光測定装置
【課題】試料の動的な光解析方法を迅速に効率良く行なう光測定装置を提供する。
【解決手段】レーザ光源1と、対物レンズ10と、光検出器2と、試料容器22と、光学素子と、偏芯回転ミラー40と偏芯回転ミラー40を回転させるモーター41とにより構成されるビーム走査機構9と、制御信号を発生し、ビーム走査機構9の駆動制御を行なうビーム走査機構制御部とを備え、試料容器に保持された溶液中の生物学的試料の物理的性質について複数種類の測定項目に対応した測定を行なう光測定装置であって、FIDA測定を行なう場合は、偏芯回転ミラー40を回転させてレーザ光の集光スポットを前記試料容器に保持された溶液内のフォーカス位置で略楕円状に光走査し、FCS測定を行なう場合は、光軸を通った光が対物レンズを光軸に沿って通過する向きに偏芯回転ミラーのミラー面を固定し、光軸を通った光により溶液内でコンフォーカル照明を行う。
【解決手段】レーザ光源1と、対物レンズ10と、光検出器2と、試料容器22と、光学素子と、偏芯回転ミラー40と偏芯回転ミラー40を回転させるモーター41とにより構成されるビーム走査機構9と、制御信号を発生し、ビーム走査機構9の駆動制御を行なうビーム走査機構制御部とを備え、試料容器に保持された溶液中の生物学的試料の物理的性質について複数種類の測定項目に対応した測定を行なう光測定装置であって、FIDA測定を行なう場合は、偏芯回転ミラー40を回転させてレーザ光の集光スポットを前記試料容器に保持された溶液内のフォーカス位置で略楕円状に光走査し、FCS測定を行なう場合は、光軸を通った光が対物レンズを光軸に沿って通過する向きに偏芯回転ミラーのミラー面を固定し、光軸を通った光により溶液内でコンフォーカル照明を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の分子に蛍光物質を標識した生物学的な試料溶液中に光を照射し、蛍光物質から発せられた蛍光の強度の時間的な変化を解析して、試料分子の統計的な性質を求めることで、試料分子の反応や反応による状態変化を測定する光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光を用いた測定技術の進歩に伴い、生体の細胞内外に極めて小さな光スポットを形成し、細胞内外の分子の挙動を動的に調べる方法が注目されている。例えば、蛍光物質を細胞内のターゲットとする生体分子に標識し、蛍光物質から発せられる蛍光の強度の時間的な変化を解析することにより、分子の溶液中での振舞いを高感度に捉えることができる。
【0003】
このような解析方法として、蛍光相関分光解析法(Fluorescence Correlation Spectroscopy : FCS)や蛍光強度分布解析法(Fluorescence Intensity Distribution Analysis : FIDA)等が良く用いられている。
【0004】
FCSでは、測定したい分子に蛍光物質を標識し、マイクロプレートなど試料容器内に収納する。そして試料容器の試料槽の中にレーザ光を微小な光スポットとして照射して、蛍光物質を励起する。このとき蛍光物質から発せられる蛍光の強度は時間と共にゆらぐ。これは、媒質中の蛍光分子がブラウン運動をしているためである。蛍光分子のブラウン運動の拡散速度は、分子の化学反応や結合反応などにより変化する。従って、蛍光分子の拡散速度は、標識した蛍光分子の見かけの大きさの変化や媒質の温度の変化に伴って変化する。
【0005】
そこでこの分子の溶液内での化学反応や結合反応などによるブラウン運動の速度の変化を、蛍光の光強度の時系列信号の統計的な変化として捉えて相関解析を行なうことで、分子や微粒子の並進拡散係数や、平均の分子数などを測定することができる。そして、測定結果として分子の化学反応や結合反応などを動的に捉えることができる。
【0006】
FCSについては、たとえば非特許文献1、2に解説が掲載され、特許文献1、2、3にFCSに関する技術が開示されている。
【0007】
FIDAでは、FCSと同様に測定したい分子に蛍光物質を標識し、マイクロプレートなど試料容器の試料槽の中にレーザ光を微小な光スポットとして照射して、蛍光物質を励起する。そして、単位時間当たりに蛍光物質から発せられる蛍光の光強度を測定し、これの統計分布を解析する。単位時間に検出される蛍光の光子の数の統計分布を解析することによって、蛍光分子の明るさと濃度、即ち、対象とする分子の数と明るさについての情報を得ることができる。この明るさに関する情報を用いることにより、化学反応や結合反応などによる蛍光標識された分子の見かけの大きさの変化を高感度で検出することができる。
【0008】
さらに偏光を用いたFIDA-Polarization(Fluorescence Intensity Distribution Analysis-Polarization)も行なうことができ、回転ブラウン運動を行なう分子の数や分子の見かけの大きさの変化を調べることができる。
【0009】
さらにFIDAでは、溶液中で光の照射領域を積極的に移動させて、試料中のできるだけ広い領域で測定を行ない、1回当たりの測定時間を短縮させることもできる。なお、FIDAは光強度の統計分布を求めるためにFCSに比べて光照射領域を大きめにとる必要がある。
【0010】
FIDAについては、Peet Kask,Kaupo Palo,DirkUllma nn and Karsten Gall PNAs Nov23, 1999,vol. 96,No.24,p.13756−13761,Biophysical Journa l Vol.79,(2000)p.2858−2866,米国特許第6,376,843 号に記述されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、生物試料の動的特性を光学的に調べるに際し、FCS、FIDAを同時に、または順次測定しようとする場合、煩雑で手間がかかると共に、広い作業スペースも必要 となっていた。FCSを用いる場合とFIDAを用いる場合とでは、測定装置内に配置され る光学素子などの組み合わせが異なるために、それぞれの測定を行う毎に光学素子を入れ替 えたり、あるいは測定に特化した異なる複数の測定装置を設けて並行した測定を行なわなければならない。
【0012】
更に1つの測定装置で、FCSやFIDAといった異なる測定項目について測定を行なおうとする場合、レンズやフィルタなどの光学素子を入れ替えた後に、再び光軸の調整を行なう必要があり、煩雑であると共に手間と時間を要していた。
【0013】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであって、同一の測定装置で異なる測定項目についての測定を行う場合であっても、測定装置の基本構成を変えることなく、種々の試料の動的な光解析を迅速にかつ効率良く行なうことができる光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明における光測定装置は、レーザ光源と、対物レンズと、光検出器と、試料容器と、光学素子と、前記レーザ光源と前記試料容器との間の光路上に配置され、偏芯回転ミラーと 前記偏芯回転ミラーを回転させるモーターとにより構成されるビーム走査機構と、制御信号を発生し、前記ビーム走査機構の駆動制御を行なうビーム走査機構制御部と、を備え、前記試料容器に保持された溶液中の生物学的試料の物理的性質について複数種類の測定項目に対応した測定を行なう光測定装置であって、前記ビーム走査機構は前記ビーム走査機構制御部より前記制御信号を受信して、FIDA(Fluorescence Intensity Distribution Analysis) 測定を行なう場合は、前記偏芯回転ミラーを回転させてレーザ光の集光スポットを前記試料容器に保持された溶液内のフォーカス位置で略楕円状に光走査し、FCS(Fluorescence Co rrelation Spectroscopy)測定を行なう場合は、光軸を通った光が前記対物レンズを光軸に沿って通過する向きに前記偏芯回転ミラーのミラー面を固定し、前記光軸を通った光が前記 溶液内でコンフォーカル照明を行う。
【発明の効果】
【0015】
従って、本発明の光測定装置によれば、測定装置の基本構成を変えることなく、さまざまな試料の動的な光解析を迅速にかつ効率良く行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光測定装置の基本的な構成を示す図。
【図2】ビームシフタを示す図。
【図3】ダイクロイックミラー保持部材を示す図。
【図4】液浸水の自動給排液機構を示す図。
【図5】ピンホールホルダー等を示すフロー図。
【図6】バリア・フィルタ支持基板とバリア・フィルタ回転機構を示す図。
【図7】測定中の光検出器の状態を示す図。
【図8】問題を解決する方法を示す図。
【図9】問題を解決する他の方法を示す図。
【図10】第1の実施の形態の変形例を示す図。
【図11】測定中の光検出器の状態を示す図。
【図12】問題を解決する方法を示す図。
【図13】問題を解決する他の方法を示す図。
【図14】第1の実施の形態の他の変形例を示す図。
【図15】フェルール型光学素子の構成を示す図。
【図16】フェルール型光学素子の断面図。
【図17】フェルール型光学素子の他の実施例を示す図。
【図18A】ビーム走査機構の切り替え方法を説明する図。
【図18B】ビーム走査機構の切り替え方法を説明する図。
【図19A】ビーム走査機構の他の切り替え方法を説明する図。
【図19B】ビーム走査機構の他の切り替え方法を説明する図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は光測定装置の基本的な構成図である。
【0019】
本発明による光測定装置は、主な構成部として、光源部15、光量モニタ機構7、ビーム走査機構9、対物レンズ10、液浸水供給機構11、試料保持機構18、光検出部16及び信号処理部17を備えている。
【0020】
以下、光測定装置の詳細の構成と動作について説明する。
【0021】
光源部15には、レーザ光源1、シャッター23、ビーム径可変機構5、回転式NDフィルタ36、ビームシフタ102、ミラー100及びダイクロイックミラー3が設けられている。
【0022】
光源部15には3種類のレーザ光源1が載置されている。本実施の形態では、ヘリウムネオン・レーザ(発振出力1mW、波長:543nm)、 ヘリウムネオン・レーザ(発振出力2mW、波長:633nm)、およびアルゴン・レーザ(発振出力10mW、波長:488nm)が設けられている。
【0023】
光源として用いるレーザはパルスレーザであっても良い。例えば、CWモード同期アルゴンイオン・レーザを用いると、波長514.5nm、平均出力100mW、パルス幅200ピコ秒のレーザパルスを得ることができる。
【0024】
また、音響光学チューナブルフィルタ(AOTF)を搭載したマルチラインのレーザも載置可能である。マルチラインのレーザには、複数の波長のレーザ光が含まれているため、AOTFによって発振波長の切り替えを行なうように構成することで、載置するレーザの台数を減少することができる。
【0025】
各レーザ光源1の出射端近傍にはシャッター23がそれぞれ設置されており、シャッター23はそれぞれ電子制御により開閉される機構(図示せず)になっている。出射されたレーザ光はレンズを組み合わせたビーム径可変機構5でビーム直径を拡大され、平行光にされる。ビーム径可変機構5を構成するレンズの組み合わせを変えることで、焦点距離を変えて射出ビーム直径を調整することができる。
【0026】
それぞれ平行光とされたレーザ光は各々の光路に用意された回転式ND(Neutral Density)フィルタ36、ビームシフタ102を通過した後、ミラー100、ダイクロイックミラー3で選択的に反射、または透過される。そして、3つのレーザ光源1からの光路は1つの光路にまとめられる。3つの光路を同一の光路にまとめる操作は、ビームシフタ102を調整することで行われる。
【0027】
ビーム走査機構9にはビーム走査機構制御部99が接続されている。ビーム走査機構制御部99は制御信号を発し、ビーム走査機構9の配置及び動作を制御する。即ち、ビーム走査機構9の稼動/非稼動状態を切替える。さらにビーム走査機構9を構成する偏芯回転ミラー40の回転角をFIDA測定、FCS測定などの測定条件に対応して制御する。
【0028】
図2は、ビームシフタ102を示す図である。ビームシフタ102は、所定の厚さを持つガラス板が2軸の自由度で動く構造を備えている。ビームシフタ102の調整は、後に示す光量モニタ機構7の光検出器53の検知出力が最大になるようにガラス板を2軸を中心として回転することにより行なう。またこの調整は、光検出器53の検知出力をコンピュータ14に入力して、コンピュータ14からの制御出力に基づいて、ガラス板の2軸を駆動することでも可能である(駆動機構は図示していない)。
【0029】
ビームシフタ102の調整によってレーザ光源1からのレーザビームは1つのビームにされ、ミラー4で方向を曲げられ、偏光素子ホルダー28に到達する。偏光素子ホルダー28はスライド式の板状構造となっており、通常2箇所の円形の偏光素子保持枠が設けられている。一方の保持枠に円形の偏光素子が配置されており、もう一方は空隙になっている。そして、この偏光素子ホルダー28に取り付けられた偏光素子ホルダー駆動部39によって偏光素子ホルダー28をスライドさせることにより、必要に応じて偏光素子が光路上に設置されるようになっている。
【0030】
この偏光素子ホルダー駆動部39によるスライド調整は、ステッピングモータを用いた制御装置により行なわれる(図示せず)。光測定装置を用いて偏光測定を行なう場合は、偏光素子ホルダー28に偏光素子が設置され、光路上に偏光素子が載置される。偏光測定を行わない場合は光路上には偏光素子は存しない。なお、偏光素子ホルダー28は円板状であっても良い。あるいは円板の周囲に複数の偏光素子を載置し、偏光素子ホルダー28を回転させることで、偏光素子を切り替えて用いても良い。
