説明

光源装置、投影装置及び光源制御方法

【課題】制御系に大きな負担をかけず、点灯期間内の温度変化に起因する発光効率の変化、及びそれに伴う発光輝度の変動に対処して、安定した発光動作を実現させる。
【解決手段】半導体発光素子を用いた光源部24と、光源部24に駆動信号を供給して発光させる光源ドライバ44と、光源部24の発光期間の開始時と終了時の発光状態を検出する照度センサ28と、照度センサ28の検出結果に応じ、(D/A変換器42を介して出力する)電流調整信号と、遅延特性の切替信号とを生成する制御部41と、制御部41からの切替信号により遅延特性が可変設定される、電流調整信号を遅延して光源ドライバ44に供給させる反転回路45及び遅延回路43とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子を光源に用いるプロジェクタ装置等に好適な光源装置、投影装置及び光源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子を用いた光源を有するプロジェクタ装置での、主として光源制御系の一般的な制御内容について説明する。図6は制御回路の構成を示すブロック図である。同図で、駆動対象となる光源11は、光源ドライバ12からの駆動電流に応じた輝度で発光する。
【0003】
この光源11の発光の度合いを照度センサ13により検出する。この照度センサ13は、光源11の発する光を用いた投影光路中に設けられ、検出された照度信号がCPU14に送出される。このCPU14は、光源11の駆動制御を含めてプロジェクタ装置全体の動作制御を司る。
【0004】
CPU14は、D/A変換器15に対して電流調整変更信号を、上記光源ドライバ12に対して点灯タイミング信号をそれぞれ出力する。D/A変換器15は、CPU14から送られてくる、光源11の駆動電流値に応じたパルス幅を有する電流調整変更信号をD/A変換することでアナログ値の電流調整信号を生成し、生成した電流調整信号を上記光源ドライバ12へ出力する。
【0005】
光源ドライバ12では、CPU14からの点灯タイミング信号に同期して、D/A変換器15から供給される電流調整信号に基づいた駆動電流を発生し、上記光源11に供給して発光駆動させる。
【0006】
図7は、上記図6の回路における各信号波形を例示する。図7(A)は、CPU14が光源ドライバ12に出力する点灯タイミング信号を示す。図7(B)は、D/A変換器15がCPU14からの電流調整変更信号をアナログ化して光源ドライバ12に出力する、波高値Vaの電流調整信号を示す。図7(C)は、上記信号に応じて光源ドライバ12が光源11に供給する方形波状の駆動電流である。
【0007】
しかるにこの駆動電流により駆動される光源11の半導体発光素子、例えばLED(発光ダイオード)は、発光と同時に熱を発生して素子の温度が上昇し、結果として発光効率が低下する基本的な温度特性を有している。この特性は、LEDに限らず、他の半導体発光素子であるLD(半導体レーザ)や有機EL素子(いずれも広義にはLEDに属する)も同様である。
【0008】
したがって、実際に光源11の発光時の明るさは図7(D)に示すように発光開始時と発光停止時とでは大きく異なるように変動する。そのため、この光源11からの光を用いて微妙な階調表現を行なうのが困難となる。
【0009】
このような事態に対処するべく、CPU14が照度センサ13から得られる照度信号をD/A変換器15への電流調整変更信号にフィードバックし続ける方法も考えられる。
【0010】
図8は、そのような制御を実現した場合の動作例を示す。
CPU14が照度センサ13からの照度信号に応じて点灯期間中、常に光源11での明るさが一定となるようなフィードバック制御をかけるものとした場合、D/A変換器15が出力するアナログ化した電流調整信号の波高値Vaは、図8(C)に示すように変化する。
【0011】
このようにCPU14が常時照度信号を監視してフィードバック制御を実行することは、装置全体の制御動作を行なうCPU14にとって非常に負担が大きく、専用のプロセッサが必要となる。
【0012】
加えて、複数色の半導体発光素子を同時に発光させて混色を発生させるような動作時には、照度センサ13を光源色毎に設けて個別に制御する必要があり、実現するのは困難となる。
【0013】
