説明

光源装置

【課題】超高圧水銀ランプの始動性の改善を図るとともに、(a)乃至(c)に示した従来技術の問題を解決した光源装置を提供すること。
【解決手段】発光管内に一対の電極が対向配置されるとともに0.15mg/mm以上の水銀が封入された超高圧水銀ランプ1と、超高圧水銀ランプ1を取囲み超高圧水銀ランプ1から放射される光を被放射領域に向けて反射する反射鏡2とからなり、超高圧水銀ランプ1に高電圧を供給する高電圧給電線4を反射鏡2に形成された貫通孔11に挿通して高電圧給電端子9に接続するとともに、固定手段によって高電圧給電端子9を反射鏡2に固定する光源装置において、前記固定手段によって始動補助光源6を反射鏡2に固定したことを特徴とする光源装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に係わり、特に、プロジェクタ用の光源に使用される、高圧水銀放電ランプ等の高輝度放電ランプ(HIDランプ)の始動性を改善した光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、液晶プロジェクタやDLPプロジェクタ等の光学装置に使用される光源装置は、光源となる高圧水銀放電ランプ等の高輝度放電ランプと、この高輝度放電ランプから放射される光を集光して、前方の開口に向けて反射する反射鏡とが一体に組合わされて構成されている。
このような放電ランプを点灯するためには、一般に、始動時に、高輝度放電ランプの主放電電極間、または主放電電極と放電容器外面との間にパルス状の高電圧を印加して、放電容器内の放電媒質に絶縁破壊を生じせしめ、このときに生成されるプラズマの電子を種としてグロー放電やアーク放電を誘起している。
このような放電ランプの始動時の絶縁破壊に必要な電圧は、放電ランプが室温程度の温度状態にある場合は、一般に数kV程度である。しかし、再始動時の絶縁破壊に必要な電圧は、点灯を終えて消灯した後の経過時間と共に変化する放電空間の温度に依存して変化する。このような変化が生じるのは、消灯して放電空間の温度が低下するに従って水銀やハロゲン等の気化していた放電媒質の一部が凝結を開始した結果、放電空間の気体成分の組成の変化に起因して絶縁破壊に必要な電圧が変化するためと考えられる。
例えば、水銀と臭素等のハロゲンおよびアルゴン等の希ガスを放電媒質とし、放電空間の容積1mmあたり0.15mg以上の水銀を含む放電ランプの場合、絶縁破壊に必要な電圧は、放電ランプの消灯直後は残留プラズマが存在するために非常に低いが、その後は急速に上昇し、やがて低下し始める(放電ランプを強制空冷しない自然冷却下では約2分を要する)。しかし、その時点から最終的に放電空間の温度が約100℃以下に下がるまでの間(消灯から約5分間)における再点灯は、絶縁破壊電圧が安定せず、通常の高電圧を印加しただけでは絶縁破壊しないことがある。
消灯後、できるだけ早い時期から再始動(ホットリスタート)させ、点灯の確率を高めるためには、単純には、印加する電圧の絶対値を高めればよい。しかし、このような場合、高電圧を印加することによって意図しない現象が生じてしまう。すなわち、絶縁ケーブル被覆の絶縁破壊、コネクタや接続端子における沿面放電等の危険現象の発生、高電圧印加時のノイズに起因するプロジェクタ装置本体の電子回路の誤動作等、種々の不都合な現象を生じる可能性がある。また、このような不都合な現象を回避するために、絶縁性を高めるために空間距離を稼いだり、ノイズを防止するためにケーブルの径を大きくしたりすると、プロジェクタ装置に組み込む際に所要のスペースが必要となり、好ましくない。
【0003】
このような問題を解決するために、特許第3528836号公報によれば、主放電容器と非一体的に構成された補助放電容器を、主放電容器の電極封着部の少なくとも一方の側面に近接して設け、この補助放電容器を放電させることにより、始動特性の改善を図っている。しかし、この公報に記載されている技術には、以下に示すような問題点がある。
すなわち、近年、液晶プロジェクタ装置の小型・軽量化が強く要求され、これに伴い光源装置のさらなる小型化が望まれており、補助放電容器のような部品もさらに小さくすることが要求される。しかし、補助放電容器をさらに小型化することは製作上困難であり、品質の低下やコストアップの原因となる。
さらに、補助放電容器が主放電容器と密接して配置されている場合、補助放電容器が主放電容器からの熱を受けやすいため、補助放電容器内のガス圧が上昇してしまう。そのため、補助放電容器の絶縁破壊電圧が上昇し、補助放電容器内における放電の開始が困難となり、放電ランプの始動性が悪化するという問題がある。
