説明

光源装置および画像表示装置

【課題】励起光の照射により蛍光体層から発光される蛍光を、小型で簡素な光学系により、高い効率で取り出して伝播させることができる光源装置を提供する。
【解決手段】基材2の表面上に蛍光体を配置して構成された蛍光体層3と、蛍光体を励起する励起光源5とを備えた光源装置。蛍光体層と励起光源との間に励起光源からの励起光の伝播方向に対して傾けてダイクロイックミラー7が配置され、蛍光体層の配置されている面に対して、励起光源から射出された励起光の入射領域と、蛍光体から発光される蛍光の射出領域が同一側の空間に属するように構成され、ダイクロイックミラーは、励起光の主波長においては、P偏光成分の光の50%以上を透過し、S偏光成分の光の50%以上を反射する分光特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光により蛍光体から発光される蛍光を用いた光源装置、特に画像表示装置において使用する赤色、緑色、青色などの可視光を射出する光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、様々な映像等をスクリーンに拡大投影する画像表示装置としてのプロジェクターが広く普及している。プロジェクターは、光源から射出された光をデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)、あるいは、液晶表示素子といった空間光変調素子に集光させ、映像信号によって変調された空間光変調素子からの射出光をスクリーン上にカラー映像として表示させるものである。
【0003】
プロジェクターにより明るくて大画面の映像を得るために、従来、高輝度の高圧水銀ランプが光源として使用されてきた。しかし、高圧水銀ランプを光源とした場合、光源の寿命が短く、メンテナンスが煩雑になる、といった問題点がある。
【0004】
これらの問題点を解決するために、高圧水銀ランプに代えて、レーザーやLEDなどの固体光源を用いた光源装置を画像表示装置に用いることが検討されている。レーザー光源は、高圧水銀ランプに比べて寿命が長く、また、コヒーレント光であるため、指向性が高く、光利用効率も高い。さらに、その単色性により広い色再現範囲を確保できる。
【0005】
しかしながら、レーザー光はその干渉性の高さゆえに、スペックルノイズが生じて画質が劣化するという問題点がある。特に、人間の目の視感度が高い緑色〜黄色の波長域のレーザー光では、スペックルノイズによる画質の低下が大きな問題である。また、LED光源は、上述のようなスペックルノイズはあまり問題とならないが、光源の発光面積が大きくて光密度が低いために、高輝度の画像表示装置を得ることが困難であった。
【0006】
一方、レーザーやLED以外の固体光源として、レーザーやLEDの光源を励起源として蛍光体からの発光を用いる光源装置を構成すること、そして、その光源装置を画像表示装置に用いることが検討されている。蛍光体による光源装置は、高密度に集光可能なレーザー光源を励起源として用いることで、発光面積の小さい光源を得ることができる。また、レーザー光源を励起源として用いたとしても、波長変換して得られる蛍光そのものはインコヒーレントな光であるため、スペックルノイズが生じない。
【0007】
そのような、蛍光体を利用した光源装置が、例えば、特許文献1、2に開示されている。これらの特許文献に開示された装置は、円板状の透明基材上に蛍光体層を配置し、その蛍光体層に励起光を照射し、蛍光体が配置された基板から見て、励起光源と反対側の空間に蛍光を取り出す構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−341105号公報
【特許文献1】特開2009−277516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、蛍光体層からの蛍光は、蛍光体が配置された基板から見て、励起光源と同一側の空間に多く放出されるので、上記従来例の構成では、高効率の光源装置を得難いという問題点がある。
【0010】
これに対して、励起光源と同一側の空間に蛍光を取り出すように、例えば図10に示すように光源装置を構成とすることが考えられる。この光源装置において、基材100は、その片側の表面に、励起光の照射により蛍光を発する蛍光体層101を有する。基材100は円形状であり、回転装置102によって回転可能となっている。励起光源103は、励起光を発光する複数個のレーザーダイオードにより構成されている。レーザーダイオードは、波長約445nm付近で発振する青色レーザーダイオードである。
【0011】
励起光源103から発せられた励起光は、コリメートレンズアレイ104によってコリメートされた後、ダイクロイックミラー105に入射する。ダイクロイックミラー105は、励起光源103からの励起光を透過させ、励起光の照射により蛍光体層101から発生した蛍光を反射するように構成される。従って、ダイクロイックミラー105を通過した励起光は、集光レンズ106によって蛍光体層101上に集光される。
【0012】
蛍光体層101に照射される励起光の一部は、蛍光へと波長変換されて、基材100から見て、両側の空間に放出される。基材100から見て励起光源103と同一側の空間に放出された蛍光は、集光レンズ106によってコリメートされ、ダイクロイックミラー105によって反射され、さらに、ダイクロイックミラー110を通過して光源装置からの出力光として射出される。一方、波長変換されなかった励起光の一部は、基材100を透過して励起光源103と反対側の空間に至り、集光レンズ107によってコリメートされ、反射ミラー108、109によって反射され、さらに、ダイクロイックミラー110によって反射されて、出力光として射出される。
【0013】