また上記従来技術とは別に、光源の発光輝度を変化させる際に該変化の度合いを必要により適切に調整するようにした技術が考えられている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011−113873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記特許文献に記載された技術は、急峻な輝度変化の有無に応じて遅延回路を選択的に動作させるものであり、上記図6乃至図8で説明したような、1点灯期間内での発光素子の温度変化に起因する発光効率の変化、及びそれに伴う発光輝度の変動には対処することができない。
【0016】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、制御系の回路に大きな負担をかけることなく、1点灯期間内での発光素子の温度変化に起因する発光効率の変化、及びそれに伴う発光輝度の変動に対処して、安定した発光動作を実現させることが可能な光源装置、投影装置及び光源制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、半導体発光素子を用いた光源と、上記光源に駆動信号を供給して発光させる駆動部と、上記光源の発光期間の第1の時期と第2の時期との該光源の発光状態を検出する検出手段と、上記駆動部の出力する駆動信号を調整する調整信号、及び上記検出手段の検出結果に応じて遅延特性の切替信号を生成する制御手段と、上記制御手段からの切替信号により遅延特性が可変設定される、上記調整信号を遅延して上記駆動部に供給させる遅延手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、制御系の回路に大きな負担をかけることなく、1点灯期間内での発光素子の温度変化に起因する発光効率の変化、及びそれに伴う発光輝度の変動に対処して、安定した発光動作を実現させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るデータプロジェクタ装置の機能回路構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態に係る主として光源制御系の各回路を抜き出して示すブロック図。
【図3】同実施形態に係る図2の回路での信号波形を示すタイミングチャート。
【図4】同実施形態に係る信号は系に対する制御原理を説明する図。
【図5】同実施形態に係る制御の一連の流れを示す図。
【図6】半導体発光素子を用いた光源を有するプロジェクタ装置の、主として光源制御系の各回路の一般的な構成を示すブロック図。
【図7】図6の回路での信号波形を示すタイミングチャート。
【図8】図7の動作から考え得る制御内容を例示するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明をDLP(Digital Light Processing)(登録商標)方式を採用したデータプロジェクタに適用した場合の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るデータプロジェクタ装置20が備える電子回路の機能構成を示すブロック図である。図中、21は入力部である。この入力部21は、例えばビデオ入力端子、RGB入力端子、及びHDMI(High−Definition Multimedia Interface)規格の画像/音声入力端子を有し、有線接続された外部機器からの画像信号及び音声信号を入力する。入力部21から入力された各種規格の画像信号は、システムバスSBを介し、投影画像処理部22に入力される。
【0022】
投影画像処理部22は、入力される画像信号を投影に適した所定のフォーマットの画像信号に統一し、内蔵する表示用のバッファメモリに適宜書込んだ後に、書込んだ画像信号に応じて、上記所定のフォーマットに従ったフレームレート、例えば60[フレーム/秒]と色成分の分割数、及び表示階調数を乗算した、より高速な時分割駆動により表示素子23に原色画像を表示させる。
【0023】
この表示素子23は、マイクロミラー素子で構成する。当該マイクロミラー素子は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で作成された、アレイ状に配列された複数、例えばXGA(横1024画素×縦768画素)個の微小ミラーの各傾斜角度を個々に高速でオン/オフ動作して表示動作することで、その反射光により光像を形成する。
【0024】
一方で、光源部24から時分割でR,G,Bの原色光が循環的に出射される。この光源部24からの原色光が、ミラー25で全反射して上記表示素子23に照射される。
【0025】
そして、表示素子23での反射光で光像が形成され、形成された光像が投影レンズユニット26を介して、投影対象となる図示しないスクリーンに投影される。
