説明

光照射装置

【課題】平面へ光照射する際に光の照射強度分布の均一性を向上させることが可能な光照射装置を提供する。
【解決手段】光源と、光源からの光を伝搬する光ファイババンドル1と、その出射面8側の端部に取り付けられた中空管4とを備え、中空管4の内面6は、光ファイババンドル1の出射面8から出射された光を反射して開口部5から出射させるようになっている光照射装置であって、光ファイババンドル1の出射面8および中空管4の内面6の断面形状が円形であり、中空管4の出射側の開口部5から光軸Cの方向に1mm離れた垂直面内に位置する少なくとも一つの測定軸P上における出射光の光強度分布において、光軸Cと交差する点Oの光強度を中心光強度とし、測定軸P上で光強度が中心光強度の95%以上となる範囲の長さを照射径と定義するとき、照射径が、光ファイババンドル1の出射面8の径dの35%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型樹脂の硬化等に用いられる光照射装置に関するものであって、光の照射強度分布の均一性を向上させたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの産業分野において、光硬化型樹脂の硬化方法として、光硬化法が利用されている。光硬化法は、プラスチックフィルムや紙等の基材にコーティング液や接着剤等の光硬化型樹脂を含む組成物を塗布し、光硬化型樹脂を硬化させる波長域の光(特に紫外光や可視光)を照射して、光重合反応を生じさせる技術である。
【0003】
光硬化法に用いられる光源は、使用される光硬化型樹脂を硬化させる波長域の光を出射するものであればよく、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の放電ランプが一般に用いられている。最近では、紫外線を発生する発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線照射装置も実用化されている。
【0004】
光硬化法においては、光の照射強度の分布が不均一なことにより、部分的に照射強度不足となり、光硬化型樹脂が面内で均一に硬化しない問題がある。この問題への対策として、光の照射強度の分布の均一性を改善する光照射装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、光源からの光を二つ以上の方向から光硬化型樹脂に照射する光硬化型樹脂の硬化装置が記載されている。
特許文献2には、紫外線硬化樹脂が塗布されたウエブの搬送方向に直交する方向に複数の光ファイバを配列して、紫外線が均一に照射できるようにした紫外線照射装置が記載されている。
特許文献3には、楕円形のミラーの一方の焦点の位置に紫外線ランプを配置し、他方の焦点よりもランプ側にずらした位置に線状体を配置し、ランプからの紫外線を直接及びミラーで反射させて線状体に照射して、線状体の表面のUV樹脂を硬化させる紫外線照射装置が記載されている。
【特許文献1】特開2005−181723号公報
【特許文献2】特開平5−50007号公報
【特許文献3】特開平5−254894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された装置には、2本以上の光ファイババンドルを用いる構成と、1本の光ファイババンドルに反射ミラーを組み合わせる構成がある。2本以上の光ファイババンドルを用いる場合は、本数の増加に従って光ファイババンドルの先端部の重量が大きくなる上、互いの位置調整に精度を要するため、作業性が悪いという問題がある。また、反射ミラーを組み合わせる場合は、光照射強度を平坦化することは難しい。
特許文献2に記載された装置では、紫外線を照射しようとする領域に均一に紫外線を照射できるように光ファイバを配列するものとしているが、紫外線ランプから各光ファイバに紫外線が入射する光強度が不均一であると、各光ファイバから出射する光強度もそのまま不均一になってしまうという問題がある。
特許文献3に記載された装置では、複雑な形状のミラーが必要でコストが高く、かつミラーに対するランプおよび線状体の位置の調整が難しい上、平面への光照射には適用できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、平面へ光照射する際に光の照射強度分布の均一性を向上させることが可能な光照射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、光源と、光源からの光を伝搬する光ファイババンドルと、光ファイババンドルの出射面側の端部に取り付けられた中空管とを備え、前記中空管の内面は、前記光ファイババンドルの出射面から出射された光を反射して前記中空管の開口部から出射させるようになっている光照射装置であって、
前記光ファイババンドルの出射面および前記中空管の内面の断面形状が円形であり、前記中空管の出射側の開口部から光軸方向に1mm離れた垂直面内に位置する少なくとも一つの測定軸上における出射光の光強度分布において、前記光軸と交差する点の光強度を中心光強度とし、前記測定軸上で光強度が前記中心光強度の95%以上となる範囲の長さを照射径と定義するとき、前記照射径が、前記光ファイババンドルの出射面の径の35%以上であることを特徴とする光照射装置を提供する。
