説明

光照射装置

【課題】光の照射角度が精度良く制御でき、基板を枚葉式で搬送して分割配向処理を行うことが可能な光照射装置を提供すること。
【解決手段】光照射装置1は、第1の領域104aと第1の領域104aとは異なる第2の領域104bとが表面に設けられた基板100に光を照射する光照射装置であって、光11を放出する光源10と、光源10で放出された光11から直線偏光11aを分離するワイヤーグリッド偏光子20と,直線偏光11aを反射させて基板100の表面に入射させるミラーユニット30とを備え、ミラーユニット30は、直線偏光11aの一部分を第1の方向D2に反射させて第1の領域104aに入射させるミラー32と、直線偏光11aの他部分を第2の方向D3に反射させて第2の領域104bに入射させるミラー34と、を有し、第1の方向D2と第2の方向D3とは互いに異なることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置等において、基板の表面に設けられる配向膜に光を照射することで、配向膜に配向処理を行う光配向技術が知られている。光配向技術では、例えば、配向膜に対して斜めに光を照射することで、配向膜のプレチルト角の大きさと方向とを制御している。このような光配向処理を行うための光照射装置が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−122302号公報
【特許文献2】特開2000−155316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された光照射装置では、装置の構成要素の中で大型で重い部分である光照射部を傾斜させその傾斜角度を調整することで、配向膜に対する光の照射角度を制御する構成となっている。このため、光の照射角度を精度良く制御することは容易でなく、また装置全体が大型化するという課題があった。
【0005】
特許文献2に記載された光照射装置では、光源からの光を反射するミラーの角度を調整することで配向膜に対する光の照射角度を制御する構成となっているが、基板に対してミラーを移動させる構成のため基板を枚葉式で搬送することにより光配向処理を行う方法には適用できないという課題があった。
【0006】
また、上記2つの特許文献に記載された光照射装置ではともに、1つの液晶装置に複数の異なるプレチルト角の大きさや方向を混在させる分割配向処理を行う場合、フォトマスクを介して光を複数回照射するとともに配向膜に対する光の照射角度を光を照射する毎に異ならせることが必要になるため、工程が煩雑になり製造工数が増大するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る光照射装置は、第1の領域と、前記第1の領域とは異なる第2の領域と、が表面に設けられた基板に光を照射する光照射装置であって、光を放出する光源と、前記光源で放出された前記光から偏光を分離する偏光分離素子と、前記偏光を反射させて前記基板の前記表面に入射させる反射手段と、を備え、前記反射手段は、前記偏光の一部分を第1の方向に反射させて前記第1の領域に入射させる第1の反射部と、前記偏光の他部分を第2の方向に反射させて前記第2の領域に入射させる第2の反射部と、を有し、前記第1の方向と前記第2の方向とは互いに異なることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、光源で放出された光から偏光が分離され、その一部分は第1の反射部により第1の方向に反射され第1の領域に入射する。また、偏光の他部分は第2の反射部により第1の方向とは異なる第2の方向に反射され第2の領域に入射する。これにより、基板上の第1の領域と第2の領域とにおいて、互いに異なる方向に光配向処理を行うことができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係る光照射装置であって、前記偏光分離素子はワイヤーグリッドであり、前記ワイヤーグリッドにより分離された偏光のうちの一部分を前記第1の反射部で反射させるとともに、前記偏光のうちの他部分を前記第2の反射部で反射させてもよい。
【0011】