【0031】
偏光素子ホルダー28に配置する偏光素子には、例えばシート状の偏光板を用いることができる。しかし偏光板に限ることなく、例えばグラントムソン・プリズム(Glan Thompson Prism)などの消光比の高い偏光素子を用いると、さらに精度の高い偏光測定を行なうことができる。
【0032】
レーザビームは、偏光素子ホルダー28を通過後、円板状のハーフミラー6に入射する。そして、レーザビームの一部はハーフミラー6で反射されて光量モニタ機構7に入る。光量モニタ機構7はレンズ51、ピンホール220、光検出器53を備え、レーザビームはこれらの光学素子を通って光検出器53の受光面に集光する。光検出器53は半導体光検出器を用いる。
【0033】
光検出器53の検知出力は、コンピュータ14に入力され、コンピュータ14は、この値に基づいて、あらかじめ設定した光源出力光強度になるように、レーザ駆動電源(図示しない)の駆動電流を制御する。あるいは回転式NDフィルタ36をコンピュータ14が制御(図示しない)することで、レーザ光源1からの光出力強度を調整することもできる。
【0034】
ハーフミラー6を通過したレーザビームは偏芯回転ミラー40に達する。このとき偏芯回転ミラー40は回転に伴って反射光の方向が中心軸の周りに回転運動するように傾いて調整されている。そのため、レーザビームは対物レンズ10の光軸に対して、ある傾き角を持って入射する。偏芯回転ミラー40をモータ41で回転させることで、対物レンズ10を通過した光ビームの集光スポットは試料内で略楕円状に走査される。なお、集光スポットを走査させるのは、FIDA測定を行なう場合であり、FCS測定を行なう場合には集光スポットは固定される。具体的には、ビーム走査機構制御部99から制御信号が発生し、ビーム走査機構9を稼動状態として偏芯回転ミラー40を測定条件に対応した所定の角度だけ回転させ、停止させる。これにより、光源から発せられたレーザ光は光軸に沿って進み、対物レンズを通って、試料内でコンフォーカル照明を行う。
【0035】
即ち、FIDA測定を行なう場合は、モータ41を回転させ、それに伴って偏芯回転ミラー40が回転運動を行ない、光軸を通った光は対物レンズを通って溶液内のフォーカス位置で略楕円を描きながら試料を光照射する。
【0036】
FCS測定を行なう場合は、コンピュータ制御によりモータ41を停止し、偏芯回転ミラー40を適切な位置で固定する。このとき、偏芯回転ミラー40のミラー面の向きは光軸を通った光が対物レンズを光軸に沿って通過する向きに設定されるようにあらかじめモータ41の停止位置はビーム走査機構制御部99により、決められている。
【0037】
また、FCS測定の場合に、偏芯回転ミラー40とは別の、光軸に対して偏芯していないミラー90に切り替えるようにしても良い。
【0038】
レーザ光は続いて切り替え式ダイクロイックミラー101で反射され、対物レンズ10に入射する。対物レンズ10として、例えば×40水浸対物レンズ(NA1.15)を用いる。対物レンズ10は補正環が無いドライタイプを用いても良いし、あるいは液浸タイプで補正環を具備しているものを用いてもよい。
【0039】
この切り替え式ダイクロイックミラー101は円板状のガラス板の表面に多層膜コーティングを施して、透過、反射のスペクトル特性が最適になるように製作されている。切り替え式ダイクロイックミラー101としては円板状に限らず、プリズムタイプのものを用いても良い。また切り替え式ダイクロイックミラー101は裏面反射によるノイズ光が信号光に混入するのを防ぐため、基板となるガラスの厚さを最適に調整してあるものを用いる。
【0040】
この切り替え式ダイクロイックミラー101は光源としてのレーザ光と試料から発せられた蛍光信号を分離する役割がある。測定に用いる波長を変更するときは、透過、反射特性の異なる複数個のダイクロイックミラー101の内から最適なものを選択して切り替えて用いる。
【0041】
図3は、ダイクロイックミラーの切り替えに使用するダイクロイックミラー保持部材を示す図である。
【0042】
図3に示すダイクロイックミラー保持部材58は、複数の円形のダイクロイックミラー101が横方向に一列に搭載されたスライド式の構造であるが、レボルバーやターレットに搭載された回転式のものを用いても良い。ダイクロイックミラー保持部材58はアルミニュームのような金属を用いる。ここでダイクロイックミラー101の形状は円形に限らず、正方形や長方形でも良い。また、切り替え式ダイクロイックミラー101の代わりに音響光学素子(AOTF)を用いて、透過光と反射光の波長を選択しても良い。
【0043】
試料を収容する試料容器にはマイクロプレート20(96,384穴など)を用いる。マイクロプレート20は樹脂、あるいはガラス製であり、図1に示すように同一形状のウェル22(試料を収容する溝)が多数並んで配列されている。マイクロプレート20のウェル22部分の底面は、ガラス、アクリル樹脂などの光学的に透明な材質で形成されており、対物レンズ10を通過した光が殆んど減衰することなく、ウェル22内に収容された試料に入射するようになっている。
【0044】
図4は、液浸タイプの対物レンズを用いるときに必要な液浸水の自動給排液機構21を示す図である。試料ステージ19にマイクロプレート20を載置し、クリップなどの固定具でマイクロプレート20を試料ステージ19に固定する。
【0045】
対物レンズ10はマイクロプレート20の底面に向かうように倒立させて配置する。対物レンズ10先端部に給液ボトル56に浸されたチューブ103を介して先端部のノズル104により液浸水を滴下し、対物レンズ10の先端部とマイクロプレート20底面の間を液浸水で満たす。液浸水がこぼれたり、あふれたりした場合は対物レンズ10の周囲に配設された液浸水保持プレート55で保持する。
【0046】
一方、測定中に対物レンズ10の上面に保持された液浸水が無くなった場合、この情報をコンピュータ14にフィードバックして、給液ボトル56内の液浸水をポンプ駆動により自動的に対物レンズ10先端部に給液する。測定終了後、自然に液浸水は乾燥するが、必要以上に給液されたものは、廃液ボトル57に自然に落下するようになっている。またはノズル104により吸引し、切替機構(不図示)により切り替えて、廃液ボトル57へ導入する廃液機構とすることも可能である。
【0047】
なお、自動給排液機構21による給排液は水に限らず、オイルでも良い。マイクロプレート20を試料容器として用いて観察、測定する場合は通常、数多くのウェル22内に試料を収容し、試料ステージ19を駆動して位置調整を行ない、それぞれの試料について測定、あるいは観察を行なう。
【0048】
試料ステージ19にはX軸、Y軸方向に沿ってステッピングモータ(図示しない)が取り付けられており、マイクロプレート20を精密に水平方向(X−Y軸方向)に移動させることができる。そして試料ステージ19をXY平面内で作動させて、マイクロプレート20を移動調整しながら、順次測定を繰り返し行なう。
【0049】
また対物レンズ10の周囲には対物レンズZ軸保持機構43が具備されており、コンピュータの指令により、対物レンズZ軸保持機構43を光軸方向(Z軸方向)に移動させる。すなわち、ウエル22内でのレーザ光のフォーカス位置を光軸方向に沿って上下動させることができる。
【0050】
レーザ光は対物レンズ10を通って集光されたあと、試料を収容したマイクロプレート20のウェル22内で極めて微小な光スポットを形成する。レーザ光の集光位置は水平方向(X−Y軸方向)についてはウエルの中央部分、垂直方向(Z軸)については、試料内のほぼ中央部分となっている。このとき、ウェル22内で得られるレーザ光の共焦点領域の大きさは直径0.6μm程度、長さ2μm程度の略円筒状の光スポットとなる。
【0051】
試料に直接ラベルして用いる蛍光物質はそれぞれローダミン・グリーン(RhG)、TAMRA、Alexa647であり、ローダミン・グリーン(RhG)は波長488nmのアルゴンレーザで励起し、TAMRAは波長543nmのヘリウム・ネオンレーザで励起し、Alexa647は波長633nmのヘリウム・ネオンレーザで励起する。
【0052】
対物レンズ10で集光されたレーザ光はウエル22内で試料内の蛍光分子を励起し、蛍光分子から蛍光が発せられる。この蛍光は再び信号光として対物レンズ10に取り込まれ、続いて切り替え式ダイクロイックミラー101に到達する。信号光の波長は入射レーザ光の波長より長く、そのため切り替え式ダイクロイックミラー101を透過して、反射プリズム200で反射され、レンズ210でレンズ210の後方に配置されたピンホール220のピンホール面に集光される。
【0053】
対物レンズ10の焦点位置と共役な光軸上の位置にピンホール220が位置決めされるようにピンホールホルダー50が配置されている。ピンホールホルダー50は、図5(a)に示すようにピンホール直径が異なる複数のピンホールが一列に並んだスライド式になっており、必要な共焦点領域(光スポット領域)の大きさに合わせて、最適なピンホールが配置されるように調整される。あるいは図5(b)に示すように切り欠きを有する板状部材を2枚、切り欠き部が互いに向かい合うように配置し、板状部材の互いの間隔を変化させ、中央部にできる矩形の枠の大きさを連続的に変化させる構成であってもよい。
【0054】
ピンホール220の手前にバリア・フィルタ45が配置されている。バリア・フィルタ45は蛍光の発光スペクトルに合わせて、透過光のスペクトルが調整されるようになっている。すなわち、バンドパスフィルタとなっており、信号光となる蛍光の発光スペクトルの波長域の光のみが通過する。これにより、試料容器内で発生する散乱光やウェル22の壁などから反射して入射光路に戻ってくる入射光の一部などのノイズ光をカットすることができる。蛍光の波長とバックグラウンド光の波長が異なるためノイズ光を遮断できる。なお、バリアフィルタ45として、音響光学素子によるビームスプリッター(AOBS)を用いても良い。
【0055】
レンズ210の焦点面とピンホール220の開口面とが一致するように配置されている。このピンホール220には光位置検出器とピンホール駆動装置が取り付けられており(図示しない)、ピンホール220はピンホール駆動装置により、X−Y−Z軸方向に位置調整できるようになっている。従って、レンズ210の焦点面にピンホール220の開口面を一致させることができる。
【0056】
また、ピンホール220の位置はバリア・フィルタ45の切り替え、あるいは音響光学素子によるビームスプリッター(AOBS)の切り替えに対して、デフォルト位置に自動的に戻る機構を有している。このピンホール220により、ウェル内に形成された光の共焦点領域外からのバックグラウンド光が除去される。
【0057】
図6は、バリア・フィルタ支持基板501とバリア・フィルタ回転機構を示す図である。バリア・フィルタは円板状になっており、図に示すように円板状のバリア・フィルタ支持基板501の円周に沿って配置されている。バリア・フィルタ支持基板501は、その中心軸の周りに回転するが、このとき、所定位置にあるバリア・フィルタの中心軸は光軸と一致する。
【0058】
バリア・フィルタ支持基板501の中心に回転軸502が取り付けられており、この回転軸502にはギア503−1が取り付けられている。ステッピングモータ504の回転軸508にはギア503−2が取り付けられている。ギア503−1とギア503−2とのギア比に従って、ステッピングモータ504の回転がバリア・フィルタ支持基板501に伝えられる。
【0059】
一方、バリア・フィルタ支持基板501の円周面の一角に回転支持板505が取り付けられており、フィルタホイール支持台506に取り付けられた非接触位置検出器507の検出部分507−1の溝の間を通過するように構成されている。なお、回転支持板505は光学的に不透明な材質、例えば黒色塗布したアルミニューム板を用いる。
【0060】
非接触位置検出器507の溝構造部分507−1は赤外発光ダイオードと赤外線光検出器とが互いに向き合って配置されている。検出部分507−1の溝の間を回転支持板505が通過したときは赤外線が遮られるため、回転支持板505が通過したことを検出することができる。なお、この位置はバリア・フィルタ支持基板501の初期位置として規定されている。
【0061】
バリア・フィルタ支持基板501が回転した角度は、この回転支持板505が初期位置にあるときからのステッピングモータ504の回転角により一義的に決められる。即ち、現在の各バリア・フィルタの位置が確定する。従って、各バリア・フィルタの切り替えはステッピングモータ504の回転を制御することによって行なわれる。
【0062】
ここで、非接触位置検出器507が回転支持板505を検出する方法には光を用いる方法の他に、静電容量の変化を利用する方法や、磁気を用いる方法などがあり、いずれの方法を用いてもよい。なお、バリア・フィルタ支持基板501の回転軸はフィルタホイール支持台506に回動自在に取り付けられている。
【0063】
ピンホール220を通過した信号光はコリメートレンズ59により平行光とされてダイクロイックミラー/偏光ビームスプリッター38により、互いに垂直な2方向に分離される。ダイクロイックミラー/偏光ビームスプリッター38は、ダイクロイックミラーと偏光ビームスプリッターとを切り替える機構を備えている。この切り替え機構には、例えば、図6に示したような回転機構を用いても良い。2種類の蛍光物質を用いて相互相関測定を行なう場合は、ダイクロイックミラーが自動的に選択されるようになっており、異なる蛍光物質の発光のスペクトに合わせて、反射光、および透過光のスペクトルを規定する。偏光測定を行う場合は、偏光ビームスプリッターが自動的に選択されるようになっており、反射光、および透過光で異なる偏光成分を分離する。分離されたそれぞれの信号光はバンドパスフィルタ64でそれぞれの励起レーザ光の波長の光を選択的に遮断して、信号光のS/N比を向上させる。