【0026】
上記光源部24は、赤色(R)光、緑色(G)光、及び青色(B)光を発する3色の半導体発光素子、例えばLED(発光ダイオード)とそれらの光学系を備え、光源駆動部27の駆動に基づいてR,G,Bの各原色光を時分割で循環的に発生する。
【0027】
ここで光源駆動部27は、上記投影画像処理部22から与えられる、画像信号に同期したタイミング信号と、後述するCPU28の制御に応じて光源部24を駆動して発光させる。
【0028】
また表示素子23の反射光で、投影レンズユニット26への投影光として利用されなかった光、所謂オフ光が照射される位置に照度センサ28を設ける。この照度センサ28は、後述するCPU29からの測定タイミング信号を受けて投影光の使用度を検出し、その検出結果をシステムバスSBを介してCPU29へ出力する。
【0029】
上記各回路の動作すべてをCPU29が制御する。このCPU29は、メインメモリ30及びプログラムメモリ31と接続される。上記メインメモリ30は、DRAMで構成され、このCPU29のワークメモリとして機能する。
【0030】
上記プログラムメモリ31は、電気的書換可能な不揮発性メモリ、例えばフラッシュメモリで構成され、CPU29が実行する動作プログラムや、その他各種定型データ等を記憶する。
【0031】
CPU29は、プログラムメモリ31に記憶されている動作プログラムやデータ等を読出し、メインメモリ30に展開して記憶させた上で、当該プログラムを実行することにより、このデータプロジェクタ装置20を統括して制御する。
【0032】
CPU29は、操作部32からのキー操作信号に応じて各種投影動作を実行する。
この操作部32は、データプロジェクタ装置20の本体に設けられるキー操作部と、このデータプロジェクタ装置20専用の図示しないリモートコントローラからの赤外光を受光するレーザ受光部とを含む。
【0033】
操作部32は、ユーザが本体のキー操作部またはリモートコントローラで操作したキーに基づくキー操作信号をCPU29へ出力する。
【0034】
上記CPU29はさらに、上記システムバスSBを介して音声駆動部33とも接続される。
【0035】
上記音声駆動部33は、PCM音源等の音源回路を備え、投影動作時に与えられる音声信号をアナログ化し、スピーカ部34を駆動して放音させ、あるいは必要によりビープ音等を発生させる。
次に図2により、上記データプロジェクタ装置20内の主として光源制御系の回路を抜き出して示す。同図で、駆動対象となる光源部24は、光源駆動部27からの駆動電流に応じた輝度で発光する。
【0036】
この光源部24の発光の度合いを上記照度センサ28により検出する。この照度センサ28は、制御部41からの測定タイミング信号に応じて検出動作を実行し、検出結果としての照度信号を上記制御部41に送出する。ここで制御部41は、上記投影画像処理部22とCPU29とからなる。
【0037】
しかして制御部41は、光源駆動部27内の、D/A変換器42に対して電流調整変更信号を、遅延回路43に対して容量切替信号を、そして光源ドライバ44、反転回路45、及びNPNタイプのトランジスタTR3のベースに対して点灯タイミング信号を、それぞれ送出する。
【0038】
D/A変換器42は、制御部41から送られてくる、光源部24の駆動電流値に応じたパルス幅を有する電流調整変更信号をD/A変換することでアナログ値の電流調整信号を生成し、生成した電流調整信号を上記トランジスタTR3のコレクタに供給する。同トランジスタTR3のエミッタが、上記光源ドライバ44及び遅延回路43と接続される。
光源ドライバ44では、制御部41からの点灯タイミング信号に同期して、光源ドライバ44から上記トランジスタTR3を介して供給される電流調整信号に基づいた駆動電流を発生し、上記光源部24に供給して発光駆動させる。
【0039】
反転回路45では、制御部41からの点灯タイミング信号を抵抗R1を介してPNPタイプのトランジスタTR1のベースに与える。同トランジスタTR1のベース−エミッタ間を抵抗R2で接続する。トランジスタTR1のエミッタには、上記制御部41を構成するCPU29と同一電源となる電圧Vを印加する。そして、トランジスタTR1のコレクタを、抵抗R3を介して上記遅延回路43内のNPNタイプのトランジスタTR2のベースと接続する。
【0040】
遅延回路43では、上記トランジスタTR3のエミッタを、上記トランジスタTR2のコレクタと、抵抗R5を介して可変容量コンデンサVC1の一端とに接続する。トランジスタTR2のベース−エミッタ間には抵抗R4を接続する。さらに、トランジスタTR2のエミッタと上記可変容量コンデンサVC1の他端とを接地する。可変容量コンデンサVC1は、上記制御部41からの容量切替信号によって静電容量を可変する。
