説明

光照射装置及び顕微鏡

【課題】本発明は、波長の光で標本部位の照射位置決めを特定し、異なる波長の光で標本部位を照射する機能や、照射色、照射強度、照射スポット径、照射時間を情報処理手段からの指令により簡単に自在変更できる光照射装置を提供することである。
【解決手段】本発明は、結像手段1と像成形手段3と照明手段2を有し、ユーザ入力に基づいて情報処理を行い、前記像形成手段3による像の形成を制御する情報処理手段4を備えた光照射装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本などの像へ光の照射を行う光照射装置又は顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子操作した神経細胞の活動を光で操作する「オプトジェネティクス」と呼ばれる光遺伝学を用いた研究が脳・神経科学界分野において行われている。これは、従来の方法である電気刺激や薬理刺激などでは脳の神経細胞などを壊してしまう可能性がリスクとしてあり、この従来の方法の短所を補う方法として、生み出された画期的な技術である。オプトジェネティクスとは、生物の生み出した光感受性チャネルタンパク質(チャネルロドプシン)を脳の神経細胞に発現させることにより、神経細胞を光で操作することができる技術のことである。この研究分野においては、顕微鏡下に、遺伝子工学的に光感受性を賦与された神経細胞などの生細胞に光照射してその活動を制御する目的や、細胞の活性状態や特定遺伝子の発現等を蛍光で検出する目的のために、落射蛍光顕微鏡を利用して光照射する方法が用いられている。このような蛍光顕微鏡としては、特許文献1に記載の蛍光物質で標識された標本の蛍光像を形成する結像手段と、標本を照明する落射照明手段と、対物レンズに入射する照明光のうち、対物レンズの光軸付近の光強度を低減させる減光手段とを備えている蛍光顕微鏡、並びに、蛍光観察用の落射照明装置および落射照明方法が提案されている。特許文献1に記載の落射蛍光顕微鏡は、ランプハウス中の光源と落射照明装置によって照明されると、標本内の蛍光物質が励起され、蛍光を発するようになっている一般的な落射蛍光顕微鏡である。この落射照明装置内には、励起フィルタを有しており、励起フィルタは、標本内の蛍光物質を励起するために適切な波長域を透過する分光特性のフィルタである。照明光は落射照明装置の光軸上を進行している間に、励起フィルタを通過し、標本内の蛍光物質を励起可能な波長域の照明光となってダイクロイックミラーに入射し、そこでの反射により、対物レンズ側に向けて射出される。そして、蛍光物質を励起可能な波長域の照明光が、対物レンズの瞳面に集光されるものであり、照射するポイントは1照射に対して1箇所の選択することができる。また、標本により励起する波長域が異なるため、複数の励起フィルタを準備して励起フィルタの差し替えで対応を実施している。
【0003】
更に、照明光の高精度な色特性を確保したうえで、照明光の迅速にして高精度な調整制御を実現し得るようにした顕微鏡として、特許文献2に記載の照明光をオン・オフ切換制御により選択的に反射制御して標本面上の任意の位置に、照射するための複数の微小ミラーからなる照明手段を、標本と共役位置で、且つ、対物レンズで形成される光軸に垂直に配置するように構成した顕微鏡が提案されている。
【0004】
また、顕微鏡観察を行いながら、その視野内において、光刺激用の光の照射位置を特定し、かつ、特定された照射位置の光を精度よく光刺激する光刺激装置として、特許文献3に記載の物質の構造を変化させない第2の波長の可視光を標本へ照射し、標本における光刺激部位の特定するステップと、特定された光刺激部位に、物質の構造が変化する第1の波長の光を照射するステップを備える顕微鏡観察方法、光刺激装置および顕微鏡観察装置が提案されている。
【0005】
更に、良好な光源の制御を行うことができる蛍光顕微鏡およびコンピュータプログラムとして、特許文献4に記載の複数の小型発光素子を有する光源と対物レンズと観察手段と点滅制御手段を具備し、複数の小型発光素子のそれぞれの点灯開始時間を互いにずらすように制御した蛍光顕微鏡およびコンピュータプログラムが提案させている。
【0006】
また、試料に刺激を与えるための刺激用レーザー光源を励起してその反応光を観察するための観察用励起光源を備えた走査型レーザー顕微鏡として、特許文献5に記載の観察用励起レーザ光源と第1の走査手段とプレビュー手段を有し、前記プレビュー手段により表示されるプレビュー画像上で、当該標本に刺激を与える位置を指定する指定手段と、刺激用レーザー光源と第2の走査手段と光学素子切換え手段と記憶手段を有し、該記憶手段に記憶された補正情報に基づいて、指定された位置に前記刺激用レーザー光を照射するように、制御手段を具備した走査型レーザー顕微鏡が提案されている。
【0007】
更に、観察対象物の像を小領域ごとに撮影するためのナビゲージョン位置を使用者からの入力に基づいて特定し、特定したナビゲージョン位置を中心としたナビゲージョン位置に隣接する周囲の所定範囲に観察対象領域を設定することができる観察装置、および観察プログラムとして、特許文献6に記載の位置特定手段と制御手段とを備えた観察装置、および観察プログラムが提案されている。
【0008】
また、光刺激観察の待機時間を短縮することのできる光刺激装置及び観察装置として、特許文献7に記載の指定信号に基づいて光路制御手段を制御し、前記実行指示信号に基づいて刺激用の光を出射する光源を制御する制御手段を備えた光刺激装置及び観察装置が提案されている。
【0009】