【0004】
上記公報に開示された技術の問題点を解決するため、本件出願人は特開2004−139955号公報、特開2005−19040号公報に示されるような光源装置を提案した。これらの公報に記載された技術によれば、始動補助光源を放電ランプと非一体的に構成するとともに、始動補助光源を反射鏡または反射鏡に隣接する部材に保持させたり、または反射鏡自体に始動補助光源の放電空間となる気泡部分を形成して、上記の問題点を解決している。
【特許文献1】特許第3528836号公報
【特許文献2】特開2004−139955号公報
【特許文献3】特開2005−19040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記両公報に開示された技術によれば、(a)始動補助光源を反射鏡に取付ける際、始動補助光源の電極にリード線が接続されるためリード線の取回しが煩雑であり、その一方で、始動補助光源を反射鏡に取付けた後からリード線を接続しようとすると、始動補助光源が非常に小さいことから、リード線の接続作業が大変困難となる。また、(b)光源装置を輸送する際に、光源装置に振動や衝撃が加わった場合、始動補助光源が反射鏡または反射鏡に隣接する部材から外れて落下する問題を生じる。さらに、(c)反射鏡に始動補助光源を設置する空間を作製したり、反射鏡自体に始動補助光源の放電空間となる気泡部分を形成することは、製造上困難を伴うとともに、反射鏡の破裂耐圧に対する信頼性を欠くものとなってしまう問題を生じる。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、超高圧水銀ランプの始動性の改善を図るとともに、上記(a)乃至(c)に示した従来技術の問題を解決した光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、発光管内に一対の電極が対向配置されるとともに0.15mg/mm以上の水銀が封入された超高圧水銀ランプと、該超高圧水銀ランプを取囲み超高圧水銀ランプから放射される光を被放射領域に向けて反射する反射鏡とからなり、前記超高圧水銀ランプに高電圧を供給する高電圧給電線を前記反射鏡に形成された貫通孔に挿通して高電圧給電端子に接続するとともに、固定手段によって前記高電圧給電端子を前記反射鏡に固定する光源装置において、前記固定手段によって始動補助光源を前記反射鏡に固定したことを特徴とする光源装置である。
第2の手段は、第1の手段において、前記固定手段は、前記始動補助光源を保持する導電性保持具を前記反射鏡に固定するものであることを特徴とする光源装置である。
第3の手段は、第1の手段または第2の手段において、前記超高圧水銀ランプは、その外表面に沿って長手方向に張り渡され、前記高電圧給電線と同電位となるトリガーワイヤを備えることを特徴とする光源装置である。
第4の手段は、発光管内に一対の電極が対向配置されるとともに0.15mg/mm以上の水銀が封入され、発光管の外表面に沿って長手方向に張り渡されたトリガーワイヤを有する超高圧水銀ランプと、該超高圧水銀ランプを取囲み超高圧水銀ランプから放射される光を被放射領域に向けて反射する反射鏡とからなり、前記トリガーワイヤに高電圧を供給する高電圧給電線を前記反射鏡に形成された貫通孔に挿通して高電圧給電端子に接続するとともに、固定手段によって前記高電圧給電端子を前記反射鏡に固定する光源装置において、前記固定手段によって始動補助光源を保持する導電性保持具を前記反射鏡に固定したことを特徴とする光源装置である。
第5の手段は、第1の手段乃至第4の手段のいずれか1つの手段において、前記始動補助光源が、前記超高圧水銀ランプから前記貫通孔への光の仮想反射光線内に配置されていることを特徴とする光源装置である。
第6の手段は、第1の手段乃至第4の手段のいずれか1つの手段において、前記反射鏡が楕円反射鏡であって、前記始動補助光源が、前記反射鏡により集光された光線外の領域に配置されることを特徴とする光源装置である。
