説明

光源一体型光触媒装置

【課題】光触媒層に、発光ダイオードの電極機能を併せ持たせる。
【解決手段】光源一体型光触媒装置100は、InGaNから成る発光層13を有する。p型AlGaNから成るpクラッド層14、p型GaNから成るpコンタクト層15の上には酸化ニオブチタンから成る、光触媒機能を有する透光性電極20が形成されている。酸化ニオブチタンから成る透光性電極20は、発光層13からの波長380nmの紫外光により活性化されて光触媒機能層として作用し、且つ発光層13に電流を供給するための透光性電極としても作用する。光触媒として機能するのは透光性電極20の露出した表面20s近傍である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒機能と、当該光触媒を活性化させる光を発する光源とが一体となった、光源一体型光触媒装置に関する。本願においてIII族窒化物系化合物半導体とは、AlxGayIn1-x-yN(x、y、x+yはいずれも0以上1以下)で示される半導体、及び、n型化/p型化等のために任意の元素を添加したものを含む。更には、III族元素及びV族元素の組成の一部を、B、Tl;P、As、Sb、Biで置換したものをも含むものとする。
【背景技術】
【0002】
波長410nm以下の紫外線光源と、光触媒機能を有する例えば酸化チタン(TiO2)その他の光触媒層を用いて、排水中又は空気中の有毒物や悪臭物を除去又は低減する技術が広く知られている。ところで、光触媒を活性化させるための光源と光触媒機能材料とが分離して配置されていると、小型化が困難であり、また光源の発する光の利用効率も悪い。そこで光源と光触媒とを一体化する技術として下記特許文献1の技術が知られている。
【0003】
また、本発明者らにより、酸化チタン(TiO2)に導電性を付与する技術が最近報告された(特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−037615号公報
【特許文献2】WO2006/073189
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術においては、光源と光触媒層との間に透明保護層が有り、界面での全反射や透明保護層での吸収により、光の利用効率が低下する恐れがある。
そこで本発明者らは酸化チタン(TiO2)を光触媒層として用いながら、発光ダイオードの電極機能を併せ持たせることを着想して、本願発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、光触媒機能層と、III族窒化物系化合物半導体の積層構造を有する紫外線光源とが一体となった光源一体型光触媒装置において、光触媒機能層は、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、アルミニウム(Al)又はタングステン(W)がチタン(Ti)に対してモル比1〜10%でドープされた酸化チタンから成り、且つ、光触媒機能層は紫外線光源に電流を供給する電極を構成していることを特徴とする光源一体型光触媒装置である。
請求項2に係る発明は、光触媒機能層は、ニオブ(Nb)又はタンタル(Ta)がチタン(Ti)に対してモル比3〜10%であるような酸化ニオブチタン又は酸化タンタルチタンから成ることを特徴とする。
【0006】
請求項3に係る発明は、光触媒機能層とコンタクト層であるIII族窒化物系化合物半導体層との間には他の材料から成る層が存在しないことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、互いに接する、光触媒機能層の屈折率と、コンタクト層であるIII族窒化物系化合物半導体層の屈折率との比は、0.98以上1.02以下であることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、光触媒機能層とコンタクト層であるIII族窒化物系化合物半導体層との間には、他の材料から成り、100nm以下の厚さの透光性導電層のみが存在することを特徴とする。ここにおいて透光性導電層は単層に限定されず、総膜厚100nm以下の多重積層膜を含むものとする。また、「透光性」とは、少なくとも紫外線光源の発する光に対して実質的に透明であれば良いものとする。
【0007】
