説明

光源検査装置

【課題】本発明は、積分球を用いて光源の光学性能を容易且つ正確に測光することのできる光源の検査装置の提供を目的とするものである。
【解決手段】本発明の光源の検査装置は、検査対象である光源を取付可能な取付部と、外部に向けて光線を出射するための出射ポートとが設けられた積分球、この出射ポートに対向する積分球内周面の一定範囲の被測光領域の反射光線を出射ポートから測光する測光手段、及び上記被測光領域と上記取付部との間に配設されるバッフルを備える。光源の出射光線が直接被測光領域に入射することをバッフルによって防止し、この被測光領域を測光手段が測光することができるので、取付部の光源の取付状態による測光結果の差異を少なくすることができ、光源の光学性能を容易且つ正確に測光することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源検査装置に関し、例えば発光ダイオード(LED)等の光源を検査するのに特に適した光源検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは製造工場から出荷される際に、光度、光束、輝度などの光学性能の評価を行う最終検査がなされている。そして、このようなLEDの光学性能の評価にあたっては、積分球を有する光源検査装置が用いられている(例えば、特開2008−76126号公報参照)。
【0003】
この従来の光源検査装置にあっては、図4に示すように、光線を反射する内周面を有する積分球110と、この積分球110内に検査対象である光源の出射光線を入射させるための入射ポート111と、積分球内の光線を外部に向けて出射するための出射ポート121とを備える光源検査装置101が公知である。この光源検査装置101にあっては、入射ポート111に検査対象である発光ダイオード190を取付ける取付部113が取付けられており、出射ポート121に受光部123が取付けられている。この入射ポート111と出射ポート121とは、それぞれからの積分球110の内周面内の空洞の中心への方向が直交する位置に配置されている(一方が緯度90°とした場合に他方が緯度0°の位置に配置されている)。
【0004】
そして、この積分球110内には発光ダイオード190と受光部123との間(緯度45°の位置)にバッフル130が配設され、発光ダイオード190からの光線が直接受光部123に入射しないように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−76126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記光源検査装置101を用いて全光束試験を行った場合に、同一の発光ダイオード190を検査対象としても、検査の都度その測光結果が異なることを本発明者は見出した。この点に関して本発明者が鋭意検討した結果、発光ダイオード190が取付部113に取付けられる角度や高さ(発光ダイオード190の先端部の位置)等に相違が生じた場合に、上述の測光結果に差異が生じていることが判明した。この関係について本発明者が更に検討を加えると、以下の理由により測光結果の差異が生じているものと考えられる。
【0007】
まず、積分球110は、理論的には、発光ダイオード190の出射光線が何度も拡散反射することで、光線の進行方向等に依存することなく発光ダイオード190自体の出射光線の強度に比例する均一な強度分布の光線が得られるものであるが、実際には、積分球110の内周面における反射ごとに光線が若干ずつ吸収されることから発光ダイオード190の出射光線が最初に入射する領域(面)で反射する光線が他の領域で反射する光線に比べると強くなっている。また、受光部123における測光値は、積分球110の内周面のうち受光部123(出射ポート121)の対向箇所が反射する光線に影響を受けやすく、つまり、対向箇所の反射光線が強い場合には受光部123の測光値は高い値となる。このため、出射する光線の指向性の高い発光ダイオード190を検査する場合、発光ダイオード190が取付部113に傾いて取付けられ、発光ダイオード190の出射光線の強度の大きい部分が直接受光部123の対向箇所に入射されると(例えば発光ダイオード190の出射光線の半値角内の光線が対向箇所に入射されると)、対向箇所で反射する光線の強度が大きくなり、これにより受光部123の測光値は比較的高い値となる。一方、発光ダイオード190の出射光線が直接対向箇所に入射されない場合、受光部123の対向箇所には他の内周面からの反射光線のみが入射することになり対向箇所で反射する光線の強度が比較的小さくなり、これにより受光部123の測光値は比較的低い値となる。このように取付部113における発光ダイオード190の取付角度によって、受光部123の測光結果が異なってくるものと考えられる。
【0008】
本発明は、これらの点に鑑みてなされたものであり、積分球を用いて光源の光学性能を容易且つ正確に測光することのできる光源検査装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の光源検査装置は、