更に、標本の必要とする範囲に、必要とする時間だけ照明光を照射することができ、必要以外の標本への照明光を照射する影響を最小限に抑えることができる顕微鏡として、特許文献8に記載の照明手段からの照明光を偏向させる複数の微小光偏向部を有する光偏向素子アレイと、標本に照明光を照射する状態と、標本に照明光を照射しない状態とを切り換える切替手段とを有する顕微鏡が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−12975号公報
【特許文献2】特開2003−107361号公報
【特許文献3】特開2005−337729号公報
【特許文献4】特開2005−173487号公報
【特許文献5】特許4576150号公報
【特許文献6】特開2007−328135号公報
【特許文献7】WO2009/011107号公報
【特許文献8】特開2004−309702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、チャネルロドプシンなどを用いた光遺伝学的方法は、脳神経科学の基礎研究においてイノベーションを引き起こしているが、汎用的な光照射システムが開発されていないため、研究の裾野の広がりを欠いている課題がある。例えば、特許文献1に記載の蛍光顕微鏡、並びに、蛍光観察用の落射照明装置および落射照明方法は、通常のこのような工程では、標本にスポットを当てたい箇所に対して、予め、スポット位置が正しいのかを確認するために、まず標本にスポットを当てても励起しない励起フィルタへ差し替えを行った後、照射を実施し照射箇所の位置決めを行う。そして、一端シャッターを閉めて、次に、標本に励起する励起フィルタへ差し替えを行い、再び照射をすることで、標本内の蛍光物質が励起され、蛍光を発するようにできる。そのため、複数の励起フィルタを準備して励起フィルタの差し替えをしなければならない手間がある。また、照射するポイントは1照射に対して1箇所にスポット照射するものであるので、1つの標本に対して、何箇所もスポット照射をしなければならない時は、同じ工程を何度も繰り返し行わなければならず、非常に手間と時間がかかる作業である。
【0012】
そこで、1つの標本内に対して複数箇所へ同時に照射することが可能なものとして、特許文献2に記載の顕微鏡が提案されている。この顕微鏡は角度位置が静電的に変化される複数の微小ミラーを2次元空間的に配列し、各微小ミラーに対する印加電圧をオン・オフ制御することにより、各微小ミラーがそれぞれ独立に制御できるものであるので、複数箇所へ同時に照射することは可能である。しかし、励起フィルタの差し替えにより、照射する箇所の位置決めを行い、一端シャッターを閉めてから、実際に励起するフィルタへ差し替えを実施した後に、照射を実施する工程は特許文献1のものと同じであり、この一連の工程を迅速に行わなければ、位置決めした位置から標本が流動して別の場所を照射してしまう問題が発生していた。
【0013】
そこで、特許文献2の励起フィルタの差し替えを不要にして、異なる波長の光をもつ光源を複数設けて、光源の切り換えにより位置決めするための照射と標本を励起させるための照射の切り換えをする装置の発明として、特許文献3の顕微鏡や、特許文献4の蛍光顕微鏡や、特許文献5の走査型レーザ顕微鏡や、特許文献6の観察装置や、特許文献7の光り刺激装置などが提案されている。これらの顕微鏡や装置は、第1の波長の光を発生する第1の光源と、第2の波長の光を発生する第2の光源とを、別々の光源装置として備えることにより、ダイクロイックミラーを後退させることにより、第1の光源からの光の光軸と第2の光源からの光の光軸とが一致するようにしたものである。よって、同じ機能を有する光源装置が1台の光刺激装置内に2つ以上必要になり、装置のサイズが大きくなる上、2台分の光源装置やそれらを接続するための光ファイバなどの接続線が必要になるので、コストアップとなる問題があった。また、特許文献3や特許文献4、特許文献5や特許文献6や特許文献7には、複数箇所を同時に照射する機能はなく、特許文献1に記載したものと同じで、照射するポイントは1照射に対して1箇所にスポット照射するものであるので、1つの標本に対して、何箇所もスポット照射をしなければならない時は、同じ工程を何度も繰り返し行わなければならなく手間である。
【0014】
そこで、複数箇所を同時に照射できるようにするためにデジタルミラーデバイスを顕微鏡内に組み込んだ技術が、特許文献8に記載されている。このような特殊な機能を有する装置は、光照射を適切に行うために顕微鏡などの内部にデジタルミラーデバイスや光源やレンズを直接組み込んだり、光を照射するために作られた光照射装置を顕微鏡などに装着することで、ハードウェア側で光の照射範囲の調整がなされた状態のもとで、販売されているものであるので、非常に高価な装置となってしまっている。しかしながら、その割には使用する研究者の使い勝手が良く汎用的の高い装置にはなっていない。例えば、特許文献8では、照射強度を自在に変化できたり、照射するスポット径を自在に変更できたり、照射色を複数色同時または、時差設定により複数位置に照射することなど、スポットごとに異なるパターンで異なる波長のパラレル光照射ができる機能は備わっておらず、また、これらの機能を自由に併用して使用するためのシステムは開発されていないため、研究の裾野の広がりを欠いている課題がある。
【0015】