この構成によれば、光源で放出された光からワイヤーグリッドにより偏光が分離され、その一部分が第1の方向に反射されるとともに、他部分が第2の方向に反射される。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係る光照射装置であって、前記偏光分離素子はビームスプリッターであり、前記ビームスプリッターにより分離された2種類の偏光のうちの一方を前記第1の反射部で反射させるとともに、前記2種類の偏光のうちの他方を前記第2の反射部で反射させてもよい。
【0013】
この構成によれば、光源で放出された光からビームスプリッターにより2種類の偏光が分離され、一方の偏光が第1の方向に反射されるとともに、他方の偏光が第2の方向に反射される。
【0014】
[適用例4]上記適用例に係る光照射装置であって、前記基板の前記表面に対する前記第1の方向の角度および前記第2の方向の角度は、変更可能であってもよい。
【0015】
この構成によれば、第1の方向に反射され第1の領域に入射する偏光の入射角と、第2の方向に反射され第2の領域に入射する偏光の入射角とを変更できる。これにより、第1の領域と第2の領域とのそれぞれにおける配向膜のプレチルト角の大きさを変更することができる。
【0016】
[適用例5]上記適用例に係る光照射装置であって、前記反射手段に対して前記基板を相対的に移動させる移動手段をさらに備えていてもよい。
【0017】
この構成によれば、枚葉式で基板を1枚ずつ移動させて連続的に光配向処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る光照射装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】第1の実施形態に係る光照射装置の概略構成を示す側面図。
【図3】第1の実施形態に係る反射手段の概略構成を示す平面図。
【図4】液晶装置の一例の概略構成を示す斜視図。
【図5】第1の実施形態に係る光照射装置による光配向処理と液晶装置の配向状態とを説明する図。
【図6】第2の実施形態に係る光照射装置の概略構成を示す側面図。
【図7】第2の実施形態に係る光照射装置による光配向処理と液晶装置の配向状態とを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の厚さや寸法の比率、角度等は適宜異ならせてある。また、参照する各図面において、構成要素の一部を省略する場合がある。
【0020】
(第1の実施形態)
<光照射装置の概略構成>
まず、第1の実施形態に係る光照射装置の概要について図を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る光照射装置の概略構成を示す斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る光照射装置の概略構成を示す側面図である。詳しくは、光源の中心軸の方向から見た側面図である。図3は、第1の実施形態に係る反射手段の概略構成を示す平面図である。詳しくは、光照射装置の光源側から見た平面図である。
【0021】
第1の実施形態に係る光照射装置1は、図1および図2に示すように、光源10と、集光鏡12と、レンズ14と、偏光分離素子としてのワイヤーグリッド偏光子20と、反射手段としてのミラーユニット30と、搬送機構40と、を備えている。光照射装置1は、液晶装置に用いられる基板100の表面に設けられた配向膜に光を照射することで光配向処理を行うための光照射装置である。
【0022】
光照射装置1では、搬送機構40上に基板100が載置され矢印で示す搬送方向D1に搬送される。基板100の搬送方向D1に沿った方向をX軸方向とする。なお、図1では、搬送機構40の図示を省略している。
【0023】
光源10は、長尺状であり、中心軸10aを有する棒状の形状を有している。中心軸10aに沿った方向を、光源10の長手方向と呼ぶ。光源10は、光配向処理を行なうための紫外線を含む光11を放出する光源である。光源10は、例えば高圧水銀ランプ等で構成される。ここでは、光源10の中心軸10aに沿った方向をY軸方向とする。Y軸方向は、X軸方向と略直交している。
【0024】
集光鏡12は、光源10の基板100(搬送機構40)とは反対側の部分を覆うように配置されている。集光鏡12は、Y軸に沿った方向を長手方向とする長尺状であり、光源10と同等の長さ(長手方向の寸法)を有している。集光鏡12は、光源10から放出された光11の多くを、レンズ14の方向に反射させて集光している。集光鏡12の第1焦点は、光源10の中心軸10aと略一致する位置にある。