光線を反射する内周面を有する積分球、
積分球内に検査対象である光源の出射光線を入射させるための入射ポート、
積分球内の光線を外部に向けて出射するための出射ポート、及び
積分球内の光線を出射ポートから測光する測光手段を備え、
上記測光手段が、積分球内の測光経路を一定範囲に制御しており、
積分球の内周面のうち測光経路と交わる被測光領域と上記入射ポートとの間に配設されるバッフルをさらに備える。
【0010】
当該検査装置にあっては、入射ポートから入射される光源の出射光線が積分球の内周面で繰り返し反射され、その反射光線のうち被測光領域の反射光線が出射ポートに至ったものを測光手段が測光し、この測光結果に基づいて光源の検査を行うことができる。当該検査装置は、被測光領域と入射ポートとの間にバッフルが配設されているので、このバッフルによって、光源からの出射光線が直接被測光領域に入射することを防止できる。つまり、被測光領域に入射する光線は、被測光領域以外の内周面において反射された光線とすることができる。すなわち、仮に光源が傾いて取付けられ、光源から出射光線の半値角内に被測光領域が位置するような場合であっても、光源からの出射光線をバッフルが遮ることによって、光源からの出射光線が直接被測光領域に入射することを防止できる。このため、光源の取付状態による測光結果の差異を少なくすることができ、光源の光学性能を容易且つ正確に測光することができる。
【0011】
特に、当該検査装置にあっては、上述のように測光手段が測光経路を制御し、積分球の内周面の一定範囲である被測光領域の反射光線を測光するよう設けられているので、上記のように光源からの出射光線が直接入射されることを防止するバッフルを設置し易く、これにより光源の光学性能を容易且つ正確に測光することができる。つまり、例えば測光手段が出射ポートに至る光線全てを測光する場合(積分球内周面全てを被測光領域とする場合)には、被測光領域と出射ポートとの間にバッフルを配設することが極めて困難となり、正確な光学性能の測光が困難となる。これに対して、当該検査装置は、測光手段が積分球の内周面の一定範囲の被測光領域の反射光線を測光するものであるので、バッフルを被測光領域と出射ポートとの間に容易に配設することができ、光源の光学性能を容易且つ正確に測光することができる。
【0012】
また、当該検査装置は、バッフルが測光経路外に配設されている構成を採用することが好ましい。これにより、測光手段は、バッフルからの反射光線を測光することを防止でき、精度良い検査を行うことができる。つまり、測光経路内にバッフルが配設された場合には、バッフルの反射光線も測光手段が測光することになり、バッフルの反射光線は積分球の内周面の反射光線との均一性に欠けるおれそが強いため、検査精度が劣るおそれがあるためである。
【0013】
また、当該検査装置にあっては、バッフルが、出射ポートよりも被測光領域に近接する位置に配設された構成を採用することも可能であるが、被測光領域よりも出射ポートに近接する位置にバッフルが配設されている構成を採用することが好ましい。これにより測光手段の測光経路外にバッフルを配置し易いという利点を有する。
【0014】
さらに、当該検査装置にあっては、バッフルが平板状に形成されていることが好ましい。そして、この平板状のバッフルが、上記出射ポートと積分球の内周面内の空洞の中心とを結ぶ仮想直線と略平行に配設された構成を採用することが可能である。かかる構成によって、光源からの出射光線がバッフルに入射しても、この光線をバッフルによって積分球の中心側に向いた方向に反射し易い。これによりバッフルに入射した光線も積分球の内周面に反射され、この反射によって被測光領域に入射されることで、上記のようにバッフルに入射した光線も含めた全光線を測光対象とした測光を行うことができる。
【0015】
また、平板状のバッフルが、積分球の内周面から積分球の内周面内の空洞の中心に向けて突設されている構成を採用することも可能である。かかる構成によって、積分球の内部で反射を繰り返す光線が、場所及び角度に関わらず強度が均一となり易い。つまり、バッフルが積分球の半径方向に沿って配設されることで、積分球内におけるバッフルの存在が光線の等方的な分散に影響を与えにくく、積分球の内部で反射を繰り返す光線が場所及び角度に関わらず強度が均一となり易い。
【0016】
さらに、当該検査装置にあっては、バッフルが、白色顔料を含有する反射層を少なくとも表面に有する構成を採用することが好ましい。これにより、バッフルに入射した光線を反射層によって的確に反射することができ、バッフルに入射した光線をも含めた全光線を測光対象とした測光を行うことができる。
【0017】
