説明

光拡散性基板

【課題】帯電防止剤含有溶液を塗布した際に該溶液が均一に塗布され得て塗布の濃淡ムラが生じ難い光拡散性基板を提供する。
【解決手段】透明樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板6の少なくとも片面にコロナ放電処理面6aが形成された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯電防止剤含有溶液を均一に塗布することができる光拡散性基板、及び均一な帯電防止コーティング層の形成により埃等の付着を十分に防止できて直下型バックライト用として好適な光拡散板に関する。
【0002】
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「水接触角」の語は、JIS K6768−1999に準拠して測定された、光拡散性基板の表面に対する純水の接触角を意味する。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置としては、液晶パネル(画像表示部)の背面側に直下型バックライトが配置された構成のものが公知である。前記直下型バックライトとしては、光反射板の前に複数の光源が配置されると共にこれら光源の前面側に光拡散板が配置された構成のものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、近年、液晶表示装置、中でも特に液晶テレビの大型化が急速に進められているが、画面を大型化して十分な輝度を確保するためには光源数を多くしなければならず、このために直下型バックライトの発熱量が大きく増大してしまうことから、大型化に際しては直下型バックライトの発熱を効率良く排出することが必要である。この排熱のためにバックライト装置にファンが設置されることが多いが、この場合、排熱ファンにより送風して直下型バックライト装置内部の空気の入れ換えを行うことによって冷却するものであるから、光拡散板の表面に埃等が付着しやすいという問題があった。このように光拡散板の表面に埃等が付着すると、画像が乱れたり、画像のシャープさや輝度が低下したりすることが懸念される。
【0005】
このような埃付着の防止のために、光拡散板としては優れた帯電防止性能を備えていることが強く求められている。
【0006】
そこで、光拡散板に帯電防止性能を具備させるべく、合成樹脂製の光拡散板の表面に帯電防止剤水溶液を塗布することによって表面に帯電防止コーティング層を形成せしめることが提案されている(特許文献2〜4参照)。
【特許文献1】特開2004−170937号公報
【特許文献2】特開2006−330546号公報
【特許文献3】特開2007−178544号公報
【特許文献4】特開2008−19411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、合成樹脂製の光拡散板の表面に帯電防止剤水溶液を塗布した際に、帯電防止剤水溶液が表面において均一に拡がらないことが生じやすく、即ち帯電防止剤の塗布の濃淡ムラが生じやすく、これにより埃付着が部分的に起こることが懸念される。特に、プロピレン樹脂製の光拡散板に帯電防止剤水溶液を塗布した場合には、帯電防止剤の塗布の濃淡ムラが顕著に生じた。
【0008】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、帯電防止剤含有溶液を塗布した際に該溶液が均一に塗布され得て塗布の濃淡ムラが生じ難い光拡散性基板、及び全面にわたって埃等の付着を十分に防止できる帯電防止性光拡散板を提供することを目的とする。更に、光拡散板の表面に埃等が付着し難く良好な画像を表示できる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]透明樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板の少なくとも片面にコロナ放電処理が施されていることを特徴とする光拡散性基板。
【0011】
[2]前記透明樹脂が、プロピレン樹脂またはスチレン樹脂である前項1に記載の光拡散性基板。
【0012】
[3]プロピレン樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板の少なくとも片面が、水接触角が90°以下である濡れ性面に形成されていることを特徴とする光拡散性基板。
【0013】