このようにして、基材100から見て励起光源103と同一側の空間に蛍光を取り出す構成とすることにより、蛍光の取り出し効率を高くすることができる。一方、この光源装置は、画像表示装置に適用することを目的としているため、赤色、緑色、青色の3色の色域の光を出射するように、励起光も取り出して青色光として利用するように構成されている。すなわち、波長変換されずに未変換のまま基材100を透過する一部の励起光が、集光レンズ107、反射ミラー108、109、及びダイクロイックミラー110からなる光学系により、出力光として射出される。このように、青色光を伝播させるための専用の光学系を必要としており、煩雑な装置構成となっている。
【0014】
本発明は、上述の実情に鑑みてなされたものであって、励起光の照射により蛍光体層から発光される蛍光を、小型で簡素な光学系により、高い効率で取り出して伝播させることができる光源装置を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、そのような光源装置を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の光源装置は、基材の表面上に蛍光体を配置して構成された蛍光体層と、前記蛍光体を励起する励起光源とを備え、前記蛍光体層と前記励起光源との間に、前記励起光源からの励起光の伝播方向に対して傾けてダイクロイックミラーが配置され、前記蛍光体層の配置されている面に対して、前記励起光源から射出された励起光の入射領域と、前記蛍光体から発光される蛍光の射出領域が同一側の空間に属するように構成され、前記ダイクロイックミラーは、前記励起光の主波長においては、P偏光成分の光の50%以上を透過し、S偏光成分の光の50%以上を反射する分光特性を有することを特徴とする。
【0017】
ここで、蛍光体層の配置されている面に対して、励起光源から射出された励起光の入射領域と、蛍光体から発光される蛍光の射出領域が同一側の空間に属するとは、以下のように定義される。
【0018】
xyz直交座標系において、z=0の面上のx=y=0の原点を含む領域に蛍光体層が配置され、z>0の領域に励起光源が配置され、x=y=z=0の点に向かって励起光が照射されるものとする。このとき、励起光源から射出される励起光がz>0の領域から蛍光体層に入射すること、そして、蛍光体から発光される蛍光がz>0の領域に取り出されて射出されることが、上記記載の定義である。励起光源のxy座標については特に制限されない。
【0019】
z=0の平面上に蛍光体層を配置し、x=y=0の点にz>0の方向から励起光が照射された場合、蛍光体から発される蛍光の強度は、+z軸方向と−z軸方向にピークを有するランバーシアンに近い配光分布となるが、z>0の領域に放出される割合の方が多い。従って、本発明のように、励起光の入射領域と、蛍光体から発光される蛍光の射出領域が、蛍光体層の面に対して、同一側の空間に属するように構成することにより、蛍光を高い効率で取り出して伝播させることができる。
【0020】
この場合、蛍光体に入射する励起光と、蛍光体から発される蛍光は、同一空間で進行方向が逆向きとなって伝播するため、蛍光を取り出して光源装置からの出力光とするためにダイクロイックミラーを用いる。ダイクロイックミラーを傾けた構成とすることにより、蛍光体に入射する励起光と、蛍光体から発される蛍光とを、空間的に分離することが可能である。
【0021】
ダイクロイックミラーに対する入射光束の角度は特に限定されないが、簡便な装置構成にするための好適な角度として略45度を挙げることができる。
【0022】
また、励起光におけるP偏光成分あるいはS偏光成分の割合は、一意的にその割合の数値を決めることはできないが、例えば50%以上、望ましくは80%以上である。
【0023】
ダイクロイックミラーは、励起光の主波長において、P偏光成分を透過し、S偏光成分を反射するような特性が選択される。ダイクロイックミラーの分光スペクトル特性をこのように構成することにより、光源装置からの出力光として、蛍光と同じ方向に簡便に励起光成分も取り出すことが可能となる。
【0024】
すなわち、蛍光体層が配置された基板に、P偏光あるいはS偏光に偏った励起光を入射させた場合に、基板で反射された励起光成分の偏光方向が変換されることにより、ダイクロイックミラーによって、蛍光と同じ方向に取り出すことが出来るためである。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、励起光の入射領域と、蛍光体から発光される蛍光の射出領域が、蛍光体層の配置されている面に対して同一側の空間に属するように構成することにより、より多く放出される側の蛍光を有効に利用することが可能となり、小型で明るく効率のよい光源装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態1における光源装置の構成図
【図2A】蛍光強度の角度依存性を説明するための系を示す図
【図2B】蛍光強度の角度依存性を示す図
【図3】実施の形態1の光源装置で使用されるダイクロイックミラーの45度入射における分光スペクトルを示すグラフ
【図4】実施の形態2における光源装置の構成図
【図5】実施の形態2の光源装置で使用されるダイクロイックミラーの45度入射における分光スペクトルを示すグラフ
【図6A】実施の形態3における光源装置の蛍光体層が設けられた基材およびその周辺部の構成を示す側面図
【図6B】同基材の正面図
【図7】実施の形態4における光源装置の構成図
【図8】実施の形態5における画像表示装置の構成図
【図9】実施の形態6における画像表示装置の構成図
【図10】先行例による光源装置の一部を表わす構成図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の光源装置は、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0028】
すなわち、本発明にかかる光源装置は、前記励起光源から前記ダイクロイックミラーに入射する前記励起光の前記ダイクロイックミラーにおける透過方向に前記蛍光体層が配置され、前記ダイクロイックミラーの分光特性は、前記蛍光体から発光される蛍光の主たる波長域において高い反射率を有する構成とすることができる。ここで、高い反射率とは、50%以上、望ましくは80%以上をいう。
【0029】