また、当該検査装置は、上記出射ポートに着脱可能に取付けられるとともに検査対象たる光源が着脱可能に取付けられる取付部をさらに備えることが好ましい。これによって、出射ポートから離脱した取付部に光源を取付けて、この光源を取付けた取付部を出射ポートに取付けて、その後光源を発光させることで、光源の検査を行うことができる。また、検査が終わった後に、取付部を出射ポートから離脱して、取付部から光源を離脱することができ、さらに上記のようにこの取付部に新たな光源を取付けることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の光源の検査装置は、測光手段が測光経路を制御するとともに、被測光領域に光源の出射光線が直接入射することをバッフルによって防止することによって、光源の取付状態による測光結果の差異を少なくすることができ、光源の光学性能を容易且つ正確に測光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る光源の検査装置の概略的構成図である。
【図2】図1の検査装置の積分球の説明図であり、一部断面を含む概略的正面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る光源の検査装置の積分球の説明図であり、一部断面を含む概略的正面図である。
【図4】従来例の光源の検査装置の積分球の説明図であり、一部断面を含む概略的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
【0021】
[第一実施形態]
図1の光源の検査装置1は、光線を反射する内周面を有する積分球10と、積分球10内に検査対象である発光ダイオート90(光源)の出射光線を入射させるための入射ポート11と、積分球10内の光線を外部に向けて出射するための出射ポート21と、積分球10内に配設されるバッフル30と、積分球10内の光線を測光するための測光手段50と、各種部材の制御を行う制御手段70とを備えている。
【0022】
<積分球10>
上記積分球10は、略球状の内周面10aを有し、この内周面10aの内側が略球状の空洞に形成されている。この内周面10aは、光線を反射するよう設けられており、この内周面10aで光線を繰り返して反射させることによって内部の光線を均一化している。なお、この積分球10の内部の空洞の大きさ(内周面10aからなる球の直径)は、検査対象に応じて種々のものが採用でき、例えば直径330mmの球状の空洞を有する積分球を用いることができる。
【0023】
この積分球10の内周面10aは、光線を拡散反射させるべく白色に形成されており、具体的には白色顔料を含有する樹脂から構成されている。ここで、白色顔料としては、例えば酸化チタン(チタン白)を用いることができる。なお、白色顔料としては、その他、シリカ、炭酸カルシウム(白亜)、酸化亜鉛(亜鉛華)、炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム等を用いることも可能である。この白色顔料を含有する樹脂は、略球状に形成された面にコーティングされることによって、層状の内周面10aを構成している。なお、コーティングによる方法以外にも、内周面10aを含む部材自体を白色顔料を含有する合成樹脂から構成する等も適宜設計変更可能である。また、内周面10aを白色とする以外に、測光する波長等に応じて、銀色や金色等の内周面10aを採用することも適宜設計変更可能である。
【0024】
<入射ポート11及び出射ポート21>
上記積分球10の内周面10aには、二つの貫通孔11,21が形成されており、一方の貫通孔11が光線を内部に入射するための入射ポートとして機能し、他方の貫通孔21が光線を外部に出射するための出射ポートとして機能している。
【0025】
この入射ポート11には、後述の取付部13が取付けられ、また、出射ポート21には、上記測光手段50が取付けられる。
【0026】
さらに、出射ポート21と入射ポート11とは、それぞれの中心からの積分球10の空洞の中心Oへの方向が直交する位置に配置されている(例えば入射ポート11が緯度0°の位置とした場合に出射ポート21が緯度90°の位置に配置されている)。なお、この入射ポート11(取付部13)の中心から積分球10の中心Oに向けた方向(半径方向)と、出射ポート21の中心から積分球10の中心Oに向けた方向(半径方向)とのなす角度が、70°以上110°以下であることが好ましく、80°以上100°以下であることがより好ましく、85°以上95°以下であることが特に好ましい。上記下限値未満であると後述する被測光領域Sへ発光ダイオード90の出射光線が入射し易くなるためバッフル30の配置が困難となり、一方上記上限値を超えると後述する被測光領域Sと発光ダイオード90とが近接し過ぎてバッフル30の配置が困難となるためである。
【0027】
<取付部13>
上記取付部13は、出射ポート11に着脱可能に装着されるとともに検査対象たる発光ダイオード90が着脱可能に取付けられる部材である。
【0028】