本発明の目的は、従来に比べて、操作性に優れ汎用性が高くあり、非常に安価で、標本部位に対する光照射が可能な光照射装置又は顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、レンズを有し、観察対象からの光に基づいて結像を行う結像手段と、光源を有し、前記光源からの光による像を形成する像形成手段と、前記像形成手段が形成した光の像を、前記観察対象に照明する照明手段と、ユーザ入力に基づいて情報処理を行い、前記像形成手段による像の形成を制御する情報処理手段とを備え、前記像形成手段は、DMD素子を備えたプロジェクタであって、前記観察対象への刺激が相対的に大きな波長特性をもつA波長光を用いた像形成と、前記観測対象への刺激が無い又は刺激が相対的に小さい波長特性をもつB波長光を用いた像形成が可能であり、前記情報処理手段は、前記像形成手段に対し、前記B波長光を用いて像を形成して位置決めを行った後に、前記A波長光を用いて像形成をさせる制御を行う光照射装置であって、前記像形成手段と照射手段との間に凸レンズを設置するとともに、対物レンズを通過して映し出される観察対象領域と同じ範囲内に、前記プロジェクタから発する光の照射範囲が設定できるように、前記情報処理手段からの入力指示により、前記照射範囲の径や位置の制御を行う光照射装置である。
【0017】
本発明は、前記情報処理手段は、照射色を複数色同時、または時差設定により複数位置へ照射できる制御を行う光照射装置である。
【0018】
本発明は、前記情報処理手段は、照射強度を変化できる制御を行うとともに、複数パターンの異なる照射強度を同時、または時差設定により複数位置へ照射できる制御を行う光照射装置である。
【0019】
本発明は、前記情報処理手段は、照射するスポット径を変更できる制御を行うとともに、複数パターンの異なる前記スポット径を同時、または時差設定により複数位置へ照射できる制御を行う光照射装置である。
【0020】
本発明は、前記情報処理手段は、照射時間を設定できる制御を行う光照射装置である。
【0021】
本発明は、前記像形成手段内の光源はLEDまたは、レーザーダイオードである光照射装置である。
【0022】
本発明は、前記像形成手段内の光源を追加、または交換する光照射装置である。
【0023】
本発明は、前記像形成手段は、互いに分離した複数の像を形成可能であり、前記情報処理手段は、各像の形成を個別に制御する光照射装置である。
【0024】
本発明は、光照射装置を備え、前記結像手段により、観察対象を拡大した結像を行う顕微鏡である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、レンズを有し、観察対象からの光に基づいて結像を行う結像手段と、光源を有し、前記光源からの光による像を形成する像形成手段と、前記像形成手段が形成した光の像を、前記観察対象に照明する照明手段と、ユーザ入力に基づいて情報処理を行い、前記像形成手段による像の形成を制御する情報処理手段とを備え、前記像形成手段は、DMD素子を備えたプロジェクタであって、前記観察対象への刺激が相対的に大きな波長特性をもつA波長光を用いた像形成と、前記観測対象への刺激が無い又は刺激が相対的に小さい波長特性をもつB波長光を用いた像形成が可能であり、前記情報処理手段は、前記像形成手段に対し、前記B波長光を用いて像を形成して位置決めを行った後に、前記A波長光を用いて像形成をさせる制御を行う光照射装置であって、前記像形成手段と照射手段との間に凸レンズを設置するとともに、対物レンズを通過して映し出される観察対象領域と同じ範囲内に、前記プロジェクタから発する光の照射範囲が設定できるように、前記情報処理手段からの入力指示により、前記照射範囲の径や位置の制御を行う光照射装置であるので、市販されているDLPプロジェクタから投影される光を例えば顕微鏡内に取り込むため、顕微鏡に装着された光源アダプタとDLPプロジェクタの投影口の間に凸レンズを1つ設置し装着することで、光照射装置のハードウェア側の構成はなされるので、従来のハードウェア側で必要となっていた専用レンズやその他組み込むための部品、組立費などにかかる費用が不要になり、ハードウェア側にかかっていたコストを大幅に削減することができるものである。また、従来ハードウェア側で調整していた光源から発せられる光の照射範囲の調整については、コンピュータなどの情報処理手段側で設定を行うことができる。更に、コンピュータなどの情報処理手段から、マウスやキーボードなどの入力指令により、簡単に標本部位の照射位置決めの特定や、標本部位の光の照射を実施することができる。よって、操作性に優れ、汎用性の高く、また非常に安価な光照射装置を提供することができる。
【0026】
本発明は、前記情報処理手段は、照射色を複数色同時、または時差設定により複数位置へ照射できる制御を行う光照射装置であるので、励起フィルタの差し替えをする必要がなく、コンピュータなどの情報処理手段から、マウスやキーボードなどの入力指令により、簡単に照射色を切り替える制御を行うことができる光照射装置を提供することができる。また、標本などの像の中に複数色の異なる色目の照射光を選定して、照射したい複数位置を選定し同時に照射したり、予め決められた位置から順次時差による照射をコンピュータなどの情報処理手段から、マウスなどの入力指令により、簡単に制御を行うことができる光照射装置を提供することができる。
【0027】
本発明は、前記情報処理手段は、照射強度を変化できる制御を行うとともに、複数パターンの異なる照射強度を同時、または時差設定により複数位置へ照射できる制御を行う光照射装置であるので、照射強度を変更するためのフィルタの差し替えをする必要がなく、コンピュータなどの情報処理手段から、マウスやキーボードなどの入力指令により、簡単に照射強度の制御を行うことができる光照射装置を提供することができる。また、標本などの像の中に複数の異なる照射強度を選定して照射したい箇所へ同時に照射したり、予め決められた位置から順次時差による照射をコンピュータなどの情報処理手段から、マウスなどの入力指令により、簡単に制御を行うことができる光照射装置を提供することができる。
【0028】
