用されている。FBGの作製方法には、主に位相マスク法と2光束干渉法がある。位相マスク法は、同一特性を持つFBGを再現性良く作製でき、また、コヒーレンスの低い紫外線レーザをも使用できるという利点を持つ。2光束干渉法は、2つに分けられた紫外線ビームを干渉させる角度を変えることにより、ブラッグ回折格子の周期を自由に設定できるという利点を持つが、コヒーレンスの高い紫外線レーザが必要になる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、ブラック回折格子に位相シフト部を設けたFBG(SS−FBG:Super structure−FBG)が、OCDM(Optical Code Division Multiplexing)の符号器及び復号器に応用されている(例えば、非特許文献2及び非特許文献3参照)。このOCDMの符号器及び復号器においては、FBGの屈折率変調の中の所望の位置に複数の位相シフト部が形成されている。この符号器及び復号器においては、符号長と符号パターンに応じてFBGの屈折率変調の中の位相シフト部の数と位置が決められている。
【0004】
図24は、SS−FBGを用いた符号器(以下「FBG符号器」と言う。)310による符号化とSS−FBGを用いた復号器(以下「FBG復号器」と言う。)320による復号の原理を示す図である。図24は、FBG符号器310とFBG復号器320のそれぞれが符号長‘4’の2値位相符号を生成又は復号する場合の構成である。FBG符号器310は、4つのFBGの単位(以下「単位FBG」と言う。)311〜314を持ち、FBG復号器320は、4つ単位FBG321〜324を持つ。それぞれの単位FBG311〜314,321〜324は、単位FBGの回折格子のそれぞれの相対位相が同じ(位相量0である。)か、又は、相対位相が位相量π異なっている。図24に示されるFBG符号器310において、左から3番目に位置する単位FBG313の位相が、他の3つの単位FBG311,312,314の位相と相対的に位相量π異なっている。また、図24に示されるFBG復号器320において、左から2番目に位置する単位FBG322の位相が、他の3つの単位FBG321,323,324の位相と相対的に位相量π異なっている。
【0005】
図24に示されるように、光パルス330をFBG符号器310に入力すると、単位FBGの反射率が小さい場合、それぞれの単位FBG311〜314の位置が異なるため、それぞれの単位FBG311〜314で反射された4つの光パルス(以下「符号化パルス列」と言う。)341〜344が時間差をもって生じる。また、それぞれの単位FBG311〜314で反射された4つの光パルス341〜344は、単位FBG311〜314の回折格子の相対位相に応じて、相対的に0又はπの光位相を持つ。よって、図24に示される単位FBG311〜314で反射された4つの光パルス341〜344は、それぞれ相対的に[0,0,π,0]の光位相となる。この符号化パルス列の光パルス341〜344がFBG復号器320に入ったとき、FBG符号器310と同様に、光パルス341〜344のそれぞれに対して単位FBG321〜324で反射された4個の光パルス341a〜341d,342a〜342d,343a〜343d,344a〜344dが時間差をもって生じる(すなわち、合計16個の光パルス341a〜341d,342a〜342d,343a〜343d,344a〜344dが生じる)。
【0006】
図24に示されるFBG復号器320では、左から2番目の単位FBG322の回折格子の位相が、他の3つの単位FBG321,323,324の回折格子の位相と相対的に位相量π異なっている。すなわち、FBG復号器320の単位FBG321〜324の回折格子の位相並びは、FBG符号器310の単位FBG311〜314の回折格子の位相並びと逆になっている。このとき、FBG符号器310の符号と、FBG復号器320の符号が一致していることになる。FBG復号器320の単位FBG321〜324で反射された光パルスは、それぞれ相対的に[0,π,0,0]又は[π,0,π,π]の光位相となる。FBG復号器320で反射された16個の光パルス341a〜341d,342a〜342d,343a〜343d,344a〜344dのいくつかは重なり、重なり合った光パルスが同相の場合は同調し、異相の場合は打ち消しあう。図24に示されるように、FBG符号器310とFBG復号器320の符号が同じ場合、特定の時間で同相の4個の光パルス341d,342c,343b,344aが重なり同調し、その他の時間では同相と異相の光パルスが重なり打ち消し合いが生じるため、特定の時間に高い強度のピークを持つ光パルス353が生じる。
【0007】
図25(a)及び(b)は、FBG符号器(又はFBG復号器)300が持つ光ファイバ301のコア302の屈折率変調構造304を示す図である。光ファイバコア302に形成された回折格子は、周期的な屈折率変調Δnからなる。回折格子周期Λは、所望の反射波長λのとき、ブラッグ反射の式
λ=2×neff×Λ (1)
に従う。ここで、neffは光ファイバコアの実効屈折率である。
【0008】
図25(a)及び(b)に示されるFBG符号器300の屈折率変調Δnには、符号に応じて位相シフト部306が複数個設けられた構造になっている。図25(a)及び(b)に示されるFBG符号器300は、7箇所の位相シフト部306を持つ。
【0009】
【非特許文献1】水波徹著、「光ファイバー回折格子」、応用物理第67巻第9号、1993年、第1029−1033頁
【非特許文献2】西木玲彦他著、「SSFBGを用いたOCDM用位相符号器の開発」、信学技法(Technical Report of IEICE. OFT2002−66)、2002年11月、第13−18頁
【非特許文献3】外林秀之著、「光符号分割多重ネットワーク」、応用物理第71巻第7号、2002年、第853−859頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のFBG符号器及びFBG復号器では、入力光パルス幅を、隣接している単位FBG間の反射パルスの時間差(以下「反射パルス時間差」と言う。)より大きくすると、隣接している単位FBGの反射パルス同士が重なり、反射パルス間で干渉を起こす。単位FBG間の距離をdとすると、反射パルス時間差Tは、
=2×dxneff/c (2)
となる。ここで、cは真空中の光速である。
【0011】
図26(a)乃至(d)は、入力光パルス幅が反射パルス時間差より大きいときに、隣接している単位FBGの反射パルス間で干渉が生じることを示す図である。図26(a)に示されるように、2つの単位FBG371,372を持つFBG370にパルス幅が単位FBG371,372の反射パルス時間差Tより大きい光パルス360を入力したとき、単位FBG371で反射された光パルス371aと隣接した単位FBG372で反射された光パルス372aは反射パルス時間差を持つが、図26(b)に示されるように、2つの反射パルス371aと372aの一部が重なる。反射パルス371aと372aが異なる位相を持つ場合は、図26(c)に示されるような光パルスの変形が起こり、同位相の場合は、図26(d)に示されるように光パルスが結合される。すなわち、従来のFBG符号器において、入力光パルス幅が反射パルス時間差Tより大きいときには、生成された符号化パルス列が崩れる。
【0012】
また、図27は、入力光パルス幅が反射パルス時間差Tより小さいときにおける単位FBGの入力光パルス幅と帯域の関係及び反射パルス時間差と帯域の関係のグラフを示す図である。図27のグラフに示されるように、入力光パルス幅が反射パルス時間差より小さいときには、入力光パルスの帯域が単位FBGのフィルタ帯域より広くなる。このとき、単位FBGによる反射光パルス幅は広がり、隣接している単位FBGの反射パルス同士が重なり、光パルス間で干渉を起こし、FBG符号器においては、符号化パルス列が崩れる。
【0013】
したがって、入力光パルス幅が反射パルス時間差より大きい場合及び小さい場合のいずれにおいても、従来の光符号器により発生した符号化パルス列の光パルス間で干渉が生じ、従来のFBG復号器より復号された光パルスの再現性が劣化する。
【0014】
