説明

光源装置及びプロジェクタ

【課題】 輝度を向上させることのできる光源装置と、この光源装置を備えたプロジェクタを提供する。
【解決手段】 本発明のプロジェクタは、光源装置63や表示素子、プロジェクタ制御手段等を備え、この光源装置63は、回転制御可能な透明基材に複数のセグメント領域を有し、透明基材のセグメント領域の少なくとも一つに励起光を受けて所定の波長帯域光を発する蛍光体層が形成され、蛍光体層が形成されないセグメント領域が光を透過させる透過部とされた蛍光ホイール71と、可視光領域の励起光を蛍光体に照射する第一光源72と、蛍光体層から射出される蛍光光及び第一光源72から射出される励起光と異なる波長帯域光を発する第二光源82と、蛍光ホイール71からの光及び第二光源82からの光を同一光路上に集光させる集光光学系と、第一光源72及び第二光源82の発光を制御する光源制御手段と、備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置と、この光源装置を備えたプロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、パーソナルコンピュータの画面やビデオ画像、更にメモリカード等に記憶されている画像データによる画像等をスクリーンに投影する画像投影装置としてのデータプロジェクタが多用されている。このプロジェクタは、光源から射出された光をDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)と呼ばれるマイクロミラー表示素子、又は、液晶板に集光させ、スクリーン上にカラー画像を表示させるものである。
【0003】
このようなプロジェクタにおいて、従来は高輝度の放電ランプを光源とするものが主流であったが、近年、光源として発光ダイオードやレーザーダイオード、或いは、有機EL、蛍光体発光等を用いる開発や提案が多々なされている。例えば、特開2004−341105号公報(特許文献1)では、固体光源から射出する励起光としての紫外光を受けて可視光に変換する蛍光体層が配設された円板状の透明基材から成る蛍光ホイールと、固体光源とを有する光源装置についての提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−341105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の提案は、ホイール面に形成された蛍光体層に励起光としての紫外光を照射して赤色、緑色、青色波長帯域の蛍光光を発光させることができるが、赤色蛍光体の発光効率が他の蛍光体の発光効率に比べて低いため、赤色の輝度が不足してしまうといった問題点があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、発光効率の良好な種類の蛍光体を有する蛍光ホイールと、蛍光体を励起させる光源と、発光効率の比較的低い種類の蛍光体に対応する波長帯域光を射出する単色光源と、を備えることで、画面の輝度を向上させることのできる光源装置と、この光源装置を備えたプロジェクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光源装置は、複数のセグメント領域を有し、少なくとも該複数のセグメント領域に、励起光を受けて所定の波長帯域光を発する蛍光体の層と、光を透過させる透過部と、がそれぞれ形成された発光板と、励起光を前記蛍光体に照射する第一光源と、前記蛍光体層から射出される蛍光光及び前記第一光源から射出される励起光と異なる波長帯域光を発する第二光源と、前記発光板から射出される光及び前記第二光源から射出される光を同一光路上に集光させる集光光学系と、前記第一光源及び第二光源の発光を制御する光源制御手段と、備えていることを特徴とする。
【0008】
そして、前記発光板は、回転制御可能な基材からなる蛍光ホイールである。
【0009】
また、前記光源制御手段が、少なくとも一つの隣り合うセグメント領域の境界に前記第一光源からの光が照射されないように、第一光源を消灯させ、第二光源を点灯させるように構成されている。
【0010】
そして、この光源装置は、隣接する二つのセグメント領域を有する基材において、一方のセグメント領域に前記蛍光体層が形成され、他方のセグメント領域が前記透過部とされ、前記光源制御手段が、前記二つのセグメント領域の境界の少なくとも一方において照射領域が二つのセグメント領域に跨るように前記第一光源からの光が照射されることで前記発光板から二色の波長帯域の合成光の射出を防止するように第一光源を消灯させ、第二光源を点灯させるように構成されている。
【0011】
また、前記第一光源は、青色帯域のレーザー発光器である。
【0012】
そして、前記蛍光体は、励起光を受けて少なくとも緑色の波長帯域光を発する蛍光体である。
【0013】
更に、前記発光板の透過部に前記第一光源からの光を拡散させる拡散層が形成されている。
【0014】
また、前記発光板の透過部に、前記第一光源からの励起光を受けて前記蛍光体の層が発する所定の波長帯域光とは異なる波長帯域の光を発する蛍光体層が形成されていることもある。
【0015】
そして、前記第二光源は、赤色帯域の発光ダイオードである。
【0016】
また、前記透明基材における前記蛍光体の層が配置されるセグメント領域の表面には、前記励起光を透過し且つ他の波長帯域光を反射するダイクロイック層が形成されることもある。
【0017】
そして、この光源装置は、前記第一光源の光軸と第二光源の光軸とが交差する位置に、前記発光板からの光を透過させ前記第二光源からの光を反射させる、又は、前記発光板からの光を反射させ前記第二光源からの光を透過させるダイクロイックミラーが配置され、前記第二光源からの光の前記発光板への照射を防止することを特徴とする。
【0018】
更に、前記光源制御手段が、前記第一光源及び第二光源を個別に点灯制御するとともに、前記第一光源からの光を受けて前記発光板から射出される光と、第二光源から射出される光とが所定時間だけ合成されるように前記第一光源及び第二光源を同時に点灯させる制御を可能とする構成とされていることもある。
【0019】
また、本発明の光源装置は、前記第一光源の光軸と第二光源の光軸とが交差する位置に、前記第一光源からの光を透過させ前記第二光源からの光を反射させる、又は、前記第一光源からの光を反射させ前記第二光源からの光を透過させるダイクロイックミラーが配置され、前記第二光源からの光が前記発光板の透過部を透過させるように構成されていることもある。
【0020】