第7の手段は、第1の手段乃至第6の手段のいずれか1つの手段において、前記導電性保持具が、前記始動補助光源から放射される紫外光を反射する手段を備えることを特徴とする光源装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、固定手段によって始動補助光源を楕円反射鏡に容易に取付けることができるため、始動補助光源に高電圧を供給するための給電線が全く不要となり、従来の光源装置の如く、始動補助光源に給電線が接続されていることに伴って始動補助光源を取付ける作業が困難になるという問題が生じることがなくなり、作業性が飛躍的に向上する。また、始動補助光源が反射鏡に固定されるため、光源装置を輸送する際に、光源装置に対して振動・衝撃が加わった場合でも、始動補助光源が落下する心配がない。また、従来技術のように、反射鏡に始動補助光源を設置する空間を作製することや反射鏡自体に気泡を形成し紫外線を放出する補助放電空間を設ける必要もないため、反射鏡の破裂耐性が低下することもない。さらに、始動補助光源の反射鏡への固定は、もともと高電圧給電線を接続するための高電圧給電端子を楕円反射鏡に固定するために使用していた固定手段の使用で済むため、始動補助光源を固定するための別個の部材を設ける必要がない。
請求項2に記載の発明によれば、固定手段によって始動補助光源を保持する導電性保持具を反射鏡に取付けるという極めて単純な作業で始動補助光源を容易に反射鏡に取付けることができる。
請求項3に記載の発明によれば、始動補助光源による作用およびトリガーワイヤによる作用の相乗効果によって、超高圧水銀ランプの電極間の絶縁破壊電圧を低下させることができ、主放電を容易に生じさせることができ、超高圧水銀ランプの始動性を向上させることができる。
請求項4に記載の発明によれば、固定手段によって始動補助光源を保持する導電性保持具を楕円反射鏡に容易に取付けることができるため、始動補助光源は高電圧を供給するための給電線が全く不要となり、従来の光源装置の如く、始動補助光源に給電線が接続されていることに伴って始動補助光源を取付ける作業が困難になるという問題が生じることがなくなり、作業性が飛躍的に向上する。また、始動補助光源が反射鏡に固定されるため、光源装置を輸送する際に、光源装置に対して振動・衝撃が加わった場合でも、始動補助光源が落下する心配がない。また、従来技術のように、反射鏡に始動補助光源を設置する空間を作製することや反射鏡自体に気泡を形成し紫外線を放出する補助放電空間を設ける必要もないため、反射鏡の破裂耐性が低下することもない。また、始動補助光源の反射鏡への固定は、もともと高電圧給電線を接続するための高電圧給電端子を楕円反射鏡に固定するために使用していた固定手段の使用で済むため、始動補助光源を固定するための別個の部材を設ける必要がない。さらに、始動補助光源による作用およびトリガーワイヤによる作用の相乗効果によって、超高圧水銀ランプの電極間の絶縁破壊電圧を低下させることができ、主放電を容易に生じさせることができ、超高圧水銀ランプの始動性を向上させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、始動補助光源は、超高圧水銀ランプから放射される光が反射鏡の貫通孔に相当する部分で反射される仮想反射光線内に配置されており、固定手段を設けた箇所は、超高圧水銀ランプからの光が反射されない箇所となることから、反射光の損失を最小限に抑えることができる。
請求項6に記載の発明によれば、始動補助光源が、反射鏡により集光された光線外の領域に配置されるので、反射光の損失を回避することができる。
請求項7に記載の発明によれば、始動補助光源に始動補助光源から放射される紫外光を反射する手段を設けることにより、始動補助光源から超高圧水銀ランプの発光空間へ向けて放射される紫外光の光量が増加することができるので、超高圧水銀ランプの始動性をさらに改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態を図1乃至図4を用いて説明する。
図1は、本実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図、図2は図1に示す超高圧水銀ランプの拡大断面図、図3は図1に示す始動補助光源の拡大断面図、図4(a),(b)は図1に示す楕円反射鏡の貫通穴に始動補助光源と高電圧給電端子を固定する固定手段を示す拡大断面図である。
