説明

光熱変換シート及び有機電界発光装置の製造方法

【課題】光熱変換シートを繰り返し再利用でき、シートの利用効率が向上し、繰り返し使用により光熱変換層と保護層との層間剥離が生じることなく、転写後の光熱変換層からの汚染も防止できる光熱変換シート及び有機電界発光装置の製造方法の提供。
【解決手段】有機電界発光装置をレーザー熱転写法により製造するのに用いられる光熱変換シートであって、基材と、該基材上に光熱変換層と、該光熱変換層上に保護層とを有してなり、前記光熱変換層が、光熱変換材料を含有する光熱変換シートである。該光熱変換シートと、支持体上に有機電界発光素材層を有する有機電界発光素材シートと、基板とをこの順に積層して積層体を形成する積層工程と、前記積層体の光熱変換層に光を照射して前記基板上に前記有機電界発光素材層を転写する転写工程とを含む有機電界発光装置の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光装置(以下、「有機EL装置」、「有機エレクトロルミネッセンス装置」と称することもある)をレーザー熱転写法により製造するのに好適に用いられる光熱変換シート、及び該光熱変換シートを用いた有機電界発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光装置は、自発光型の表示装置であり、ディスプレイや照明の用途に期待されている。例えば、有機電界発光ディスプレイは、従来のCRTやLCDと比較して視認性が高く、視野角依存性がない等の表示性能上の利点を有している。また、ディスプレイを軽量化、薄層化できる利点もある。その一方、有機電界発光照明は、軽量化、薄層化が可能であるとの利点に加え、フレキシブルな基板を用いることでこれまで実現できなかった形状の照明を実現できる可能性を有している。
【0003】
このような有機電界発光ディスプレイの製造には、微細パターニング工程が必要である。例えば、メタルマスクを用いて青色(B)、緑色(G)、赤色(R)の画素をそれぞれパターンニングしている。また、カラーフィルタ等の微細パターニングにはフォトリソグラフー法が用いられている。
しかし、大面積の有機電界発光ディスプレイの作製において、メタルマスクの使用はマスクの精度、価格の面から実用的ではない。また、フォトリソグラフー法では、溶液プロセスが必要となり、電子デバイスには適用が困難となることがある。
したがって大面積で信頼性の高い有機電界発光ディスプレイを効率よく製造することができる新たな方法の提供が望まれている。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、基板と、前記基板の上を覆っている光熱変換層であって、結像放射線吸収剤物質と、硬化波長の放射線の照射によって硬化可能な放射線硬化型物質を含む光熱変換層とを含む熱転写素子であって、前記結像放射線吸収剤物質が、前記硬化波長における放射線吸収度を実質的に上昇させない熱転写素子が提案されている。前記基板の上を覆っている中間層を更に含むことが好ましいと記載されている。この中間層は透明であることが好ましく、光熱変換層の成分の移動を遮断する機能を有するものである。
また、特許文献2には、第1の電極が設けられた基体と、前記基体の前記第1の電極が設けられている側に配置された透明基板と、前記第1の電極及び前記透明基板の間に設けられ、前記基体の上に配置されたカラーフィルタと、前記第1の電極と前記カラーフィルタとの間に配置されたエレクトロルミネッセンス層と、前記エレクトロルミネッセンス層と前記カラーフィルタとの間に配置された第2の電極と、を備えた発光デバイスが提案されている。この提案の発光デバイスは、中間層(保護層)を有していない。
【0005】
しかし、これらの先行技術文献では、光熱変換シートと有機電界発光素材シートが別体ではなく一体化されており、転写すると体積膨張等により光熱変換シート表面に凹凸が生じるなど平坦性が損なわれてしまう、あるいは転写する素材が必要な部位に存在しない状態となる。このように光熱変換シートを繰り返し使用すると画像欠陥が発生したり、保護層と光熱変換層との層間剥離が生じるおそれがある。
いずれにしても先行技術文献は、いずれも光熱変換シートを繰り返して用いることを予定しておらず、光熱変換シートの利用効率が低いという課題があるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−512143号公報
【特許文献2】特開2009−187804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、光熱変換シートと有機電界発光素材シートとを別体化することにより、光熱変換シートを繰り返し使用でき、シートの利用効率が向上し、繰り返し使用により光熱変換層と保護層との層間剥離が生じることなく、転写後の光熱変換層からの汚染も防止できる光熱変換シート、及び該光熱変換シートを用いた有機電界発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、光熱変換シートと有機電界発光素材シートとを別体化することにより、レーザー熱転写法により基板上に有機電界発光素材層を転写することができ、光熱変換シートを繰り返し使用できるので、光熱変換シートの利用効率の向上を図れ、繰り返し使用によっても保護層と光熱変換層との層間剥離が生じないことを知見した。
