説明

光拡散板

【課題】透過型画像表示装置(2)を構成する面光源装置(3)に組み込んで用いた場合に、前
面側をより明るく照明しうる光拡散板(1)を提供する。
【解決手段】本発明の光拡散板は、透明樹脂中に光拡散剤が分散されてなり、透明樹脂が
、厚み2mmの板状試験片の厚み方向で測定した波長600nmにおける光線透過率〔T
600〕が85%以上であり、光線透過率〔T600〕に対する波長365nmにおける光線透
過率〔T365〕の比〔T365/T600〕が0.90〜0.99である透明樹脂であることを
特徴とする。透明樹脂はポリスチレンなど、光拡散剤は、アクリル系粒子またはシロキサ
ン系粒子など、光拡散剤の平均粒子径は0.5〜5μm、光拡散剤と透明樹脂との屈折率
の差の絶対値〔|Δn|〕は0.05以上、透明樹脂100質量部あたり光拡散剤0.1
〜10質量部、厚み1〜5mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光拡散板に関し、詳しくは透過型画像表示装置に好適に組み込まれて使用される
光拡散板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図1に示すように、光拡散板(1)は、透過型画像表示装置(2)を構成する面光源装置
(3)に組み込んで広く用いられている〔特許文献1:特開2004−170937号公報
〕。図1に示す透過型画像表示装置(2)は、面光源装置(3)と、その前面側に配置された透
過型画像表示パネル(4)とを備えている。面光源装置(3)は、光拡散板(1)と、この光拡散
板(1)の背面側に配置された複数の光源(5)とを備えている。かかる透過型画像表示装置(2
)では、光源(5)から光拡散板(1)の背面側に入射した入射光(L0)は、光拡散板(1)内を透過
しつつ拡散され、拡散光(L1)となって前面側から出射し、透過型画像表示パネル(4)を照
明する。光拡散板(1)としては、画面サイズが大きくなっても比較的軽量なものと為しう
ることから、無色で透明な樹脂中に光拡散剤を分散させたものが広く用いられている。
【0003】
かかる光拡散板(1)としては、透過型画像表示パネル(4)をより明るく照明しうるものが望
ましい。
【0004】
【特許文献1】特開2004−170937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者らは、面光源装置に組み込んで用いた場合に、前面側をより明るく照明し
うる光拡散板を開発するべく鋭意検討した結果、上記光拡散板を構成する透明樹脂には、
その製造過程で混入する不純物によるものか、肉眼では無色透明であっても、波長600
nmにおける光線透過率〔T600〕に対して、波長365nmにおける光線透過率〔T365
〕が僅かに低いのが通常であり、このように波長365nmにおける光線透過率〔T365
〕が低いことが、光拡散剤による透過光の拡散に影響するためか、照明の明るさに影響を
与えていることを見出し、本発明に到った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、透明樹脂中に光拡散剤が分散されてなり、前記透明樹脂は、厚み2m
mの板状試験片の厚み方向で測定した波長600nmにおける光線透過率〔T600〕が8
5%以上であり、該光線透過率〔T600〕に対する波長365nmにおける光線透過率〔
365〕の比〔T365/T600〕が0.90〜0.99である透明樹脂であることを特徴と
する光拡散板を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光拡散板(1)を組み込んだ面光源装置(3)は、本発明の光拡散板(1)の背面側に配
置された光源(3)からの光(L0)により、前面側をより明るく照明することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の光拡散板は、透明樹脂中に光拡散剤が分散されてなるものである。
透明樹脂としては、例えばポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタ
クリル酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メ
チル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、ポリカーボネート、ポリプロ
ピレン、ポリシクロオレフィン、シクロオレフィン−αオレフィン共重合体などが挙げら
れ、吸湿が少ない点で、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、シクロ
オレフィン−αオレフィン共重合体などが好ましく用いられる。
【0009】
かかる透明樹脂は、透過型画像表示装置(2)に組み込んで用いた場合に、前面側の透過型
画像表示パネル(4)をより明るく照明しうる点で、波長600nmにおける光線透過率〔
600〕が85%以上である。
