説明

光散乱特性を有する成形体

本発明は、可視光の波長よりも小さい粒径を有する極めて微細なプラスチック粒子がわずかな割合で埋め込まれた、透明なプラスチックマトリックスからなる成形体、ならびにレーザー光線を目視可能にするため、および照明目的のためのこの成形体の使用に関する。レーザー光線を良好に目視可能にすると同時に、本発明による成形体の高い透明度に関して重要なことは、マトリックスプラスチックAに対する散乱粒子Bのコアの屈折率の違いが0.09〜0.3の範囲であり、かつプラスチック粒子Bがマトリックス中に良好に分散していることである。プラスチック粒子Bは、たとえば乳化重合により容易に得られるようなコア・シェル粒子(たとえばDE19820302を参照のこと)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光の波長よりも小さい粒径を有する極めて微細なプラスチック粒子をわずかな割合で含有する透明なプラスチックマトリックスからなる成形体、ならびにレーザー光線を目視可能にするため、および照明目的のための該成形体の使用に関する。
【0002】
従来技術
プラスチックを白色に着色するためには、通常、光の屈折率が高い無機顔料、たとえば二酸化チタンが使用される。確かに該顔料によって一般に高い隠蔽力が達成されるが、しかしこれはしばしば光の透過性の不所望な低減も伴う。
【0003】
有機光散乱剤、たとえばマトリックスとは異なる屈折率を有する特定の粒径の架橋したプラスチック粒子は前記の欠点を有していない。そのため、3μmの大きさのポリスチレン粒子(nD20=1.59)を含有するPMMA(nD20=1.49)は光の透過性を著しく失うことなく半透明にすることができる(DE2264224)。
【0004】
他方、メタクリレートコポリマー(nD20=1.485)をベースとする2.5μmの大きさの、架橋した粒子は、ポリスチレンを半透明にするために適切である(DE4231995)。
【0005】
プラスチックを半透明にするために特に好適であるのは、EP269324に記載されている、コア・シェル構造を有する2〜15μmの大きさの粒子である。これらの粒子は、プラスチックマトリックス中に埋め込まれ、高い光透過性を有する成形体を生じるが、該成形体は光源が見えなくなるほどに光を散乱させる。
【0006】
このような、実質的に前方へ散乱する散乱粒子は、縁部で照光される光ガイド板を製造するために有利に使用される(DE9318362)。
【0007】
ゴムのコアと、硬質シェルとを有する微粒子状のプラスチック粒子は、耐衝撃性改善剤として広く適用されている。この場合、通常、ゴム相(たとえばポリブチルアクリレート)の屈折率は、スチレンと共重合することにより、マトリックスの屈折率に適合される。
【0008】
他方、DE3842796は、130nm未満のゴム粒子直径を有するコア・シェル粒子において、硬質相90〜10質量%中に、ゴム相が10〜90質量%の割合で分散している場合には、ゴム相と硬質相との屈折率の違いが0.02よりも大きい場合に清澄な生成物が得られることを教示している。
【0009】
最近はコア・シェル構造を有するラテックス粒子の規則的な格子に関心が寄せられており、この場合、コアとシェルとは、屈折率において異なっており、コアは形状安定性であり、かつシェルはフィルム化可能である。このようなコア・シェル系は、効果塗料の製造に適用される(DE19820302)。
【0010】
課題および解決手段
上記の、数μm範囲の架橋した有機ポリマー粒子を含有する前方散乱の適用のために、たとえばレーザー光線を目視可能にするために特に興味深いレイリー散乱およびミー散乱の範囲で、特に微粒子状の二酸化チタンについて報告されているように、極めて微細な、無機白色顔料が、これと結びついた、摩耗性、沈殿分離、プラスチックマトリックス中での不十分な分散性またはポリマーマトリックスの分解のような困難性と共に教示されている(DE19543204)。
【0011】