【0041】
次に上記実施形態の動作について説明する。
図3は上記図2の構成回路における各信号波形を例示する。図3(A)は、制御部41が光源駆動部27内の光源ドライバ44と反転回路45、及び上記トランジスタTR3のベースに与える点灯タイミング信号を示す。この点灯タイミング信号は、オン時に上記CPU29の電源と同電位の電圧Vとなるものとする。
【0042】
点灯タイミング信号がオンの時、この点灯タイミング信号が直接ベースに与えられるトランジスタTR3が導通し、D/A変換器42の出力する電流調整信号が光源ドライバ44及び遅延回路43に与えられる。
【0043】
このとき反転回路45のトランジスタTR1においては、ベースとエミッタとが共に電圧Vで同電位となるため、導通しない。その結果、遅延回路43のトランジスタTR2のベースはGNDレベルとなって、このトランジスタTR2も導通しない。そのため、遅延回路43にあっては、抵抗R5を介して可変容量コンデンサVC1に電流調整信号が流れて可変容量コンデンサVC1が充電される。
【0044】
点灯タイミング信号がオフとなると、トランジスタTR3が導通しないためにD/A変換器42の出力する電流調整信号の光源ドライバ44への供給が停止される。反転回路45では、トランジスタTR1へのベースがオフとなっているためにコレクタ−ベース間に電位差が生じ、トランジスタTR1が導通する。
そのため、遅延回路43のトランジスタTR2が導通し、可変容量コンデンサVC1に充電されていた電荷が抵抗R5、トランジスタTR2を通って放電される。
【0045】
図3(B)に上記光源ドライバ44に供給される電流調整信号の波形を例示する。点灯タイミング信号がオンの時に可変容量コンデンサVC1に電流調整信号が流れ込み、この可変容量コンデンサVC1の充電に電流調整信号が用いられることで、図示する如く光源ドライバ44に入力される電流調整信号は、同図(B)に示す如く立上り及び立下りでそれぞれ応答に遅れを有した、所謂「鈍った」波形となる。
【0046】
この波形の応答の遅れは、上述したように遅延回路43での時定数に起因するもので、可変容量コンデンサVC1の容量を可変調整することにより、応答の遅れの大小も制御できる。
【0047】
光源ドライバ44では、上記電池調整信号の立下り時の応答の遅れを排除するべく、点灯タイミング信号に応じて動作する内部スイッチにより、立下りタイミングでの波形を急峻なものとするように補正することで、図3(C)に示すような波形の駆動電流を生成して光源部24を発光駆動する。
【0048】
結果として光源部24の発光により得られる明るさは、半導体発光素子が点灯開始後から自身の発熱により徐々に発光効率が低下することと相殺して、図3(D)に示すように発光期間中、ほとんど変化せずに一定のレベルを保つように制御できる。
【0049】
制御部41では、光源部24を点灯させる期間当初から一定時間、例えば0.5[ms]経過後のタイミングt1と、点灯終了直前のタイミングt2とにそれぞれ照度センサ28により照度を測定させる。
【0050】
図4は、制御部41による上記遅延回路43の可変容量コンデンサVC1の調整について説明する図である。図4(A)は、上記図6(D)でも示した如く電流値が一定な方形波状の駆動電流により半導体発光素子を駆動した場合に得られる、明るさの変化特性を示す。
【0051】
制御部41は、上述した点灯開始から一定時間、例えば0.5[ms]経過後のタイミングt1で測定した照度をW1、点灯終了直前のタイミングt2で測定した照度をW2とし、制御部41はそれらの比に応じて遅延回路43の可変容量コンデンサVC1の容量を選定し、容量切替信号を次の点灯サイクルに合わせて送出する。
【0052】
すなわち制御部41は、光源部24の発光期間の第1の時期と第2の時期との発光状態を検出し、この検出結果に基づいて遅延回路43の可変容量コンデンサVC1の容量を選定する。
【0053】
すなわち事前に実験等で、タイミングt1で測定した照度W1及びタイミングt2で測定した照度W2の比W1/W2の所定の値に対する最適な可変容量コンデンサVC1の容量値を測定し、得られたW1/W2の値と可変容量コンデンサVC1の容量値との対応関係テーブルを作成しておく。
【0054】
そして、この対応関係テーブルを例えばプログラムメモリ31に記憶し、制御部41がそのプログラムメモリ31に記憶されている対応関係テーブルを読み込むことで、W1/W2の値に応じた可変容量コンデンサVC1の容量を選定し、容量切替信号を次の点灯サイクルに合わせて送出することとなる。
