説明

光干渉断層画像処理方法及びその装置

【課題】OCT計測により、有益な情報が得られる領域に限定して処理することで処理負担、処理時間をできるだけ低減するようにした光干渉断層画像処理方法及びその装置を提供する。
【解決手段】次の一連の手順により内壁部表面の凹凸度合いに関する情報を生成し表示する。OCT計測により得られた管腔の内壁部の断層画像を取得する(S10)。断層画像においてプローブの領域を検出する(S12)。断層画像において内壁部表面(管腔組織領域の表面)を検出する(S14)。ステップS12、S14により検出したプローブ領域と内壁部表面の位置からプローブが内壁部表面に接触している接触領域を検出する(S18)。内壁部表面のうちプローブの接触領域を除いた非接触領域に対して凹凸度合いや層の厚みの情報を生成するための処理を行い、その情報をモニタに表示する(S20)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光干渉断層画像処理方法及び装置に係り、特に、光コヒーレンストモグラフィ(OCT:Optical Coherence Tomography)に代表される断層計測法によって取得される断層画像から診断を支援するための情報を得ることが可能な画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光プローブを胆管や膵管、血管などの体腔内に挿入し、ラジアル走査をすることで、体腔内の断層画像を描出する画像診断が広く行われている。一例として先端に光学レンズ及び光学ミラーを取り付けた光ファイバを内蔵した光プローブを体腔内に挿入し、光ファイバの先端側に配置した光学ミラーをラジアル走査させながら、体腔内に光を出射し、組織からの反射光をもとに体腔内の断層画像を描出する光干渉断層診断装置(OCT: Optical Coherent Tomography)が利用されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
このようなOCTによる計測時(OCT計測時)において、光プローブ(プローブ外壁面)を測定部位に接触(密着)させることによって光プローブを安定的に固定し、その状態でラジアル走査等を行って断層画像を取得することが行われている。特許文献3、4によれば、OCT計測によって断層画像が取得された測定部位のうち、光プローブ(外壁面)が接触している領域(接触領域)の方が、光プローブが接触していない領域(非接触領域)よりも高分解能、高精度の断層画像が得られることを知見している。そして、このことに鑑み、ラジアル走査により得られる全周の断層画像から接触領域と非接触領域とを判別し、接触領域の断層画像を高い精度で処理し、非接触領域の断層画像を低い精度で処理すること(又は、処理しないこと)が提案されている。これによれば、接触領域の断層画像が重要と考える場合には、その接触領域の断層画像のみが高精度に処理されるため、処理負担の軽減、処理時間の短縮等が図れるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−072401号公報
【特許文献2】特開2011−072402号公報
【特許文献3】特開2009−074854号公報
【特許文献4】特表2009−072280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、胆管や膵管等の管腔の内壁部において、癌等の病変が生じた場合には、内壁部の表面(上皮)に乳頭状隆起が発生し、又は、ランダムに細胞(上皮細胞)が増殖し、内壁部表面に凹凸形状が観測されることが知られている。このような癌等による形態変化は、胆管、膵管に限らず、病変が生じていない正常時において内壁部表面が滑らかである臓器、例えば気管支、咽頭、食道、尿管等においても同様に生じることが知られている。
【0006】
したがって、OCT計測により得られた断層画像から内壁部表面の凹凸度合いを知ることによって癌等による病変部を見つけることが可能となる。特に、内壁部表面の凹凸度合いに関する情報を診断者に提供することができれば、診断に有益な情報を提供することもできる。
【0007】
一方、上述のように管腔の内壁部表面に光プローブを接触させた状態でOCT計測を行う場合がある。その場合、内壁部表面に病変による凹凸形状が生じていたとしても、光プローブが接触している接触領域では、内壁部表面が平滑化されて凹凸形状が失われている。したがって、内壁部表面の凹凸度合いに関する情報を得たい場合には、特許文献3、4とは逆に、内壁部表面のうち光プローブが接触している接触領域の断層画像の情報は有益ではなく、光プローブが接触していない非接触領域の断層画像の情報が重要となる。そのため、接触領域における凹凸度合いの情報を診断者に提供することは、その情報自体が余り有益ではない上に、断層画像から凹凸度合いの情報を取得し生成するには断層画像を解析処理する必要があることから、処理負担、処理時間を無駄に増大させるという不利益がある。
【0008】
また、管腔の内壁部は層構造を有し、例えば胆管や膵管では上皮層、繊維層、間隙層とうように3層構造を有している。このような場合に各層の厚み、特に内壁面側の最上層(上皮層)の厚みは癌等による病変が生じると通常よりも厚くなることが知られている。したがって、OCT計測により得られた断層画像から層の厚みに関する情報を取得し、その情報を診断者に提供することができれば診断に有益な情報を提供することができる。
【0009】
しかしながら、光プローブが接触している接触領域では光プローブの押圧により層の厚みが減ることから、凹凸度合いに関する情報と同様に、層の厚みに関しても正しい情報を取得することができない。
【0010】
そのため、凹凸度合いに関する情報と同様に接触領域における層の厚みに関する情報を提供することは、余り有益ではなく、処理負担、処理時間を無駄に増大させてしまう可能性がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、OCT計測により得られた胆管、膵管などの管腔の内壁部の断層画像を解析処理して内壁部表面(管腔内壁面)の凹凸度合いや内壁部の層の厚み等の情報を生成し表示する場合に、有益な情報が得られる領域に限定して処理することで処理負担、処理時間をできるだけ低減するようにした光干渉断層画像処理方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の光干渉断層画像処理装置は、光干渉断層計測により管腔内の光断層画像を取得する取得手段と、前記光断層画像において前記光干渉断層計測を行うために前記管腔内に挿入された光プローブの外壁面の位置を検出するプローブ外壁面検出手段と、前記光断層画像において前記管腔の内壁面の位置を検出する管腔内壁面検出手段と、前記管腔内壁面検出手段により検出された前記管腔の内壁面の位置と、前記プローブ外壁面検出手段により検出された前記光プローブの外壁面の位置とに基づいて、前記管腔の内壁面のうち、前記光プローブが接触している接触領域と、前記光プローブが接触してない非接触領域とを判別する接触領域/非接触領域判別手段と、前記取得手段により取得された光断層画像に基づいてユーザに提供する情報の生成処理を行う情報生成手段であって、前記管腔の内壁面のうち、前記接触領域/非接触領域判別手段により判別された前記非接触領域に対してのみ前記生成処理を行い、前記接触領域/非接触領域判別手段により判別された前記接触領域に対しては前記生成処理を行わない情報生成手段と、前記情報生成手段により生成された情報を表示する表示手段と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、断層画像においてユーザに提供する有益な情報が得られない領域として光プローブが管腔内壁面に接触している領域(接触領域)が検出される。一方、有益な情報が得られる領域として光プローブが管腔内壁面に接触していない領域(非接触領域)が検出される。そして、ユーザに提供する情報を生成するための処理が非接触領域に対してのみ行われる。したがって、有益な情報が得られない接触領域に対しては情報を生成するための処理が行われず、不要な処理負担、処理時間が低減される。
【0014】
本発明では、前記情報生成手段は、前記管腔内壁面検出手段により検出された前記管腔の内壁面の位置に基づき、前記管腔の内壁面の凹凸度合いに関する情報の生成処理を行うことが望ましい。即ち、接触領域では内壁面の凹凸形状が失われている可能性があるため凹凸度合いに関する有益な情報が得られない。したがって、非接触領域に対してのみ凹凸度合いに関する情報の生成処理を行うことによって不要な処理負担、処理時間が低減されることになる。
【0015】
