説明

光波距離計

【課題】温度位相ドリフトによる測定誤差を低減させて測距精度を向上させた光波距離計の提供。
【解決手段】複数の主変調周波数と傍変調周波数による変調光をそれぞれ出射する第1及び第2の発光素子と、両発光素子から出射された光を受光する第1及び第2の受光素子と、第1の受光素子に接続された第1の周波数変換器群(42、44)と、第2の受光素子に接続された第2の周波数変換器群(50、52)と、異なる複数の局部発振信号の組合せを複数生成して前記各周波数変換器群に入力する複数の局部発振信号生成器(100、101)を備え、目標反射物を往復する測距光路及び第1から第3の参照光路を通る光と前記周波数変換器群に入力される局部発生信号の複数の組合せから、異なる位相ドリフトの測距値を複数が算出して、それら平均値から目標対象物までの距離を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子や受光素子等の電気部品における温度位相ドリフトを低減させて目標対象物までの測距精度を向上させた光波距離計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光波距離計では、発光素子から出射した光をシャッターを移動させることによって、目標反射物(ターゲット、反射シート又はノンプリズムの物体)まで往復する測距光路と、光源から直ちに受光素子へ向かう参照光路とに交互に切換えて距離測定することによって、光波距離計の固有な誤差を補正していた。しかしながら、シャッターの移動を伴うため、距離測定に時間にかかるうえ、低温で動きが遅くなるという短所があった。そこで、測距光路と参照光路とに切換えるシャッターを用いない光波距離計が望まれていた。このようなシャッターを用いない光波距離計としては、下記特許文献1に開示されたようなものが知られている。
【0003】
この光波距離計は、特許文献1の図9に示すとおり、増幅器(23p,24p)及びシンセサイザー(21p,22p)と共に接続された発振器20Pによって周波数fで変調された光を出射する発光素子1Pと発振器20Pによって周波数fで変調された光を出射する発光素子2Pとを備える。発光素子1Pから出射された光30Pは、ビームスプリッタ3Pで2つに分けられ、一方は、測距光32Pとして測定対象60Pまで往復する測距光路を経て受光素子5Pに入射し、他方は、参照光33Pとして光波距離計内部の参照光路を経て受光素子4Pに入射する。発光素子2Pから出射された光31Pは、参照光となり、ビームスプリッタ6Pで2つに分けられ、一方34Pは受光素子4Pに入射し、他方35Pは受光素子5Pに入射する。
【0004】
受光素子4Pは増幅器9Pを介して周波数変換器7Pに接続されており、受光素子5Pは増幅器10Pを介して周波数変換器8Pに接続されている。両周波数変換器7P、8Pには局部発振器12Pから周波数fLOの局部発振信号が加えられている。両周波数変換器7P、8Pは、受光素子4P、5Pからの出力信号を周波数(f,f)と局部発振信号FLOとの差に等しい周波数の中間周波信号f、fに変換させる。
【0005】
周波数変換器7Pに接続されたフィルタ13Pは、参照距離Dに係る参照光33Pに係る中間周波信号fのみを選別する。周波数変換器8Pに接続されたフィルタ14Pは、参照距離D+Dに係る参照光35Pに係る中間周波信号fのみを選別する。一方、発光素子1Pから周波数fで変調された光を出射し、発光素子2Pから周波数fで変調された光を出射するように、それぞれの変調周波数を変更すると、周波数fのみを選別するフィルタ13Pは、参照距離Dに係る参照光34Pに係る中間周波信号fのみを選別し、周波数fのみを選別するフィルタ14Pは、測距距離Dに係る測距光32Pに係る中間周波信号fのみを選別する。
【0006】
特許文献1の光波距離計は、両発光素子1P、2Pから出射する光の変調周波数f、fを交互に変えることによって得た2種類4つの中間周波信号をデジタルフーリエ変換器19Pによって解析し、4つの中間周波信号それぞれの初期位相を求めることにより、光波距離計に固有な誤差分を補正して、測定対象60Pまでの精確な距離を求めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−255369号公報
【特許文献2】特願2009−144488
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に開示された光波距離計では、両発光素子1P、2Pから出射する光の変調周波数f、fを交互に切換えることが必要であるため、測距値の算出に必要な4つの中間周波信号が一度に生成されず、中間周波信号が全て生成されてから測距値を算出するまでに時間がかかるうえ、各中間周波信号を得た時刻の相違により、発光素子1P、2Pや受光素子4P、5P等の電気部品による温度位相ドリフトによっても誤差が出るという問題があった。
【0009】
そこで、本願発明者は、前記課題に鑑みて、測距値の算出に当たり必要な中間周波信号を一度に生成可能にすることで距離測定の時間短縮と、中間周波信号の生成時刻を一致させることで温度位相ドリフトによる距離測定誤差を低減させた光波距離計について前記特許文献2の出願を行った。しかし、光波距離計においては、電気部品の温度位相ドリフトに基づく測定誤差を更に低減させることにより、測距精度を更に向上させることが求められている。
【0010】