【0010】
また、透明樹脂は、波長600nmにおける光線透過率〔T600〕に対する波長365n
mにおける光線透過率〔T365〕の比〔T365/T600〕が0.90〜0.99、好ましく
は0.95以上である。
【0011】
なお、波長600nmにおける光線透過率〔T600〕および波長365nmにおける光線
透過率〔T365〕は、厚み2mmの板状試験片をもちいて、その厚み方向で測定した光線
透過率である。
【0012】
通常の透明樹脂では、これに含まれる不純物によるものか、上記光線透過率の比〔T365
/T600〕が0.90を下回るのが通常である。どのような不純物が上記光線透過率の比
〔T365/T600〕に影響するかは不明であるが、例えば原料モノマーを液相中で懸濁重合
法、分散重合法などの方法により重合させて透明樹脂を製造する場合に、得られる透明樹
脂に混入する溶媒や、この溶媒に添加される触媒成分、添加剤などが考えられる。またガ
ス状の原料モノマーを固体状の触媒と接触させることにより重合させて透明樹脂を製造す
る場合には、この触媒成分が考えられる。また、重合により得られた透明樹脂に様々な目
的で僅かに添加される添加剤も考えられる。このため、本願発明で規定する光線透過率の
比〔T365/T600〕を示す透明樹脂は、例えば製造工程で使用する添加剤や触媒などの使
用量の少ないもの、重合後に十分に洗浄されたもの、透明樹脂に通常添加される添加剤を
含まないか、またはその添加量が極めて少ないものを選択して用いられる。
【0013】
本発明の光拡散板に用いられる光拡散剤とは、透明樹脂との屈折率差〔Δn〕によって光
拡散板に入射した光(L0)を拡散させうるものであり、通常は微細な粒子状のものである。
【0014】
かかる光拡散剤としては、例えばガラスビーズ、シリカ粒子、水酸化アルミニウム粒子、
炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、酸化チタン粒子、タルクなどの無機粒子、アク
リル系粒子、シロキサン系粒子、スチレン系粒子などの有機粒子などが挙げられる。得ら
れる光拡散板をより軽量なものとしうることから、有機粒子が好ましく用いられ、さらに
好ましくはアクリル系粒子、シロキサン系粒子である。
【0015】
アクリル系粒子とは、アクリル系単官能単量体単位を主成分とする重合体、例えばアクリ
ル系単官能単量体単位を50質量%以上含む重合体の粒子であって、単量体としてアクリ
ル系単官能単量体だけを用いて得られ、単量体単位の全て(100質量%)がアクリル系
単官能単量体単位である重合体の粒子であってもよいし、アクリル系単官能単量体および
これと共重合可能な単官能単量体とを共重合させて得られる共重合体の粒子であってもよ
い。
【0016】
アクリル系単官能単量体としては、例えばアクリル酸またはメタクリル酸やそのエステル
であって、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタ
クリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸
2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル類
、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル
、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル
酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸、アクリル酸などが
挙げられ、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0017】
かかるアクリル系単官能単量体と共重合可能な単官能単量体とは、ラジカル重合可能な二
重結合を分子内に1個有し、この二重結合でアクリル系単官能単量体と共重合可能な化合
物であって、例えばスチレンが挙げられる。またクロロスチレン、ブロモスチレンなどの
ハロゲン化スチレン類、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのアルキルスチレン類
などの置換スチレンも挙げられる。さらにアクリロニトリルも挙げられる。かかる単官能
単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0018】
アクリル系粒子が、単量体単位の全てがアクリル系単官能単量体単位である重合体の粒子
である場合や、アクリル系単官能単量体およびこれと共重合可能な単官能単量体の共重合
体である場合は、その重量平均分子量は50万〜500万程度であることが好ましい。
【0019】
アクリル系粒子は、共重合成分としてアクリル系単官能単量体と共重合可能な二重結合を
分子内に2個以上有し、この二重結合でアクリル系単官能単量体と共重合可能な化合物で
あって、例えばスチレン系重合体粒子において上記したと同様の多価アルコール類のメタ