本発明は、前記情報処理手段は、照射するスポット径を変更できる制御を行うとともに、複数パターンの異なる前記スポット径を同時、または時差設定により複数位置へ照射できる制御を行う光照射装置であるので、照射するスポットの径サイズを、マウスなどのスクロールバーや矢印キーの上下キーなどの入力指令で、簡単にサイズ変更を実施することができる光照射装置を提供することができる。標本などの像の中に複数の異なるスポット径を選定して照射したい箇所へ同時に照射したり、予め決められた位置から順次時差による照射をコンピュータなどの情報処理手段から、マウスなどの入力指令により、簡単に制御を行うことができる光照射装置を提供することができる。
【0029】
本発明は、前記情報処理手段は、照射時間を設定できる制御を行う光照射装置であるので、コンピュータなどの情報処理手段から、マウスやキーボードなどの入力指令により、簡単に照射時間を設定できる制御を行うことができるので、毎回、照射する時間を決められた設定時間で自動的に実施することができ、再現性に優れた光照射装置を提供することができる。
【0030】
本発明は、前記像形成手段内の光源はLEDまたは、レーザーダイオードである光照射装置であるので、パルス変調処理をせずとも、指定する色目の波長の光をダイレクトに照射することが可能な光照射装置を提供することができる。
【0031】
本発明は、前記像形成手段内の光源を追加、または交換する光照射装置であるので、指定する色目の波長の光をダイレクトに照射することが可能な光照射装置を提供することができる。
【0032】
本発明は、前記像形成手段は、互いに分離した複数の像を形成可能であり、前記情報処理手段は、各像の形成を個別に制御する光照射装置であるので、コンピュータなどの情報処理手段から、マウスやキーボードなどの入力指令により、互いに分離した複数の像である標本部位の照射位置決めの特定や、前記標本部位の照射を簡単に実施することができる光照射装置を提供することができる。
【0033】
本発明は、光照射装置を備え、前記結像手段により、観察対象を拡大した結像を行う顕微鏡であるので、顕微鏡を用いて標本などの像の観察を行いながら、コンピュータなどの情報処理手段から、マウスやキーボードなどの入力指令により、簡単に標本部位の照射位置決めの特定や、標本部位の照射を簡単に実施することができる光照射機能を有する顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態にかかる光照射装置の側面図である。
【図2】光の照射できる範囲を調整するイメージ1を示す概略図である。
【図3】光の照射できる範囲を調整するイメージ2を示す概略図である。
【図4】接眼レンズから覗いて写し出された標本を示す概略図である。
【図5】モニタ上に表示される表示画面1を示す概略図である。
【図6】モニタ上に表示される表示画面2を示す概略図である。
【図7】モニタ上に表示される表示画面3を示す概略図である。
【図8】図3並びに図4に示した表示画面の異なる実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に示すように本発明の一実施形態にかかる光照射装置10は、標本zなどの像の蛍光観察に使用される結像手段1に、標本zなどの像を照明する落射型などの照明手段2を組み込んだ顕微鏡やそれに類似する光照射装置である。落射型の照明とは、標本zに対して上から照明をあてる照明方式のことであり、標本zに反射させた光を拡大して観察することができる。また、光源からの光を対物レンズ1aを通して標本zに照射するため、対物レンズ1aがコンデンサレンズの役割をも兼ねることになる照明手段2である。前記結像手段1は、標本zを置載するステージ1eと、前記ステージ1eの上に、対物レンズ1aが対向配置され、前記対物レンズ1aの光軸5上に、結像レンズ1cやプリズム1d、接眼レンズ1bが配置されている。また、前記照明手段2は、標本zを照明する装置であり、前記結像レンズと1cと対物レンズ1aの間にハーフミラー2eを介して接続される装置である。また、前記照明手段2の装置には光源アダプタ2aが設置されており、前記光源アダプタ2aに像形成手段3を接続することで、光源3aから照明を発する光を出すことができる。
【0036】
図1に示すように、前記像形成手段3はDMD素子3bが組み込まれたプロジェクタである。前記DMD素子3bとしては、米国テキサス・インスツルメンツ社が開発したデジタルマイクロミラーデバイスが一般的に知られている。前記DMD素子3bは、基板上に複数のマイクロミラーを二次元に縦横に配置し、各マイクロミラー下方にある2つのアドレス電極に電圧を印加することで、マイクロミラーの傾斜角度を変化させ、照射光の反射を制御できるものであり、前記DMD素子3bをプロジェクタ内に組み込んだものがDLPプロジェクタである。DMD並びにDLPは、米国テキサス・インスツルメンツ社の商標として登録されている。DLPプロジェクタは、前記DMD素子3bを組み込んだ映像システムのことであり、DLPチップにグラフィック信号を入力し、光源3a及びレンズと連動させることにより、DMD素子3bのミラーがデジタル画像を反射してスクリーンに拡大して投影するための装置として販売されているが、DLPプロジェクタの投影口に凸レンズ6を1つ装着することで、拡大して投影する構造のDLPプロジェクタを、投影する映像を絞り込み縮小させて投影させることが可能になる。尚、装着する凸レンズ6については、市販の規格品の中から装着条件に適した凸レンズ6を選び装着すれば良い。よって、DLPプロジェクタから投影される映像の光を顕微鏡内に取り込むためには、顕微鏡に装着された光源アダプタ2aとDLPプロジェクタの投影口の間に凸レンズ6を装着することで、光照射装置10のハードウェア側の構成は実現することができるようになる。