[4]スチレン樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板の少なくとも片面が、水接触角が60°以下である濡れ性面に形成されていることを特徴とする光拡散性基板。
【0014】
[5]前項1〜4のいずれか1項に記載の光拡散性基板のコロナ放電処理面または濡れ性面に、帯電防止剤を含有したコーティング層が積層されていることを特徴とする帯電防止性光拡散板。
【0015】
[6]前記コーティング層は、前記帯電防止剤を含有してなる溶液を前記光拡散性基板に塗布して乾燥せしめることによって形成されたものである前項5に記載の帯電防止性光拡散板。
【0016】
[7]直下型バックライト用として用いられる前項5または6に記載の帯電防止性光拡散板。
【0017】
[8]前項5または6に記載の帯電防止性光拡散板と、該光拡散板の背面側に配置された複数の光源とを備えることを特徴とする直下型バックライト。
【0018】
[9]前項5または6に記載の帯電防止性光拡散板と、該光拡散板の背面側に配置された複数の光源と、前記光拡散板の前面側に配置された液晶パネルとを備えることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0019】
[1]の発明では、透明樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板の少なくとも片面にコロナ放電処理が施されているので、該コロナ放電処理面に帯電防止剤を含有してなる溶液を塗布すれば、均一に塗布することができ(即ち帯電防止剤の塗布の濃淡ムラが生じることがなく)、従って均一な帯電防止コーティング層が形成されるので、全面にわたって埃等の付着を十分に防止できる光拡散板が提供される。
【0020】
[2]の発明では、透明樹脂が、プロピレン樹脂またはスチレン樹脂である構成であり、透明樹脂がプロピレン樹脂である場合にはコロナ放電処理面の水接触角が90°以下となり、透明樹脂がスチレン樹脂である場合にはコロナ放電処理面の水接触角が60°以下となり、従って該コロナ放電処理面に帯電防止剤を含有してなる溶液を塗布すれば、均一に塗布することができ(即ち帯電防止剤の塗布の濃淡ムラが生じることがなく)、従って均一な帯電防止コーティング層が形成されるので、全面にわたって埃等の付着を十分に防止できる光拡散板が提供される。
【0021】
[3]の発明では、プロピレン樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板の少なくとも片面が、水接触角が90°以下である濡れ性面に形成されているから、該濡れ性面に帯電防止剤を含有してなる溶液を塗布すれば、均一に塗布することができ(即ち帯電防止剤の塗布の濃淡ムラが生じることがなく)、従って均一な帯電防止コーティング層が形成されるので、全面にわたって埃等の付着を十分に防止できる光拡散板が提供される。
【0022】
[4]の発明では、スチレン樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板の少なくとも片面が、水接触角が60°以下である濡れ性面に形成されているから、該濡れ性面に帯電防止剤を含有してなる溶液を塗布すれば、均一に塗布することができ(即ち帯電防止剤の塗布の濃淡ムラが生じることがなく)、従って均一な帯電防止コーティング層が形成されるので、全面にわたって埃等の付着を十分に防止できる光拡散板が提供される。
【0023】
[5]の発明では、上記いずれかの光拡散性基板のコロナ放電処理面または濡れ性面に、帯電防止剤を含有したコーティング層が積層されているから、均一な帯電防止コーティング層が形成され、従ってこの光拡散板への埃等の付着を全面にわたって十分に防止できる。
【0024】
[6]の発明では、コーティング層は、帯電防止剤を含有してなる溶液を光拡散性基板に塗布して乾燥せしめることによって形成されているから、より一層優れた帯電防止性能を有した光拡散板が提供される。
【0025】
[7]の発明では、全面にわたって埃等の付着を十分に防止できる帯電防止性能に優れた直下型バックライト用光拡散板が提供される。
【0026】
[8]の発明では、直下型バックライトを構成する光拡散板が、全面にわたって均一な帯電防止性能を備えているので、光拡散板の全面にわたって埃等が付着し難く、長期間にわたって高輝度のバックライト光を確保できる。
【0027】