【0009】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 有機電界発光装置をレーザー熱転写法により製造するのに用いられる光熱変換シートであって、
基材と、該基材上に光熱変換層と、該光熱変換層上に保護層とを有してなり、
前記光熱変換層が、光熱変換材料を含有することを特徴とする光熱変換シートである。
<2> 保護層が、無機材料のスパッタ法による層又は蒸着層である前記<1>に記載の光熱変換シートである。
<3> 無機材料が、SiO、Al及びITO(Indium Tin Oxide)から選択される少なくとも1種である前記<2>に記載の光熱変換シートである。
<4> 保護層の厚みが、10nm〜100nmである前記<1>から<3>のいずれかに記載の光熱変換シートである。
<5> 光熱変換層と保護層の間に、密着層を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の光熱変換シートである。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の光熱変換シートと、支持体上に有機電界発光素材層を有する有機電界発光素材シートと、基板とをこの順に積層して積層体を形成する積層工程と、
前記積層体の光熱変換層に光を照射して前記基板上に前記有機電界発光素材層を転写する転写工程と、を含むことを特徴とする有機電界発光装置の製造方法である。
<7> 有機電界発光素材層が、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、バリア層及びカラーフィルタから選択される少なくともいずれかである前記<6>に記載の有機電界発光装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の前記諸問題を解決することができ、光熱変換シートと有機電界発光素材シートとを別体化することにより、光熱変換シートを繰り返し再利用でき、シートの利用効率が向上し、繰り返し使用により光熱変換層と保護層との層間剥離が生じることなく、転写後の光熱変換層からの汚染も防止できる光熱変換シート、及び該光熱変換シートを用いた有機電界発光装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、本発明の有機電界発光装置の製造方法を示す工程図であり、光熱変換シートの一例を示す。
【図1B】図1Bは、本発明の有機電界発光装置の製造方法を示す工程図であり、光熱変換シートと、有機電界発光素材シートと、基板とをこの順に積層して積層体を形成する工程を示す。
【図1C】図1Cは、本発明の有機電界発光装置の製造方法を示す工程図であり、積層体の光熱変換層に光を照射して、有機電界発光素材層を転写する工程を示す。
【図1D】図1Dは、本発明の有機電界発光装置の製造方法を示す工程図であり、転写後の基板と、有機電界発光素材シートと、光熱変換シートとを分離する工程を示す。
【図2A】図2Aは、レーザー光の照射方法の一例を示す図である。
【図2B】図2Bは、レーザー光の照射方法の一例を示す図である。
【図2C】図2Cは、レーザー光の照射方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(光熱変換シート)
本発明の光熱変換シートは、有機電界発光装置をレーザー熱転写法により製造するのに用いられ、
基材と、該基材上に光熱変換層と、該光熱変換層上に保護層とを有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0013】
<基材>
前記基材としては、その形状、構造、大きさ、材料等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記光熱変換シートの大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0014】
前記基材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂(PI)、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、機械的強度や熱に対する寸法安定性の点からポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
前記基材の表面には、その上の光熱変換層との密着性を向上させるため、表面活性化処理を行うことが好ましい。前記表面活性化処理としては、例えばグロー放電処理、コロナ放電処理などが挙げられる。
【0015】
前記基材は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
【0016】
<光熱変換層>
前記光熱変換層は、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては平板状などが挙げられ、前記構造としては単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては用途等に応じて適宜選択することができる。
前記光熱変換層は、光熱変換材料を含有し、バインダー、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0017】
−光熱変換材料−
前記光熱変換材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば無機系材料と有機系材料とに大別できる。
【0018】