これらの図において、1は超高圧水銀ランプ、101,102はそれぞれ超高圧水銀ランプ1の陽極および陰極、103は陰極102に巻回されたコイル、104は封止部、105は金属箔、106は外部リード、107は放電空間、108は発光部、2は楕円反射鏡、3はベース部材、4は一端は超高電圧水銀ランプ1の陰極102側の外部リード106と接続され、他端は高電圧給電端子9において高電圧給電線5と接続される高電圧給電線、5は不図示の給電装置に接続されて高電圧を供給する高電圧給電線、6は超高圧水銀ランプ1の放電空間に向けて紫外線を放射する始動補助光源、61,62はそれぞれ始動補助光源6に設けられた外部電極、63は始動補助光源6の補助放電容器、7は始動補助光源6を保持し、固定手段によって超高圧水銀ランプ1の貫通孔11に固定される導電性保持具、8はハトメ部材、9は高電圧給電線4と高電圧給電線5とを筒状部に挿入してカシメることによって電気的に接続するとともに、固定手段によって楕円反射鏡2の貫通孔11に固定される高電圧給電端子、10は内歯座金、11は楕円反射鏡2に設けられた貫通孔である。
【0010】
図1に示すように、光源装置は、超高圧水銀ランプ1と、超高圧水銀ランプ1を取囲む楕円反射鏡2と、楕円反射鏡2の首部に固定されたベース部材3と、固定手段によって楕円反射鏡2の貫通孔11に固定された導電性保持具7と、導電性保持具7によって保持された始動補助光源6とを備えている。また、始動補助光源6は、超高圧水銀ランプ1から放射される光が楕円反射鏡2の貫通孔11に相当する部分で反射される仮想反射光線内に配置されている。固定手段を設けた箇所は、超高圧水銀ランプ1からの光が反射されない箇所であることから、始動補助光源6を前記のように配置することにより、反射光の損失を最小限に抑えることができる。
【0011】
また、図2に示すように、超高圧水銀ランプ1は、発光部108と発光部108の両端に伸びる封止部104とを有する。発光部108内には、タングステンからなる一対の電極101,102(直流点灯方式の場合、陽極および陰極)が配置されるとともに、発光物質としての水銀が、0.15mg/mm以上であって、例えば0.2mg/mm封入される他、ハロゲンサイクルにより電極の構成材料であるタングステンが発光管の内壁に付着することを防止するため、臭素などのハロゲンガスが、2.0×10−4μmol/mm〜7.0×10−3μmol/mmの範囲であって、例えば、3.0×10−4μmol/mm封入され、さらにアルゴンガスが約13kPa封入されている。封止部104には、モリフデンからなる金属箔105が封止されている。金属箔105の一端には、発光空間107に向けて伸びる電極101,102の基端部が電気的に接続され、金属箔105の他端には、封止部104から封止部外方に突出する外部リード106の基端部が電気的に接続されている。
このような超高圧水銀ランプ1は、発光部108の最大外径が11.3mm、電極間距離が1.2mm、発光部108の内容積が116mm、管壁負荷が1.5W/mm、定格電圧が80V、定格電力が200Wである。
楕円反射鏡2は、超高圧水銀ランプ1から放射される光のうち、前方に向けて可視光線を反射するための誘電体多層膜が設けられた楕円反射面を有し、その第1焦点が超高圧水銀ランプ1の輝点が形成されるべき箇所に一致して超高圧水銀ランプ1が固定されている。詳細には、ベース部材3内部に超高圧水銀ランプ1の一方の封止部104が挿入され、セラミックス接着剤によってベ−ス部材3と封止部104とが接着固定されている。楕円反射鏡2に設けられた貫通穴11には、始動補助光源6を保持する導電性保持具7が後述する固定手段によって固定されている。
【0012】
また、図3に示すように、始動補助光源6は、石英ガラスからなる補助放電容器63と、この補助放電容器63の両端の外表面に配設された外部電極61,62とから構成され、補助放電容器63の内部には、放電用ガスとして、アルゴン、キセノン、ネオンなどの希ガスに加え、窒素またはヘリウム等の気体が1種類以上封入されている。さらに、ぺニング効果を得るために微量の水銀を封入しても良い。
外部電極61,62は、耐熱性・耐熱衝撃性に優れたステンレス、カンタル(鉄クロム合金)からなる線材を補助放電容器63の長手方向に巻回することによって形成されている。なお、外部電極61,62として、あらかじめコイル状に形成された線材を補助放電容器63に取付けるようにしても良い。
補助放電容器63は、例えば、全長が約15mm、外径が約3mm、肉厚が約0.8mmである。外部電極61,62は、例えば、φ0.3mmの線材によって、全長(補助放電容器63の長手方向)が約4mm、外径が約3mmのコイル状に形成され、外部電極間距離が約6mmである。補助放電容器63内には、例えば、アルゴンガスが10〜5×10pa程度、水銀が5×10−3mg/mm封入されている。