ところで、特にレーザー光線を目視可能にするために、ガラスのように透明なマトリックスプラスチックAからなり、かつ該マトリックスプラスチックA中に分散した、コア・シェル構造を有する有機プラスチック粒子Bを含有し、プラスチック粒子のコアが架橋しており、シェルが少なくとも部分的にコアと結合しており、かつシェル材料がマトリックスプラスチックAと混和可能である成形体が、特に好適であることが判明した。この場合、プラスチック粒子Bのコア材料の屈折率は、マトリックスプラスチックAの屈折率とは0.06〜0.4異なっている。さらに、プラスチック粒子Bのコアの直径は、0.2μm未満であり、かつマトリックスプラスチックAに対するプラスチック粒子Bの割合は、0.0001〜5質量%である。
【0012】
レーザー光線を良好に目視可能にすることと同時に、成形体の高い透明性にとって重要なことは、マトリックスプラスチックAに対する散乱粒子Bのコアの屈折率の違いが、0.09〜0.3の範囲であり、かつマトリックス中のプラスチック粒子Bが良好に分散していることである。
【0013】
特に重要なことは、マトリックス中のプラスチック粒子Bの割合である。たとえば多くの適用のために、マトリックスプラスチックAに対して、0.001〜0.2質量%の割合が重要である。マトリックスプラスチック中での良好な分散、粒子の微細度およびppm範囲の割合により、本発明による成形体はほぼガラスのように透明であり、レーザー光線はほとんど弱まることなく、それにもかかわらず良好に目視可能になる。
【0014】
この場合、2種類の成形体が重要である。これは一方では、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなるマトリックスAを含有する成形体である。これは、90質量%より多くが、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルから構成されているごく一般的なプラスチックであると理解すべきである。これらのプラスチックのための代表的な物質として、PMMA(nD20=1.49)が挙げられる。PMMAマトリックスと組み合わされるプラスチック粒子Bは、1.57より大きい屈折率を有するコアを含有しており、これはたとえば架橋剤を用いてスチレンを共重合することにより得られる。その他に、その他の芳香族基を有するモノマーも適切であり、たとえばこれはビニルナフタリンである。この場合、粒子Bのシェル材料として、PMMAマトリックス、PMMA自体が考えられ、これは少なくとも部分的にコアと結合している(下記を参照のこと)。
【0015】
2種類目の本発明による成形体は、ポリスチレン、ビスフェノール−ポリカーボネート、たとえばビスフェノールA−ポリカーボネートまたは芳香族ポリエステル、たとえばアルキリデンテレフタレートからなるポリエステルからなるマトリックスAを含有する成形体である。この場合、プラスチック粒子Bのシェル材料は、前記のマトリックスポリマーAと相容性であるビニルポリマーからなる。ポリスチレンからなるマトリックスのために適切なシェル材料は、たとえばMMA60部と、シクロヘキシルメタクリレート40部とからなるコポリマー(DE3632369)または当然のことながらポリスチレン自体である。
【0016】
ビスフェノールA−ポリカーボネートと混合するために適切なプラスチック粒子Bのシェル材料として、MMAとフェニルメタクリレートとからなり、前記のポリカーボネートと相容性であるコポリマーが適切である(DE3719239)。同様にこの場合、スチレンとMMAとからなるコポリマーがシェル材料として適切である。このシェル材料は、芳香族ポリエステルからなるプラスチックマトリックスのためにも使用可能である。
【0017】
比較的高い屈折率、たとえばnD20>1.57を有する前記の芳香族プラスチックマトリックスの場合、できる限り低い屈折率を有するポリマー粒子のコアを選択する。コア材料として、この場合、たとえば架橋したPMMA(nD20=1.49)、架橋したポリブチルアクリレート(nD20=1.466)、さらに部分フッ素化された(メタ)アクリル酸エステルをベースとするコアが適切である。
【0018】
プラスチック粒子B
プラスチック粒子Bは、たとえば乳化重合により良好に入手可能なコア・シェル粒子である(たとえばDE19820302を参照のこと)。原則として、このプラスチック粒子は、相応して異なった機能を有する2種類の異なったポリマーからなる。
【0019】