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属、若しくは半金属又はそれを含む合金、などが挙げられる。これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザーを用いる場合には、600nm〜1,200nm付近に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系色素などが挙げられる。光熱変換シートを繰返し使用するためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましく、この点からフタロシアニン系色素が特に好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光熱変換材料の前記光熱変換層における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜30質量%であることが好ましい。
【0019】
−バインダー−
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル酸系モノマーの単独重合体又は共重合体;メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート等のセルロース系ポリマー;ポリスチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等のビニル系ポリマー及びビニル化合物の共重合体;ポリエステル、ポリアミド等の縮合系ポリマー;ブタジエン−スチレン共重合体等のゴム系熱可塑性ポリマー;エポキシ化合物等の光重合性又は熱重合性化合物を重合・架橋させたポリマー;ポリイミド樹脂、などを挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記光熱変換層は、例えば光熱変換材料を含有し、バインダー、更に必要に応じてその他の成分を含有する光熱変換層用塗布液を、基材上に塗布することにより形成することができる。
前記光熱変換層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm〜1,000nmであることが好ましく、100nm〜500nmであることがより好ましい。
【0021】
<保護層>
前記保護層としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては平板状などが挙げられ、前記構造としては単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては用途等に応じて適宜選択することができる。
【0022】
前記保護層は、平坦性、被覆性、伝熱性の点から無機材料のスパッタ法による層又は蒸着層であることが好ましい。
前記無機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばSiO、Al、ITO(Indium Tin Oxide)TiO、Cr、AlN、MgF、Al、Au、Agなどが挙げられる。これらの中でも、平坦性、強度の点でSiO、Al、ITO(Indium Tin Oxide)が特に好ましい。
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メッキ法、印刷法、スパッタ法、CVD法、蒸着法、などにより形成することができる。
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm〜100nmであることが好ましく、20nm〜50nmであることがより好ましい。前記厚みが、10nm未満であると、被覆が完全に行われないことがあり、100nmを超えると、効率的に熱を伝えられないことがある。
【0023】
<密着層>
前記基材と、その上に設けられる光熱変換層との密着性を向上させるため、密着層を設けることが好ましい。
前記密着層の材料としては、支持体と光熱変換層の両表面に高い接着性を示し、かつ熱伝導性が小さく、また耐熱性に優れたものであることが好ましく、例えばスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ゼラチンなどが挙げられる。
前記密着層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜2μmであることが好ましい。
【0024】
本発明の光熱変換シートは、各種用塗に用いることができるが、以下に説明する有機電界発光装置の製造方法に好適に用いることができ、大面積で信頼性の高い有機電界発光ディスプレイを効率よく製造することができる。
【0025】
(有機電界発光装置の製造方法)
本発明の有機電界発光装置の製造方法は、積層工程と、転写工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0026】
<積層工程>
前記積層工程は、本発明の前記光熱変換シートと、支持体上に有機電界発光素材層を有する有機電界発光素材シートと、基板とをこの順に積層して積層体を形成する工程である。
【0027】
<<光熱変換シート>>
前記光熱変換シートとしては、本発明の前記光熱変換シートを用いることができる。
【0028】
<<有機電界発光素材シート>>