この取付部13は、発光ダイオード90が着脱可能に取付けられる台座15と、この台座15に取付けられるとともに出射ポート21に着脱可能に装着されるカバー体17とを有している。つまり、例えばカバー体17を出射ポート21から離脱して、このカバー体17に取付けられた台座15に検査対象の発光ダイオード90を取付けて、その後このカバー体17を出射ポート21に装着することにより、発光ダイオード90を検査位置に配置させることができる。なお、台座15は表面(装着時における積分球10の中心O側の面)に発光ダイオード90を突出状態で取付けられるよう構成され、この台座15の表面は積分球10の内周面10aの延長曲面上に略位置している。このため、取付部13は、検査対象の発光ダイオード90の先端部が積分球10の内周面10aよりも内側(中心O側)に位置するよう発光ダイオード90が取付けられる。なお、台座15及びカバー体17は、少なくとも表面(積分球10の内側に表出する面)が白色顔料を含有する樹脂から構成されていることが好ましい。
【0029】
<測光手段50>
上記測光手段50は、積分球10内の測光経路Pを一定範囲に制御しつつ、積分球10内の光線を測光する手段である。この測光手段50は、図1に示すように、積分球10の出射ポート21からの光線が通過する集光光学ユニット51と、この集光光学ユニット51を通過した光線を測光する分光器53とを備えている。
【0030】
この測光手段50の集光光学ユニット51は、ピンホールと複数の集光素子とを備えている。ここで、集光素子は、ミラーから構成されている。そして、この集光光学ユニット51によって、積分球10内における測光経路Pが制御されている。具体的には、この積分球10内の測光経路Pは、出射ポート21付近において頂点(焦点)を有する略円錐状となるよう制御されている。なお、積分球10の内周面10aのうち、この測光経路Pと交わる領域が、被測光領域Sとなり、積分球10の内周面10aのうち被測光領域Sで反射した反射光線のみを測光手段50が測光するよう構成されている。なお、被測光領域Sで反射した反射光線のうち測光経路Pよりも外側方向に反射する反射光線は測光手段50に測光されず、測光経路Pの内側方向に反射する反射光線が測光手段50に測光される。
【0031】
また、本実施形態の集光光学ユニット51によって制御される測光経路Pは、測光軸(上記円錐状の回転軸)が積分球10の中心Oを通るよう制御されている。また、集光光学ユニット51によって測光経路Pは、上記被測光領域Sが一定範囲となるよう制御されている。ここで、この測光領域Sは、測光軸に対して、測光領域Sの一端と積分球10の中心Oとを結ぶ仮想直線がなす角度αが、60°以下であることが好ましい。特にこの角度αは、10°以上45°以下であることが好ましく、15°以上35°以下であることがより好ましく、20°以上30°以下であることが特に好ましい。上記角度αが下限値未満であると、被測光領域Sが狭くなってしまうので、その被測光領域Sに部分的、一時的な汚れ(例えばホコリの付着)等が生ずると測光の誤差が大きくなってしまい、測光精度が落ちるおそれがある。一方、上記角度αが上記上限値を超えると後述のバッフル30を測光経路P外に配設することが困難となるおそれがあるためである。なお、この集光光学ユニット51は、上記測光経路P内に上記取付部13(及びこれに取付けられる発光ダイオード90)が位置しないように測光経路Pを制御している。これにより発光ダイオード90の出射光線が測光手段50によって直接測光されないよう構成されている。
【0032】
また、上記被測光領域Sの面積は、積分球10の内周面10a全面の面積に対して、25%以下であることが好ましい。特にこの割合は、1%以上15%以下であることが好ましく、2%以上10%以下であることがより好ましく、3%以上7%以下であることが特に好ましい。上記下限値未満であると被測光領域Sが狭くなり測光される光量が不足するおそれがあり、また上記上限値を超えると後述のバッフル30を測光経路P外に配設することが困難となるおそれがあるためである。
【0033】
上記分光器53は、上記集光光学ユニット51を介して伝達された光線について波長ごとの強度を測光可能に設けられている。この分光器53は、従来公知のものを用いることができ、回折格子やプリズムを有し、この回折格子又はプリズムによって光線を波長ごとに分光するものが好適に用いられている。また、分光器53は、上記のように分光された光線の強度を感知する光電子増倍管(PMT)を有している。さらに、分光器53は、上記制御手段70に接続され、制御手段70からの指示に応じてプリズムを回動させて、光電子増倍管に所望の波長の光線を供給するよう構成されている。
【0034】
上記分光器は、光電子増倍管によって増幅して変換された電気信号を計測するフォトンカウンター57に接続されている。そして、このフォトンカウンターは、上記制御手段70に接続され、計測されたデータを制御手段70に供給している。
【0035】
<バッフル30>
上記バッフル30は、積分球10内部において被測光領域Sと取付部13との間で且つ測光経路P外に配設されており、当該光源検査装置1は、このバッフル30によって取付部13の発光ダイオード90の出射光線が直接被測光領域Sに入射しないよう設けられている。具体的には、上記バッフル30は、積分球10の内周面10aに付設されており、内周面10aから積分球10の中心O側に向けて突設されている。上記バッフル30は、取付部13よりも出射ポート21の反対側(被測光領域S側)、且つ被測光領域S(の中心)よりも取付部13(出射ポート21の中心)側に配設されている。