前記光ファイババンドルの出射面から前記中空管の出射側の開口部までの距離が、前記光ファイババンドルの出射面の径の1.5倍以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、平面へ光照射する際に光の照射強度分布の均一性を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1に本発明の光照射装置の一実施形態例の要部を示す。
図1に示す光照射装置は、図示しない光源と、この光源からの光を伝搬する光ファイババンドル1と、光ファイババンドル1の出射面8側の端部に取り付けられた中空管4とを備えている。中空管4は、両端にそれぞれ開口部5,7を有し、その間の内面6が反射面となっている円筒状の部材である。中空管4の一方の開口部5は開放されており、他方の開口部7は、光ファイババンドル1の出射面8側の端部で閉塞されている。
【0010】
中空管4の内面6は、光ファイババンドル1の出射面8から出射された光を反射して開口部5から出射させるため、反射面となっている。中空管4は、アルミニウム等の金属やセラミックスのように、出射光の反射率の高い材料で構成することができる。また、中空管4が内面6にクロムめっき等で反射率の高い反射層を形成した管であってもよい。
【0011】
光ファイババンドル1は、多数本(例えば数十本〜数千本以上)の光ファイバ2を束ねて一体化したものである。光ファイババンドル1の外周には、内部の光ファイバ2を保護するため、ステンレス可撓管などの外被3を設けることが好ましい。
【0012】
光ファイババンドル1は、接着剤や充填剤を用いた接着によって光ファイバ2の側面同士を一体化することで製造することができる。また、加熱による融着などによって光ファイバ2の端面同士を接続し、長さを延長することができる。
光ファイババンドル1の出射面8においては、個々の光ファイバ2のコアが独立して配置されている。このため、出射面8上では、コアが存在する位置と、クラッドや充填剤等が存在する位置とで、光強度が不均一になる。また、光源から各光ファイバ2に入射する光強度が不均一であると、各光ファイバ2から出射する光強度もそのまま不均一になってしまう。
【0013】
そのため、本形態例の光照射装置では、内面6が反射性を有する中空管4を光ファイババンドル1の出射面8側の端部に設けて、出射面8からの出射光が中空管4の内面6で反射できるように構成している。出射光が中空管4の内面6で反射すると、光軸Cに垂直な面内における光強度分布が平均化されて均一性が改善される。中空管4の内面6の断面形状(光軸Cに垂直な断面の形状)が円形であると、内面6に当たった位置に応じて反射方向が変化し、光強度分布を均一にする効果に優れる。また、単純な形状のため中空管4を製造しやすく、コストを低減することができる。なお、中空管4の内面6が円筒面である場合、光軸Cは、円筒面の中心軸となる。
【0014】
光ファイババンドル1の出射面8の形状は、中空管4の内面6の断面形状と同一または相似した形状であることが好ましい。中空管4の内面6の断面形状が円形である場合は、光ファイババンドル1の出射面8も円形であることが好ましい。
【0015】
図1に示す場合、光ファイババンドル1の出射面8と中空管4の取付け側の開口部7が同一面内に配置されている。この場合、光ファイババンドル1の出射面8から中空管4の出射側の開口部5までの距離Lが、中空管4の長さに等しい。
光ファイババンドル1の外径dが中空管4の内径D以下である場合は、光ファイババンドル1の出射面8が中空管4の内部に位置していてもよい。光ファイババンドル1の外径dは、中空管4の内径Dより大きくてもよいが、光ファイババンドル1の出射面8の径(出射径)dが中空管4の内径Dを超えると出射光の一部が中空管4内に入射されなくなるので、管内径Dは、出射径d以上であることが望ましい。
【0016】
光ファイババンドル1の出射面8から中空管4の出射側の開口部5までの距離Lは、光ファイバ2内で光が伝搬する際の光軸に対する伝搬角や出射する際の開口数にもよるが、中空管4内での反射が光の進行方向において効率的に起こる長さを有することが好ましい。例えば、出射面8から出射側の開口部5までの距離Lが中空管4の内径Dの1.5倍以上であることが好ましい。また、管内での光の吸収や散乱等による光強度低下などの観点から、中空管4の長さは、過度に長くならないよう適宜設定することが好ましい。
【0017】
本形態例の光照射装置では、中空管4の出射側の開口部5から光軸Cの方向に1mm離れた垂直面内に位置する少なくとも一つの測定軸P上における出射光の光強度分布において、測定軸Pが光軸Cと交差する点Oの光強度を中心光強度Iとし、測定軸P上で光強度が中心光強度Iの95%以上となる範囲の長さを照射径Dと定義するとき、照射径Dが、光ファイババンドル1の出射径dの35%以上であることが好ましい。さらに、照射径/出射径の割合(D/d×100%)は、50%以上であることがより好ましい。
照射径Dを算出するには、光強度分布において、光強度が中心光強度Iの95%となる2点を求め、その2点を両端として中心点Oを含む範囲の測定軸P上の長さを求めればよい。
なお図1中の符号Gは、中空管4の出射側の開口部5から測定軸Pまでの距離(1mm)を示す。
【0018】