そして、本発明のプロジェクタは、上記の何れかの光源装置と、表示素子と、前記光源装置からの光を前記表示素子に導光する光源側光学系と、前記表示素子から射出された画像をスクリーンに投影する投影側光学系と、前記光源装置や表示素子を制御するプロジェクタ制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、蛍光体を励起させる光源と、発光効率の良好な種類の蛍光体を有する発光板と、発光効率の比較的低い種類の蛍光体を発光板に形成することなく当該低発光効率の蛍光体に対応する波長帯域光を射出する光源と、を備えることで、画面の輝度を向上させることのできる光源装置と、この光源装置を備えたプロジェクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係る光源装置を備えたプロジェクタを示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係る光源装置を備えたプロジェクタの機能回路ブロックを示す図である。
【図3】本発明の実施例に係る光源装置を備えたプロジェクタの内部構造を示す平面模式図である。
【図4】本発明の実施例に係る蛍光ホイールの正面模式図及び一部断面を示す平面模式図である。
【図5】本発明の実施例に係る光源装置の平面模式図である。
【図6】本発明の実施例に係る第一光源消灯範囲を示す蛍光ホイールの正面模式図である。
【図7】本発明の実施例に係る光源制御手段の第一光源と第二光源の点滅タイミングを示すタイムチャートである。
【図8】本発明の実施例に係る光源装置における別の形態の蛍光ホイールの正面模式図である。
【図9】本発明の変形例に係る光源装置の平面模式図である。
【図10】本発明の変形例に係る光源装置の蛍光ホイールの正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について述べる。プロジェクタ10は、光源装置63と、表示素子51と、冷却ファンと、光源装置63からの光を表示素子51に導光する光源側光学系62と、表示素子51から射出された画像をスクリーンに投影する投影側光学系90と、光源装置63や表示素子51を制御するプロジェクタ制御手段と、光源装置63の第一光源72及び第二光源82の点灯時間を制御する光源制御手段である光源制御回路41と、を備えている。
【0024】
そして、この光源装置63は、第一光源72の光軸と第二光源82の光軸とが交差する位置に、蛍光ホイール71を透過する光源光及び蛍光ホイール71から射出される蛍光光を透過させ第二光源82からの光を反射させるダイクロイックミラー151が配置され、第二光源82からの光の蛍光ホイール71への照射を防止するように構成されている。
【0025】
この光源装置63は、回転制御可能な透明基材に互いに隣接する半円形状のセグメント領域を二つ有し、一方のセグメント領域である第一領域1に励起光を受けて緑色の波長帯域光を発する蛍光体の層131が形成され、他方のセグメント領域である第二領域2が光を透過させる透過部とされた蛍光ホイール71と、可視光領域の励起光を蛍光体に照射する第一光源72と、蛍光体層131から射出される蛍光光及び第一光源72から射出される励起光と異なる波長帯域光を発する第二光源82と、蛍光ホイール71から射出される光及び第二光源82から射出される光を同一光路上に集光させる集光光学系と、を備えている。
【0026】
そして、透明基材は、ガラス基材又は透明樹脂基材で形成され、また、透明基材における第一領域1の蛍光体の層131が配置される側の表面には、励起光を透過し且つ他の波長帯域光を反射するダイクロイック層132がコーティングにより形成されている。
【0027】
そして、透明基材における第二領域2には、透過する光を拡散させる拡散層141が形成されている。更に、透明基材における蛍光体の層131が配置される側とは反対側の全面には、無反射コート層がコーティングにより形成されている。
【0028】
また、第一光源72は、緑色蛍光体の層131が発する緑色の波長帯域光よりも波長の短い青色の波長帯域光を射出するレーザー発光器である。第二光源82は、赤色の波長帯域光を射出する発光ダイオードである。
【0029】
そして、光源制御手段は、第一領域1及び第二領域2の境界において照射領域7が二つのセグメント領域に跨るように第一光源72からの光が照射されることで蛍光ホイール71から二色の波長帯域の合成光の射出を防止するように第一光源72を消灯させ、第二光源82を点灯させるように構成されている。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例を図に基づいて詳説する。図1は、プロジェクタ10の外観斜視図である。尚、本実施例において、左右とは投影方向に対しての左右方向を示し、前後とはプロジェクタ10から射出される光線束の進行方向に対しての前後方向を示す。プロジェクタ10は、図1に示すように、略直方体形状であって、本体ケースの前方の側板とされる正面パネル12の側方に投影口を覆うレンズカバー19を有するとともに、この正面パネル12には複数の排気孔17を設けている。更に、図示しないがリモートコントローラからの制御信号を受信するIr受信部を備えている。
【0031】
また、本体ケースである上面パネル11にはキー/インジケータ部37が設けられ、このキー/インジケータ部37には、電源スイッチキーや電源のオン又はオフを報知するパワーインジケータ、投影のオン、オフを切りかえる投影スイッチキー、光源装置や表示素子又は制御回路等が過熱したときに報知をする過熱インジケータ等のキーやインジケータが配置されている。
【0032】
更に、本体ケースの背面には、背面パネルにUSB端子や画像信号入力用のD−SUB端子、S端子、RCA端子等を設ける入出力コネクタ部及び電源アダプタプラグ等の各種端子20が設けられている。尚、図示しない本体ケースの側板である右側パネル14、及び、図1に示した側板である左側パネル15の下部近傍には、各々複数の吸気孔18が形成されている。
【0033】
次に、プロジェクタ10のプロジェクタ制御手段について図2のブロック図を用いて述べる。プロジェクタ制御手段は、制御部38、入出力インターフェース22、画像変換部23、表示エンコーダ24、表示駆動部26等から構成され、入出力コネクタ部21から入力された各種規格の画像信号は、入出力インターフェース22、システムバス(SB)を介して画像変換部23で表示に適した所定のフォーマットの画像信号に統一するように変換された後、表示エンコーダ24に出力される。
【0034】
また、表示エンコーダ24は、入力された画像信号をビデオRAM25に展開記憶させた上でこのビデオRAM25の記憶内容からビデオ信号を生成して表示駆動部26に出力する。
【0035】
