説明

光源基板、光源装置および光源冷却システム

【課題】 冷却液を通過させる薄型のジャケットを用いて、LED等の半導体光源を効率よく冷却する。
【解決手段】 光源基板11の導体層13に多数のLED12をマウントし、LED12の発熱を絶縁層14を介して冷却ジャケット15に伝える。冷却ジャケット15を複数枚の銅薄板23の接合構造とし、銅薄板23の接合面に冷却液を通過させる貫通路16を形成する。貫通路16に冷却液の循環配管を接続し、この配管上にポンプとラジエータとリザーバーとを配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)等の半導体光源を冷却する機能を備えた光源基板と、該基板を用いた光源装置と、該装置に好適な光源冷却システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種表示装置において、小電力で長寿命のLEDが多用されている。多数のLEDに比較的大きな電流を流す用途では、LEDが発熱により発光効率を低下させたり、表示装置の動作信頼性に悪影響を及ぼしたりする。このため、従来、LEDの光源基板に冷却機能部を設けた技術が提案されている。
【0003】
例えば、図5に示すように、特許文献1に記載された光源基板51は、アルミニウム製の冷却ベース52の表面に絶縁層53を介して金属板54を貼り付け、金属板54にマウントされたLED55の発熱を金属板54と絶縁層53を介して冷却ベース52に回収するように構成されている。
【0004】
図6に示すように、特許文献2に記載された光源基板61は、金属製ジャケット62のキャビティ63に冷却液64を密閉し、モータ65により回転羽根66を駆動し、金属板67上にマウントされたLED68の発熱を冷却液64に蓄え、冷却液64の蓄熱をジャケット62下部の空冷フィン69から放散させるように構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−332768号公報
【特許文献2】特開2005−62419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の光源基板51によると、LED55を冷却する能力が冷却ベース52の熱容量に依存しているため、多数のLED55に大きな電流を流す場合に、厚手の冷却ベース52を使用する必要があり、光源基板51の質量および嵩が増加するという問題点があった。
【0007】
特許文献2の光源基板61によると、冷却液64がジャケット62に密閉されているので、冷却液64を撹拌するための回転羽根66やモータ65を装備する必要があるうえ、冷却液64の放熱を促すための空冷フィン69が不可欠になり、光源基板61の構成が複雑かつ大型化するという問題点があった。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決し、LED等の半導体光源を小型かつ簡単な構成で効率よく冷却できる光源基板と、該基板を用いた光源装置と、該装置を冷却するシステムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の光源基板は、半導体光源がマウントされる導体層と、導体層を電気絶縁する絶縁層と、絶縁層を介して半導体光源の発熱を奪う冷却ジャケットとを備え、冷却ジャケットが複数枚の金属薄板を接合して構成され、該金属薄板の接合面に冷却液を通過させる貫通路が形成されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、半導体光源はLEDに限定されず、レーザーダイオードやEL(エレクトロルミネッセンス)等を導体層にマウントすることができる。導体層には、銅またはアルミニウム等の導電性材料を使用できる。絶縁層には、エポキシ、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等の樹脂材料を使用できる。
【0011】
冷却ジャケットの金属薄板には、熱伝導性に優れた金属材料、例えば、アルミニウム、銅、チタン、銀、またはこれらの合金材料を使用できる。一枚の金属薄板の厚さは0.1mm〜2.0mm、薄板の枚数は2〜10枚程度であり、どちらも光源の数や用途または冷却ジャケットの厚さに応じて適宜に選択できる。
【0012】
冷却ジャケットの貫通路は、例えば、金属薄板の接合面に溝を加工することによって形成される。溝加工にあたっては、レーザエッチング、ウエットエッチング、切削等の手段を採用できる。相接合する二枚の金属薄板のうち、一方の薄板の接合面に溝を加工し、これを他方の薄板で塞いで貫通路を形成できる。あるいは、両方の薄板の接合面にそれぞれ溝を加工し、接合により断面積の大きな貫通路を形成することも可能である。
【0013】
金属薄板の接合には、ホットプレス法を好ましく採用できる。例えば、複数枚の銅薄板を表面処理した後にホットプレスにより直接接合してもよく、接合材(ろう材)を介して接合してもよい。接合材としては、AuSn、AgSn、SnCu、SnAgCu、AuSi、SnAgBi、SnAgBiCu等の共晶材料を好ましく使用できる。なお、貫通路に通過させる冷却液としては、水、エチレングリコール等の水溶液、シリコン系オイルなど、高流動性の液冷媒を使用できる。
【0014】
本発明の光源装置は、半導体光源がマウントされる導体層と、導体層を電気絶縁する絶縁層と、絶縁層を介して半導体光源の発熱を奪う冷却ジャケットとからなる光源基板を備え、冷却ジャケットが複数枚の金属薄板を接合して構成され、該金属薄板の接合面に冷却液を通過させる貫通路が形成され、導体層に所要パターンの配線回路が形成され、該配線回路に半導体光源の電極を接続したことを特徴とする。
【0015】
本発明の光源冷却システムは、上記光源装置を冷却するシステムであって、冷却液を光源基板の冷却ジャケットに循環させる配管を備え、該配管上に、冷却液を冷却ジャケットの貫通路に供給するポンプと、貫通路から吐出された冷却液を冷却するラジエータと、余剰の冷却液を貯留するリザーバーとを設けたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の光源冷却システムは、冷却液の漏れや枯渇、ポンプやラジエータの故障等に備え、冷却ジャケットに放熱フィンを取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体光源の発熱を冷却ジャケットに伝え、貫通路を通過する冷却液に回収し、冷却液を基板外部へ速やかに排出することで、半導体光源を効率よく冷却できる。冷却ジャケットを複数枚の金属薄板で構成したので、光源基板を薄くし、光源装置を小型化できる。特に、貫通路を金属薄板の接合面に形成したので、冷却ジャケットをエッチング等の手段で簡単かつ安価に製作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は光源冷却システム1の全体的な構成を示す。図2は該システム1に組み込まれた光源装置2を図1のA−A線で破断して示す。図3は該光源装置2の基板11を図1のB−B線で破断して示す。図4は光源基板11の変更例を示す。