【0025】
ここで、集光鏡12は長尺状であるため、焦点は長手方向に連続する直線状となっているが、図2に示すように長手方向と直交する側面から見ると「点]と見なすことができるため、以下の記載においても「焦点」と表記する。光源10の中心軸10aと集光鏡12の第2焦点Fとを結ぶ線に沿った方向をZ軸方向とする。Z軸方向は、X軸とY軸とで構成される面の法線方向でもある。
【0026】
レンズ14は、光源10の基板100側に、集光鏡12の第2焦点Fよりも離れて配置されている。レンズ14は、Y軸に沿った方向を長手方向とする長尺状であり、X軸に沿った方向における断面は例えば平凸レンズ形状である。レンズ14は、光源10から放出され集光鏡12で反射された光11を集光して略平行化する所謂コリメーターレンズである。光源10からの光11は、レンズ14によりZ軸に略平行な光となり、ワイヤーグリッド偏光子20に向かって、Y軸に沿った方向に延在するとともにX軸に沿った方向における幅が狭い領域に照射される。
【0027】
ワイヤーグリッド偏光子20は、レンズ14の基板100側に配置されている。ワイヤーグリッド偏光子20は、Y軸に沿った方向を長手方向とする長尺状であり、光源10と同等の長さ(長手方向の寸法)を有している。ワイヤーグリッド偏光子20は、基板21と、基板21上に配列された複数のワイヤーグリッド22と、で構成されている。基板21は、透明な材料からなり、例えばガラスや石英等からなる。
【0028】
ワイヤーグリッド22は、基板21のレンズ14側、すなわち光源10からの光11が照射される側に位置している。ワイヤーグリッド22は、Y軸に沿った方向に延在する直線状の形状を有しており、X軸に沿った方向に所定のピッチで互いに略平行に配列されている。ワイヤーグリッド22の配列ピッチは、照射される光11の波長以下であり、光11の波長の1/3以下であることが好ましい。ワイヤーグリッド22は、光反射率の高い金属体(金属細線)からなり、例えば、Al(アルミニウム)やAg(銀)等からなる。ワイヤーグリッド22は、基板21上に成膜された金属膜を、例えば、フォトレジストや干渉露光を用いたフォトリソグラフィー法によりパターニングすることで形成される。
【0029】
ワイヤーグリッド偏光子20は、ワイヤーグリッド22側から入射し基板21側に進む光を偏光分離して特定方向の偏光に変換する性質を有している。ワイヤーグリッド偏光子20に入射する光11のうち、ワイヤーグリッド22の延在方向、すなわちY軸に沿った方向に平行な偏光成分は反射される。また、入射する光11のうち、ワイヤーグリッド22の延在方向と直交する偏光成分、すなわちX軸に沿った方向に平行な偏光成分は透過する。したがって、光11はワイヤーグリッド偏光子20を透過することにより、X軸方向に振動する直線偏光11aとなり、Z軸に略平行に、ミラーユニット30に向かって照射される。
【0030】
ミラーユニット30は、ワイヤーグリッド偏光子20の基板100側に配置されている。ミラーユニット30は、第1の反射部としてのミラー32と、第2の反射部としてのミラー34と、軸31と、を備えている。図3に示すように、軸31は、Y軸に沿った方向を長手方向とする棒状の形状を有している。ミラー32,34は、X軸に沿った方向を長手方向とする矩形状を有している。ミラー32,34は、Y軸に沿った方向に交互に並ぶように配置されている。
【0031】
なお、図1および図3では、わかりやすく図示するため3対のミラー32,34でミラーユニット30を構成しているが、基板100の構成に対応して4対以上のミラー32,34でミラーユニット30が構成されていてもよい。
【0032】
図2に示すように、ミラー32,34は、ワイヤーグリッド偏光子20を透過した直線偏光11aの進行方向、すなわちZ軸方向に対して傾斜するように、それぞれの長手方向の略中央部で軸31に固定されている。ミラー32,34は、軸31を回転中心として回転させることにより、Z軸方向に対する傾斜角度θ3(図5(a)参照),θ5(図5(b)参照)を変更可能に構成されている。ミラー32,34は、平面ミラーであり、軸31に固定されている側とは反対側の表面に反射面32a,34aを有している。反射面32a,34aは、X軸に沿った方向において互いに反対側を向いている。
【0033】