表示駆動部26は、表示エンコーダ24から出力された画像信号に対応して適宜フレームレートで空間的光変調素子(SOM)である表示素子51を駆動するものであり、光源装置63から射出された光線束を光源側光学系を介して表示素子51に入射することにより、表示素子51の反射光で光像を形成し、投影側光学系とする投影系レンズ群を介して図示しないスクリーンに画像を投影表示する。尚、この投影側光学系の可動レンズ群97は、レンズモータ45によりズーム調整やフォーカス調整のための駆動が行われる。
【0036】
また、画像圧縮伸長部31は、画像信号の輝度信号及び色差信号をADCT及びハフマン符号化等の処理によりデータ圧縮して着脱自在な記録媒体とされるメモリカード32に順次書き込む記録処理を行なう。更に、画像圧縮伸長部31は、再生モード時にメモリカード32に記録された画像データを読み出し、一連の動画を構成する個々の画像データを1フレーム単位で伸長し、この画像データを画像変換部23を介して表示エンコーダ24に出力し、メモリカード32に記憶された画像データに基づいて動画等の表示を可能とする処理を行なう。
【0037】
制御部38は、プロジェクタ10内の各回路の動作制御を司るものであって、CPUや各種セッティング等の動作プログラムを固定的に記憶したROM及びワークメモリとして使用されるRAM等により構成されている。
【0038】
本体ケースの上面パネル11に設けられるメインキー及びインジケータ等により構成されるキー/インジケータ部37の操作信号は、直接に制御部38に送出され、リモートコントローラからのキー操作信号は、Ir受信部35で受信され、Ir処理部36で復調されたコード信号が制御部38に出力される。
【0039】
尚、制御部38にはシステムバス(SB)を介して音声処理部47が接続されている。この音声処理部47は、PCM音源等の音源回路を備えており、投影モード及び再生モード時には音声データをアナログ化し、スピーカ48を駆動して拡声放音させる。
【0040】
また、制御部38は、光源制御手段である光源制御回路41を制御しており、この光源制御回路41は、画像信号に応じて光源装置63の第一光源及び第二光源の発光を制御する。更に、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43に光源装置63等に設けた複数の温度センサによる温度検出を行わせ、この温度検出の結果から冷却ファンの回転速度を制御させている。また、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43にタイマー等によりプロジェクタ本体の電源OFF後も冷却ファンの回転を持続させる、或いは、温度センサによる温度検出の結果によってはプロジェクタ本体の電源をOFFにする等の制御も行う。
【0041】
次に、このプロジェクタ10の内部構造について述べる。図3は、プロジェクタ10の内部構造を示す平面模式図である。プロジェクタ10は、図3に示すように、右側パネル14の近傍に電源回路ブロック101等を取付けた光源制御回路基板102が配置され、略中央にはシロッコファンタイプのブロア110が配置され、このブロア110の近傍に制御回路基板103が配置され、正面パネル12の近傍には光源装置63が配置され、左側パネル15の近傍には光学系ユニット70が配置されている。また、プロジェクタ10は、筐体内を区画用隔壁120により背面パネル13側の吸気側空間室121と正面パネル12側の排気側空間室122とに気密に区画されており、ブロア110は、吸込み口111が吸気側空間室121に位置し排気側空間室122と吸気側空間室121の境界に吐出口113が位置するように配置されている。
【0042】
光学系ユニット70は、光源装置63の近傍に位置する照明側ブロック78と、背面パネル13側に位置する画像生成ブロック79と、照明側ブロック78と左側パネル15との間に位置する投影側ブロック80との3つのブロックから構成された略コの字形状である。
【0043】
この照明側ブロック78は、光源装置63から射出された光を画像生成ブロック79が備える表示素子51に導光する光源側光学系62の一部を備えている。この照明側ブロック78が有する光源側光学系62としては、光源装置63から射出された光線束を均一な強度分布の光束とする導光装置75や、導光装置75を透過した光を集光する集光レンズ等がある。
【0044】
画像生成ブロック79は、光源側光学系62として、導光装置75から射出された光線束の光軸方向を変更する光軸変更ミラー74と、この光軸変更ミラー74により反射した光を表示素子51に集光させる複数枚の集光レンズと、これらの集光レンズを透過した光線束を表示素子51に所定の角度で照射する照射ミラー84と、を有している。更に、画像生成ブロック79は、表示素子51とするDMDを備え、この表示素子51の背面パネル13側には表示素子51を冷却するための表示素子冷却装置53が配置されて、表示素子51が高温となることを防止している。
【0045】
投影側ブロック80は、表示素子51で反射されて画像を形成する光をスクリーンに放出する投影側光学系90のレンズ群を有している。この投影側光学系90としては、固定鏡筒に内蔵する固定レンズ群93と可動鏡筒に内蔵する可動レンズ群97とを備えてズーム機能を備えた可変焦点型レンズとされ、レンズモータにより可動レンズ群97を移動させることによりズーム調整やフォーカス調整を可能としている。
【0046】
また、プロジェクタ10の内部構造において、吸気側空間室121内には光源装置63と比較して低温である部材が配置されるものであり、具体的には、光源制御回路基板102と、ブロア110と、制御回路基板103と、光学系ユニット70の画像生成ブロック79と、光学系ユニット70の投影側ブロック80と、光学系ユニット70の照明側ブロック78における集光レンズと、が配置されている。
【0047】
一方、排気側空間室122内には、比較的高温となる光源装置63と、光学系ユニット70の照明側ブロック78が備える導光装置75と、排気温低減装置114とが配置されている。
【0048】
そして、光源装置63は、光が照射されることにより原色である緑色及び青色の波長帯域光を射出する蛍光ホイール71と、蛍光ホイール71を回転駆動する駆動装置であるホイールモータ73と、青色の波長帯域光を蛍光ホイール71に照射する第一光源72と、原色である赤色の波長帯域光を射出する第二光源82と、を備えている。
【0049】
そして、第一光源72は、第一光源72の光軸が導光装置75の光軸に対して略直交するように配置されている。また、第二光源82は、第二光源82の光軸が導光装置75の光軸に対して略平行となるように配置されている。そして、蛍光ホイール71は、第一光源72の光軸と当該蛍光ホイール71のホイール面とが直交するように配置されている。つまり、蛍光ホイール71を回転させるホイールモータ73の回転軸が、第一光源72の光軸に対して平行となっている。