また、前記情報生成手段は、前記凹凸度合いに関する情報として前記凹凸度合いを示す評価値を算出する処理を行うものとすることができる。本形態は、凹凸度合いに関する情報として凹凸度合いを数値として示す態様を示す。
【0016】
また、前記情報生成手段は、前記光断層画像において前記管腔の内壁面を示すラインを平均化した平滑化ラインを求める処理を含むものとすることができる。凹凸度合いの情報を生成する際に、管腔内壁面の概形状として平滑化ラインを算出する必要が生じる場合が考えられ、その演算処理には、大きな処理負担、処理時間を要する。そのため、その演算処理を凹凸度合いに関して有益な情報が得られる非接触領域のみに限定して行うことによって、処理負担、処理時間を大幅に軽減することができる。
【0017】
本発明では、前記情報生成手段は、前記管腔の層構造を有する内壁部の所定の層の厚みに関する情報の生成処理を行うことが望ましい。即ち、接触領域では層の厚みが本来よりも小さくなっている可能性があるため層の厚みに関する有益な情報が得られない。したがって、非接触領域に対してのみ層の厚みに関する情報の生成処理を行うことによって不要な処理負担、処理時間が低減されることになる。
【0018】
また、前記情報生成手段は、前記光断層画像において前記層の境界を検出する処理を含む態様が考えられる。この場合、層の境界を検出するための演算処理には大きな処理負担、処理時間を要する。したがって、その演算処理を層の厚みに関して有益な情報が得られる非接触領域のみに限定して行うことによって、処理負担、処理時間を大幅に軽減することができる。
【0019】
また、前記管腔は、胆管、膵管、気管支、咽頭、食道、又は尿管であるものとすることができる。本発明が有効な管腔の具体的臓器、器官を示したものであり、いずれも正常時には管腔内壁面が滑らかであり、癌などの病変が生じると管腔内壁面に凹凸形状が観測される部位である。また、いずれも正常時には略決まった厚みの上皮層を有しており、癌などの病変が生じると上皮層が肥厚する等の層の厚みに変化が生じる部位である。
【0020】
本発明の光干渉断層画像処理方法は、光干渉断層計測により管腔内の光断層画像を取得する取得工程と、前記光断層画像において前記光干渉断層計測を行うために前記管腔内に挿入された光プローブの外壁面の位置を検出するプローブ外壁面検出工程と、前記光断層画像において前記管腔の内壁面の位置を検出する管腔内壁面検出工程と、前記管腔内壁面検出工程により検出された前記管腔の内壁面の位置と、前記プローブ外壁面検出工程により検出された前記光プローブの外壁面の位置とに基づいて、前記管腔の内壁面のうち、前記光プローブが接触している接触領域と、前記光プローブが接触してない非接触領域とを判別する接触領域/非接触領域判別工程と、前記取得工程により取得された光断層画像に基づいてユーザに提供する情報の生成処理を行う情報生成工程であって、前記管腔の内壁面のうち、前記接触領域/非接触領域判別工程により判別された前記非接触領域に対してのみ前記生成処理を行い、前記接触領域/非接触領域判別工程により判別された前記接触領域に対しては前記生成処理を行わない情報生成工程と、前記情報生成工程により生成された情報を表示する表示工程と、を備えたことを特徴としている。
【0021】
本発明によれば、断層画像においてユーザに提供する有益な情報が得られない領域として光プローブが管腔内壁面に接触している領域(接触領域)が検出される。一方、有益な情報が得られる領域として光プローブが管腔内壁面に接触していない領域(非接触領域)が検出される。そして、ユーザに提供する情報を生成するための処理が非接触領域に対してのみ行われる。したがって、有益な情報が得られない接触領域に対しては情報を生成するための処理が行われず、不要な処理負担、処理時間が低減される。
【0022】
本発明では、前記情報生成工程は、前記管腔内壁面検出工程により検出された前記管腔の内壁面の位置に基づき、前記管腔の内壁面の凹凸の度合いに関する情報の生成処理を行うことが望ましい。即ち、接触領域では内壁面の凹凸形状が失われている可能性があるため凹凸度合いに関する有益な情報が得られない。したがって、非接触領域に対してのみ凹凸度合いに関する情報の生成処理を行うことによって不要な処理負担、処理時間が低減されることになる。
【0023】
また、前記情報生成工程は、前記凹凸度合いに関する情報として前記凹凸度合いを示す評価値を算出する処理を行うものとすることができる。本形態は、凹凸度合いに関する情報として凹凸度合いを数値として示す態様を示す。
【0024】
また、前記情報生成工程は、前記光断層画像において前記管腔の内壁面を示すラインを平均化した平滑化ラインを求める処理を含むものとすることができる。凹凸度合いの情報を生成する際に、管腔内壁面の概形状として平滑化ラインを算出する必要が生じる場合が考えられ、その演算処理には、大きな処理負担、処理時間を要する。そのため、その演算処理を凹凸度合いに関して有益な情報が非接触領域のみに限定して行うことによって、処理負担、処理時間を大幅に軽減することができる。
【0025】
本発明では、前記情報生成工程は、前記管腔の層構造を有する内壁部の所定の層の厚みに関する情報の生成処理を行うことが望ましい。即ち、接触領域では層の厚みが本来よりも小さくなっている可能性があるため層の厚みに関する有益な情報が得られない。したがって、非接触領域に対してのみ層の厚みに関する情報の生成処理を行うことによって不要な処理負担、処理時間が低減されることになる。
【0026】
また、前記情報生成工程は、前記光断層画像において前記層の境界を検出する処理を含む態様が考えられる。この場合、層の境界を検出するための演算処理には大きな処理負担、処理時間を要する。したがって、その演算処理を層の厚みに関して有益な情報が得られる非接触領域のみに限定して行うことによって、処理負担、処理時間を大幅に軽減することができる。
【0027】
また、前記管腔は、胆管、膵管、気管支、咽頭、食道、又は尿管であるものとすることができる。本発明が有効な管腔の具体的臓器、器官を示したものであり、いずれも正常時には管腔内壁面が滑らかであり、癌などの病変が生じると管腔内壁面に凹凸形状が観測される部位である。また、いずれも正常時には略決まった厚みの上皮層を有しており、癌などの病変が生じると上皮層が肥厚する等の層の厚みに変化が生じる部位である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、OCT計測により得られた胆管、膵管などの管腔の内壁部の断層画像を解析処理して内壁部表面の凹凸度合いや内壁部の層の厚み等の情報を生成し表示する場合に有益な情報が得られる光プローブの非接触領域に限定して処理を行うことで処理負担、処理時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る断層画像処理装置を適用した画像診断装置の外観図
【図2】図1のOCTプロセッサの内部構成を示すブロック図
【図3】図2のOCTプローブの断面図
【図4】測定対象に対して光走査がラジアル走査の場合の断層画像のスキャン面を示す図
【図5】図4の断層画像により構築される3次元ボリュームデータを示す図
【図6】図1の内視鏡の鉗子口から導出されたOCTプローブを用いて断層画像を得る様子を示す図
【図7】図2の信号処理部の構成を示すブロック図
【図8】胆管等の管腔に挿入されたOCTプローブにより測定が行われるときの様子を簡略的に示した概略図
【図9】図7の断層画像解析部で行われる処理の流れを示したフローチャート
【図10】図8の測定により得られる断層画像データから生成される断層画像(元画像)の一例を示した図
【図11】図10の断層画像からOCTプローブの内壁面(最小コストパス)が検出された様子を示した図
【図12】図10の断層画像からOCTプローブの外壁面(プローブ表面ライン)が検出された様子を示した図
【図13】図10の断層画像から管腔組織領域を検出する際にヒステリシス2値化処理が行われた後の様子を示した図
【図14】図10の断層画像から管腔組織領域を検出する際に2値化画像が得られたときの様子を示した図
【図15】図10の断層画像のうち管腔の内壁部表面(管腔内壁面)を検出する際の処理手順の説明に使用したOCTプローブと管腔組織領域のみの断層画像を示した図
【図16】図15の断層画像から管腔組織領域の輪郭線を抽出した後の様子を示した図
【図17】図16の管腔組織領域の輪郭線から表面側の輪郭線(内壁部表面ライン)を抽出した後の様子を示した図
【図18】図17の内壁部表面ラインのうち、OCTプローブが接触していない非接触領域のラインを抽出した後の様子を示した図
【図19】管腔の内壁部表面(内壁部表面ライン)の平滑化ラインを求めるためのオープニング処理を施している様子を示した図
【図20】管腔の内壁部表面の平滑化ラインを示した図
【図21】管腔の内壁部の層境界ラインを示した図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0031】