【0055】
なお、このように発光期間の点灯開始時のタイミングt1と点灯終了直前のタイミングt2で照度を測定することで、発光素子の温度変化に起因する発光効率の変化量を正確に測定することができる。
【0056】
そして、これにより図4(B)に示すように点灯時の駆動電流が本来の駆動電流の10[%]から90[%]まで到達するのに要する時間が一定時間、例えば0.5[ms]となるように遅延回路43での遅延の度合いを制御することで、光源部24が点灯期間中ほとんど一定の輝度レベルを維持するように制御できる。
【0057】
また、例えば画像全体の明るさを優先するプレゼンテーションモードや、明るさよりも色彩を優先するシアターモードといったように、ユーザが投影画像全体の明るさや投影画像全体の彩度等を使用状況に応じて切り換えて投影する場合が考えられるが、タイミングt1とタイミングt2との照度の比W1/W2は投影画像全体の明るさが変化しても大きくは変化しない。
【0058】
したがって、投影モード毎に可変容量コンデンサVC1の容量値を決定するための異なる対応関係テーブルを複数記憶せずとも、本実施形態のように1点灯期間における異なるタイミングでの照度の比W1/W2と可変容量コンデンサVC1の容量値との対応関係テーブルを1つ記憶さえしておけば、投影モードが切り替わったとしても光源部24が一定の輝度レベルを維持するように制御できる。
【0059】
よって、このような構成で制御すれば、投影モード毎に対応関係テーブルを作成する必要を無くすことができ、さらにプログラムメモリ31等に記憶しておく容量も節約できる。
【0060】
図5は、本実施形態の投影動作の制御の一連の流れを示す図である。制御部41により投影タイミング信号及び電流調整信号が送信され、投影動作が開始されると、制御部41は、第1の投影サイクル時での光源部24を点灯させる期間当初から一定時間経過後のタイミングt1と、点灯終了直前のタイミングt2とで、表示素子23を制御して照度センサ28に向けて光を照射し、この照度センサ28により照度W1と照度W2とを測定させる(ステップS1)。
【0061】
次いで、測定された照度W1の値と照度W2の値とからW1/W2の値を算出する(ステップS2)。
【0062】
そして、制御部41はプログラムメモリ31に記憶されているW1/W2の値と可変容量コンデンサVC1の容量値との対応関係テーブルを参照し、この対応関係テーブルから測定されたW1/W2の値に対応する可変容量コンデンサVC1の容量値の値を読出す(ステップS3)。
【0063】
次いで、制御部41は読出した可変容量コンデンサVC1の容量値に応じた容量切替信号を次の点灯サイクルである第2の投影サイクルに合わせて可変容量コンデンサVC1に送信する(ステップS4)。
【0064】
そして、制御部41は、次いで、ステップS1に戻って第2の投影サイクル時での光源部24を点灯させる期間当初から一定時間経過後のタイミングt1の照度W1と、点灯終了直前のタイミングt2での照度W2の照度とを照度センサ28により測定する。
【0065】
以上の制御を、投影動作を行っている期間中繰返し実行する。この制御を繰返すことで、投影動作を行なっている間に光源部24の温度が変化して光源部24の発光効率が変動し、それに伴って初期の投影サイクルと後の投影サイクルとで発光開始時と発光停止時との明るさの差が変動したとしても、光源部24が点灯期間中ほとんど一定の輝度レベルを維持するように制御できる。
【0066】
以上詳述した如く本実施形態によれば、制御系の回路に大きな負担をかけることなく、1点灯期間内での発光素子の温度変化に起因する発光効率の変化、及びそれに伴う発光輝度の変動に対処して、安定した発光動作を実現させることが可能となる。
【0067】
なお上記実施形態では、遅延回路43としてRC積分回路を用い、可変容量コンデンサVC1の容量を可変するものとしてその遅延特性を制御するものとした。これにより、比較的簡易な回路構成ながら確実に光源部24での発光輝度を一定となるように維持できる。
【0068】
その場合、上記実施形態では可変容量コンデンサVC1を用いる場合について説明したが、抵抗R5に代えて可変抵抗を用い、その抵抗値を制御部41が切換えるような構成としても良い。
【0069】
また上記実施形態では、点灯サイクル毎に制御部41が遅延回路43への制御を行なうものとして説明したが、点灯期間の開始時t1と終了時t2の明るさの差「W1−W2」を予め設定したしきい値Wthと比較し、その比較結果がしきい値より大きい場合にのみ必要に応じた切替信号を生成して遅延回路43での遅延時間を可変設定するものとしても良い。