【0050】
この第一光源72は、蛍光ホイール71の外周部近傍に配置される蛍光体層131及び拡散層141に光を照射するものであって、蛍光体層131から発せられる緑色の波長帯域光よりも波長の短い可視光である青色の波長帯域の光を射出するレーザー発光器とされるものである。また、第二光源82は、赤色の波長帯域光を発する赤色発光ダイオードとされるものである。
【0051】
この蛍光ホイール71は、図4に示すように、蛍光体の層131を備える薄肉円形状の透明基材であって、この透明基材の中央部にはホイールモータ73との接続部である円柱状の回転軸の形状に対応した円形開口が形成され、該円形開口に回転軸が挿着されてモータハブが透明基材の中央部近傍に接着されることで当該蛍光ホイール71はホイールモータ73の回転軸に強固に接続されている。
【0052】
したがって、この蛍光ホイール71は、毎秒約120回などの回転速度でプロジェクタ制御手段の制御部38によって駆動制御される駆動装置としてのホイールモータ73によって一体的に円周方向に回転することとなる。つまり、蛍光ホイール71は、回転制御可能とされるものである。
【0053】
この透明基材は、互いに隣接する半円形状のセグメント領域を二つ有し、ガラス基材又は透明樹脂基材等で形成されるものである。そして、この透明基材は、一方のセグメント領域である第一領域1に蛍光体の層131が形成され、他方のセグメント領域である第二領域2が第一光源72の光を透過させる透過部とされる。
【0054】
そして、透明基材の第一領域1における外周部近傍には、帯状の凹部が形成され、この凹部内に蛍光体層131が形成されている。この蛍光体層131は、第一光源72からの光が照射されることにより当該第一光源72からの光を励起光として吸収し、励起されることで原色である緑色の波長帯域光を発する蛍光体を含有する層である。このように蛍光体層131が形成されることで、蛍光ホイール71は発光板として機能することができる。尚、この蛍光体層131は、蛍光体結晶とバインダから構成されるものである。
【0055】
そして、この透明基材における第一領域1の蛍光体層131が形成される部分の面に、励起光を透過し且つ他の波長帯域光を反射するダイクロイック層132がコーティングにより形成され、このダイクロイック層132の上に蛍光体層131が形成されている。尚、ダイクロイック層132は、蛍光体層131の部分のみならず、第一領域1の全面に形成してもよい。また、ダイクロイック層132は、第一光源72と蛍光体層131との間に設けられていればよいため、透明基材における第一光源72側の面に形成してもよい。
【0056】
そして、透過部である第二領域2は、第一光源72側とは反対側の面に拡散層141を有している。具体的には、この拡散層141は、透明基材の第二領域2に対してブラスト加工などによる目粗し処理等の光学処理が施されることにより、入射した青色光源光が透過する際に拡散効果を付与する層として形成される。
【0057】
尚、拡散層141としては、当該透明基材の表面に光学処理を施す場合の他、光学物質である帯状の固体物を固着することにより形成してもよい。また、第一光源72とは反対側の面に拡散層141を形成せずに、第一光源72側の面に拡散層141を形成してもよい。
【0058】
更に、第一光源72側の透明基材の全面には、図示しない無反射コート層がコーティングにより形成されている。
【0059】
そして、蛍光ホイール71は、透明基材を二つのセグメント領域に対応した二つのフィルタ片で形成することもでき、夫々のフィルタ片で蛍光体の層131及び拡散層141を形成して、その後、円形状に組み合わせて接着、或いは取付部材等によって一体としてもよい。
【0060】
このように、二つのセグメント領域に蛍光体層131及び拡散層141が周方向に隣接して配置されているため、回転する蛍光ホイール71の蛍光体層131及び拡散層141に順次に青色光源光を照射することで、第一光源72から射出された光源光が励起光として蛍光ホイール71の蛍光体層131に照射されたときは、蛍光ホイール71から緑色波長帯域の蛍光光が射出され、第一光源72から射出された光源光が蛍光ホイール71の透過部の拡散層141に照射されたときは、青色光源光が拡散透過されることになる。
【0061】
そして、透明基材の第一領域1における蛍光体層131の配置する面にダイクロイック層132が形成され、第一光源72側の面に無反射コート層が形成されているため、第一光源72からの光が第一領域1に照射されると、青色光源光は、第一領域1の入射面の無反射コート層を第一光源72側へほとんど反射されることなく透過して透明基材に入射する。そして、透明基材を透過した青色光源光は、ダイクロイック層132を透過して蛍光体層131に照射される。
【0062】
この蛍光体層131の蛍光体は、青色光源光を励起光として吸収して緑色波長帯域の蛍光光を全方位に射出する。このうち、第一光源72とは反対側に向かって射出される緑色蛍光光は後述する集光光学系を介して導光装置75に入射し、透明基材側に射出される緑色蛍光光はダイクロイック層132によって反射され、当該反射光の多くが蛍光ホイール71からの射出光として集光光学系を介して導光装置75に入射されることとなる。
【0063】
そして、第一光源72から青色波長帯域のレーザー光が拡散層141に照射されると、拡散層141が入射した青色光源光に拡散効果を付与するため、蛍光体の層131からの射出光(緑色蛍光光)と同様な拡散光とされた青色光が拡散層141から射出され、当該青色光は集光光学系を介して導光装置75に入射されることとなる。
【0064】
また、この光源装置63は、図5に示すように、第一光源72の出射側に配置されて第一光源72からの射出光を平行光に変換するコリメータレンズ150を備える。そして、この光源装置63は、蛍光ホイール71から射出される所定の波長帯域光を反射又は透過させて、当該蛍光ホイール71からの青色光及び緑色光の光軸と第二光源82からの赤色光の光軸を変換させることにより一致させて、各色光を同一光路上へ集光させるダイクロイックミラー151及び反射ミラー152と、蛍光ホイール71から射出されて導光装置75へ入射する光線束を集光するレンズ等と、により構成される集光光学系を備えている。
【0065】
以下、本実施例の集光光学系について述べる。ダイクロイックミラー151は、第一光源72の光軸と第二光源82の光軸とが交差する位置に配置されて、第一光源72から射出されて蛍光ホイール71の透過部を透過した青色光及び蛍光ホイール71から射出された緑色光を透過し第二光源82から射出される赤色光を90度の角度で方向を変化させて反射する。