この場合、屈折率に関してマトリックスプラスチックと異なっている粒子のコアは、光散乱要素であり、シェルはマトリックス中での粒子の良好な分散と固定のためのものである。光散乱機能に関して、コアは実質的に、マトリックス材料に対する屈折率の差Δnにより、およびその大きさにより特徴付けられる。この場合、Δnは、0.06〜0.4の範囲であり、有利には0.09〜0.3の範囲である。通常、コアは0.02〜0.2μmの範囲、有利には0.04〜0.15μmの範囲の球形の粒子である。マトリックスプラスチックA1であるポリ(メタ)アクリレートと混合するためのプラスチック粒子B1のコアは、通常、60質量%より多く、有利には90質量%より多くのスチレンまたはその他の芳香族ビニルモノマー、ならびに0.01〜30質量%まで、有利には0.05〜5質量%の多官能価ビニル化合物(架橋剤)、たとえばジビニルベンゼンまたはエチレンジメタクリレートからなる。
【0020】
有利には、異なる反応性の重合可能な基を2つ有する架橋剤(グラフト架橋剤)、たとえばアリルメタクリレートを少量、たとえば0.01〜10質量%併用する。このグラフト架橋剤は、シェルとコアとの良好な結合のために重要である。
【0021】
PMMAと混合するためのプラスチック粒子B1のシェルは、有利にはMMAと、脱重合傾向を低減するための少量の、たとえば4質量%のアクリル酸のC1〜C4−エステルからなる。通常、シェルの重合は、乳化法またはモノマー供給法により行い、その際、重合調節剤、たとえばメルカプタンを併用することができ、これによりシェルの溶融性が改善され、マトリックス中の粒子の分散が容易になる。
【0022】
プラスチックマトリックスA1(PMMA)と混合するために、有利に高い屈折率を有するコアを有するプラスチック粒子を使用する場合、光の屈折率がより高い芳香族のマトリックスプラスチックA2と混合するためには、相応して低い屈折率、たとえばnD20<1.50を有するプラスチック粒子を選択する。プラスチック粒子B2の適切なコア材料は、たとえばMMA>80部、アクリル酸エステル、たとえばエチルアクリレート1〜19部および架橋剤、たとえばブタンジオールジアクリレート0.1〜10部の共重合により得られる。シェル材料として、プラスチックマトリックスA2と相容性である上記のビニルポリマーを使用することができる。従ってたとえばポリカーボネートからなるプラスチック材料A2のためには、MMA90部およびフェニルメタクリレート10部からなるシェル材料を使用する(DE3719239)。
【0023】
一般に、コア対シェルの質量比は、3:1〜1:10の範囲、有利には2:1〜1:5の範囲である。プラスチック粒子Bのコアは架橋しており、かつ形状安定性である。有利であるのは60℃より高いガラス転移温度を有するコアである。
【0024】
マトリックスプラスチックAとプラスチック粒子Bとからなる成形体の製造
プラスチックマトリックスAと、プラスチック粒子Bとの混合は、原則として2つの異なった方法により実施することができる。
【0025】
これは一方では注型法である。この方法の場合、水性ラテックスからプラスチック粒子Bを固体として分離し、かつプラスチックマトリックスAを構成するモノマー混合物中に分散させる。こうして得られた粒子−モノマー混合物を、最終的に型に注型し、かつ重合させる。
【0026】
この方法はたとえば、ポリアクリレートまたはポリメタクリレートからなるプラスチック材料のために適切である。この方法は、架橋した成形体を製造すべき場合、たとえば架橋したポリブチルアクリレートからなる軟質成形体を製造すべき場合に関心が寄せられる。(この方法によりPMMAからなる本発明による成形体を製造するために、例3を参照のこと、注型法による重合の実施のためには、たとえばプラスチック・ハンドブックIX、第15頁、Carl Hanser Verlag1975年を参照のこと)。
【0027】
プラスチック粒子BとプラスチックマトリックスAとを混合するための第2の方法は、プラスチック粒子Bをラテックスから分離し、かつマトリックスプラスチックAからなる成形材料と混合することである。マトリックスプラスチック成形材料として、押出成形または射出成形のために使用される通常の成形材料を使用するが、これはたとえば射出成形目的のためのマトリックスプラスチックPMMAの場合、Roehm GmbHからの射出成形材料Plexiglas(登録商標)7Nである。