前記有機電界発光素材シートは、支持体と、該支持体上に有機電界発光素材層とを有し、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0029】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ、材料等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記有機電界発光素材シートの大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0030】
前記基材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリマー;アルミ、金、銀等の金属箔などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、機械的強度や熱に対する寸法安定性の点から金属箔が好ましく、アルミ箔が特に好ましい。
【0031】
前記支持体は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1μm以上200μm以下が好ましく、5μm以上100μm以下がより好ましい。
【0032】
−有機電界発光素材層−
前記有機電界発光素材層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、発光層のほか、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層を有してもよい。また、更にバリア層、カラーフィルタ層などの他の層を有してもよい。正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、バリア層、カラーフィルタ層などの各層は、それぞれ他の機能を備えたものであってもよい。
【0033】
前記発光層の材料は、電界印加時に陽極又は正孔注入層、正孔輸送層から正孔を注入することができると共に、陰極又は電子注入層、電子輸送層から電子を注入することができる機能や、注入された電荷を移動させる機能、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層を形成することができるものであればよい。
前記発光層に用いる発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体;ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記発光層の形成は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタ法、分子積層法、コーティング法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)、LB法などが挙げられる。
前記発光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0035】
前記正孔注入層、正孔輸送層の材料は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであればよい。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、などが挙げられる。前記正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0036】
前記正孔注入層、正孔輸送層の形成は、真空蒸着法やLB法、前記正孔注入輸送剤を溶媒に溶解又は分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)により行える。
前記正孔注入層、正孔輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0037】
前記電子注入層、電子輸送層の材料は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれか有しているものであればよい。その具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、などが挙げられる。前記電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0038】
前記電子注入層、電子輸送層の形成は、真空蒸着法やLB法、前記電子注入輸送剤を溶媒に溶解又は分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)などにより行える。
前記電子注入層、電子輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0039】
前記陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層などに正孔を供給するものであり、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、又はこれらの混合物などを用いることができる。好ましくは、仕事関数が4eV以上の材料である。具体例としては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロム、ニッケル等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、又はこれらとITOとの積層物などが挙げられる。これらの中でも、生産性、高導電性、透明性等の点からITO、IZOが特に好ましい。