【0066】
反射ミラー152は、第一光源72の光軸と導光装置75の光軸とが交差する位置に配置されて、蛍光ホイール71からの青色光及び緑色光並びにダイクロイックミラー151により反射された赤色光を導光装置75側に90度の角度で方向を変化させて反射する。
【0067】
また、蛍光ホイール71の出射面近傍に集光レンズ群155が配置されることにより、蛍光ホイール71から射出される光線束が集光されてダイクロイックミラー151に照射される。同様に、第二光源82の出射面近傍に集光レンズ群155が配置されることにより、第二光源82から射出される光線束が集光されてダイクロイックミラー151に照射される。更に、ダイクロイックミラー151と反射ミラー152との間に導光装置入射レンズ154が配置されているため、各色光は、より集光された光線束として導光装置75に入射されることとなる。
【0068】
したがって、蛍光ホイール71を回転させるとともに第一光源72と第二光源82から異なるタイミングで光を射出すると、赤色、緑色及び青色の波長帯域光が蛍光ホイール71から集光光学系を介して導光装置75に順次入射され、プロジェクタ10の表示素子51であるDMDがデータに応じて各色の光を時分割表示することにより、スクリーンにカラー画像を生成することができる。
【0069】
そして、第一光源72及び第二光源82の点滅動作は、光源制御手段により時分割制御される。この光源制御手段である光源制御回路41は、第一領域1と第二領域2の境界の一方に第一光源72からの光が照射されることで蛍光ホイール71から二色の波長帯域の合成光が射出されることがないように第一光源72を消灯させ、第二光源82を点灯させるように構成されている。
【0070】
具体的には、この第一光源72を消灯させる範囲は、図6(a)に示すように、第一光源72からの光の略円形状の照射領域7が第一領域1と第二領域2に跨って位置することのないように決定される。この第一光源消灯範囲は、図示するように第一領域1と第二領域2との一方の境界近傍の蛍光ホイール71からの光の照射領域7に対する接線で囲まれる範囲である。この接線は、蛍光ホイール71の所定位置を表す仮想線であって、この第一光源消灯範囲は、第一領域1及び第二領域2の境界線を中心とする中心角が鋭角とされる扇形の領域であり、この領域が固定配置される第一光源72の中心軸上に位置するときは、光源制御手段が第一光源72を消灯させる。
【0071】
つまり、光源制御手段は、蛍光ホイール71が回転して接線が移動することで、この接線が固定配置される第一光源72の照射領域7の中心に位置したときに第一光源72を消灯させ、もう一方の接線が照射領域7の中心に位置したときに第一光源72を点灯させる。言い換えると、蛍光ホイール71が回転して境界線が円形状の照射領域7に接する位置に移動したときに第一光源72は消灯され、境界線が照射領域7を通過して、境界線がもう一方の照射領域7に接する位置に移動したときに第一光源72は点灯される。
【0072】
したがって、光源制御手段が、この第一光源消灯範囲よりも広い範囲で第一光源72を消灯させるように、回転する蛍光ホイール71の第一領域1と第二領域2との境界が第一光源72の照射領域7に近づいたときに第一光源72を消灯して、第一領域1と第二領域2の境界が第一光源72の照射領域7を過ぎたときに再び第一光源72を点灯させることで、第一領域1と第二領域2の境界の一方における光の混色を防止することができる。
【0073】
また、この第一光源72を消灯させる範囲は、図6(b)に示すように、導光装置75の入射面のサイズより広い範囲となるように設定することで、当該範囲における導光装置75に入射される蛍光ホイール71からの光の混色を確実に防止して良好な色再現性を得ることができる。
【0074】
尚、図示した第一光源消灯範囲は、二つのセグメント領域の境界の一方において混色が発生することのないように、第一光源72を消灯させ、第二光源82を点灯させる構成としているが、これに限定されることなく、二つのセグメント領域の境界の両方において混色が発生することのないように、第一光源72を消灯させ、第二光源82を点灯させる構成として、赤、緑、赤、青というように順次に所定の波長帯域光を光源装置63から射出させることとしてもよい。
【0075】
次に、第一光源72と第二光源82の点灯及び消灯のタイミングを図7に示すタイムチャートにしたがって説明する。図中のホイール角とは、図6に示した蛍光ホイール71における第一領域1と第二領域2の一方の境界線の位置を基準(0度)としたホイール面上の位置(具体的には、照射領域7の中心に配置されるホイール面の位置)を角度で表したものであり、この位置は、蛍光ホイール71の回転とともに移動する。
【0076】
図7(a)は、赤色、緑色、青色の波長帯域光を光源装置63から略等間隔で射出する制御を示す図である。先ず、光源制御手段が、ホイール角60度のホイール位置が照射領域7の中心に位置したときに第一光源72を点灯させると、第一光源72から射出された光は、蛍光ホイール71の第一領域1に形成される蛍光体層131に照射されるため、蛍光ホイール71から発した緑色蛍光光(G)が光源装置63から射出されて導光装置75に入射される。
【0077】
また、蛍光ホイール71が回転してホイール角180度のホイール位置が照射領域7の中心に達すると、第二領域2の拡散層141に第一光源72からの光が照射されるため、蛍光ホイール71の透過部を拡散透過した青色光源光(B)が光源装置63から射出されて導光装置75に入射される。
【0078】
そして、光源制御手段が、第一領域1と第二領域2の境界の手前であるホイール角300度のホイール位置が第一光源72の照射領域7の中心に位置したときに、第一光源72を消灯させるとともに第二光源82を点灯させると、第二光源82からの赤色光源光(R)のみが光源装置63から射出されて導光装置75に入射される。
【0079】
更に、光源制御手段が、ホイール角60度のホイール位置が第一光源72の照射領域7の中心に位置したときに、第一光源72を再び点灯させるとともに、第二光源82を消灯させると、光源装置63からは緑色蛍光光(G)が射出される。したがって、光源装置63からは赤(R)、緑(G)、青(B)の波長帯域光が順次射出されることになるため、プロジェクタ10は、データに応じて入射された各色光を表示素子51で時分割表示することにより、スクリーンにカラー画像を生成することができる。
【0080】
尚、光源制御手段は、第一光源72及び第二光源82の何れの光源も点灯されていない状態となって輝度が低下することを防止するため、第一光源72と第二光源82の何れか一方を消灯させる少し前に他方の光源を点灯させるように、第一光源72と第二光源82との点灯及び消灯タイミングを制御している。