本形態例の光照射装置は、照射面内での光強度の均一性が高いため、光硬化型樹脂の硬化方法に好適である。プラスチックフィルムや紙等の基材にコーティング液や接着剤等の光硬化型樹脂を含む組成物を塗布し、光硬化型樹脂を硬化させる波長域の光(特に紫外光や可視光)を照射して、光重合反応を生じさせることができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
光ファイババンドルの一端(入射端)に紫外線LEDを光結合し、他端(出射端)には、図1に示すように、中空管4として円筒型アルミ管を装着した。光ファイババンドル1の出射径dは10mm、アルミ管の内径Dは12.5mm、アルミ管の長さLは30mmとした。
360〜370nmの波長域に発光を有する光源を用いて、光ファイババンドル1に光を入射したとき、アルミ管の開口部5から出射する光について、アルミ管の中心軸Cを基準に±10mmの範囲で光強度分布を測定した。光強度分布を測定する軸Pとアルミ管の開口部5との距離Gは、1mmとした。
測定により求められた光強度分布のグラフを図3に実線(実施例)で示す。本実施例では、照射径(光強度が中心光強度の95%以上となる範囲)は7.0mm(照射径/出射径の割合は70%)であり、広い範囲で出射光強度の平坦性が高いことを確認できた。
【0020】
(比較例1)
光ファイババンドルの一端(入射端)に紫外線LEDを光結合し、他端(出射端)には、図2に示すように、2個のレンズ14を装着した。なお、図2において、符号11は光ファイババンドル、符号12は光ファイバ、符号13は外被、符号15はレンズ14の保持部材である。光ファイババンドル11の出射径dは10mm、レンズ径Dは25mmとした。
360〜370nmの波長域に発光を有する光源を用いて、光ファイババンドル11に光を入射したとき、2枚のレンズ14を通過した出射光について、レンズ14の中心軸Cを基準に±10mmの範囲で実施例1と同様に光強度分布を測定した。
測定により求められた光強度分布のグラフを図3に破線(比較例)で示す。本比較例では、照射径(光強度が中心光強度の95%以上となる範囲)は2.5mm(照射径/出射径は25%)であり、中心から外側に向かって次第に光強度が低下することを確認できた。
【0021】
(実施例2)
実施例1と同様に、アルミ管の長さLを15mm、20mm、25mm、30mm、40mm、60mmとし、実施例1と同様に、アルミ管の開口部5からの距離Gが1mmの軸P上で光強度測定を行った。なお、光ファイババンドル1の出射径dが10mm、アルミ管の内径Dが12.5mmであるのも、実施例1と同様である。また、アルミ管の長さLが30mmの場合は、実施例1に相当する。
光強度測定に基づき算出した照射径(光強度が中心光強度の95%以上となる範囲)の結果は、表1に示す。なお、表1には、実施例1の結果も併記している。
【0022】
【表1】

【0023】
いずれの場合にも、照射径/出射径(D/d)の割合は35%以上と、高い平坦性が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、光硬化型樹脂の硬化装置等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の光照射装置の一実施形態例の要部を示す断面図である。
【図2】比較例の光照射装置の要部を示す断面図である。
【図3】実施例1および比較例1における光強度分布の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0026】
1…光ファイババンドル、4…中空管、5…中空管の出射側の開口部、6…中空管の内面、8…光ファイババンドルの出射面、C…光軸、O…光軸と測定軸とが交差する点(測定軸の中心点)、P…測定軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、光源からの光を伝搬する光ファイババンドルと、光ファイババンドルの出射面側の端部に取り付けられた中空管とを備え、前記中空管の内面は、前記光ファイババンドルの出射面から出射された光を反射して前記中空管の開口部から出射させるようになっている光照射装置であって、
前記光ファイババンドルの出射面および前記中空管の内面の断面形状が円形であり、前記中空管の出射側の開口部から光軸方向に1mm離れた垂直面内に位置する少なくとも一つの測定軸上における出射光の光強度分布において、前記光軸と交差する点の光強度を中心光強度とし、前記測定軸上で光強度が前記中心光強度の95%以上となる範囲の長さを照射径と定義するとき、前記照射径が、前記光ファイババンドルの出射面の径の35%以上であることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記光ファイババンドルの出射面から前記中空管の出射側の開口部までの距離が、前記光ファイババンドルの出射面の径の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−8672(P2010−8672A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167379(P2008−167379)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(599059346)東海東洋アルミ販売株式会社 (4)
【Fターム(参考)】