ワイヤーグリッド偏光子20を透過した直線偏光11aのうちの一部分は、ミラー32の反射面32aで矢印で示す第1の方向D2に反射され、レンズ15で縮小または拡大されて、基板100の第1の領域104a(図1参照)に入射する。一方、ワイヤーグリッド偏光子20を透過した直線偏光11aのうちの他部分は、ミラー34の反射面34aで矢印で示す第2の方向D3に反射され、レンズ16で縮小または拡大されて、基板100の第2の領域104b(図1参照)に入射する。
【0034】
第1の方向D2と第2の方向D3とは互いに異なる方向であり、第1の領域104aと第2の領域104bとは互いに異なる領域である。したがって、光照射装置1では、光源10から放出された光11を、基板100上の互いに異なる第1の領域104aと第2の領域104bとに対して、互いに異なる第1の方向D2と第2の方向D3とで照射することができる。
【0035】
ここで、直線偏光11aのうち反射面32aで第1の方向D2に反射された光と、反射面34aで第2の方向D3に反射された光とは、基板100の第1の領域104aと第2の領域104bとに同時に照射されなくてもよい。基板100が搬送機構40により搬送方向D1に搬送される過程で、第1の領域104aと第2の領域104bとに照射されればよい。
【0036】
また、ワイヤーグリッド偏光子20を透過して基板100側に照射される直線偏光11aのうち、ミラー32,34で反射されない部分が生じる場合、これらの部分が直接基板100に入射するのを防止するための遮光板がミラーユニット30の基板100側に設けられていてもよい。
【0037】
なお、レンズ15,16は、基板100の第1の領域104aおよび第2の領域104bにミラー32,34(反射面32a,34a)の大きさが対応していない場合に、その違いを調整するためのものである。例えば、第1の領域104aおよび第2の領域104bが微細でミラー32,34の製造可能な大きさよりも小さい場合、反射面32a,34aで反射された直線偏光11aをレンズ15,16で縮小して照射することで、第1の領域104aおよび第2の領域104bの大きさに合わせることができる。レンズ15,16としては、例えば、凸レンズまたは凹レンズが適宜用いられる。光照射装置1がレンズ15,16を備えていない構成であってもよい(図1ではレンズ15,16の図示を省略している)。
【0038】
搬送機構40は、基板100を配向膜103(図4参照)が設けられた面を光源10側にして、搬送方向D1、すなわちX軸方向に沿って任意の速度で搬送する機能を有している。搬送機構40は、例えば、搬送ベルト42と、搬送ベルト42を回転させるローラー44とで構成される。搬送機構40に載置された状態における基板100の表面は、X軸とY軸とで構成される面に略平行である。したがって、基板100の表面の法線方向は、Z軸に沿った方向である。
【0039】
上述したように、光照射装置1の光源10等の各構成要素は、Y軸に沿った方向を長手方向とする長尺状である。集光鏡12の第2焦点F、レンズ14、ワイヤーグリッド偏光子20、およびミラーユニット30のそれぞれのY軸方向に沿った中心軸は互いに略平行であり、Z軸方向、すなわち基板100の表面の法線方向に沿って一列に配置されている。
【0040】
<光配向処理方法>
次に、第1の実施形態に係る光照射装置1による光配向処理方法について図を参照して説明する。図4は、液晶装置の一例の概略構成を示す斜視図である。詳しくは、図4(a)は液晶装置の基板のマザー基板を示す図であり、図4(b)は液晶装置の素子基板を示す図である。また、図4(a)、(b)は、図1と同じ視方向から見た斜視図である。図5は、第1の実施形態に係る光照射装置による光配向処理と液晶装置の配向状態とを説明する図である。詳しくは、図5(a)は液晶装置の第1の領域における光の入射角度と配向状態とを説明する図であり、図5(b)は液晶装置の第2の領域における光の入射角度と配向状態とを説明する図である。また、図5(a)、(b)は、図2と同じ視方向から見た側面図である。
【0041】
図4(a)に示す基板100は、液晶装置を製造する際に用いられる所謂マザー基板であり、液晶装置を構成する素子基板101(または対向基板)の集合体である。このようなマザー基板としての基板100の状態で、素子基板および対向基板が形成され、シール材を介して互いに貼り合わされた後に個片化されて、個々の液晶装置となる。したがって、第1の実施形態に係る光照射装置1による光配向処理は、マザー基板としての基板100の状態で行われる。