励起光をP偏光に揃えてダイクロイックミラーに入射させることにより、励起光はダイクロイックミラーを通過する。ダイクロイックミラーを通過した励起光は蛍光体層に照射される。蛍光体層で波長変換されて発生した蛍光は、ダイクロイックミラーで反射されて、光源装置から出力光として取り出される。
【0030】
蛍光体における波長変換では、励起光の一部が波長変換されずに未変換のまま散乱される場合がある。そのような蛍光体における散乱過程では、励起光の偏光方向が乱される。未変換のまま後方散乱光として蛍光体で反射された励起光は、再びダイクロイックミラーに入射するが、S偏光成分が含まれるため、一部の光はダイクロイックミラーで反射されて、蛍光と同じ光路で光源装置からの出力光となる。
【0031】
すなわち、この構成によれば、光源装置からの出力光として、簡便な構成で励起光成分と蛍光成分を同時に含む光を得ることが出来る。
【0032】
また、この構成において、前記励起光源から前記ダイクロイックミラーに入射する前記励起光の前記ダイクロイックミラーにおける反射方向に、前記ダイクロイックミラーによって反射された前記励起光に対する偏光変換素子と、前記偏光変換素子を通過した前記励起光を反射する鏡面とを備えることが好ましい。この場合、前記偏光変換素子は、前記励起光に対する4分の1波長板とすることができる。
【0033】
この構成によれば、ダイクロイックミラーに入射する励起光に一部S偏光成分が含まれていた場合、ダイクロイックミラーで励起光のS偏光成分は反射されるが、4分の1波長板によって構成される偏光変換素子を通過してS偏光成分は円偏光となり、鏡面によって反射されて、再び偏光変換素子を通過して今度はP偏光となる。そして、ダイクロイックミラーに再入射するが、今度はダイクロイックミラーを通過するため、光源装置からの出力光として取り出すことができる。
【0034】
また、本発明にかかる光源装置は、前記励起光源から前記ダイクロイックミラーに入射する前記励起光の前記ダイクロイックミラーにおける反射方向に前記蛍光体層が配置され、前記ダイクロイックミラーの透過スペクトル特性は、前記蛍光体から発光される蛍光の主たる波長域において高い透過率を有する構成とすることができる。ここで、高い透過率とは、50%以上、望ましくは80%以上をいう。
【0035】
励起光をS偏光に揃えてダイクロイックミラーに入射することにより、励起光はダイクロイックミラーで反射される。ダイクロイックミラーで反射された励起光は、蛍光体に照射される。蛍光体で波長変換されて発生した蛍光は、ダイクロイックミラーを透過し、光源装置から出力光として取り出される。
【0036】
一方、未変換のまま後方散乱光として蛍光体で反射された励起光は、再びダイクロイックミラーに入射するが、P偏光成分が含まれるため、一部の光はダイクロイックミラーを透過して、蛍光と同じ光路で光源装置からの出力光となる。
【0037】
すなわち、この構成によれば、光源装置からの出力光として、簡便な構成で励起光成分と蛍光成分を同時に含む光を得ることが出来る。
【0038】
また、この構成において、前記励起光源から前記ダイクロイックミラーに入射する前記励起光の前記ダイクロイックミラーにおける透過方向に、前記ダイクロイックミラーを透過した前記励起光に対する偏光変換素子と、前記偏光変換素子を通過した前記励起光を反射する鏡面とを備えることが好ましい。この場合、前記偏光変換素子は、前記励起光に対する4分の1波長板とすることができる。
【0039】
この構成によれば、ダイクロイックミラーに入射する励起光に一部P偏光成分が含まれていた場合、ダイクロイックミラーを励起光のP偏光成分は透過するが、4分の1波長板によって構成される偏光変換素子を通過してP偏光成分は円偏光となり、鏡面によって反射されて、再び偏光変換素子を通過して今度はS偏光となる。そして、ダイクロイックミラーに再入射するが、今度はダイクロイックミラーで反射されるため、光源装置からの出力光として取り出すことができる。
【0040】
また、前記蛍光体層と前記ダイクロイックミラーとの間に、前記励起光に対する偏光変換素子が配置されていることが好ましい。前記偏光変換素子は、前記励起光に対する4分の1波長板とすることができる。
【0041】
この構成によれば、未変換のまま後方散乱光として蛍光体で反射された励起光が、光源装置から出力光として取り出される効率を向上させることができる。
【0042】
また、前記蛍光体層と前記ダイクロイックミラーの間に、集光光学系が配置されていることが好ましい。ダイクロイックミラーの分光スペクトル特性は角度依存性を有するため、ダイクロイックミラーに入射する励起光は平行な光束であることが望ましいからである。一方、薄膜上の蛍光体層から発光される蛍光は、ランバーシアンに近い広範囲の配光分布である。そのため、蛍光の取り出し効率を上げるためには、蛍光体上に照射される励起光のスポットは小さい方が望ましい。そこで、ダイクロイックミラーと蛍光体の間に、集光光学系が配置されていることが好適である。
【0043】
また、前記励起光源は、青色の波長域で発振するレーザー光源とすることができる。この場合、前記蛍光体は、前記励起光源で励起されたときに、赤色、黄色、あるいは緑色の波長域の光を主たる成分として蛍光を発光する構成とすることができる。
【0044】
この構成によれば、光源装置からの出力光として、青色光、緑色光、黄色光、赤色光などの可視光を得ることができ、画像表示装置などの照明光として好適である。
【0045】
また、前記基材における前記蛍光体層が配置されている面は、蛍光を反射する鏡面とすることが好ましい。このような構成にすることによって、蛍光の取り出し効率を向上させることができるため、高輝度で高効率の光源装置を得ることができる。
【0046】
また、前記基材を回転制御可能とすることが好ましい。蛍光体による波長変換では、励起光波長と蛍光波長の差に相当する熱エネルギーが発生するため、励起光が照射される蛍光体層の表面は温度が上昇する。一方、蛍光体温度が高くなるほど、蛍光体による波長変換効率が低下することが一般的に知られている。そこで、蛍光体層が設けられた基材を回転制御することによって、基材中の励起光が照射される位置が時間的に変化するため、蛍光体の温度上昇を抑制することができ、高効率の光源装置を得ることが可能となる。