【0028】
その際、ラテックスからのプラスチック粒子Bの単離は、通常の方法により、たとえば噴霧乾燥、多価のイオンを用いた凝集により、または凍結凝集法により行う。プラスチック粒子Bの固体を取得するこの段階ですでに、少なくとも一部のマトリックス成形材料を、成形材料Aのラテックスの形で添加することができる(乳化重合による成形材料の製造についてはDE3612791を参照のこと)。このことにより、マトリックスプラスチック中でのプラスチック粒子の分散は容易になる。
【0029】
特に有利であるのは、成形材料Aのラテックスを、プラスチック粒子Bのラテックスと一緒に押出機により一緒に押し出すことである(この方法の実施については、DE2917321を参照のこと)。このことは、一方ではマトリックス中でのプラスチック粒子の良好な分散を保証し、かつ他方では、ダストの形成の問題、たとえば噴霧乾燥させたプラスチック粒子Bの固体の取り扱いの際に現れうる問題を回避する。
【0030】
特にマトリックス中のプラスチック粒子の割合が少ない成形体を製造するために、2工程での混合が推奨される。従ってたとえば第1工程で、プラスチック粒子Bを1質量%含有する、熱可塑性加工可能なマトリックスプラスチックAからなる顆粒を製造し、かつここから次いで射出成形により成形材料顆粒と混合しながら、成形材料マトリックスA99.99質量%と、プラスチック粒子B0.01質量%からなる成形体を製造する。その際、加工の際に、通常の離型剤、老化防止剤などを使用することができる。
【0031】
本発明による成形体の有利な効果
本発明による成形体は、通常透明であり、たとえば80%を超える光透過率を有する。大きなプラスチック粒子により変性された高い光透過率を有する、白色の成形体と異なり、本発明による成形体は透明度が高い。反対側まで問題なく見通すことができる。しかし該成形体は、短波の光の割合(空の青)の散乱が増強されたことによって、わずかな青味を有している。
【0032】
純粋なマトリックスプラスチックAからなる成形体は、光学的に空(empty)であり、光線はこのマトリックス中で目に見えず、光線はせいぜい、成形体の界面において反射される割合によって知覚することができるにすぎない。これに対して、本発明による成形体中の光線は、極めて良好に目視可能である。ある意味では、マトリックスA中のプラスチック粒子Bは、適切な、均質に分散した、光を散乱する不純物である。
【0033】
白色光から出発する場合、分散に基づいて、光路長に依存した色が見られるので、それほど散乱されない赤色の光は、すでに光の入射領域で強く散乱する青色の光よりも、さらに成形体の内部へと到達する。このようにして興味深い光学的効果が達成される。成形体中の、プラスチック粒子を有していないマトリックスプラスチックと、プラスチック粒子を含有するマトリックスプラスチックとの組み合わせもまた興味深い。このことにより照明産業で、たとえば発光する領域と、光学的に空の領域とを組み合わせることが可能となる。
【0034】
しかし本発明による成形体の主要な適用は、本発明による成形体と、波長分布が狭い光との組み合わせ、特にレーザーまたはレーザーダイオードとの組み合わせである。
【0035】
本発明による成形体は、特に安全性の適用の分野において関心が寄せられる。たとえばレーザー光線は、成形体を通って良好に目視可能にすることができ、その際に著しく弱まることがない。このことによって光路を良好に追跡することができる。さらに、本発明による成形体は、測定技術の分野において、たとえばレーザーレベルのための補助手段として使用される。これらの多くの適用のために、成形体は、成形体を通過するレーザー光線が、その途中で変化しないように、2つの平坦な面を有しているべきである。
【0036】
もう1つの適用は、ゲージの分野である。ここでは特に、1mmより大きな厚さを有する成形体、最も良好には、3〜8mmの範囲の厚さを有する成形体が適切であり、この場合、成形体の少なくとも一部は、円形のセグメントとして構成されている。レーザー光線を円形のセグメントの縁部を介して入力する場合に(例5も参照のこと)、レーザー光線が前記成形体中へ通過することによって、光の特性、たとえば屈折率、反射率、全反射率を容易に示すことができる。
【0037】
