説明

光照射装置

【課題】断面矩形の扁平状放電容器の外表面に一対の電極が配置されるとともに、前記放電容器の1面に光出射部が形成されてなるエキシマランプと、該エキシマランプを収容するケーシングと、該ケーシングに設けられて、前記エキシマランプの光出射部からの放射光をケーシング外に出射するための光取出窓よりなる光照射装置において、エキシマランプの幅方向での照度の均一性が向上した光を照射できるような光照射装置を提供することである。
【解決手段】前記エキシマランプは、前記光出射部と反対側の内壁面にのみ反射膜が形成されるとともに、前記ケーシングは、前記エキシマランプの側壁を透過した光を前記光取出窓に向けて反射させる反射ミラーを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エキシマランプを用いた光照射装置に関し、特に、ナノインプリント装置におけるテンプレートの表面をドライ洗浄処理するために好適な光照射装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップやバイオチップの製造において、従来のフォトリソグラフィーおよびエッチングを利用したパターン形成方法に比較して低コストで製造することが可能な方法として光ナノインプリント技術が注目されている。例えば、特開2000−194142号公報などがこれである。
この光ナノインプリント技術を利用したパターン形成方法においては、パターンを形成すべき基板、例えば、ウエハ上に液状の光硬化性樹脂を塗布することによってパターン形成用材料層を形成し、このパターン形成用材料層に対して、形成すべきパターンのネガとなるパターンが予め形成されたテンプレートを接触させ、この状態でパターン形成用材料層に紫外線を照射して硬化させ、その後、得られた硬化樹脂層からテンプレートを剥がす工程が行われる。
【0003】
このようなパターン形成方法においては、テンプレートのパターン形成面に異物などが存在すると、得られるパターンに欠陥が生じるため、テンプレートのパターン形成面を洗浄処理することが必要である。
このテンプレートを洗浄処理する方法としては、特開平8−236492号公報(特許文献1)に示されるように、溶剤やアルカリ、もしくは酸などの薬品を用いたウェット洗浄法が知られている。
しかしながら、このようなウェット洗浄法においては、有機溶剤や薬品などによってテンプレートの一部が溶解して、パターン形状が変形する恐れがあり、洗浄液を回収することも必要であって、その処理が煩雑となるという不具合があった。
また、硬化性樹脂層からテンプレートを剥がす際に、テンプレートに光硬化性樹脂の残滓が付着することがあり、パターン形成工程が終了する毎に、テンプレートのウェット洗浄処理を行うことが必要であって、このウェット洗浄処理に相当長い時間を要するため、生産性が著しく低下する、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−236492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、ナノインプリント装置のテンプレートのパターン形成面を洗浄処理するに際して、エキシマランプを備えた光照射装置を用いることによって前記テンプレートをドライ洗浄して、その洗浄処理を効率的に、かつ短時間で処理できるようにした構造を提供するものであり、特に、下面にパターン形成面を有するテンプレートの下方から紫外線を照射し、前記テンプレートでの照度分布をできる限り均一化してドライ洗浄できる光照射装置の構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る光照射装置は、断面矩形の扁平状放電容器の外表面に一対の電極が配置されるとともに、前記放電容器の1面に光出射部が形成されてなるエキシマランプと、該エキシマランプを収容するケーシングと、該ケーシングに設けられて、前記エキシマランプの光出射部からの放射光をケーシング外に出射するための光取出窓とよりなる光照射装置において、前記エキシマランプは、前記光出射部と反対側の内壁面にのみ反射膜が形成されるとともに、前記ケーシングは、前記エキシマランプの側壁を透過した光を前記光取出窓に向けて反射させる反射ミラーを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の光照射装置によれば、エキシマランプの側壁を透過した光をケーシングの光取出窓に向けて反射させる反射ミラーを設けたことにより、被照射物への照度、特にランプ幅方向での照度が均一化されるとともに、照度アップされた光の照射ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の光照射装置の断面図。
【図2】図1の側断面図。
【図3】図1のエキシマランプの断面図。
【図4】本発明の光照射装置をナノインプリントのテンプレート洗浄用 に用いた時の説明図。
【図5】本発明の効果を表す実験例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の断面図であり、図2はその側断面図である。
図において、本発明の光照射装置1は、ケーシング2と、その内部に収納されたエキシマランプ3とを有し、前記ケーシング2には、エキシマランプ3からの紫外光を出射する、例えば、石英ガラスからなる光取出窓4が設けられている。そして、前記ケーシング2内は不活性ガス雰囲気に置換されており、例えば、窒素ガスが充填されている。
また、図3に示されるように、エキシマランプ3は、石英ガラス等の透光性部材からなり、断面矩形の扁平状放電容器31と、この放電容器31の外表面に設けられた一対の電極32、33とを備えている。前記放電容器31の内部には放電ガスが封入され、その放電ガスは、キセノン、アルゴン、クリプトン等の希ガス、または希ガスと臭素、塩素、沃素、フッ素等のハロゲンガスとを混合した混合ガスなどである。