【0064】
バンドパスフィルタ64を通過した信号光はレンズ12により集光されて、光検出器2の受光面に到達する。それぞれの光検出器2には光位置検出器と光検出器駆動装置が取り付けられており、光検出器2の受光面は光検出器駆動装置により、X−Y−Z軸方向に沿って位置調整できるようになっている。光検出器2は例えばアバランシェ・フォトダイオード(略称:APD)、あるいは光電子増倍管などの微弱光検出器を用いる。光位置検出器は半導体光位置検出器を用いる。
【0065】
次に、光検出器2の位置調整方法について説明する。
【0066】
図7は、実際に測定を行っているときの光検出器の状態を示す図である。光検出器2が適正に光を受光するためには、受光面が焦点位置にあり、かつ受光面内の所定位置に光が照射されていることが必要である。しかし、ダイクロイックミラー101、バンドパスフィルタ64の切り替えによってレンズ12で信号光が集光される位置がシフトする。
【0067】
図8は、この問題を解決する一方法を示す図である。光学素子を切り替えた後の非測定時において、レンズ12により信号光が集光する位置近傍に、光位置検出器を挿入する。光位置検出器は光が当たった位置を座標(X、Y)の情報として出力する。この座標位置が光検出器2の受光面の所定位置になるように、光検出器駆動装置が光検出器2を駆動する。そして、光位置検出器を外に移動する。
【0068】
図9は、この問題を解決する他の方法を示す図である。この方法では、光位置検出器は使用しない。光検出器駆動装置が光検出器2を移動して、光検出器2自身で信号をモニタし、受光強度が一番強くなる位置に位置決めする。この方法は、光学素子を切り替えることによる集光位置のシフト量が僅かな場合、集光位置が光検出器2の受光面内に収まっている場合に適用することができる。
【0069】
光検出器2で受光される信号光は微弱光であり、フォトン・パルス信号となっている。光検出器2によって、このフォトン・パルス信号は電気信号(光電流パルス信号)に変換され、増幅されて信号処理装置8に送られる。信号処理装置8によって、この電気パルス信号は波形整形され、on−off電圧パルスとされて、コンピュータ14に導かれる。この電圧パルスはコンピュータ14のメモリ(図示しない)に記憶され、続いて相関分光解析、光強度分布解析などの演算が行なわれる。これによって得られた蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数、相互相関関数、あるいは光強度分布関数などがコンピュータ14により計算される。そして、コンピュータ14の画面上に測定結果(グラフ、またはデータ)が提示され、あるいはコンピュータ14のメモリ(図示しない)に記憶される。
【0070】
次にコンピュータ14による制御動作について説明すると、コンピュータ14は測定に用いるレーザ光源1を選択し、電源を投入する。また、シャッター駆動電源(図示しない)に働きかけ、必要に応じて、シャッター23を開閉する。さらに光量モニタ機構7の光検出器53の出力をモニタして、レーザ光源1の出力光強度が所望のレベルになるように、モータ(不図示)の駆動電流を調整する。これによってモータに取り付けられている円盤状の回転式NDフィルタ36を必要な角度だけ回転させる。
【0071】
回転式NDフィルタ36は円周方向に沿って変化する透過率分布を備えているため、回転によってレーザ光の強度を変化させることができる。なお、回転式NDフィルタ36は円盤状ではなく、板の長手方向に沿って段階的に透過率が変化する板状のものを用いても良い。板状のNDフィルタを用いる場合はスライドして透過光強度を変化させる。位置を制御する方法として、一般的にはPID制御(Proportional:比例,Integral:積 分,Differential:微分)を用いるが、その他の制御手法、例えば単純on/off制御により行なってもよい。
【0072】
本発明による測定装置では、高い開口数の対物レンズ(NA1.15)を用いているために、螢光色素分子で標識された細胞内DNA、細胞膜などの組織を構成する分子の特性も調べることができる。またLB(Langmuir- Blodgett)膜の揺動運動などについても測定することができる。
【0073】
また本発明による測定装置を用いて、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer: FRET)を求め、たんぱく質の結合や解離などの状態をリアルタイムで知ることができる。さらに、細胞内カルシウムイオン濃度の定量測定を行なうこともできる。また生体高分子のさまざまな部位間の距離や生体高分子の三次元,四次元構造及びその動的変化も測定することができる。
【0074】
また、細胞内でカルモジュリン(Calmodulin)にカルシウムイオン(Ca2+)が結合すると活性化されて、カルモジュリンは構造変化を起こす。カルモジュリンの異なる部位にそれぞれ異なる蛍光物質を用いて標識し、一方の螢光物質を励起して、蛍光共鳴エネルギー移動によって得られる、他方の蛍光物質からの蛍光を測定することにより、細胞内でのカルモジュリンの構造変化を知ることができる。
【0075】
またタンパク質の両端に異なる2種類の蛍光タンパク質、例えば藍色蛍光タンパク質(CFP: cyan fluorescent protein)と黄色蛍光タンパク質(YFP: yellow fluorescent protein)を標識し、タンパク質のリン酸化を測定することができる。タンパク質がリン酸化することによってタンパク質の構造に変化が起こる。この構造変化により双方の蛍光タンパク質が極めて接近する(10ナノメートル程度以下)とFRETが起こる。このFRETを測定することによりタンパク質のリン酸化を明らかにすることができる。
【0076】
また測定装置をそのまま用いて、試料にレーザ光を照射し、試料から発せられる散乱光の強度ゆらぎを測定して相関分光解析を行なうことにより、試料の並進拡散速度などの物理的な性質や結合反応など、種々の反応による形態変化を測定することもできる。さらに試料から発せられるリン光やラマン散乱光についても同様に測定することができる。
【0077】
〔変形例1〕
図10は、第1の実施の形態の変形例1を示す図である。この変形例1では測定装置を光源部、測定装置本体部、受光部にそれぞれユニット化し、シングルモード光ファイバー24、80を用いて各ユニットを光接続し、測定装置の小型化を図ったものである。光源部と受光部にシングルモード光ファイバー24,マルチモード光ファイバー80を用いて光を伝送する以外は、第1の実施の形態と同様の構成である。従って、第1の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付して、基本的な装置構成、及び動作については記述を省略する。
【0078】
測定装置本体から分離した光源部15に光源1を配置する。各光源1から出射されるレーザビームを光ファイバー受光端子49に照射する。光ファイバー受光端子49の受光面でレーザビームを受光し、シングルモード光ファイバー24を介してレーザビームを効率良く他端に設けたFCコネクタ(図示しない)まで導く。なお、シングルモード光ファイバー24の出力端とコリメートレンズ25間の距離は、コリメートレンズ25の焦点距離と一致している。
【0079】
シングルモード光ファイバー24を用いて光源から発したレーザ光を測定装置本体に伝送することにより、光源部15の配置を自由に行なうことができる。特に光源1として出力光強度の大きいレーザを用いる場合、レーザ本体が大型になり、また冷却機構をレーザ本体には取り付けなければならないこともある。この場合、光源1のみを切り離して光源部15として分離し、シングルモード光ファイバー24で測定装置に導くことで、設置空間の有効利用や測定装置の小型化に対応できる。さらに光学調整(レーザビームのカップリング)を行なう場合、シングルモード光ファイバー24の前後で行なえば良いので、切り分けて行なうことができる。
【0080】
また検出光学系16では、信号光をマルチモード光ファイバー80で受光するような構成をとる。マルチモード光ファイバー80は光検出器2に接続されている。マルチモード光ファイバー80を用いることで、装置内の光検出器2の配置を自由に行なうことができる。また測定装置を小型化できる。
【0081】
次に、マルチモード光ファイバー80の受光位置調整方法について説明する。
【0082】
図11は、実際に測定を行っているときの光検出器2の状態を示す図である。光検出器2が適正に光を受光するためには、マルチモード光ファイバー80の受光面が焦点位置にあり、かつ受光面内の所定位置に光が照射されていることが必要である。しかし、ダイクロイックミラー101、バンドパスフィルタ64の切り替えによってレンズ12で信号光が集光される位置がシフトする。
【0083】
図12は、この問題を解決する一方法を示す図である。光学素子を切り替えた後の非測定時において、レンズ12により信号光が集光する位置近傍に、光位置検出器を挿入する。光位置検出器は光が当たった位置を座標(X、Y)の情報として出力する。この座標位置がマルチモード光ファイバー80の受光面の所定位置になるように、受光面駆動装置がマルチモード光ファイバー80の受光面を駆動する。そして、光位置検出器を外に移動する。
【0084】
図13は、この問題を解決する他の方法を示す図である。この方法では、光位置検出器は使用しない。受光面駆動装置がマルチモード光ファイバー80の受光面をを移動して、光検出器2自身で信号をモニタし、受光強度が一番強くなる位置に位置決めする。この方法は、光学素子を切り替えることによる集光位置のシフト量が僅かな場合、集光位置がマルチモード光ファイバー80の受光面内に収まっている場合に適用することができる。
【0085】
〔変形例2〕
図14は、第1の実施の形態の変形例2を示す図である。この変形例2では、変形例1と同様に測定装置本体と光源部を分離した装置構成であり、変形例1と同様の構成である。従って、第1の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付して、基本的な装置構成、及び動作については記述を省略する。
【0086】
複数のレーザ光源1を含む光源部15から測定装置本体への光導入部には、フェルール型光学素子48を用いる。フェルール型光学素子48は固体であり、入射光を受光して出射光を射出する。これにより測定装置本体の位置で等価的に点光源を生成することができる。
【0087】
図15は、フェルール型光学素子48の構成を示す図である。フェルール型光学素子48は、平行光ビームを集光レンズ71で光導波路部分73の端面に集光し、光導波路部分73に光を通し、コリメートレンズ72を通して、出射光を平行光とする。すなわち、フェルール型光学素子48を出射したレーザ光は平行ビームとなる。
【0088】
図14に示すように、レーザ光源1から出たビームは合成されて測定装置本体に具備された光入力ポートに設置されたフェルール型光学素子48から導入される。フェルール型光学素子48から出射したビームは質の高いコリメート光となって、ビームエキスパンド機能により拡幅され、ダイクロイックミラー82に導かれ、対物レンズ10を介して試料を励起照射する。
【0089】
フェルール型光学素子48からの出射ビーム径は光導波路部分73の直径がモードフィールド径となっているので、点光源とみなすことができる。従って、フェルール型光学素子48のコリメートレンズ72から出射される光ビームはコリメート光となる。また、フェルール型光学素子48のコリメートレンズ72の焦点距離を変えることにより、出射光を所望のビーム径として得ることができる。
【0090】
また、フェルール型光学素子48を用いることにより、複数のレーザ光源から発せられた光ビームを合成したときに各波長のビームを一つにまとめ、小型の光学系を構成することもできる。このとき、出射光はモードフィールド径から出た出射光となり、これをコリメートすることにより、高品質のガウシアンビームを得ることができる。
【0091】
また、変形例1と同様に、光学調整(レーザビームのカップリング)を行なう場合、光ファイバーの前後で行なえば良いので、切り分けて行なうことができる。さらに、本実施例ではファイバ(導波路)を伝播する距離が短いので、ビームの偏光の回転を抑えることができる。
【0092】
図16はフェルール型光学素子48の断面図である。フェルール型光学素子48のほぼ中央に光透過性の優れたケイ酸塩ガラスからなる光導波路部分61を有し、その周辺を屈折率の大きな材質62(例えばSiO2−TiO2−CaO−Na2O)で覆い、さらに全体を保護部材63で覆っている。
【0093】
光導波路部分61の材質は、石英でもよい。光導波路部分61の断面寸法は直径2〜5マイクロメートルほどであり、使用する波長の光をシングルモードで伝播するモードフィールド径になっていることが望ましい。その周辺を覆う屈折率の大きな材質62は断面直径100〜200マイクロメートルくらいである。さらにそれらの周囲を覆う保護部材63は外形直径1.25〜2.5mm程度となっている。保護部材63の材質は例えばアルミナ、ジルコニアなどのセラミック、あるいは金属(例えばアルミニウム)でもよい。
【0094】
このフェルール型光学素子48は光透過性を良くするため、円柱状の両端面は鏡面に研磨されている。このフェルール型光学素子48の長さは1から100mmとなっている。長さは小型化を目的とするときは長さ10mmほどとする。フェルール型光学素子48の光導波路部分73の長さは1から100mmとなっている。さらに望ましくは10から30mm、より望ましくは15から25mmとする。
【0095】