【0047】
また、前記基材における前記蛍光体層が配置されている面を、空間的に2つ以上のセグメントに分割されている構成とすることができる。この場合、前記セグメントのうち、少なくとも1つのセグメントは、前記基材表面に前記蛍光体層が配置されず、励起光を反射する鏡面である構成とすることができる。
【0048】
ここで言う2つ以上のセグメントに分割とは、回転制御される基材における蛍光体層が配置されている面が、空間的に2つ以上の特性の異なるセグメントに分割されており、回転制御に応じて、励起光のスポットが照射される箇所の状態が、分割されたセグメント数の分だけ周期的に切り替わることを意味する。
【0049】
この構成によれば、スペクトル特性の異なる複数の光を時間的に切り替えて光源装置から出力することが可能となる。特に、1つのセグメントについては基材表面が励起光を反射する鏡面とすることにより、励起光そのものを光源装置からの出力光として高効率で取り出すことが可能になる。
【0050】
また、光源装置と、空間光変調素子と、前記光源装置からの光を前記空間光変調素子へ導光する照明光学系と、前記空間光変調素子から射出された画像をスクリーンに投射する投射光学系とを備え、前記光源装置が、上記いずれか構成の光源装置である画像表示装置を構成することができる。
【0051】
以下、本発明の各実施の形態における光源装置、及びそれを用いた画像表示装置について、図面を参照して説明する。
【0052】
(実施の形態1)
実施の形態1における光源装置1の構成を図1に示す。光源装置1の出力光は、緑色〜黄色の光を主成分として青色光成分も含み、画像表示装置などの照明光として使用することが可能である。
【0053】
基材2は平行平板ガラスであり、その片側の表面に可視光を高効率で反射するダイクロイックコート2aが施されており、さらにその上に、主として緑色の蛍光を発する蛍光体が薄膜状に塗布されて蛍光体層3を形成している。図1中に示したようにxyz座標軸をとると、蛍光体層3が形成されている基材2はxy面において円形状となっており、基材2は回転装置4によってz軸を中心として回転可能となっている。
【0054】
励起光源5は、高輝度の光源装置を実現するために、複数個のレーザーダイオード5aにより構成されている。レーザーダイオード5aは、波長約445nm付近で発振する青色レーザーダイオードである。レーザーの駆動方式としては、一定電流値で駆動する連続発振を使用することができる。本実施の形態では、5×5のマトリクス状に合計25個のレーザーダイオード5aが配置されているが、その数は特に限定されるものではなく、取り出したい蛍光の強度に応じて適宜設定される。また、青色のレーザー光源としては、当該波長域で直接発振するレーザーダイオード、あるいは、赤外レーザー光の第2高調波発生による青色レーザー光源などを使用することが可能である。
【0055】
励起光源5から発せられた励起光は、コリメートレンズアレイ6によってコリメートされる。コリメートレンズアレイ6の各レンズセルに対して、1つのレーザーダイオード5aが配置されている。すなわち、コリメートレンズアレイ6は25個のレンズセルにより構成されている。コリメートレンズとしては、レンズアレイに限られず、それぞれのレーザーダイオード5aに対して独立したコリメートレンズを使用してもよい。コリメートレンズアレイ6を通過した励起光は、ダイクロイックミラー7に入射する。
【0056】
レーザーダイオード5aは全て、その出射光の偏光方向が、図1に示すP偏光の直線偏光状態となるように調整されている。ダイクロイックミラー7は、励起光源5からの励起光束の光軸に対して、略45度傾けて配置されており、P偏光に調整されている励起光源5からの青色レーザー光は、ダイクロイックミラー7を通過する。ダイクロイックミラー7の作用の詳細については、後述する。ダイクロイックミラー7を通過した励起光は、4分の1波長板8によって円偏光へと変換され、集光レンズ9によって蛍光体層3上に集光される。
【0057】
蛍光体層3に照射される励起光は、その一部が緑色の蛍光へと波長変換される。蛍光による発光では、本質的には全方向に均一に光が放出される。但し、蛍光体の粉末が基板2上に薄膜状に配置されているため、散乱による影響を受けて、ランバーシアンに近い配光分布が形成される。
【0058】
図2A、図2Bを参照して、レーザー光で励起したときに放出される蛍光の配光分布の一例について説明する。図2Aに示すように、無コートの透明ガラス基板10上に粉末状の緑色蛍光体11を塗布し、レーザー光12で励起したときに放出される蛍光13は、図2Bに示すような配光分布を持つ。図2Bは、蛍光強度と散乱角の関係(蛍光強度の角度依存性)を示す。励起光であるレーザー光12がガラス基板10に垂直な方向から入射する場合、レーザー光12と蛍光13のなす角度をθとすると、0度≦θ≦90度の蛍光が後方成分であり、90度≦θ≦180度の蛍光が前方成分である。
【0059】
図2Bより、蛍光13には前方と後方の両成分が含まれることが分かるが、後方成分の強度の方が相対的に大きい。従って、効率的に蛍光13を取り出すためには、蛍光成分を後方側のみに集めることが望ましい。そこで、本実施の形態では、後方側のみに蛍光13を集めるために、図1に示したように、蛍光体層3から見て励起光源5の反対側となるように、蛍光を反射するダイクロイックコート2aを基材2上に配置する。
【0060】
蛍光体層3からz≦0の空間に発される光はダイクロイックコート2a面で反射される。結果的に緑色の蛍光は、z≧0の領域の空間のみに存在し、+z軸方向で最も強度が大きくなるようなランバーシアンに近い配光分布を持つ。
【0061】
励起光に対する集光レンズ9は、蛍光体層3から放出される緑色蛍光に対しては、コリメートレンズとして作用する。集光レンズ9によるコリメート光学系は、図2中の散乱角度θを用いれば、少なくとも0度≦θ≦60度の角度に放出される蛍光を効率的に取り込むことができる光学系であることが好ましい。さらに好ましくは、より高効率の光源装置とするために、0度≦θ≦80度程度の蛍光までを取り込める光学系とする。