本願発明は、測距精度向上の要求に鑑み、特許文献2の光波距離計よりも更に測距精度を向上させた光波距離計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明の光波距離計は、複数の主変調周波数(例えば、F、F)で変調された光を出射する第1の発光素子と、前記各主変調周波数それぞれに近接した複数の傍変調周波数(例えば、F−Δf、F−Δf)で変調された光を出射する第2の発光素子と、両発光素子から出射された光を受光する第1の受光素子及び第2の受光素子と、第1の受光素子に接続された第1の周波数変換器群と、第2の受光素子に接続された第2の周波数変換器群と、前記各主変調周波数と各主変調周波数それぞれに近接した傍変調周波数との両方に近接した異なる周波数を有する複数の局部発振信号の組み合わせ(例えば、F−Δf/3、F−Δf/3を組み合わせ1とし、F1−Δf×2/3、F−Δf×2/3を組み合わせ2とする)を複数生成する複数の局部発振信号生成器と、を備え、第1の発光素子から出射された光は2つに分けられ、一方は測距光として目標反射物までを往復する測距光路を経て第1の受光素子に入射し、他方は参照光として第1の参照光路を経て第2の受光素子に入射し、第2の発光素子から出射された光は2つに分けられ、一方は参照光として第2の参照光路を経て第2の受光素子に入射し、他方は参照光として第3の参照光路を経て第1の受光素子に入射し、前記第1の周波数変換器群及び前記第2の周波数変換器群は、それぞれ、前記主変調周波数と同数の周波数変換器から構成され、各周波数変換器には、前記複数の局部発振信号の組み合わせのうち一つ(例えば、F−Δf/3、F−Δf/3)が入力されることによって前記各周波数変換器で発生させた、数値の異なる複数の中間周波信号(例えば、Δf/3、Δf/3)を用いて目標反射物までの測距値(例えばL)が算出され、更に前記各周波数変換器に入力された前記局部発振信号の組み合わせが異なる局部発振信号の組み合わせ(例えば、F1−Δf×2/3、F−Δf×2/3)に少なくとも1回変更され、前記組み合わせの変更毎に目標反射物までの測距値(例えばL)が算出され、得られた各測距値の平均値を用いて目標反射物までの距離を算出するように構成されている。
【0012】
測距値の算出に必要な異なる複数の局部発振信号の組み合わせが、局部発振信号生成器によって生成され、局部発振信号の組み合わせを入力された第1及び第2の周波数変換器群と、測距光路及び第1から第3の参照光路を通る4つの光に基づいて、4に主変調周波数の数を乗じた数の異なる中間周波信号(例えば主変調周波数の数が2であれば、中間周波信号の数は8)が、一度に生成される。目標対象物までの距離を表す測距値は、一度に複数生成された中間周波信号に基づいて迅速に算出される。一方、前記異なる複数の局部発振信号の組み合わせは、局部発振信号生成器が複数設けられたことによって複数組生成される。
【0013】
(作用)請求項1の光波距離計においては、第1及び第2の周波数変換器群に入力される局部発振信号の組み合わせが異なるものに変更されることによって、変更毎に測距値が更に算出され、算出された各測距値の平均値から目標対象物までの距離が算出される。
【0014】
請求項2においては、請求項1に係る光波距離計において、前記複数の主変調周波数は、第1の主変調周波数と第2の主変調周波数からなり、前記複数の中間周波信号は、第1の微少値を有する第1の中間周波信号と第2の微少値を有する第2の中間周波信号からなり、前記複数の異なる局部発振信号の組み合わせは、前記第1の主変調周波数に所定の定数を乗じて得た第1の微少値を前記第1の主変調周波数に増減してなる周波数を有する第1の局部発振信号と、前記第2の主変調周波数に所定の定数を乗じて得た第2の微少値を前記第2の主変調周波数に増減してなる周波数を有する第2の局部発振信号からなり、前記第1の局部発振信号と第2の局部発振信号によって測距値を算出されたあと、第1の局部発振信号は、前記第1の微少値を2倍して得た第3の微少値を前記第1の主変調周波数に増減してなる周波数を有する第3の局部発振信号に変更され、前記第2の局部発振信号は、前記第2の微少値を2倍して得た第4の微少値を前記第2の主変調周波数に増減してなる周波数を有する第4の局部発振信号に変更されるように構成した。
【0015】
(作用)このようにして第1及び第2の周波数変換器群に入力される複数の異なる局部発振信号の組み合わせを第1及び第2の局部発振信号から第3及び第4の局部発振信号に変更した場合、主変調周波数によって得られる中間周波信号と傍変調周波数によって得られる中間周波信号がそれぞれ局部発振信号の組み合わせの変更の前後で入れ替わる。例えば、局部発振信号の組み合わせを変更する前に得られる中間周波信号が(Δf/3,Δf/3,Δf×2/3,Δf×2/3)の場合、変更後に得られる中間周波信号は、(Δf×2/3,Δf×2/3,Δf/3,Δf/3)となり、Δfに乗じている定数が局部発振信号の組み合わせの変更前後で入れ替わる。その結果、温度位相ドリフトの変化が局部発振信号の組み合わせ変更の前後で反転するため、温度位相ドリフトが低減される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の光波距離計によれば、異なる局部発振信号の組み合わせを変更し、測距値の算出に用いられる複数の中間周波信号の組み合わせを変更した上で測距値を複数回算出し、電気部品の温度位相ドリフトが異なる状況下で複数算出された測距値の平均値を取ることによって測距精度が向上し、目標対象物までの距離が正確に算出される。
【0017】
