説明

光源と光処理装置とを備えたセキュリティドキュメント

セキュリティドキュメントに、光源(14)と、光源からの光を屈折、反射、偏光、及び/又は部分的に吸収する光処理装置(18)とが設けられている。光処理装置を経た光は検査者又は検査装置により特徴的な特性を有するものと認識されるため、セキュリティが高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念によるセキュリティドキュメントに関するものである。
【0002】
通常、この種のセキュリティドキュメントはフレキシブル基板を有しており、この基板上に、セキュリティドキュメントの真正性を検証するための偽造防止マークが配置されている。
【0003】
特に銀行券やパスポートの場合、とりわけ、体積ホログラムや表面ホログラム又は回折格子が偽造防止マークとして提案されている。たしかに、この種の偽造防止マークは改竄されにくいものではあるが、この種のドキュメントの改竄には相当な手段が投入されるので、セキュリティが完全になるということはない。
【0004】
したがって、冒頭に述べた形式のセキュリティドキュメントにおいて改竄に対する安全性をさらに改善することが課題となる。
【0005】
この課題は請求項1によるセキュリティドキュメントにより解決される。本発明によれば、セキュリティドキュメントには、少なくとも1つの光源と、この光源からの光を屈折、反射、偏光、及び/又は部分的に吸収することにより処理する光処理装置とが設けられている。光処理装置を経た光の特性を検査者又は検査装置が検証することができるので、セキュリティは高められる。なぜならば、改竄者は光源だけでなく光処理装置も改竄しなければならないからである。
ここでは、光源という概念の下に、能動的な仕方で(すなわち、単なる反射によるのではなく)光を送出することのできる部材が意味されている。例えば、光源は以下の技術のうちの1つ又は複数を用いるものであってよい:
−発光ダイオード、なお、有機発光ダイオードでも無機発光ダイオードでも使用可能。発光ダイオードはコンパクトで動作電圧が低いので有利である。
−電流又は電界によって発光させることのできる他の電界発光材料。
−可視光、赤外光、又は紫外光のビームによって発光を励起させることのできる材料。蛍光性又は燐光性の材料はこれに属する。蛍光性材料は、例えば短波光で励起させることで、より波長の長い光を発生させることができる。燐光性材料は、励起から放射までの間に比較的長い時間が経過するので、励起後に残光する。光源に非線形光学材料を用いてもよい。この種の材料は、とりわけ、入射光の周波数を増大させることができる。
【0006】
光処理装置は、例えば、反射性又は透過性の回折構造、レンズ構造、表面又は体積ホログラム、ウェーブガイド、マスク、又はこれらエレメントの組合せであってよい。
【0007】
他の有利な実施形態及び使用形態は、図面の参照のもと、以下の説明から明らかとなる。図面のうち、
図1は、銀行券の形態のセキュリティドキュメントを示しており、
図2は、誘導給電と体積ホログラムとを備えた電界発光光源付き偽造防止マークの1実施形態の断面を示しており、
図3は、容量給電と体積ホログラムとを備えた電界発光光源付き偽造防止マークの1実施形態の断面を示しており、
図4は、誘導給電と表面ホログラムとを備えた電界発光光源付き偽造防止マークの1実施形態の断面を示しており、
図5は、誘導給電と反射性表面ホログラムとを備えた電界発光光源付きセキュリティドマークの1実施形態の断面を示しており、
図6は、電界発光光源と誘導給電と導波光学系とを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示しており、
図7は、コンパクト光源と誘導給電と導波光学系とを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示しており、
図8は、電界発光光源と誘導給電とマイクロレンズとを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示しており、
図9は、電界発光光源と誘導給電とアパーチャマスクとを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示しており、
図10は、電界発光光源と誘導給電とアパーチャマスクと体積ホログラムとを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示しており、
図11は、蛍光性、燐光性、又は非線形光学的光源を備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示しており、