前記陽極の厚みとしては、特に制限はなく、材料により適宜選択可能であるが、10nm〜5μmが好ましく、50nm〜1μmがより好ましく、100nm〜500nmが更に好ましい。
【0040】
前記陽極は、通常、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、透明樹脂基板などの上に層形成されたものが用いられる。ガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分であれば特に制限はないが、ガラスを用いる場合には、通常は0.2mm以上であり、好ましくは0.7mm以上のものを用いる。陽極のシート抵抗は低い方が好ましく、数百Ω/□以下が好ましい。
【0041】
前記陽極の作製には、材料によって種々の方法が用いられるが、例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウム・スズの分散物の塗布などの方法で膜形成される。陽極は、洗浄その他の処理により、表示装置の駆動電圧を下げたり、発光効率を高めることも可能である。例えばITOの場合、UV−オゾン処理などが効果的である。
【0042】
前記陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層などに電子を供給するものであり、電子注入層、電子輸送層、発光層などの負極と隣接する層との密着性やイオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。陰極の材料としては金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、又はこれらの混合物を用いることができる。具体例としては、アルカリ金属(例えばLi、Na、K等)又はそのフッ化物、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)又はそのフッ化物、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金又はそれらの混合金属、リチウム−アルミニウム合金又はそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金又はそれらの混合金属、インジウム、イッテリビウム等の希土類金属等が挙げられる。好ましくは、仕事関数が4eV以下の材料であり、より好ましくはアルミニウム、リチウム−アルミニウム合金又はそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金又はそれらの混合金属等である。
前記陰極の厚みは、特に制限はなく、材料により適宜選択可能であるが、10nm〜5μmが好ましく、50nm〜1μmがより好ましく、100nm〜1μmが更に好ましい。
【0043】
前記陰極の作製には、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、コーティング法などの方法が用いられ、金属を単体で蒸着することも、二成分以上を同時に蒸着することもできる。更に、複数の金属を同時に蒸着して合金電極を形成することも可能であり、また、予め調製した合金を蒸着させてもよい。前記陰極のシート抵抗は低い方が好ましく、数百Ω/□以下が好ましい。
【0044】
前記バリア層としては、大気中の酸素、水分、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等の透過を防ぐという機能を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記バリア層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SiN、SiON、などが挙げられる。
前記バリア層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜1,000nmが好ましく、7nm〜750nmがより好ましく、10nm〜500nmが特に好ましい。前記バリア層の厚みが、5nm未満であると、大気中の酸素及び水分の透過を防ぐバリア機能が不充分であることがあり、1,000nmを超えると、光線透過率が低下し、透明性を損なうことがある。
前記バリア層の光学的性質は、光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
前記バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CVD法、真空蒸着法、などが挙げられる。
【0045】
前記カラーフィルタ層としては、彩度を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、層構成のものが挙げられる。カラーフィルタ層が層構成の場合、同一基板上に、2種以上の発光色の異なる部分を有するものであってもよい。また、例えば、3原色の赤色、緑色及び青色の赤色フィルター部、緑色フィルター部、及び青色フィルター部を有する層構成であってもよい。また、1つの有機化合物層から発光する光と、赤色フィルター部、緑色フィルター部及び青色フィルター部の各色とが、対応するように、構成されてもよい。
【0046】