請求項2の光波距離計によれば、複数の中間周波信号の組み合わせを変更する前と後において電気部品の温度位相ドリフトを反転させた上で測距値の平均を取ることによって、温度位相ドリフトが軽減されるため、目標対象物までの距離が更に正確に算出される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例に係る光波距離計の主要部のブロック図である。
【図2】前記光波距離計の詳細なブロック図である。
【図3】前記光波距離計の主変調周波数、傍変調周波数、局部発振周波数及び中間周波数の例を示す表である。
【図4】図3の周波数例C,Dに係る光波距離計の主要部のブロック図である。
【図5】図3の周波数例の変形例を示す表である。
【図6】図5の周波数例A,Bに係る光波距離計の主要部のブロック図である。
【図7】図5の周波数例C,Dに係る光波距離計の主要部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図1と図2に基づいて、本発明の光波距離計の第1実施例について詳細に説明する。
【0020】
まず、この光波距離計の主要部について、図1に基づいて説明する。この光波距離計は、レーザダイオード等の発光素子13、14を2つ備え、第1の発光素子13からは周波数F及びF(以下、主変調周波数と呼ぶ。)で変調された光を出射し、第2の発光素子14からは、主変調周波数F及びFそれぞれに近接した周波数F−Δf及びF−Δf(以下、傍変調周波数と呼ぶ。)で変調された光を出射する。第1の発光素子13から出射された光は、2つに分けられ、一方は測距光として、目標反射物22までを往復する測距光路23を経て第1の受光素子40に入射し、他方は参照光として、第1の参照光路26を経て第2の受光素子48に入射する。第2の発光素子14から出射された光は、2つに分けられ、一方は参照光として、第2の参照光路31を経て第2の受光素子48に入射し、他方は参照光として、第3の参照光路29を経て第1の受光素子40に入射する。
【0021】
第1の受光素子40は第1の周波数変換群42、44に接続され、第2の受光素子48は第2の周波数変換群50、52に接続される。すなわち、第1の受光素子40の出力は主変調周波数F及びFの個数と同数の2つに分けられ、一方は第1の周波数変換器42に入力され、他方は第2の周波数変換器44に入力される。第2の受光素子48の出力も主変調周波数F及びFの個数と同数の2つに分けられ、一方は第3の周波数変換器50に入力され、他方は第4の周波数変換器52に入力される。
【0022】
第1の周波数変換器42は、主変調周波数Fで変調されて測距光路23を経た測距光から得られた信号に、前述した主変調周波数F及び傍変調周波数F−Δfそれぞれと近接した周波数F−Δf/3の局部発振信号を乗算して、周波数Δf/3の中間周波信号(微少値)を発生させる。また、第1の周波数変換器42は、傍変調周波数F−Δfで変調されて第3の参照光路29を経た参照光から得られた信号に周波数F−Δf/3の局部発振信号を乗算して、周波数Δf×2/3の中間周波信号(微少値)を発生させる。
【0023】
第2の周波数変換器44は、主変調周波数Fで変調されて測距光路23を経た測距光から得られた信号に、前述した主変調周波数F及び傍変調周波数F−Δfそれぞれと近接した周波数F−Δf/3の局部発振信号を乗算して、周波数Δf/3の中間周波信号(微少値)を発生させる。また、第2の周波数変換器44は、傍変調周波数F−Δfで変調されて第3の参照光路29を経た参照光から得られた信号に周波数F−Δf/3の局部発振信号を乗算して、周波数Δf×2/3の中間周波信号(微少値)を発生させる。
【0024】
第3の周波数変換器50は、主変調周波数Fで変調されて第1の参照光路26を経た参照光から得られた信号に周波数F−Δf/3の局部発振信号を乗算して、周波数Δf/3の中間周波信号を発生させる。また、第3の周波数変換器50は、傍変調周波数F−Δfで変調されて第2の参照光路31を経た参照光から得られた信号に周波数F−Δf/3の局部発振信号を乗算して、周波数Δf×2/3の中間周波信号を発生させる。
【0025】
第4の周波数変換器52は、主変調周波数Fで変調されて第1の参照光路26を経た参照光から得られた信号に周波数F−Δf/3の局部発振信号を乗算して、周波数Δf/3の中間周波信号を発生させる。また、第4の周波数変換器52は、傍変調周波数F−Δfで変調されて第2の参照光路31を経た参照光から得られた信号に周波数F−Δf/3の局部発振信号を乗算して、周波数Δf×2/3の中間周波信号を発生させる。
【0026】
こうして同時に、測距光路23に係る周波数Δf/3及びΔf/3の中間周波信号、第1の参照光路26に係る周波数Δf/3及びΔf/3の中間周波信号、第2の参照光路31に係る周波数Δf×2/3及びΔf×2/3の中間周波信号、第3の参照光路29に係る周波数Δf×2/3及びΔf×2/3の中間周波信号の合わせて8つの中間周波信号が一度に得られる。8つの中
間周波信号をフィルタやフーリエ変換器等の適当な手段で分離し、各中間周波信号の初期位相を求めれば、目標反射物22までの距離が光波距離計内部で発生する誤差を補正して算出される。この測定値をLとする。
【0027】
更に局部発振信号の周波数を変更する(例えば、F−Δf/3,F−Δf/3)と、測距光路23に係る周波数Δf×2/3及びΔf×2/3の中間周波信号、第1の参照光路26に係る周波数Δf×2/3及びΔf×2/3の中間周波信号、第2の参照光路31に係る周波数Δf/3及びΔf/3の中間周波信号、第3の参照光路29に係る周波数Δf/3及びΔf/3の中間周波信号の合わせて8つの中間周波信号が一度に得られる。8つの中間周波信号をフィルタやフーリエ変換器等の適当な手段で分離し、各中間周波信号の初期位相を求めれば、目標反射物22までの距離が光波距離計内部で発生する誤差を補正して算出される。この測定値をLとする。