【0037】
次に、本発明の光照射装置10は市販のDLPプロジェクタを標本zへ照射するための光源となるようにする必要があるが、前記プロジェクタは、もともと映像をスクリーンにむけて上向きに拡大して映し出すように作られているため、前記プロジェクトの本体に対して、光軸5が斜め上にずれた位置になってしまう。前記プロジェクタの光を顕微鏡などに取り込む場合は、前記プロジェクタの投影角度をできるだけまっすぐにし、光軸5をまっすぐに投影できるようにするため、前記プロジェクタの本体を斜め下向きに傾けて設置する必要がある。しかしながら、プロジェクタを斜め下向きに傾けながら、顕微鏡などの対応レンズ2c、2dから映し出される観察領域の表示範囲aに、プロジェクタから発せられる光の領域b内の範囲にあって、光を照射できる照射範囲b0を前記観察領域の表示範囲aと同じ形状サイズで同じ位置へ合わせて調整していくのは図3に示すように、顕微鏡から覗きながら調整していくことになるので、ミリメートル以下単位での微妙な調整が必要になり前記プロジェクタ本体の傾けなどによるハードウェア側だけで調整するのは至難の業である。そのため、本発明の光照射装置10ではコンピュータ4aなど情報処理手段4側で、前記光の領域b内の範囲にあって前記光の照射範囲b0を、上下移動や左右移動、斜め移動をさせたり、または拡大したり縮小させたりしながら、図4に示すように、前記観察領域の表示範囲aと同じ範囲へキーボードの矢印キーやマウス4cなどの入力指令により調整できる調整機能を有している。これにより、大まかな投影角度調整は前記プロジェクタの本体を下向きに傾けるなどハードウェア側の調整をまず行い、微調整の部分については、前記情報処理手段4であるソフトウェア側で調整することができるものである。
【0038】
前記像形成手段3であるDLPプロジェクタから放射される光源3aとして、R−LED、G−LED、B−LEDなどのLED光源3aを内蔵したものが販売されているが、レーザーダイオードからなる照明を組み込んだものやカラーホイルと水銀ランプを組み込んだDLPプロジェクタを利用しても良い。例えば、赤色と緑色と青色の3色の光源3aをLED照明として前記像形成手段3内へ配置することで、R−LEDからは赤色がもつ波長の光を前記DMD素子3bを通して複数箇所へ照射することができる。同様に、G−LEDからは緑色がもつ波長の光を、B−LEDからは青色がもつ波長の光を前記DMD素子3bを通して複数箇所へ照射させることができる。また、黄色やオレンジ色、紫色などの色目をもつLEDを前記像形成手段3に追加したり、差し替えしたりすることで、黄色やオレンジ色、紫色などの色目をもつ波長の光についても、ダイレクトに照射することができるようになる。よって、複数の照射光を標本zの異なる部位へ同時または、時差により照明光を放射させることができるものである。
【0039】
このようなLED光源3aをもつDLPプロジェクタを前記光源アダプタ2aへ設置し、DLPプロジェクタと情報処理手段4を有するパソコンなどのコンピュータ4aへ接続することで、必要な色目や波長の光を前記コンピュータ4aに接続しているマウス4c等の入力手段の指令により、照射開始指令や照射終了指令、更に、照射する時間や照射する波長の光などを自在に簡単操作でパソコンなどの前記コンピュータ4aから指令することができるようになる。
【0040】
標本zの蛍光観察時、前記光源3aからの照明光は図1に示すように前記DMD素子3bに向って放射される。放射された光は破線に示す光軸5に沿って光源アダプタ2a内に設置しているミラー2bに反射し、照明手段2内に設置のレンズ2cとレンズ2dに向けて放射され、ハーフミラー2eに反射して対物レンズ1aに集光されて、標本zへ照射される。前記標本zは照射されることで、蛍光物質が照射光により励起され、前記標本z自身が蛍光を発生するようになる。発生した蛍光像及び標本z像は、結像手段1である顕微鏡の対物レンズ1aから結像レンズ1cに導かれ、プリズム1dを通って接眼レンズ1bを介して図2に示すように観察できるようになる。
【0041】
更に、結像手段1である顕微鏡にCCDカメラを装着することで、接眼レンズ1bで観察できる標本zの蛍光像や標本z像が、コンピュータ4aを介して図5乃至図8に示すようにモニタ4b上に写し出すことができるようになる。
【0042】
光照射装置10は、LED光源3aをもつDLPプロジェクタを接続することで実現できると先に説明したが、この方法だけに限らず、例えば、白色のLED光源3a又は水銀ランプによる光源3aとDMD素子3bの間に高速で回転するカラーホイールを配置して、赤色・緑色・青色の光を時分割でデジタルDMD素子3bへ当てる方法や、多チャンネルのレーザーダイオード光源でも良い。また、光照射装置10は、DMD素子3bを備えたプロジェクタだけに限らず、それに類似する機能を備えた像形成手段3であれば、同様の効果を有することができる。
【0043】
このように、例えば標本zに青色の波長域の光を照射することで前記標本zが反応する波長の光をA波長光とした場合、青色以外の波長域の光の中には、標本zに波長域の光を照射しても前記標本zが反応しない波長域の光が存在する。この標本zに反応しない波長域の光をB波長光とした場合、前記B波長光の色目が例えば赤色の波長域の光であった場合、赤色の波長域の光をコンピュータ4aなどの情報処理手段4を通してマウス4cやキーボードなどのクリック指令により指定することで、指令を受けたプロジェクタなどの像形成手段3は指令された赤色の波長域の光となる前記B波長光を放射する。放射された前記B波長光は照明手段2を通って、ハーフミラー2eに反射して対物レンズ1aに集光され標本z部位の指定した箇所に前記B波長光があたることで、実際に照射したい箇所の標本zに前記B波長光が照明されて、実際に照射したい箇所の位置を把握することができる。前記B波長光で位置決めした後、前記A波長光へコンピュータ4aなどの情報処理手段4を通してマウス4cやキーボードなどのクリック指令により切り替えすることで、B波長光にて位置決め特定した前記標本z部位へ前記A波長光を照射することができるようになる。