前記カラーフィルタ層の形成方法としては、上記のような構成を形成し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、フォトリソグラフィー法、エッチング法、インクジェット法などが挙げられる。カラーフィルタ層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、各種樹脂、染料、顔料が挙げられる。
【0047】
<<基板>>
前記基板としては、その形状、構造、大きさ、材料等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記有機電界発光装置の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
前記基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、SiO膜被覆シリコン基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリカーボネート基板、ポリスチレン基板、ポリメチルメタクリレート基板等のポリマー基板、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記基板は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。
前記基板の厚みが、100μm未満であると、基板の撓みにより密着性が低下することがある。
【0048】
本発明の前記光熱変換シートと、支持体上に有機電界発光素材層を有する有機電界発光素材シートと、基板とをこの順に積層する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば真空吸着、静電吸着、粘着、などが挙げられる。
この場合、前記光熱変換シートの保護層上に有機電界発光素材シートの支持体が配置され、該有機電界発光素材シートの有機電界発光素材層上に基板が配置されるように積層される。なお、基板上には、有機電界発光素材層が形成されていてもよい。
【0049】
<転写工程>
前記転写工程は、本発明の前記光熱変換シートと、有機電界発光素材シートと、基板とをこの順に積層した積層体の光熱変換層に光を照射して前記基板上に前記有機電界発光素材層を転写する工程である。
【0050】
前記光としては、レーザー光が好ましい。該レーザー光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアルゴンイオンレーザー光、ヘリウムネオンレーザー光、ヘリウムカドミウムレーザー光などのガスレーザー光、YAGレーザー光などの固体レーザー光、半導体レーザー、色素レーザー光、エキシマレーザー光などの直接的なレーザー光を利用できる。あるいは、これらのレーザー光を二次高調波素子を通して、半分の波長に変換した光なども用いることができる。これらの中でも、出力パワーや変調のし易さなどを考慮すると、半導体レーザーが特に好ましい。
また、レーザー光は、光熱変換層上でのビーム径(半値径)が3μm〜50μm(特に6μm〜30μm)の範囲となるような条件で照射することが好ましく、走査速度は0.1m/秒以上(特に3m/秒以上)が好ましい。
【0051】
前記レーザー光の照射は、本発明の前記光熱変換シートと、有機電界発光素材シートと、基板とをこの順に積層した積層体に対しレーザー光を照射する方法により行うことができる。
レーザー光の照射は、露光ヘッドを固定し、X−Y方向に移動可能な露光ステージ(内部に真空形成機構を有し、表面に多数の微小な開口を設けて真空引きして固定してもよい)に有機電界発光素材層が形成された基板を積載して固定し移動させることにより、主走査方向に主走査し、1走査ごとに副走査方向に一定の速度で移動(副走査)させて行うことができる。
【0052】
例えば、図2Aに示すように、積層体を吸着(例えば、ステージの基板設置面に複数の孔を有し、孔から真空引きすることにより真空吸着)して固定する吸着ステージ61と、半導体レーザーを搭載したレーザーユニット64を有し、レーザーユニットからのレーザー光を積層体に照射可能に構成されたレーザーヘッドアッセンブリ65と、レーザーヘッドアッセンブリに固定配置されたCCDカメラユニット66とを備えたレーザー露光装置60を用い、リニアガイド62に沿って図中の矢印Bの方向に、積層体が吸着固定された吸着ステージ61を定速で移動させながら、吸着ステージ61が一方の方向に向かう往路でCCDカメラユニット66により積層体の背面側から予め決められた複数の標準画像パターンの位置の近傍にある有機電界発光素材層、電極層、TFT層等の画像を撮影し、これらの画像中から、標準画像パターンと形状が一致するパターン画像を検出し、この位置座標を求め、予め決められた標準画像パターンの座標と比較して、実際のステージ上の基板(積層体)の位置ズレと寸法(倍率)ズレ、角度ズレを算出して、ビットマップ形式の露光データを座標変換した後、撮影終了後は往路と逆方向に向かう復路で、変換された露光データに従ってレーザーヘッドアッセンブリ65でレーザー露光を行うようにすることができる。レーザーヘッドアッセンブリ65(及びCCDカメラユニット66)は、長手方向が吸着ステージの移動方向(矢印Bの方向)と直交する方向に平行に配置されたレールに取り付けられており、図中の矢印Aの方向に移動可能なようになっている。レーザーヘッドアッセンブリ65は、図2Bに示すように、レーザーユニット64から発振されたレーザー光がレンズを介して多面のポリゴンミラー67に入射し、入射光は定速回転するポリゴンミラー67で所定の角度で反射されてミラー68を介してfθレンズ69に入射し、吸着ステージ上の積層体70にレーザー照射できるようになっている。