【0028】
局部発振信号の周波数の組み合わせを変更することにより、変更前の中間周波信号(Δf/3,Δf/3,Δf×2/3,Δf×2/3)は、それぞれ(Δf×2/3,Δf×2/3,Δf/3,Δf/3)になり、中間周波信号における温度位相ドリフト特性が入れ替わる。中間周波信号の温度位相ドリフトは、測距値Lと測距値Lの平均を取ることによって低減される。
この光波距離計について、図2のブロック図に基づいて、さらに詳細に説明する。
【0029】
PLL10、発振器11、周波数生成回路12は、異なる複数の第1の局部発振周波数(請求項における局部発振信号の周波数:F−Δf/3,F−Δf/3)を生成する第1の局部発振周波数生成器(請求項における局部発振信号生成器)100を構成し、PLL15、発振器16、周波数生成回路17は、異なる複数の第2の局部発振周波数(F−Δf×2/3,F−Δf×2/3)を生成する第2の局部発振周波数生成器101を構成する。
【0030】
まず、発振器1で主変調周波数Fの信号を発生させる。この主変調周波数Fの信号は、分周部2に入力されるとともに、PLL9,10,15を介して、発振器5、11、16に入力される。PLL9、10,15は、発振器5、11、16を傍変調周波数F−Δf、局部発振周波数F−Δf/3、局部発振周波数F−Δf/3で正確に発振させるために使用する。
【0031】
分周部2は、主変調周波数Fの信号を分周して、主変調周波数Fの信号を発生する。この主変調周波数F及びFの信号とは、周波数重畳回路3を経て駆動回路4へ入力される。第1の発光素子13は、駆動回路4によって駆動され、主変調周波数F及びFで変調された光を出射する。
【0032】
発振器5は、傍変調周波数F−Δfの信号を発生する。この傍変調周波数F−Δfの信号は、さらに分周部6で周波数を分周されて、傍変調周波数F−Δfの信号となる。傍変調周波数F−Δf及びF−Δfの信号とは、周波数重畳回路7を経て駆動回路8へ入力される。第2の発光素子14は、駆動回路8によって駆動され、傍変調周波数F−Δf及びF−Δfで変調された光を出射する。
【0033】
発振器11は、周波数F−Δf/3の局部発振信号を発生する。この周波数F−Δf/3の局部発振信号からは、周波数生成回路12で周波数F−Δf/3の局部発振信号も生成される。これらの周波数F−Δf/3、F−Δf/3の局部発振信号は、後述するように、周波数変換器42、44、50、52へ入力される。
【0034】
発振器16は、周波数F−Δf×2/3の局部発振信号を発生する。この周波数F−Δf×2/3の局部発振信号からは、周波数生成回路17で周波数F−Δf×2/3の局部発振信号も生成される。これらの周波数F−Δf×2/3、F−Δf×2/3の局部発振信号は、後述するように、周波数変換器42,44,40,52へ入力される。但し、前述した周波数F−Δf/3、F−Δf/3の局部発振信号とは同時に入力されない。
【0035】
第1の発光素子13から出射された光は、ビームスプリッタ20で2つに分けられ、一方は図示しない送光光学系から測距光として出射され、目標反射物22までを往復する測距光路23を経て第1の受光素子40に入射し、他方は参照光として、第1の参照光路26を経て第2の受光素子48に入射する。測距光路23には、受光素子40の前に、光量調整用の濃度フィルタ24と受光光学系25が配置されている。第1の参照光路26にも、受光素子48の前に光量調整用の濃度フィルタ27が配置されている。
【0036】
第2の発光素子14から出射された光は、ビームスプリッタ28で2つに分けられ、一方は参照光として、第2の参照光路31を経て第2の受光素子48に入射し、他方は参照光として、第3の参照光路29を経て第1の受光素子40に入射する。第2の参照光路31にも、受光素子48の前に光量調整用の濃度フィルタ32が配置されており、第3の参照光路29にも、受光素子40の前に光量調整用の濃度フィルタ30が配置されている。
【0037】
第1の受光素子40の出力は、増幅器41を経て2つに分けられ、一方は第1の周波数変換器42に入力され、他方は第2の周波数変換器44に入力される。第2の受光素子48の出力も、増幅器49を経て2つに分けられ、一方は第3の周波数変換器50に入力され、他方は第4の周波数変換器52に入力される。
【0038】
局部発振信号の周波数(F−Δf/3、F−Δf/3)を入力した第1〜第4の各周波数変換器42、44、50、52から合計8つの中間周波信号が得られることは、前述したとおりである。各周波数変換器42、44、50、52から出力された中間周波信号は、それぞれ低域フィルタ43、45、51、53によって高周波成分が除去される。
【0039】
低域フィルタ43及び低域フィルタ45の出力は、加算器46で加算された後にA/D変換器47に入力される。すなわち、A/D変換器47には、測距光路23に係る周波数Δf/3及びΔf/3の2つの中間周波信号と、第3の参照光路29に係る周波数Δf×2/3及びΔf×2/3の2つの中間周波信号が入力される。これらの中間周波信号は、A/D変換された後に、図示しないデジタル帯域フィルタによって分離され、さらに各中間周波信号の初期位相及び振幅が求められる。
【0040】
低域フィルタ51及び低域フィルタ53の出力は、加算器54で加算された後にA/D変換器55に入力される。すなわち、A/D変換器55には、第1の参照光路26に係る周波数Δf/3及びΔf/3の2つの中間周波信号と、第2の参照光路31に係る周波数Δf×2/3及びΔf×2/3の2つの中間周波信号が入力される。これらの中間周波信号は、A/D変換された後に、図示しないデジタル帯域フィルタによって分離され、さらに各中間周波信号の初期位相及び振幅が求められる。