このフェルール型光学素子48は単なる部品として、装置に組み込んで使用してもよいが、ほかの光学系と調整が必要であり、図15のように、集光レンズ71と組み合わせて使用すると効果的であり、さらに光導波路部分73から出射した光は固有のNAを持つ拡散光となるため、コリメートレンズ72と組み合わせて調整する。
【0096】
フェルール型光学素子48の集光レンズ71の焦点位置にフェルール型光学素子48の光導波路部分73端面を一致させ、コリメートレンズ72の焦点位置にフェルール型光学素子48の出射側端面を合わせ込む。それぞれの焦点距離を選択することにより、フェルール型光学素子48はビーム径を拡大するビームエキスパンダと同様の機能を発揮する。
【0097】
図17は、フェルール型光学素子48の他の実施例を示す図である。図17のフェルール型光学素子48はフェルール型光学素子48と異なり、端面は入射面、出射面ともにフェルール型光学素子48の光導波路部分73の光軸に対して傾き角度を設け、両端面が平行になるように表面を研磨している。光軸に対する傾き角度は82度である。即ち、光軸に対して垂直な面に対する傾き角は8度である。フェルール型光学素子48の端面をこのように傾けることにより、フェルール型光学素子48の光導波路部分73の端面での鏡面反射光が光源に戻り光となって、光源の光強度安定性を低下させることを防ぐことができる。
【0098】
フェルール型光学素子49の端面の光軸に対する傾き角は8度に限ることはない。フェルール型光学素子49の光導波路部分73の端面の有効な傾き角の範囲は、光軸に対して0度から10度である。より望ましくは光軸に対して6度から10度、さらに望ましくは7度から9度である。
【0099】
さらに、フェルール型光学素子48も偏光維持特性をもつ構造を採用することにより、偏光を用いても、その偏光特性を出射後も維持することができる。
【0100】
レーザ光を拡大し、平行ビームとするために、通常はビームエキスパンダーなどが用いられていたが、本発明によるビーム整形光学素子を用いることにより、収差などを軽減することができる。また、光学系が簡単になり、光軸調整などの手間や時間を低減することができる。
【0101】
次に、本光測定装置の動作について説明する。この動作は、コンピュータ14が自動的に装置を制御する。
【0102】
1.ユーザが測定装置の起動をコンピュータ14に入力すると、コンピュータ14は、測定装置のメイン電源を投入する。
【0103】
2.ユーザが測定項目を設定すると、コンピュータ14は、予め定められたテーブルに従い、測定装置内の各光学素子の組み合わせを選定する。また、コンピュータ14は、使用するレーザを選定する。
【0104】
3.コンピュータ14は、光位置検出器の電源をONする。以降は、測定装置の動作プログラムに従って、光位置検出器の電源のオン、オフを制御する。
【0105】
4.コンピュータ14は、試料ステージを初期位置に移動する。
【0106】
5.コンピュータ14は、各光学素子を原点位置に移動する。コンピュータ14は、光位置検出器の出力信号をモニタしながら、各種光学素子や試料ステージなどの出力最大値によって原点位置を割り出し、これから外れていた場合、ステッピング・モータを駆動調整して原点位置に合わせる。
【0107】
6.ユーザは、試料容器としてマイクロプレートに試料をセットする。そして、このマイクロプレートを試料ステージに載置する。
【0108】
7.コンピュータ14は、対物レンズのXY位置を調整する。即ち、コンピュータ14は、試料ステージを移動させ、対物レンズが測定対象のウェルの直下に位置するように試料ステージの水平位置を調整する。
【0109】
8.コンピュータ14は、液浸水供給機構電源をONとして、対物レンズの上面に液浸水を満たす。
【0110】
9.コンピュータ14は、測定に用いるレーザ電源をONする。そして、対物レンズを通してウエル内の試料溶液内にフォーカスを合わせて光源からの光を照射する。
【0111】
10.コンピュータ14は、シャッターの初期設定を行う。
【0112】
11.コンピュータ14は、対物レンズのフォーカス位置を調整する。即ち、対物レンズZ軸調整機構を調整し、光スポットの試料内での位置を調整する。
【0113】
12.測定項目に応じて、偏光素子のON/OFF、光走査機構電源のON/OFFを制御する。
【0114】
13.コンピュータ14は、光検出装置による各光学素子の位置調整を行う。試料から発せられる蛍光信号を光検出器で検出しながら、信号光が通過する光路内の光学素子を光軸方向、X−Y軸方向(水平方向)にそれぞれ位置調整し、各光学素子の配置を最適化する。
【0115】
14.コンピュータ14は、光源光の強度を調整する。試料から発せられる蛍光信号を光検出器で検出しながら、レーザ光源の駆動電流を調整する。
【0116】
15.光学素子全ての位置調整が終了すると、コンピュータ14は指令により、光位置検出器の電源を切る。
【0117】
16、コンピュータ14は、測定を開始する。
【0118】
17.コンピュータ14は、測定が終了するとレーザ電源をOFFする。
【0119】
18.コンピュータ14は、メイン電源をOFFする。
【0120】
以上のようにして、本実施の形態に係る測定装置では、自動で測定を進めることができる。なお、試料ステージを駆動して、マイクロプレートの平面位置(X−Y方向)を移動し、次に測定を行なうマイクロプレートのウェル内の試料に位置合わせを行なうが、このとき、光位置検出器の電源をONし、光検出器の位置調整を再度実施する。また、必要に応じてオペレーターが手動で各光学素子の位置調整を行なっても良い。
【0121】
次に、FCS測定とFIDA測定の切り替えに伴う、測定装置内部の光学素子の切り替え動作について説明する。測定の切り替えに伴って切り替えられる主な光学素子は、ビーム走査機構9である。
【0122】
図18A、図18Bは、ビーム走査機構の切り替え方法を説明する図である。
【0123】
図18Aは、FCS測定でのビーム走査機構9を示す図である。点線で表す光軸に対して、45度の角度でミラー90が挿入される。この配置では、レーザビームは、対物レンズ10の光軸上で焦点を結ぶ。対物レンズ10の使い方として、その光学的な特性(明るさ、収差)を最も有効に使うためには、光軸上に焦点を設けることが望ましい。
【0124】
図18Bは、FIDA測定でのビーム走査機構9を示す図である。一点鎖線で表す光軸に対して、45度から少し傾きをもった角度で偏芯回転ミラー40が設置される。この偏芯回転ミラー40は、モータ41と接続されており、モータ41の回転軸と偏芯回転ミラー40のミラー面とは垂直ではない。モータ41の回転運動により、レーザビームの焦点は対物レンズ10の光軸を中心として回転運動する。
【0125】
図19A、図19Bは、ビーム走査機構の他の切り替え方法を説明する図である。図19Aは、FCS測定でのビーム走査機構9を示す図である。この構成は、FCS測定とFIDA測定を図18Bと同様のビーム走査機構9の構成で共用するものである。但し、図18Bに示す形態と異なり、モータ41と回転軸とが、45度ではない角度で取り付けられている。そのため、偏芯回転ミラー40が一周回転する間に、偏芯回転ミラー40が光軸に対して、図18Aと同一の配置となる回転角度が存在する。図19Aは、この状態を示している。そこで、この回転角度を記憶しておき、FCS測定に切り替えられたときは、この回転角度になるように偏芯回転ミラー40を回転させる。
【0126】
図19Bは、FIDA測定でのビーム走査機構9を示す図である。このビーム走査機構9は、図19Aと同じ構成である。上記偏芯回転ミラー40をそのまま回転させると、図に示すように、レーザビームの焦点は対物レンズ10の光軸の周囲を回転する。
【0127】
続いて、FCS測定に切り替えたときの、本光測定装置の動作について説明する。この動作は、コンピュータ14が自動的に装置を制御する。
【0128】
1.ユーザが測定装置の起動をコンピュータ14に入力すると、コンピュータ14は、測定装置のメイン電源を投入
2.ユーザがFCS測定を設定すると、コンピュータ14は、予め定められたテーブルに従い、測定装置内の各光学素子の組み合わせを選定。使用するレーザを選定する。
【0129】
3.コンピュータ14は、光位置検出器の電源をONする。以降は、測定装置の動作プログラムにより、光位置検出器の電源のオン、オフを制御する。
【0130】
4.コンピュータ14は、試料ステージを初期位置に移動する。
【0131】
5.光位置検出器による各光学素子位置調整。試料から発せられる蛍光信号を光強度モニタ 用の光検出器で検出しながら、信号光が通過する光路内の光学素子を光軸方向、X−Y軸方 向(水平方向)にそれぞれ位置調整し、各光学素子の配置を最適化する。
【0132】
6.ユーザは、試料容器としてマイクロプレートに試料をセットする。そして、このマイクロプレートを試料ステージに載置する。
【0133】
7.コンピュータ14は、液浸水供給機構電源をONとして、対物レンズの上面に液浸水を満たす。
【0134】
8.コンピュータ14は、測定に用いるレーザ電源をONする。光源からの光は、対物レンズを通してウエル内の試料溶液内にフォーカスを合わせる。
【0135】
9.コンピュータ14は、光走査機構の電源をOFFする。光走査機構を停止させ、光ビームが試料内での所望の位置に来るように調整する。
【0136】
10.コンピュータ14は、光源光の強度を調整する。試料から発せられる蛍光信号を光 検出器で検出しながら、レーザ光源の駆動電流を調整する。
【0137】
11.コンピュータ14は、関連する光学素子、ダイクロイックミラー101、バリアフィルタ64、ピンホール52など関連する光学素子全ての位置調整が終了すると、コンピュ ータ14は指令により、光位置検出器の電源を切る。
【0138】
12、コンピュータ14は、測定を開始する。
【0139】
13.コンピュータ14は、測定が終了するとレーザ電源をOFFする。
【0140】
14.コンピュータ14は、メイン電源をOFFする。
【0141】
続いて、FIDA測定に切り替えたときの、本光測定装置の動作について説明する。この動作は、FCS測定の動作と同様であるので、主として異なる動作について記載する。
【0142】
1.ユーザが測定装置の起動をコンピュータ14に入力すると、コンピュータ14は、測定装置のメイン電源を投入
2.ユーザがFIDA測定を設定すると、コンピュータ14は、予め定められたテーブルに従い、測定装置内の各光学素子の組み合わせを選定。使用するレーザを選定する。この際、FIDA偏光測定が選択されていた場合は、偏光素子ホルダ28を動作させて、偏光板を光路中に挿入する。
【0143】
3.乃至8.はFCS測定時と同一。
【0144】
9.コンピュータ14は、光走査機構の電源をONし、光ビームが試料内での所望の位置で走査するように調整する。
【0145】
10.乃至14.は、FCS測定時と同一
以上説明した、実施の形態によれば測定装置の基本構成を変えることなく、また、光学素子の切り替えなどによるだけで、さまざまな試料の動的な光解析方法を迅速に、しかも効率良く行なうことができる。
【0146】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は測定装置の基本構成を変えることなく、種々の試料の動的な光解析方法を迅速にかつ効率良く行なうことができる光測定装置を製造する産業に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0148】
1…レーザ光源、2…光検出器、3…ダイクロイックミラー、7…光量モニタ機構、9…ビーム走査機構、11…液浸水供給機構、14…コンピュータ、15…光源部、16…光検出部、20…マイクロプレート、24…シングルモード光ファイバー、28…偏光素子ホルダー、36…回転式NDフィルタ、40…偏芯回転ミラー、41…モータ、45…バリアフィルタ、47…シングルモード光ファイバー、48…フェルール型光学素子、80…マルチモード光ファイバー、90…ミラー、102…ビームシフタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の分子に蛍光物質を標識した生物学的な試料溶液中に光を照射し、蛍光物質から発せられた蛍光の強度の時間的な変化を解析して、試料分子の統計的な性質を求めることで、試料分子の反応や反応による状態変化を測定する光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光を用いた測定技術の進歩に伴い、生体の細胞内外に極めて小さな光スポットを形成し、細胞内外の分子の挙動を動的に調べる方法が注目されている。例えば、蛍光物質を細胞内のターゲットとする生体分子に標識し、蛍光物質から発せられる蛍光の強度の時間的な変化を解析することにより、分子の溶液中での振舞いを高感度に捉えることができる。
【0003】
このような解析方法として、蛍光相関分光解析法(Fluorescence Correlation Spectroscopy : FCS)や蛍光強度分布解析法(Fluorescence Intensity Distribution Analysis : FIDA)等が良く用いられている。
【0004】
FCSでは、測定したい分子に蛍光物質を標識し、マイクロプレートなど試料容器内に収納する。そして試料容器の試料槽の中にレーザ光を微小な光スポットとして照射して、蛍光物質を励起する。このとき蛍光物質から発せられる蛍光の強度は時間と共にゆらぐ。これは、媒質中の蛍光分子がブラウン運動をしているためである。蛍光分子のブラウン運動の拡散速度は、分子の化学反応や結合反応などにより変化する。従って、蛍光分子の拡散速度は、標識した蛍光分子の見かけの大きさの変化や媒質の温度の変化に伴って変化する。
【0005】