請求項6に係る発明は、光触媒機能層はp電極であることを特徴とし、請求項7に係る発明は、光触媒機能層はn電極であることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、紫外線光源の発光層に対して、光触媒機能層とは逆側に、高反射層を有することを特徴とする。請求項9に係る発明は、光触媒機能層は、ドープされた酸化チタン層と、その表面に形成された、意図的には不純物をドープしていない酸化チタン層又は酸化窒化チタン層との2重層から成ることを特徴とする。請求項10に係る発明は、光触媒機能層は、表面に凹凸を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
ニオブ(Nb)やタンタル(Ta)その他の不純物をドープすることで、酸化チタン(TiO2)の抵抗率が大きく低減する。ここにおいて、酸化チタン(TiO2)のチタン(Ti)をニオブ(Nb)やタンタル(Ta)で3〜10%置換すると、波長360nm〜600nmの光に対する屈折率が窒化ガリウムのそれとほぼ同等となることが本発明者らにより新たに見出された。図5は、酸化タンタルチタン(Ti1-xTax2)の、タンタル組成xを0.01から0.2まで6段階に変化させた場合の、波長400nmから800nmまでの光に対する屈折率の分散を示すグラフ図である。ニオブ(Nb)その他の不純物を添加した場合についても同様である。一方、例えば赤崎勇編著、培風館、アドバンストエレクトロニクスシリーズI−21「III族窒化物半導体」第57頁図3.12によれば、GaNの屈折率は、波長370nmにおいて約2.74、波長400nmにおいて約2.57、波長500nmにおいて約2.45、波長600nmにおいて約2.40とある。
【0009】
既に、酸化チタン(TiO2)にニオブ(Nb)やタンタル(Ta)その他の不純物を1〜10%添加した場合に、抵抗率も5×10-4Ωcm程度以下となることが本発明者らにより見出されている(特許文献2)。
そこで、例えばIII族窒化物系化合物半導体の電極としてニオブ(Nb)やタンタル(Ta)その他の不純物を1〜10%添加した酸化チタン(TiO2)を用いることが可能であり、且つ、波長360nm〜600nmの光が例えば窒化ガリウム層とドープされた酸化チタン(TiO2)層との界面での全反射をほぼ無くすことが可能となる。以下に示される通り、例えば近紫外領域の波長410nm以下において、ドープされた酸化チタン(TiO2)の屈折率を例えば窒化ガリウムの屈折率よりも大きくすることが、ニオブ(Nb)やタンタル(Ta)その他の不純物のドープ量の調整により可能である。これにより例えば窒化ガリウム層からドープされた酸化チタン(TiO2)層に入射した紫外光が、逆に窒化ガリウム層へは全反射により出射されないようにすることも可能である。
透光性電極に直接接合するコンタクト層としては、窒化ガリウムに以外にも任意組成のIII族窒化物系化合物半導体を用いることができる。III族窒化物系化合物半導体はIII族元素の組成比や添加する不純物の濃度によりその屈折率が変化することが知られている。ニオブ(Nb)やタンタル(Ta)その他の不純物の酸化チタン(TiO2)への添加量を調整して、直接接合するコンタクト層との屈折率を一致させることが最も望ましい。この場合、全反射は全く生じない。完全に一致しないまでも、全反射を低減するため、屈折率比は、0.95〜1.05が望ましく、0.98〜1.02がより望ましく、0.99〜1.01が更に望ましい。この際、ニオブ(Nb)やタンタル(Ta)その他の不純物の酸化チタン(TiO2)への1〜10%の範囲での添加量の変化に対し、屈折率変化は大きいが導電率(抵抗率)の変化は比較的小さいので、導電率をほぼ最大として(抵抗率をほぼ最低として)、屈折率が所望の値となるように添加量を決定することが可能となる。
こうして、ニオブ(Nb)やタンタル(Ta)その他の不純物のドープ量の調整により所望の屈折率と十分低減された抵抗率を有する酸化チタン(TiO2)層を、当該酸化チタン(TiO2)層が光触媒として活性化されるような発光波長のIII族窒化物系化合物半導体発光素子の電極として用いることで、光触媒機能層と紫外線光源とが一体となった光源一体型光触媒装置を形成することができる。本発明の光源一体型光触媒装置は、光触媒機能層と紫外線光源との間、とくに紫外線の発光層から光触媒機能層までの距離を極めて小さいものとすることが可能である。具体的には数μm以下、更には300nm程度以下、或いは100nm程度とすることができる。これにより、発光層から発せられる紫外線が、吸収される量が少なく、効率よく光触媒機能層に達することができ、紫外線の利用効率が向上する。
【0010】
また、光源一体型光触媒装置の小型化と製造工程の簡易化が図れる。光の利用効率が高いので、触媒機能の向上とともに、投入電力の減少による装置の長寿命化も図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