クリレート類、多価アルコール類のアクリレート類、芳香族多官能化合物などが挙げられ
、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
かかる多官能単量体との共重合体は、アクリル系単官能単量体と共重合可能な単官能単量
体として上記した単官能単量体との共重合体であってもよい。
【0021】
アクリル系単官能単量体およびこれと共重合可能な多官能単量体の共重合体は、架橋構造
の共重合体であり、そのゲル分率は10質量%以上であることが好ましい。
【0022】
かかるアクリル系重合体粒子の屈折率は、通常1.46〜1.55程度であり、ベンゼン
骨格や、ハロゲン原子の含有量が多いほど大きな屈折率を示す傾向にある。また、このア
クリル系重合体粒子は、例えば懸濁重合法、ミクロ懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法
などの通常の重合法で製造することができる。
【0023】
シロキサン系粒子は、シロキサン系重合体の粒子である。シロキサン系重合体は、例えば
クロロシラン類を加水分解し、縮合させる方法により製造される重合体である。クロロシ
ラン類としては、例えばジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニル
メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシランなどが挙げ
られる。シロキサン系重合体は架橋されていてもよい。架橋させるには、例えばシロキサ
ン系重合体に過酸化ベンゾイル、過酸化2,4−ジクロルベンゾイル、過酸化p−クロル
ベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ジ−t−ブチル−2,5−ジメチル−2,5−ジ(
t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどの過酸化物を作用させればよい。また、末端にシラ
ノール基を有する場合には、アルコキシシラン類と縮合架橋させてもよい。架橋された重
合体は、ケイ素原子1個あたり、有機慚愧が2〜3個程度結合した構造であることが好ま
しい。かかるシロキサン系重合体は、シリコーンゴム、シリコーンレジンとも称される重
合体であって、常温では固体のものが好ましく用いられる。
【0024】
シクロヘキサン系粒子は、かかるシクロヘキサン重合体を粉砕することで得ることができ
る。線状オルガノシロキサンブロックを有する硬化性重合体やその組成物を噴霧状態で硬
化させることで、粒状粒子として得てもよい(特許文献:特開昭59−68333号公報
)。また、アルキルトリアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物をアンモニアま
たはアミン類の水溶液中で加水分解縮合させることで、粒状粒子として得てもよい(特許
文献:特開昭60−13813号公報)。
【0025】
かかるシロキサン系重合体は、重量平均分子量が50万〜500万程度であることが好ま
しく、また、架橋構造である場合には、そのゲル分率は10質量%以上であることが好ま
しい。シロキサン系粒子の屈折率は通常1.40〜1.47程度の範囲である。
【0026】
スチレン系粒子とは、スチレン系単官能単量体単位を主成分とする重合体、例えばスチレ
ン系単官能単量体単位を50質量%以上含む重合体の粒子であって、単量体としてスチレ
ン系単官能単量体だけを用いて得られ、単量体単位の全て(100質量%)がスチレン系
単官能単量体単位である重合体の粒子であってもよいし、スチレン系単官能単量体および
これと共重合可能な単官能単量体とを共重合させて得られる共重合体の粒子であってもよ
い。
【0027】
スチレン系単官能単量体は、スチレン骨格を有し、ラジカル重合可能な二重結合を分子内
に1個有する化合物である、例えばスチレンのほか、クロロスチレン、ブロモスチレンな
どのハロゲン化スチレン類、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどアルキルスチレン
類などの置換スチレンなどが挙げられる。
【0028】
スチレン系単官能単量体と共重合可能な単官能単量体とは、ラジカル重合可能な二重結合
を分子内に1個有し、この二重結合でスチレン系単官能単量体と共重合可能な化合物であ
って、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリ
ル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−
エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル類、ア
クリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、ア
クリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2
−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル類、アクリロニトリルなどが挙げられ、メ
タクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル類が好ましく用いられ、それぞれ単独で、
または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0029】
スチレン系粒子が単量体単位の全てがスチレン系単官能単量体単位である重合体の粒子で
ある場合や、スチレン系単官能単量体およびこれと共重合可能な単官能単量体の共重合体
である場合は、その重量平均分子量は50万〜500万程度であることが好ましい。
【0030】
スチレン系粒子は、単量体単位として、スチレン系単官能単量体と共重合可能な多官能単
量体単位を含む共重合体であってもよい。かかる多官能単量体とは、ラジカル重合可能な
二重結合を分子内に2個以上有し、この二重結合でスチレン系単官能単量体と共重合可能
な化合物であって、例えば1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリ
コールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコール
ジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコール
ジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロ
パントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートなどの多価アルコ
ール類のメタクリレート類、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリ
コールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジア
クリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリ
レート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアク
リレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多価アルコール類のアクリレ
ート類、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートなどのような芳香族多官能化合物などが
挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0031】
かかる多官能単量体との共重合体は、スチレン系単官能単量体と共重合可能な単官能単量
体として上記した単官能単量体との共重合体であってもよい。
【0032】
スチレン系単官能単量体およびこれと共重合可能な多官能単量体の共重合体は、いわゆる
架橋構造の共重合体であり、そのゲル分率は10質量%以上であることが好ましい。
【0033】
かかるスチレン系重合体粒子の屈折率は、通常1.53〜1.61程度であり、ベンゼン
骨格やハロゲン原子の含有量が多いほど、大きな屈折率を示す傾向にある。かかるスチレ
ン系重合体粒子は、例えば懸濁重合法、ミクロ懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法など
の通常の方法で製造することができる。
【0034】
かかる光拡散剤は、カップリング剤などの表面処理剤で表面処理されていてもよい。
【0035】
光拡散剤の平均粒子径は、光を拡散し得、透明樹脂中に均一に分散させることが容易であ
ることから、通常は0.5μm〜5μm、好ましくは0.6μm〜3μmである。光拡散
剤の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡〔SEM〕により倍率5000倍または50000
倍で撮影したSEM写真から、任意に選択した40個の粒子について、個々の粒子の半径
を3点半円法測定し、測定された半径を2倍して直径を求め、その平均値として求めたも
のである。
【0036】
光拡散剤は、比較的少ない使用量で光を十分に拡散させることができる点で、その屈折率
〔n1〕と透明樹脂の屈折率〔n0〕との差の絶対値〔|Δn|=|n1−n0|〕が通常0
.05以上、好ましくは0.10以上となり、通常は0.50以下となるように選択され
る。
【0037】
光拡散剤の分散量は、光拡散剤と透明樹脂との屈折率の差の絶対値〔|Δn|〕、目的と
する光拡散の程度などにより異なるが、通常は透明樹脂100質量部あたり0.1質量部
〜10質量部である。
【0038】
本発明の光拡散板は、本発明の目的を損なわない範囲で帯電防止剤、酸化防止剤、加工安