そこでこの分子の溶液内での化学反応や結合反応などによるブラウン運動の速度の変化を、蛍光の光強度の時系列信号の統計的な変化として捉えて相関解析を行なうことで、分子や微粒子の並進拡散係数や、平均の分子数などを測定することができる。そして、測定結果として分子の化学反応や結合反応などを動的に捉えることができる。
【0006】
FCSについては、たとえば非特許文献1、2に解説が掲載され、特許文献1、2、3にFCSに関する技術が開示されている。
【0007】
FIDAでは、FCSと同様に測定したい分子に蛍光物質を標識し、マイクロプレートなど試料容器の試料槽の中にレーザ光を微小な光スポットとして照射して、蛍光物質を励起する。そして、単位時間当たりに蛍光物質から発せられる蛍光の光強度を測定し、これの統計分布を解析する。単位時間に検出される蛍光の光子の数の統計分布を解析することによって、蛍光分子の明るさと濃度、即ち、対象とする分子の数と明るさについての情報を得ることができる。この明るさに関する情報を用いることにより、化学反応や結合反応などによる蛍光標識された分子の見かけの大きさの変化を高感度で検出することができる。
【0008】
さらに偏光を用いたFIDA-Polarization(Fluorescence Intensity Distribution Analysis-Polarization)も行なうことができ、回転ブラウン運動を行なう分子の数や分子の見かけの大きさの変化を調べることができる。
【0009】
さらにFIDAでは、溶液中で光の照射領域を積極的に移動させて、試料中のできるだけ広い領域で測定を行ない、1回当たりの測定時間を短縮させることもできる。なお、FIDAは光強度の統計分布を求めるためにFCSに比べて光照射領域を大きめにとる必要がある。
【0010】
FIDAについては、Peet Kask,Kaupo Palo,DirkUllma nn and Karsten Gall PNAs Nov23, 1999,vol. 96,No.24,p.13756−13761,Biophysical Journa l Vol.79,(2000)p.2858−2866,米国特許第6,376,843 号に記述されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、生物試料の動的特性を光学的に調べるに際し、FCS、FIDAを同時に、または順次測定しようとする場合、煩雑で手間がかかると共に、広い作業スペースも必要 となっていた。FCSを用いる場合とFIDAを用いる場合とでは、測定装置内に配置され る光学素子などの組み合わせが異なるために、それぞれの測定を行う毎に光学素子を入れ替 えたり、あるいは測定に特化した異なる複数の測定装置を設けて並行した測定を行なわなければならない。
【0012】
更に1つの測定装置で、FCSやFIDAといった異なる測定項目について測定を行なおうとする場合、レンズやフィルタなどの光学素子を入れ替えた後に、再び光軸の調整を行なう必要があり、煩雑であると共に手間と時間を要していた。
【0013】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであって、同一の測定装置で異なる測定項目についての測定を行う場合であっても、測定装置の基本構成を変えることなく、種々の試料の動的な光解析を迅速にかつ効率良く行なうことができる光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明における光測定装置は、レーザ光源と、対物レンズと、光検出器と、試料容器と、光学素子と、前記レーザ光源と前記試料容器との間の光路上に配置され、偏芯回転ミラーと 前記偏芯回転ミラーを回転させるモーターとにより構成されるビーム走査機構と、制御信号を発生し、前記ビーム走査機構の駆動制御を行なうビーム走査機構制御部と、を備え、前記試料容器に保持された溶液中の生物学的試料の物理的性質について複数種類の測定項目に対応した測定を行なう光測定装置であって、前記ビーム走査機構は前記ビーム走査機構制御部より前記制御信号を受信して、FIDA(Fluorescence Intensity Distribution Analysis) 測定を行なう場合は、前記偏芯回転ミラーを回転させてレーザ光の集光スポットを前記試料容器に保持された溶液内のフォーカス位置で略楕円状に光走査し、FCS(Fluorescence Co rrelation Spectroscopy)測定を行なう場合は、光軸を通った光が前記対物レンズを光軸に沿って通過する向きに前記偏芯回転ミラーのミラー面を固定し、前記光軸を通った光が前記 溶液内でコンフォーカル照明を行う。
【発明の効果】
【0015】
従って、本発明の光測定装置によれば、測定装置の基本構成を変えることなく、さまざまな試料の動的な光解析を迅速にかつ効率良く行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光測定装置の基本的な構成を示す図。
【図2】ビームシフタを示す図。
【図3】ダイクロイックミラー保持部材を示す図。
【図4】液浸水の自動給排液機構を示す図。
【図5】ピンホールホルダー等を示すフロー図。
【図6】バリア・フィルタ支持基板とバリア・フィルタ回転機構を示す図。
【図7】測定中の光検出器の状態を示す図。
【図8】問題を解決する方法を示す図。
【図9】問題を解決する他の方法を示す図。
【図10】第1の実施の形態の変形例を示す図。
【図11】測定中の光検出器の状態を示す図。
【図12】問題を解決する方法を示す図。
【図13】問題を解決する他の方法を示す図。
【図14】第1の実施の形態の他の変形例を示す図。
【図15】フェルール型光学素子の構成を示す図。
【図16】フェルール型光学素子の断面図。
【図17】フェルール型光学素子の他の実施例を示す図。
【図18A】ビーム走査機構の切り替え方法を説明する図。
【図18B】ビーム走査機構の切り替え方法を説明する図。
【図19A】ビーム走査機構の他の切り替え方法を説明する図。
【図19B】ビーム走査機構の他の切り替え方法を説明する図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は光測定装置の基本的な構成図である。
【0019】
本発明による光測定装置は、主な構成部として、光源部15、光量モニタ機構7、ビーム走査機構9、対物レンズ10、液浸水供給機構11、試料保持機構18、光検出部16及び信号処理部17を備えている。
【0020】
以下、光測定装置の詳細の構成と動作について説明する。
【0021】
光源部15には、レーザ光源1、シャッター23、ビーム径可変機構5、回転式NDフィルタ36、ビームシフタ102、ミラー100及びダイクロイックミラー3が設けられている。
【0022】
光源部15には3種類のレーザ光源1が載置されている。本実施の形態では、ヘリウムネオン・レーザ(発振出力1mW、波長:543nm)、 ヘリウムネオン・レーザ(発振出力2mW、波長:633nm)、およびアルゴン・レーザ(発振出力10mW、波長:488nm)が設けられている。
【0023】
光源として用いるレーザはパルスレーザであっても良い。例えば、CWモード同期アルゴンイオン・レーザを用いると、波長514.5nm、平均出力100mW、パルス幅200ピコ秒のレーザパルスを得ることができる。
【0024】
また、音響光学チューナブルフィルタ(AOTF)を搭載したマルチラインのレーザも載置可能である。マルチラインのレーザには、複数の波長のレーザ光が含まれているため、AOTFによって発振波長の切り替えを行なうように構成することで、載置するレーザの台数を減少することができる。
【0025】
各レーザ光源1の出射端近傍にはシャッター23がそれぞれ設置されており、シャッター23はそれぞれ電子制御により開閉される機構(図示せず)になっている。出射されたレーザ光はレンズを組み合わせたビーム径可変機構5でビーム直径を拡大され、平行光にされる。ビーム径可変機構5を構成するレンズの組み合わせを変えることで、焦点距離を変えて射出ビーム直径を調整することができる。
【0026】
それぞれ平行光とされたレーザ光は各々の光路に用意された回転式ND(Neutral Density)フィルタ36、ビームシフタ102を通過した後、ミラー100、ダイクロイックミラー3で選択的に反射、または透過される。そして、3つのレーザ光源1からの光路は1つの光路にまとめられる。3つの光路を同一の光路にまとめる操作は、ビームシフタ102を調整することで行われる。
【0027】
ビーム走査機構9にはビーム走査機構制御部99が接続されている。ビーム走査機構制御部99は制御信号を発し、ビーム走査機構9の配置及び動作を制御する。即ち、ビーム走査機構9の稼動/非稼動状態を切替える。さらにビーム走査機構9を構成する偏芯回転ミラー40の回転角をFIDA測定、FCS測定などの測定条件に対応して制御する。
【0028】
図2は、ビームシフタ102を示す図である。ビームシフタ102は、所定の厚さを持つガラス板が2軸の自由度で動く構造を備えている。ビームシフタ102の調整は、後に示す光量モニタ機構7の光検出器53の検知出力が最大になるようにガラス板を2軸を中心として回転することにより行なう。またこの調整は、光検出器53の検知出力をコンピュータ14に入力して、コンピュータ14からの制御出力に基づいて、ガラス板の2軸を駆動することでも可能である(駆動機構は図示していない)。
【0029】
ビームシフタ102の調整によってレーザ光源1からのレーザビームは1つのビームにされ、ミラー4で方向を曲げられ、偏光素子ホルダー28に到達する。偏光素子ホルダー28はスライド式の板状構造となっており、通常2箇所の円形の偏光素子保持枠が設けられている。一方の保持枠に円形の偏光素子が配置されており、もう一方は空隙になっている。そして、この偏光素子ホルダー28に取り付けられた偏光素子ホルダー駆動部39によって偏光素子ホルダー28をスライドさせることにより、必要に応じて偏光素子が光路上に設置されるようになっている。
【0030】
この偏光素子ホルダー駆動部39によるスライド調整は、ステッピングモータを用いた制御装置により行なわれる(図示せず)。光測定装置を用いて偏光測定を行なう場合は、偏光素子ホルダー28に偏光素子が設置され、光路上に偏光素子が載置される。偏光測定を行わない場合は光路上には偏光素子は存しない。なお、偏光素子ホルダー28は円板状であっても良い。あるいは円板の周囲に複数の偏光素子を載置し、偏光素子ホルダー28を回転させることで、偏光素子を切り替えて用いても良い。
【0031】
偏光素子ホルダー28に配置する偏光素子には、例えばシート状の偏光板を用いることができる。しかし偏光板に限ることなく、例えばグラントムソン・プリズム(Glan Thompson Prism)などの消光比の高い偏光素子を用いると、さらに精度の高い偏光測定を行なうことができる。
【0032】
レーザビームは、偏光素子ホルダー28を通過後、円板状のハーフミラー6に入射する。そして、レーザビームの一部はハーフミラー6で反射されて光量モニタ機構7に入る。光量モニタ機構7はレンズ51、ピンホール220、光検出器53を備え、レーザビームはこれらの光学素子を通って光検出器53の受光面に集光する。光検出器53は半導体光検出器を用いる。
【0033】
光検出器53の検知出力は、コンピュータ14に入力され、コンピュータ14は、この値に基づいて、あらかじめ設定した光源出力光強度になるように、レーザ駆動電源(図示しない)の駆動電流を制御する。あるいは回転式NDフィルタ36をコンピュータ14が制御(図示しない)することで、レーザ光源1からの光出力強度を調整することもできる。
【0034】
ハーフミラー6を通過したレーザビームは偏芯回転ミラー40に達する。このとき偏芯回転ミラー40は回転に伴って反射光の方向が中心軸の周りに回転運動するように傾いて調整されている。そのため、レーザビームは対物レンズ10の光軸に対して、ある傾き角を持って入射する。偏芯回転ミラー40をモータ41で回転させることで、対物レンズ10を通過した光ビームの集光スポットは試料内で略楕円状に走査される。なお、集光スポットを走査させるのは、FIDA測定を行なう場合であり、FCS測定を行なう場合には集光スポットは固定される。具体的には、ビーム走査機構制御部99から制御信号が発生し、ビーム走査機構9を稼動状態として偏芯回転ミラー40を測定条件に対応した所定の角度だけ回転させ、停止させる。これにより、光源から発せられたレーザ光は光軸に沿って進み、対物レンズを通って、試料内でコンフォーカル照明を行う。
【0035】
即ち、FIDA測定を行なう場合は、モータ41を回転させ、それに伴って偏芯回転ミラー40が回転運動を行ない、光軸を通った光は対物レンズを通って溶液内のフォーカス位置で略楕円を描きながら試料を光照射する。
【0036】
FCS測定を行なう場合は、コンピュータ制御によりモータ41を停止し、偏芯回転ミラー40を適切な位置で固定する。このとき、偏芯回転ミラー40のミラー面の向きは光軸を通った光が対物レンズを光軸に沿って通過する向きに設定されるようにあらかじめモータ41の停止位置はビーム走査機構制御部99により、決められている。
【0037】
また、FCS測定の場合に、偏芯回転ミラー40とは別の、光軸に対して偏芯していないミラー90に切り替えるようにしても良い。
【0038】
レーザ光は続いて切り替え式ダイクロイックミラー101で反射され、対物レンズ10に入射する。対物レンズ10として、例えば×40水浸対物レンズ(NA1.15)を用いる。対物レンズ10は補正環が無いドライタイプを用いても良いし、あるいは液浸タイプで補正環を具備しているものを用いてもよい。
【0039】