電極と光触媒機能層との2つの作用を有する、ドープされた酸化チタン(TiO2)層の形成は、例えば特許文献2に記載されたパルスレーザー蒸着のほか、スパッタリングその他の任意の技術を用いることができる。ターゲットは予め酸化チタン(TiO2)と酸化ニオブ(Nb23)、又は酸化チタン(TiO2)と酸化タンタル(Ta25)とを、チタン(Ti)原子とニオブ(Nb)原子のモル比、又はチタン(Ti)原子とタンタル(Ta)原子のモル比が所望の比となるように混合した焼結ターゲットを用意すると良い。混合物から成る焼結ターゲットは、酸化物をそれぞれ微細な粉状として混合した後、加熱して形成する。また、ターゲットにはチタン(Ti)原子とニオブ(Nb)原子のモル比、又はチタン(Ti)原子とタンタル(Ta)原子のモル比が所望の比となるように調整したTi−Nb合金やTi−Ta合金を用い、反応性スパッタリング法により成膜しても良い。
例えば波長370nm付近での窒化ガリウム(GaN)の屈折率2.74と一致させるタンタル(Ta)又はニオブ(Nb)の酸化チタン(TiO2)への添加量は、3〜10%が好ましいが6〜10%とすると更に良い。同様に、波長400nm付近での窒化ガリウム(GaN)の屈折率2.57と一致させるタンタル(Ta)又はニオブ(Nb)の酸化チタン(TiO2)への添加量は、3〜10%が好ましいが6〜10%とすると更に良い。
【0012】
酸化チタン(TiO2)層は、より密度の高いルチル型としても、密度の低いアナターゼ型としても良い。低抵抗化の観点からはアナターゼ型がより好ましい。ルチル型の場合は紫外線光源の発光波長が415nm以下、アナターゼ型の場合は紫外線光源の発光波長が380nm以下となるように、紫外線光源の設計を行う。紫外線光源となるIII族窒化物系化合物半導体から成る発光層は、単層の発光層、単一量子井戸層(SQW)、多重量子井戸層(MQW)のいずれでも良い。例えばInGaNを発光層又は井戸層として用いる場合、インジウム(In)組成を5.5%以下とすると380nm以下の波長の近紫外光を発する発光層又は井戸層とできる。
【0013】
また、酸化チタン(TiO2)層に窒素をドープすると可視光領域の波長でも光触媒機能を発揮させることも可能となる。この際、光源の発光波長は可視領域とすることもできる。すると、本発明の光源一体型光触媒装置は、照明機能も併せ持つことができる。或いは、本発明の光源一体型光触媒装置の外部を、浄化すべき気体又は液体の流入路/流出路を有する蛍光体のカバーを設けることにより、漏れ出た紫外光を可視光に変換して照明としても用いることも可能である。
【0014】
一般的に行われている、最上層をp側とするIII族窒化物系化合物半導体発光素子のエピタキシャル成長後、当該p層上にドープされた酸化チタン(TiO2)から成る電極と光触媒機能層との2つの作用を有する層を形成すると、ドープされた酸化チタン(TiO2)から成る電極はp電極となる。この際更に、エピタキシャル成長基板の裏面に高反射性金属層又は多重層から成るブラッグ反射層を形成すると、エピタキシャル成長基板の裏面側に散逸する紫外線を有効利用することが可能となる。
また、ドープされた酸化チタン(TiO2)から成る電極の露出面に凹凸を設けると、光触媒として機能する露出面の面積を大きくすることが可能となる。当該凹凸の形成方法としては、例えばエッチングやナノインプリント、電子線描画、酸化チタン(TiO2)の微粒子の接合その他公知の任意の技術を用いることができる。
エッチングを用いる場合は次のようにすると良い。まず、フォトリソグラフにより、レジストマスクをパターニングする。パターンとしては、ドット又は格子、ストライプその他を挙げることができる。この際、周期性の有無も任意である。マスクの幅やピッチ(間隔)は3μm以下が良い。発光波長をλ、ドープされた酸化チタン(TiO2)から成る電極の屈折率をnとした場合、マスクの幅やピッチ(間隔)はλ/(4n)〜λが良い。こうしてマスクのされていない窓をエッチングする(ドライ又はウエット、任意に選択)。深さはピッチの1〜3倍が良く最低でもλ/(4n)が必要である。
その他の凹凸形成方法としては、TiO2膜形成時に凹凸が生成するような条件を用いる、マスクを形成せずにTiO2をエッチングしてランダムで微小な凹凸を形成する、TiO2膜上にフォトレジストマスクパターンを形成し、再度TiO2膜を形成してから不要部をマスクごとリフトオフして形成する、TiO2膜形成後、熱処理を施すことにより表面にランダムな凹凸を形成する、と言った方法を採用しても良い。
【0015】