図12は、直に遠隔電場内で励起される電界発光光源を備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示しており、
図13は、電界発光光源と誘導給電とマスクとを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示している。
【0008】
基本構造:
銀行券を例として、セキュリティドキュメントの基本構造が図1に示されている。セキュリティドキュメントは紙又はプラスチックでできたフレキシブル基板を有しており、この基板の上に公知の仕方で例えばセキュリティマーク2、イラストレーション3、及び額面金額4がプリントされている。さらに、銀行券は偽造防止マーク5を有しており、この偽造防止マーク5の構造はまず図2による第1の実施形態において例として説明される。
【0009】
図2は図1の線II−IIに沿った断面を示したものである。見て分かるように、偽造防止マーク5は、有利には印刷技術によって基板1上に又は基板1に固定された支持体上に取り付けられたセキュリティ構造から形成される。
【0010】
下方導電層10は導電材料から構成されており、一方で例えば長方形の電極11とコイル12を形成している。下方導電層10の上には絶縁された誘電層13が配置されている。この誘電層13は下方導電層10を覆っているが、コイル12のタップ12aの領域では除かれている。誘電層13上には、電極の上方に、同じくほぼ長方形の電界発光層14がある。電界発光層14の上方には、透明な上方導電層15が置かれている。これが電界発光層14の上方の電極16とコイル12のタップ12aに接続された導電路17とを形成している。上方導電層15の上方では、電界発光層14の領域に体積ホログラム18が設けられている。個々の層を製造するのに適した材料と技術は以下に説明される。
【0011】
偽造防止マーク5の動作は次の通りである:マークの検査のために、コイル12は交流磁界

を形成する読取り器の中又は上方にもっていかれる。コイル内にはこの交流磁界により電圧12が誘導され、この電圧12はその後、電極11及び16に印加され、電界発光層14内に電流を生じさせ、電界発光層14が発光するよう励起する。このようにして発生した光は透明な上方電極16と体積ホログラム18を透過する。体積ホログラム16内の回折構造は、電界発光層14からの光の少なくとも一部を回折させて、検査者が視覚的に又は装置により検査することのできるような特徴的な照明パターン20を形成するように配置されている。
【0012】
一般に、偽造防止マーク5は、例えば図2の電界発光部材のような光源と、例えば図2の体積ホログラム18のような光処理装置とから成る。偽造防止マーク5はさらに、実施形態に応じて、例えば図2のコイル12のような電源を必要とする。以下では、これらの構成要素の可能な実施例を検討する。
【0013】
光源:
光源は、それぞれの基板1に取り付けられ、光処理装置と共働するのに適していなければならない。光源は実質的に単色又は多色であってよく、これにより、以下で説明するように、光処理装置との共働において特有の作用を達成することができる。ここでは、「単色光」という概念は、人間である観察者にとって光が色分解後にも例えばプリズム内で一色に見えることを意味し、一方、「多色光」という概念は、人間である観察者にとって色としてはっきりと区別できるスペクトル成分を光が色分解後に含んでいることとして理解されなければならない。
【0014】
光源に関しては、さまざまな技術が考察の対象となる。いくつかの特に有利な可能性は以下の通りである:
【0015】
電界発光材料
電界発光現象とは、一般に、材料に電流が流されたときの材料の発光のことである。具体的には、さまざまな物質が存在しているが、これらの物質に関して、例えば2つの電極の間に配置して十分な電圧を印加した場合に、光を発することが知られている。このような材料はこの実施形態において有利に使用することができる。
【0016】
とりわけ、いわゆる有機発光ダイオード(OLED又はPLED)がこの材料のグループに属している。有機発光ダイオードはフレキシブルに製造可能であるという利点を有している。適切な素子はUS6750472に記載されている。
【0017】
特に好適なのは、印刷技術によって基板上に取り付けることのできる材料である。例えば、デュポン社(英国ブリストル)は"Luxprint"という商標で一連の材料を提供しており、この材料を用いれば、適切な光源を印刷技術によって製造することが可能である。印刷技術によって取り付け可能な電界発光材料をここでは電界発光インクと呼ぶ。
【0018】