【0042】
基板100の平面形状は矩形状である。基板100は、隣接する2辺のうちの一方の辺が光源10の中心軸10aに沿った方向(Y軸)に平行になり、かつ他方の辺が搬送方向D1に沿った方向(X軸)に平行になるように、搬送機構40に載置される。
【0043】
図4(b)に示す素子基板101は、基板100が分割され個片化された状態のものである。素子基板101は、個片化された基板102を基材としている。基板102上には、液晶を駆動する素子や電極等(図示しない)が形成されており、その表面に配向膜103が設けられている。配向膜103の材料としては、例えば、シンナモイル基、クマリン基、カルコン基等を官能基として含有する樹脂材料のように光二重化反応によって配向される光配向材料や、アゾ基を官能基として含有する樹脂材料のように光異性化反応によって配向される光配向材料等が用いられる。また、対向基板の場合は、液晶を駆動する素子の代わりにカラーフィルター等が形成されており、その表面には同様に配向膜103が設けられている。
【0044】
液晶装置は、素子基板101と対向基板との間に液晶が挟持された構成を有している。素子基板101および対向基板に設けられた配向膜103には、配向処理が施されている。配向処理が施された配向膜103によって、液晶装置における液晶の初期的な配向状態が制御される。配向膜103は、表示領域104に対応して設けられている。表示領域104は、液晶装置において実質的に表示に寄与する領域である。
【0045】
表示領域104は、第1の領域104aと第2の領域104bとを有している。第1の領域104aと第2の領域104bとは、搬送方向D1に沿った方向(X軸)に平行な境界線により、表示領域104が略2等分されたものである。したがって、配向膜103は、第1の領域104aと第2の領域104bとを有しており、それぞれの領域で互いに異なる配向状態が設定されている。光照射装置1では、ミラー32が第1の領域104aに対応し、ミラー34が第2の領域104bに対応するように配置されている。
【0046】
配向膜103に施された配向処理により、液晶装置における液晶の分子105は、素子基板101(配向膜103)の表面に対して所定の方向に所定の角度で傾いて配列する。本実施形態では、液晶の分子105は、X軸方向に沿って第1の領域104aと第2の領域104bとで互いに異なる向きに傾いている。この液晶の分子105の傾きの角度θ1,θ2をプレチルト角と呼ぶ。第1の領域104aにおけるプレチルト角θ1と、第2の領域104bにおけるプレチルト角θ2とは、液晶装置の適視方向や視野角によって適宜設定される。プレチルト角θ1,θ2の大きさは、同じであってもよいし互いに異なっていてもよい。
【0047】
図5(a)に示すように、ミラー32の反射面32aと基板100の法線(Z軸)とがなす角度をθ3とする。つまり、図5(a)において、反射面32aが直線偏光11aの入射方向に対して反時計回り方向に角度θ3だけ傾斜しているものとする。このとき、反射面32aに対する直線偏光11aの入射角は90°−θ3である。また、反射面32aで第1の方向D2に反射され基板100(配向膜103)に入射する光と基板100の表面(X軸)とがなす角度をθ4とすると、θ4=90°−2θ3となる。
【0048】
図5(b)に示すように、ミラー34の反射面34aと基板100の法線(Z軸)とがなす角度をθ5とする。つまり、図5(b)において、反射面34aが直線偏光11aの入射方向に対して時計回り方向に角度θ5だけ傾斜しているものとする。このとき、反射面34aで第2の方向D3に反射され基板100(配向膜103)に入射する光と基板100の表面(X軸)とがなす角度をθ6とすると、θ6=90°−2θ5となる。なお、図5(a)、(b)では、レンズ15,16の図示を省略している。
【0049】
直線偏光11aがこのような角度で照射されることで、配向膜103に光配向処理が行われる。これにより、液晶の分子105は、図5(a)に示す第1の領域104aにおいてはX軸方向に沿ってプレチルト角θ1で傾いて配列し、図5(b)に示す第2の領域104bにおいては、X軸方向に沿ってプレチルト角θ2で傾いて配列する。ここで、液晶の分子105のプレチルト角θ1,θ2は、θ4,θ6に依存して設定される。つまり、θ4,θ6が大きくなるほどプレチルト角θ1,θ2は大きくなり、θ4,θ6が小さくなるほどプレチルト角θ1,θ2は小さくなる。