【0044】
前記B波長光と前記A波長光の設定方法については、図5及び図6に示すように、モニタ4b上に写し出されている表示画面の右上にSelectionと表示された光の選択eを設定できる箇所が設けられており、マウス4cで前記光の選択eをクリックすると、ReferencelightとIrradiatinglightの2つのどちらかを選択して切り替えできるようになっている。Referencelightを選択することで、図5に示す表示画面となり、前記B波長光の照射強度設定fや色目設定gを行うことができる。
【0045】
次に、図5に示すSelectionと表示された光の選択eを、Referencelight表示からIrradiatinglightへ選択しなおすことで、図6に示す表示画面を表示させることができ、前記A波長光の設定画面へ切り替えすることができるようになる。
【0046】
図6に示すように、照射する時間を0.1秒単位で設定することができる照射時間設定jをモニタ4b上に表示される表示画面に設けている。また、1秒間の照射時間の中で、前記A波長光とB波長光の切り換えにより照射する、照射しないを何回繰返すのかを設定することができるスポット点滅設定kをモニタ4b上に表示される表示画面に設けている。例えば前記照射時間設定jのところへ1と設定し、スポット点滅設定kのところへ5と設定すれば、1秒間に5往復回数、A波長光とB波長光が交互に切り替わる設定を実施することができる。
【0047】
更に、図6に示すように、標本zへ照射するための光の強さを設定することができる照射強度設定fをモニタ4b上に表示させる表示画面に設けている。100%であれば放射する光は、前記光源3aが有する最大強度の明るさで放射することができ、99%、98%、97%と数値が下がるにつれて徐々に明るさが失われ、0%になると光は放射さていない状態にすることができる。
【0048】
また、図6に示すように、標本zへ照射するポイントの光の色目を自在に変更できる色目設定gモニタ4b上に表示させる表示画面に設けている。例えば、Rの設定を最大値の255にし、Gを0、Bを0と設定し、照射強度設定fを100%にした場合、照射するポイントの光の色目は最も光の強度が強い赤色となり、照射される波長域の光も、プロジェクタ内の光源3aであるR−LEDがもつ波長域の光をそのままダイレクトに放射することができる。また、Rを0、Gを最大値の255、Bを0と設定し、照射強度設定fを100%にした場合、照射ポイントの光の色目は最も光の強度が強い緑色となり、プロジェクタ内の光源3aであるG−LEDがもつ波長域の光をそのままダイレクトに放射することができる。更に、Rを0、Gを0、Bを最大の255と設定し、照射強度設定fを100%にした場合の照射ポイントの光の色目は最も光の強度が強い青色となり、プロジェクタ内の光源3aであるB−LEDがもつ波長域の光をそのままダイレクトに放射することができる。
【0049】
よって、例えばRを255、Gを125、Bを0と設定した場合、色目はオレンジ色の光を放射しているが、光の波長域はRとGが混在したものとなるため、オレンジ色の光がもつ波長域とは異なる光の波長域が放射されるため、オレンジ色の光の波長域を放射したい場合は、オレンジ色に照明するLEDを準備して、プロジェクタ内の光源3aを付け替えるなどすることで達成することができる。
【0050】
更に、図6に示すようにモニタ4b上に表示される表示画面には、照射するためにマウス4cで指令した複数のポイント跡が表示されている場合に、そのポイント跡を消去するための消去ボタンhが設けられている。また、前記表示画面には、照射を開始する照射ボタンi1も設けられている。照射開始する方法としては、表示画面上に設定されている前記照射ボタンi1をマウス4c等でクリック選定してコンピュータ4aへ指令し照射開始する方法以外にも、予め設定しておいたキーボードのキーを押すことで実施することもできる。更に、図7に示すように、照射時間設定jにおいて設定した照射時間に対して、照射開始されてからの残り秒数がカウント表示nとしてモニタ4bの表示画面上へ表示させる機能も有する。前記カウント表示nで残り秒数のカウントが自動表示されている間、図4に示すように照射ボタンi1のIrradiationと表示されている文字が、照射実施中は、図8に示すように照射ボタンi2のAbortという文字へ自動的に切り替わるように設定されている。これにより、照射中の有無を表示画面上で把握することができるようになっている。
【0051】
更に、図5及び図6に示すように、観察領域の表示範囲a内には標本zと照射する箇所を位置決め選定するために、マウス4cなどのクリックによる選択で目印をつけたスポットb1、b2、b3を表示させることができる。前記スポットb1、b2、b3径については、パソコンなどのコンピュータ4aからの指令により、照射するスポットb1、b2、b3径を自在に変更できる機能を有している。照射するスポットb1、b2、b3の径サイズの変更の仕方は、マウス4cのスクロールバーを上に転がすことで、スポットb1、b2、b3径のサイズがスポットb1、スポットb2、スポットb3というように徐々に大きくすることができ、また、マウス4cのスクロールバーを下へ転がすことで、徐々に小さくしていくことができるものである。スポットb1、b2、b3径の変更については、キーボードの上下キーを利用することで、同様の動作を可能にすることができる。