【実施例】
【0019】
図1に示す光源冷却システム1は、光源装置2に冷却液3を循環させる配管4を備えている。配管4上には、冷却液3を光源装置2の入口側コネクタ5に供給するポンプ6と、光源装置2の出口側コネクタ7から吐出された冷却液3を冷却するラジエータ8と、余剰の冷却液3を貯留するリザーバー9とが設けられている。
【0020】
図2に示すように、光源装置2は厚さ1mm程度の平板形の光源基板11を備えている。光源基板11は、半導体光源としての多数のLED12がマウントされる導体層13と、導体層13を電気的に絶縁する絶縁層14と、絶縁層14を介してLED12の発熱を奪う冷却ジャケット15とから構成されている。
【0021】
冷却ジャケット15には、冷却水3を通過させる貫通路16がジャケット15の全長にわたって延びるように形成されている。貫通路16の一端には冷却水3の入口17が設けられ、入口17にコネクタ5が接続されている。貫通路16の他端には冷却水3の出口18が設けられ、出口18にコネクタ7が接続されている。
【0022】
図3に示すように、光源基板11の導体層13には、所要パターンの配線回路20が形成され、配線回路20にLED12の電極21が接続されている。LED12の発光チップ22は導体層13にマウントされ、発光チップ22の発熱が導体層13と絶縁層14を介して冷却ジャケット15に伝わるようになっている。
【0023】
冷却ジャケット15は、厚さ0.5mm程度の二枚の銅薄板23を接合材24を介してホットプレスにより接合して構成されている。両方の銅薄板23の接合面には、同じ部位に複数本の溝25がハーフエッチングにより加工されている。そして、二枚の銅薄板23を接合することにより、冷却ジャケット15に貫通路16が形成されている。
【0024】
上記構成の光源基板11においては、LED12の発熱が冷却ジャケット15に伝わり、貫通路16を流れる冷却液3に回収される。温度上昇した冷却液3はポンプ6により冷却ジャケット15から光源基板11の外部へ速やかに排出され、ラジエータ8で冷却された後に、ジャケット15に還流する。従って、冷却液を密閉する従来の光源基板(図6参照)と比較し、LED12を簡単かつ薄型の冷却ジャケット15で効率よく冷却することができる。
【0025】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、以下に例示するように、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【0026】
(1)図4示すように、冷却ジャケット15の下側の銅薄板23に放熱フィン27を接着剤28で取り付けること。こうすれば、冷却ジャケット15の蓄熱の一部を放熱フィン27で放散させ、光源冷却システム1の冷却能力をさらに高めることができる。また、システム1の異常時に、放熱フィン27を主動的に機能させ、LED12の寿命低下や破壊を未然に防止することが可能となる。
【0027】
(2)図3に示す光源基板11において、銅薄板23の接合枚数を増やし、冷却ジャケット15の貫通路16を二段、三段またはそれ以上の多段に形成すること。
(3)図2に示す光源装置2において、LED12にかえ、レーザーダイオードを導体層13にマウントすること。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例を示す光源冷却システムの斜視図である。
【図2】該システムの光源装置を示す断面図である。
【図3】該光源装置の光源基板を詳細に示す断面図である。
【図4】本発明の変更例を示す光源基板の断面図である。
【図5】従来の光源基板を示す斜視図である。
【図6】従来の別の光源基板を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 光源冷却システム
2 光源装置
3 冷却液
4 配管
6 ポンプ
8 ラジエータ
9 リザーバー
11 光源基板
12 LED
13 導体層
14 絶縁層
15 冷却ジャケット
16 貫通路
20 配線回路
21 電極
23 銅薄板
27 放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光源がマウントされる導体層と、導体層を電気絶縁する絶縁層と、絶縁層を介して半導体光源の発熱を奪う冷却ジャケットとを備え、冷却ジャケットが複数枚の金属薄板を接合して構成され、該金属薄板の接合面に冷却液を通過させる貫通路が形成されていることを特徴とする光源基板。
【請求項2】
請求項1に記載された光源基板の導体層に所要パターンの配線回路を形成し、該配線回路に半導体光源の電極を接続したことを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項2に記載された光源装置を冷却するシステムであって、冷却液を冷却ジャケットに循環させる配管を備え、該配管上に、冷却液を貫通路に供給するポンプと、貫通路から吐出された冷却液を冷却するラジエータと、余剰の冷却液を貯留するリザーバーとを設けたことを特徴とする光源冷却システム。
【請求項4】
前記冷却ジャケットに放熱フィンを取り付けたことを特徴とする請求項3記載の光源冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−300158(P2008−300158A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144335(P2007−144335)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名: JPCA Show 2007(第37回国際電子回路産業展) 主催: 社団法人日本電子回路工業会 開催日: 平成19年5月30日から6月1日(3日間)
【出願人】(503207913)株式会社SOHKi (13)
【Fターム(参考)】