【0081】
そして、赤色光を発する第二光源82が単色光源として設置されて、第一光源72と第二光源82とが光源制御手段により個別に制御可能とされているため、第一光源72と第二光源82の点灯時間を自由に変えることができ、幅広い明るさモードを有する光源装置63として提供することができる。
【0082】
また、第一光源72及び第二光源82を所定時間だけ同時に点灯させて補色であるマゼンタ(M)や、黄色(Y)の波長帯域の光を光源装置63から射出させることもできる。具体的には、図7(b)に示すように、第一光源72を点灯させて青色光源光を第一領域1に照射すると緑色光(R)が射出され、回転により第二領域2に光源光が照射されると青色光(B)が射出されるが、青色光を所定時間射出した後に、第二光源82を点灯させれば、蛍光ホイール71を透過した青色光と、第二光源82から射出された赤色光とを合成して、安定したマゼンタの波長帯域光(M)を光源装置63から射出して導光装置75に入射させることができる。
【0083】
そして、マゼンタ光(M)を所定時間射出した後、第一光源72のみを消灯させれば、第二光源82からの赤色光(R)が光源装置63から射出され、更に所定時間赤色光(R)を射出した後、第二光源82を消灯させずに、第一光源72を点灯させれば、第二光源82からの赤色光と、蛍光ホイール71から射出された緑色光とを合成して、安定した黄色(Y)の波長帯域光を光源装置63から射出して導光装置75に入射させることができる。
【0084】
このように、光源制御手段が、第一光源72及び第二光源82を個別に点灯制御するとともに、第一光源72からの光を受けて蛍光ホイール71から射出される光と、第二光源82から射出される光とが所定時間だけ合成されるように、第一光源72及び第二光源82を所定のタイミングで所定時間だけ同時に点灯させる制御を行うことで、原色の波長帯域光だけでなく、補色の波長帯域光を光源装置63から射出することができ、光源装置63の輝度を上げて色再現性の向上を図ることができる。
【0085】
そして、光源制御手段は、図7(c)に示すように、第一光源72と第二光源82の点灯時間を各色光の射出時間が短くなるように制御して、輝度の調整を自由に行うこともできる。また、所定の波長帯域光を射出するときだけ、光源出力を抑えるように光源制御手段が第一光源72或いは第二光源82を制御する構成として、色合いを調整することもできる。
【0086】
また、この蛍光ホイール71は、図4及び図6に示したように、二つのセグメント領域を有するように形成される場合に限定されることなく、様々な構成を採用することができる。例えば、図8(a)に示すように、透明基材に三つのセグメント領域を形成し、第一領域1には、緑色光(G)を射出する緑色蛍光体の層131を設け、第二領域2は青色光(B)を透過させる拡散層141を有する透過部として形成し、第三領域3には、マスク145を覆設することで第一光源72からの光源光を透過させない不透過部を形成することもできる。
【0087】
このように、第一光源72からの光を透過させない不透過部を所定のセグメント領域に形成し、且つ、不透過部により第一光源72の光がカットされているときに第二光源82を照射することで、第一光源72を点灯させたまま、第二光源82の赤色光(R)を光源装置63より射出させることができる。
【0088】
また、図8(b)に示すように、透明基材に三つのセグメント領域を形成し、第一領域1には、緑色蛍光体層131Gを設け、第二領域2には補色であるシアンの波長帯域の光を射出可能なシアン蛍光体層131Cを設け、第三領域3は透過部として形成することもできる。
【0089】
このように、緑色帯域の蛍光光を発する蛍光体の層131に限ることなく、様々な波長帯域光を発することのできる蛍光体の層131を設けてもよい。そして、図示するように、第一光源点灯範囲を、ホイール角30度からホイール角330度までとして設定し、第二光源点灯範囲を、ホイール角270度からホイール角90度までとして設定することで、ホイール角330度からホイール角30度までの範囲に第一光源72の照射領域中心が位置しているときには、第二光源82からの赤色帯域光(R)のみが光源装置63から射出される。
【0090】
そして、ホイール角30度からホイール角90度までの範囲に照射領域中心が位置しているときには、蛍光ホイール71からの緑色帯域光と第二光源82からの赤色帯域光が合成された黄色帯域光(Y)が光源装置63から射出される。また、ホイール角90度からホイール角150度までの範囲に照射領域中心が位置しているときには、蛍光ホイール71からの緑色帯域光(G)のみが光源装置63から射出される。
【0091】
更に、ホイール角150度からホイール角210度までの範囲に照射領域中心が位置しているときには、蛍光ホイール71からのシアン帯域光(C)のみが光源装置63から射出され、ホイール角210度からホイール角270度までの範囲に照射領域中心が位置しているときには、蛍光ホイール71の透過部を透過した青色帯域光(B)のみが光源装置63から射出される。
【0092】
そして、ホイール角270度からホイール角330度までの範囲に照射領域中心が位置しているときには、蛍光ホイール71の透過部を透過した青色帯域光と第二光源82からの赤色帯域光が合成されたマゼンタ帯域光(M)が光源装置63から射出される。
【0093】
このように、複数の種類の異なる蛍光体層131を配置させる、或いは、第一光源72と第二光源82との点灯タイミングを様々に組み合わせて制御することで、種々の波長帯域光を射出可能な光源装置63を提供することができる。
【0094】
そして、光源の種類や配置場所も上記した態様に限定されることなく、第一光源72に青色発光ダイオードを用いてもよく、第二光源82に赤色帯域のレーザー光を発するレーザー発光器を採用することとしてもよい。尚、第一光源72に青色レーザー発光器を採用することで、高出力な励起光を射出して効率よく蛍光体を励起させることができ、第二光源82に赤色発光ダイオードを採用することで、製品コストを抑えることができる。
【0095】
更に、図5に示したように、第二光源82からの光が蛍光ホイール71に照射されることのないように光学レイアウトを構成する場合に限定することなく、図9に示すように、第二光源82を第一光源72側に配置して、第二光源82からの光も蛍光ホイール71に照射されるようにしてもよい。この場合、蛍光ホイール71と第一光源72との間であって、第一光源72の光軸と第二光源82の光軸とが交差する位置には、第一光源72からの光を透過させ第二光源82からの光を反射させるダイクロイックミラー151が配設される。つまり、第二光源82からの光も蛍光ホイール71に照射可能とされる。