【0041】
8つの中間周波信号の初期位相が求まると、目標反射物22までの距離が光波距離計内部で発生する誤差を補正して算出される。この時の測距値をLとする。また、各中間周波信号の振幅も求まると、これらの振幅は各濃度フィルタ24、27、30、32による光量調節に利用される。
【0042】
次に局部発振信号の周波数を変更し(F−Δf×2/3、F−Δf×2/3)、前期と同様に測距値を算出し、その測距値をLとする。中間周波信号の温度位相ドリフトは、LとLの平均を取ることによって低減される。その結果、本実施例の光波距離計による測距値は、中間周波信号の温度位相ドリフトの低減によって精度良く求められる。
【0043】
尚、本実施例によれば、測距光と参照光の切り換え用のシャッターが不要になるため、コストダウンが可能になると共に、周波数の切り換えがなくても測距光路と参照光路に係る各中間周波信号の初期位相が同時に求まるため、従来よりも高速に距離測定を行うことができる。
【0044】
ところで、中間周波信号に関しては、周波数Δf/3の整数倍が周波数Δf×2/3、F−Δf/3、F−Δf×2/3となっている。これにより、デジタル帯域フィルタによって確実に4つの周波数を分離することができる。また、各中間周波信号は、A/D変換器47、55に入力するとき、1信号だけのときの1/4の信号レベルにする。これは、4信号が合成されたとき、入力レベルが飽和しないようにするためである。もちろん、A/D変換器47、55への入力レベルが飽和しなければ、各中間周波信号レベルを1信号だけのときの1/4以上の信号レベルにしてもよい。
【0045】
ここで、局部発振信号の周波数を変更して複数の測距値を算出し、算出された各測距値の平均をとることで、中間周波信号の温度位相ドリフトが低減できる理由について説明する。温度位相ドリフトは、周波数F及びFの両方で起きるが、同じ理由であるから、ここでは周波数Fについて説明する。第1の発光素子13に印加される電気信号の周波数をF=(1+0)F、第2の発光素子14に印加される電気信号の周波数をF−Δf=(1+b)F、受光素子40、48に接続された周波数変換器42、50に印加される局部発振周波数FLO=(1+a)Fとし、かつ、0>a>(b/2)の条件で考える。
【0046】
受光素子40の出力の波形y1は、次式のようになる。
y1=ypd1,ld1cos{2πFt+ψld1(F)+ψpd1(F)−2πF(2D/c)}+ypd1,ld2cos{2π(1+b)Ft+ψld2((1+b)F)+ψpd1((1+b)F)−2π(1+b)F(2D/c)} (1)
【0047】
受光素子48の出力の波形y2は、次式のようになる。
y2=ypd2,ld1cos{2πFt+ψld1(F)+ψpd2(F)−2πF(2D/c)}+ypd2,ld2cos{2π(1+b)Ft+ψld2((1+b)F)+ψpd2((1+b)F)−2π(1+b)F(2D/c)} (2)
【0048】
ただし、各記号は、次のように定義される。
pd1,ld1:第1の発光素子13と第1の受光素子40間の信号の振幅
pd1,ld2:第2の発光素子14と第1の受光素子40間の信号の振幅
pd2,ld1:第1の発光素子13と第2の受光素子48間の信号の振幅
pd2,ld2:第2の発光素子14と第2の受光素子48間の信号の振幅
ψld1:第1の発光素子13の温度位相ドリフト
ψld2:第2の発光素子14の温度位相ドリフト
ψpd1:第1の受光素子40の温度位相ドリフト
ψpd2:第2の受光素子48の温度位相ドリフト
2D:光波距離計から目標反射物までの往復距離
2D:第1の参照光路26の光路長
2D:第2の参照光路31の光路長
2D:第3の参照光路29の光路長
c:光速
【0049】
次に、周波数変換器42、50に入力される局部発振信号の波形y3は、局部発振信号の振幅をyLO、局部発振信号の初期位相をφとすると、次式のようになる。
y3=yLOcos{2π(1+a)Ft+φ} (3)
【0050】
周波数変換器42、50に接続された低域フィルタ43、51からの出力波形y4、y5は、それぞれy1×y3、y2×y3に低域フィルタ43、51の温度位相ドリフトψf、ψfを加えて、次式のようになる。
y4=(ypd1,ld1LO/2)cos{2πaFt+ψld1(F)+ψpd1(F)+ψf(aF)−2πF(2D/c)−φ}+(ypd1,ld2LO/2)cos{2π(a−b)Ft−ψld2((1+b)F)−ψpd1((1+b)F)+ψf((a−b)F)+2π(1+b)F(2D/c)+φ} (4)
y5=(ypd2,ld1LO/2)cos{2πaFt+ψld1(F)+ψpd2(F)+ψf(aF)−2πF(2D/c)−φ}
+(ypd2,ld2LO/2)cos{2π(a−b)Ft−ψld2((1+b)F)−ψpd2((1+b)F)+ψf((a−b)F)+2π(1+b)F(2D/c)+φ} (5)
【0051】
測距値Dは、中間周波信号の初期位相をθとすると、D=θc/(2πF)と求まるから(ただし、Fは変調周波数)、測距光路23に係るy4の第1項の位相成分から求まる測距値をd、第3の参照光路29に係るy4の第2項の位相成分から求まる測距値をd、第1の参照光路26に係るy5の第1項の位相成分から求まる測距値をd、第2の参照光路31に係るy5の第2項の位相成分から求まる測距値をdとすると、d、d、d、dは、それぞれ次のように求まる。但し、F=75MHzとする。