[9]の発明では、液晶表示装置を構成する光拡散板が、全面にわたって均一な帯電防止性能を備えているので、光拡散板の全面にわたって埃等が付着し難く、長期間にわたって高品質で高品位な画像(即ち画像に乱れが生じることがなく、かつシャープで高輝度な画像)を表示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
この発明に係る光拡散性基板(2)の一実施形態を図1に示す。この光拡散性基板(2)は、透明樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板(6)の片面にコロナ放電処理が施されてなる。即ち、片面がコロナ放電処理面(6a)になっている。本実施形態では、前記光拡散性樹脂板(6)として、基層(21)の両面に表層(22)(22)が積層されてなる積層板が用いられている。勿論、前記光拡散性樹脂板(6)は、単層からなる構成であっても良い(図4参照)。また、本実施形態では、光拡散性樹脂板(6)の片面のみにコロナ放電処理が施された構成が採用されているが、光拡散性樹脂板(6)の両面にコロナ放電処理が施されて両面がコロナ放電処理面(6a)(6a)に形成された構成を採用しても良い(図4参照)。
【0029】
上記構成の光拡散性基板(2)では、少なくとも片面がコロナ放電処理面(6a)に形成されているので、該コロナ放電処理面(6a)に、帯電防止剤を含有してなる溶液を塗布すれば、帯電防止剤の塗布の濃淡ムラを生じることなく均一に塗布することができ、即ち均一な帯電防止コーティング層(3)を形成できるので、全面にわたって埃等の付着を十分に防止できる光拡散板(1)の提供が可能となる(図2参照)。
【0030】
前記コロナ放電処理の処理条件としては、特に限定されるものではないが、被処理対象物である光拡散性樹脂板(6)がコロナ放電領域を通過する時の移動速度(ライン速度)を1〜20m/分に設定するのが好ましい。また、コロナ放電処理の印加電力を100〜1000Wに設定するのが好ましく、中でも150〜900Wに設定するのが特に好ましい。
【0031】
このようなコロナ放電処理を行うことにより、例えば、プロピレン樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板(6)においてはその表面(コロナ放電処理面)の水接触角を90°以下にすることが可能となり、またスチレン樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板(6)においてはその表面(コロナ放電処理面)の水接触角を60°以下にすることが可能となる。このようにコロナ放電処理により、表面(コロナ放電処理面)の水接触角を小さくすることができるので、該コロナ放電処理面(6a)に、帯電防止剤を含有してなる溶液を塗布すれば、帯電防止剤の塗布の濃淡ムラを生じることなく均一に塗布することが可能になったものと考えられる。
【0032】
前記コロナ放電処理によって、a)表面が荒らされる、b)表面にラジカル等の親水性の官能基ができる、等の作用によって、水接触角を小さくすることに貢献しているものと推定されるが、詳細な作用機構は定かではない。
【0033】
前記光拡散性樹脂板(6)を構成する透明樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばプロピレン樹脂、スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖低密度ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等、このような汎用プラスチックまたはエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。
【0034】
前記プロピレン樹脂としては、プロピレンを単独で重合させて得られるホモポリプロピレンであっても良いし、プロピレン及びこれと共重合し得る共重合成分の共重合体であっても良い。中でも、前記プロピレン樹脂としては、プロピレン単位を50質量%以上含有してなる重合体であるのが好ましい。さらに、十分な剛性が得られる点で、前記プロピレン樹脂中のプロピレン単位の含有量は98質量%以上であるのが特に好ましい。前記共重合成分としては、特に限定されるものではないが、例えばエチレン、1−ブテン等のα−オレフィンなどが挙げられる。
【0035】
前記スチレン樹脂としては、その構成単位としてスチレン単位を50質量%以上、好ましくは70質量%以上含有するものであり、スチレン単位を50質量%以上含有する限りその一部がスチレンと共重合可能な単官能の不飽和単量体単位で置き換えられた共重合体であってもよい。