【0052】
更に、図5及び図6に示すように、これから目印として指令するスポットb1、b2、b3径のサイズがどれぐらいの大きさであるのかを表示させることができるスポット径表示cを表示させることができる。スポットb1、b2、b3径で一番小さいスポットb1、b2、b3径を1%とした場合、接眼レンズ1bを覗いた状態で表示される観察領域の表示範囲a全体が隠れる径の大きさを100%と設定し、1%から100%の範囲でスポットb1、b2、b3径の大きさを自在に変更することができるものである。また、スポットb1、b2、b3した箇所が何カ所であるのか確認することができるスポット数表示dを表示させることができる。
【0053】
前記スポット径表示cと前記スポット数表示dについては、図5及び図6に示すように、モニタ4bへの画面表示だけに限らず、図2に示すように接眼レンズ1bを覗いた状態においても、観察領域の表示範囲a内にスポット径表示cとスポット数表示dを表示する機能を有している。よって、前記接眼レンズ1bを覗いて標本zを確認する場合であっても、モニタ4b上に写し出される標本zを確認する場合であっても、どちらの場合においても、標本zに示されたスポットb1、b2、b3や前記スポット径表示c、前記スポット数表示dを確認しながら作業を実施することができるものである。
【0054】
光照射装置10は、複数パターンの異なる照射強度やスポットb1、b2、b3径を同時、または時差設定mにより複数位置へ照射できる機能を有している。同じ照射強度で複数の箇所、例えば前記スポットb1、b2、b3径を同時に照射したい場合については、図6に示す照射時間設定jやスポット点滅設定k、照射強度設定fや色目設定gを設定した後、時差設定m部分については入力をせずに空白の状態にしておくことで、複数箇所への同時照射を実施することができる。また、予め決められた位置から順次時差による照射を行う場合は、図6に示す時差設定mへ照射を開始する時間と、照射する時間の設定を行うことで、順次照射を自動開始していけるようになっている。例えば、図6に示すようにスポットb1、スポットb2、スポットb3の順で、照射するように設定をしたい場合は、Interval(s)と画面上に表示されている時差設定mのところのTM−startと表示された列の一行目へ、照射を何秒後に開始するのか開始時間m1の設定を行うことができる。次に、TM−onと表示された列の一行目にどれだけの間、照射をするのか照射時間m2の設定を行うことができる。同様に、スポットb2の照射開始する時間と照射する時間を設定したい場合は、開始時間m3と照射時間m4へ数値の設定を行うことで、時差による照射を実施することが可能となる。
【0055】
例えば、図6の時差設定mのところの開始時間m1へ3.0と設定することで、照射ボタンi1をクリックした後、3.0秒後に照射される設定ができる。また、照射時間m2へ2.0と設定することで、A波長光が2.0秒間照射される設定をスポットb1にすることができる。同様に、スポットb2であれば、時差設定m3のところに、例えば5.0と設定し、照射時間m4へ3.0と設定することで、照射ボタンi1をクリックした後、5.0秒後に照射が開始されて、A波長光が3.0秒間、スポットb2に照射することができる。
【0056】
更に、図8に示す表示画面は、図5及び図6に示した表示画面の異なる実施形態を示したものである。図8に示す表示画面上では、B波長光とA波長光の両方を1画面上で設定することができるものである。B波長光として放射する光の設定を色目設定g1で選定し、A波長光として放射する光の設定を色目設定g2で選定することで、例えば、前記色目設定g1で設定したLED1の色目が赤色のLEDであれば、スポットb1、b2、b3の位置決め特定するための光は、赤色の波長域の光をダイレクトに放射させることができる。また、図8に示すように、前記色目設定g2で設定したLED3の色目が青色のLEDであれば、B波長光で位置決め特定したスポットb1、b2、b3に、A波長光である青色の波長域の光をダイレクトに放射させることができるようになる。
【0057】
尚、図8に示す照射時間設定jや、スポット点滅設定k、照射強度設定f並びに時差設定mについては、図5乃至図7として先に説明したとおり、同様の機能を有し利用することができる。
【0058】
更に、ここでは実施例を具体的に説明するために、LEDを使用した像形成手段3を例として説明を実施したが、前記光源3aについては、LEDに限らずレーザーダイオードを使用した像形成手段3でも、同様の効果を有することができるものである。また、光照射装置10は、顕微鏡だけに限定されるものではなく、結像手段1と、像形成手段3と、照明手段2と、情報処理手段4とを備えた、光を照射する機能を有する装置になっていれば良い。
【0059】
更に、DLPプロジェクタなどの像形成手段3内には、複数のLEDまたは、複数のレーザーダイオードなどからなる光源3aが、各々独立した状態で設置されて、光を発している。よって、前記光源3aから発せられた光に反応して、標本zの複数の像が互いに分離して形成することが可能になる。また、前記情報処理手段4は、標本zの複数の像を個別に、コンピュータ4aなどの情報処理手段4を通してマウス4cやキーボードなどの入力指令により、標本z部位の照射位置決めの特定や、標本z部位の照射を簡単に制御することができる光照射装置10を提供することができるものである。よって、非常に安価な上に、操作性に優れた光照射装置10を提供できるため、パーキンソン病、アルツハイマー病、てんかん、精神病などの病因解明や治療につながる脳科学研究を促進するとともに、治療薬の開発、評価の効率を高め、社会的価値並びに経済的価値の創出が期待できる装置の提供が期待できるものである。