【0036】
上記バッフル30は、白色の板材から構成されており、バッフル30は白色顔料を含有した樹脂から形成されている。ここで、白色顔料としては、積分球10の内周面10aに用いられる顔料と同種のものを用いることが好ましい。具体的には、白色顔料として、酸化チタン(チタン白)を用いることができる。なお、白色顔料としては、その他、シリカ、炭酸カルシウム(白亜)、酸化亜鉛(亜鉛華)、炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム等を用いることも可能である。ここでバッフル30は、この白色顔料を含有する樹脂の成型品から構成することが可能であるが、例えば板材の外面に上記樹脂がコーティングされたものを用いることも可能である。なお、測光する波長等に応じて、銀色や金色等の外面を有する板材からバッフル30を構成することも可能である。
【0037】
また、バッフル30は、入射ポート11(の中心)と積分球10の中心Oとを結ぶ仮想直線と略平行に突設されている。ここで「略平行」とは、バッフル30が仮想直線と5°程度傾斜している場合も含む概念である。なお、バッフル30は、上記仮想直線に対して平行若しくは積分球10の中心O側にかけて上記仮想直線から離反する方向に傾斜して突設されていることが好ましい。これによって、発光ダイオード90からバッフル30に入射し、バッフル30で反射した光線が積分球10の中心O方向に向きやすく、バッフル30に入射した光線も含めた全光線を測光対象とした測光を行うことができ、的確且つ正確な検査が行うことができる。つまり、上記バッフル30で反射した光線が発光ダイオード90及び取付部13側に向けて反射(再帰)してしまうと、この発光ダイオード90等によって光線が吸収されてしまうことがあるため、上記のような構成を採用することによって発光ダイオード90が発光する光線全体によって的確且つ正確な検査が行うことができる。
【0038】
さらに、バッフル30は、突出端縁30aが測光経路Pに至らない程度に突設されており、バッフル30は測光経路P外に配設されている。また、バッフル30は、突出端縁30aと取付部13とを結ぶ仮想直線が内周面10aとの接点が被測光領域S外に位置するよう設けられている。ここで、バッフル30の最大突出位置(積分球10の中心に最も近接する突出端縁30aの位置)と積分球10の中心Oとの距離Dが、積分球10の半径に対して、30%以上80%以下であることが好ましく、35%以上70%以下であることがより好ましく、40%以上60%以下であることが特に好ましい。上記下限値未満である場合には、バッフル30が小さ過ぎるので、発光ダイオード90の大きさ等によって発光ダイオード90からの出射光線が直接被測光領域Sに入射することを的確に防止できないおそれが生ずるためである。また、上記上限値を超えると、バッフル30が大き過ぎるので、積分球10の内部で光線を均一化する妨げとなるおそれがあるためである。
【0039】
また、入射ポート11の中心が緯度0°の位置で、出射ポート21の中心が緯度90°の位置であるとすると、バッフル30は、入射ポート11の中心と出射ポート21の中心と同緯度で且つ緯度−10°の位置の内周面10aから突設されている。ここで、入射ポート11の中心を緯度0°として出射ポート21の中心が緯度90°付近に位置するとした場合、バッフル30の付設位置は、緯度−40°以上−5°以下であることが好ましく、−30°以上−7°以下であることがより好ましく、−20°以上−9°以下であることがさらに好ましい。上記下限値未満である場合には、バッフル30が被測光領域Sに近接し過ぎるため、発光ダイオード90からの出射光線が直接被測光領域Sに入射することを防止しつつ測光経路P外にバッフル30を配設することが困難となる。また、上記上限値を超えると、バッフル30が発光ダイオード90に近接し過ぎるため、発光ダイオード90の出射光線の強度が強い光線がバッフル30に入射されてしまい、光学性能の評価に影響を与えるおそれが生ずるためである。
【0040】
<制御手段70>
上記制御手段70は、発光ダイオード90の出力(発光ダイオード90に供給される電力)を調節するための発光ダイオードコントロール部73と、発光ダイオードコントロール部73に指示を与えるとともに測光手段50から測光データを受け取る制御部本体71とを備えている。
【0041】
上記制御部本体71は、フォトカウンター57からのデータを受け取り、これらのデータに基づいて発光ダイオード90の各波長における強度を算出するとともに、この強度と上記発光ダイオードコントロール部73等への出力信号とに基づいて発光ダイオード90の光学性能を判断するプログラムを有している。なお、この制御部本体71は、例えば、通常のコンピューターシステムから構成することができる。