また、始動補助光源6は、補助放電容器63の一方の外部電極61が設けられている側の端部の周囲を覆うように、導電性保持具7に設けられた筒状部に嵌め込まれている。導電性保持具7(外部電極61)は、始動補助光源6の外部電極としての機能を兼ねており、始動補助光源6の他方の外部電極62は電気的に浮遊した状態となっている。
【0013】
また、図4(a),(b)に示すように、導電性保持具7と高電圧給電端子9は固定手段によって楕円反射鏡2の貫通孔11に取付けられている。すなわち、固定手段は、筒状のハトメ部材8および内歯座金10から構成され、筒状のハトメ部材8が、導電性保持具7、楕円反射鏡2の貫通孔11、高電圧給電端子9および内歯座金10に挿通された後、その突出した先端が拡がるよう折り曲げ加工されることにより、これらの部材が一体的に固定される。また、陰極102側の外部リード106に接続された高電圧給電線4と不図示の給電装置に接続されている高電圧給電線5とが高電圧給電端子9の筒状部においてカシメられることにより、電気的に接続されている。
【0014】
このような超高圧水銀ランプ1の始動時は、超高圧水銀ランプ1の陰極102および始動補助光源6を保持している導電性保持具7に高電圧(−14kV)が印加されると、陽極101が接地電位(0V)にあるので、陰極102と陽極101の間に高電圧が印加されるとともに、始動補助光源6の補助放電容器63内の放電空間において誘電体バリア放電が生成され、始動補助光源6から紫外線を含む光が放射される。始動補助光源6から放射された紫外光が超高圧水銀ランプ1の放電空間に到達すると、発光物質である水銀等の気体分子が光電離することによって、発光部108の内部に初期電子が多数存在することになるため、絶縁破壊電圧が低下し、超高圧水銀ランプ1を確実に点灯させることができる。
【0015】
本実施形態の発明によれば、始動補助光源6は高電圧を供給するための給電線が全く不要であり、固定手段によって楕円反射鏡2に固定された導電性保持具7に設けられた筒状部に補助放電容器63の一端を挿入するという、極めて単純な作業のみで始動補助光源6を容易に楕円反射鏡2に取付けることができる。そのため、従来の光源装置の如く、始動補助光源に給電線が接続されていることに伴って始動補助光源を取付ける作業が困難になるという問題が生じることがなくなり、作業性が飛躍的に向上する。また、始動補助光源6が導電性保持具7の筒状部に嵌め込まれることによって強固に固定されるため、光源装置を輸送する際に、光源装置に対して振動・衝撃が加わった場合でも、始動補助光源6が落下する心配がない。また、従来技術のように、反射鏡に始動補助光源を設置する空間を作製することや反射鏡自体に気泡を形成し紫外線を放出する補助放電空間を設ける必要もないため、反射鏡の破裂耐性が低下することもない。
【0016】
さらに、本実施形態の発明によれば、導電性保持具7の楕円反射鏡2の貫通孔11への固定は、もともと高電圧給電線4と高電圧給電線5とを接続する高電圧給電端子9を楕円反射鏡2の貫通孔11に固定するために使用していた固定手段の使用で済むため、導電性保持具7を固定するための別個の部材を設ける必要がなく、コスト面で有利である。
ここで、補助放電容器63の導電性保持具7が固定されていない側の外表面に設けられた外部電極62が電気的に浮遊した状態にあるにも係らず、始動補助光源6において誘電体バリア放電が発生する理由は、以下のとおりである。すなわち、他方の外部電極62が電気的に浮遊した状態にあるため、高圧からみると擬似的に接地電位にあり、また印加される高電圧が高周波のパルス波であることにより、一方の外部電極61と他方の外部電極62との間にも始動補助光源6の補助放電容器63の石英ガラスを介して内部の放電空間に容量結合的に高電圧が誘起されることによる。
【0017】
次に、本発明の第2の実施形態を図2乃至図4および図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
同図において、12は始動性を改善するために超高圧水銀ランプ1の外表面に沿って長手方向に張り渡され、高電圧給電線4と同電位となるトリガーワイヤである。なお、その他の構成は図1に示した同符号の構成に対応するので説明を省略する。
本実施形態の光源装置において、トリガーワイヤ12は、例えば、鉄クロム線からなり、超高圧水銀ランプ1の発光部108と陽極101側の封止部104との境界部近傍に巻回部が形成され、発光部108の外表面および陰極102側の封止部104に沿って張り渡され、陰極102側の外部リード106に巻回されて陰極102と同電位になっている。