【0096】
そして、このような場合、図10に示すように、蛍光ホイール71は、第一光源72からの光を受けて蛍光光を発する蛍光体の層131を有する第一領域1と、第一光源72からの光を透過させる拡散層141を有する透過部としての第二領域2と、第二光源82からの光を透過させる透過部としての第三領域3と、を有しており、第一領域1と第二領域2に光が照射されるように第一光源72を点灯(第二光源82は消灯)させ、第三領域3に光が照射されるように第二光源82を点灯(第一光源72は消灯)させることで、各色光を光源装置63から順次射出することもできる。
【0097】
尚、第二光源82をレーザー発光器とする場合には、第二領域2と第三領域3に拡散層141を形成することで、第一光源72及び第二光源82から射出される指向性の高いレーザー光を、第一領域1から発せられる蛍光光と同様の拡散光として透過させることができる。そして、この場合、第二領域2と第三領域3に設けられる拡散層141は、照射される光の特性に応じて形成され、異なる仕様の光学処理が施されることもある。
【0098】
そして、蛍光ホイール71の透過部に拡散層141を設けることなく透過部は通常のガラス板又は周囲に枠を形成した透孔としての空間により形成し、拡散効果を付与する光学部品を蛍光ホイール71直近の第一光源72側や、蛍光ホイール71の出射側などのレーザー光の光路上に固定配置することもある。また、この光源装置63は、第一光源72及び第二光源82をともに発光ダイオードとする場合には、拡散層141を透過部や光路上に設けない構成とすることもある。
【0099】
このように、本発明によれば、蛍光体を励起させる第一光源72と、発光効率の良好な種類の蛍光体を有する蛍光ホイール71と、発光効率の比較的低い種類の蛍光体として例えば赤色蛍光体を蛍光ホイール71に形成することなく当該低発光効率の蛍光体に対応する赤色の波長帯域光を射出する単色光源である第二光源82と、を備えることで、画面の輝度を向上させることのできる光源装置63と、この光源装置63を備えたプロジェクタ10を提供することができる。
【0100】
また、蛍光ホイール71に所定のタイミングで光源光を照射させる構成とされているため、常に蛍光ホイール71に光を当てる場合に比べて、蛍光ホイール71への照射時間を少なくして温度上昇を抑制することができる。したがって、蛍光体の温度上昇に起因する発光効率の低下を抑制して、蛍光体の発光効率を向上させることができる。
【0101】
そして、第一光源72に青色帯域のレーザー発光器を採用することで、蛍光体を効率よく励起させて発光させることができる。また、蛍光ホイール71に、少なくとも緑色帯域光を発する蛍光体を有する蛍光体層131を形成することで、原色である緑色の波長帯域光を生成することができる。更に、透過部に拡散層141を設けることで、指向性のあるレーザー光を拡散透過させて原色である青色の波長帯域光を蛍光光と同様の拡散光として導光装置75に入射させることができる。
【0102】
また、本発明は、以上の実施例に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。例えば、光源制御手段は、プロジェクタ10に設けずに、光源装置63に個別に設けることとしてもよい。また、図5に示したダイクロイックミラー151を、蛍光ホイール71からの光を反射させ第二光源82からの光を透過させる特性のミラーとして、導光装置75を第二光源82の光軸上に配置させる光学レイアウトを採用してもよいし、図9に示したダイクロイックミラー151を、第一光源72からの光を反射させ第二光源82からの光を透過させる特性のミラーとして、第一光源72と第二光源82の位置を入れ換えた光学レイアウトを採用することもできる。
【0103】
また、上述の実施例では、第一光源72に青色帯域のレーザー発光器を用いることとしたが、これに限らず、例えば紫外線帯域のレーザー発光器を用いてもよい。その場合、蛍光ホイール71の透過部には、反射部に形成される蛍光体層131が発する波長帯域光とは異なる波長帯域の光を発する蛍光体層が配置されていることが望ましい。
【0104】
また、上述の実施例では、光軸方向の変換や、透過及び反射を波長に応じて選択するためにダイクロイックミラーを用いることとしたが、これに限らず、例えばダイクロイックプリズムなどの他の代替手段をもって上述のダイクロイックミラーを置換することとしてもよい。
【0105】
このように、光源装置63は、図5や図9に示したように、様々な光学レイアウトを採用することができるため、上述のごとく画面の輝度を向上させるだけでなく、このような光源装置63を実装するプロジェクタ10などの機器に対する配置自由度を高めることができる。
【0106】
更に、透明基材に形成されるセグメント領域は、等分となるように形成する場合に限定することなく、不等分であって4つ以上の領域が形成される場合もある。そして、図10に示した第三領域3に赤色帯域光を発する蛍光体の層131を設けて、第三領域3が照射領域中心に位置するときには、第一光源72と第二光源82をともに点灯させて、第二光源82を赤色光の光量を増やす補助光源として利用する構成を採用することもできる。また、第二光源82としては、赤色帯域光を発する光源とする場合に限定されることもなく、赤色帯域光以外であって、蛍光体層131から射出される蛍光光及び第一光源72から射出される励起光と異なる波長帯域光を発する光源を用いてもよい。
【0107】
更に、蛍光ホイール71を円板形状ではなく、矩形状の発光板として形成して固定配置する場合もある。この場合、第一光源72と発光板との間に第一光源72からの光の照射方向を変化させる調整装置を配設する、或いは、第一光源72の位置及び/又は照射方向を変化させるように駆動する光源駆動装置を設けて、第一光源72からの光の照射スポットを各セグメント領域に順次位置させるようにすることで、各色光を、集光光学系を介して導光装置75に入射させることができる。そして、調整装置としては、例えば、KTN結晶、音響光学素子、MEMSミラー等を用いた光偏光器を採用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 第一領域 2 第二領域
3 第三領域 7 照射領域
10 プロジェクタ
11 上面パネル 12 正面パネル
13 背面パネル 14 右側パネル
15 左側パネル 17 排気孔
18 吸気孔 19 レンズカバー
20 各種端子 21 入出力コネクタ部
22 入出力インターフェース 23 画像変換部
24 表示エンコーダ 25 ビデオRAM