図1は本発明の実施形態に係る光干渉断層画像処理装置を適用した画像診断装置の外観図である。図1に示すように、画像診断装置10は、主として内視鏡100、内視鏡プロセッサ200、光源装置300、断層画像処理装置としてのOCTプロセッサ400、及びモニタ装置500とから構成されている。なお、内視鏡プロセッサ200は、光源装置300を内蔵するように構成されていてもよい。
【0032】
内視鏡100は、手元操作部112と、この手元操作部112に連設される挿入部114とを備える。術者は手元操作部112を把持して操作し、挿入部114を被検者の体内に挿入することによって観察を行う。
【0033】
手元操作部112には、鉗子挿入部138が設けられており、この鉗子挿入部138が先端部144の鉗子口156に連通されている。本実施形態では、OCTプローブ600を鉗子挿入部138から挿入することによって、OCTプローブ600を鉗子口156から導出する。OCTプローブ600は、鉗子挿入部138から挿入され、鉗子口156から導出される挿入部602と、術者がOCTプローブ600を操作するための操作部604、及びコネクタ610を介してOCTプロセッサ400と接続されるケーブル606から構成されている。
【0034】
内視鏡100の先端部144には、観察光学系150、照明光学系152、及びCCD(不図示)が配設されている。
【0035】
観察光学系150は、被検体を図示しないCCDの受光面に結像させ、CCDは受光面上に結像された被検体像を各受光素子によって電気信号に変換する。本実施形態のCCDは、3原色の赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタが所定の配列(ベイヤー配列、ハニカム配列)で各画素ごとに配設されたカラーCCDである。なお、符号154は、観察光学系150に向けて洗浄液や加圧エアを供給するための洗浄ノズルである。
【0036】
光源装置300は、可視光を図示しないライトガイドに入射させる。ライトガイドの一端はLGコネクタ120を介して光源装置300に接続され、ライトガイドの他端は照明光学系152に対面している。光源装置300から発せられた光は、ライトガイドを経由して照明光学系152から出射され、観察光学系150の視野範囲を照明する。
【0037】
内視鏡プロセッサ200には、CCDから出力される画像信号が電気コネクタ110を介して入力される。このアナログの画像信号は、内視鏡プロセッサ200内においてデジタルの画像信号に変換され、モニタ装置500の画面に表示するための必要な処理が施される。
【0038】
このように、内視鏡100で得られた観察画像のデータが内視鏡プロセッサ200に出力され、内視鏡プロセッサ200に接続されたモニタ装置500に画像が表示される。
【0039】
図2は図1のOCTプロセッサの内部構成を示すブロック図である。図2に示すOCTプロセッサ400及びOCTプローブ600は、光干渉断層(OCT:Optical Coherence Tomography)計測法による測定対象の断層情報(断層画像)を取得するためのものである。
【0040】
OCTプロセッサ400は、測定のための光Laを射出する第1の光源部(第1の光源ユニット)12と、第1の光源部12から射出された光Laを測定光(第1の光束)L1と参照光L2に分岐するとともに、被検体である測定対象Sからの戻り光L3と参照光L2を合波して干渉光L4を生成する光ファイバカプラ(分岐合波部)14と、光ファイバカプラ14で分岐された測定光L1をOCTプローブ600の光コネクタ18に導くとともに、OCTプローブ600内の回転側光ファイバFB1によって導波された戻り光L3を導波する固定側光ファイバFB2と、光ファイバカプラ14で生成された干渉光L4を干渉信号として検出する干渉光検出部20と、この干渉光検出部20によって検出された干渉信号を処理して断層情報(断層画像)を取得する信号処理部22を有する。信号処理部22で取得された断層情報は画像化されてモニタ装置500に表示される。
【0041】
また、OCTプロセッサ400は、測定の目印を示すためのエイミング光(第2の光束)Leを射出する第2の光源部(第2の光源ユニット)13と、参照光L2の光路長を調整する光路長調整部26と、第1の光源部12から射出された光Laを分光する光ファイバカプラ28と、光ファイバカプラ14で合波された戻り光(干渉光)L4及びL5を検出する検出部30a及び30bと、信号処理部22への各種条件の入力、設定の変更等を行う操作制御部32とを有する。
【0042】
OCTプロセッサ400に接続されるOCTプローブ600は、固定側光ファイバFB2を介して導波された測定光L1を測定対象Sまで導波するとともに測定対象Sからの戻り光L3を導波する回転側光ファイバFB1と、この回転側光ファイバFB1を固定側光ファイバFB2に対して回転可能に接続し、測定光L1及び戻り光L3を伝送する光コネクタ18と、を備える。
【0043】
なお、図2に示したOCTプロセッサ400及びOCTプローブ600においては、上述した射出光La、エイミング光Le、測定光L1、参照光L2及び戻り光L3などを含む種々の光を各光デバイスなどの構成要素間で導波し、伝送するための光の経路として、回転側光ファイバFB1及び固定側光ファイバFB2を含め種々の光ファイバFB(FB3、FB4、FB5、FB6、FB7、FB8など)が用いられている。
【0044】
第1の光源部12は、OCTの測定のための光(例えば、赤外領域の波長可変レーザ光、あるいは低コヒーレンス光)を射出するものである。本例の第1の光源部12は、赤外の波長域で光周波数(波長)を一定の周期で掃引させながらレーザ光La(例えば、波長1.3μmを中心とするレーザ光)を射出する波長可変光源である。
【0045】
この第1の光源部12は、レーザ光あるいは低コヒーレンス光Laを射出する光源12aと、光源12aから射出された光Laを集光するレンズ12bとを備えている。また、詳しくは後述するが、第1の光源部12から射出された光Laは、光ファイバFB4、FB3を介して光ファイバカプラ14で測定光L1と参照光L2に分割され、測定光L1は光コネクタ18に入力される。
【0046】
また、第2の光源部13は、エイミング光Leとして測定部位を確認しやすくするために可視光を射出するものである。例えば、波長660nmの赤半導体レーザ光、波長630nmのHe−Neレーザ光、波長405nmの青半導体レーザ光などを用いることができる。本実施形態における第2の光源部13としては、例えば赤色あるいは青色あるいは緑色のレーザ光を射出する半導体レーザ13aと、半導体レーザ13aから射出されたエイミング光Leを集光するレンズ13bを備えている。第2の光源部13から射出されたエイミング光Leは、光ファイバFB8を介して光コネクタ18に入力される。
【0047】
光コネクタ18では、測定光(第1の光束)L1とエイミング光(第2の光束)Leとが合波され、OCTプローブ600内の回転側光ファイバFB1に導波される。
【0048】
光ファイバカプラ(分岐合波部)14は、例えば2×2の光ファイバカプラで構成されており、固定側光ファイバFB2、光ファイバFB3、光ファイバFB5、光ファイバFB7とそれぞれ光学的に接続されている。
【0049】
光ファイバカプラ14は、第1の光源部12から光ファイバFB4及びFB3を介して入射した光Laを測定光(第1の光束)L1と参照光L2とに分割し、測定光L1を固定側光ファイバFB2に入射させ、参照光L2を光ファイバFB5に入射させる。
【0050】
さらに、光ファイバカプラ14は、光ファイバFB5に入射され後述する光路長調整部26によって周波数シフト及び光路長の変更が施されて光ファイバFB5を戻った参照光L2と、後述するOCTプローブ600で取得され固定側光ファイバFB2から導波された光L3とを合波し、光ファイバFB3(FB6)及び光ファイバFB7に射出する。
【0051】
OCTプローブ600は、光コネクタ18を介して、固定側光ファイバFB2と接続されており、固定側光ファイバFB2から、光コネクタ18を介して、エイミング光Leと合波された測定光L1が回転側光ファイバFB1に入射される。入射されたこのエイミング光Leと合波された測定光L1を回転側光ファイバFB1によって伝送して測定対象Sに照射する。そして測定対象Sからの戻り光L3を取得し、取得した戻り光L3を回転側光ファイバFB1によって伝送して、光コネクタ18を介して、固定側光ファイバFB2に射出するようになっている。
【0052】
干渉光検出部20は、光ファイバFB6及び光ファイバFB7と接続されており、光ファイバカプラ14で参照光L2と戻り光L3とを合波して生成された干渉光L4及びL5を干渉信号として検出するものである。
【0053】