図2による実施例では、電界発光層14としてLuxprint材料を使用する場合、放射光の所望の色に応じて、発光物質8150(白)、8152(青緑)、8154(黄緑)、又は8164(明るい黄)のうちの1つを使用することができる。その他の層に適した材料は、例えば、デュポン社の説明書"Processing Guide for DuPont Luxprint Electroluminescent Inks"バージョン1.0、2002年3月から知ることができる。
【0019】
従来の発光ダイオード
電流の消費が少なく、動作温度が低いので、無機半導体材料をベースとした従来の発光ダイオード(LED)もこの実施例には特に適している。ただし、フレキシブル基板1を使用する場合には、基板を変形する際に損傷しないように、小さな発光ダイオード素子のみを使用しなければならない。より大きな面積を照明するために、複数の発光ダイオード素子をマトリクス状に配置して、例えば、図2による実施形態の電界発光層14をこのようなマトリクスで置き換えてもよい。上方導電層15はLEDに給電する導電路に置き換えられる。
【0020】
さらに以下では、図6を参照して、ただ1つのLEDのみを用いた実施形態を説明する。
【0021】
蛍光材料
光源は適切に励起させた際に又は励起後に光を放出する蛍光又は燐光材料から形成されていてもよい。
【0022】
特に、光の照射によって励起させることのできる材料が好ましい。相応する染料は当業者には周知である。相応する偽造防止マークの可能な実施形態の断面図が図11に示されている。光源は蛍光性染料を用いた層114から形成される。層114の上には、例えば体積ホログラム18の形態の光処理装置が設けられている。
【0023】
図11による偽造防止マークを検査するために、層114は例えばUV光による照射によって励起させられる。層114から発した光は、第1の実施例の場合と同じく、体積ホログラムによって少なくとも部分的に回折するので、検査者が検査することができる。
【0024】
非線形光学材料
さまざまな有機的又は無機的材料が強い非線形光学特性を有している。このような材料は、とりわけ、入射光の周波数を倍増することができ、周波数2倍化又は3倍化の際に最も強い作用が観察される。無機材料として、ここでは、例えばLiNbO3,KDP(KH2PO4)又はKNbO3が考察される。有機の分野では既に非局在電子系とドナー基及びアクセプター基とを有する多種多様の分子が知られており、これらは、例えば2-Methyl-4-nitroaniline(MNA)、Methyl-(2,4-dinitro-phenyl)-aminopropanoat(MAP)又は尿素のように、強い非線形光学特性を有している。相応する光源は、例えば、ポリマーマトリクス内に浮遊した相応する材料の粉末又はポリマーマトリクス内の側基である材料の粉末を含んでいてよい。2次の非線形光学特性を促進するために、特に有機材料を使用する場合、マトリクスが硬化する前に電界の印加によって非線形光学分子を整列させてもよい。
【0025】
この種の非線形光学的光源は、例えばパルス駆動の赤外レーザで照明すると、周波数2倍化された例えば緑色のスペクトル領域の光を放出する。
【0026】
この種の相応する偽造防止マークは例えば図11に示されているように形成することができる。図11では、非線形光学材料は層114の中に入っている。
【0027】
電源:
LED、OLED、又は電界発光光源を使用する場合には、光源内に必要な電流を生じさせるために適切な手段が設けられていなければならない。
【0028】
以下では、電源のいくつかの例が示される。
【0029】
誘導結合
電気エネルギーの誘導入力結合はすでに図2による実施例において使用されている。偽造防止マークに誘導により電圧を入力結合することができるためには、偽造防止マークが導電性材料から成る少なくとも1つの巻線を有するコイルを有していなければならない。複数の巻線が設けられていると有利である。図1に概略的に示されているように、コイルは光源の隣りに、例えば光源の下又は光源の周りに配置することができる。
【0030】
このコイルと光源により形成されたコンデンサとが、第1次近似として、LC振動回路を形成している。光源が高電圧を必要とする場合には、交流磁界

の周波数を振動回路の共振の近くに移すことができる。
【0031】
容量結合
誘導結合の代わりに容量結合を用いてもよい。相応する偽造防止マーク5の実施形態は図3に示されている。この実施形態の光源は実質的に図2による実施形態の光源と同様に形成されており、誘電層13と下側導電層11の上に電界発光層14を有している。電界発光層14の上には透明な上側導電層15が配置されている。しかし、図2による実施形態とは異なり、コイルは設けられていない。その代わりに、上側導電層15は、例えば光源に隣接した電極24を形成している。