【0036】
前記共重合可能な単官能不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和酸類;α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。また、この共重合体は、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位をさらに含んでいても良い。さらに前述の重合体、共重合体に、ゴム状重合体として、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム等をブレンドしたものを用いても良い。
【0037】
前記光拡散性樹脂板(6)は、例えば、光拡散剤を含有することによって、光拡散機能が付与されるが、特にこのような手法で光拡散機能が付与されるものに限定されるものではない。
【0038】
前記光拡散剤としては、前記透明樹脂に対して非相溶性で、該透明樹脂とは異なる屈折率を示し、光拡散板を透過する透過光を拡散させる機能を有する粒子(粉末を含む)であれば特に限定されない。例えば、ガラス粒子、ガラス繊維、シリカ粒子、水酸化アルミニウム粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、酸化チタン粒子、タルク等の無機粒子であっても良いし、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子等の有機粒子であっても良い。
【0039】
前記光拡散剤としては、通常、その体積平均粒子径が0.5〜40μmの範囲にあるものが用いられる。なお、体積平均粒子径(D50)は、全粒子の粒子径及び体積を測定し、小さい粒子径のものから順次体積を積算し、該積算体積が全粒子の合計体積に対して50%となる粒子の粒子径である。
【0040】
前記透明樹脂に光拡散剤を分散せしめる比率は、前記透明樹脂100質量部に対して光拡散剤0.1〜20質量部の範囲とするのが好ましい。0.1質量部以上であることで十分な光拡散性能を確保できると共に、20質量部以下であることで板自体の耐衝撃性の低下を防止できる。
【0041】
次に、この発明に係る帯電防止性光拡散板(1)の一実施形態を図2に示す。この帯電防止性光拡散板(1)は、前記光拡散性基板(2)のコロナ放電処理面(6a)に、帯電防止剤を含有したコーティング層(3)が積層一体化されてなる。本実施形態では、前記コーティング層(3)は、帯電防止剤を含有してなる溶液を前記光拡散性基板(2)のコロナ放電処理面(6a)に塗布して乾燥せしめることによって形成されたものである。
【0042】
上記構成の光拡散板(1)によれば、前記光拡散性基板(2)のコロナ放電処理面(6a)に、帯電防止剤を含有したコーティング層(3)が積層されているから、均一な帯電防止コーティング層が形成され、従ってこの光拡散板(1)への埃等の付着を全面にわたって十分に防止することができる。
【0043】
前記帯電防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、非イオン系帯電防止剤等が挙げられる。前記カチオン系帯電防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジエタノールアミン、ステアリルアミン塩酸塩等が挙げられる。前記アニオン系帯電防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルキルリン酸ジエタノールアミン、アルキルリン酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩類等が挙げられる。前記非イオン系帯電防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等が挙げられる。
【0044】
前記コーティング層(3)を形成するための、帯電防止剤含有溶液としては、特に限定されるものではないが、例えば帯電防止剤含有水溶液、帯電防止剤含有有機溶媒等が挙げられる。前記有機溶媒としては、例えばエチルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。中でも、帯電防止剤含有水溶液を塗布して前記コーティング層(3)を形成するのが、作業衛生面や環境保全の観点から、好ましい。
【0045】