【0050】
したがって、反射面32a,34aとZ軸とがなす角度θ3,θ5を適宜設定することで、プレチルト角θ1,θ2を所定の角度とすることができる。また、ミラー32,34を軸31を回転中心として回転させることで、基板100の表面に対する反射面32a,34aの角度を変化させることができる。これにより、角度θ3,θ5を変化させてプレチルト角θ1,θ2を制御することができる。なお、直線偏光11aを基板100(配向膜103)に入射させるための条件は、θ3<45°およびθ5<45°である。
【0051】
以上のように、第1の実施形態に係る光照射装置1では、ミラー32,34の角度を調整することで配向膜103に対する直線偏光11aの照射角度を制御するので、光源10、集光鏡12、レンズ14、ワイヤーグリッド偏光子20等は傾斜させる必要がない。このため、直線偏光11aの照射角度を精度良く制御することができるとともに、光照射装置1が大型化することが避けられる。また、搬送機構40により、基板100を枚葉式で搬送して光配向処理を行うことができる。
【0052】
さらに、光照射装置1では、ミラー32,34により、基板100(配向膜103)の第1の領域104aおよび第2の領域104bに対して異なる方向で直線偏光11aを照射して配向処理を行う。このため、大きさや方向が異なる複数のプレチルト角θ1,θ2を混在させる分割配向処理を、マスクを用いることなく、同一の工程で行うことができる。これらにより、液晶装置の製造工程における生産効率を向上させることができる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る光照射装置について説明する。第2の実施形態に係る光照射装置は、第1の実施形態に係る光照射装置に対して、偏光分離素子や反射手段の構成が異なっているが、その他の構成は同じである。
【0054】
図6は、第2の実施形態に係る光照射装置の概略構成を示す側面図である。詳しくは、光源の中心軸の方向から見た側面図である。図7は、第2の実施形態に係る光照射装置による光配向処理と液晶装置の配向状態とを説明する図である。第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。なお、図6および図7において、搬送機構40の図示を省略しているが、紙面に垂直な方向が搬送機構40により基板100が搬送される搬送方向D1(図2参照)である。
【0055】
<光照射装置の概略構成>
第2の実施形態に係る光照射装置2は、図6に示すように、光源部18と、マスク60と、照射部58(58a,58b,58c)と、搬送機構40(図示しない)と、を備えている。照射部58(58a,58b,58c)は、偏光分離素子としてのビームスプリッター50と、位相差板51と、レンズ52,54と、反射手段としてのミラー56と、を有している。ミラー56は、両面ミラーであり、第1の反射部としての反射面56aと第2の反射部としての反射面56bとを有している。
【0056】
マスク60は、遮光性の材料からなり、開口部61a,61b,61cを有している。マスク60は、基板100に略平行に配置されている。開口部61a,61b,61cのそれぞれに対応して、照射部58a,58b,58c(開口部61a,61b,61cとの対応について区別しない場合には単に照射部58とも呼ぶ)が配置されている。詳細は後述するが、光源部18から斜めに照射された光11のうち、マスク60の開口部61a,61b,61cを通過した光11が、基板100の法線方向(Z軸)に対して斜めに照射部58a,58b,58cのビームスプリッター50に入射する。したがって、光源部18からの光11は、直接基板100に照射されない。
【0057】
なお、わかりやすく図示するため、マスク60が3つの開口部61a,61b,61cを有し、それに対応して3つの照射部58a,58b,58cを有する構成としているが、基板100の構成に対応して4つ以上の開口部61および照射部58を有する構成としてもよい。
【0058】
ビームスプリッター50は、光11が入射する入射面が基板100の法線方向(Z軸)と搬送方向D1(X軸)とで構成される面に略平行になるように配置されている。ビームスプリッター50は、入射する光11のうち、入射面に平行な直線偏光方向を有するP偏光11pを透過し、入射面に垂直な直線偏光方向を有するS偏光11sを反射する。したがって、光11からビームスプリッター50によりP偏光11pとS偏光11sとが分離される。