【0042】
<検査方法>
本実施形態の光源の検査装置1は上記構成からなるが、次に、当該検査装置1を用いた検査方法について説明する。
【0043】
まず検査にあたり、取付部13を積分球10の出射ポート21から離脱させて、この取付部13に検査対象たる発光ダイオード90を取付け、その後取付部13を積分球10の出射ポート21に装着する。
【0044】
そして、制御手段70によって発光ダイオード90の出力を制御しつつ発光ダイオード90を発光させる。この発光ダイオード90からの出射光線は、積分球10内において反射が繰り返され、均一な光線となって出射ポート21に到達する。この出射ポート21に到達した光線のうち集光光学ユニット51により制御された測光経路P内の光線が分光器53に伝達される。この伝達された光線は、分光器53及びフォトカウンティングユニットによって計測される。そしてこの計測されたデータを基に制御手段70は、発光ダイオード90から所望の光線が出光しているか否か(発光ダイオード90が所望の出光特性を有しているか否か)の判断を行うことになる。
【0045】
<利点>
本実施形態の光源の検査装置1によれば、上記のように出射ポート21に対向する被測光領域Sと取付部13との間にバッフル30が配設され、バッフル30が発光ダイオード90からの出射光線が直接被測光領域Sに入射することを防止しているので、仮に発光ダイオード90が取付部13側に傾いて取付けられた場合であっても、測光結果の差異を少なくすることができ、発光ダイオード90の光学性能を容易且つ正確に測光することができる。
【0046】
また、バッフル30は、測光手段50の測光経路P外に配設されているので、バッフル30からの反射光線以外の積分球10内周面10a(被測光領域S)からの反射光線を測光手段50が測光することができ、測光結果に基づいて容易かつ確実に検査結果を判別することができる。つまり、測光経路P内にバッフル30が存在する場合には、バッフル30からの反射光線をも測光手段50が測光することになり、このバッフル30からの反射光線は積分球10の内周面10aからの反射光線とは異なる強度となるおそれがあるため、バッフル30が測光経路P内に位置した場合にはバッフル30からの反射光線を考慮したうえでの判断が必要となり、その判断手法が困難となるためである。
【0047】
また、当該検査装置1にあっては、バッフル30が、被測光領域Sよりも取付部13に近接する位置に配設されているので、測光手段50の測光経路P外にバッフル30を配置し易い。
【0048】
さらに、集光光学ユニット51によって測光経路Pが限定され、積分球10の内周面10aの一定範囲の被測光領域Sの反射光線を測光手段50が測光するよう設けられているので、測光経路P外にバッフル30を設置し易く、これによって発光ダイオード90の光学性能を容易且つ正確に測光することができる。
【0049】
また、バッフル30が白色であるので、バッフル30に入射した光線を的確に反射することができ、バッフル30に入射した光線をも含めた全光線を測光対象とした測光を行うことができる。特に、バッフル30は板状であるので、反射した光線の均一性を高めることができ、積分球10の機能を阻害し難い。
【0050】
また、バッフル30は積分球10の内周面10aの白色顔料と同種の白色顔料を有することで、積分球10の内周面10aの反射と同様の均一性を得られやすく、バッフル30の存在による測光誤差が生じ難い。
【0051】
[その他の実施形態]
なお、上記実施形態においては上記構成により上述の利点を有するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
【0052】
つまり、上記実施形態においてはバッフル30が入射ポート11と積分球10の中心Oとを結ぶ仮想直線と略平行に突設されているものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図3に示すように、平板状のバッフル30が、上記仮想直線と略平行ではなく、積分球10の内周面10aから積分球10の中心Oに向けて突設されている構成を採用することも可能である。この図3のようにバッフル30が積分球10の半径方向に沿って配設されることで、積分球10内におけるバッフル30の存在が光線の等方的な分散に影響を与えにくく、積分球10の内部で反射を繰り返す光線が場所及び角度に関わらず強度が均一となり易い利点を有する。
【0053】