【0062】
集光レンズ9によって有効に取り出され、コリメートされた緑色蛍光は、4分の1波長板8を通過した後、ダイクロイックミラー7によって反射され、光源装置1からの出力光として射出される。
【0063】
上述したダイクロイックミラー7の作用は、以下のような特性に基づく。すなわち、ダイクロイックミラー7は、励起光源5からの励起光束の光軸に対して、略45度傾けて配置されているので、励起光源5の波長帯においては、P偏光に対しては高透過、S偏光に対しては高反射となるような特性を有する。すなわち、ダイクロイックミラー7は、励起光の主波長においては、P偏光成分の光の50%以上を透過し、S偏光成分の光の50%以上を反射する分光特性を有する。一方、蛍光体層3からの蛍光の波長帯においては、ダイクロイックミラー7は、P偏光、S偏光にかかわらず高反射となるような特性を有する。
【0064】
入射角度が45度の場合のダイクロイックミラー7の分光スペクトルの例を図3に示す。2つのプロットはそれぞれ、実線がS偏光の透過率、破線がP偏光の透過率を示す。ダイクロイックミラー7は、紫色〜青色の波長帯域において透過率が90%以上と高透過であり、青色〜赤色の波長帯域において反射率が90%以上と高反射である。透過率が50%になるカットオフ波長は、S偏光が434nm、P偏光が456nmであり、S偏光に比べて、P偏光の方が約22nm長い。これにより、上述のとおり、P偏光に調整されている励起光源5からの青色レーザー光は、ダイクロイックミラー7を通過する。これに対して、蛍光体層3から放出される緑色蛍光は、ダイクロイックミラー7により反射される。
【0065】
蛍光体による波長変換では、全ての励起光が蛍光へと変換されるわけではなく、一部の励起光は未変換光として残留する。本実施の形態でz≧0の領域の空間からz=0の面内にある蛍光体層3に励起光が入射した場合、未変換の励起光は蛍光体層3によって前方および後方に散乱される。z≦0の空間に放出される前方散乱光は、ダイクロイックコート2a面で反射され、結果的にz≧0の後方散乱成分に集約され、集光レンズ9へと再入射する。
【0066】
集光レンズ9によって有効に取り出され、コリメートされた未変換の励起光は、4分の1波長板8を通過した後でダイクロイックミラー7に入射する。
【0067】
後方散乱光として取り出される未変換の励起光は、蛍光体層3で散乱されているために、蛍光体層3への入射光に対して偏光状態は乱されている。しかし、完全にランダム偏光になっているわけではなく、蛍光体層3への入射時の偏光がある程度保存されている。そのため、4分の1波長板8を往復で2回通過してダイクロイックミラー7へと再入射する残留励起光の偏光成分は、P偏光成分に比べて、S偏光成分の割合の方が多い。そこで、残留励起光のうち半分以上の光がダイクロイックミラー7にて反射され、光源装置1からの出力光として取り出すことが可能である。このように、4分の1波長板8を挿入することにより、簡便な方法で残留励起光の取り出し効率を向上させることが可能である。
【0068】
上述の説明では、基材2の材料をガラスとしたが、蛍光体は温度が高くなると効率が低下する特性があるため、基材は熱伝導率が高い材料が好ましい。例えば、ガラスではなく、アルミニウム、銅、および、それらを主成分とした金属基材の表面を鏡面とし、その上に蛍光体を塗布してもよい。金属基材表面を高精度に切削研磨することにより、鏡面状態の表面仕上げを実現できるが、蒸着や鍍金などの方法によって金属基材表面上に金属の薄膜層を配置して、鏡面仕上げを実現してもよい。
【0069】
基材2を回転させることによって、励起光が照射されるスポットを時間的に変化させることができるため、蛍光体の温度上昇を抑制することが可能である。その回転数は特に限定されるものではないが、例えば3000rpm以上20000rpm以下の回転数とすればよい。
【0070】
蛍光体層が配置された円板状の基材2は回転制御されるが、蛍光体層3は基材2の円周全面に形成されており、z軸に沿って基材2が回転しても、常に蛍光体層3上に励起光が照射されるようになっている。
【0071】
複数のレーザーダイオード5aから発せられる全てのビームが、蛍光体層3上で、一定の大きさ以下のスポット径の中に存在するように、コリメートレンズアレイ6と集光レンズ9のパワーが調整されている。例えば、蛍光体層3上での25個の励起光のビームの集合体が、φ2mm程度のスポット径になるように調整する。図1では、集光レンズ9は1群2枚のレンズにより構成されているが、1枚のレンズによって構成されても、あるいは3枚以上のレンズによって構成されてもよい。
【0072】
蛍光体層3の作成方法は特に限定されないが、沈降法や印刷法、モールド法などを用いることができる。蛍光体の種類は特に限定されるものではないが、青色の励起光を効率的に吸収して蛍光を効率的に発光するとともに、温度消光に対する耐性が高い蛍光体が望ましい。緑色蛍光体として、本実施の形態に基づく一実施例では、Y3Al512:Ce3+を使用した。その他、波長445nmの青色レーザーで励起して、緑色の蛍光を得ることができるその他の蛍光体としては、(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+、SrSi222:Eu2+、Ba3Si6122:Eu2+、Sr2Al3Si1323:Eu2+、β−SiAlON:Eu2+などを用いることができる。
【0073】
ただし、上記の蛍光体は上述の波長域の光を得るための蛍光体の一例であり、本発明に適用できる蛍光体がこれに限定されるものではない。
【0074】
蛍光体層3の適切な厚さも、塗布される蛍光体の種類や塗布の方法によって変化するので特に限定されるものではない。但し、その平均厚さは、蛍光体粉末の平均粒径の1倍以上であることが好ましい。蛍光体層3の厚さが小さすぎると、波長変換に寄与する蛍光体の数が不足するため、高い波長変換効率を得ることが難しい。
【0075】