光ファイバカプラ28から分岐させた光ファイバFB6の光路上には、干渉光L4の光強度を検出する検出器30aが設けられ、光ファイバFB7の光路上には干渉光L5の光強度を検出する検出器30bが設けられている。干渉光検出部20は、検出器30a及び検出器30bの検出結果に基づいて、干渉信号を生成する。
【0054】
信号処理部22は、干渉光検出部20で検出した干渉信号から断層情報を取得し、取得した断層情報を画像化した断層画像をモニタ装置500へ出力する。なお、本実施形態では、断層画像を解析処理し、管腔の内壁部表面(管腔内壁面)の凹凸度合いや、内壁部の層(上皮層、繊維層、間隙層とうような層構造を有する部位の各層、又は特定の層)の厚み等に関する情報を生成しモニタ装置500に表示するようになっている。信号処理部22については後で詳述する。
【0055】
参照光L2の光路長を可変するための光路長調整部26は、光ファイバFB5の参照光L2の射出側(すなわち、光ファイバFB5の光ファイバカプラ14とは反対側の端部)に配置されている。
【0056】
光路長調整部26は、光ファイバFB5から射出された光を平行光にする第1光学レンズ80と、第1光学レンズ80で平行光にされた光を集光する第2光学レンズ82と、第2光学レンズ82で集光された光を反射する反射ミラー84と、第2光学レンズ82及び反射ミラー84を支持する基台86と、基台86を光軸方向に平行な方向に移動させるミラー移動機構88とを有する。第1光学レンズ80と第2光学レンズ82との距離を変化させることにより参照光L2の光路長が調整される。
【0057】
第1光学レンズ80は、光ファイバFB5のコアから射出された参照光L2を平行光にするとともに、反射ミラー84で反射された参照光L2を光ファイバFB5のコアに集光する。
【0058】
また、第2光学レンズ82は、第1光学レンズ80により平行光にされた参照光L2を反射ミラー84上に集光するとともに、反射ミラー84により反射された参照光L2を平行光にする。このように、第1光学レンズ80と第2光学レンズ82とにより共焦点光学系が形成されている。
【0059】
さらに、反射ミラー84は、第2光学レンズ82で集光される光の焦点に配置されており、第2光学レンズ82で集光された参照光L2を反射する。
【0060】
これにより、光ファイバFB5から射出した参照光L2は、第1光学レンズ80により平行光になり、第2光学レンズ82により反射ミラー84上に集光される。その後、反射ミラー84により反射された参照光L2は、第2光学レンズ82により平行光になり、第1光学レンズ80により光ファイバFB5のコアに集光される。
【0061】
また、基台86は、第2光学レンズ82と反射ミラー84とを固定し、ミラー移動機構88は、基台86を第1光学レンズ80の光軸方向(図2矢印A方向)に移動させる。
【0062】
ミラー移動機構88で、基台86を矢印A方向に移動させることで、第1光学レンズ80と第2光学レンズ82との距離を変更することができ、参照光L2の光路長を調整することができる。
【0063】
操作制御部32は、キーボード、マウス等の入力手段と、入力された情報に基づいて各種条件を管理する制御手段とを有し、信号処理部22に接続されている。操作制御部32は、入力手段から入力されたオペレータの指示に基づいて、信号処理部22における各種処理条件等の入力、設定、変更等を行う。
【0064】
なお、操作制御部32は、操作画面をモニタ装置500に表示させてもよいし、別途表示部を設けて操作画面を表示させてもよい。また、操作制御部32で、第1の光源部12、第2の光源部13、光コネクタ18、干渉光検出部20、光路長ならびに検出部30a及び30bの動作制御や各種条件の設定を行うようにしてもよい。
【0065】
図3はOCTプローブ600の断面図である。図3に示すように、挿入部602の先端部は、プローブ外筒(シース)620と、キャップ622と、回転側光ファイバFB1と、バネ624と、固定部材626と、光学レンズ628とを有している。
【0066】
プローブ外筒620は、可撓性を有する筒状の部材であり、光コネクタ18においてエイミング光Leが合波された測定光L1及び戻り光L3が透過する材料からなっている。なお、プローブ外筒620は、測定光L1(エイミング光Le)及び戻り光L3が通過する先端(光コネクタ18と反対側の回転側光ファイバFB1の先端、以下プローブ外筒620の先端と言う)側の一部が全周に渡って光を透過する材料(透明な材料)で形成されていればよく、先端以外の部分については光を透過しない材料で形成されていてもよい。
【0067】
キャップ622は、プローブ外筒620の先端に設けられ、プローブ外筒620の先端を閉塞している。
【0068】
また、キャップ622には、ガイドワイヤを挿通するためのガイドワイヤ用孔623が形成されており、ガイドワイヤ用孔623は、キャップ622の側面に一方の開口623Aを有し、前面に他方の開口623Bを有している。ガイドワイヤは、事前に測定部位に配置されてOCTプローブ600をその位置に案内するためのものであり、測定位置に配置したガイドワイヤをこのガイドワイヤ用孔623に挿通させ、OCTプローブ600を先方に進行させることによって、OCTプローブ600をガイドワイヤに案内させて測定部位まで移動させることができる。このようにガイドワイヤを使用してOCTプローブ600を案内することによって、OCTプローブ600を直接進入させることが難しい胆管や膵管等の管腔へのOCTプローブ600の配置を容易に行うことができる。
【0069】
回転側光ファイバFB1は、線状部材であり、プローブ外筒620内にプローブ外筒620に沿って収容されている。回転側光ファイバFB1は、光コネクタ18で合波された測定光L1とエイミング光Leとを光学レンズ628まで導波するとともに、測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに照射して光学レンズ628で取得した測定対象Sからの戻り光L3を光コネクタ18まで導波する。この戻り光L3は、光コネクタ18を介して固定側光ファイバFB2に入射する。回転側光ファイバFB1は、プローブ外筒620に対して回転自在、及びプローブ外筒620の軸方向に移動自在な状態で配置されている。
【0070】
バネ624は、回転側光ファイバFB1の外周に固定されている。回転側光ファイバFB1及びバネ624は、回転筒656とともに光コネクタ18に接続されている。
【0071】
光学レンズ628は、回転側光ファイバFB1の測定側先端(光コネクタ18と反対側の回転側光ファイバFB1の先端)に配置されている。光学レンズ628の先端部(光出射面)は、回転側光ファイバFB1から射出された測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに対し集光するために略球状の形状で形成されている。
【0072】
光学レンズ628は、回転側光ファイバFB1から射出した測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに対し照射し、測定対象Sからの戻り光L3を集光し回転側光ファイバFB1に入射する。
【0073】
固定部材626は、回転側光ファイバFB1と光学レンズ628との接続部の外周に配置されており、光学レンズ628を回転側光ファイバFB1の端部に固定する。固定部材626による回転側光ファイバFB1と光学レンズ628の固定方法は、特に限定されず、接着剤により、固定部材626と回転側光ファイバFB1及び光学レンズ628を接着させて固定してもよいし、ボルト等を用い機械的構造で固定してもよい。なお、固定部材626は、ジルコニアフェルールやメタルフェルールなど光ファイバの固定や保持あるいは保護のために用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
【0074】
回転側光ファイバFB1及びバネ624は、回転筒656に接続されており、回転筒656によって回転側光ファイバFB1及びバネ624を回転させることで、光学レンズ628をプローブ外筒620に対し、矢印R2方向(回転側光ファイバFB1の光軸を回転中心とする回転方向)に回転させる。また、光コネクタ18は、回転エンコーダを備える。回転エンコーダからの信号に基づいて光学レンズ628の位置情報(角度情報)から測定光L1の照射位置が検出される。つまり、回転している光学レンズ628の回転方向における基準位置に対する角度を検出して、測定位置を検出する。
【0075】
さらに、回転側光ファイバFB1、バネ624、固定部材626、及び光学レンズ628は、モータ660を含む駆動機構により、プローブ外筒620内部を矢印S1方向(鉗子口方向)、及びS2方向(プローブ外筒620の先端方向)に移動可能に構成されている。
【0076】