そして、該放電容器31の一面は、光出射部34として機能し、その内壁面のうち、該光出射部34と反対側の内壁面にのみ紫外線反射膜35が形成されていて、該反射膜35はそれ以外の内壁面には形成されていない。
なお、前記外部電極32、33は透光性電極として網状電極のものを例示したが、このうち、光出射部34側に位置する電極32を網状電極として、他方の電極33は必ずしも網状電極である必要はなく、不透光性の帯状電極であってもよい。
【0010】
図1に示されるように、ケーシング2内には、反射ミラー5が設けられている。該反射ミラー5の反射面は前記エキシマランプ3の側壁31aに対向し、該側壁31aに沿ってエキシマランプ3の管軸方向に延在するように配置されていて、エキシマランプ3の側壁31aから出射されてくる光を前記光取出窓4向けて反射するものである。
なお、該反射ミラー5は高輝度アルミニウム等から構成される。
【0011】
図1においては、この光照射装置1をナノインプリント装置のテンプレート洗浄用に用いた例が示されている。
光照射装置1は、下面にパターン形成面10aを有するテンプレート10の下方に配置され、その光取出窓4が前記テンプレート10の該パターン形成面10aに対向するように配置される。なお、前記テンプレート10は紫外線透過性材料、例えば、石英ガラスからなる。
【0012】
ナノインプリント装置の全体概略構造が図4に示されていて、ハウジング11内のテンプレート10の下方にはワーク(基板)Wを搭載した支持台12が位置しており、この支持台12はテンプレート10に対して進退自在になっていて、図4(A)はその直下のパターン形成処理位置に位置した状態を示している。このとき、光照射装置1はテンプレート10の直下位置より後退して待機位置にいる。
なお、前記テンプレート10の上方には、図示しないレジスト硬化用紫外線光源が配置されていて、テンプレート10が降下して支持台12上のワークWに押圧された後に、前記紫外線光源からテンプレート10を介して該ワークWに紫外線が照射される。
【0013】
図4(B)は、硬化処理後にテンプレート10が基板Wから剥離されて上昇され、該テンプレート10のパターン形成面10aを洗浄する状態を示しており、支持台12はテンプレート10の下方から退避し、光照射装置1が該下方位置に前進配置されている。
1回もしくは何回かの硬化処理を行ったテンプレート10のパターン形成面10aの凹凸にはレジスト等の残滓が付着しており、このテンプレート10のパターン形成面10aを洗浄するために、光照射装置1のエキシマランプ3から光取出窓4を経て紫外線が照射され、該テンプレート10のパターン形成面10aに付着した残滓が洗浄除去されるものである。
【0014】
本発明の光照射装置1の一実施形態例を示すと、ケーシング2の寸法は、100mm×250mm×80mmで、光取出窓4は石英ガラス製で、その縦横寸法は80mm×80mm、肉厚3mmである。
エキシマランプ3は石英ガラス製放電容器31の内部にキセノンガスが封入され、発光長が50mm、発光幅が45mm、出力が15Wである。
【0015】
上記の光照射装置1を用いて、その効果を検証するために照度測定実験を行った。
比較例として、放電容器内の光出射部を除いた内壁面に反射膜を形成したエキシマランプを備え、ケーシング内に反射ミラーを有しない構造の光照射装置を作成し、本発明と比較した。図5がその結果である。実験は、ケーシング2に設けた光取出窓4の上面の9点に照度計を設け、波長172nmの真空紫外光の照度測定を行った。
図5には、エキシマランプ3の幅方向の照度均一度を算出した値が記載されている。均一度は、幅方向で見て、照度が最も高い数値(Max)と、最も低い数値(Min)とから、{(Max−Min)/(Max+Min)}×100(%)として算出して、±○○%と表記したものである。
この結果、比較例においては、幅方向の均一度が、それぞれ±8.5%、±10.4%、±7.1%であったものが、本発明では、それぞれ±6.5%、±7.6%、±5.6%となって、反射ミラーを設けたことによる照度均一性の向上が実証された。加えて、全体の照度アップももたらされた。
【0016】
以上説明したように、本発明の光照射装置は、エキシマランプに、その光出射部と反対側の内壁面にのみ反射膜を形成するとともに、ケーシングに、前記エキシマランプの側壁を透過した光を該ケーシングの光取出窓に向けて反射させる反射ミラーを備えたので、エキシマランプの幅方向での照度の均一性が向上された光を被処理物に照射することができるという効果を奏するとともに、全体の照度アップももたらされるという効果を奏する。
【0017】
1 光照射装置
2 ケーシング
3 エキシマランプ
31 放電容器
31a 側壁
34 光出射部
35 紫外線反射膜
4 光取出窓
5 反射ミラー
10 テンプレート
10a パターン形成面
11 ハウジング
12 支持台
W ワーク(基板)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面矩形の扁平状放電容器の外表面に一対の電極が配置されるとともに、前記放電容器の1面に光出射部が形成されてなるエキシマランプと、該エキシマランプを収容するケーシングと、該ケーシングに設けられて、前記エキシマランプの光出射部からの放射光をケーシング外に出射するための光取出窓とよりなる光照射装置において、
前記エキシマランプは、前記光出射部と反対側の内壁面にのみ反射膜が形成されるとともに、
前記ケーシングは、前記エキシマランプの側壁を透過した光を前記光取出窓に向けて反射させる反射ミラーを有することを特徴とする光照射装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−181997(P2012−181997A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43768(P2011−43768)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】