この切り替え式ダイクロイックミラー101は円板状のガラス板の表面に多層膜コーティングを施して、透過、反射のスペクトル特性が最適になるように製作されている。切り替え式ダイクロイックミラー101としては円板状に限らず、プリズムタイプのものを用いても良い。また切り替え式ダイクロイックミラー101は裏面反射によるノイズ光が信号光に混入するのを防ぐため、基板となるガラスの厚さを最適に調整してあるものを用いる。
【0040】
この切り替え式ダイクロイックミラー101は光源としてのレーザ光と試料から発せられた蛍光信号を分離する役割がある。測定に用いる波長を変更するときは、透過、反射特性の異なる複数個のダイクロイックミラー101の内から最適なものを選択して切り替えて用いる。
【0041】
図3は、ダイクロイックミラーの切り替えに使用するダイクロイックミラー保持部材を示す図である。
【0042】
図3に示すダイクロイックミラー保持部材58は、複数の円形のダイクロイックミラー101が横方向に一列に搭載されたスライド式の構造であるが、レボルバーやターレットに搭載された回転式のものを用いても良い。ダイクロイックミラー保持部材58はアルミニュームのような金属を用いる。ここでダイクロイックミラー101の形状は円形に限らず、正方形や長方形でも良い。また、切り替え式ダイクロイックミラー101の代わりに音響光学素子(AOTF)を用いて、透過光と反射光の波長を選択しても良い。
【0043】
試料を収容する試料容器にはマイクロプレート20(96,384穴など)を用いる。マイクロプレート20は樹脂、あるいはガラス製であり、図1に示すように同一形状のウェル22(試料を収容する溝)が多数並んで配列されている。マイクロプレート20のウェル22部分の底面は、ガラス、アクリル樹脂などの光学的に透明な材質で形成されており、対物レンズ10を通過した光が殆んど減衰することなく、ウェル22内に収容された試料に入射するようになっている。
【0044】
図4は、液浸タイプの対物レンズを用いるときに必要な液浸水の自動給排液機構21を示す図である。試料ステージ19にマイクロプレート20を載置し、クリップなどの固定具でマイクロプレート20を試料ステージ19に固定する。
【0045】
対物レンズ10はマイクロプレート20の底面に向かうように倒立させて配置する。対物レンズ10先端部に給液ボトル56に浸されたチューブ103を介して先端部のノズル104により液浸水を滴下し、対物レンズ10の先端部とマイクロプレート20底面の間を液浸水で満たす。液浸水がこぼれたり、あふれたりした場合は対物レンズ10の周囲に配設された液浸水保持プレート55で保持する。
【0046】
一方、測定中に対物レンズ10の上面に保持された液浸水が無くなった場合、この情報をコンピュータ14にフィードバックして、給液ボトル56内の液浸水をポンプ駆動により自動的に対物レンズ10先端部に給液する。測定終了後、自然に液浸水は乾燥するが、必要以上に給液されたものは、廃液ボトル57に自然に落下するようになっている。またはノズル104により吸引し、切替機構(不図示)により切り替えて、廃液ボトル57へ導入する廃液機構とすることも可能である。
【0047】
なお、自動給排液機構21による給排液は水に限らず、オイルでも良い。マイクロプレート20を試料容器として用いて観察、測定する場合は通常、数多くのウェル22内に試料を収容し、試料ステージ19を駆動して位置調整を行ない、それぞれの試料について測定、あるいは観察を行なう。
【0048】
試料ステージ19にはX軸、Y軸方向に沿ってステッピングモータ(図示しない)が取り付けられており、マイクロプレート20を精密に水平方向(X−Y軸方向)に移動させることができる。そして試料ステージ19をXY平面内で作動させて、マイクロプレート20を移動調整しながら、順次測定を繰り返し行なう。
【0049】
また対物レンズ10の周囲には対物レンズZ軸保持機構43が具備されており、コンピュータの指令により、対物レンズZ軸保持機構43を光軸方向(Z軸方向)に移動させる。すなわち、ウエル22内でのレーザ光のフォーカス位置を光軸方向に沿って上下動させることができる。
【0050】
レーザ光は対物レンズ10を通って集光されたあと、試料を収容したマイクロプレート20のウェル22内で極めて微小な光スポットを形成する。レーザ光の集光位置は水平方向(X−Y軸方向)についてはウエルの中央部分、垂直方向(Z軸)については、試料内のほぼ中央部分となっている。このとき、ウェル22内で得られるレーザ光の共焦点領域の大きさは直径0.6μm程度、長さ2μm程度の略円筒状の光スポットとなる。
【0051】
試料に直接ラベルして用いる蛍光物質はそれぞれローダミン・グリーン(RhG)、TAMRA、Alexa647であり、ローダミン・グリーン(RhG)は波長488nmのアルゴンレーザで励起し、TAMRAは波長543nmのヘリウム・ネオンレーザで励起し、Alexa647は波長633nmのヘリウム・ネオンレーザで励起する。
【0052】
対物レンズ10で集光されたレーザ光はウエル22内で試料内の蛍光分子を励起し、蛍光分子から蛍光が発せられる。この蛍光は再び信号光として対物レンズ10に取り込まれ、続いて切り替え式ダイクロイックミラー101に到達する。信号光の波長は入射レーザ光の波長より長く、そのため切り替え式ダイクロイックミラー101を透過して、反射プリズム200で反射され、レンズ210でレンズ210の後方に配置されたピンホール220のピンホール面に集光される。
【0053】
対物レンズ10の焦点位置と共役な光軸上の位置にピンホール220が位置決めされるようにピンホールホルダー50が配置されている。ピンホールホルダー50は、図5(a)に示すようにピンホール直径が異なる複数のピンホールが一列に並んだスライド式になっており、必要な共焦点領域(光スポット領域)の大きさに合わせて、最適なピンホールが配置されるように調整される。あるいは図5(b)に示すように切り欠きを有する板状部材を2枚、切り欠き部が互いに向かい合うように配置し、板状部材の互いの間隔を変化させ、中央部にできる矩形の枠の大きさを連続的に変化させる構成であってもよい。
【0054】
ピンホール220の手前にバリア・フィルタ45が配置されている。バリア・フィルタ45は蛍光の発光スペクトルに合わせて、透過光のスペクトルが調整されるようになっている。すなわち、バンドパスフィルタとなっており、信号光となる蛍光の発光スペクトルの波長域の光のみが通過する。これにより、試料容器内で発生する散乱光やウェル22の壁などから反射して入射光路に戻ってくる入射光の一部などのノイズ光をカットすることができる。蛍光の波長とバックグラウンド光の波長が異なるためノイズ光を遮断できる。なお、バリアフィルタ45として、音響光学素子によるビームスプリッター(AOBS)を用いても良い。
【0055】
レンズ210の焦点面とピンホール220の開口面とが一致するように配置されている。このピンホール220には光位置検出器とピンホール駆動装置が取り付けられており(図示しない)、ピンホール220はピンホール駆動装置により、X−Y−Z軸方向に位置調整できるようになっている。従って、レンズ210の焦点面にピンホール220の開口面を一致させることができる。
【0056】
また、ピンホール220の位置はバリア・フィルタ45の切り替え、あるいは音響光学素子によるビームスプリッター(AOBS)の切り替えに対して、デフォルト位置に自動的に戻る機構を有している。このピンホール220により、ウェル内に形成された光の共焦点領域外からのバックグラウンド光が除去される。
【0057】
図6は、バリア・フィルタ支持基板501とバリア・フィルタ回転機構を示す図である。バリア・フィルタは円板状になっており、図に示すように円板状のバリア・フィルタ支持基板501の円周に沿って配置されている。バリア・フィルタ支持基板501は、その中心軸の周りに回転するが、このとき、所定位置にあるバリア・フィルタの中心軸は光軸と一致する。
【0058】
バリア・フィルタ支持基板501の中心に回転軸502が取り付けられており、この回転軸502にはギア503−1が取り付けられている。ステッピングモータ504の回転軸508にはギア503−2が取り付けられている。ギア503−1とギア503−2とのギア比に従って、ステッピングモータ504の回転がバリア・フィルタ支持基板501に伝えられる。
【0059】
一方、バリア・フィルタ支持基板501の円周面の一角に回転支持板505が取り付けられており、フィルタホイール支持台506に取り付けられた非接触位置検出器507の検出部分507−1の溝の間を通過するように構成されている。なお、回転支持板505は光学的に不透明な材質、例えば黒色塗布したアルミニューム板を用いる。
【0060】
非接触位置検出器507の溝構造部分507−1は赤外発光ダイオードと赤外線光検出器とが互いに向き合って配置されている。検出部分507−1の溝の間を回転支持板505が通過したときは赤外線が遮られるため、回転支持板505が通過したことを検出することができる。なお、この位置はバリア・フィルタ支持基板501の初期位置として規定されている。
【0061】
バリア・フィルタ支持基板501が回転した角度は、この回転支持板505が初期位置にあるときからのステッピングモータ504の回転角により一義的に決められる。即ち、現在の各バリア・フィルタの位置が確定する。従って、各バリア・フィルタの切り替えはステッピングモータ504の回転を制御することによって行なわれる。
【0062】
ここで、非接触位置検出器507が回転支持板505を検出する方法には光を用いる方法の他に、静電容量の変化を利用する方法や、磁気を用いる方法などがあり、いずれの方法を用いてもよい。なお、バリア・フィルタ支持基板501の回転軸はフィルタホイール支持台506に回動自在に取り付けられている。
【0063】
ピンホール220を通過した信号光はコリメートレンズ59により平行光とされてダイクロイックミラー/偏光ビームスプリッター38により、互いに垂直な2方向に分離される。ダイクロイックミラー/偏光ビームスプリッター38は、ダイクロイックミラーと偏光ビームスプリッターとを切り替える機構を備えている。この切り替え機構には、例えば、図6に示したような回転機構を用いても良い。2種類の蛍光物質を用いて相互相関測定を行なう場合は、ダイクロイックミラーが自動的に選択されるようになっており、異なる蛍光物質の発光のスペクトに合わせて、反射光、および透過光のスペクトルを規定する。偏光測定を行う場合は、偏光ビームスプリッターが自動的に選択されるようになっており、反射光、および透過光で異なる偏光成分を分離する。分離されたそれぞれの信号光はバンドパスフィルタ64でそれぞれの励起レーザ光の波長の光を選択的に遮断して、信号光のS/N比を向上させる。
【0064】
バンドパスフィルタ64を通過した信号光はレンズ12により集光されて、光検出器2の受光面に到達する。それぞれの光検出器2には光位置検出器と光検出器駆動装置が取り付けられており、光検出器2の受光面は光検出器駆動装置により、X−Y−Z軸方向に沿って位置調整できるようになっている。光検出器2は例えばアバランシェ・フォトダイオード(略称:APD)、あるいは光電子増倍管などの微弱光検出器を用いる。光位置検出器は半導体光位置検出器を用いる。
【0065】
次に、光検出器2の位置調整方法について説明する。
【0066】
図7は、実際に測定を行っているときの光検出器の状態を示す図である。光検出器2が適正に光を受光するためには、受光面が焦点位置にあり、かつ受光面内の所定位置に光が照射されていることが必要である。しかし、ダイクロイックミラー101、バンドパスフィルタ64の切り替えによってレンズ12で信号光が集光される位置がシフトする。
【0067】
図8は、この問題を解決する一方法を示す図である。光学素子を切り替えた後の非測定時において、レンズ12により信号光が集光する位置近傍に、光位置検出器を挿入する。光位置検出器は光が当たった位置を座標(X、Y)の情報として出力する。この座標位置が光検出器2の受光面の所定位置になるように、光検出器駆動装置が光検出器2を駆動する。そして、光位置検出器を外に移動する。
【0068】
図9は、この問題を解決する他の方法を示す図である。この方法では、光位置検出器は使用しない。光検出器駆動装置が光検出器2を移動して、光検出器2自身で信号をモニタし、受光強度が一番強くなる位置に位置決めする。この方法は、光学素子を切り替えることによる集光位置のシフト量が僅かな場合、集光位置が光検出器2の受光面内に収まっている場合に適用することができる。
【0069】
光検出器2で受光される信号光は微弱光であり、フォトン・パルス信号となっている。光検出器2によって、このフォトン・パルス信号は電気信号(光電流パルス信号)に変換され、増幅されて信号処理装置8に送られる。信号処理装置8によって、この電気パルス信号は波形整形され、on−off電圧パルスとされて、コンピュータ14に導かれる。この電圧パルスはコンピュータ14のメモリ(図示しない)に記憶され、続いて相関分光解析、光強度分布解析などの演算が行なわれる。これによって得られた蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数、相互相関関数、あるいは光強度分布関数などがコンピュータ14により計算される。そして、コンピュータ14の画面上に測定結果(グラフ、またはデータ)が提示され、あるいはコンピュータ14のメモリ(図示しない)に記憶される。
【0070】
次にコンピュータ14による制御動作について説明すると、コンピュータ14は測定に用いるレーザ光源1を選択し、電源を投入する。また、シャッター駆動電源(図示しない)に働きかけ、必要に応じて、シャッター23を開閉する。さらに光量モニタ機構7の光検出器53の出力をモニタして、レーザ光源1の出力光強度が所望のレベルになるように、モータ(不図示)の駆動電流を調整する。これによってモータに取り付けられている円盤状の回転式NDフィルタ36を必要な角度だけ回転させる。
【0071】