【0060】
また、前記光照射装置10は、先に説明した顕微鏡を使用した場合に限定されるものではなく、例えば、紫外線レーザー光を用いて、光をあてることにより固まる光硬化性樹脂を使用して、像を形成する光造形法の改良装置として使用することもできる。従来の光造形法は、紫外線レーザー光を1点照射させながら、照射光を移動させていくことで、像を形成しているが、光照射装置10を使用すれば、DMD素子3bにより複数の箇所へ照射することができるものであるので、すべての像を形成する時間を、大幅に短縮することができる光照射装置10を提供することができる。更に、レーザーカットのように、物をカットしたり、削っていきながら、像を形成していく場合も同様に、像をカットしたり、削ったりする時間を、大幅に短縮することができる光照射装置10を提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 結像手段
1a 対物レンズ
1b 接眼レンズ
1c 結像レンズ
1d プリズム
1e ステージ
2 照明手段
2a 光源アダプタ
2b ミラー
2c レンズ
2d レンズ
2e ハーフミラー
3 像形成手段
3a 光源
3b DMD素子
4 情報処理手段
4a コンピュータ
4b モニタ
4c マウス
5 光軸
6 凸レンズ
z 標本

観察領域の表示範囲
b 光の領域
b0 光の照射範囲
b1 スポット
b2 スポット
b3 スポット
c スポット径表示
d スポット数表示
e 光の選択
f 照射強度設定
g 色目設定
g1 色目設定
g2 色目設定
h 消去ボタン
i1 照射ボタン
i2 照射ボタン
j 照射時間設定
k スポット点滅設定
m 時差設定
m1 開始時間
m2 照射時間
m3 開始時間
m4 照射時間
n カウント表示
10 光照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを有し、観察対象からの光に基づいて結像を行う結像手段と、
光源を有し、前記光源からの光による像を形成する像形成手段と、
前記像形成手段が形成した光の像を、前記観察対象に照明する照明手段と、
ユーザ入力に基づいて情報処理を行い、前記像形成手段による像の形成を制御する情報処理手段とを備え、
前記像形成手段は、DMD素子を備えたプロジェクタであって、前記観察対象への刺激が相対的に大きな波長特性をもつA波長光を用いた像形成と、
前記観測対象への刺激が無い又は刺激が相対的に小さい波長特性をもつB波長光を用いた像形成が可能であり、
前記情報処理手段は、前記像形成手段に対し、前記B波長光を用いて像を形成して位置決めを行った後に、前記A波長光を用いて像形成をさせる制御を行う光照射装置であって、前記像形成手段と照射手段との間に凸レンズを設置するとともに、
対物レンズを通過して映し出される観察対象領域と同じ範囲内に、前記情報処理手段からの入力指示により、前記像形成手段から発する光の観察領域の表示範囲を制御できる、ことを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記情報処理手段は、スポット毎に異なるスポット径サイズや照射強度や照射時間を並列的に制御を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記像形成手段は、複数の色の光による像形成が可能であり、前記情報処理手段は、照射色を切り替える制御を行う、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記情報処理手段は、前記A波長光と前記B波長光を交互に切り替えるスポット点滅を設定できる制御を行う、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記像形成手段内の光源はLEDまたは、レーザーダイオードであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記像形成手段内の光源を追加、または交換することができることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記像形成手段は、互いに分離した複数の像を形成可能であり、前記情報処理手段は、各像の形成を個別に制御する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光照射装置を備え、前記結像手段により、観察対象を拡大した結像を行う、ことを特徴とする顕微鏡。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−133342(P2012−133342A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256872(P2011−256872)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度文部科学省科学技術試験研究委託事業「光を用いた脳への情報入力を可能にするフォトバイオーオプト・エレクトロBMIシステムの構築とその定量的評価」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000161884)アスカカンパニー株式会社 (35)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】