そこで、本発明では、上記したような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、フィルタ帯域を広げる構造により反射パルス幅の広がりを抑制することで、符号化パルス列の光パルス間の干渉を抑制することができる光導波路装置の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の光導波路装置の製造方法は、光ファイバと、前記光ファイバの光ファイバコア内に形成され、それぞれが前記光ファイバの長さ方向に周期的なブラッグ反射式の屈折率変調を持ち、かつ、前記長さ方向に並ぶ複数の単位回折格子部と、前記光ファイバコア内に形成され、前記複数の単位回折格子部の内のいずれかの隣り合う2つの単位回折格子部の間に形成され、前記隣り合う2つの単位回折格子部の間に所定量の位相差を生じさせる位相シフト部とを含む光導波路装置を製造するための、光導波路装置の製造方法であって、位相マスク法により紫外レーザ光を前記長さ方向に走査して前記光ファイバコアに前記長さ方向に周期的な屈折率変調を持つ単位回折格子部を複数形成する工程と、前記紫外レーザ光の走査工程と並行して、前記紫外レーザ光の照射位置が、前記複数の単位回折格子部の内のいずれかの隣り合う2つの単位回折格子部の間に到達したときに、前記位相マスク法で使用する位相マスクを前記長さ方向に所定距離だけ瞬時に移動させることによって、前記隣り合う2つの単位回折格子部の間に前記位相シフト部を形成する工程と、前記紫外レーザ光の走査工程と並行して、前記位相マスクを前記長さ方向に振動させ、前記単位回折格子部ごとに前記振動の振幅を前記紫外レーザ光の照射位置に応じて連続的に増加又は減少させることによって、前記光ファイバコアに形成される屈折率変調の振幅を前記単位回折格子部ごとに連続的に増加又は減少させる工程とを有することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の光導波路装置の製造装置は、光ファイバと、前記光ファイバの光ファイバコア内に形成され、それぞれが前記光ファイバの長さ方向に周期的なブラッグ反射式の屈折率変調を持ち、かつ、前記長さ方向に並ぶ複数の単位回折格子部と、前記光ファイバコア内に形成され、前記複数の単位回折格子部の内のいずれかの隣り合う2つの単位回折格子部の間に形成され、前記隣り合う2つの単位回折格子部の間に所定量の位相差を生じさせる位相シフト部とを含む光導波路装置を製造するための、光導波路装置の製造装置であって、感光性の光ファイバを直線状にして保持する保持手段と、位相マスクと、前記位相マスクを通して、前記保持手段に保持された前記光ファイバの光ファイバコアに紫外レーザ光を照射する紫外レーザ光照射手段と、前記紫外レーザ光の照射位置を前記長さ方向に移動させる走査手段と、前記位相マスクを前記長さ方向に瞬時に移動させる微動手段と、前記位相マスクを通して、前記紫外レーザ光を前記長さ方向に走査して前記光ファイバコアに前記長さ方向に周期的な屈折率変調を持つ単位回折格子部を複数形成させるように前記走査手段を制御し、前記紫外レーザ光の前記走査と並行して、前記紫外レーザ光の照射位置が、前記複数の単位回折格子部の内のいずれかの隣り合う2つの単位回折格子部の間に到達したときに、前記位相マスクを前記長さ方向に所定距離だけ瞬時に移動させることによって、前記隣り合う2つの単位回折格子部の間に前記位相シフト部を形成させるように前記微動手段を制御し、前記紫外レーザ光の前記走査と並行して、前記位相マスクを前記長さ方向に振動させ、前記単位回折格子部ごとに前記振動の振幅を前記紫外レーザ光の照射位置に応じて連続的に増加又は減少させることによって、前記光ファイバコアに形成される屈折率変調の振幅を前記単位回折格子部ごとに連続的に増加又は減少させるように前記微動手段を制御する制御手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フィルタ帯域を広げる構造を採用することによって反射パルス幅の広がりを抑制することで、生成されたパルス列の光パルス間の干渉を抑制することができるという効果を得ることができる。このため、本発明を光符号器及び光復号器に適用した場合には、光符号器により発生した符号化パルス列の光パルス間の干渉を抑制でき、また、光復号器により復号された光パルスの再現性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[1]第1の実施形態
図1(a)乃至(c)は、本発明の第1の実施形態に係る光導波路装置であるFBG符号器(又はFBG復号器)100を示す図である。図1(a)は、FBG符号器100の光ファイバ111のコア(すなわち、光ファイバコア)112の屈折率変調114及び位相シフト部116を示し、図1(b)は、図1(a)に示される光ファイバコア112における屈折率変調Δnを示し、図1(c)は、図1(b)の一部を拡大した図である。図1(a)乃至(c)に示されるように、FBG符号器100は、光導波路である光ファイバ111を有し、この光ファイバ111は、ブラッグ反射式の屈折率変調が形成された光ファイバコア112と、光ファイバコア112の周囲のクラッド113とを有する。
【0019】
図1(a)乃至(c)に示されるように、光ファイバコア112は、それぞれが光ファイバ111の長さ方向(図1(a)乃至(c)における横方向)に周期的な屈折率変調114を持ち、かつ、光ファイバ111の長さ方向に並ぶ複数の単位FBG(単位回折格子部)115を有する。また、光ファイバコア112は、複数の単位FBG115の内のいずれかの隣り合う2つの単位FBG間に形成され、これら隣り合う2つの単位FBG115の屈折率変調の間に所定量の位相差を生じさせる1又は複数(図1(a)及び(b)においては、7個)の位相シフト部116を有する。また、第1の実施形態においては、複数の単位FBG115のそれぞれが、周期的な屈折率変調の周期を光ファイバ111の長さ方向に対して徐々に増加又は減少させた構造(すなわち、チャープ構造)に構成されている。
【0020】
図1(a)乃至(c)においては、FBG符号器100は、入力光パルスから、符号長が‘15’で2値位相に符号化された光パルスを反射するように構成されている。図1(a)に示されるFBG符号器100は、光ファイバ111のコア112に形成された周期的な回折格子を有している。図1(c)における単位FBG115の屈折率変調構造は、ブラッグ反射の式λ=2×neff×Λに従う回折格子の屈折率変調周期Λが光ファイバの長さ方向に対して徐々に最小周期Λminから最大周期Λmaxへ増加(「チャープ」と言う。)している。なお、neffは有効屈折率である。第1の実施形態においては、すべての単位FBG115は、同じチャープ構造になっている。また、光パルス符号に応じて単位FBG115間に位相シフト部116が備えられた構成になっており、1個の位相シフト部116によるシフト量を、単位FBG115の長さ方向中央位置における屈折率変調周期Λcの1/2にしている。
【0021】
図2は、入力光パルス幅が10psのときの単位FBGのチャープ量と帯域の関係及びチャープ量と反射光のパルス幅(反射パルス幅)の関係のグラフを示す図である。図2のグラフに示される特性を持つ単位FBGの構造は、長さが約2.4mmで、屈折率変調のチャープは長さに対して1次関数で最小周期Λminから最大周期Λmaxまで変化している。また、単位FBGの屈折率変調周期の総変化量×2×neffを「チャープ量」とする。図2に示されるように、単位FBGのチャープ量(単位:nm)により単位FBGのフィルタ帯域(単位:nm)の調整ができ、チャープ量が大きいほど反射パルス幅(単位:nm)の広がりは抑制される。つまり、入力光のパルス幅に応じて単位FBGが持つチャープ量を決定することにより(すなわち、入力光のパルス幅に応じたチャープ量を持つ単位FBGを用いることにより)、単位FBGのフィルタ帯域を調整すれば、反射パルス幅の広がりを抑制できる。
【0022】