=−2D+{4/(2π)}{ψld1(F)+ψpd1(F)+ψf(aF)−φ}
=2D+{4/(2π(1+b)){−ψld2((1+b)F)−ψpd1((1+b)F)+ψf((a−b)F)+φ}
=−2D+{4/(2π)}{ψld1(F)+ψpd2(F)+ψf(aF)−φ}
=2D+{4/(2π(1+b))}{−ψld2((1+b)F)−ψpd2((1+b)F)+ψf((a−b)F)+φ} (6)
【0052】
測距値d、d、d、dを次のように加減算を行う。
(d−d)−(d−d)=d−d+d−d
=−2D+2D+2D−2D
+{4/(2π)}{ψpd1(F)−ψPd2(F)+ψf(aF)−ψf(aF)}
−{4/(2π(1+b))}{ψPd2((1+b)F)−ψpd1((1+b)F)−ψf((a−b)F)+ψf((a−b)F)} (7)
【0053】
ここで、各周波数F、F−Δfは近接しているので、次のように近似する。
{4/(2π)}{ψPd1(F)≒{4/(2π(1+b))}{ψPd1((1+b)F)} (8)
{4/(2π)}{−ψPd2(F)≒{4/(2π(1+b))}{−ψPd2((1+b)F)} (9)
【0054】
すると、(7)式は、次式のように書ける。
(d−d)−(d−d)≒−2D+2D+2D−2D
+[{4/(2π)}{ψf(aF)}−{4/(2π(1+b))}{ψf((a−b)F)}]
−[{4/(2π)}{ψf(aF)}−{4/(2π(1+b))}{ψf((a−b)F)}] (10)
【0055】
(10)式からは、発光素子13、14の温度位相ドリフトψld1、ψld2、受光素子40、48の温度位相ドリフトψPd1、ψPd2が無くなっているうえ、(10)式の第2行〜第3行及び第4行〜第5行では、「+[]」及び「−[]」の内側でそれぞれ前後の項が打ち消し合い、さらに(10)式の第2行〜第3行及が(10式の)第4行〜第5行と打ち消し合うことから、低域フィルタ43、51の温度位相ドリフトψf、ψfも低減されていることが分かる。
【0056】
次に局部発振信号の周波数を(b/2)>(b−a)>bの条件の下で次式のように変更する。
y3=yLOrcos{2π(1+(b−a))Ft+φ} (11)
【0057】
前記と同様にy4,y5を求めると次式のようになる。
y4=(ypd1,ld1LOr/2)cos{2π(a−b)Ft+ψld1(F)+ψpd1(F)+ψf((a−b)F)−2πF(2D/c)−φ}+(ypd1,ld2LOr/2)cos{2πaFt−ψld2((1+b)F)−ψpd1((1+b)F)+ψf(aF)+2π(1+b)F(2D/c)+φ} (12)
y5=(ypd2,ld1LOr/2)cos{2π(a−b)Ft+ψld1(F)+ψpd2(F)+ψf((a−b)F)−2πF(2D/c)−φ
+(ypd2,ld2LOr/2)cos{2πaFt−ψld2((1+b)F)−ψpd2((1+b)F)+ψf(aF)+2π(1+b)F(2D/c)+φ} (13)
【0058】
測距値dは、中間周波信号の初期位相をθとすると、D=θc/(2πF)と求まるから(ただし、Fは変調周波数)、測距光路23に係るy4の第1項の位相成分から求まる測距値をd、第3の参照光路29に係るy4の第2項の位相成分から求まる測距値をd、第1の参照光路26に係るy5の第1項の位相成分から求まる測距値をd、第2の参照光路31に係るy5の第2項の位相成分から求まる測距値をdとすると、d、d、d、dは、それぞれ次のように求まる。但し、F=75MHzとする。
=−2D+{4/(2π)}{ψld1(F)+ψpd1(F)+ψf((a−b)F)−φ
=2D+{4/(2π(1+b)){−ψld2((1+b)F)−ψpd1((1+b)F)+ψf(aF)+φ
=−2D+{4/(2π)}{ψld1(F)+ψpd2(F)+ψf((a−b)F)−φ
=2D+{4/(2π(1+b))}{−ψld2((1+b)F)−ψpd2((1+b)F)+ψf(aF)+φ} (14)
【0059】
測距値d、d、d、dを次のように加減算を行う。
(d−d)−(d−d)=d−d+d−d
=−2D+2D+2D−2D
+{4/(2π)}{ψpd1(F)−ψpd2(F)+ψf((a−b)F)−ψf((a−b)F)}
−{4/(2π(1+b))}{−ψpd1((1+b)F)+ψpd2((1+b)F)+ψf(aF)−ψf(aF)} (15)
【0060】
ここで、各周波数F、F−Δfは近接しているので、次のように近似する。
{4/(2π)}{ψpd1(F)≒{4/(2π(1+b))}{ψpd1((1+b)F)} (16)
{4/(2π)}{−ψpd2(F)≒{4/(2π(1+b))}{−ψpd2((1+b)F)} (17)
【0061】
すると、(15)式は、次式のように書ける。
(d−d)−(d−d)≒−2D+2D+2D−2D
+[{4/(2π)}{ψf((a―b)F)}−{4/(2π(1+b))}{ψf(aF)}]
−[{4/(2π)}{ψf((a−b)F)}−{4/(2π(1+b))}{ψf(aF)}]
=−2D+2D+2D−2D
−[{4/(2π)}{ψf(aF)}−{4/(2π(1+b))}{ψf((a−b)F)}]
+[{4/(2π)}{ψf(aF)}−{4/(2π(1+b))}{ψf((a−b)F)}] (18)
【0062】
(18)式からは、発光素子13、14の温度位相ドリフトψld1、ψld2、受光素子40、48の温度位相ドリフトψpd1、ψpd2が無くなっているうえ、(18)式の第2行〜第3行及び第4行〜第5行では、「+[]」及び「−[]」の内側でそれぞれ前後の項が打ち消し合い、さらに(18)式の第2行〜第3行及が(18)式の第4行〜第5行と打ち消し合うことから、低域フィルタ43、51の温度位相ドリフトψf、ψfも低減されていることが分かる。