【0032】
光源を発光させるために、電極11及び24を介して電圧が容量的に入力結合される。そのために、図3に概略的に示されているように、交流電圧源26と2つの外部電極27,28とを備えた検査装置を使用してもよい。2つの外部電極27,28は、それぞれ偽造防止マークの電極11又は24の近傍にもってくることができるように配置及び形成されている。例えば、基板1を電極の上にもってきて、電極27と11ならびに28と24がそれぞれ1つのコンデンサを形成するように配置することができ、このコンデンサを介して偽造防止マーク5に交流電流が流れることができる。
【0033】
この実施形態では、層11もなくてよい。その場合、電極27が電極16とともにコンデンサを形成する。
【0034】
直接的な電界結合
電界発光層14を直接的に外部交流電界の中に入れることも考えられる。これは図12に示されている。ここに示されている偽造防止マークは、特に、電極を必要とせず、ただ電界発光層14を必要とするだけである。
【0035】
ここでは、検査装置は2つの電極板30,32を有しており、これら電極板のうちの少なくとも一方、例えば電極板32は、透明である。少なくとも電界発光層14を載せた偽造防止マークの領域を電極30,32の間にもってくると、電極30,32に交流電圧が印加される。この電圧が電界を形成し、この電界が電界発光材料の層を貫通し、この層を発光させる。光処理装置によって生じる光学的効果は、少なくとも1つの透明電極板32を通して直接観察することができる。
【0036】
直接的な電気接触
基板上には、電気接触面を形成する導電性の電極も配置してよい。
【0037】
光処理装置:
光処理装置は光源からの光を屈折、反射、偏光させるため又は部分的に吸収するために使用される。光処理装置はさまざまな形態のものであってよい。光処理装置の課題は、中でも、セキュリティドキュメントの真正性の検査に使用し得る更なる手段を検査者に提供することである。特に、光処理装置は、目及び/又は適切な装置によって簡単にチェックすることのできる一定の特性を光源からの光に付与するように形成されていなければならない。
【0038】
以下に光処理装置の有利な実施形態を説明するが、これらの実施形態は個別に又は組み合わせて使用することができるものである。
【0039】
体積ホログラム
1つの有利な実施形態では、光処理装置は既に図2に関連して説明したような1つ又は複数の体積ホログラムを有している。これらの体積ホログラムは、それぞれのブラッグ角のもとでのみ回折効果が可視となるように、その厚さが実質的に波長よりも大きいホログラムであると考えられる。
【0040】
体積ホログラムを形成するのに適した材料及び技術は例えばEP 1091267とWO 03/036389から公知である。
体積ホログラムを光源の上方に配置する場合、体積ホログラムは、一方の側から入射した光が(回折していない光と同様に)尚も反対側を通って(しかし、回折していない光とは別の方向に)出射するようにこの入射光を回折させることのできる透過体積ホログラムでなければならない。これが可能となるためには、相応するホログラムの局所格子面が層の法線ベクトルに対してほぼ平行であるか又は比較的小さな角度をとるようにすべきである。
【0041】
体積ホログラムは、例えば、所定の波長の光を所定の方向に屈折させる均一格子であってよい。この場合、偽造防止マーク5は所定の方向に相応する光の反射が観察され得るか否かを確認することにより検査することができる。光源が多色ならば、所定の方向に、1つ又は複数の特徴的なはっきりとした虹効果が観察される。
【0042】
しかしながら、体積ホログラムが複雑な格子構造を有し、例えば3次元物体を表象するようにすることもできる。
光処理装置は、透過体積ホログラムに加えて、透過体積ホログラムと同じ層又は別個の層に書き込むことのできる反射体積ホログラムも有していてよい。この場合、反射体積ホログラムは環境光のもとで可視であるが、透過体積ホログラムは光源がオンになっているときにしか見ることができない。
【0043】
体積ホログラムは光源と基板1との間に配置することもできる。この場合、基板1が透明でなければ、体積ホログラムは反射体積ホログラムとして形成される。
【0044】
表面ホログラム
上記体積ホログラムに加えて又はその代わりに、光処理装置は図4に示されているような表面ホログラム30も有していてよい。ここでは、表面ホログラムとは、明らかにそれぞれのブラッグ条件の外でも屈折するように高々数波長の厚さしか有しない回折構造であると理解される。
【0045】
表面ホログラム30は、例えば周知のように層32の表面にエンボス加工により形成することができる。
【0046】