なお、図3において、第一実施形態と同様の構成又は機能を有する部材については同一符号を用いている。また、バッフル30は、入射ポート11の中心が緯度0°の位置で、出射ポート21の中心が緯度90°の位置であるとすると、入射ポート11の中心と出射ポート21の中心と同緯度で且つ緯度−45°の位置の内周面10aから突設されている。ここで、入射ポート11の中心を緯度0°として出射ポート21の中心が緯度90°付近に位置するとした場合、バッフル30の付設位置は、緯度−60°以上−15°以下であることが好ましく、−55°以上−25°以下であることがより好ましく、−50°以上−35°以下であることがさらに好ましい。上記下限値未満である場合には、バッフル30が被測光領域Sに近接し過ぎるため、発光ダイオード90からの出射光線が直接被測光領域Sに入射することを防止しつつ測光経路P外にバッフル30を配設することが困難となる。また、上記上限値を超えると、バッフル30が発光ダイオード90に近接し過ぎ、発光ダイオード90の出射光線の強度が強い光線がバッフル30に入射され、この入射された光線が反射して発光ダイオード90に再帰してしまい、光学性能の評価に影響を与えるおそれが生ずるためである。なお、この図3のバッフル30の突出端縁30aも上記第一実施形態の突出端縁30a(図2等参照)と同様の位置(中心Oからの距離等)に設けることが好ましい。
【0054】
また、上記実施形態においては、バッフル30が白色の板状体から構成されたものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。つまり、バッフルが板状であることによって、バッフルの存在による光線の等方的な分散の阻害になり難いが、その他の形状のバッフルを採用することも可能である。また、バッフルを白色の部材から構成することも限定されないが、バッフルの表面を白色の反射層とすることが好ましく、例えば表面に白色顔料を含有した塗料が塗布された部材からバッフル30を構成することも可能である。
【0055】
さらに、上記実施形態においては、検査対象である光源として発光ダイオード(発光素子)を例にとり説明したが、本発明の光源検査装置にあっては、その他の発光素子、さらにはレーダー光線照射部材を検査対象とすることも可能である。また、上記実施形態においては、光源を取付ける取付部が出射ポートに取付けられたものについて説明したが、例えば検査対象たる光源を積分球の外部に配設して、この光源の出射光線が導光されて出射ポートから入射されるよう構成することも可能である。
【0056】
また、上記実施形態の積分球に更に標準データ用光源入射ポートを設けて、この標準データ用光源入射ポートから標準データ採取のための光線が入射されるよう構成することも可能である。これにより、この標準データ採取のための光源を用いて積分球自体の性能評価を行うことができる。このため、例えば積分球の長期間の使用により内周面の反射率の変化等に応じて、上記標準データ採取のための光源を用いた積分球自体の性能評価の結果に基づいて制御手段において計測データを修正することができ、積分球を長期間使用しても比較的正確な光学性能の評価を継続することができる。
【0057】
さらに、上記実施形態においては、分光器53が光電子増倍管を有するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば電荷結合素子検出器(CCD)等の二次元受光器を有するものも採用可能である。なお、この場合には、二次元受光器が上記実施形態のような制御手段に接続され、計測されたデータを制御手段70に供給するよう構成することが好ましい。
【0058】
また、上記実施形態においては、測光手段50がミラーを有するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば集光素子としてレンズを有するものも採用可能である。さらに、集光素子を可動として、測光領域を変更可能に設けることも適宜設計変更可能な事項である。
【0059】
[実験例]
上記第一実施形態の光源の検査装置と、従来の検査装置とを用い、発光ダイオードの取付角度による検出精度の差異について実験を行った。
【0060】
この実験においては、発光ダイオードとしてφ5砲弾型発光ダイオード(商品名「E1L51−3B(豊田合成株式会社製)」)を用いた。また、発光ダイオードを取付部に正常に(積分球中心に対して傾斜角度0°で)取付けた際に、発光ダイオードの先端部が積分球の内周面よりも約14mm中心側に突出するよう発光ダイオードを取付けた。
【0061】
(実験例1)
正常に取付けられた状態の発光ダイオードについて、発光ダイオード点灯後100秒経過した後に、全光束を計測した。同一の発光ダイオードについて、この計測を10回行った。
【0062】
(実験例2〜5)
次に、実験例2として、発光ダイオードを出射ポート側に向けて45°傾斜させて、上記実験例1と同様の計測を行った。同様に、実験例4として、発光ダイオードを被測光領域側に向けて45°傾斜させて上記実験例1と同様の計測を行った。また同様に、実験例3及び5として、発光ダイオードを出射ポートと被測光領域との間(右側及び左側)にそれぞれ傾斜させて上記実験例1と同様の測光を行った。
【0063】
(測光結果)
この実験例1〜5の測光結果を表1に示した。
【0064】
【表1】

【0065】
なお、表中、平均(mW)は10回の測光値の平均であり、最高(mW)は10回の測光値の最高値であり、最小(mW)は10回の最小値を意味する。
また、最大誤差(△%)は、以下の数式による数値である。