【0063】
前述した以下の(10)式と(18)式を比較すると、
(d−d)−(d−d)≒−2D+2D+2D−2D
+[{4/(2π)}{ψf(aF)}−{4/(2π(1+b))}{ψf((a−b)F)}]
−[{4/(2π)}{ψf(aF)}−{4/(2π(1+b))}{ψf((a−b)F)}] (10)
【0064】
(18)式の第2行〜第3行及び第4行〜第5行は、(10)式の第2行〜第3行及び第4行〜第5行に対して符号が逆になっていることが判る。(10)式と(18)式の平均を取ることにより、第2行〜第3行及び第4行〜第5行の誤差は低減され、
L≒(−2D+2D+2D−2D) (19)
が得られ、最終的な測距値Lにおいては、中間周波信号の温度位相ドリフトψf、ψfを無くすことが出来る。
【0065】
また、本実施例において、低域フィルタ43、51の温度位相ドリフト低減効果を奏するためには、0>a>bの他に、b>a>0の条件でもよいことも分かる。このような条件を満たす周波数の第1の具体例を図3に示す。図3においてAとBの測距値の平均をとるか、またはCとDの測距値の平均をとれば、本実施例と同様の効果が得られる。本実施例においては、生成された中間周波信号に基づいて一旦算出された測距値と、温度位相ドリフト変化を逆にして算出された測距値を算出した上で平均値を取ることにより、温度位相ドリフトが軽減されるため、目標対象物までの距離が正確に算出される。尚、具体的な周波数の構成は、この図に限られない。そして図3では、AとBの中間周波信号の周波数を同じにしているが、中間周波信号の周波数は、測定したドリフト量が少なければ、多少異なっていても良い。尚、図3の周波数例におけるAとBのブロック図は、図1に示すものとなる。一方、CとDのブロック図は、図4に示すものとなる。
【0066】
また、本実施例において中間周波信号の周波数間隔を離しても、中間周波信号の温度位相ドリフトは、同様に低減される。このような条件を満たす周波数の第2の具体例(第1の具体例の変形例)を図5に示す。図5においてAとBの測距値の平均をとるか、またはCとDの測距値の平均をとれば、第1の具体例と同様の効果が得られる。但し、具体的な周波数の構成は、この図に限られない。そして表2では、AとBの中間周波信号の周波数を同じにしているが、中間周波信号の周波数は、測定したドリフト量が少なければ、多少異なっていても良い。
【0067】
また、図5の周波数例においては、中間周波信号の周波数を離すことで、周波数変換器に接続している低域フィルタを帯域フィルタ60〜67にすることができ、中間周波信号を分離し、それぞれに図示しないA/D変換器を接続する。帯域フィルタにすることができる理由は、図3のように中間周波信号の周波数が近接している場合に帯域フィルタを使うと、一方の帯域フィルタの位相特性が他方の中間周波信号の位相に影響を与えてしまい、測定誤差となるが、中間周波信号の周波数を離すと、この影響が無くなるからである。
【0068】
そして、帯域フィルタは、白色雑音を少なくすることも出来るので、測距値のバラツキを低減する効果もある。即ち、中間周波信号の周波数を離した場合には、低域フィルタを帯域フィルタにでき、中間周波信号の温度位相ドリフトを低減しながら白色雑音を減らし、測距値のバラツキを低減できる。尚、図5の周波数例におけるAとBのブロック図は、図6に示すものとなり、CとDのブロック図は、図7に示すものとなる。
【0069】
ここで、本実施例のデジタル帯域フィルタの原理についても、簡単に説明する。周期関数yは、定数項を省略すると、次式のようなフーリエ級数で表すことができる。y=asinωt+asin2ωt+asin3ωt+・・・・+asin(nωt)+・・・・・
+bcosωt+bcos2ωt+bcos3ωt+・・・・bcos(nωt)+・・・・ (19)
【0070】
ただし、a=(1/π)∫2πysin(nωt)dt (20)
=(1/π)∫2πycos(nωt)dt (21)
【0071】
前記(20)式及び(21)式から、周期関数yに対して基本波(最も周波数が低いもの)asinωt+bcosωtと同じ周期のsin波を乗じたものを基本波の1周期にわたって積分するとaが求まり、周期関数yに対して基本波のn倍波のsin波を乗じたものを基本波の1周期にわたって積分するとaが求まる。また、周期関数yに対して基本波asinωt+bcosωtと同じ周期のcos波を乗じたものを基本波の1周期にわたって積分するとbが求まり、周期関数yに対して基本波のn倍波のcos波を乗じたものを基本波の1周期にわたって積分するとbが求まる。これから、n倍波(n=1の場合は基本波)の振幅Aと初期位相φは次式から求まる。
=√(a+b) (22)
φ=tan−1(b/a) (23)
【0072】
前記実施例において、各中間周波信号の周波数は、一例として最も低いものがΔfであった場合、その他のものはΔf/3の整数倍でΔf×2/3、Δf/3、Δf×2/3となっている。したがって、4つの中間周波信号を加算した全中間周波信号は、周波数Δf/3を基本波asinωt+bcosωtとする周期関数yとなり、前記(19)〜(21)式で表すことができる。
【0073】
そこで、4つの中間周波信号を加算した全中間周波信号yを基本波の1周期について適宜回数(例えば320回)サンプリングして基本波と同じ周期のsin波を乗じたものを合計するとaが求まる。全中間周波信号yを基本波の1周期について適宜回数サンプリングして基本波と同じ周期のcos波を乗じたものを合計するとbが求まる。これから、(22)式及び(23)式を用いると、周波数Δf/3の中間周波信号の振幅Aと初期位相φが求まる。