表面ホログラム30を光源の上方に配置する場合には、層32は透明でなければならない。
【0047】
表面ホログラム30は直接、層15の上に型押ししてもよい。この場合、層32は無くてもよい。
【0048】
表面ホログラム30は、図5に示されているように、光源又は電界発光層14の下方に配置してもよい。この場合、表面ホログラムは光を層14に向かって上へと反射しなければならないので、表面ホログラムを透明層の上に配置する必要はない。
【0049】
ウェーブガイド
光処理装置はウェーブガイドを有していてもよい。ここでは、ウェーブガイドとは、少なくとも1つの方向において厚さが著しく大きい透明な部材であり、全反射により光をこの方向に導くことができるものであると理解される。
【0050】
相応する偽造防止マークは図6に示されている。ウェーブガイド36は透明層によって形成されており、部分的に光源又は電界発光層14の上方に配置されている。ウェーブガイドに光を入力結合できるようにするため、光源の領域には、例えば表面格子又は体積ホログラムの形態の格子構造38が設けられている。格子構造38は、光源からの光の一部がウェーブガイド36を通って拡散するように、この光をウェーブガイドへと屈折させる。この光は例えばウェーブガイドの前端部で観察することができる。また、光源から離れた場所に、この光を出力結合する第2の格子構造40、すなわち、この光を散乱させる別の構造を設けてもよい。
【0051】
格子構造の代わりに、例えば、WO 03/098280に記載されているような構造を使用してもよい。
【0052】
ウェーブガイドは、特に、例えば無機LEDのようなコンパクトな光源とともに使用するとまた有利である。このことは、小さなLED42を光源として使用する図7に示されている。LED42は、図2による実施形態と同様に、コイル12によって電流を供給される。
【0053】
LED42の光は図7による実施例では側方から出て、直接ウェーブガイド36の前端部に入力結合される。ウェーブガイド36から側方へ光を出力結合するために、再び格子構造40が設けられている。
【0054】
その他の光屈折構造
ホログラム又はウェーブガイドの代わりに又はそれに加えて、光源からの光を屈折させる他の構造を光処理装置として設けてもよい。
【0055】
図8には、電界発光層14の上に複数のマイクロレンズ46を備えた透明プレート44が配置された実施形態が示されている。マイクロレンズは光源14から出る光の方向分布を変化させ、検査者又は検査装置はこれを観察することができる。
【0056】
プレート44は例えばフレネルレンズ又は他の表面構造を含んでいてよい。表面構造は、特に表面と平行な方向において、光源からの光の波長よりも格段に大きな特有のサイズ又は寸法を有しており、この点で、この解決手段は表面ホログラムとは異なっている。
【0057】
拡散放射する広い電界発光層14の代わりに、有利には、無機の小さなLED又は小さなOLEDから成り、LED又はOLEDごとに例えばマイクロレンズ46の設けられたマトリクスをプレート44の照明に用いてもよい。この場合、LEDは第1次近似として点光源であるから、このようにして、例えばLEDの光を所定の点に集束させたり、所定の方向に投じたりすることのできる明確な投影光学系を形成することができる。
【0058】
偏光器
光処理装置はまた1つ又は複数の偏光器を有していてもよい。例えば、図8による実施形態のプレート44は光を偏光させる箔で代替することができる。
【0059】
この場合、真正性検査のために、第2の偏光器により偽造防止マークから出る光を解析するようにしてもよい。
【0060】
マスク
また、光処理装置がマスクを形成し、このマスクにより、光源からの光が反射によるにせよ吸収によるにせよ位置に応じて異なる強さで減光されるようにしてもよい。例えば、マスクが複数の透光孔を有し、光源からの光はこれらの孔を通ることができ、それ以外の光は部分的に又は完全に減光されるようにすることができる。
【0061】
このように、図8による実施形態のプレート44は、特有の点パターンを観察者に対して示す複数の孔61を備えた孔マスク60で代替することができる。 相応する実施形態は図13に示されている。
孔マスクの使用により、孔61の箇所に、例えば視覚的に分かれた連続していない複数の発光領域を形成することが可能になり、しかもこれを光源を制御するただ1つの構造だけで行うことができる。
【0062】
さらに、マスクの使用により、光源そのものを構造化することが難しい場合でも、発光領域をはっきりと構造化することができるようになる。とりわけ、マスクの中に少なくとも1つの透明な開口部を設け、この開口部を通って光源からの光が出射するようにすることができる。この場合、開口部はすべての側を非透光性材料で、すなわち、開口部に比べて格段に光を通さない材料で囲まれている。ここで、「開口部」という概念は光学的な意味で理解されなければならない、つまり、それは光学的に透過性のある領域、例えばマスクの孔や窓である。