図3は、本発明(第1及び第2の実施形態)のFBG符号器の機能を評価するために使用した符号化パルス列と復号波形を観測する測定系の概要を示す図である。図3に示される測定系においては、光パルス発生器131から連続的に1.25GHzの光パルス132が発生する。この光パルス132のパルス幅は10psである。この光パルス132は光サーキュレータ133を通してFBG符号器134に入力される。FBG符号器134の反射光は、光サーキユレータ133を通して出力され、オシロスコープ135により符号化パルス列が観測される。また、光サーキユレータ133を通して出力された符号化パルス列は、光サーキュレータ136を通してFBG復号器137に入力される。FBG復号器137の反射光は、光サーキュレータ136を通して出力され、オシロスコープ138により復号波形が観測される。
【0023】
図4(a)は、図3の測定系により観測した従来構造のFBG符号器(図25(a)及び(b))の符号化パルス列と、第1の実施形態のFBG符号器(図1(a)乃至(c))100の符号化パルス列を示す図である。これらのFBG符号器の仕様は、符号長‘15’で、単位FBGの長さ(単位FBG長)が2.4mm、屈折率変調周期Λ(従来例)及び単位FBGの長さ方向中央位置の屈折率変調周期Λc(第1の実施形態)を約540nmとした。また、第1の実施形態のFBG符号器100の単位FBG115のチャープ量は0.8nmとした。図3の測定系の光パルス発生器131からのパルス間隔は1.25GHzで、この光パルスのパルス幅は10psとした。図4(a)に示されるように、図25(a)に示される従来構成のFBG符号器により生成された符号化パルス列は、同位相の光パルス間では光パルスが重なり、隣接する光パルスが結合された波形が観測された。これに対し、図4(b)に示されるように、図1(a)に示される第1の実施形態の構成のFBG符号器100により生成された符号化パルス列は、光パルスの広がりが抑制され、符号化パルス列の個々の光パルスが明確に区別できる波形が観測された。
【0024】
図5(a)乃至(c)は、第1の実施形態の効果を説明するための図であり、図5(a)は、パルス幅(10ps)の入力パルスを示し、図5(b)は、従来のFBG符号器で符号化し従来のFBG復号器で復号した結果得られた復号波形を示し、図5(c)は、パルス幅10psの光信号を第1の実施形態のFBG符号器で符号化し第1の実施形態のFBG復号器で復号した結果得られた復号波形を示す。図5(b)と図5(c)の比較から、従来のFBG符号器で符号化され従来のFBG復号器で復号されたパルス波形形状には広がり(パルス幅の増加及びパルス強度の低下)が見られるが、本発明の第1の実施形態のFBG符号器で符号化され第1の実施形態のFBG復号器で復号されたパルス波形形状には広がり(パルス幅の増加及びパルス強度の低下)が見られない。このことから、第1の実施形態に係るFBG符号器及びFBG復号器を用いれば、図5(a)の入力パルスと同等な波形(図5(c))が復元でき、再現性がよいことが確認された。
【0025】
なお、上記説明において、単位FBGのチャープ量を光ファイバの長さ方向に増加させた場合を説明したが、光ファイバの長さ方向に減少させた構造を採用してもよい。
【0026】
[2]第2の実施形態
図6(a)乃至(c)は、本発明の第2の実施形態に係る光導波路装置であるFBG符号器(又はFBG復号器)160を示す図である。図6(a)は、FBG符号器160の光ファイバ161のコア162の屈折率変調164及び位相シフト部166を示し、図6(b)は、図6(a)に示される光ファイバコア162における屈折率変調Δnを示し、図6(c)は、図6(b)の一部を拡大した図である。図6(a)乃至(c)に示されるように、FBG符号器160は、光導波路である光ファイバ161を有し、この光ファイバ161は、ブラッグ反射式の屈折率変調が形成された光ファイバコア162と、光ファイバコア162の周囲のクラッド163とを有する。
【0027】
図6(a)乃至(c)に示されるように、光ファイバコア162は、それぞれが光ファイバ161の長さ方向(図6(a)乃至(c)における横方向)に周期的な屈折率変調164を持ち、かつ、光ファイバ161の長さ方向に並ぶ複数の単位FBG(単位回折格子部)165を有する。また、光ファイバコア162は、複数の単位FBG165の内のいずれかの隣り合う2つの単位FBG間に形成され、これら隣り合う2つの単位FBG165の屈折率変調の間に所定量の位相差を生じさせる1又は複数(図6(a)及び(b)においては、7個)の位相シフト部166を有する。また、図6(b)及び(c)に示されるように、第2の実施形態においては、複数の単位FBG165のそれぞれが、光ファイバ160の長さ方向及び屈折率を座標軸とした座標系に周期的な屈折率変調を描いたときの周期的な屈折率変調の包洛線を所定の窓関数にするように周期的な屈折率変調の振幅を光ファイバ160の長さ方向に対して変化させた構造を持つ。
【0028】
図6(a)乃至(c)においては、FBG符号器160は、入力光パルスから、符号長が‘15’で2値位相に符号化された光パルスを反射するように構成されている。図6(a)に示されるFBG符号器160は、光ファイバ161のコア162に形成された周期的な回折格子を有している。図6(c)における単位FBG165の屈折率変調構造は、ブラッグ反射の式λ=2×neff×Λに従う回折格子の屈折率変調周期Λである。第2の実施形態においては、すべての単位FBG165は、同じ構造になっている。また、光パルス符号に応じて単位FBG165間に位相シフト部166が備えられた構成になっており、1個の位相シフト部166によるシフト量を、単位FBG165の屈折率変調周期Λの1/2にしている。
【0029】
図7(a)乃至(c)は、単位FBG165の屈折率変調構造を説明するための図である。図7(a)は、図25(b)に示される従来のFBG符号器と同じ屈折率変調構造を示す。また、図7(b)は、第2の実施形態における単位FBGの周期Tを持つFBG符号器全体の屈折率変調の包洛線を示す。本発明の第2の実施形態のFBG符号器の構成は、図7(a)の回折格子の屈折率変調に、図7(b)の単位FBGの周期Tの屈折率変調包洛線(窓関数で表現できる。)をかけた図7(c)の屈折率変調になっている。図7(b)の単位FBGの窓関数nunitは、
unit
=exp{(−1)×ln(2)×[2×(x−L/2)/(L×B)]
(3)
のガウス関数に従い、単位FBGの周期Tで繰り返している。ここで、Lは単位FBG長、Bは帯域調整の係数(帯域係数)、ln(・)は自然対数、exp{・}は指数関数を示す。また、図7(b)に示されるように、この屈折率変調は、一定値Ncを中心に振幅している。
【0030】
本発明の第2の実施形態のFBG符号器の構造は、屈折率変調の周期Λが一定であり、チャープなどの屈折率変調周期の変動を持たないため作製が容易である。例えば、位相マスク法を改良した本出願人による先願(特願平2003−279518)に示されるようなFBG製造方法及び製造装置を用いてFBG符号器を作ることができる。このFBG製造方法及び製造装置については、後述する。
【0031】
上記説明においては、単位FBGごとの窓関数にガウス関数を用いた例を示したが、その他の信号処理の窓関数、例えば、関数(Raised cosine(レイズドコサイン)関数、Tanh(双曲正接)関数、Blackman(ブラックマン)関数、Hamming(ハミング)関数、Hanning(ハニング)関数など)などを用いてもよい。
【0032】
図8は、入力光パルス幅10psのときの単位FBGのガウス関数式(3)の帯域係数Bと反射パルス幅の関係及び帯域係数Bと帯域の関係のグラフを示す図である。図8のグラフに示される特性を持つ単位FBGの構造は、長さが約2.4mmである。図8に示されるように、単位FBGのガウス関数包洛線を適用することにより、従来のFBG符号器の単位FBG(長さ2.4mm、反射パルス幅約17.5ps、帯域0.31nm)と比べて、単位FBGのフィルタ帯域を広くすることができ反射パルス幅の増加を抑制している。図8に示されるように、ガウス関数を窓関数として用いた場合、帯域係数Bが小さいほど反射パルス幅の広がりは抑制される。よって、式(3)における帯域係数Bの値を変えることにより、FBG符号器のフィルタ帯域の調整ができる。つまり、入力光のパルス幅に応じて単位FBGが持つ屈折率変調振幅を決定することにより(すなわち、入力光のパルス幅に応じた屈折率変調振幅を持つ単位FBGを用いることにより)、単位FBGのフィルタ帯域を調整すれば、反射光のパルス幅の広がりを抑制できる。