【0059】
位相差板51は、ビームスプリッター50で反射されたS偏光11sの光路上に位置している。位相差板51は、入射する光に対して1/2波長分の位相差を付与する。したがって、ビームスプリッター50で反射されたS偏光11sは、位相差板51によりP偏光11pに変換される。
【0060】
レンズ52は、ビームスプリッター50を透過したP偏光11pの光路上に配置されている。レンズ54は、ビームスプリッター50で反射されたS偏光11sが位相差板51により変換されたP偏光11pの光路上に配置されている。レンズ52,54は、基板100の第1の領域104aおよび第2の領域104bにミラー56(反射面56a,56b)の大きさが対応していない場合に、その違いを調整するためのものである。
【0061】
ミラー56は、反射面56a,56bが基板100の法線方向(Z軸)と搬送方向D1(X軸)とで構成される面に略平行に配置されている。また、ミラー56は互いに隣り合う照射部58同士の境界に位置しており、一つのミラー56において、2つの反射面56a,56bのうちの一方が隣り合う照射部58の一方の反射手段として機能するとともに、他方が隣り合う照射部58の他方の反射手段として機能する。反射面56aはビームスプリッター50を透過したP偏光11pを反射し、反射面56bはビームスプリッター50で反射されたS偏光11sが位相差板51により変換されたP偏光11pを反射する。
【0062】
図7は、図6の照射部58aを拡大して示している。図7に示すように、光源部18は、光源10と、集光鏡12と、レンズ14と、ミラー17と、を有している。ミラー17は、平面ミラーであり、その反射面がZ軸方向に対して角度θ7だけ傾斜して配置されている。ミラー17で反射された光11は、マスク60に対して90°−2θ7の角度で、開口部61aを通過してビームスプリッター50に入射する。このときの光11のビームスプリッター50への入射角をθ8とすると、θ8=90°−2θ7となる。
【0063】
ビームスプリッター50を透過したP偏光11pは、レンズ52で縮小または拡大され、ミラー56の反射面56aで第1の方向D4に反射されて、基板100(配向膜103)の第2の領域104bに入射する。一方、ビームスプリッター50で反射されたS偏光11sは位相差板51によりP偏光11pに変換され、ミラー56の反射面56bで第2の方向D5に反射されて、基板100(配向膜103)の第1の領域104aに入射する。
【0064】
このとき、反射面56a,56bに入射するP偏光11pの入射角は、ともにθ8である。また、反射面56aで第1の方向D4に反射されて基板100(配向膜103)に入射するP偏光11p、および反射面56bで第2の方向D5に反射されて基板100(配向膜103)に入射するP偏光11pと、基板100の表面とがなす角度は、ともにθ8である。ただし、基板100の第1の領域104aと第2の領域104bとでは、Y軸に沿った方向において互いに向かい合う方向にP偏光11pが入射するので、液晶の分子105は、θ8に依存して設定されるプレチルト角でY軸方向に沿って互いに異なる向きに配向する。
【0065】
なお、ミラー17の反射面のZ軸方向に対する角度θ7を変更するとともに、角度θ7に合わせてマスク60の開口部61a,61b,61cや、ビームスプリッター50、ミラー56等の位置関係を適宜調整することで、基板100に入射するP偏光11pと基板100の表面とがなす角度θ8を変更することができる。これにより、液晶の分子105のプレチルト角を制御することができる。
【0066】
このように、第2の実施形態に係る光照射装置2では、第1の実施形態に係る光照射装置1と同様に、搬送機構40により基板100を枚葉式で搬送して光配向処理を行うことができる。そして、光照射装置2では、マスク60を用いるが、光照射装置1と同様に、大きさや方向が異なる複数のプレチルト角を混在させる分割配向処理を同一の工程で行うことができる。
【0067】
また、基板100の第1の領域104aと第2の領域104bとにおいて、光照射装置1では基板100の搬送方向D1に沿った方向(X軸方向)における異なる向きに液晶の分子105をプレチルトさせるのに対して、光照射装置2では基板100の搬送方向D1と直交する方向(Y軸方向)における異なる向きに液晶の分子105をプレチルトさせることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0069】