【0018】
本実施形態の光源装置の始動時は、超高圧水銀ランプ1の陽極101および始動補助光源6の補助放電容器63に設けられた外部電極62が接地電位であり、トリガーワイヤ12と陽極101との間に高電圧(例えば、−14kV)が印加されるとともに、導電性保持具7(外部電極61)と外部電極62との間にも、補助放電容器63の石英ガラスを介して内部の放電空間に容量結合的に高電圧(例えば、−14kV)が誘起される。その結果、補助放電容器63の放電空間において誘電体バリア放電が発生し、始動補助光源6から超高圧水銀ランプ1の発光部108内の放電空間に向けて、紫外光が放射されることにより、発光部108内の放電空間に存在する水銀がイオン化することにより、絶縁破壊電圧が低下する。さらに、トリガーワイヤ12と陽極101との間に高電圧が印加されることにより誘電体バリア放電が発生し、発光部108内の水銀のイオン化が促進され、一層、絶縁破壊電圧を低下させることができる。
すなわち、本実施形態の発明によれば、始動補助光源6による作用およびトリガーワイヤ12による作用の相乗効果によって、超高圧水銀ランプ1の陽極101と陰極102間の絶縁破壊電圧を低下させることができ、陽極101と陰極102間での主放電を容易に生じさせることができ、超高圧水銀ランプの始動性を向上させることができる。
【0019】
次に、本発明の第3の実施形態を図2乃至図4および図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
同図において、13は、楕円反射鏡2に設けられ、導電性保持具7と高電圧給電端子14とが固定手段によって固定される第1の貫通孔、14はトリガーワイヤ15と高電圧給電線16とが電気的に接続される高電圧給電端子、15は超高圧水銀ランプ1の外表面に沿って長手方向に張り渡されたトリガーワイヤ、16は不図示の給電装置に接続されて高電圧を供給する高電圧給電線、17は、楕円反射鏡2に設けられ、給電線18と給電線19を電気的に接続するための不図示の給電端子が固定手段によって固定される第2の貫通孔、18は超高圧水銀ランプ1の陰極102側の外部リード106に給電するための給電線、19は不図示の給電装置に接続されて電圧を給電する給電線である。なお、その他の構成は図1に示した同符号の構成に対応するので説明を省略する。
同図に示すように、第1の貫通孔13においては、固定手段によって、導電性保持具7が固定されるとともに、トリガーワイヤ15と高電圧給電線16とが電気的に接続された高電圧給電端子14が固定されている。第2の貫通孔17においても、図4に示した固定手段と同様の固定手段が設けられており、給電線18と給電線19とが電気的に接続された不図示の給電端子が固定されている。トリガーワイヤ15は、例えば、鉄クロム線からなり、その一端が、超高圧水銀ランプ1の発光部108と陽極101側の封止部104との境界部近傍に巻回され、陽極側巻回部を形成することによって固定され、それに続いて発光部108に沿って張り渡され、陰極102側の封止部104に多数巻回されることによって陰極側巻回部が形成され、他端は高電圧給電端子14において高電圧給電線16と電気的に接続されている。
【0020】
本実施形態の光源装置の始動時は、超高圧水銀ランプ1の陽極101と陰極102との間に、例えば、300V程度の無負荷開放電圧が印加された状態において、トリガーワイヤ15と陽極101との間およびトリガーワイヤ15と陰極102との間に高電圧(例えば、−14kV)が印加されると同時に、導電性保持具7(外部電極61)と補助放電容器63に設けられた外部電極62との間にも、補助放電容器63の石英ガラスを介して内部の放電空間に容量結合的に高電圧(例えば、−14kV)が誘起される。その結果、補助放電容器63の放電空間において誘電体バリア放電が発生し、始動補助光源6から超高圧水銀ランプ1の発光部108内の放電空間に向けて、紫外光が放射され、発光部108内の放電空間に存在する水銀がイオン化することにより、絶縁破壊電圧が低下する。さらに、トリガーワイヤ15と陽極101との間およびトリガワイヤ15と陰極102との間に高電圧が印加されることにより、誘電体バリア放電が発生されるため、発光部108内の水銀のイオン化が促進され、一層、絶縁破壊電圧を低下させることができる。
【0021】