【0063】
1つの有利な実施形態では、マスクの開口部は数字又は英数字のテキスト、例えば、銀行券の額面を表す数字、又は、略号もしくはロゴを形成する。
【0064】
また、電界発光層とプレート44の間に孔マスクを配置する、それも、孔が各マイクロレンズ46の下にくるように孔マスクを配置することも考えられる。これにより、各マイクロレンズ46は実質的に点光源の光を処理することとなるため、光を例えば所定の箇所に集束させたり、所定の方向に投じたりすることが可能になる。
【0065】
特に有利な実施形態は図9に示されている。この実施形態では、孔マスクは、電界発光層14の下方の所定の箇所において例えば穿孔48によって基板1に透光性を持たせることで、基板1から形成される。基板1のレーザー穿孔に適した技術は、例えばWO 97/18092及びWO 04/011274に記載されている。
【0066】
光が穿孔48を通過するができるように、電界発光層14の下方に配置された層10及び13は透明でなければならない。
【0067】
図9に示されている実施形態では、光源を発光させ、次いで、穿孔48を光が通過したか否かを検査するために、光源とは反対側からセキュリティドキュメントを観察することによって、偽造防止マークを検査することができる。
【0068】
穿孔48から出射した光が光処理装置のさらに別の部分に導かれるようにしてもよい。とりわけ、図10に示されているように、穿孔48の出口にホログラム層50を設けたり、出射光を決められた通りに屈折させる他の構造を設けることができる。このような構造と穿孔48との組合せは特に有利である。というのも、穿孔48から出射した光は、拡散発光する電界発光層14から直接発した光よりもはっきりとした方向分布を有しており、その結果、ホログラム内又はレンズ内で、より効率的な回折又は結像が可能となるからである。
【0069】
それゆえ、穿孔ないし透光孔は有利には比較的小さく、例えば高々100μmの直径を有する。
【0070】
これまでに説明した実施形態では、マスクは穿孔の施された吸収性又は反射性の層から成っている。しかし、マスクは、「孔」の領域においては透明であり、その他の領域では例えば光を吸収する色が印刷されているような穿孔なしの層から成っていてもよい。
【0071】
応用:
原則的に、本発明による偽造防止マークは、例えば銀行券や他の有価証券、パスポート、又は他の身分証明書、証書などのような、すべてのセキュリティドキュメントに適している。本明細書に記載された複数の層から形成された偽造防止マークは、特にフレキシブル基板1を備えたセキュリティドキュメントにも、紙又はプラスチックから成る基板にも適している。
【0072】
コメント:
図面による実施例では、偽造防止マーク5は、すでに述べたように、例えば印刷技術により基板1の上に直接取り付けられている。しかしながら、偽造防止マーク5を基板とは別の支持体の上に取り付けることも可能であり、このように予め製造しておくことにより、偽造防止マーク5を全体として1ステップで基板1の上に取り付けることが可能となる。別個の支持体の上に製造することの利点は、例えばスピンコーティング及び/又はエッチングのような場合によっては基板1と適合しない製造法も使用できることにある。
【0073】
偽造防止マーク5は、実施例において示された層に加えて、さらに別の層を有していてもよい、特に、その他の層を機械的な影響や有害な物質から、特に酸素や湿気から保護するために、これらの層の上及び/又は下に保護層を有していてもよい。
【0074】
さらに別の実施形態では、基板1は少なくとも偽造防止マークの部分の領域において透明であってよい。この場合、光処理装置は少なくとも部分的に基板1内又は基板と光源との間に配置することもできる。このような実施形態の1つの例が図9又は10によるドキュメントである。
【0075】
また、光源の下方にある基板1の表面に、例えば反射ホログラムや、光処理装置の一部を形成する他の反射構造を載せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】銀行券の形態のセキュリティドキュメントを示す。
【図2】誘導給電と体積ホログラムとを備えた電界発光光源付き偽造防止マークの1実施形態の断面を示す。
【図3】容量給電と体積ホログラムとを備えた電界発光光源付き偽造防止マークの1実施形態の断面を示す。
【図4】誘導給電と表面ホログラムとを備えた電界発光光源付き偽造防止マークの1実施形態の断面を示す。