【0033】
図9(a)は、図3の測定系により観測した従来構造のFBG符号器(図25(a)及び(b))の符号化パルス列と、第2の実施形態のFBG符号器(図6(a)乃至(c))160の符号化パルス列を示す図である。これらのFBG符号器の仕様は、符号長‘15’で、単位FBGの長さ(単位FBG長)が2.4mm、屈折率変調周期Λを約540nmとした。また、窓関数の帯域調整係数は0.5とした。図9(a)に示されるように、図25(a)に示される従来構成のFBG符号器により生成された符号化パルス列は、同位相の光パルス間では光パルスが重なり、隣接する光パルスが結合された波形が観測された。これに対し、図9(b)に示されるように、図6(a)乃至(c)に示される第2の実施形態の構成のFBG符号器160により生成された符号化パルス列は、光パルスの広がりが抑制され、符号化パルス列の個々の光パルスが明確に区別できる波形が観測された。
【0034】
図10(a)及び(b)は、第2の実施形態の効果を説明するための図であり、図10(a)は、従来のFBG符号器で符号化し従来のFBG復号器で復号した結果得られた復号波形を示し、図10(b)は、パルス幅10psの光信号を第2の実施形態のFBG符号器で符号化し第2の実施形態のFBG復号器で復号した結果得られた復号波形を示す。図10(a)と図10(b)の比較から、従来のFBG符号器で符号化され従来のFBG復号器で復号されたパルス波形形状には広がり(パルス幅の増加及びパルス強度の低下)が見られるが、本発明の第2の実施形態のFBG符号器で符号化され第2の実施形態のFBG復号器で復号されたパルス波形形状には広がり(パルス幅の増加及びパルス強度の低下)が小さい。このことから、第2の実施形態に係るFBG符号器及びFBG復号器を用いれば、入力パルスと同等な波形が復元でき、再現性がよいことが確認された。
【0035】
[3]FBG光符号器の製造方法
[3−1]位相シフト部を持つFBG(第1及び第2の実施形態)の製造方法
図11(a)及び(b)は、FBG製造装置の構成を概略的に示す図であり、図11(a)は光ファイバの長さ方向であるX軸方向を横方向とした図であり、図11(b)はX軸方向に直交するY軸方向を横方向とした図である。図11(a)及び(b)に示されるように、FBG製造装置は、ベース板211と、このベース板211を移動又は回転させるステージ系212と、ベース板211上に備えられたファイバホルダ213と、ベース板211上に固定された微動ステージ214と、この微動ステージ214上に固定された位相マスクホルダ215と、この位相マスクホルダ215に固定された位相マスク216とを有する。また、このFBG製造装置は、ファイバホルダ213により直線状に張られた光ファイバ210に紫外レーザ光220を照射する光学系221を有する。なお、光ファイバ210としては、その光ファイバコアの屈折率が紫外線の照射によって変化する感光性光ファイバを用いる。
【0036】
図11(a)及び(b)に示されるように、ステージ系212は、θ軸回転ステージ212aと、Y軸移動ステージ212bと、X軸移動ステージ212cとを有する。θ軸回転ステージ212aは、パルスモータ等の駆動源(図示せず)からの駆動力によってベース板211をベース板211の表面に直交する軸線(図11(a)及び(b)における縦方向に延びる軸線(図示せず))を中心にして回転させる。θ軸回転ステージ212aは、ファイバホルダ213によって保持された光ファイバ210の長さ方向をX軸方向(X軸移動ステージ12cの移動方向である。)と平行な方向にするために使用される。Y軸移動ステージ212bは、パルスモータ等の駆動源(図示せず)からの駆動力によってθ軸回転ステージ212a及びベース板211をX軸方向に直交するY軸方向(Y軸移動ステージ212bの移動方向であって、図11(b)における横方向である。)に移動させる。Y軸移動ステージ212bは、ファイバホルダ213によって保持された光ファイバ210の光ファイバコアの位置が紫外レーザ光220の照射位置に一致するように、θ軸回転ステージ212a及びベース板211をY軸方向に移動させる。θ軸回転ステージ212aによる光ファイバ210の方向の調整手順及びY軸移動ステージ212bによる光ファイバ210のY軸方向の位置の調整手順は特に限定されない。
【0037】
X軸移動ステージ212cは、パルスモータ等の駆動源(図示せず)からの駆動力によって、Y軸移動ステージ212b、θ軸回転ステージ212a、及びベース板211をX軸方向(図11(a)における横方向)に移動させる。X軸移動ステージ212cの最大移動距離は、例えば、150mmであり、位置移動分解能は、例えば、1μmである。X軸移動ステージ212cは、ベース板211上のファイバホルダ213に保持された光ファイバ210をその長さ方向(θ軸回転ステージ212a及びY軸移動ステージ212bによりX軸方向に一致している。)に移動させることによって、紫外レーザ光220による光ファイバ210上の照射位置をX軸方向に移動させる(すなわち、紫外レーザ光220により光ファイバ210の光ファイバコアを走査する)。
【0038】
ベース板211上の微動ステージ214は、ピエゾ素子(PZT)を駆動源としており、位相マスクホルダ215及び位相マスク216をX軸方向に微動又は振動させる。微動ステージ214の最大移動距離は、例えば、35μmであり、位置移動分解能は、例えば、1nmである。位置移動分解能が1nmであるピエゾ素子を用いた微動ステージ214は、光ファイバコア210aのブラッグ回折格子に位相シフト部や屈折率変調振幅の変化を持たせる用途に適している。また、ピエゾ素子の移動量はピエゾ素子の入力電圧を制御することによって調整することができる。
【0039】
θ軸回転ステージ212a、Y軸移動ステージ212b、X軸移動ステージ212c、及び微動ステージ214の動作は、パーソナルコンピュータ(PC)のような制御装置(図示せず)からの制御信号に基づいて、それぞれの駆動回路(図11(a)及び(b)に示さず)によって制御される。
【0040】
図11(b)に示されるように、紫外レーザ光220を照射する光学系221は、レーザ光源221aと、レンズ221bと、ミラー221cとを有する。レーザ光源221aは、例えば、244nmの波長光を発生するAr−CWレーザ(例えば、Coherent社製INNOVA300Fred(商品名))である。レーザ光源221aからの紫外レーザ光は、レンズ221bによって収束され、ミラー221cで反射され、位相マスク216を通して、光ファイバ210の光ファイバコアに照射される。図11(a)及び(b)において、紫外レーザ光の照射位置は固定されており、紫外レーザ光220の走査はX軸移動ステージ212cによるベース板211の移動によって行われる。ただし、X軸移動ステージ212cによりベース板211をX軸方向に移動させずに、ベース板211を固定して、光学系221をX軸方向に移動させてもよい。
【0041】
図12は、FBG製造装置の微動ステージ214の動作を示す説明図である。微動ステージ214の動作は、パーソナルコンピュータのような制御装置(図示せず)からの制御信号に基づいて、駆動回路(図12における直流電圧発生器217)が微動ステージ214のピエゾ素子の印加電圧を調整することによって制御される。ステージ系212の制御装置と微動ステージ214の制御回路は、通常は同じパーソナルコンピュータである。
【0042】
図13(a)及び(b)は、FBGの製造方法を示す説明図であり、図13(a)は位相マスク216のシフト前の屈折率変調の形成工程を示し、図13(b)は位相マスク216のシフト後の屈折率変調の形成工程を示す。図13(a)及び(b)に示されるように、紫外レーザ光220が位相マスク216を通過すると、位相マスク216の回折格子の周期の1/2周期の干渉縞(干渉光220a)が生じる。この干渉縞が光ファイバコア210aに照射されると、照射光量に応じて光ファイバコア210aの屈折率を増加させ、光ファイバコア210aに周期的な屈折率変調によるブラッグ回折格子が形成される。
【0043】