本実施形態に係る光源装置は、さらに以下の利点を有する。すなわち、超高圧水銀ランプの発光部108および封止部104は、その構成材料である石英ガラスを超高圧水銀ランプ1に適合した形状となるよう加工する段階において、不可避的に、例えば、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンが含有されており、封止部104と金属箔105との間にアルカリ金属イオンが存在した場合、箔浮き現象を生ずることによって封止部104が破損する問題を生ずる。しかし、陰極側巻回部に負の高電圧が印加されることから、このようなアルカリ金属イオンが陰極側巻回部に誘引されて発光部108および封止部104の外方に引出されるため、箔浮き現象に起因して封止部104が破損する問題を回避することができる。
【0022】
次に、本発明の第4の実施形態を図7を用いて説明する。
図7は、本実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
なお、同図に示す構成は図1に示す同符号の構成に対応するので説明を省略する。
同図に示すように、始動補助光源6を、楕円反射鏡2により集光される光線外の領域に配置する。始動補助光源6をこのように配置することにより、反射光の損失を完全に無くすことができる。
【0023】
次に、本発明の第5の実施形態を図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
同図において、20は放物反射面を有する放物反射鏡である。なお、その他の構成は図1に示す同符号の構成に対応するので説明を省略する。
同図に示すように、反射鏡として放物反射鏡20を用いる場合は、始動補助光源6は、その長手軸が超高圧水銀ランプ1の長手軸に平行となるよう配置することにより、反射光の損失を最小限にすることができる。
【0024】
次に、本発明の第6の実施形態を図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
同図において、21は始動補助光源6の背面側(超高圧水銀ランプ1に対して反対側の面)に、始動補助光源6の長手方向に沿って設けられた樋状の補助反射鏡である。なお、その他の構成は図1に示す同符号の構成に対応するので説明を省略する。
同図に示すように、始動補助光源6に補助反射鏡21を設けることにより、始動補助光源6から超高圧水銀ランプ1の発光部108内の放電空間へ向けて放射される紫外光の光量を増加することができるので、超高圧水銀ランプ1の始動性をさらに改善することができる。
【0025】
次に、本発明の第7の実施形態を図2乃至図4および図10を用いて説明する。
図10は、本実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
同図において、22は始動補助光源6の補助放電容器63に設けた外部電極62(図3参照)と超高圧水銀ランプ1の陽極側101の外部リード106間に接続された給電線、23は貫通孔である。なお、その他の構成は図1に示す同符号の構成に対応する。
同図に示すように、始動補助光源6の外部電極61には導電性保持具7を介して高電圧(例えば、−14kV)が給電され、始動補助光源6の外部電極62には給電線22が接続され接地電位となっている。
すなわち、楕円反射鏡2には、給電用の貫通穴が2つ形成されており、一方の貫通穴11には、固定手段によって始動補助光源6を保持する導電性保持具7が固定されているとともに、高電圧給電線4と高電圧給電線5とを電気的に接続する高電圧給電端子9が固定されている。他方の貫通穴23には、始動補助光源6の外部電極62に接続される給電線22が貫通孔23を通って超高電圧水銀ランプ1の陽極101側の接地電位に接続されている。
【0026】
なお、上記の各実施形態の光源装置においては、直流点灯方式を採用した場合について説明したが、これに限らず、交流点灯方式を採用した場合も同様の機能を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す超高圧水銀ランプの拡大断面図である。
【図3】図1に示す始動補助光源の拡大断面図である。
【図4】図1に示す楕円反射鏡の貫通穴に始動補助光源と高電圧給電端子とを固定する固定手段の拡大断面図である。
【図5】第2の実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
【図6】第3の実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