ここで、通常の市販されている0.4〜0.8μmの波長範囲のレーザーまたはレーザーダイオードを使用し、その際、特に赤色レーザー光、たとえば650nmの波長を有するレーザーは興味深い。このような系はたとえばレーザーポインターとして広く適用される。
【0038】
本発明による成形体のもう1つの適用分野は、狭い分布の、または単色性の光による照明の領域である。たとえばこの成形体は、単色光のための、縁部が照光される光ガイド部材として使用することができる。この場合、マトリックス中に分散されたプラスチック粒子が極めて微細であり、従ってこれらの成形体を極めて薄いフィルムとして製造することもできることが興味深い。この縁部が発光する平面状の照明部材を自動車のテールランプとして、またはブレーキライトとして適用するためには、該部材の裏面を鏡面仕上げにすることが有利である。
【0039】
この新規の、縁部にたとえばレーザーダイオードを備えた平面状の発光部材において特に興味深いのは、該部材から発される光が変向しているという事実である。このことにより、この光は他方の光源から発される光から区別することができる。
【0040】
以下の実施例は、本発明を詳細に説明するものであるが、しかし本発明を限定するものではない。
【0041】
例1 プラスチック粒子ラテックスの合成
1Lの攪拌容器中で、保護ガスとしてのアルゴンを導通しながら、水酸化ナトリウム40mg、炭酸水素ナトリウム160mg、およびスルホコハク酸−ビス−(2−エチルヘキシルエステル)ナトリウム塩98%(Aldrich)0.57gを、蒸留水655g中に装入した。スチレン39.2gおよびアリルメタクリレート3.8gからなるモノマー混合物(M−コア)の半分を添加し、かつ70℃で水30g中のペルオキソ二硫酸カリウム0.5gを添加することによって重合を開始した。30分後に50℃まで冷却し、モノマー混合物(M−コア)の残りの半分を添加し、かつ改めて70℃に加熱した。30分後に、MMA61.8gおよびエチルアクリレート1.3gからなるモノマー混合物(M−シェル)を、15分間かけて供給した。その後、70℃でさらに15分間攪拌し、かつ最終的に90℃まで45分間加熱した。冷却後に微細な分散液が得られた。固体含有率:13.5%。コアの直径約100nm。
【0042】
例2 プラスチック粒子−固体の取得
例1に記載のプラスチック粒子−ラテックスを、−20℃で凍結し、かつ80℃の温水により融解した。凝集固体を吸引し、かつ30℃で乾燥させた後で、粉末状の固体が得られた。
【0043】
例3 注型法による成形体の合成
プラスチック粒子B0.033質量%を含有するPMMAベースの成形体マトリックス
例2に記載されているプラスチック粒子固体30mgを、オーバーヘッドミキサーにより、MMA29.97g中に分散させた。均質な、白色の貯蔵安定性の分散液が得られた。
【0044】
この分散液1部を、MMA中のAIBN0.1質量%およびドデカンチオール2質量%の溶液2部と混合し、脱気し、ガラス試験管中に充填し、かつアルゴン下に50℃〜70℃で、水浴中で重合させた。重合の終了および温度処理の後で、ガラス試験管を破壊した。試験管の形をした、弱い青味を有する透明な成形体が得られた。下側(型どりしたガラス試験管の底部)から、レーザーポインター(650nm)の光を成形体中に入射させると、この棒状のプラスチックガラス成形体中で極めて明瞭な、全反射および光ガイドを目視可能にするシャープな光線が観察された。この場合、レーザー光線は、5cmの波長の後でも認識できるほどの減衰はなかった。
【0045】
例4 標準成形材料と混合するためのプラスチック粒子−マスターバッチの合成
例2に記載されているプラスチック粒子の固体25gを、ガラスビン中でオーバーヘッドミキサーによりMMA975gと混合した。MMA中のプラスチック粒子B2.5質量%の、均質な、貯蔵安定性の白色分散液が得られた。この分散液を、MMA170g中のAIBN0.5g、t−ブチル−ペルオキシベンゾエート1.5gおよびドデカンチオール8.0gの溶液に添加した。得られた混合物を重合室中に充填し、10分間脱気し、かつ50〜60℃の水浴中で重合させた。その後、110℃で熱処理し、かつ引き続きミル中で粉砕した。
【0046】
例5 射出成形による本発明による成形体の製造