また、良く知られているように、エピタキシャル成長基板を外す技術がある。この場合、他の支持基板を例えばp層側に接着し、n層側のエピタキシャル成長基板を除去することでn層が表面となる。そこで当該n層上に、ドープされた酸化チタン(TiO2)から成る電極と光触媒機能層との2つの作用を有する層を形成すると、ドープされた酸化チタン(TiO2)から成る電極はn電極となる。この場合更に、p層に支持基板を接着する際、それらの間に高反射性金属層又は多重層から成るブラッグ反射層を形成すると、支持基板側に散逸する紫外線を有効利用することが可能となる。
【0016】
ところで、タンタル(Ta)又はニオブ(Nb)その他の不純物がドープされて導電性を有した酸化チタン(TiO2)は、アンドープの酸化チタン(TiO2)に比較して光触媒機能が低下することが懸念される。そこで、タンタル(Ta)又はニオブ(Nb)その他の不純物がドープされて導電性を有した酸化チタン(TiO2)の表面に、アンドープの酸化チタン(TiO2)層を積層させることにより、素子の光触媒機能の低下を防ぐことができる。以下にその理由を述べる。
一般に良く知られているように、不純物がドープされてキャリア濃度が増加した透明酸化膜では、BM(Burstein−Moss)シフトが発現し、光吸収が急激に増大する波長(光学吸収端)が、アンドープ膜よりも短波長側に移動する。このため、アンドープの酸化チタン(TiO2)とドープされた酸化チタン(TiO2)の紫外波長における吸収端をλud、λdとすれば、λudはλdよりも数nm〜数十nm程度大きい値となる。発光層における発光波長λを、λd<λ<λudとなるように設定すれば、発光層から出射された光の大部分はドープされた酸化チタン(TiO2)層には吸収されずにアンドープの酸化チタン(TiO2)層に入射することができる。アンドープの酸化チタン(TiO2)層に対しては波長λの光は光学吸収端以下の波長光であるため大部分が吸収され、アンドープの酸化チタン(TiO2)層表面では高い光触媒機能が発現される。このように、ドープされた酸化チタン(TiO2)層の上にアンドープの酸化チタン(TiO2)層を積層した電極構造により、仮にドープされた酸化チタン(TiO2)層の光触媒機能が十分でない場合にも、発光層からの光を有効に利用して高い光触媒機能を発現させることができる。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の具体的な第1の実施例に係る光源一体型光触媒装置100の構成を示す断面図である。光源一体型光触媒装置100は、サファイア基板10の上に図示しない窒化アルミニウム(AlN)から成る膜厚約15nmのバッファ層が設けられ、その上にシリコン(Si)ドープのGaNから成るnコンタクト層11が形成されている。このnコンタクト層11の上には、シリコン(Si)ドープのAlGaNから成るnクラッド層12が形成されている。
そしてnクラッド層12の上には、InGaNから成る発光層13が形成されている。発光層13の上にはp型AlGaNから成るpクラッド層14が形成されている。更に、pクラッド層14の上には、マグネシウム濃度の異なる2層のp型GaNの積層構造から成るpコンタクト層15が形成されている。
【0018】
また、pコンタクト層15の上には酸化ニオブチタン(ニオブ6%)から成る、光触媒機能を有する透光性電極20が、nコンタクト層11の露出面上には電極30が形成されている。電極30は膜厚約20nmのバナジウム(V)と、膜厚約2μmのアルミニウム(Al)で構成されている。透光性電極20上の一部には、金(Au)合金から成る電極パッド25が形成されている。
【0019】
酸化ニオブチタンから成る、光触媒機能を有する透光性電極20は、0.05〜1μmの厚さにスパッタリングその他の方法により成膜する。この際、横方向拡散抵抗の増加を防ぐため、厚さは最低でも0.05μmは必要である。尚、実質的には、透光性電極20の露出した表面20s近傍に達した紫外光のみが、光触媒機能に作用するので、酸化ニオブチタンから成る、光触媒機能を有する透光性電極20は、少なくとも発光層13からの発光波長に対してある程度以上の透明度が必要である。
膜厚制御により光触媒機能と照明機能を両立できる。この際、透過した紫外光は、例えば蛍光体を外部に配置させて可視光とすると良い。また、発光層13の光波長や光出力にあわせて、光触媒機能を有する透光性電極20のルチル型/アナターゼ型を選択すると良いが、抵抗率の観点からはアナターゼ型がより好ましい。
【0020】