前記コーティング層(3)の形成方法としては、特に限定されないものの、前記帯電防止剤含有溶液を塗布することによって形成されるのが好ましい。前記塗布方法としては、特に限定されないが、例えばロールコーター法、リップコート法、ナイフコーター法等が挙げられる。
【0046】
前記帯電防止剤含有溶液における帯電防止剤の濃度は、0.01〜10質量%に設定されるのが好ましい。また、前記コーティング層(3)における帯電防止剤の付着量(片面での固形分付着量)は0.01〜5g/m2に設定されるのが好ましく、特に好ましい範囲は0.05〜2g/m2である。
【0047】
なお、上記実施形態(図2)では、光拡散板(1)は、前記光拡散性基板(2)の片面のみにコーティング層(3)が設けられた構成であったが、例えば図4に示すように、光拡散性基板(2)の両面のコロナ放電処理面(6a)(6a)にコーティング層(3)(3)が設けられた構成を採用しても良い。
【0048】
上記帯電防止性光拡散板(1)を用いて構成された液晶表示装置(30)の一実施形態を図3に示す。図3において、(35)は液晶セル、(36)(37)は偏光板、(31)は直下型バックライトである。前記液晶セル(35)の上下両側にそれぞれ偏光板(36)(37)が配置され、これら構成部材(35)(36)(37)によって液晶パネル(透過型画像表示部)(38)が構成されている。
【0049】
前記バックライト(31)は、前記下側の偏光板(37)の下面側(背面側)に配置されている。このバックライト(31)は、平面視矩形状で上面側(前面側)が開放された略箱型形状のランプボックス(34)と、該ランプボックス(34)内に相互に離間して配置された複数の光源(32)と、これら複数の光源(32)の上方側(前面側)に配置された光拡散板(1)と、該光拡散板(1)の上方側(前面側)に空気層(50)を介して配置された光学フィルム(33)とを備えている(図3参照)。前記光拡散板(1)は、前記ランプボックス(34)の上方近傍位置において該ランプボックス(34)との間に通気隙間(40)を形成した状態で配置されている。また、前記ランプボックス(34)の内面には光反射層が設けられている。また、図示しないが、前記ランプボックス(34)内の空気を外に排出するための送風ファンが付設されている。
【0050】
上記構成に係る液晶表示装置(30)では、送風ファンにより送風することによって前記通気隙間(40)を介して前記ランプボックス(34)内部の高温の空気が外に送り出されるので、バックライト(31)内の発熱を効率良く排出することができる。この時、このランプボックス(34)内部の空気が入れ換えられることによって埃等もランプボックス(34)内に入り込むものとなるが、このランプボックス(34)に臨んで配置された前記光拡散板(1)は、その表面(ランプボックス側の表面)に帯電防止剤を含有したコーティング層(3)が形成されているので、光拡散板(1)の表面(ランプボックス側の表面)の全面にわたって埃等が付着するのを防止することができ、これにより液晶表示装置(30)は、長期間にわたってシャープで輝度ムラのない高品質で高品位な画像を表示できる。
【0051】
なお、前記光源(32)としては、特に限定されるものではないが、例えば蛍光管、ハロゲンランプ、タングステンランプ、発光ダイオード等が挙げられる。
【0052】
この発明に係る光拡散性基板(2)、帯電防止性光拡散板(1)、直下型バックライト(31)及び液晶表示装置(30)は、上記実施形態のものに特に限定されるものではなく、請求の範囲内であれば、その精神を逸脱するものでない限りいかなる設計的変更をも許容するものである。
【実施例】
【0053】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
(表面層形成用材料の製造)
スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(新日鐵化学社製「エスチレンMS200NT」、スチレン単位80質量%、メタクリル酸メチル単位20質量%、MFR1.3〜1.9g/10分)75.8質量部、架橋アクリル系樹脂粒子(光拡散剤、住友化学社製「スミペックスXC1A」、体積平均粒子径30μm)23.0質量部、紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA31」)1.0質量部及び加工安定剤(住友化学社製「スミライザーGP)0.2質量部をドライブレンドした後、スクリュー径65mmの2軸押出機に投入し、200〜260℃で加熱溶融しながら混練してストランド状に押出し、これをペレット状に切断することによって、ペレット状の表面層形成用材料を得た。