【0070】
こうすることで、明るさの差がしきい値以下であり、特に明るさが階調表現上問題となるほどには変化していないと判断できる場合には、あらたな切替信号の精製糖の処理を一時的に停止して、制御部41の負担を軽減できる。
【0071】
さらに上記実施形態では、光源部24での明るさを照度センサ28により検出するものとして説明したが、光源部24での発光効率の低下は光源部24を構成する半導体発光素子の温度に起因するため、当該半導体発光素子の温度を検出することで、発光状態を測定するものとしても良い。
【0072】
このように発光動作による明るさを測定するか、あるいは素子の温度を測定するか、の少なくとも一方を装置構成上の制約等を勘案して設計時に選択することで、装置構成の自由度を上げて、構成がより簡易で正確な測定が可能な装置を提供できる。
【0073】
なお本実施形態では、光源部24は、赤色(R)光、緑色(G)光、及び青色(B)光を発する3色のLED等の半導体発光素子としたが、光源部を蛍光体が設けられた回転ホイールに励起光を照射することで所望の色の光を発するような構成としても良く、その場合は励起光を照射する励起光源の制御に本実施形態を用いればよい。
【0074】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0075】
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
請求項1記載の発明は、半導体発光素子を用いた光源と、上記光源に駆動信号を供給して発光させる駆動部と、上記光源の発光期間の第1の時期と第2の時期との該光源の発光状態を検出する検出手段と、上記駆動部の出力する駆動信号を調整する調整信号、及び上記検出手段の検出結果に応じて遅延特性の切替信号を生成する制御手段と、上記制御手段からの切替信号により遅延特性が可変設定される、上記調整信号を遅延して上記駆動部に供給させる遅延手段とを具備したことを特徴とする。
【0076】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記制御手段は、上記検出手段で検出した上記第1の時期と上記第2の時期との上記光源の発光状態の比を算出し、該発光状態の比に応じて切替信号を生成して上記遅延手段での遅延特性を可変設定することを特徴とする。
【0077】
請求項3記載の発明は、上記請求項1または2記載の発明において、上記制御手段は、上記検出手段で検出した上記第1の時期と上記第2の時期との上記光源の発光状態の差を予め設定したしきい値と比較し、その比較結果に応じて切替信号を生成して上記遅延手段での遅延特性を可変設定することを特徴とする。
【0078】
請求項4記載の発明は、上記請求項1乃至3の何れか記載の発明において、上記検出手段は、上記第1の時期と上記第2の時期との上記光源の発光輝度及び温度の少なくとも一方を検出することを特徴とする。
【0079】
請求項5記載の発明は、上記請求項1乃至4の何れか記載の発明において、遅延手段は、抵抗とコンデンサを組み合わせた積分回路を含むことを特徴とする。
【0080】
請求項6記載の発明は、上記請求項1乃至5の何れか記載の発明において、上記第1の時期は上記光源の発光期間の発光開始時であり、上記第2の時期は上記光源の発光期間の発光終了時であることを特徴とする。
【0081】
請求項7記載の発明は、半導体発光素子を用いた光源、上記光源に駆動信号を供給して発光させる駆動部、上記光源の発光期間の第1の時期と第2の時期との該光源の発光状態を検出する検出手段、上記駆動部の出力する駆動信号を調整する調整信号、上記検出手段の検出結果に応じて遅延特性の切替信号を生成する制御手段、及び上記制御手段からの切替信号により遅延特性が可変設定される、上記調整信号を遅延して上記駆動部に供給させる遅延手段を有する光源部と、画像信号を入力する入力手段と、上記入力手段で入力した画像信号に基づき、上記光源部からの光を用いて光像を形成する光像形成手段と、上記光像形成手段で形成した光像を投影対象に向けて投影する投影手段とを具備したことを特徴とする。
【0082】
請求項8記載の発明は、半導体発光素子を用いた光源と、上記光源に駆動信号を供給して発光させる駆動部とを備えた装置での光源制御方法であって、上記光源の発光期間の第1の時期と第2の時期との該光源の発光状態を検出する検出工程と、上記駆動部の出力する駆動信号を調整する調整信号、及び上記検出工程での検出結果に応じて遅延特性の切替信号を生成する制御工程と、上記制御工程で生成した切替信号により遅延特性が可変設定される、上記調整信号を遅延して上記駆動部に供給させる遅延工程とを有したことを特徴とする。