回転式NDフィルタ36は円周方向に沿って変化する透過率分布を備えているため、回転によってレーザ光の強度を変化させることができる。なお、回転式NDフィルタ36は円盤状ではなく、板の長手方向に沿って段階的に透過率が変化する板状のものを用いても良い。板状のNDフィルタを用いる場合はスライドして透過光強度を変化させる。位置を制御する方法として、一般的にはPID制御(Proportional:比例,Integral:積 分,Differential:微分)を用いるが、その他の制御手法、例えば単純on/off制御により行なってもよい。
【0072】
本発明による測定装置では、高い開口数の対物レンズ(NA1.15)を用いているために、螢光色素分子で標識された細胞内DNA、細胞膜などの組織を構成する分子の特性も調べることができる。またLB(Langmuir- Blodgett)膜の揺動運動などについても測定することができる。
【0073】
また本発明による測定装置を用いて、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer: FRET)を求め、たんぱく質の結合や解離などの状態をリアルタイムで知ることができる。さらに、細胞内カルシウムイオン濃度の定量測定を行なうこともできる。また生体高分子のさまざまな部位間の距離や生体高分子の三次元,四次元構造及びその動的変化も測定することができる。
【0074】
また、細胞内でカルモジュリン(Calmodulin)にカルシウムイオン(Ca2+)が結合すると活性化されて、カルモジュリンは構造変化を起こす。カルモジュリンの異なる部位にそれぞれ異なる蛍光物質を用いて標識し、一方の螢光物質を励起して、蛍光共鳴エネルギー移動によって得られる、他方の蛍光物質からの蛍光を測定することにより、細胞内でのカルモジュリンの構造変化を知ることができる。
【0075】
またタンパク質の両端に異なる2種類の蛍光タンパク質、例えば藍色蛍光タンパク質(CFP: cyan fluorescent protein)と黄色蛍光タンパク質(YFP: yellow fluorescent protein)を標識し、タンパク質のリン酸化を測定することができる。タンパク質がリン酸化することによってタンパク質の構造に変化が起こる。この構造変化により双方の蛍光タンパク質が極めて接近する(10ナノメートル程度以下)とFRETが起こる。このFRETを測定することによりタンパク質のリン酸化を明らかにすることができる。
【0076】
また測定装置をそのまま用いて、試料にレーザ光を照射し、試料から発せられる散乱光の強度ゆらぎを測定して相関分光解析を行なうことにより、試料の並進拡散速度などの物理的な性質や結合反応など、種々の反応による形態変化を測定することもできる。さらに試料から発せられるリン光やラマン散乱光についても同様に測定することができる。
【0077】
〔変形例1〕
図10は、第1の実施の形態の変形例1を示す図である。この変形例1では測定装置を光源部、測定装置本体部、受光部にそれぞれユニット化し、シングルモード光ファイバー24、80を用いて各ユニットを光接続し、測定装置の小型化を図ったものである。光源部と受光部にシングルモード光ファイバー24,マルチモード光ファイバー80を用いて光を伝送する以外は、第1の実施の形態と同様の構成である。従って、第1の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付して、基本的な装置構成、及び動作については記述を省略する。
【0078】
測定装置本体から分離した光源部15に光源1を配置する。各光源1から出射されるレーザビームを光ファイバー受光端子49に照射する。光ファイバー受光端子49の受光面でレーザビームを受光し、シングルモード光ファイバー24を介してレーザビームを効率良く他端に設けたFCコネクタ(図示しない)まで導く。なお、シングルモード光ファイバー24の出力端とコリメートレンズ25間の距離は、コリメートレンズ25の焦点距離と一致している。
【0079】
シングルモード光ファイバー24を用いて光源から発したレーザ光を測定装置本体に伝送することにより、光源部15の配置を自由に行なうことができる。特に光源1として出力光強度の大きいレーザを用いる場合、レーザ本体が大型になり、また冷却機構をレーザ本体には取り付けなければならないこともある。この場合、光源1のみを切り離して光源部15として分離し、シングルモード光ファイバー24で測定装置に導くことで、設置空間の有効利用や測定装置の小型化に対応できる。さらに光学調整(レーザビームのカップリング)を行なう場合、シングルモード光ファイバー24の前後で行なえば良いので、切り分けて行なうことができる。
【0080】
また検出光学系16では、信号光をマルチモード光ファイバー80で受光するような構成をとる。マルチモード光ファイバー80は光検出器2に接続されている。マルチモード光ファイバー80を用いることで、装置内の光検出器2の配置を自由に行なうことができる。また測定装置を小型化できる。
【0081】
次に、マルチモード光ファイバー80の受光位置調整方法について説明する。
【0082】
図11は、実際に測定を行っているときの光検出器2の状態を示す図である。光検出器2が適正に光を受光するためには、マルチモード光ファイバー80の受光面が焦点位置にあり、かつ受光面内の所定位置に光が照射されていることが必要である。しかし、ダイクロイックミラー101、バンドパスフィルタ64の切り替えによってレンズ12で信号光が集光される位置がシフトする。
【0083】
図12は、この問題を解決する一方法を示す図である。光学素子を切り替えた後の非測定時において、レンズ12により信号光が集光する位置近傍に、光位置検出器を挿入する。光位置検出器は光が当たった位置を座標(X、Y)の情報として出力する。この座標位置がマルチモード光ファイバー80の受光面の所定位置になるように、受光面駆動装置がマルチモード光ファイバー80の受光面を駆動する。そして、光位置検出器を外に移動する。
【0084】
図13は、この問題を解決する他の方法を示す図である。この方法では、光位置検出器は使用しない。受光面駆動装置がマルチモード光ファイバー80の受光面をを移動して、光検出器2自身で信号をモニタし、受光強度が一番強くなる位置に位置決めする。この方法は、光学素子を切り替えることによる集光位置のシフト量が僅かな場合、集光位置がマルチモード光ファイバー80の受光面内に収まっている場合に適用することができる。
【0085】
〔変形例2〕
図14は、第1の実施の形態の変形例2を示す図である。この変形例2では、変形例1と同様に測定装置本体と光源部を分離した装置構成であり、変形例1と同様の構成である。従って、第1の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付して、基本的な装置構成、及び動作については記述を省略する。
【0086】
複数のレーザ光源1を含む光源部15から測定装置本体への光導入部には、フェルール型光学素子48を用いる。フェルール型光学素子48は固体であり、入射光を受光して出射光を射出する。これにより測定装置本体の位置で等価的に点光源を生成することができる。
【0087】
図15は、フェルール型光学素子48の構成を示す図である。フェルール型光学素子48は、平行光ビームを集光レンズ71で光導波路部分73の端面に集光し、光導波路部分73に光を通し、コリメートレンズ72を通して、出射光を平行光とする。すなわち、フェルール型光学素子48を出射したレーザ光は平行ビームとなる。
【0088】
図14に示すように、レーザ光源1から出たビームは合成されて測定装置本体に具備された光入力ポートに設置されたフェルール型光学素子48から導入される。フェルール型光学素子48から出射したビームは質の高いコリメート光となって、ビームエキスパンド機能により拡幅され、ダイクロイックミラー82に導かれ、対物レンズ10を介して試料を励起照射する。
【0089】
フェルール型光学素子48からの出射ビーム径は光導波路部分73の直径がモードフィールド径となっているので、点光源とみなすことができる。従って、フェルール型光学素子48のコリメートレンズ72から出射される光ビームはコリメート光となる。また、フェルール型光学素子48のコリメートレンズ72の焦点距離を変えることにより、出射光を所望のビーム径として得ることができる。
【0090】
また、フェルール型光学素子48を用いることにより、複数のレーザ光源から発せられた光ビームを合成したときに各波長のビームを一つにまとめ、小型の光学系を構成することもできる。このとき、出射光はモードフィールド径から出た出射光となり、これをコリメートすることにより、高品質のガウシアンビームを得ることができる。
【0091】
また、変形例1と同様に、光学調整(レーザビームのカップリング)を行なう場合、光ファイバーの前後で行なえば良いので、切り分けて行なうことができる。さらに、本実施例ではファイバ(導波路)を伝播する距離が短いので、ビームの偏光の回転を抑えることができる。
【0092】
図16はフェルール型光学素子48の断面図である。フェルール型光学素子48のほぼ中央に光透過性の優れたケイ酸塩ガラスからなる光導波路部分61を有し、その周辺を屈折率の大きな材質62(例えばSiO2−TiO2−CaO−Na2O)で覆い、さらに全体を保護部材63で覆っている。
【0093】
光導波路部分61の材質は、石英でもよい。光導波路部分61の断面寸法は直径2〜5マイクロメートルほどであり、使用する波長の光をシングルモードで伝播するモードフィールド径になっていることが望ましい。その周辺を覆う屈折率の大きな材質62は断面直径100〜200マイクロメートルくらいである。さらにそれらの周囲を覆う保護部材63は外形直径1.25〜2.5mm程度となっている。保護部材63の材質は例えばアルミナ、ジルコニアなどのセラミック、あるいは金属(例えばアルミニウム)でもよい。
【0094】
このフェルール型光学素子48は光透過性を良くするため、円柱状の両端面は鏡面に研磨されている。このフェルール型光学素子48の長さは1から100mmとなっている。長さは小型化を目的とするときは長さ10mmほどとする。フェルール型光学素子48の光導波路部分73の長さは1から100mmとなっている。さらに望ましくは10から30mm、より望ましくは15から25mmとする。
【0095】
このフェルール型光学素子48は単なる部品として、装置に組み込んで使用してもよいが、ほかの光学系と調整が必要であり、図15のように、集光レンズ71と組み合わせて使用すると効果的であり、さらに光導波路部分73から出射した光は固有のNAを持つ拡散光となるため、コリメートレンズ72と組み合わせて調整する。
【0096】
フェルール型光学素子48の集光レンズ71の焦点位置にフェルール型光学素子48の光導波路部分73端面を一致させ、コリメートレンズ72の焦点位置にフェルール型光学素子48の出射側端面を合わせ込む。それぞれの焦点距離を選択することにより、フェルール型光学素子48はビーム径を拡大するビームエキスパンダと同様の機能を発揮する。
【0097】
図17は、フェルール型光学素子48の他の実施例を示す図である。図17のフェルール型光学素子48はフェルール型光学素子48と異なり、端面は入射面、出射面ともにフェルール型光学素子48の光導波路部分73の光軸に対して傾き角度を設け、両端面が平行になるように表面を研磨している。光軸に対する傾き角度は82度である。即ち、光軸に対して垂直な面に対する傾き角は8度である。フェルール型光学素子48の端面をこのように傾けることにより、フェルール型光学素子48の光導波路部分73の端面での鏡面反射光が光源に戻り光となって、光源の光強度安定性を低下させることを防ぐことができる。
【0098】
フェルール型光学素子49の端面の光軸に対する傾き角は8度に限ることはない。フェルール型光学素子49の光導波路部分73の端面の有効な傾き角の範囲は、光軸に対して0度から10度である。より望ましくは光軸に対して6度から10度、さらに望ましくは7度から9度である。
【0099】
さらに、フェルール型光学素子48も偏光維持特性をもつ構造を採用することにより、偏光を用いても、その偏光特性を出射後も維持することができる。
【0100】
レーザ光を拡大し、平行ビームとするために、通常はビームエキスパンダーなどが用いられていたが、本発明によるビーム整形光学素子を用いることにより、収差などを軽減することができる。また、光学系が簡単になり、光軸調整などの手間や時間を低減することができる。
【0101】
次に、本光測定装置の動作について説明する。この動作は、コンピュータ14が自動的に装置を制御する。
【0102】
1.ユーザが測定装置の起動をコンピュータ14に入力すると、コンピュータ14は、測定装置のメイン電源を投入する。
【0103】
2.ユーザが測定項目を設定すると、コンピュータ14は、予め定められたテーブルに従い、測定装置内の各光学素子の組み合わせを選定する。また、コンピュータ14は、使用するレーザを選定する。
【0104】
3.コンピュータ14は、光位置検出器の電源をONする。以降は、測定装置の動作プログラムに従って、光位置検出器の電源のオン、オフを制御する。
【0105】
4.コンピュータ14は、試料ステージを初期位置に移動する。
【0106】
5.コンピュータ14は、各光学素子を原点位置に移動する。コンピュータ14は、光位置検出器の出力信号をモニタしながら、各種光学素子や試料ステージなどの出力最大値によって原点位置を割り出し、これから外れていた場合、ステッピング・モータを駆動調整して原点位置に合わせる。
【0107】
6.ユーザは、試料容器としてマイクロプレートに試料をセットする。そして、このマイクロプレートを試料ステージに載置する。
【0108】
7.コンピュータ14は、対物レンズのXY位置を調整する。即ち、コンピュータ14は、試料ステージを移動させ、対物レンズが測定対象のウェルの直下に位置するように試料ステージの水平位置を調整する。