【図7】第4の実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
【図8】第5の実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
【図9】第6の実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
【図10】第7の実施形態の発明に係る光源装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 超高圧水銀ランプ
101,102 陽極および陰極
103 コイル
104 封止部
105 金属箔
106 外部リード
107 放電空間
108 発光部
2 楕円反射鏡
3 ベース部材
4 高電圧給電線
5 高電圧給電線
6 始動補助光源
61,62 外部電極
63 補助放電容器
7 導電性保持具
8 ハトメ部材
9 高電圧給電端子
10 内歯座金
11 貫通孔
12 トリガーワイヤ
13 第1の貫通孔
14 高電圧給電端子
15 トリガーワイヤ
16 高電圧給電線
17 第2の貫通孔
18 給電線
19 給電線
20 放物反射鏡
21 補助反射鏡
22 給電線
23 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管内に一対の電極が対向配置されるとともに0.15mg/mm以上の水銀が封入された超高圧水銀ランプと、該超高圧水銀ランプを取囲み超高圧水銀ランプから放射される光を被放射領域に向けて反射する反射鏡とからなり、前記超高圧水銀ランプに高電圧を供給する高電圧給電線を前記反射鏡に形成された貫通孔に挿通して高電圧給電端子に接続するとともに、固定手段によって前記高電圧給電端子を前記反射鏡に固定する光源装置において、
前記固定手段によって始動補助光源を前記反射鏡に固定したことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記固定手段は、前記始動補助光源を保持する導電性保持具を前記反射鏡に固定するものであることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記超高圧水銀ランプは、その外表面に沿って長手方向に張り渡され、前記高電圧給電線と同電位となるトリガーワイヤを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
発光管内に一対の電極が対向配置されるとともに0.15mg/mm以上の水銀が封入され、発光管の外表面に沿って長手方向に張り渡されたトリガーワイヤを有する超高圧水銀ランプと、該超高圧水銀ランプを取囲み超高圧水銀ランプから放射される光を被放射領域に向けて反射する反射鏡とからなり、前記トリガーワイヤを前記反射鏡に形成された貫通孔に挿通して高電圧給電端子に接続するとともに、固定手段によって前記高電圧給電端子を前記反射鏡に固定する光源装置において、
前記固定手段によって始動補助光源を保持する導電性保持具を前記反射鏡に固定したことを特徴とする光源装置。
【請求項5】
前記始動補助光源が、前記超高圧水銀ランプから前記貫通孔への光の仮想反射光線内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つの請求項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記反射鏡が楕円反射鏡であって、前記始動補助光源が、前記反射鏡により集光された光線外の領域に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つの請求項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記導電性保持具が、前記始動補助光源から放射される紫外光を反射する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つの請求項に記載の光源装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−66742(P2007−66742A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252318(P2005−252318)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】