【図5】誘導給電と反射性表面ホログラムとを備えた電界発光光源付きセキュリティドマークの1実施形態の断面を示す。
【図6】電界発光光源と誘導給電と導波光学系とを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示す。
【図7】コンパクト光源と誘導給電と導波光学系とを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示す。
【図8】電界発光光源と誘導給電とマイクロレンズとを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示す。
【図9】電界発光光源と誘導給電とアパーチャマスクとを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示す。
【図10】電界発光光源と誘導給電とアパーチャマスクと体積ホログラムとを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示す。
【図11】蛍光性、燐光性、又は非線形光学的光源を備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示す。
【図12】直に遠隔電場内で励起される電界発光光源を備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示す。
【図13】電界発光光源と誘導給電とマスクとを備えた偽造防止マークの1実施形態の断面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)と該基板(1)上に配置されたセキュリティドキュメントの真正性検証のための偽造防止マーク(5)とを備えたセキュリティドキュメントにおいて、前記偽造防止マーク(5)が、光を放射する光源(14,42,114)と、該光源(14,42,114)からの光を屈折、反射、偏光、及び/又は部分的に吸収する光処理装置(18,30,40,46,48)とを有していることを特徴とするセキュリティドキュメント。
【請求項2】
前記光源(14,42,114)は電流により発光を励起することができる、請求項1記載のセキュリティドキュメント。
【請求項3】
前記光源(14,42,114)は電界発光材料、特に、電界発光インクを有している、請求項2記載のセキュリティドキュメント。
【請求項4】
前記光源(14,42,114)は少なくとも1つの有機又は無機発光ダイオードを有している、請求項1から3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記光源(14,42,114)は赤外光、可視光、又は紫外光の照射により発光を励起することができる、請求項1から4のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項6】
前記光源(14,42,114)は蛍光性材料、燐光性材料、又は非線形光学材料を有している、請求項1から5のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項7】
前記光源(14,42,114)は単色である、請求項1から6のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項8】
前記光源(14,42,11)は多色である、請求項1から6のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項9】
前記光源(14,42,114)内に電流を発生させるための手段(12,11,24)を有している、請求項1から8のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項10】
誘導的に電流を発生させる少なくとも1つのコイル(12)を有している、請求項9記載のセキュリティドキュメント。
【請求項11】
容量的に電流を発生させる少なくとも1つの電極(12,11,24)を有している、請求項9又は10記載のセキュリティドキュメント。
【請求項12】
前記光処理装置は表面ホログラム及び/又は体積ホログラム(18,30)を有している、請求項1から11のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項13】
前記光処理装置(18,30,40,46,48)は透光性体積ホログラム(18)を有している、請求項12記載のセキュリティドキュメント。
【請求項14】
前記光処理装置(18,30,40,46,48)はさらに反射性体積ホログラムを有している、請求項13記載のセキュリティドキュメント。
【請求項15】