【0055】
(基層用の光拡散剤マスターバッチの製造)
スチレン樹脂(東洋スチレン社製「トーヨースチロールHRM40」、屈折率1.59、MFR0.9〜1.3g/10分)52質量部、架橋アクリル系樹脂粒子(光拡散剤、住友化学社製「スミペックスXC1A」)40質量部、シリコーンゴム粒子(光拡散剤、東レ・ダウコーニング社製「トレフィルDY33−719」、体積平均粒子径2μm)4質量部、紫外線吸収剤(住友化学社製「スミソーブ200」)2質量部及び加工安定剤(住友化学社製「スミライザーGP)2質量部をドライブレンドした後、スクリュー径65mmの2軸押出機に投入し、80〜250℃で加熱溶融しながら混練してストランド状に押出し、これをペレット状に切断することによってペレット状の光拡散剤マスターバッチを得た。
【0056】
(光拡散性樹脂板の製造)
スチレン樹脂(東洋スチレン社製「トーヨースチロールHRM40」、屈折率1.59)95.0質量部、上記光拡散剤マスターバッチ5.0質量部をドライブレンドして得た基層形成用材料を、スクリュー径40mmの主押出機に供給し、ここで200〜250℃で加熱溶融して、マルチマニホールドダイ(2種3層分配型)に供給すると共に、上記表面層形成用材料をスクリュー径20mmの補助押出機に供給し、ここで190〜250℃で加熱溶融して、マルチマニホールドダイ(2種3層分配型)に供給した。しかして、ダイ温度250〜260℃で共押出することによって、厚さ1.4mmの基層(21)の両面にそれぞれ厚さ0.05mmの表面層(22)(22)が積層された3層構成の光拡散性樹脂板(6)(厚さ1.5mm、幅220mm)を得た(図1参照)。
【0057】
(コロナ放電処理)
上記光拡散性樹脂板(6)の片面に、春日電機社製の高周波電源(CT0212型)を備えたコロナ放電処理装置を用いてコロナ放電処理を行うことによって、片面がコロナ放電処理面(6a)である光拡散性基板(2)を得た(図1参照)。このコロナ放電処理のライン速度は10m/分に設定した。また、コロナ放電処理の際の印加電力は、280Wに設定した。
【0058】
<実施例2>
コロナ放電処理の際の印加電力を500Wに設定した以外は、実施例1と同様にして光拡散性基板を得た。
【0059】
<実施例3>
コロナ放電処理の際の印加電力を750Wに設定した以外は、実施例1と同様にして光拡散性基板を得た。
【0060】
<比較例1>
コロナ放電処理を省略した(行わないものとした)以外は、実施例1と同様にして光拡散性基板を得た。
【0061】
<実施例4>
スチレン樹脂(東洋スチレン社製「トーヨースチロールHRM40」)100質量部及び架橋アクリル系樹脂粒子(光拡散剤、積水化成品工業社製「MBX2H」、体積平均粒子径3μm)6質量部をドライブレンドした後、スクリュー径40mmの押出機に供給し、200〜250℃で加熱溶融押出することによって、単層の光拡散性樹脂板(厚さ1.5mm、幅220mm)を得た。
【0062】
上記光拡散性樹脂板(6)の両面に、実施例1と同様にしてコロナ放電処理を行うことによって、両面がコロナ放電処理面(6a)(6a)である光拡散性基板(2)を得た(図4参照)。即ち、ライン速度10m/分、印加電力280Wに設定してコロナ放電処理を行った。
【0063】
<実施例5>
コロナ放電処理の際の印加電力を500Wに設定した以外は、実施例4と同様にして光拡散性基板を得た。
【0064】
<実施例6>
コロナ放電処理の際の印加電力を750Wに設定した以外は、実施例4と同様にして光拡散性基板を得た。
【0065】
<比較例2>
コロナ放電処理を省略した(行わないものとした)以外は、実施例4と同様にして光拡散性基板を得た。
【0066】
<実施例7>
プロピレン樹脂(住友化学社製「ノーブレンD101」、プロピレン単位含有率は99質量%以上、エチレン単位含有率は1質量%以下)100.0質量部及び造核剤(ADEKA社製「NA11」)0.05質量部をドライブレンドした後、スクリュー径40mmの押出機に供給し、200〜250℃で加熱溶融押出することによって、単層の光拡散性樹脂板(厚さ1.5mm、幅220mm)を得た。
【0067】
上記光拡散性樹脂板(6)の両面に、実施例1と同様にしてコロナ放電処理を行うことによって、両面がコロナ放電処理面(6a)(6a)である光拡散性基板(2)を得た(図4参照)。即ち、ライン速度10m/分、印加電力280Wに設定してコロナ放電処理を行った。