例4に記載のプラスチック粒子−マスターバッチの粉砕物1部を、PMMA−射出成形材料、たとえばAltuglas V920 CLEAR 100の粉砕物40部と混合し、かつ射出成形装置で射出成形した。この方法で、厚さ6mmの半円形の射出成形体(半径:30mm)が得られた。これらの半円形の小板は、透明であり、わずかな青味を有していた。この小板中に、円形の側で縁部を介して赤色レーザー(650nm)の光を円形表面に対して垂直に入射させると、この光線の推移を良好に追跡することができ、かつ極めて簡単に直線上の側で光線が出ていくこと、もしくはその反射を観察することができ、全反射の角度を評価することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスプラスチックAと、該マトリックスプラスチックA中に分散している、コア・シェル構造を有するプラスチック粒子Bとからなる成形体であって、該プラスチック粒子Bのコアは架橋しており、シェルは少なくとも部分的にコアと結合しており、かつ該プラスチック粒子Bのシェル材料が、該マトリックスプラスチックAと混和可能である成形体において、
該プラスチック粒子Bのコア材料の屈折率が、該マトリックスプラスチックAの屈折率とは0.06〜0.4異なっており、
該プラスチック粒子Bのコアの直径が、0.2μm未満であり、
該マトリックスプラスチックAに対する該プラスチック粒子Bの割合が、0.0001〜5質量%である
ことを特徴とする、マトリックスプラスチックAと、該マトリックスプラスチックA中に分散している、コア・シェル構造を有するプラスチック粒子Bとからなる成形体。
【請求項2】
前記マトリックスプラスチックAが、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートの群から選択されており、かつ前記プラスチック粒子Bのコアが、芳香族基を有しており、かつ1.57より大きい屈折率を有することを特徴とする、請求項1記載の成形体。
【請求項3】
前記マトリックスプラスチックAが、芳香族基を有し、かつポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステルの群から選択され、かつ前記プラスチック粒子Bのコアが、1.50未満の屈折率を有することを特徴とする、請求項1記載の成形体。
【請求項4】
前記マトリックスプラスチックAに対する前記プラスチック粒子Bの割合が、0.001〜0.2質量%であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の成形体。
【請求項5】
前記成形体が、シートとして形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形体。
【請求項6】
前記成形体が、少なくとも2の平行な平面を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の成形体。
【請求項7】
前記成形体が、1mmを越える厚さを有し、かつ成形体の少なくとも一部が、円形の部材として形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項または請求項6記載の成形体。
【請求項8】
縁部が照明される光ガイド部材としての請求項1から7までのいずれか1項記載の成形体の使用。
【請求項9】
自動車のテールランプまたはブレーキライトとしての請求項1から8までのいずれか1項記載の成形体の使用。
【請求項10】
レーザー光線を目視可能にするための請求項1から7までのいずれか1項記載の成形体の使用。
【請求項11】
光の屈折および光のガイドを表示するための請求項1から7までのいずれか1項記載の成形体の使用。

【公表番号】特表2009−507094(P2009−507094A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528458(P2008−528458)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065383
【国際公開番号】WO2007/025864
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】