【0053】
このとき、撮影及びレーザー露光は、図2A及び図2Cに示すように、まず、CCDカメラユニット66を、所定のスタート位置から矢印方向Bに定速移動させて積層体70の背面側から有機電界発光層等の画素パターンを撮影し(往路)、撮影終了後、撮影終了位置近傍の所定の地点から矢印Bの方向に戻しながら、a方向(主走査方向)にレーザービームを高速で走査(主走査)してレーザー露光する。その際、レーザーは、ビームで露光しようとする座標位置に対応する、変換後の露光データに応じてON/OFF制御される。それと同時に、b方向(副走査方向)に副走査する速度は、連続する2回の主走査方向aのピッチが一定になるように同期制御される。各走査間の副走査方向bのピッチは、露光量のムラが発生しないようにするため、ビーム径以下にすることが好ましく、更に好ましくはビーム径の1/5以下にすることが好ましい。ここで、ビーム径とは、半値径をいい、最大ピーク値の半分の位置における半値全幅(full width at half maximum)のことである。最終的に、吸着ステージを元のスタート位置まで露光(1回目走査)が終了した後、レーザーヘッドアッセンブリ65及びCCDカメラユニット66を図2Aの矢印Aの方向に所定の距離だけ移動させ、同様に主走査方向a及び副走査方向bに撮影し、レーザー露光を行い、2回目走査の終了後、更に3回目、4回目、・・・、N回目の走査を継続することにより行う。
【0054】
<有機電界発光装置>
本発明の有機電界発光装置の製造方法により製造された有機電界発光装置は、フルカラーで表示し得る装置として構成することができる。
前記有機電界発光装置をフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する層構造を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の層構造による白色発光をカラーフィルタ層を通して3原色に分ける白色法、青色発光用の層構造による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
この場合は、青色(B)、緑色(G)、赤色(R)の画素ごとにレーザーパワー、膜厚を適宜調整することが好ましい。
また、上記方法により得られる異なる発光色の層構造を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色、緑色、赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、等である。
【0055】
前記有機電界発光装置は、例えば、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
(調製例1)
−光熱変換層用塗布液Aの調製−
下記組成の各成分をスターラーで撹拌下に混合し、光熱変換層用塗布液Aを調製した。
〔光熱変換層用塗布液Aの組成〕
・赤外線吸収色素(IR−820B、日本化薬株式会社製)・・・5質量部
・バインダー(PAA−A(芳香族のテトラカルボン酸に無水物とジアミンとの反応により得られた、N,N−ジメチルアセトアミドの25質量%溶液)、三井東圧化学株式会社製;ポリアミド酸)・・・40質量部
・メチルエチルケトン・・・1,000質量部
・1−メトキシ−2−プロパノール・・・1,000質量部
・界面活性剤(メガファックF−177P、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・1質量部
【0058】
(調製例2)
−光熱変換層用塗布液Bの調製−
下記の各成分をスターラーで攪拌しながら混合して、光熱変換層用塗布液Bを調製した。
〔光熱変換層用塗布液Bの組成〕
・赤外線吸収色素(「NK−2014」、日本感光色素株式会社製)・・・7.6質量部
・ポリビニルブチラール(「PVB−2000L」、電気化学工業株式会社製)・・・29.3質量部
・エクソンナフサ(エクソン化学社製)・・・5.8質量部
・N−メチルピロリドン(NMP)・・・1,500質量部
・メチルエチルケトン・・・360質量部
・界面活性剤(「メガファックF−176PF」、大日本インキ化学工業株式会社製、フッ素系界面活性剤)・・・0.5質量部
・下記組成のマット剤分散物・・・14.1質量部
−マット剤分散物の調製−
平均粒径1.5μmの真球シリカ微粒子(日本触媒株式会社製、シーホスターKE−P150)10質量部、分散剤ポリマー(アクリル酸エステルスチレン共重合体ポリマー、ジョンソンポリマー株式会社製、ジュンクリル611)2質量部、メチルエチルケトン16質量部、及びN−メチルピロリドン64質量部を混合し、これと直径2mmのガラスビーズ30質量部を容量200mLのポリエチレン製容器に入れて、ペイントシェーカー(東洋精機株式会社製)で2時間分散してシリカ微粒子の分散物を得た。
【0059】
(製造例1)
<光熱変換シート1の作製>
−光熱変換層の形成−
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の表面上に、スチレン−ブタジエン共重合体からなる層(厚み500nm)とゼラチン層(厚み100nm)とをこの順に形成して、密着層付支持体を作製した。