定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、滑剤などの添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤
はそれぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
本発明の光拡散板は、例えば透明樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合には、透明樹脂と
光拡散剤とをドライブレンドし、加熱により溶融状態として押出成形法、射出成形法など
の通常の成形法により成形すればよい。光拡散剤は予め比較的少量の透明樹脂と共に溶融
混練して得たペレット状のマスターバッチとしてから、透明樹脂とドライブレンドし、成
形してもよい。
【0040】
本発明の光拡散板の厚みは通常1mm〜5mmである。1mm未満では機械的強度の点で
不利であり、5mmを越えると軽量性の点で不利である。
【0041】
本発明の光拡散板は、単独で用いられてもよいし、図2に示すように、その片面〔図2(
a)〕または両面〔図2(b)〕に、厚みが通常20μm〜200μm、好ましくは50μ
m〜100μmのスキン層(11)を積層した多層光拡散板(12)として用いられてもよい。ス
キン層(11)とは、例えば紫外線吸収剤を含むものを積層することにより、外部からの光な
どや、光源(3)からの光(L0)に含まれることのある紫外線により本発明の光拡散板が劣化
することを防止することができる。
【0042】
かかるスキン層(11)としては、例えば本発明の光拡散板を構成する透明樹脂に対して相溶
性を示し、透明な樹脂を主体とするものが用いられ、かかる樹脂としては、本発明の光拡
散板を構成する透明樹脂として上記したと同様のポリスチレン、メタクリル酸メチル−ス
チレン共重合体、メタクリル酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体
、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、ポリカ
ーボネート、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィンまたはシクロオレフィン−αオレフ
ィン共重合体などが挙げられる。スキン層に用いられる樹脂は、厚み2mmの板状試験片
の厚み方向で測定した波長600nmにおける光線透過率〔T600〕が85%以上であっ
てもよいし、該光線透過率〔T600〕に対する波長365nmにおける光線透過率〔T365
〕の比〔T365/T600〕が0.90〜0.99である透明樹脂であってもよいが、スキン
層(11)の厚みが光拡散板と比較して薄くて透過する光に対する影響が比較的少ないことか
ら、上記光線透過率〔T600〕が85%未満であったり、光線透過率の比〔T365/T600
〕が0.90未満であってもよい。
【0043】
スキン層(11)が紫外線吸収剤を含むものである場合、かかる紫外線吸収剤として、例えば
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレー
ト系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤
などが挙げられる。
【0044】
スキン層(11)に含み得る添加剤としては、上記した紫外線吸収剤のほか、例えばマット化
剤、光拡散剤、帯電防止剤、酸化防止剤、加工安定剤、難燃剤、滑剤などが挙げられる。
【0045】
スキン層(11)は、例えば多層押出成形法により製造することができる。
【0046】
本発明の光拡散板は、その表面に帯電防止剤が塗布されてもよい。帯電防止剤を塗布する
ことにより、静電気によるホコリなどの付着を防止して、ホコリによる光線透過率の低下
を防止し、より長期間に亘って透過型画像表示パネル(4)を明るく証明することができる

【0047】
本発明の光拡散板は、例えば図1に示すような透過型画像表示装置(2)を構成する面光源
装置(3)に組み込んで用いることができる。この透過型画像表示装置(2)は、面光源装置(3
)と、透過型画像表示パネル(4)とを備えている。
【0048】
透過型画像表示パネル(4)としては、例えば一対の透明電極(図示せず)の間に液晶化合物
が封入された液晶セル(41)と、その両面に配置された直線偏光板(42)とから構成される液
晶表示パネルが挙げられる。液晶表示パネルは、カラー表示を行うためのカラーフィルタ
ー(図示せず)、斜め方向から見たときのコントラスト、色調などを整えるための位相差板
(図示せず)などを備えていてもよい。この透過型画像表示パネル(4)は、面光源装置(3)の
前面側に配置される。
【0049】
面光源装置(3)は上記のとおり、光拡散板(1)と、複数の光源(5)とを備えるものである。
光源(5)としては、例えば冷陰極線管(CCFL)、外部電極蛍光管(EEFL)、平面