図1の光源一体型光触媒装置100は、通常の発光ダイオードと同様にチップ化する。この際、酸化ニオブチタンから成る、光触媒機能を有する透光性電極20の表面20sは、保護膜その他で覆うことなく露出させる。こうして、酸化ニオブチタンから成る透光性電極20は、発光層13からの波長380nmの紫外光により活性化されて光触媒機能層として作用し、且つ発光層13に電流を供給するための透光性電極としても作用する。この際、実際に光触媒として機能するのは透光性電極20の露出した表面20s近傍である。
【実施例2】
【0021】
図2.Aは、本発明の具体的な第2の実施例に係る光源一体型光触媒装置200の構成を示す断面図である。本実施例においては光触媒として機能する透光性電極20の表面に凹凸を設け、露出した凹凸を有する表面20s’としたものである。凹凸を設けたことにより、露出した凹凸を有する表面20s’の面積が大きくなる。これにより、図2.Aの光源一体型光触媒装置200は、図1の光源一体型光触媒装置100よりも光触媒機能が格段に向上する。当該凹凸の形成方法は任意である。
【0022】
尚、透光性電極20の表面に凹凸を設けたことにより横方向拡散抵抗が増加し、透光性電極20の電極としての機能が弱まる場合がある。この場合は、次の変形例の構成を採用すると良い。図2.Bは、変形例に係る光源一体型光触媒装置210の構成を示す断面図である。図2.Bの光源一体型光触媒装置210は、図2.Aの光源一体型光触媒装置200の酸化ニオブチタンから成る、光触媒機能を有する透光性電極20とpコンタクト層15の間に、酸化インジウムスズ(ITO)から成る透光性導電層21を設けたものである。この構成によれば、酸化ニオブチタンから成る、光触媒機能を有する透光性電極20よりも抵抗率の低い透光性導電層21を介しているので、光触媒機能を有する透光性電極20単独の場合よりも、陽極の横方向拡散抵抗を抑制し、p型GaN層15との接触抵抗を低減することができる。この際、透光性導電層21としては酸化インジウムスズ(ITO)の他、任意の導電性酸化物、導電性窒化物、金属を用いることができる。但し、少なくとも紫外光をほとんど吸収しないものが好ましく、当該紫外光の波長の1/4以下、100m以下の膜厚とすると良い。
【実施例3】
【0023】
図3は、本発明の具体的な第3の実施例に係る光源一体型光触媒装置300の構成を示す断面図である。本実施例においては、図1の光源一体型光触媒装置100のサファイア基板10の裏面に反射層40を設けた構成を採用した。反射層40としては、アルミニウム(Al)等の高反射性金属膜やDBR膜を採用することができる。これにより発光層から発せられる紫外光を光触媒機能において効率的に用いることができる。
【実施例4】
【0024】
図4は、本発明の具体的な第4の実施例に係る光源一体型光触媒装置400の構成を示す断面図である。本実施例においては、図1の光源一体型光触媒装置100の形成と同様にサファイア基板10上にIII族窒化物系化合物半導体層を積層した後、両面にそれぞれ反射層40と電極層60を有する導電性支持基板50を用い、導電性支持基板50の反射層40を設けた側をpコンタクト層15に接着してからサファイア基板10を例えばレーザを用いたリフトオフ法により除去し、露出したnコンタクト層11に酸化ニオブチタンから成る、光触媒機能を有する透光性電極20を設けたものである。光触媒機能を有する透光性電極20及びパッド電極25は陰極となる。
【実施例5】
【0025】
図6は、本発明の具体的な第5の実施例に係る光源一体型光触媒装置500の構成を示す断面図である。図6の光源一体型光触媒装置500は、図1の光源一体型光触媒装置100と比較して、透光性電極20の表面に更にアンドープの酸化チタンから成る光触媒層21を積層したことを特徴とする。アンドープの酸化チタンから成る光触媒層21の表面21sは、酸化チタンの光触媒機能が不純物により低下することがない。また、既に述べた通り、アンドープの酸化チタンから成る光触媒層21の光学吸収端λudと、透光性電極20の光学吸収端λd(<λud)との間の波長λを発光層13が発するようにすると良い。
【0026】
図2.Bに示した光源一体型光触媒装置210のITOから成る透光性導電層21は、図1、図3、図4の光源一体型光触媒装置100、300、400に同様に追加して構成しても良い。これにより電極の横方向拡散抵抗及びp型GaN層15との接触抵抗を低減できる。
また、図3に示した光源一体型光触媒装置300の反射層40は、図1、図2.A、図2.Bの光源一体型光触媒装置100、200、210に同様に追加して構成しても良い。これにより基板10裏面に散逸する紫外光を有効利用することができる。