【0068】
<実施例8>
コロナ放電処理の際の印加電力を500Wに設定した以外は、実施例7と同様にして光拡散性基板を得た。
【0069】
<実施例9>
コロナ放電処理の際の印加電力を750Wに設定した以外は、実施例7と同様にして光拡散性基板を得た。
【0070】
<比較例3>
コロナ放電処理を省略した(行わないものとした)以外は、実施例7と同様にして光拡散性基板を得た。
【0071】
<実施例10>
プロピレン樹脂(住友化学社製「ノーブレンD101」)100.0質量部、シリコーンゴム粒子(光拡散剤、東レ・ダウコーニング社製「トレフィルDY33−719」)1.2質量部及び造核剤(ADEKA社製「NA11」)0.05質量部をドライブレンドした後、スクリュー径40mmの押出機に供給し、200〜250℃で加熱溶融押出することによって、単層の光拡散性樹脂板(厚さ1.5mm、幅220mm)を得た。
【0072】
上記光拡散性樹脂板(6)の両面に、実施例1と同様にしてコロナ放電処理を行うことによって、両面がコロナ放電処理面(6a)(6a)である光拡散性基板(2)を得た(図4参照)。即ち、ライン速度10m/分、印加電力280Wに設定してコロナ放電処理を行った。
【0073】
<実施例11>
コロナ放電処理の際の印加電力を500Wに設定した以外は、実施例10と同様にして光拡散性基板を得た。
【0074】
<実施例12>
コロナ放電処理の際の印加電力を750Wに設定した以外は、実施例10と同様にして光拡散性基板を得た。
【0075】
<比較例4>
コロナ放電処理を省略した(行わないものとした)以外は、実施例10と同様にして光拡散性基板を得た。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
上記のようにして得られた各光拡散性基板について下記評価法に従い水接触角の測定及び塗布性の評価を行った。これら評価結果を表1〜4に示す。
【0081】
<水接触角の測定法>
光拡散性基板のコロナ放電処理面に対する純水(蒸留水)の接触角をJIS K6768−1999に準拠して測定した。即ち、協和界面科学社製の接触角計「CA−X」を用いて、光拡散性基板のコロナ放電処理面に対する純水の接触角をθ/2法により測定した。
【0082】
<塗布性評価法>
各光拡散性基板を50mm×50mmの大きさに切り出し、これら光拡散性基板試験片のコロナ放電処理面に、帯電防止剤水溶液(日本純薬社製の4級アンモニウムエチル硫酸系帯電防止剤「SAT−6C」を水で100倍に希釈した水溶液)を約1mL滴下した後、これを小型ロール塗布装置を用いて均一に塗り広げた後、自然乾燥させることによって、帯電防止性光拡散板を得た。下記判定基準に基づいて目視により塗布性を評価した。
(判定基準)
「◎」…コロナ放電処理面の全面にわたって均一に塗布することができた
「○」…コロナ放電処理面の全面にわたってほぼ均一に塗布することができた
「×」…コロナ放電処理面の全面にわたって均一に塗布することができなかった(部分的に帯電防止剤の塗布の濃淡ムラが顕著に生じていた)。
【0083】
次に、上記のようにして得られた各光拡散板について下記評価法に従い評価を行った。これら評価結果を表1〜4に示す。
【0084】
<表面抵抗率測定法(初期の帯電防止性能の評価)>
JIS K6911−1995に準拠して、絶縁計(株式会社東亜ディーケーケー製、SM−8220)及び平板試料用電極(株式会社東亜ディーケーケー製、SME−8311)を用いて光拡散板の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。なお、測定前には測定試料を状態調整のため23℃×湿度50%RHの条件下で6時間放置した。
【0085】
<全光線透過率測定法>
JIS K7361−1997に準拠して光拡散板の全光線透過率Tt(%)を測定した。
【0086】
<拡散光線透過率測定法>
JIS K7136−2000に準拠して光拡散板の拡散光線透過率Td(%)を測定した。
【0087】
<曇価測定法>
JIS K7136−2000に準拠して光拡散板の曇価(%)を測定した。
【0088】
<分光透過率測定による黄色度YI、色度x、色度yの測定>
積分球を備えた自記分光光度計(日立製作所製「UV−4000」)を用いて光拡散板の380〜780nmの波長範囲の分光透過率を測定し、これに基づいて黄色度YI、色度x、色度yをそれぞれ算出した。
【0089】