最大誤差=(最高値−最小値)×100/(2×平均)
さらに相対強度(%)とは、実験例1の平均測光値に対する各実験例の平均測光値の割合であり、強度差(%)とは、100%と相対強度との差を意味する。
【0066】
(評価)
表1の結果からも明らかなように、当該光源検査装置によれば、実験例1〜5において測光値の差が少ないことが判明した。つまり、実験例1〜5から明らかなように発光ダイオードの取付角度が変更されたとしても測光値に変動が生じ難い。このため、当該光源検査装置によれば発光ダイオードの取付角度等に影響を受けにくく、正確な光学性能の測光が可能である。
【0067】
(実験例6〜11及びその測光結果)
実験例6〜11は、検査対象及び取付角度を異ならしめて実験例1〜5とそれぞれ同様の試験を行った。この実験例6〜11の測定結果を表2に示す。この実験例6〜11については、検査対象である発光ダイオードとして商品名E1L51−AW0C*−01(豊田合成株式会社製)を用いた。また、実験例7〜11については、実験例2〜5と異なり取付角度(傾斜角度)を30°とした。
【0068】
【表2】

【0069】
表2の結果からも明らかなように、当該光源検査装置によれば、実験例6〜11において測光値の差が少ないことが判明した。つまり、実験例6〜10から明らかなように発光ダイオードの取付角度が変更されたとしても測光値に変動が生じ難く、また実験例6及び11から明らかなように発光ダイオードの取付高さにズレが生じたとしても測光値に変動が生じ難い。このため、当該光源検査装置によれば発光ダイオードの取付角度等に影響を受けにくく、正確な光学性能の測光が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明の光源の検査装置は、積分球を用いて光源の光学性能を容易且つ正確に測光することのでき、例えば発光ダイオードの全光束試験に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 検査装置
10 積分球
10a 内周面
11 入射ポート
13 取付部
15 台座
17 カバー体
21 出射ポート
30 バッフル
50 測光手段
51 集光光学ユニット
53 分光器
57 フォトンカウンター
70 制御手段
71 制御部本体
73 発光ダイオードコントロール部
90 発光ダイオード
O 中心
P 測光経路
S 被測光領域
α 角度
D 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線を反射する内周面を有する積分球、
積分球内に検査対象である光源の出射光線を入射させるための入射ポート、
積分球内の光線を外部に向けて出射するための出射ポート、及び
積分球内の光線を出射ポートから測光する測光手段を備え、
上記測光手段が、積分球内の測光経路を一定範囲に制御しており、
積分球の内周面のうち測光経路と交わる被測光領域と上記入射ポートとの間に配設されるバッフルをさらに備える光源検査装置。
【請求項2】
上記バッフルが、上記測光経路外に配設されている請求項1に記載の光源検査装置。
【請求項3】
上記バッフルが、上記被測光領域よりも上記出射ポートに近接する位置に配設されている請求項1又は請求項2に記載の光源検査装置。
【請求項4】
上記バッフルが、平板状に形成され、上記出射ポートと積分球の内周面内の空洞の中心とを結ぶ仮想直線と略平行に配設されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の光源検査装置。
【請求項5】
上記バッフルが、平板状に形成され、上記積分球の内周面から積分球の内周面内の空洞の中心に向けて突設されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の光源検査装置。
【請求項6】
上記バッフルが、白色顔料を含有する反射層を少なくとも表面に有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光源検査装置。
【請求項7】
上記出射ポートに着脱可能に取付けられるとともに検査対象たる光源が着脱可能に取付けられる取付部をさらに備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光源検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−3061(P2013−3061A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136813(P2011−136813)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【特許番号】特許第4932045号(P4932045)
【特許公報発行日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(591072411)西進商事株式会社 (10)
【Fターム(参考)】