また、励起光の波長について、445nm付近の青色レーザーに限定されるものではない。但し、励起光そのものを青色の照明光として使用する場合の演色性と、蛍光体の励起効率を考慮すると、励起光の波長は、440〜470nmであることが好ましい。
【0076】
本実施の形態では、励起光源として青色のレーザー光を使用し、緑色の蛍光を出力光として取り出す場合について説明したが、励起光と蛍光の波長帯は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選ぶことが可能である。
【0077】
以上のように、本実施の形態によれば、簡素な構成により高効率で可視光を取り出すことが可能な小型の光源装置が得られる。
【0078】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2における光源装置14の構成を示す。光源装置14の出力光は、緑色〜黄色の光を主成分として青色光成分も含み、画像表示装置などの照明光として使用することが可能である。光源装置14の構成要素は、概ね実施の形態1のそれと類似しているが、ダイクロイックミラー15の分光スペクトル特性が異なっている。それに応じて、素子の配置が異なっている。以下の説明では、実施の形態1の場合と同一の要素については同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを避ける。
【0079】
本実施の形態で適用される励起光源16および蛍光体層3は、実施の形態1のそれと同様である。ただし、励起光源16からの出射光はS偏光となるように調整されている。ダイクロイックミラー15は、励起光束の光軸に対して略45度傾けて配置されている。ダイクロイックミラー15に入射した励起光は、ダイクロイックミラー15により反射されて蛍光体層3へと集光される。一方、蛍光体層3から放出される蛍光は、ダイクロイックミラー15を透過して光源装置14からの出力光となる。
【0080】
本実施の形態で適用されるダイクロイックミラー15の分光スペクトルを図5に示す。2つのプロットはそれぞれ、実線がS偏光の透過率、破線がP偏光の透過率を示す。励起光源16の波長帯においては、P偏光では高透過、S偏光では高反射であり、蛍光体層3からの蛍光の波長帯においては、P偏光、S偏光にかかわらず高透過である。ダイクロイックミラー15は、紫色〜青色の波長帯域において反射率が90%以上と高反射であり、青色〜赤色の波長帯域において透過率が90%以上と高透過である。透過率が50%になるカットオフ波長は、S偏光が456nm、P偏光が434nmであり、S偏光に比べて、P偏光の方が約22nm短い。
【0081】
このような構成を採用することにより、簡便な方法で高効率の可視光を取り出せる小型の光源装置を提供することが可能である。本実施の形態で得られる光源装置からの出力光は、実施の形態1による出力光と同等であり、素子の配置における制約などの観点から、より適切な形態を選ぶことができる。
【0082】
(実施の形態3)
実施の形態3における光源装置について、図6A、6Bを参照して説明する。本実施の形態は、基材上に形成された蛍光体層の部分以外は実施の形態1の構成と等価であるため、光源装置全体の構成については、図示を省略する。また、同一の要素についての説明を省略する。本実施の形態の光源装置からの出力光は、緑色〜黄色光と赤色光を主成分として青色光成分も含み、画像表示装置などの照明光として使用することが可能である。
【0083】
図6Aに示すように、基材2、ダイクロイックコート2a及び回転装置4からなる構成は実施の形態1と同様であるが、ダイクロイックコート2a上に形成された蛍光体層17の構成が実施の形態1はと異なる。すなわち、本実施の形態では、図6Bに示すように、円板状の基材2上は円周上に3つのセグメント17a、17b、17cに分割されており、そのうち2つのセグメントに蛍光体層が形成されている。セグメント17aには赤色蛍光体が塗布されており、セグメント17bには緑色蛍光体が塗布されている。セグメント17cには蛍光体が塗布されておらず、励起光に対する反射コートが施された鏡面となっている。
【0084】
このような構成とすることで、基材2をz軸に沿って回転させたときに、励起光が照射されるスポットの位置が、時間的に3つのセグメントに亘って変化する。励起光の集光スポットに対してセグメント17aが面するときは、青色励起光は赤色蛍光体によって赤色光へと変換される。同様に、励起光の集光スポットに対してセグメント17bが面するときは、青色励起光は緑色蛍光体によって緑色光へと変換される。
【0085】
一方、励起光の集光スポットに対してセグメント17cが面するときは、青色励起光は波長変換されずにそのまま基材2表面で反射され、集光レンズ9(図1参照)を介した後、再び4分の1波長板8を通過して、S偏光の直線偏光へと変換される。さらに、ダイクロイックミラー7によって反射されて光源装置1から射出される。蛍光体が塗布された2つのセグメント17a、17bでは、波長変換された緑色および赤色の蛍光は、ダイクロイックミラー7によって同じく反射されて光源装置から射出される。そのため、時間平均では、赤色、緑色、青色を加法混色した出力光を光源装置から得ることが可能である。
【0086】
波長445nmの青色レーザーで励起して、赤色の蛍光を得ることができる蛍光体としては、CaAlSiN3:Eu2+、Sr2Si58:Eu2+、SrAlSi47:Eu2+などが挙げられる。但し、これらの蛍光体は上述の波長域の光を得るための蛍光体の一例であり、本発明に適用できる蛍光体がこれに限定されるものではない。
【0087】
励起光から各蛍光への波長変換効率の値をもとに、3つのセグメント17a、17b、17cの適切な分割比(分割角度)を選ぶことで、赤色、緑色、青色の光の強度比が調整され、演色性に優れた白色光を得ることができる。これは、プロジェクターなどの画像表示装置用の光源として好適である。
【0088】