図3の左側には、OCTプローブ600の操作部604における回転側光ファイバFB1等の駆動機構の概略構成が示されている。
【0077】
プローブ外筒620は、固定部材670に固定されているのに対し、回転側光ファイバFB1及びバネ624の基端部は、回転筒656に接続されている。回転筒656は、モータ652の回転に応じてギア654を介して回転するように構成されている。回転筒656は、光コネクタ18に接続されており、測定光L1及び戻り光L3は、光コネクタ18を介して回転側光ファイバFB1と固定側光ファイバFB2間を伝送される。
【0078】
回転筒656、モータ652、ギア654、及び光コネクタ18を内蔵するフレーム650は、支持部材662を備えている。支持部材662は、図示しないネジ孔を有しており、該ネジ孔には進退移動用ボールネジ664が咬合している。進退移動用ボールネジ664には、モータ660が接続されている。モータ660を回転駆動することによりフレーム650を進退移動させ、これにより回転側光ファイバFB1、バネ624、固定部材626、及び光学レンズ628を図3のS1及びS2方向(プローブ外筒620の長手方向に沿った軸方向、すなわち、回転側光ファイバFB1の光軸に沿った方向)に移動させることが可能となっている。
【0079】
OCTプローブ600は、以上のような構成であり、モータ660の駆動によって回転側光ファイバFB1及びバネ624が、図3中矢印R2方向に回転されることで、光学レンズ628から射出される測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに対し、矢印R2方向(プローブ外筒620の円周方向)に対し走査しながら照射し、戻り光L3を取得する。エイミング光Leは、測定対象Sに対し、例えば青色、赤色あるいは緑色のスポット光として照射される。このエイミング光Leの反射光(測定対象Sからの反射光)は、モニタ装置500に表示された観察画像に輝点としても表示される。
【0080】
このような回転方向に沿った光走査により、プローブ外筒620の円周方向の全周において、測定対象Sの所望の部位を正確にとらえることができ、測定対象Sを反射した戻り光L3を取得することができる。
【0081】
さらに、3次元ボリュームデータを生成するための立体的な領域の断層情報を取得する場合は、モータ66を含む駆動機構により回転側光ファイバFB1及び光学レンズ628が矢印S1方向の移動可能範囲の終端まで移動され、断層情報を取得しながら所定量ずつS2方向に移動し、又は断層情報の取得とS2方向への所定量移動を交互に繰り返しながら、移動可能範囲の終端まで移動する。
【0082】
このように測定対象Sに対して所望の範囲の断層情報を取得することによって3次元ボリュームデータを得ることができる。
【0083】
図4は、測定対象Sに対して光走査がラジアル走査の場合の断層情報のスキャン面を示す図であり、図5は図4の断層情報により構築される3次元ボリュームデータを示す図である。干渉信号により測定対象Sの深さ方向(Z方向)の断層情報を取得し、測定対象Sに対し図3矢印R2方向(プローブ外筒620の円周方向)に走査(ラジアル走査)することで、図4に示すように、Z方向とZ方向と直交するX方向とからなるスキャン面での断層情報を取得することができる。またさらに、このスキャン面に直交するY方向に沿ってスキャン面を移動させることで、図5に示すように、3次元ボリュームデータを生成するための立体的な領域の断層情報が取得できる。
【0084】
図6は内視鏡100の鉗子口156から導出されたOCTプローブ600を用いて断層情報を得る様子を示す図である。図6に示すように、OCTプローブ600の挿入部602の先端部を、測定対象Sの所望の部位に近づけて、断層情報を得る。所望の立体的な領域の断層情報を取得する場合は、必ずしもOCTプローブ600本体を移動させる必要はなく、前述の駆動機構によりプローブ外筒620内で光学レンズ628を移動させればよい。
【0085】
本実施形態の画像診断装置10は、OCTプロセッサ400の信号処理部22において行われる断層画像の解析処理に特徴を有するものである。以下、信号処理部22の構成について説明する。
【0086】
図7は図2の信号処理部22の構成を示すブロック図である。図7に示すように、信号処理部22は、主として、フーリエ変換部410、対数変換部420、断層画像構築部450、断層画像解析部460、及び制御部490を備えて構成される。
【0087】
制御部490は、信号処理部22の各部の動作を制御するためのものである。また、操作制御部32の操作に従って各種処理が実施されるように、各部に対して制御信号が出力される。また、後述する断層画像解析部460で行われる解析処理の各種条件を設定する。
【0088】
フーリエ変換部410には、干渉光検出部20から出力された干渉信号が入力される。フーリエ変換部410は、入力された干渉信号に対してFFT(高速フーリエ変換)を行う機能を有する。フーリエ変換部410では、干渉信号にFFTを行うことにより、測定対象Sの各深さ位置における反射光(戻り光)L3の強度、すなわち深度方向の反射強度データが生成され出力される。
【0089】
対数変換部420には、フーリエ変換部410から出力された反射強度データが入力される。対数変換部420は、反射強度データのダイナミックレンジを広げるために対数変換を行う機能を有する。対数変換部420からは、対数変換された反射強度データが出力される。
【0090】
断層画像構築部450には、対数変換部420から出力された反射強度データが入力される。断層画像構築部450は、反射強度データを断層画像として視覚化するための画像処理機能を有し、例えば、輝度、コントラスト調整、表示サイズにあわせたリサンプル、ラジアル走査等の走査方法に合わせての座標変換などを行う。断層画像構築部450では、断層画像を示す断層画像データが生成され、この断層画像データは断層画像解析部460又はモニタ装置500に出力される。
【0091】
断層画像解析部460は、断層画像構築部450から出力された断層画像データが入力される。断層画像解析部460は、断層画像データに基づき、管腔の内壁部表面の凹凸度合いに関する情報を生成しモニタ装置500に出力する機能を有する。
【0092】
次に、上記の如く構成された信号処理部22の作用について説明する。
【0093】
まず、胆管や膵管などの細径の管腔内にOCTプローブ600を挿入する場合、前もってガイドワイヤを管腔内に留置しておく。ガイドワイヤを留置する方法については周知であるため、ここでは説明を省略する。そして、図3に示したOCTプローブ600のガイドワイヤ用孔54にガイドワイヤ210を基端側から通して、ガイドワイヤ210に沿ってOCTプローブ600を管腔内に挿入し、観察したい部位に配置する。
【0094】
次に、OCTプローブ600の先端を管腔内の内壁面に接触(密着)させた状態で、OCTプローブ600の先端に配置される光学レンズ628から測定対象に測定光L1(エイミング光Le)を出射することにより測定が行われる。
【0095】
図8は、胆管等の管腔800内にOCTプローブ600が挿入されたときの様子を示した断面図(OCTプローブ600の軸方向に垂直な方向の断面図)である。図8中、符号700はガイドワイヤ、符号704は胆泥をそれぞれ表している。なお、図8では、OCTプローブ600のプローブ外筒620内に収容されている内蔵物(光学レンズ628や光ファイバなど)の図示は省略している。
【0096】
OCTプローブ600による測定が開始されると、図7に示した干渉光検出部20には、OCTプローブ600から測定対象Sに測定光L1を照射したときに得られる反射光L3と参照光L2とが合波したときの干渉光が干渉光検出部20に入力される。なお、参照光L2は、上述したように、第1の光源部12から射出された光を分割して得られるものである。
【0097】
図7に示すように、干渉光検出部20では、干渉信号生成部20aで干渉光(光信号)を干渉信号(電気信号)に変換する処理が施され、さらにAD変換部20bで干渉信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する処理が行われる。なお、AD変換部20bでは、例えば、80MHz程度のサンプリングレートで14bit程度の分解能でアナログ信号からデジタル信号への変換が実施されるが、これらの値に特に限定されるものではない。AD変換部20bでデジタル信号に変換された干渉信号は、信号処理部22に出力される。
【0098】
信号処理部22に入力された干渉信号は、フーリエ変換部410でFFT(高速フーリエ変換)により周波数解析が行われる。これにより、測定対象Sの各深さ位置における反射光(戻り光)L3の強度、すなわち深度方向の反射強度データが生成される。この反射強度データは、対数変換部420にて対数変換が行われ、断層画像構築部450に出力される。