図11(a)及び(b)並びに図13(a)及び(b)に示されるように、X軸移動ステージ212cによるベース板211のX軸方向の移動、具体的には、図13(a)及び(b)に示される矢印A方向への移動により、紫外レーザ光220の照射位置は位置Pから位置Pを通して位置Pに移動する。紫外レーザ光220の照射位置が位置Pになったときに、微動ステージ214により位相マスク216を光ファイバ210の長さ方向であるX軸方向に(本例では、矢印A方向とは逆の方向に)所定距離だけ移動(微動)させる。このときの位相マスク216の移動距離は、位相マスク216の回折格子の周期の1/4(すなわち、光ファイバコア210aに形成されるブラッグ回折格子の周期の1/2)としている。
【0044】
図13(a)及び(b)に示されるように、紫外レーザ光220の位置Pから位置Pまでの走査により、光ファイバコア210aにはブラッグ回折格子231が形成される。このときの紫外レーザ光220の走査速度は、例えば、10μm/s〜100μm/sの範囲内で設定された一定値である。この走査の間、位相マスク216と光ファイバ210の相対位置は変わらない。
【0045】
図13(b)に示されるように、紫外レーザ光220の照射位置が位置Pに達したときの微動ステージ214による微動により、光ファイバコア210aに位相シフト部233が形成される。このときの微動量(シフト量)は、光ファイバコア210aのブラッグ回折格子の周期の1/2(位相マスク216の回折格子の周期の1/4)であり、このシフト量が位相シフト部の長さになる。シフト量は、例えば、0.268μmである。このとき、ピエゾ素子を用いた微動ステージ214のピエゾ素子への入力電圧は約180mVである。入力電圧は、図14に示されるような、微動ステージのピエゾ素子の入力電圧とシフト量の関係から求められる。ただし、図14の関係は一例に過ぎず、ピエゾ素子の入力電圧とシフト量の関係は、ピエゾ素子の種類によって変わる。
【0046】
図13(b)に示されるように、紫外レーザ光220の位置Pから位置Pまでの走査により、光ファイバコア210aにはブラッグ回折格子232が形成される。このときの紫外レーザ光220の走査速度は、例えば、10μm/s〜100μm/sの範囲内で設定された一定値である。この走査の間、位相マスク216と光ファイバ210の相対位置は変わらない。なお、紫外レーザ光220の照射位置は固定され、光ファイバ210をX軸移動ステージ12cにより矢印A方向に移動させ、位相マスク216を微動ステージ14によりX軸方向に微動させるが、図13(a)及び(b)においては、位相マスク216と光ファイバコア210aのX軸方向の位置関係を理解し易くするために、紫外レーザ光220の位置を移動させて描いている。
【0047】
以上のプロセスによって、光ファイバコア210aに位置Pを境に、位置Pから位置Pまでのブラッグ回折格子231と、位置Pから位置Pまでのブラッグ回折格子232とが、ブラッグ回折格子の周期の1/2だけ位相シフトしているFBGが形成された。
【0048】
上記説明においては、一つの位相シフト部233を持つFBGの製造方法を示したが、微動ステージ214による位相マスク216の微動を繰り返すことによって、複数の位相シフト部を持つFBGを製造することができる。また、X軸移動ステージ212cと微動ステージ214の動作を同じパーソナルコンピュータで制御し、X軸移動ステージ212cの動作中に、所望の複数の座標で微動ステージ214を動作させれば、複数の位相シフト部233も所望の位置に形成できる。さらに、SS−FBGを用いたOCDM用の符号器と復号器は、任意の符号のコード長とパターンにより、ブラッグ回折格子に複数の位相シフト部233を持つが、上記FBGの製造方法は、このようなFBGの製造に適している。
【0049】
なお、微動ステージ214の入力電圧を調整することにより、位相シフト量が制御でき、光ファイバコアに形成されるブラッグ回折格子の1/4周期や3/4周期などのような任意のシフト量の位相シフト部を持つFBGを製造することができる。一般的には、位相シフト量は、位相マスク216の回折格子の周期の1/2よりも小さい値(すなわち、光ファイバコア210aに形成されるブラッグ回折格子の周期よりも小さい値)である。なお、必要に応じて、位相シフト量は、位相マスク回折格子の周期の1/2よりも大きい値(すなわち、光ファイバコア210aに形成されるブラッグ回折格子の周期よりも大きい値)であってもよい。
【0050】
図15は、位相シフト部を持つFBGの反射スペクトルと位相シフト部を持たないFBGの反射スペクトル(比較例)を示す図である。図15に太線(With phase shift)で示されるように、FBG長の中央にブラッグ回折格子の1/2周期の位相シフト部33を持つFBGの反射スペクトルは、反射帯域中央にディップを持つ。この場合のFBG長は2.4mmであり、その中央(端部から1.2mmの位置)に位相シフト部が設けられている。また、図15に細線(W/O phase shift)で示されるように、位相シフト部を持たないFBGの反射スペクトルには、反射帯域中央にディップが現れていない。このような反射スペクトルの実測値から、本例の場合には、FBGにブラッグ回折格子の1/2周期の長さの位相シフト部が良好に形成されていることを確認することができる。
【0051】
以上のFBG製造方法又は製造装置を用いれば、位相マスク216を交換することなく、光ファイバコア210aの所望の位置に所望の位相シフト量の位相シフト部233を備えたブラッグ回折格子を形成することができる。
【0052】
第1の実施形態として説明された位相シフト部を有するFBGの製造に際しては、図16に示されるような位相マスク1を使用する。図16に示される位相マスク1は、15個の単位回折格子2が連続的に繋がっている(図16においては、中央部分の図示を省略している。)構造を有している。これらの単位回折格子2は互いに同じ構成であり、単位回折格子2の長さは2.4mmであり、単位回折格子2の中央の格子周期は約1080nmであり、かつ、単位回折格子2はFBGの反射波長に換算されたチャープ量0.8nmを持つ。また、単位回折格子2間の位相関係は、各単位の中心の回折格子周期が長さ方向に位相が揃うように位置付けられている。
【0053】
第1の実施形態のFBGの製造に際しては、紫外レーザを走査しながら、位相マスク1の通過によって生じる紫外レーザの干渉光を照射することにより光ファイバコアにブラッグ回折格子を形成する。そのとき、紫外レーザがこの位相マスク1の単位回折格子間の境界(図16において、三角マークで示される位置)に照射されているとき、瞬時にこの位相マスク1を微動させることにより位相シフト部(図1の符号116)が形成される。第1の実施形態のOCDM用符号器や復号器の製造に際して、紫外レーザがこの位相マスク1の単位回折格子2間の境界(図16において、三角マークで示される位置)に照射されているとき、符号に応じて、この位相マスク1を単位回折格子中心の周期の1/4動かしたり、動かさなかったりすることによって、位相シフト部を有するFBGが作られる。
【0054】
[3−2]アポダイゼーションを持つFBG(第2の実施形態)の製造方法
以下のFBG製造方法では、微動ステージ駆動用の関数電圧信号発生器を用い、微動ステージのピエゾ素子に所望の関数波形の電圧振幅を印加して、位相マスクを振動させている。微動ステージによる位相マスクの振動により光ファイバコアの屈折率変調の振幅を変動させて、例えば、アポダイゼーションを持たせている。
【0055】
図11(a)及び(b)に示されるFBGの製造方法は、位相マスク法により紫外レーザ光220を光ファイバ210の長さ方向(X軸方向)に走査して光ファイバコア210aに光ファイバ210の長さ方向に周期的な屈折率変調を形成する工程を有する。また、このFBGの製造方法は、前記した紫外レーザ光220の走査工程と並行して、位相マスク法で使用する位相マスク216を光ファイバ210の長さ方向に振動させ、この振動の振幅を紫外レーザ光210の照射位置に応じて連続的に増加又は減少させることによって、光ファイバコア210aに形成される屈折率変調の振幅を変化させる工程を有する。
【0056】