前記光処理装置(18,30,40,46,48)はウェーブガイド(36)を有しており、特に、該ウェーブガイドに、光を側方に入力及び/又は出力結合するための散光性構造、特に格子構造(38,40)が配置されている、請求項1から14のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項16】
前記光処理装置(18,30,40,46,48)は前記光源(14,42,114)の光の波長よりも実質的に大きな特有のサイズを有する表面構造(46)を有しており、特に、該表面構造(46)は1つ又は複数のレンズ、及び/又は、1つ又は複数のフレネルレンズを形成している、請求項1から15のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項17】
前記光処理装置(18,30,40,46,48)は、前記光源(14,42,114)からの光を場所に応じて異なって減光するマスク(1,48)を有している、請求項1から16のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項18】
前記マスクは前記光源(14,42,114)からの光が通過することのできる複数の透光孔(48)を有しており、前記マスクは他の箇所では光を部分的に又は完全に減光する、請求項17記載のセキュリティドキュメント。
【請求項19】
前記マスクは前記光源(14,42,114)からの光が通過することのできる少なくとも1つの透光性の開口部を有しており、該開口部はすべての側を非透光性材料で囲まれている、請求項17又は18記載のセキュリティドキュメント。
【請求項20】
前記開口部がテキストを表している、請求項17から19のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項21】
前記光処理装置(18,30,40,46,48)は少なくとも部分的に前記基板(1)から形成されている、請求項1から20のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項22】
前記マスクは前記基板(1)から形成されており、特に、前記基板(1)内で前記光源(14,42,114)の領域には穿孔(48)が設けられている、請求項18、19、及び22のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項23】
前記光処理装置(18,30,40,46,48)は光を偏光させる偏光器を有している、請求項1から22のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項24】
前記基板(1)は軟性であり、特に、前記基板(1)は紙製である、請求項1から23のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項25】
銀行券としての形態をとった、請求項1から24のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項26】
前記セキュリティドキュメントは印刷技術により前記基板(1)上に取り付けられている、請求項1から25のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。
【請求項27】
前記セキュリティドキュメントは印刷技術により支持体上に取り付けられており、該支持体は前記基板(1)上に固定されている、請求項1から26のいずれか1項記載のセキュリティドキュメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−520458(P2008−520458A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541631(P2007−541631)
【出願日】平成17年11月23日(2005.11.23)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000690
【国際公開番号】WO2006/056089
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(505030443)オレル フュスリィ ズィヒャーハイツドルック アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】Orell Fuessli Sicherheitsdruck AG
【住所又は居所原語表記】Dietzingerstrasse 3, CH−8003 Zuerich, Switzerland
【Fターム(参考)】