【0099】
断層画像構築部450では、入力された反射強度データに対して輝度、コントラスト調整、表示サイズにあわせたリサンプル、ラジアル走査等の走査方法に合わせての座標変換などの画像処理が行われ、断層画像を示すデータとして断層画像データが生成される。この断層画像データは断層画像解析部460又はモニタ装置500に出力される。
【0100】
断層画像解析部460では、断層画像データに基づき、断層画像の中から管腔800の内壁部(管腔組織)802の表面(内壁部表面)804を抽出し(図8参照)、内壁部表面804の凹凸度合いや内壁部802の層の厚みに関する情報を生成する。このとき、内壁部表面804のうち、OCTプローブ600(プローブ外筒620の外壁面)が接触している領域(接触領域)は、OCTプローブ600の接触によって、本来の凹凸形状が失われており、また、本来の層の厚みとも相違しているため、接触領域でのそれらの情報は有益ではない。そこで、処理負担、処理時間の軽減のためOCTプローブ600の接触領域を除く非接触領域のみに対して凹凸度合いや層の厚みの情報を生成するための処理が行われる。このようにして生成された情報は、モニタ装置500に出力される。これにより、モニタ装置500には、内壁部表面804の凹凸度合いの情報が表示され、診断者による癌などの病変の診断を支援することがきる。
【0101】
ここで、信号処理部22において行われる断層画像の補正処理について説明する。図9は図7の断層画像解析部460で行われる処理の流れを示したフローチャート図である。以下、図9に示した各処理について詳述する。
【0102】
まず、断層画像構築部450から断層画像の画像データを取得する(ステップS10)。このとき取得される画像データから生成される断層画像の一例を図10に示す。図10に示した断層画像は2次元の極座標系で示されており、横軸はOCTプローブ600の長軸周りの円周方向の位置(回転角)θを示し、縦軸はOCTプローブ600の光出射端から出射される測定光L1の出射方向(測定光L1の光軸方向であって、測定対象Sの深さ方向とする方向)の深さ位置rを示しており、縦軸下向きが測定光L1の出射方向となっている。
【0103】
図10に示した断層画像は、図8のように胆管等の管腔800内に挿入されたOCTプローブ600を用いて取得されたものである。この断層画像の中には、OCTプローブ600のプローブ外筒620の画像や、OCTプローブ600を管腔内に挿入するときの挿入補助具として用いられるガイドワイヤ700の画像が含まれている。また、管腔800の内壁部802における一部の領域の管腔組織702の画像や管腔内に充たされた液体に浮遊する浮遊物704(胆管における胆泥に相当)の画像が含まれる。なお、各対象物の画像も各対象物と同一符号を付し、対象物と対象物の画像とを区別することなく説明する。
【0104】
次に、断層画像の中からプローブ領域(プローブ表面ラインの位置)を検出する(ステップS12)。
【0105】
ここで、プローブ領域の検出方法の一例として、動的計画法を利用した方法について説明する。この方法では、まず、ステップS10で取得された断層画像、例えば図10に示した断層画像(原画像)に対して2Dカボールフィルタを掛けて、OCTプローブ600のプローブ外筒620の内壁面を示すラインが強調されたエッジ強調画像を生成する。なお、2Dカボールフィルタのパラメータは次のように設定されており、σr'=3.0、σθ'=2.0、λ=6.4、φ=0.0、ψ=0.0である。
【0106】
【数1】

次に、上記のようにして生成されたエッジ強調画像の符号を反転し、検出したいエッジほどマイナス値となるコスト画像に変換する。そして、コスト画像上の探索範囲(例えばr=3〜60ピクセル)において、動的計画法により画像左端から右端へ向かって積算コスト値が最小となるパスを検出する。この際、動的計画法で局所積算コスト最小値を探索するための縦方向(r方向)の範囲は、現在注目画素±1に制限しており、探索パスの形状が縦方向に階段状に大きくずれることがないように調整している。この結果、図11に示すように、最後に検出された積算コスト値が最小となるパス(最小コストパス)706がプローブ外筒620の内壁面を示すラインとなる。
【0107】
次に、上記のようにして求められた最小コストパス706(すなわち、プローブ外筒620の内壁面を示すライン)をプローブ外筒620の側壁部の肉厚分だけ下方向(r方向)へシフトさせ、図12に示すように、プローブ外筒620の外壁面を示すラインとしてプローブ表面ライン708を検出する。本例では、最小コストパスから30ピクセル分だけ下方向へシフトしている。これにより、プローブ表面ライン708から上側(プローブ600の外周から中心軸に向かう向き)の領域をプローブ領域として検出することができる。
【0108】
以上が、動的計画法を利用した方法の説明である。なお、プローブ領域の検出方法としては、動的計画法を利用した方法に限定されず、それ以外の方法を用いてもよい。
【0109】
次に、断層画像の中から管腔組織領域を検出する(ステップS14)。
【0110】
ここで、図10に示した断層画像の中から管腔組織702の領域(管腔組織領域702とする)の検出方法の一例として、領域抽出法を利用した方法について説明する。この方法では、まず、ステップS10で取得された断層画像、例えば図10に示した断層画像(原画像)に対して、σ=2.0(ピクセル)のガウシアン平滑化フィルタを掛けて、高周波ノイズを除去した画像を生成する。
【0111】
次に、上記の原画像(すなわち、図10に示した断層画像)に対して、OCTプローブ600の光学レンズ628から出射される測定光L1の減衰による背景成分を指数関数でモデル化したものを最小二乗フィッティングすることによって、背景成分画像を生成する。なお、本例では、以下のモデル式を用いている。
【0112】
【数2】

【0113】
ここで、左辺をP(r,θ)としているが、θは等方的なOCTの光の放射角度なので、上式右辺にθ依存性は含まれていない。ただし、フィッティング用のデータとしては、すべてのθにおける画素値を使用している。また、最小二乗法を単純な線形問題に帰着させるため、定数項cについては縦(r)方向の下側20ピクセル領域の画素値の平均値c0を予め求めて代入する。
【0114】
最後に、高周波ノイズを除去した画像から背景成分画像P(r,θ)を引いて、原画像から高周波ノイズ及び背景成分を除去した差分画像を生成する。
【0115】
次に、差分画像に対し、ヒステリシス2値化によって管腔組織表面の候補領域を得る。その際、ヒステリシス2値化の閾値は高めの閾値Hと低めの閾値Lを使用している。本例では、H=45.0、L=15.0である。ヒステリシス2値化処理では、図13に示すように、高めの閾値Hと低めの閾値Lとによる検出領域を求め、低めの閾値Lにより検出された領域のうち、高めの閾値Hにより検出された領域を内包する領域だけを残し、図14に示すような最終的な2値化結果が得られる。
【0116】
次に、各2値化領域に対し、面積、円形度、コントラストなどの特徴量を算出する。これらの特徴量に対して閾値処理を行い、FP領域(ノイズ領域)と判定された2値化領域を削除する。
【0117】
次に、各2値化領域の各画素を中心としてある半径(例えば15ピクセル)の円を描画し、隣接する円同士が重なり合う領域を1つのクラスタとみなす。各クラスタのうち、最大面積を持つクラスタを管腔組織領域702として検出する。
【0118】
以上が、領域抽出法を利用した方法の説明である。なお、管腔組織領域の検出方法としては、領域抽出法を利用した方法に限定されず、それ以外の方法を用いてもよい。
【0119】
次に、管腔組織領域の表面(管腔の内壁部表面)を検出する(ステップS16)。
【0120】
まず、図10に示した断層画像の中からステップS12で検出したプローブ領域のプローブ表面ラインとステップS14で検出した管腔組織領域の輪郭線を抽出する。図15は、図10の断層画像のうち、OCTプローブ600(プローブ外筒620)と管腔組織領域702のみを拡大して示した図であり、これに対して、図16に示すように、プローブ表面ライン708と管腔組織領域702の輪郭線710を抽出する。プローブ表面ライン708はステップS12において既に得られているものであり、管腔組織領域702の輪郭線710は、周知のエッジ検出の手法等を用いて抽出することができる。
【0121】