図17(a)乃至(c)は、FBGの製造方法を示す説明図であり、図17(a)は位相マスクの振動を示す図であり、図17(b)は位相マスクの振動の振幅が小さい場合に光ファイバコアの屈折率変調の振幅が大きくなることを示す説明図であり、図17(c)は位相マスクの振動の振幅が大きい場合に光ファイバコアの屈折率変調の振幅が小さくなることを示す説明図である。図17(a)に示されるように、位相マスク216を実線位置と破線位置の間で繰り返し移動(すなわち、振動)させると、光ファイバコア210aに対する干渉光241の照射位置も変化する。光ファイバコア210aのレーザビーム照射量が一定のとき、図17(b)に示されるように、位相マスク216の振動の振幅が小さいときは、光ファイバコア210aに対する干渉光241の照射範囲が狭いため、光ファイバコア210aのブラッグ回折格子の屈折率変調振幅は大きくなる。なお、位相マスク216の振動の振幅は、図17(b)の干渉光の照射強度を示す3本の曲線(実線、細い破線、太い破線)のうちの実線と太い破線の位相差に対応する。また、図17(c)に示されるように、位相マスク216の振動の振幅が大きいときは、光ファイバコア210aに対する干渉光241の照射範囲が広いため、光ファイバコア210aのブラッグ回折格子の屈折率変調振幅は小さくなる。なお、位相マスク216の振動の振幅は、図17(c)の干渉光の照射強度を示す3本の曲線(実線、細い破線、太い破線)のうちの実線と太い破線の位相差に対応する。ただし、図17(b)の場合の平均屈折率変化量Nbと図17(c)の場合の平均屈折率変化量Ncとは等しくなる。
【0057】
図18は、FBG製造装置の微動ステージのピエゾ素子の振動がSIN関数である場合の規格化された相対的屈折率変調振幅を示す図である。この規格化はSIN関数の入力振幅電圧が0mVのとき、光ファイバコア210aのブラッグ回折格子の屈折率変調振幅を1としている。また、このグラフは、振動の関数がSIN波(又はCOSIN波)の時のシミュレーションと測定値の関係を示している。このときの振動周波数は10Hzとした。SIN波(又はCOSIN波)関数の振幅で制御した場合には、シミュレーションと実験値がほぼ一致することがわかる。
【0058】
図19(a)及び(b)は、アポダイゼーションを形成する方法を説明するための図であり、図19(a)は微動ステージのピエゾ素子の入力電圧波形を示し、図19(b)は光ファイバコアの屈折率変調振幅を示す。アポダイゼーション技術とは、FBGの周期的な屈折率変調の包絡線を図19(b)に示されるような形状(ベル状)にし、FBGの両端のファブリペローに起因するサイドローブを抑制する技術である。FBGの周期的な屈折率変調283の包絡線281を図19(b)に示されるような形状したブラッグ回折格子を形成する場合には、FBG長さ方向の位置に対する入力SIN波(又はCOSIN波)関数の電圧振幅を図19(a)に示されるようにすればよい。なお、図18に示されるSIN関数の入力振幅電圧に対する規格化された光ファイバコアの回折格子の屈折率変調振幅の関係から、包絡線281を得るために必要な電圧振幅を得ることができる。このため、ピエゾ素子の入力電圧を制御することにより、光ファイバコアのブラッグ回折格子にアポダイゼーションを形成することができる。
【0059】
図20は、アポダイゼーションを持つFBGの反射スペクトルとアポダイゼーションを持たないFBGの反射スペクトル(比較例)を示す図である。これらのFBG長は4.8mmである。ここでは、アポダイズされた(すなわち、アポダイゼーションを持つ)屈折率変調の包絡線を式(4)のレイズドコサイン関数で形成した。
f(x)=1+cos(2πx/L) (4)
ここで、Lは、FBG全長を示す。図20に実線で示されるアポダイゼーションを持つFBGの反射スペクトル(With apodize)と、図20に破線で示されるアポダイゼーションを持たないFBGの反射スペクトル(W/O apodize)とを比較すると、アポダイゼーションを持つFBGの場合には、サイドローブが抑圧されていることが分かる。なお、以上の説明では、アポダイゼーションにレイズドコサイン関数を用いたが、他の関数を用いてもよい。
【0060】
以上のFBGの製造方法又は製造装置を用いれば、光ファイバコア210aの所望の位置に屈折率変調振幅の変動(例えば、アポタイゼーション)を形成することができる。
【0061】
また、以上のFBGの製造方法又は製造装置においては、屈折率変調振幅の変動を形成するために、位相マスク216をその長さ方向に振動させているので、紫外レーザ光220と光ファイバコア210aとのY軸方向の位置関係がずれることはない。また、位相マスク16のY軸方向の幅は5mm〜10mm程度と大きいので、位相マスク16のY軸方向のずれによる光ファイバコア210aへの紫外レーザ光の照射量の変化はない。よって、以上のFBGの製造方法又は製造装置を用いて、光ファイバコア210aにブラッグ回折格子を形成すれば、光ファイバの幅方向のずれに起因する屈折率変調振幅のばらつきを小さくすることができる。
【0062】
さらに、微動ステージ214のピエゾ素子に印加する電圧を関数電圧信号発生器にして、ピエゾ素子を振動させる際に、振幅の変化の動きが滑らかなSIN波(又はCOSIN波)で振動させると、シミュレーションのFBG屈折率変調の振幅と実際に作製したFBGの屈折率変調の振幅とがほぼ一致する。そのため、実際に製造されるFBGの屈折率変調の振幅を、微動ステージ214のピエゾ素子の入力電圧に換算でき、所望のFBG屈折率変調を得るためのプロセス設計が容易になる。
【0063】
[3−3]アポダイゼーション及び位相シフト部を持つFBG(第2の実施形態)の製造方法
位相シフト部及び屈折率変動振幅の変化の両方を備えたFBGを製造する方法においては、前記直流電圧発生器の出力と関数電圧信号発生器の出力を合成した信号を、微動ステージのピエゾ素子に入力して、位相マスク216を振動及び微動させる。
【0064】
このFBGの製造方法は、位相マスク法により紫外レーザ光220を光ファイバ210の長さ方向(X軸方向)に走査して光ファイバコア210aに光ファイバ210の長さ方向に周期的な屈折率変調を形成する工程を有する。また、このFBGの製造方法は、前記した紫外レーザ光220の走査工程と並行して、紫外レーザ光220の照射位置が所定位置になったときに、位相マスク法で使用する位相マスク216を光ファイバ210の長さ方向に所定距離だけ瞬時に移動(微動)させることによって、光ファイバコア210aに形成される周期的な屈折率変調に位相シフト部233を形成する工程を有する。さらに、このFBGの製造方法は、位相マスク法で使用する位相マスク216を光ファイバ210の長さ方向に振動させ、この振動の振幅を紫外レーザ光210の照射位置に応じて連続的に増加又は減少させることによって、光ファイバコア210aに形成される屈折率変調の振幅を変化させる工程を有する。
【0065】
図21(a)乃至(d)は、FBGの製造方法を説明するための図であり、図21(a)は微動ステージのピエゾ素子の駆動回路(合成回路)251の動作を示す説明図であり、図21(b)は関数信号発生器からの入力信号波形の一例を示し、図21(c)は直流電圧発生器からの入力電圧波形の一例を示し、図21(d)は合成回路251の出力波形を示す。図21(a)に示されるように、関数電圧情号発生器の電圧振幅と直流電圧発生器の直流電圧は合成回路に入力され、合成電圧波形が出力される。
【0066】
以下に、FBGが1つの位相シフト部を有し、さらに、FBGにアポダイゼーション技術を施すときの、FBGの製造方法を説明する。また、FBG長が2.4mmであり、FBG長の中央にブラッグ回折格子の1/2周期の長さの位相シフト部を持ち、FBGの端部から1.2mmごとにレイズドコサイン関数のアポダイズを施す場合を示す。
【0067】
FBGの製造方法は、以下の通りである。図11(a)及び(b)に示される製造装置により、X軸移動ステージ212cが動作すると紫外レーザ光220が位相マスク216を通して光ファイバコア10aを走査する。図21(d)に示すように走査開始当初は、屈折率変調振幅を約0にするためピエゾ素子に入力する振幅電圧は大きく約268mVである。位相シフト形成前の1.2mm長のブラッグ回折格子の形成では、図18に示されたSIN関数の入力振幅電圧に対する規格化された光ファイバコアの回折格子の屈折率変調振幅とFBG全長を1.2mmとしたレイズドコサイン関数式から換算して、図21(d)に示すように、その入力電圧振幅を約0mV〜268mVまで変動させる。図21(d)に示すように、走査距離が1.2mmでブラッグ回折格子の1/2周期の長さの位相シフト部(268μm)を形成するために、約180mVの直流電圧を与えた。走査距離が1.2mmを過ぎた後の、残りの1.2mm長のブラッグ回折格子の形成のための入力電圧振幅は、図21(d)に示すように、位相シフト前の1.2mm走査と同じ入力電圧振幅変化を与えた。