【0109】
8.コンピュータ14は、液浸水供給機構電源をONとして、対物レンズの上面に液浸水を満たす。
【0110】
9.コンピュータ14は、測定に用いるレーザ電源をONする。そして、対物レンズを通してウエル内の試料溶液内にフォーカスを合わせて光源からの光を照射する。
【0111】
10.コンピュータ14は、シャッターの初期設定を行う。
【0112】
11.コンピュータ14は、対物レンズのフォーカス位置を調整する。即ち、対物レンズZ軸調整機構を調整し、光スポットの試料内での位置を調整する。
【0113】
12.測定項目に応じて、偏光素子のON/OFF、光走査機構電源のON/OFFを制御する。
【0114】
13.コンピュータ14は、光検出装置による各光学素子の位置調整を行う。試料から発せられる蛍光信号を光検出器で検出しながら、信号光が通過する光路内の光学素子を光軸方向、X−Y軸方向(水平方向)にそれぞれ位置調整し、各光学素子の配置を最適化する。
【0115】
14.コンピュータ14は、光源光の強度を調整する。試料から発せられる蛍光信号を光検出器で検出しながら、レーザ光源の駆動電流を調整する。
【0116】
15.光学素子全ての位置調整が終了すると、コンピュータ14は指令により、光位置検出器の電源を切る。
【0117】
16、コンピュータ14は、測定を開始する。
【0118】
17.コンピュータ14は、測定が終了するとレーザ電源をOFFする。
【0119】
18.コンピュータ14は、メイン電源をOFFする。
【0120】
以上のようにして、本実施の形態に係る測定装置では、自動で測定を進めることができる。なお、試料ステージを駆動して、マイクロプレートの平面位置(X−Y方向)を移動し、次に測定を行なうマイクロプレートのウェル内の試料に位置合わせを行なうが、このとき、光位置検出器の電源をONし、光検出器の位置調整を再度実施する。また、必要に応じてオペレーターが手動で各光学素子の位置調整を行なっても良い。
【0121】
次に、FCS測定とFIDA測定の切り替えに伴う、測定装置内部の光学素子の切り替え動作について説明する。測定の切り替えに伴って切り替えられる主な光学素子は、ビーム走査機構9である。
【0122】
図18A、図18Bは、ビーム走査機構の切り替え方法を説明する図である。
【0123】
図18Aは、FCS測定でのビーム走査機構9を示す図である。点線で表す光軸に対して、45度の角度でミラー90が挿入される。この配置では、レーザビームは、対物レンズ10の光軸上で焦点を結ぶ。対物レンズ10の使い方として、その光学的な特性(明るさ、収差)を最も有効に使うためには、光軸上に焦点を設けることが望ましい。
【0124】
図18Bは、FIDA測定でのビーム走査機構9を示す図である。一点鎖線で表す光軸に対して、45度から少し傾きをもった角度で偏芯回転ミラー40が設置される。この偏芯回転ミラー40は、モータ41と接続されており、モータ41の回転軸と偏芯回転ミラー40のミラー面とは垂直ではない。モータ41の回転運動により、レーザビームの焦点は対物レンズ10の光軸を中心として回転運動する。
【0125】
図19A、図19Bは、ビーム走査機構の他の切り替え方法を説明する図である。図19Aは、FCS測定でのビーム走査機構9を示す図である。この構成は、FCS測定とFIDA測定を図18Bと同様のビーム走査機構9の構成で共用するものである。但し、図18Bに示す形態と異なり、モータ41と回転軸とが、45度ではない角度で取り付けられている。そのため、偏芯回転ミラー40が一周回転する間に、偏芯回転ミラー40が光軸に対して、図18Aと同一の配置となる回転角度が存在する。図19Aは、この状態を示している。そこで、この回転角度を記憶しておき、FCS測定に切り替えられたときは、この回転角度になるように偏芯回転ミラー40を回転させる。
【0126】
図19Bは、FIDA測定でのビーム走査機構9を示す図である。このビーム走査機構9は、図19Aと同じ構成である。上記偏芯回転ミラー40をそのまま回転させると、図に示すように、レーザビームの焦点は対物レンズ10の光軸の周囲を回転する。
【0127】
続いて、FCS測定に切り替えたときの、本光測定装置の動作について説明する。この動作は、コンピュータ14が自動的に装置を制御する。
【0128】
1.ユーザが測定装置の起動をコンピュータ14に入力すると、コンピュータ14は、測定装置のメイン電源を投入
2.ユーザがFCS測定を設定すると、コンピュータ14は、予め定められたテーブルに従い、測定装置内の各光学素子の組み合わせを選定。使用するレーザを選定する。
【0129】
3.コンピュータ14は、光位置検出器の電源をONする。以降は、測定装置の動作プログラムにより、光位置検出器の電源のオン、オフを制御する。
【0130】
4.コンピュータ14は、試料ステージを初期位置に移動する。
【0131】
5.光位置検出器による各光学素子位置調整。試料から発せられる蛍光信号を光強度モニタ 用の光検出器で検出しながら、信号光が通過する光路内の光学素子を光軸方向、X−Y軸方 向(水平方向)にそれぞれ位置調整し、各光学素子の配置を最適化する。
【0132】
6.ユーザは、試料容器としてマイクロプレートに試料をセットする。そして、このマイクロプレートを試料ステージに載置する。
【0133】
7.コンピュータ14は、液浸水供給機構電源をONとして、対物レンズの上面に液浸水を満たす。
【0134】
8.コンピュータ14は、測定に用いるレーザ電源をONする。光源からの光は、対物レンズを通してウエル内の試料溶液内にフォーカスを合わせる。
【0135】
9.コンピュータ14は、光走査機構の電源をOFFする。光走査機構を停止させ、光ビームが試料内での所望の位置に来るように調整する。
【0136】
10.コンピュータ14は、光源光の強度を調整する。試料から発せられる蛍光信号を光 検出器で検出しながら、レーザ光源の駆動電流を調整する。
【0137】
11.コンピュータ14は、関連する光学素子、ダイクロイックミラー101、バリアフィルタ64、ピンホール52など関連する光学素子全ての位置調整が終了すると、コンピュ ータ14は指令により、光位置検出器の電源を切る。
【0138】
12、コンピュータ14は、測定を開始する。
【0139】
13.コンピュータ14は、測定が終了するとレーザ電源をOFFする。
【0140】
14.コンピュータ14は、メイン電源をOFFする。
【0141】
続いて、FIDA測定に切り替えたときの、本光測定装置の動作について説明する。この動作は、FCS測定の動作と同様であるので、主として異なる動作について記載する。
【0142】
1.ユーザが測定装置の起動をコンピュータ14に入力すると、コンピュータ14は、測定装置のメイン電源を投入
2.ユーザがFIDA測定を設定すると、コンピュータ14は、予め定められたテーブルに従い、測定装置内の各光学素子の組み合わせを選定。使用するレーザを選定する。この際、FIDA偏光測定が選択されていた場合は、偏光素子ホルダ28を動作させて、偏光板を光路中に挿入する。
【0143】
3.乃至8.はFCS測定時と同一。
【0144】
9.コンピュータ14は、光走査機構の電源をONし、光ビームが試料内での所望の位置で走査するように調整する。
【0145】
10.乃至14.は、FCS測定時と同一
以上説明した、実施の形態によれば測定装置の基本構成を変えることなく、また、光学素子の切り替えなどによるだけで、さまざまな試料の動的な光解析方法を迅速に、しかも効率良く行なうことができる。
【0146】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は測定装置の基本構成を変えることなく、種々の試料の動的な光解析方法を迅速にかつ効率良く行なうことができる光測定装置を製造する産業に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0148】
1…レーザ光源、2…光検出器、3…ダイクロイックミラー、7…光量モニタ機構、9…ビーム走査機構、11…液浸水供給機構、14…コンピュータ、15…光源部、16…光検出部、20…マイクロプレート、24…シングルモード光ファイバー、28…偏光素子ホルダー、36…回転式NDフィルタ、40…偏芯回転ミラー、41…モータ、45…バリアフィルタ、47…シングルモード光ファイバー、48…フェルール型光学素子、80…マルチモード光ファイバー、90…ミラー、102…ビームシフタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、対物レンズと、光検出器と、試料容器と、光学素子と、前記レーザ光源と前記試料容器との間の光路上に配置され、偏芯回転ミラーと前記偏芯回転ミラーを回転させるモーターとにより構成されるビーム走査機構と、制御信号を発生し、前記ビーム走査機構の駆動制御を行なうビーム走査機構制御部と、を備え、前記試料容器に保持された溶液中の生物学的試料の物理的性質について複数種類の測定項目に対応した測定を行なう光測定装置であって、
前記ビーム走査機構は前記ビーム走査機構制御部より前記制御信号を受信して、
FIDA(Fluorescence Intensity Distribution Analysis)測定を行なう場合は、前記偏芯回転ミラーを回転させてレーザ光の集光スポットを前記試料容器に保持された溶液内のフォーカス位置で略楕円状に光走査し、
FCS(Fluorescence Correlation Spectroscopy)測定を行なう場合は、光軸を通った光が前記対物レンズを光軸に沿って通過する向きに前記偏芯回転ミラーのミラー面を固定し、前記光軸を通った光が前記溶液内でコンフォーカル照明を行うことを特徴とする光測定装置。
【請求項2】
前記光学素子は濃淡フィルタ、または波長選択素子、またはミラー、または偏光素子であることを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【請求項3】
前記光検出器で得られる光信号は生物学的試料に由来する光学的信号の強度、あるいはその時間的な変化であることを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【請求項4】
光信号の強度のゆらぎの相関分光解析を行なうことを特徴とする請求項3に記載の光測定装置。
【請求項5】
前記試料容器は少なくとも底面の一部が光透過性材料から成ることを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【請求項6】
前記試料容器はマイクロプレートであることを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【請求項1】
レーザ光源と、対物レンズと、光検出器と、試料容器と、光学素子と、前記レーザ光源と前記試料容器との間の光路上に配置され、偏芯回転ミラーと前記偏芯回転ミラーを回転させるモーターとにより構成されるビーム走査機構と、制御信号を発生し、前記ビーム走査機構の駆動制御を行なうビーム走査機構制御部と、を備え、前記試料容器に保持された溶液中の生物学的試料の物理的性質について複数種類の測定項目に対応した測定を行なう光測定装置であって、
前記ビーム走査機構は前記ビーム走査機構制御部より前記制御信号を受信して、
FIDA(Fluorescence Intensity Distribution Analysis)測定を行なう場合は、前記偏芯回転ミラーを回転させてレーザ光の集光スポットを前記試料容器に保持された溶液内のフォーカス位置で略楕円状に光走査し、
FCS(Fluorescence Correlation Spectroscopy)測定を行なう場合は、光軸を通った光が前記対物レンズを光軸に沿って通過する向きに前記偏芯回転ミラーのミラー面を固定し、前記光軸を通った光が前記溶液内でコンフォーカル照明を行うことを特徴とする光測定装置。
【請求項2】
前記光学素子は濃淡フィルタ、または波長選択素子、またはミラー、または偏光素子であることを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【請求項3】
前記光検出器で得られる光信号は生物学的試料に由来する光学的信号の強度、あるいはその時間的な変化であることを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【請求項4】
光信号の強度のゆらぎの相関分光解析を行なうことを特徴とする請求項3に記載の光測定装置。
【請求項5】
前記試料容器は少なくとも底面の一部が光透過性材料から成ることを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【請求項6】
前記試料容器はマイクロプレートであることを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【公開番号】特開2012−198236(P2012−198236A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130406(P2012−130406)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【分割の表示】特願2007−525963(P2007−525963)の分割
【原出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【分割の表示】特願2007−525963(P2007−525963)の分割
【原出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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