また、各実施例ではニオブ(Nb)を単独で酸化チタンに添加したが、タンタル(Ta)を単独で酸化チタンに添加しても良く、ニオブ(Nb)とタンタル(Ta)を同時に添加しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、排水中又は空気中の有機物、窒素酸化物、硫黄酸化物その他の有毒物又は悪臭物或いは細菌その他の微生物を除去又は低減する触媒装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の具体的な第1の実施例に係る光源一体型光触媒装置100の構成を示す断面図。
【図2】本発明の具体的な第2の実施例に係る光源一体型光触媒装置200の構成を示す断面図(2.A)と、その変形例に係る光源一体型光触媒装置210の構成を示す断面図(2.B)。
【図3】本発明の具体的な第3の実施例に係る光源一体型光触媒装置300の構成を示す断面図。
【図4】本発明の具体的な第4の実施例に係る光源一体型光触媒装置400の構成を示す断面図。
【図5】酸化タンタルチタンの、タンタル組成を変化させた場合の屈折率の分散を示すグラフ図。
【図6】本発明の具体的な第5の実施例に係る光源一体型光触媒装置500の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0029】
13:紫外線発光層
20:酸化ニオブチタンから成る、光触媒機能を有する透光性電極
40:反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒機能層と、III族窒化物系化合物半導体の積層構造を有する紫外線光源とが一体となった光源一体型光触媒装置において、
前記光触媒機能層は、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、アルミニウム(Al)又はタングステン(W)がチタン(Ti)に対してモル比1〜10%でドープされた酸化チタンから成り、
且つ、前記光触媒機能層は前記紫外線光源に電流を供給する電極を構成していることを特徴とする光源一体型光触媒装置。
【請求項2】
前記光触媒機能層は、ニオブ(Nb)又はタンタル(Ta)がチタン(Ti)に対してモル比3〜10%であるような酸化ニオブチタン又は酸化タンタルチタンから成ることを特徴とする請求項1に記載の光源一体型光触媒装置。
【請求項3】
前記光触媒機能層とコンタクト層であるIII族窒化物系化合物半導体層との間には他の材料から成る層が存在しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光源一体型光触媒装置。
【請求項4】
互いに接する、前記光触媒機能層の屈折率と、前記コンタクト層であるIII族窒化物系化合物半導体層の屈折率との比は、0.98以上1.02以下であることを特徴とする請求項3に記載の光源一体型光触媒装置。
【請求項5】
前記光触媒機能層とコンタクト層であるIII族窒化物系化合物半導体層との間には、他の材料から成り、100nm以下の厚さの透光性導電層のみが存在することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光源一体型光触媒装置。
【請求項6】
前記光触媒機能層はp電極であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の光源一体型光触媒装置。
【請求項7】
前記光触媒機能層はn電極であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の光源一体型光触媒装置。
【請求項8】
前記紫外線光源の発光層に対して、前記光触媒機能層とは逆側に、高反射層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の光源一体型光触媒装置。
【請求項9】
前記光触媒機能層は、前記ドープされた酸化チタン層と、その表面に形成された、意図的には不純物をドープしていない酸化チタン層又は酸化窒化チタン層との2重層から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の光源一体型光触媒装置。
【請求項10】
前記光触媒機能層は、表面に凹凸を有することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の光源一体型光触媒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−290028(P2008−290028A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139636(P2007−139636)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】