【0068】
図22(a)は位相シフト部を備え、アポダイゼーションを持たないFBGの反射スペクトル(比較例)を示す図であり、図22(b)は位相シフト部とアポダイゼーションの両方を備えたFBGの反射スペクトルを示す図である。図22(a)及び(b)においては、FBGの中央に一つブラッグ回折格子の1/2周期の長さの位相シフト部を持つ2.4mm長のFBGにおいて、アポダイズを施したFBGと、アポダイズを施していなFBGの反射スペクトルを示す。アポダイズを施したFBGの反射スペクトルにおいてはサイドローブが抑圧されていることが分かる。
【0069】
上記説明においては、一つの位相シフト部を持ち、アポダイズにレイズドコサイン関数を用いたFBGの作製例を示したが、同様の手法により、複数の位相シフト部と任意の位相シフト量を持ち、かつ、アポダイズに任意の関数を適用したFBGを作製することができる。このように、直流電圧発生器の電圧と関数電圧信号発生器の信号を合成し、微動ステージのピエゾ素子に印加することにより、微動ステージを振動かつシフトさせることができ、所望の量と数の位相シフトを持ち、かつ、所望の関数のアポダイズが施されたFBGが形成できる。
【0070】
第2の実施形態として説明された位相シフト部を有するFBGの製造に際しては、図23に示されるような位相マスク5を使用する。図23に示される位相マスク5は、回折格子部の長さ36mm以上であり、回折格子の周期は各部において一定の約1080nmであり、位相は揃っている。
【0071】
第2の実施形態のFBGの製造に際しては、紫外レーザを走査しながら、位相マスク5の通過によって生じる紫外レーザの干渉光を照射することにより光ファイバコアにブラッグ回折格子を形成する。そのとき、紫外レーザが照射されている所望の位置に来たとき、瞬時にこの位相マスクを微動させることにより位相シフト部(図6の符号166)が所望の位置に形成される。第2の実施形態のOCDM用符号器や復号器の製造においては、紫外レーザの照射のスタート地点から2.4mm周期の位置で、符号に応じて、この位相マスクを単位回折格子中心の周期の1/4動かしたり、動かさなかったりすることによって、位相シフト部を有するFBGが作られる。
【0072】
また、第2の実施形態では、式(3)に示されるガウス関数をアポダイズ(窓関数)に採用している。この関数で計算された屈折率変調振幅が、図18に示される入力振幅電圧と規格化された相対的屈折率変調振幅の関係から計算された入力振幅電圧が、位相マスクを振動させるため微動ステージのピエゾ素子へ与えられる。
【0073】
また、FBGの製造方法又は製造装置においては、屈折率変調振幅の変動を形成するために、位相マスク216をその長さ方向に微動及び振動させているので、光ファイバ210を振動させる従来技術のように、紫外レーザ光220と光ファイバコア210aとのY軸方向の位置関係がずれることはない。また、位相マスク216のY軸方向の幅は5mm〜10mm程度と大きいので、位相マスク216のY軸方向のずれによる光ファイバコア210aへの紫外レーザ光の照射量の変化はない。よって、以上に説明したFBGの製造方法又は製造装置を用いて、光ファイバコア210aにブラッグ回折格子を形成すれば、光ファイバの幅方向のずれに起因する屈折率変調振幅のばらつきを小さくすることができる。
【0074】
[4]利用形態の説明
上記実施形態においては、光ファイバコアにブラッグ回折格子を形成したが、何かの手段で屈折率変調を施すことができる光導波路であれば本発明の屈折率変調構造を使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】(a)乃至(c)は、本発明の第1の実施形態に係るFBG符号器(又はFBG復号器)を示す図である。
【図2】単位FBGのチャープ量と帯域の関係及びチャープ量と反射パルス幅の関係のグラフを示す図である。
【図3】本発明の第1及び第2の実施形態に係るFBG符号器(又はFBG復号器)の機能を評価するために使用した符号化パルス列と復号波形を観測する測定系の概要を示す図である。
【図4】(a)は、従来のFBG符号器により生成された符号化パルス列を示し、(b)は、本発明の第1の実施形態に係るFBG符号器により生成された符号化パルス列を示す図である。
【図5】(a)乃至(c)は、本発明の第1の実施形態の効果を説明するための図であり、(a)は、入力パルスを示し、(b)は、従来のFBG符号器で符号化し従来のFBG復号器で復号した結果得られた復号波形を示し、(c)は、パルス幅10psの光信号を第1の実施形態のFBG符号器で符号化し第1の実施形態のFBG復号器で復号した結果得られた復号波形を示す。
【図6】(a)乃至(c)は、本発明の第2の実施形態に係るFBG符号器(又はFBG復号器)を示す図である。
【図7】(a)乃至(c)は、本発明の第2の実施形態に係るFBG符号器(又はFBG復号器)のFBB符号器の屈折率変調構造を説明するための図である。
【図8】単位FBGのガウス関数式における帯域係数と反射パルス幅の関係及び帯域係数と帯域の関係のグラフを示す図である。
【図9】(a)は、従来のFBG符号器により生成された符号化パルス列を示し、(b)は、本発明の第2の実施形態に係るFBG符号器により生成された符号化パルス列を示す図である。
【図10】(a)は、従来のFBG符号器で符号化され従来のFBG復号器で復号されたパルス波形形状を示し、(b)は、第2の実施形態に係るFBG符号器で符号化され第2の実施形態に係るFBG復号器で復号されたパルス波形形状を示す図である。
【図11】(a)及び(b)は、FBG製造装置の構成を概略的に示す図であり、(a)は光ファイバの長さ方向であるX軸方向を横方向とした図であり、(b)はX軸方向に直交するY軸方向を横方向とした図である。
【図12】FBG製造装置の微動ステージの動作を示す説明図である。
【図13】(a)及び(b)は、FBGの製造方法を示す説明図であり、(a)は位相マスクのシフト前の屈折率変調の形成工程を示し、(b)は位相マスクのシフト後の屈折率変調の形成工程を示す。
【図14】微動ステージのピエゾ素子の入力電圧とシフト量の関係を示す図である。
【図15】位相シフト部を持つFBGの反射スペクトルと位相シフト部を持たないFBGの反射スペクトル(比較例)を示す図である。
【図16】位相シフト部を持つFBG(第1の実施形態)の製造に使用した位相マスクの構成を概略的に示す図である。
【図17】(a)乃至(c)は、FBGの製造方法を示す説明図であり、(a)は位相マスクの振動を示す図であり、(b)は位相マスクの振動の振幅が小さい場合に光ファイバコアの屈折率変調の振幅が大きくなることを示す説明図であり、(c)は位相マスクの振動の振幅が大きい場合に光ファイバコアの屈折率変調の振幅が小さくなることを示す説明図である。
【図18】FBG製造装置の微動ステージのピエゾ素子の振動がSIN関数である場合の規格化された相対的屈折率変調振幅を示す図である。
【図19】(a)及び(b)は、アポダイゼーションを形成する方法を説明するための図であり、(a)は微動ステージのピエゾ素子の入力電圧波形を示し、(b)は光ファイバコアの屈折率変調振幅を示す。
【図20】アポダイゼーションを持つFBGの反射スペクトルとアポダイゼーションを持たないFBGの反射スペクトル(比較例)を示す図である。
【図21】(a)乃至(d)は、FBGの製造方法を説明するための図であり、(a)は微動ステージのピエゾ素子の駆動回路(合成回路)の動作を示す説明図であり、(b)は関数信号発生器からの入力信号波形の一例を示し、(c)は直流電圧発生器からの入力電圧波形の一例を示し、(d)は合成回路の出力波形を示す。
【図22】(a)は位相シフト部を備え、アポダイゼーションを持たないFBGの反射スペクトル(比較例)を示す図であり、(b)は位相シフト部とアポダイゼーションの両方を備えたFBGの反射スペクトルを示す図である。