発光灯(FFL)、発光ダイオード(LED)などが用いられる。かかる光源(5)は、光
拡散板(1)の背面側に配置される。
【0050】
かかる透過型画像表示装置(2)において、透過型画像表示パネル(4)は、面光源装置(3)を
構成する光拡散板(1)の前面側に配置される。
【0051】
かかる透過型画像表示装置(2)において、面光源装置(3)を構成する本発明の光拡散板(1)
と、透過型液晶表示パネル(4)との間には、他の光拡散板を配置してもよい。また、前面
側をさらに明るく照明するための光学部材を配置してもよい。このような光学部材として
は、例えば米国3M社から「DBEF」として販売されている輝度向上フィルムなどが挙
げられる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によっ
て限定されるものではない。
【0053】
なお、各実施例で使用した押出機およびTダイスは以下のとおりである。
押出機(1):スクリュー径40mm、一軸式、ベント付き、田辺プラスチック(株)製
押出機(2):スクリュー径20mm、一軸式、ベント付き、田辺プラスチック(株)製
Tダイス :2種3層マルチマニホールドTダイス、リップ幅250mm、三高エンジ
ニアリング(株)製
【0054】
参考例1
〔スキン層用コンパウンドの製造〕
メタクリル酸メチル−スチレン共重合体〔230℃、37Nで測定したメルトフローレー
ト(MFR)5g/10分〕75.8質量部、マット化剤〔架橋アクリル系粒子、平均粒
径25μm〕23質量部、加工安定剤〔住友化学社製「スミライザーGP」〕0.2質量
部および紫外線吸収剤〔ADEKA社製「アデカスタブ LA−31」〕1質量部をドラ
イブレンドした後、180〜260℃でスクリュー径65mmの2軸押出機を使用してペ
レット状に押出して、ペレット状のスキン層用コンパウンドを得た。
【0055】
参考例2
〔光拡散剤マスターバッチの製造〕
ポリスチレン〔230℃、37N荷重で測定したMFR4g/10分〕84質量部、光拡
散剤〔架橋アクリル系粒子、平均粒径0.8μm〕14質量部、紫外線吸収剤〔共同薬品
社「バイオソーブ520」〕1質量部および加工安定剤〔住友化学社製「スミライザーG
P」〕1質量部をドライブレンドした後、80〜250℃でスクリュー径65mmの2軸
押出機を用いてペレット化して、ペレット状の光拡散剤マスターバッチを得た。
【0056】
参考例3
〔透明樹脂の光線透過率およびMFRの測定〕
表1に示すペレット状のポリスチレンA〜ポリスチレンDについて、それぞれを押出機(
1)の原料ホッパーに投入し、シリンダー温度200〜250℃にて厚み2mmの板状に
押出成形を行って試験片を得た。この試験片を用いて、積分球付き分光透過率計(日立製
作所製U4000)により、波長365nmにおける光線透過率〔T365〕および波長6
00nmにおける光線透過率〔T600〕を測定し、その比〔T365/T600〕を求めた。
【0057】
また、このポリスチレンのMFRをJIS K 7210に準拠して230℃、37Nの
条件で測定した。結果を第1表に示す。
【0058】
第 1 表
───────────────────────────────────
透明樹脂 T365(%) T600(%) T365/T600 MFR(g/分)
───────────────────────────────────
ポリスチレンA 87.26 90.31 0.97 4.0
ポリスチレンB 75.42 89.08 0.85 4.7
ポリスチレンC 79.75 90.23 0.88 5.4
ポリスチレンD 73.65 90.03 0.82 5.4
───────────────────────────────────
【0059】
実施例1
〔多層光拡散板の製造〕
参考例2で得た光拡散剤マスターバッチ13質量部およびポリスチレンA87質量部をド
ライブレンドした後、押出機(1)の原料ホッパーに仕込み、200〜250℃でベント
部の真空度を100kPa(ゲージ圧)に保持した状態で溶融混練し、245℃〜250
℃に保持したTダイスから中間層となるように押出して光拡散板(1)を得た。同時に、押
出機(2)の原料ホッパーに参考例1で得たスキン層用コンパウンドを仕込み、190〜
250℃でベント部の真空度を100kPa(ゲージ圧)に保持した状態で溶融混練し、
上記Tダイスから、上記中間層の両面にスキン層(11)として積層されるように押出して、
図2に示すように、光拡散板〔厚み1.9mm〕(1)の両面にスキン層〔厚み50μm〕(
11)が積層された3層構成の多層光拡散板〔幅220mm幅〕(12)を得た。
【0060】
〔評価サンプルの調製〕
上記で得た多層光拡散板を押出方向(MD方向)が423mm、これと直交する方向(T
D方向)が163mmとなるように2枚切り出し、クロロホルムを用いて2枚積層して評
価サンプルを得た。
【0061】
〔評価1〕
市販の液晶表示装置を構成し光拡散板(1)の背面側に複数の冷陰極線管(5)が配置された面