表1、2から明らかなように、この発明に係る実施例1〜6の光拡散性基板は、コロナ放電処理面での水接触角が60°以下であり、コロナ放電処理を施していない比較例1、2の光拡散性基板と比較して塗布性が向上している。即ち、実施例1〜6の光拡散性基板では、帯電防止剤をコロナ放電処理面の全面にわたって均一に塗布することができた。
【0090】
表3、4から明らかなように、この発明に係る実施例7〜12の光拡散性基板は、コロナ放電処理面での水接触角が90°以下であり、コロナ放電処理を施していない比較例3、4の光拡散性基板と比較して塗布性が格段に向上している。即ち、実施例7〜12の光拡散性基板では、帯電防止剤をコロナ放電処理面の全面にわたって均一に塗布することができた。
【0091】
なお、実施例7〜9、比較例3では、光拡散剤を含有せしめていない構成であるものの、プロピレン樹脂は結晶性樹脂であり、結晶部と非晶部が存在しているために、若干白曇状に見え、光拡散剤を添加していなくても若干の光拡散性能を得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0092】
この発明の光拡散性基板は、直下型バックライト用の光拡散板の製作に好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。また、この発明の帯電防止性光拡散板は、直下型バックライト用として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。また、この発明の直下型バックライトは、液晶表示装置用として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】この発明に係る光拡散性基板の一実施形態を示す断面図である。
【図2】この発明に係る帯電防止性光拡散板の一実施形態を示す断面図である。
【図3】この発明に係る液晶表示装置の一実施形態を示す模式的断面図である。
【図4】この発明に係る帯電防止性光拡散板の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1…帯電防止性光拡散板
2…光拡散性基板
3…コーティング層
6…光拡散性樹脂板
6a…コロナ放電処理面
30…液晶表示装置
31…直下型バックライト
32…光源
38…液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板の少なくとも片面にコロナ放電処理が施されていることを特徴とする光拡散性基板。
【請求項2】
前記透明樹脂が、プロピレン樹脂またはスチレン樹脂である請求項1に記載の光拡散性基板。
【請求項3】
プロピレン樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板の少なくとも片面が、水接触角が90°以下である濡れ性面に形成されていることを特徴とする光拡散性基板。
【請求項4】
スチレン樹脂を含有してなる光拡散性樹脂板の少なくとも片面が、水接触角が60°以下である濡れ性面に形成されていることを特徴とする光拡散性基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光拡散性基板のコロナ放電処理面または濡れ性面に、帯電防止剤を含有したコーティング層が積層されていることを特徴とする帯電防止性光拡散板。
【請求項6】
前記コーティング層は、前記帯電防止剤を含有してなる溶液を前記光拡散性基板に塗布して乾燥せしめることによって形成されたものである請求項5に記載の帯電防止性光拡散板。
【請求項7】
直下型バックライト用として用いられる請求項5または6に記載の帯電防止性光拡散板。
【請求項8】
請求項5または6に記載の帯電防止性光拡散板と、該光拡散板の背面側に配置された複数の光源とを備えることを特徴とする直下型バックライト。
【請求項9】
請求項5または6に記載の帯電防止性光拡散板と、該光拡散板の背面側に配置された複数の光源と、前記光拡散板の前面側に配置された液晶パネルとを備えることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−294441(P2009−294441A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147987(P2008−147987)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】