【図23】位相シフト部を持つFBG(第2の実施形態)の製造に使用した位相マスクの構成を概略的に示す図である。
【図24】FBG符号器による符号化とFBG復号器による復号の原理を示す図である。
【図25】(a)及び(b)は、従来のFBG符号器又はFBG復号器が持つ光ファイバコアの屈折率変調構造を示す図である。
【図26】(a)乃至(d)は、入力光パルス幅が反射パルス時間差より大きいときに、隣接している単位FBGの反射パルス間で干渉パルスが生じることを示す図である。
【図27】入力光パルス幅が反射パルス時間差より小さいときにおける単位FBGの入力光パルス幅と帯域の関係及び反射パルス時間差と帯域の関係のグラフを示す図である。
【符号の説明】
【0076】
110,160 FBG符号器(又はFBG復号器)、
111,161 光ファイバ、
112,162 光ファイバコア、
113,163 クラッド、
114,164 屈折率変調、
115,165 単位FBG、
116,166 位相シフト部、
131 光パルス発生器、
132 光パルス、
133,136 光サーキュレータ、
134 FBG符号器、
135,138 オシロスコープ、
137 FBG復号器、
210 光ファイバ、
210a 光ファイバコア、
211 ベース板、
212 ステージ系、
212a θ軸回転ステージ、
212b Y軸移動ステージ、
212c X軸移動ステージ、
213 ファイバホルダ、
214 微動ステージ、
215 位相マスクホルダ、
1,5,216 位相マスク、
217 直流電圧発生器、
220 紫外レーザ光、
220a 干渉光、
221 光学系、
221a レーザ光源、
221b レンズ、
221c ミラー、
231,232 ブラッグ回折格子、
233 位相シフト部、
251 合成回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、
前記光ファイバの光ファイバコア内に形成され、それぞれが前記光ファイバの長さ方向に周期的なブラッグ反射式の屈折率変調を持ち、かつ、前記長さ方向に並ぶ複数の単位回折格子部と、
前記光ファイバコア内に形成され、前記複数の単位回折格子部の内のいずれかの隣り合う2つの単位回折格子部の間に形成され、前記隣り合う2つの単位回折格子部の間に所定量の位相差を生じさせる位相シフト部と
を含む光導波路装置を製造するための、光導波路装置の製造方法であって、
位相マスク法により紫外レーザ光を前記長さ方向に走査して前記光ファイバコアに前記長さ方向に周期的な屈折率変調を持つ単位回折格子部を複数形成する工程と、
前記紫外レーザ光の走査工程と並行して、前記紫外レーザ光の照射位置が、前記複数の単位回折格子部の内のいずれかの隣り合う2つの単位回折格子部の間に到達したときに、前記位相マスク法で使用する位相マスクを前記長さ方向に所定距離だけ瞬時に移動させることによって、前記隣り合う2つの単位回折格子部の間に前記位相シフト部を形成する工程と、
前記紫外レーザ光の走査工程と並行して、前記位相マスクを前記長さ方向に振動させ、前記単位回折格子部ごとに前記振動の振幅を前記紫外レーザ光の照射位置に応じて連続的に増加又は減少させることによって、前記光ファイバコアに形成される屈折率変調の振幅を前記単位回折格子部ごとに連続的に増加又は減少させる工程と
を有することを特徴とする光導波路装置の製造方法。
【請求項2】
前記単位回折格子部ごとの前記屈折率変調の振幅の変化は、前記長さ方向及び前記光ファイバコアの屈折率を座標軸とした座標系に前記周期的な屈折率変調を描いたときの前記周期的な屈折率変調の包洛線を所定の窓関数にするような変化であることを特徴とする請求項1に記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項3】
前記所定の窓関数は、ガウシアン関数、レイズドコサイン関数、双曲正接関数、ブラックマン関数、ハミング関数、及びハニング関数のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項4】
前記位相マスクを前記長さ方向に瞬時に移動させるときの前記所定距離が、前記位相マスクの回折格子の周期の1/2よりも小さい値であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項5】
光ファイバと、
前記光ファイバの光ファイバコア内に形成され、それぞれが前記光ファイバの長さ方向に周期的なブラッグ反射式の屈折率変調を持ち、かつ、前記長さ方向に並ぶ複数の単位回折格子部と、
前記光ファイバコア内に形成され、前記複数の単位回折格子部の内のいずれかの隣り合う2つの単位回折格子部の間に形成され、前記隣り合う2つの単位回折格子部の間に所定量の位相差を生じさせる位相シフト部と
を含む光導波路装置を製造するための、光導波路装置の製造装置であって、
感光性の光ファイバを直線状にして保持する保持手段と、
位相マスクと、
前記位相マスクを通して、前記保持手段に保持された前記光ファイバの光ファイバコアに紫外レーザ光を照射する紫外レーザ光照射手段と、
前記紫外レーザ光の照射位置を前記長さ方向に移動させる走査手段と、
前記位相マスクを前記長さ方向に瞬時に移動させる微動手段と、
前記位相マスクを通して、前記紫外レーザ光を前記長さ方向に走査して前記光ファイバコアに前記長さ方向に周期的な屈折率変調を持つ単位回折格子部を複数形成させるように前記走査手段を制御し、
前記紫外レーザ光の前記走査と並行して、前記紫外レーザ光の照射位置が、前記複数の単位回折格子部の内のいずれかの隣り合う2つの単位回折格子部の間に到達したときに、前記位相マスクを前記長さ方向に所定距離だけ瞬時に移動させることによって、前記隣り合う2つの単位回折格子部の間に前記位相シフト部を形成させるように前記微動手段を制御し、
前記紫外レーザ光の前記走査と並行して、前記位相マスクを前記長さ方向に振動させ、前記単位回折格子部ごとに前記振動の振幅を前記紫外レーザ光の照射位置に応じて連続的に増加又は減少させることによって、前記光ファイバコアに形成される屈折率変調の振幅を前記単位回折格子部ごとに連続的に増加又は減少させるように前記微動手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする光導波路装置の製造装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記単位回折格子部ごとの前記屈折率変調の振幅の変化を、前記長さ方向及び前記光ファイバコアの屈折率を座標軸とした座標系に前記周期的な屈折率変調を描いたときの前記周期的な屈折率変調の包洛線を所定の窓関数にするように、前記微動手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の光導波路装置の製造装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記所定の窓関数は、ガウシアン関数、レイズドコサイン関数、双曲正接関数、ブラックマン関数、ハミング関数、及びハニング関数のいずれかにするように、前記微動手段を制御することを特徴とする請求項6に記載の光導波路装置の製造装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記位相マスクを前記長さ方向に瞬時に移動させるときの前記所定距離が、前記位相マスクの回折格子の周期の1/2よりも小さい値にするように、前記微動手段を制御することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の光導波路装置の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2009−15343(P2009−15343A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236445(P2008−236445)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【分割の表示】特願2004−215423(P2004−215423)の分割
【原出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】