26 表示駆動部 31 画像圧縮伸長部
32 メモリカード 35 Ir受信部
36 Ir処理部 37 キー/インジケータ部
38 制御部 41 光源制御回路
43 冷却ファン駆動制御回路 45 レンズモータ
47 音声処理部 48 スピーカ
51 表示素子 53 表示素子冷却装置
62 光源側光学系 63 光源装置
70 光学系ユニット 71 蛍光ホイール
72 第一光源 73 ホイールモータ
74 光軸変更ミラー 75 導光装置
78 照明側ブロック 79 画像生成ブロック
80 投影側ブロック 82 第二光源
84 照射ミラー
90 投影側光学系 93 固定レンズ群
97 可動レンズ群 101 電源回路ブロック
102 光源制御回路基板 103 制御回路基板
110 ブロア 111 吸込み口
113 吐出口 114 排気温低減装置
120 区画用隔壁 121 吸気側空間室
122 排気側空間室 131 蛍光体層
131C シアン蛍光体層 131G 緑色蛍光体層
132 ダイクロイック層 141 拡散層
145 マスク 150 コリメータレンズ
151 ダイクロイックミラー 152 反射ミラー
154 導光装置入射レン 155 集光レンズ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメント領域を有し、少なくとも該複数のセグメント領域に、励起光を受けて所定の波長帯域光を発する蛍光体の層と、光を透過させる透過部と、がそれぞれ形成された発光板と、
励起光を前記蛍光体に照射する第一光源と、
前記蛍光体層から射出される蛍光光及び前記第一光源から射出される励起光と異なる波長帯域光を発する第二光源と、
前記発光板から射出される光及び前記第二光源から射出される光を同一光路上に集光させる集光光学系と、
前記第一光源及び第二光源の発光を制御する光源制御手段と、備えていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記発光板は、回転制御可能な基材からなる蛍光ホイールであることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記光源制御手段が、少なくとも一つの隣り合うセグメント領域の境界に前記第一光源からの光が照射されないように、第一光源を消灯させ、第二光源を点灯させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
隣接する二つのセグメント領域を有する基材において、一方のセグメント領域に前記蛍光体層が形成され、他方のセグメント領域が前記透過部とされ、
前記光源制御手段が、前記二つのセグメント領域の境界の少なくとも一方において照射領域が二つのセグメント領域に跨るように前記第一光源からの光が照射されることで前記発光板から二色の波長帯域の合成光の射出を防止するように第一光源を消灯させ、第二光源を点灯させるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記第一光源は、青色帯域のレーザー発光器であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の光源装置。
【請求項6】
前記蛍光体は、励起光を受けて少なくとも緑色の波長帯域光を発する蛍光体であることを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記発光板の透過部に前記第一光源からの光を拡散させる拡散層が形成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記発光板の透過部に、前記第一光源からの励起光を受けて前記蛍光体の層が発する所定の波長帯域光とは異なる波長帯域の光を発する蛍光体層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の光源装置。
【請求項9】
前記第二光源は、赤色帯域の発光ダイオードであることを特徴とする請求項5乃至請求項8の何れかに記載の光源装置。
【請求項10】
前記透明基材における前記蛍光体の層が配置されるセグメント領域の表面には、前記励起光を透過し且つ他の波長帯域光を反射するダイクロイック層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れかに記載の光源装置。
【請求項11】
前記第一光源の光軸と第二光源の光軸とが交差する位置に、前記発光板からの光を透過させ前記第二光源からの光を反射させる、又は、前記発光板からの光を反射させ前記第二光源からの光を透過させるダイクロイックミラーが配置され、
前記第二光源からの光の前記発光板への照射を防止することを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れかに記載の光源装置。
【請求項12】
前記光源制御手段が、前記第一光源及び第二光源を個別に点灯制御するとともに、前記第一光源からの光を受けて前記発光板から射出される光と、第二光源から射出される光とが所定時間だけ合成されるように前記第一光源及び第二光源を同時に点灯させる制御を可能とする構成とされていることを特徴とする請求項11に記載の光源装置。
【請求項13】
前記第一光源の光軸と第二光源の光軸とが交差する位置に、前記第一光源からの光を透過させ前記第二光源からの光を反射させる、又は、前記第一光源からの光を反射させ前記第二光源からの光を透過させるダイクロイックミラーが配置され、
前記第二光源からの光が前記発光板の透過部を透過させるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れかに記載の光源装置。
【請求項14】
光源装置と、表示素子と、前記光源装置からの光を前記表示素子に導光する光源側光学系と、前記表示素子から射出された画像をスクリーンに投影する投影側光学系と、前記光源装置や表示素子を制御するプロジェクタ制御手段と、を備え、
前記光源装置が、請求項1乃至請求項13の何れかに記載の光源装置であることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−100163(P2011−100163A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22248(P2011−22248)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2009−155452(P2009−155452)の分割
【原出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】