【符号の説明】
【0083】
11…光源、12…光源ドライバ、13…照度センサ、14…CPU、15…D/A変換器、20…データプロジェクタ装置、21…入力部、22…投影画像処理部、23…表示素子(マイクロミラー素子)、24…光源部、25…ミラー、26…投影レンズユニット、27…光源駆動部、28…照度センサ、29…CPU、30…メインメモリ、31…プログラムメモリ、32…操作部、33…音声駆動部、34…スピーカ部、41…制御部、42…D/A変換器、43…遅延回路、44…光源ドライバ、45…反転回路、SB…システムバス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を用いた光源と、
上記光源に駆動信号を供給して発光させる駆動部と、
上記光源の発光期間の第1の時期と第2の時期との該光源の発光状態を検出する検出手段と、
上記駆動部の出力する駆動信号を調整する調整信号、及び上記検出手段の検出結果に応じて遅延特性の切替信号を生成する制御手段と、
上記制御手段からの切替信号により遅延特性が可変設定される、上記調整信号を遅延して上記駆動部に供給させる遅延手段と
を具備したことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記検出手段で検出した上記第1の時期と上記第2の時期との上記光源の発光状態の比を算出し、該発光状態の比に応じて切替信号を生成して上記遅延手段での遅延特性を可変設定することを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項3】
上記制御手段は、上記検出手段で検出した上記第1の時期と上記第2の時期との上記光源の発光状態の差を予め設定したしきい値と比較し、その比較結果に応じて切替信号を生成して上記遅延手段での遅延特性を可変設定することを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項4】
上記検出手段は、上記第1の時期と上記第2の時期との上記光源の発光輝度及び温度の少なくとも一方を検出することを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載の光源装置。
【請求項5】
遅延手段は、抵抗とコンデンサを組み合わせた積分回路を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか記載の光源装置。
【請求項6】
上記第1の時期は上記光源の発光期間の発光開始時であり、上記第2の時期は上記光源の発光期間の発光終了時であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか記載の光源装置。
【請求項7】
半導体発光素子を用いた光源、上記光源に駆動信号を供給して発光させる駆動部、上記光源の発光期間の第1の時期と第2の時期との該光源の発光状態を検出する検出手段、上記駆動部の出力する駆動信号を調整する調整信号、上記検出手段の検出結果に応じて遅延特性の切替信号を生成する制御手段、及び上記制御手段からの切替信号により遅延特性が可変設定される、上記調整信号を遅延して上記駆動部に供給させる遅延手段を有する光源部と、
画像信号を入力する入力手段と、
上記入力手段で入力した画像信号に基づき、上記光源部からの光を用いて光像を形成する光像形成手段と、
上記光像形成手段で形成した光像を投影対象に向けて投影する投影手段と
を具備したことを特徴とする投影装置。
【請求項8】
半導体発光素子を用いた光源と、上記光源に駆動信号を供給して発光させる駆動部とを備えた装置での光源制御方法であって、
上記光源の発光期間の第1の時期と第2の時期との該光源の発光状態を検出する検出工程と、
上記駆動部の出力する駆動信号を調整する調整信号、及び上記検出工程での検出結果に応じて遅延特性の切替信号を生成する制御工程と、
上記制御工程で生成した切替信号により遅延特性が可変設定される、上記調整信号を遅延して上記駆動部に供給させる遅延工程と
を有したことを特徴とする光源制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−73803(P2013−73803A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212383(P2011−212383)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】