次に、管腔組織領域702の輪郭線710のうち、上側の輪郭線、即ち、図8において管腔800の内壁部表面804となる管腔組織領域702の表面を抽出する。図16において、縦軸(r軸)方向に輪郭線710上の2点が重なって存在する場合(横軸(θ軸)の座標値が同一となる2点が存在する場合)には、そのr座標値が小さい方の点を上側の輪郭線上の点として抽出し、他方を排除する。r軸方向に輪郭線710上の点が1点のみ存在する場合(管腔組織領域702の左右両端)には、その点を上側の輪郭線上の点として抽出する。これによって、図17に示すように輪郭線710のうちの上側の輪郭線712が抽出される。この上側の輪郭線712は図8における管腔800の内壁部表面804の一部の輪郭形状を示し、以下、内壁部表面ライン712と言うものとする。
【0122】
次に、OCTプローブ600の接触領域を検出する(ステップS18)。ステップS18で求めた内壁部表面ライン712上の各点に対して、プローブ表面ライン708までの最短距離を算出する。即ち、内壁部表面ライン712上の各点に対してr軸方向に存在するプローブ表面ライン708上の点までの距離を算出する。そして、内壁部表面ライン712上の各点のうち、算出した距離が所定の閾値(例えば10ピクセル)以下となる点を、OCTプローブ600が接触している接触領域に属する点と判断する。内壁部表面ライン712のうち、接触領域に属すると判断した点からなる線上の領域が接触領域となる。一方、内壁部表面ライン712のうち接触領域以外の領域は、OCTプローブ600が接触していない非接触領域と判断する。なお、内壁部表面ライン712上の各点のうち、算出した距離が前記閾値より大きい点を非接触領域に属する点と判断して非接触領域を求め、非接触領域以外の領域を接触領域として求めてもよい。
【0123】
このようにして接触領域を検出すると、図17に示した内壁部表面ライン712の領域のうち、接触領域を非処理データ領域として以下の処理対象から除外し、図18に示すように非接触領域を処理データ領域714として以下の処理対象とする。
【0124】
次に、管腔組織領域の表面(管腔の内壁部表面)の凹凸度合いに関する情報、及び、管腔組織領域の内部(管腔の内壁部)の層の厚みに関する情報を生成し、表示する(ステップS20)。なお、凹凸度合いに関する情報と層の厚みに関する情報のうち、オペレータが表示することを望む情報(両方又はいずれか一方)を操作制御部32の入力手段により選択するようにし、選択された情報のみの生成と表示を行うようにしてもよいし、選択されていない情報についても選択された情報とともに生成は行い、表示は行わないようにしてもよい。
【0125】
初めに、凹凸度合いに関する情報として凹凸度合いを数値化した評価値を算出する場合について説明する。凹凸度合いの評価値を算出する場合、ステップS16において求めた内壁部表面804を示す内壁部表面ライン712の領域のうち、非接触領域となる処理データ領域714のみで処理を行う。
【0126】
まず、図18のように処理データ領域714に対して図19のように半リング型構造要素715によるオープンニング(モフォロジ)処理を施す。これによって図20のように内壁部表面ライン712のうちの処理データ領域714におけるラインを平滑化した平滑化ライン716が求められる。なお、平滑化ライン716を求める方法はモフォロジ演算によるオープニング処理によらず、他の方法を用いてもよい。この平滑化ライン716は、内壁部表面ライン712の概形状を示し、平滑化ライン716上の各点に対して、内壁部表面ライン712と平滑化ライン716との間の距離的な差異を求めることで、内壁部表面ライン712の処理データ領域714(非接触領域)における凹凸度合いを示す評価値を算出することができる。
【0127】
例えば、平滑化ライン716上の各点を順次着目点とし、着目点を中心とする平滑化ライン716上の所定長さ範囲において、平滑化ライン716上の各点に対して内壁部表面ライン712と平滑化ライン716との間の距離を算出する。即ち、平滑化ライン716上の各点と、それらの各点における平滑化ライン716の法線と交わる内壁部表面ライン712上の交点(対応点)との距離を算出する。そして、算出した距離のうち、最小値と最大値との差を着目点(又は着目点に対応する内壁部表面ライン712上の対応点)における凹凸度合いを示す評価値として求める。これによって、内壁部表面ライン712の処理データ領域714(非接触領域)の各点における凹凸度合いの評価値を算出することができる。
【0128】
このようして求めた凹凸度合いを示す評価値の情報は、例えば、その評価値の大きさに応じた色を内壁部表面ライン712に付した断層画像を生成してモニタ装置500に表示することや、グラフ化してモニタ装置500に表示することや、ポインティングデバイスで指定された箇所に対して数値でモニタ装置500に表示することで診断者に提供することが可能である。
【0129】
続いて、層の厚みに関する情報として管腔組織領域の最も表面側となる上皮層の厚みを算出する場合について説明する。上皮層の厚みを算出する場合も凹凸度合いの評価値を算出する場合と同様にステップS16において求めた内壁部表面804を示す内壁部表面ライン712の領域のうち、非接触領域となる処理データ領域714(接触領域に対して深さ方向に存在する管腔組織領域を含む領域)のみで処理を行う。
【0130】
まず、図10に示した断層画像(原画像)のうち、管腔組織領域のステップS18により検出された非接触領域の断層画像、即ち、図18に示す処理データ領域714の内壁部表面ライン712よりも下側の領域(深さ位置rが大きい座標範囲)の断層画像に対してステップS12のプローブ領域の検出処理と同様の処理(エッジ強調・動的計画法)を施し、上皮層とその下の層(例えば繊維層)との境界線を示す層境界ラインを求める。これにより、例えば、ステップS8により図18のように検出された非接触領域(処理データ領域714)の内壁部表面712に対して、図21のような層境界ライン730が得られる。なお、層境界ライン730の求める方法はエッジ強調・動的計画法以外であってもよい。
【0131】
そして、層境界ライン730上の各点に対して内壁部表面ライン712と層境界ライン730との間の距離を算出する。即ち、層境界ライン730上の各点と、それらの各点における層境界ライン730の法線に交わる内壁部表面ライン712上の交点(対応点)との距離を算出する。これによって、処理データ領域714(非接触領域)の層境界ライン730の各点(又はそれら各点に対応する内壁部表面ライン712上の各対応点)における上皮層の厚みが算出される。なお、凹凸度合いの評価値と同様に、層境界ライン730の各点を順次着目点として、着目点を中心とする層境界ライン730上の所定長さの範囲における各点での上皮層の厚みを平均化し、その平均化した値を着目点での厚みとしてもよい。
【0132】
このようして求めた上皮層の厚みの情報は、例えば、その厚みの大きさに応じた色を、層境界ライン730、内壁部表面ライン712、又は上皮層の領域に付した断層画像を生成してモニタ装置500に表示することや、グラフ化してモニタ装置500に表示することや、ポインティングデバイスで指定された箇所に対して数値でモニタ装置500に表示することで診断者に提供することが可能である。なお、凹凸度合いを示す評価値の情報と、上皮層の厚みの情報とを同時に表示することも容易に可能であり、例えば、グラフ化して表示する場合や、ポインティングデバイスで指定された箇所に対して数値で表示する場合には、色、文字、記号等を用いていずれの情報であるかを識別して表示する態様が可能であり、また、各情報を異なる形態で表示すること、例えば、いずれか一方の情報を断層画像に付した色によって表示し、他方の情報をポインティングデバイスで指定された箇所に対する数値によって表示する態様も可能である。
【0133】
また、層の厚みに関して生成し、表示する情報は、上皮層(最上層)の厚みに限らない。例えば、胆管や膵管の内壁部は、上皮層、繊維層、間隙層からなる3層構造を有しており、上皮層の厚みを算出する場合と同様の方法により、繊維層や間隙層の厚み、又は特定の層の圧みを算出し、モニタ装置500に表示させるようにしてもよい。また、どの層の厚みを算出して表示させるかをオペレータが選択できるようにしてもよい。
【0134】
以上のように、凹凸度合いや層の厚みに関する情報を生成するための処理を、内壁部表面ライン712の全範囲に対して行うのではなく、OCTプローブ600が接触していない非接触領域である処理データ領域714に対してのみ行い、OCTプローブ600が接触して凹凸度合いや層の厚みに関して有効な情報が得られない接触領域に対しては行わないことによって、処理負担、処理時間を大幅に軽減することができる。特に、凹凸度合いを算出する際のオープニング処理や層の厚みを算出する際の層境界ラインの検出は、時間のかかる処理であるため、接触領域に対する余計な処理を省略することで、処理時間を大幅に短縮することができる。
【0135】