光源装置(3)から、光拡散板(1)を取り外し、代わりに上記で得た評価サンプルのみを装着
し、冷陰極線管(5)を点灯させた状態で、輝度計〔アイシステム社製「Eye Scal
e3W マルチポイント輝度計」〕を用いて、面光源装置(3)の前面側の全体に亘る26
01点で輝度を測定し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0062】
〔評価2〕
上記で得た評価サンプルの上にフィルム状の光拡散板〔市販の液晶表示装置を構成してい
るもの〕を2枚、さらにその上に輝度向上フィルム〔米国スリーエム社製「DBEF」〕
1枚を重ねた以外は上記と同様にして輝度を測定し、平均値を求めた。結果を表2に示す

【0063】
比較例1〜比較例3
ポリスチレンAに代えてポリスチレンB〔比較例1〕、ポリスチレンB〔比較例2〕、ポ
リスチレンC〔比較例3〕をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様に操作して多層光拡散
板を得、評価を行った。結果を第2表に示す。
【0064】
第 2 表
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透明樹脂 T365/T600 輝度(Cd/m2)
評価1 評価2
─────────────────────────────
実施例1 ポリスチレンA 0.97 5747 6294
比較例1 ポリスチレンB 0.85 5566 5862
比較例2 ポリスチレンC 0.88 5561 5867
比較例3 ポリスチレンD 0.82 5557 5865
─────────────────────────────
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】透過型画像表示装置およびこれを構成する面光源装置の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】多層光拡散板の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1:光拡散板
11:スキン層 12:多層光拡散板
2:透過型画像表示装置
3:面光源装置
4:透過型画像表示パネル(透過型液晶表示パネル)
41:液晶セル 42:直線偏光板
5:光源
0:入射光 L1:拡散光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂中に光拡散剤が分散されてなり、前記透明樹脂が、厚み2mmの板状試験片の厚
み方向で測定した波長600nmにおける光線透過率〔T600〕が85%以上であり、該
光線透過率〔T600〕に対する波長365nmにおける光線透過率〔T365〕の比〔T365
/T600〕が0.90〜0.99である透明樹脂であることを特徴とする光拡散板。
【請求項2】
透明樹脂がポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸−スチ
レン共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリ
ル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリシ
クロオレフィンまたはシクロオレフィン−αオレフィン共重合体である請求項1に記載の
光拡散板。
【請求項3】
光拡散剤が、アクリル系粒子またはシロキサン系粒子である請求項1または請求項2に記
載の光拡散板。
【請求項4】
光拡散剤の平均粒子径が0.5μm〜5μmであり、光拡散剤と透明樹脂との屈折率の差
の絶対値〔|Δn|〕が0.05以上であり、透明樹脂100質量部あたりの光拡散剤の
分散量が0.1質量部〜10質量部である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光拡散
板。
【請求項5】
厚みが1mm〜5mmである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光拡散板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散板と、該光拡散板の背面側に配置された複数の光
源とを備えることを特徴とする面光源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の面光源装置と、該面光源装置を構成する前記光拡散板の前面側に配置さ
れた透過型画像表示パネルとを備えることを特徴とする透過型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−63998(P2009−63998A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163091(P2008−163091)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】