さらに、本実施の形態に準じた構成により演色性に優れた出力光を得るために、基材2における励起光の照射面を4つ以上のセグメントに分割してもよい。例えば、4つのセグメントを、赤色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、蛍光体が塗布されていない面によって光源装置の基材を構成することができる。
【0089】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態4における光源装置18の構成を示す。本実施の形態は、実施の形態1の構成に対して、4分の1波長板19と反射ミラー20が追加された構成となっている。実施の形態1と同一の要素については、同一の参照番号を付して説明の繰り返しを省略する。
【0090】
本実施の形態では、励起光源21から射出される波長445nmのレーザーによる励起光は、主たる偏光成分がP偏光であるが、若干S偏光成分を含むように構成されている。そのため、ダイクロイックミラー7に入射された励起光は、大部分がダイクロイックミラー7を通過するが、S偏光成分である一部の励起光はダイクロイックミラー7で反射される。
【0091】
ダイクロイックミラー7で反射された励起光は、4分の1波長板19によって円偏光へと変換された後、入射角0度(垂直入射)となるように配置された反射ミラー20で反射され、再び4分の1波長板19を逆向きに通過してP偏光へと偏光変換され、ダイクロイックミラー7に再入射する。P偏光へと偏光変換されている励起光は、ダイクロイックミラー7を今度は通過するため、蛍光体層3から放出される蛍光と空間的に同一の光路となって、光源装置18から出力される。
【0092】
本実施の形態のような構成を採用することによって、励起光にS偏光成分が混じっていた場合にも、効率的に励起光を光源装置から取り出して出力光の一部とすることが可能となる。
【0093】
同様に、実施の形態2に示した装置構成においても、励起光に対するダイクロイックミラー15の透過方向に4分の1波長板と反射ミラーを追加することにより、本実施の形態で示した構成と本質的に等価な光源装置を提供することが可能である。
【0094】
(実施の形態5)
図8は、実施の形態5における画像表示装置の構成を示す。この画像表示装置は、実施の形態3に示した構成を有する光源装置1aを用いて構成されている。
【0095】
光源装置1aからの出力光は、集光レンズ22によって集光され、ロッドインテグレータ23に入射する。ロッドインテグレータ23の側面にて光が全反射され、ロッドインテグレータからの出射光としては、照度が均一化された出力光を得ることができる。
【0096】
ロッドインテグレータ23からの射出された光は、リレーレンズ24、フィールドレンズ25、全反射プリズム26を経て、画像表示素子であるDMD27に入射する。ロッドインテグレータ23の出射面形状がDMD27上に転写され効率よく均一に集光できるように、リレー光学系が構成されている。
【0097】
DMD27は微小ミラーを2次限的に配置して構成され、各ミラーは、赤、緑、青の映像入力信号に応じてその傾きを変化させることで、時間的に変調された信号光を形成する。DMD27の駆動は、光源装置1aの基材2の回転による蛍光体層17のセグメント17a、17b、17c(図6B参照)の回動と同期するように制御される。
【0098】
すなわち、例えばDMD27が赤の映像信号によって駆動されているときには、光源装置1aでは、セグメント17aに励起光が照射されて赤色蛍光体からの赤色光が出射されるように、回転装置4のタイミングが制御される。同様に、DMD27が緑の映像信号によって駆動されるときはセグメント17bに、DMD27が青の映像信号によって駆動されるときはセグメント17cに、それぞれ励起光が照射されるように、回転装置4のタイミングが制御される。DMD27によって変調された信号光は、投射レンズ28によって図示されていないスクリーンへと投射される。
【0099】
本実施の形態で示した画像表示装置を構成することにより、小型で効率のよい画像表示装置を提供することができる。
【0100】
(実施の形態6)
図9は、実施の形態6における画像表示装置の構成を示す。この画像表示装置は、実施の形態1における光源装置1を用いて構成されている。
【0101】
光源装置1からの出力光は、第1のインテグレータレンズアレイ29、第2のインテグレータレンズアレイ30、偏光変換素子31、集光レンズ32を通過した後、波長域毎に空間的に分離される。
【0102】
すなわち、ダイクロイックミラー33は、青色光を反射し、緑色〜赤色光を透過する特性を有する。ダイクロイックミラー33で反射された青色光は、リレーレンズ34、反射ミラー35、フィールドレンズ42、入射側偏光板45を経て、青色用液晶表示素子48に入射する。
【0103】
ダイクロイックミラー33、リレーレンズ36を通過した光のうち、緑色蛍光は、ダイクロイックミラー37によって反射され、フィールドレンズ43と入射側偏光板46を経て緑色用液晶表示素子49に入射する。
【0104】
一方、ダイクロイックミラー37を透過した赤色光は、リレーレンズ38、40、および、反射ミラー39、41、フィールドレンズ44、入射側偏光板47を経て赤色用液晶表示素子50に入射する。
【0105】
これら液晶表示素子48、49、50によって入力映像信号に応じて変調された信号光は、出射側偏光板51、52、53を通過した後、クロスダイクロイックプリズム54に入射する。クロスダイクロイックプリズム54によって赤色、緑色、青色の3色の変調信号光は空間的に合波され、投射レンズ55によって図示されていないスクリーンへと投射される。
【0106】
本実施の形態で示した画像表示装置を構成することにより、小型で効率のよい画像表示装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によれば、励起光を照射することにより蛍光体層から発光される蛍光を、小型で簡素な光学系により、高い効率で取り出して伝播させることができるので、画像表示装置などに用いる光源装置、及び、当該光源装置を用いた画像表示装置に有用である。
【符号の説明】
【0108】
1、1a、14、18 光源装置
2、100 基材