以上、上記処理の説明で使用した図16〜図21のような断層画像は、断層画像解析部460の処理過程において実際に生成してモニタ装置500に表示させることが可能であり、適宜、それらの断層画像をモニタ装置500に表示させるようにしてもよい。例えば、図17のような断層画像を生成するとともに、内壁部表面ライン712におけるOCTプローブ600の非接触領域である処理データ領域714に、接触領域と異なる色を付してモニタ装置500に表示するようにしてもよい。色ではなく輝度、透過率、点灯と点滅などの表示形態を非接触領域と接触領域とで異なるようにして表示するようにしてもよい。これによって、診断者が接触領域と非接触領域とを容易に判別できるようにすることができる。また、図18のような断層画像、即ち、内壁部表面ライン712の処理データ領域714のみの断層画像を生成するとともに所定の色を付す等の表示形態に特徴を持たせて、その断層画像を、図10のような未加工の断層画像の対応部分に重ね合せてモニタ装置500に表示するようにしてもよい。さらに、図20、図21のような断層画像、又は、その中の平滑化ライン716や層境界ライン730を図10やその他の断層画像の対応部分に付加したものをモニタ装置500に表示するようにしてもよい。この場合には、凹凸度合いや層の厚みを診断者が視覚的に把握することができる。これらの表示は、OCT計測時においてリアルタイムに行う態様と、OCT計測後の診断時において行う態様の両方の態様又はいずれか一方のみの態様を採用しても良い。リアルタイムに行う場合には、凹凸度合いや層の厚みに関する情報を取得したい領域が接触領域とならないようにOCTプローブ600の配置を調整するための情報としても使用することもでき、接触領域が大きい場合には警告音などによって注意を促すことも可能である。
【0136】
また、上述した各実施形態では、OCTプロセッサ400としてSS−OCT(Swept Source OCT)装置を用いて説明したが、これに限らず、OCTプロセッサ400をSD−OCT(Spectral Domain OCT)装置としても適用可能である。
【0137】
また、本発明が有効となる上記実施の形態における管腔800として、病変が生じていない正常時において内壁部表面が滑らかである臓器、又は、内壁部が層構造を有する臓器、例えば、胆管、膵管、気管支、咽頭、食道、尿管等が考えられる。
【0138】
また、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0139】
10…画像診断装置、12…第1の光源部、20…干渉光検出部、20a…干渉信号生成部、20b…AD変換部、22…信号処理部、100…内視鏡、200…内視鏡プロセッサ、300…光源装置、400…OCTプロセッサ、410…フーリエ変換部、420…対数変換部、450…断層画像構築部、460…断層画像解析部、490…制御部、500…モニタ装置、600…OCTプローブ、620…プローブ外筒(シース)、700…ガイドワイヤ、702…管腔組織(管腔組織領域)、708…プローブ表面ライン、712…内壁部表面ライン、714…処理データ領域、800…管腔、802…内壁部、804…内壁部表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉断層計測により管腔内の光断層画像を取得する取得手段と、
前記光断層画像において前記光干渉断層計測を行うために前記管腔内に挿入された光プローブの外壁面の位置を検出するプローブ外壁面検出手段と、
前記光断層画像において前記管腔の内壁面の位置を検出する管腔内壁面検出手段と、
前記管腔内壁面検出手段により検出された前記管腔の内壁面の位置と、前記プローブ外壁面検出手段により検出された前記光プローブの外壁面の位置とに基づいて、前記管腔の内壁面のうち、前記光プローブが接触している接触領域と、前記光プローブが接触してない非接触領域とを判別する接触領域/非接触領域判別手段と、
前記取得手段により取得された光断層画像に基づいてユーザに提供する情報の生成処理を行う情報生成手段であって、前記管腔の内壁面のうち、前記接触領域/非接触領域判別手段により判別された前記非接触領域に対してのみ前記生成処理を行い、前記接触領域/非接触領域判別手段により判別された前記接触領域に対しては前記生成処理を行わない情報生成手段と、
前記情報生成手段により生成された情報を表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とする光干渉断層画像処理装置。
【請求項2】
前記情報生成手段は、前記管腔内壁面検出手段により検出された前記管腔の内壁面の位置に基づき、前記管腔の内壁面の凹凸度合いに関する情報の生成処理を行うことを特徴とする請求項1の光干渉断層画像処理装置。
【請求項3】
前記情報生成手段は、前記凹凸度合いに関する情報として前記凹凸度合いを示す評価値を算出する処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の光干渉断層画像処理装置。
【請求項4】
前記情報生成手段は、前記光断層画像において前記管腔の内壁面を示すラインを平均化した平滑化ラインを求める処理を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の光干渉断層画像処理装置。
【請求項5】
前記情報生成手段は、前記管腔の層構造を有する内壁部の所定の層の厚みに関する情報の生成処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の光干渉断層画像処理装置。
【請求項6】
前記情報生成手段は、前記光断層画像において前記層の境界を検出する処理を含むことを特徴とする請求項5に記載の光干渉断層画像処理装置。
【請求項7】
前記管腔は、胆管、膵管、気管支、咽頭、食道、又は尿管であることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の光干渉断層画像処理装置。
【請求項8】
光干渉断層計測により管腔内の光断層画像を取得する取得工程と、
前記光断層画像において前記光干渉断層計測を行うために前記管腔内に挿入された光プローブの外壁面の位置を検出するプローブ外壁面検出工程と、
前記光断層画像において前記管腔の内壁面の位置を検出する管腔内壁面検出工程と、
前記管腔内壁面検出工程により検出された前記管腔の内壁面の位置と、前記プローブ外壁面検出工程により検出された前記光プローブの外壁面の位置とに基づいて、前記管腔の内壁面のうち、前記光プローブが接触している接触領域と、前記光プローブが接触してない非接触領域とを判別する接触領域/非接触領域判別工程と、
前記取得工程により取得された光断層画像に基づいてユーザに提供する情報の生成処理を行う情報生成工程であって、前記管腔の内壁面のうち、前記接触領域/非接触領域判別工程により判別された前記非接触領域に対してのみ前記生成処理を行い、前記接触領域/非接触領域判別工程により判別された前記接触領域に対しては前記生成処理を行わない情報生成工程と、
前記情報生成工程により生成された情報を表示する表示工程と、
を備えたことを特徴とする光干渉断層画像処理方法。
【請求項9】
前記情報生成工程は、前記管腔内壁面検出工程により検出された前記管腔の内壁面の位置に基づき、前記管腔の内壁面の凹凸の度合いに関する情報の生成処理を行うことを特徴とする請求項8の光干渉断層画像処理方法。
【請求項10】
前記情報生成工程は、前記凹凸度合いに関する情報として前記凹凸度合いを示す評価値を算出する処理を行うことを特徴とする請求項9に記載の光干渉断層画像処理方法。
【請求項11】
前記情報生成工程は、前記光断層画像において前記管腔の内壁面を示すラインを平均化した平滑化ラインを求める処理を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の光干渉断層画像処理方法。
【請求項12】
前記情報生成工程は、前記管腔の層構造を有する内壁部の所定の層の厚みに関する情報の生成処理を行うことを特徴とする請求項8〜11のうちのいずれか1項に記載の光干渉断層画像処理方法。
【請求項13】
前記情報生成工程は、前記光断層画像において前記層の境界を検出する処理を含むことを特徴とする請求項12に記載の光干渉断層画像処理方法。
【請求項14】
前記管腔は、胆管、膵管、気管支、咽頭、食道、又は尿管であることを特徴とする請求項8〜13のうちのいずれか1項に記載の光干渉断層画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−66559(P2013−66559A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206249(P2011−206249)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(504297272)富士フイルムソフトウエア株式会社 (15)
【Fターム(参考)】