(変形例1)
上記第1の実施形態の光照射装置1では、ミラー32,34の反射面32a,34aがX軸に沿った方向において互いに反対側を向いている構成であったが、上記の形態に限定されない。光照射装置1において、反射面32a,34aがX軸に沿った方向において同じ向きで、それぞれの基板100の法線(Z軸)との角度θ3,θ5が互いに異なる構成としてもよい。このような構成によれば、基板100の第1の領域104aと第2の領域104bとにおいて、基板100の搬送方向D1に沿った方向における同じ向きに異なるプレチルト角で液晶の分子105を配向させることができる。
【0070】
(変形例2)
上記第1の実施形態の光照射装置1では、一対のミラー32,34が表示領域104(第1の領域104a、第2の領域104b)に対応する構成であったが、上記の形態に限定されない。ミラーのY軸方向における幅をより小さくして、3つ以上のミラーが表示領域104に対応する構成としてもよい。このような構成によれば、液晶装置の表示領域104を3つ以上の領域に分割し、分割されたそれぞれの領域に異なるプレチルト角で液晶の分子105を配向させることができる。
【符号の説明】
【0071】
1,2…光照射装置、10…光源、11…光、11a…直線偏光、11p…P偏光、11s…S偏光、20…偏光分離素子としてのワイヤーグリッド偏光子、30…反射手段としてのミラーユニット、32…第1の反射部としてのミラー、34…第2の反射部としてのミラー、40…移動手段としての搬送機構、50…偏光分離素子としてのビームスプリッター、56…反射手段としてのミラー、56a…第1の反射部としての反射面、56b…第2の反射部としての反射面、100…基板、104a…第1の領域、104b…第2の領域、D2,D4…第1の方向、D3,D5…第2の方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域と、前記第1の領域とは異なる第2の領域と、が表面に設けられた基板に光を照射する光照射装置であって、
光を放出する光源と、
前記光源で放出された前記光から偏光を分離する偏光分離素子と、
前記偏光を反射させて前記基板の前記表面に入射させる反射手段と、を備え、
前記反射手段は、前記偏光の一部分を第1の方向に反射させて前記第1の領域に入射させる第1の反射部と、前記偏光の他部分を第2の方向に反射させて前記第2の領域に入射させる第2の反射部と、を有し、
前記第1の方向と前記第2の方向とは互いに異なることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光照射装置であって、
前記偏光分離素子はワイヤーグリッドであり、
前記ワイヤーグリッドにより分離された偏光のうちの一部分を前記第1の反射部で反射させるとともに、前記偏光のうちの他部分を前記第2の反射部で反射させることを特徴とする光照射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光照射装置であって、
前記偏光分離素子はビームスプリッターであり、
前記ビームスプリッターにより分離された2種類の偏光のうちの一方を前記第1の反射部で反射させるとともに、前記2種類の偏光のうちの他方を前記第2の反射部で反射させることを特徴とする光照射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の光照射装置であって、
前記基板の前記表面に対する前記第1の方向の角度および前記第2の方向の角度は、変更可能であることを特徴とする光照射装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の光照射装置であって、
前記反射手段に対して前記基板を相対的に移動させる移動手段をさらに備えたことを特徴とする光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−53584(P2011−53584A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204441(P2009−204441)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】