2a ダイクロイックコート
3、11、17、101 蛍光体層
4、102 回転装置
5、16、21、103 励起光源
5a レーザーダイオード
6、104 コリメートレンズアレイ
7、15、33、37、105、110 ダイクロイックミラー
8、19 4分の1波長板
9、22、32、106 集光レンズ
10 透明ガラス基板
12 レーザー光(励起光)
13 蛍光
17a 赤色蛍光体のセグメント
17b 緑色蛍光体のセグメント
17c 鏡面のセグメント
20、35、39、41、108、109 反射ミラー
23 ロッドインテグレータ
24、34、36、38、40 リレーレンズ
25、42、43、44 フィールドレンズ
26 全反射プリズム
27 DMD
28、55 投射レンズ
29 第1のインテグレータレンズアレイ
30 第2のインテグレータレンズアレイ
31 偏光変換素子
45、46、47 入射側偏光板
48 青色用液晶表示素子
49 緑色用液晶表示素子
50 赤色用液晶表示素子
51、52、53 出射側偏光板
54 クロスダイクロイックプリズム
107 コリメートレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面上に蛍光体を配置して構成された蛍光体層と、前記蛍光体を励起する励起光源とを備えた光源装置であって、
前記蛍光体層と前記励起光源との間に、前記励起光源からの励起光の伝播方向に対して傾けてダイクロイックミラーが配置され、
前記蛍光体層の配置されている面に対して、前記励起光源から射出された励起光の入射領域と、前記蛍光体から発光される蛍光の射出領域が同一側の空間に属するように構成され、
前記ダイクロイックミラーは、前記励起光の主波長においては、P偏光成分の光の50%以上を透過し、S偏光成分の光の50%以上を反射する分光特性を有することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記励起光源から前記ダイクロイックミラーに入射する前記励起光の前記ダイクロイックミラーにおける透過方向に前記蛍光体層が配置され、
前記ダイクロイックミラーの分光特性は、前記蛍光体から発光される蛍光の主たる波長域において高い反射率を有する請求項1記載の光源装置。
【請求項3】
前記励起光源から前記ダイクロイックミラーに入射する前記励起光の前記ダイクロイックミラーにおける反射方向に、前記ダイクロイックミラーによって反射された前記励起光に対する偏光変換素子と、前記偏光変換素子を通過した前記励起光を反射する鏡面とを備えた請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記励起光源から前記ダイクロイックミラーに入射する前記励起光の前記ダイクロイックミラーにおける反射方向に前記蛍光体層が配置され、
前記ダイクロイックミラーの透過スペクトル特性は、前記蛍光体から発光される蛍光の主たる波長域において高い透過率を有する請求項1記載の光源装置。
【請求項5】
前記励起光源から前記ダイクロイックミラーに入射する前記励起光の前記ダイクロイックミラーにおける透過方向に、前記ダイクロイックミラーを透過した前記励起光に対する偏光変換素子と、前記偏光変換素子を通過した前記励起光を反射する鏡面とを備えた請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記偏光変換素子は、前記励起光に対する4分の1波長板である請求項3または5記載の光源装置。
【請求項7】
前記蛍光体層と前記ダイクロイックミラーとの間に、前記励起光に対する偏光変換素子が配置されている請求項1から6のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記偏光変換素子は前記励起光に対する4分の1波長板である請求項7記載の光源装置。
【請求項9】
前記蛍光体層と前記ダイクロイックミラーの間に、集光光学系が配置されている請求項1から8のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項10】
前記励起光源は、青色の波長域で発振するレーザー光源である請求項1から9のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項11】
前記蛍光体は、前記励起光源で励起されたときに、赤色、黄色、あるいは緑色の波長域の光を主たる成分として蛍光を発光する請求項1から10のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項12】
前記基材における前記蛍光体層が配置されている面は、蛍光を反射する鏡面である請求項1から11のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項13】
前記基材は回転制御可能である請求項1から12のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項14】
前記基材における前記蛍光体層が配置されている面は、空間的に2つ以上のセグメントに分割されている請求項13記載の光源装置。
【請求項15】
前記セグメントのうち、少なくとも1つのセグメントは、前記基材表面に前記蛍光体層が配置されず、励起光を反射する鏡面である請求項14記載の光源装置。
【請求項16】
光源装置と、空間光変調素子と、前記光源装置からの光を前記空間光変調素子へ導光する照明光学系と、前記空間光変調素子から射出された画像をスクリーンに投射する投射光学系とを備え、
前記光源装置が、請求項1から15のいずれか1項に記載の光源装置であることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−108486(P2012−108486A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228088(P2011−228088)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】