【0074】
次に、全中間周波信号yを基本波の1周期について適宜回数サンプリングして基本波の2倍波のsin波を乗じたものを合計するとaが求まる。全中間周波信号yを基本波の1周期について適宜回数サンプリングして基本波の2倍波のcos波を乗じたものを合計すると、bが求まる。これから、(22)式及び(23)式を用いると、周波数Δf×2/3で2倍波である中間周波信号の振幅Aと初期位相φが求まる。
【0075】
以下同様に、全中間周波信号yを基本波の1周期について適宜回数サンプリングして基本波のn倍波のsin波を乗じたものを合計するとaが求まる。全中間周波信号yを基本波の1周期について適宜回数サンプリングして基本波のn倍波のcos波を乗じたものを合計するとbが求まる。これから、(22)及び(23)式を用いると、n倍波である中間周波信号の振幅Aと初期位相φが求まる。例えば、各中間周波信号の周波数比が、1:2:20:40であったとすると、周波数Δf/3、Δf×2/3の中間周波数についても、それぞれの振幅A20、A40と、それぞれの初期位相φ20、φ40を求めることができる。なお、この周波数比の場合、A、A、A20、A40及びφ、φ、φ20、φ40以外については計算する必要はない。
【0076】
尚、本発明は、前記実施例に限るものではなく、例えば、本発明は、光波距離計だけでなく、光波距離計を内蔵した測量機、例えばトータルステーションや、その他の距離測定装置等にも広く利用できる。
【符号の説明】
【0077】
13、14 発光素子
22 目標反射物
23 測距光路
26、29、31 参照光路
40、48 受光素子
42、44、50、52 周波数変換器
100 第1の局部発振周波数生成器(局部発振信号生成器)
101 第2の局部発振周波数生成器(局部発振信号生成器)
、F、 主変調周波数
−Δf、F−Δf 傍変調周波数
Δf/3、Δf/3、Δf×2/3、Δf×2/3
中間周波信号(微少値)
−Δf/3、F−Δf/3、F−Δf×2/3、F−Δf×2/3 局部発振周波数(局部発振信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の主変調周波数で変調された光を出射する第1の発光素子と、前記各主変調周波数それぞれに近接した複数の傍変調周波数で変調された光を出射する第2の発光素子と、両発光素子から出射された光を受光する第1の受光素子及び第2の受光素子と、第1の受光素子に接続された第1の周波数変換器群と、第2の受光素子に接続された第2の周波数変換器群と、前記各主変調周波数と各主変調周波数それぞれに近接した傍変調周波数との双方に近接した異なる周波数を有する複数の局部発振信号の組み合わせを複数生成する複数の局部発振信号生成器と、を備え、第1の発光素子から出射された光は2つに分けられ、一方は測距光として目標反射物までを往復する測距光路を経て第1の受光素子に入射し、他方は参照光として第1の参照光路を経て第2の受光素子に入射し、第2の発光素子から出射された光は2つに分けられ、一方は参照光として第2の参照光路を経て第2の受光素子に入射し、他方は参照光として第3の参照光路を経て第1の受光素子に入射し、前記第1の周波数変換器群及び前記第2の周波数変換器群は、それぞれ、前記主変調周波数と同数の周波数変換器から構成され、各周波数変換器には、前記複数の局部発振信号の組み合わせのうち一つが入力されることによって前記各周波数変換器で発生させた、数値の異なる複数の中間周波信号を用いて目標反射物までの測距値が算出され、更に前記各周波数変換器に入力された前記局部発振信号の組み合わせが異なる局部発振信号の組み合わせに少なくとも1回変更され、前記組み合わせの変更毎に目標反射物までの測距値が算出され、得られた各測距値の平均値を用いて目標反射物までの距離を算出する光波距離計。
【請求項2】
前記複数の主変調周波数は、第1の主変調周波数と第2の主変調周波数からなり、
前記複数の中間周波信号は、第1の微少値を有する第1の中間周波信号と第2の微少値を有する第2の中間周波信号からなり、
前記複数の異なる局部発振信号の組み合わせは、前記第1の主変調周波数に所定の定数を乗じて得た前記第1の微少値を前記第1の主変調周波数に増減してなる周波数を有する第1の局部発振信号と、前記第2の主変調周波数に所定の定数を乗じて得た前記第2の微少値を前記第2の主変調周波数に増減してなる周波数を有する第2の局部発振信号からなり、
前記第1の局部発振信号と第2の局部発振信号によって測距値を算出されたあと、第1の局部発振信号は、前記第1の微少値を2倍して得た第3の微少値を前記第1の主変調周波数に増減してなる周波数を有する第3の局部発振信号に変更され、前記第2の局部発振信号は、前記第2の微少値を2倍して得た第4の微少値を前記第2の主変調周波数に増減してなる周波数を有する第4の局部発振信号に変更されることを特徴とする請求項1に記載の光波距離計。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−122878(P2012−122878A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274533(P2010−274533)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000148623)株式会社 ソキア・トプコン (114)
【Fターム(参考)】