作製した密着層付支持体のゼラチン層上に、得られた光熱変換層用塗布液Aをスピンコータ(1H−DX2、ミカサ株式会社製)を用いて塗布した後、120℃のオーブン中で2分間乾燥し、厚みが200nmとなるように光熱変換層を形成した。得られた光熱変換層は、波長808nm付近に吸収を有していた。なお、光熱変換層の厚みは、走査型電子顕微鏡(JSM−5400、日本電子株式会社製)により光熱変換層の断面を観察して求めた。
【0060】
−保護層(SiO層)の形成−
作製した光熱変換層上に、ターゲットとしてホウ素ドープSi、放電ガスとしてAr、電源としてDCパルス電源を用いてプラズマ放電させ、SiOの化学量論比になるようプラズマ発光をモニターしながら反応ガスとしてのOの流量を制御し、厚みが30nmのSiOをスパッタ法で成膜した。
【0061】
(製造例2)
<光熱変換シート2の作製>
製造例1の光熱変換層上に、保護層としてのSiO層を下記のAl層に代えた以外は、製造例1と同様にして、光熱変換シート2を作製した。
−保護層(Al層)の形成−
ターゲットとしてAl、放電ガスとしてAr、電源としてDCパルス電源を用いてプラズマ放電させ、Alの化学量論比になるようプラズマ発光をモニターしながら反応ガスとしてのOの流量を制御して、厚みが30nmのAlをスパッタ法で成膜した。
【0062】
(製造例3)
<光熱変換シート3の作製>
製造例2において、光熱変換層用塗布液Aを光熱変換層用塗布液Bに変え、厚みが300nmとなるように光熱変換層を形成した以外は、製造例2と同様にして、光熱変換シート3を作製した。
【0063】
(製造例4)
<光熱変換シート4の作製>
製造例3の光熱変換層上に、保護層としてのAl層を下記のITO(Indium Tin Oxide)層に代えた以外は、製造例3と同様にして、光熱変換シート4を作製した。
−保護層(ITO層)の形成−
ターゲットとしてITO(Indium Tin Oxide)、放電ガスとしてAr、電源としてDC電源を用いてプラズマ放電させ、厚みが30nmのITO層をスパッタ法で成膜した。
【0064】
(製造例5)
<光熱変換シート5の作製>
製造例3の光熱変換層上に、保護層としてのITO(Indium Tin Oxide)層の厚みを20nmに変えた以外は、製造例4と同様にして、光熱変換シート5を作製した。
【0065】
(製造例6)
<光熱変換シート6の作製>
製造例3の光熱変換層上に、保護層としてのITO(Indium Tin Oxide)層の厚みを50nmに変えた以外は、製造例4と同様にして、光熱変換シート6を作製した。
【0066】
(比較製造例1)
−光熱変換シート7の作製−
製造例1において、保護層を設けない以外は、製造例1と同様にして、光熱変換シート7を作製した。
【0067】
(比較製造例2)
−光熱変換シート8の作製−
製造例3において、保護層を設けない以外は、製造例3と同様にして、光熱変換シート8を作製した。
【0068】
(製造例7)
<有機電界発光素材シートの作製>
厚み10μmのアルミ箔上に、緑色発光の、下記構造式で表されるmCP(1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)べンゼン)と、下記構造式で表されるIr(ppy)(トリス(2−フェニルピリジンイリジウム)とを85:15(質量比)で共蒸着し、厚み25nmの発光層を形成した。以上により、有機電界発光素材シートを作製した。
【化1】

【化2】

【0069】
(実施例1)
<有機電界発光装置の作製>
TFT(Thin Film Transister)上に、以下のようにして、各層を形成し、有機電界発光装置を作製した。
前記TFTの反射電極(アルミニウム)上に、正孔注入層として、下記構造式で表される2−TNATA(4,4',4''−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)と、下記構造式で表されるF4−TCNQ(テトラフルオロテトラシアノキノジメタン)とを、質量比で99:1(2−TNATA:F4−TCNQ)となるように共蒸着して、厚み40nmの正孔注入層を形成した。
【化3】

【化4】

【0070】
次に、前記正孔注入層上に、下記構造式で表されるα−NPD(N,N'−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン)を厚みが10nmとなるように蒸着した。次いで、3,6−ビス(カルバゾール−1−イル)−1−フェニルカルバゾールを厚みが3nmとなるように蒸着し、総厚み13nmの正孔輸送層を形成した。
【化5】

【0071】
次に、露光装置として、図2A〜図2Cに示すように、基板(TFTと、正孔注入層と、正孔輸送層とからなる積層物)を真空吸着して固定する吸着ステージ61と、赤外線半導体レーザーを搭載したレーザーユニット64を有し、レーザーユニットからの赤外線レーザー光を積層体に照射可能に構成されたレーザーヘッドアッセンブリ65と、レーザーヘッドアッセンブリに固定配置されたCCDカメラユニット66(CCDカメラユニットは裏面設置も可能)とを備えた赤外線レーザー照射装置を準備した。
次に、前記積層物の正孔輸送層上上に、前記有機電界発光素材シートと前記光熱変換シート1を順次重ね、真空吸着して固定し、重ねた状態で表面温度100℃のヒートローラーを10kg/cmの圧力で押し当てて密着させた。その後、室温で約10分間放置して冷却した。そして、アルミニウム(Al)膜の分割下部電極上の発光層の予め決められた3箇所以上の画素パターンの位置を含む周辺の画像をCCDカメラで撮影し、その撮影画像内で、予め決められた標準画素パターンと一致する画素パターンをパターンマッチングアルゴリズムにより検出し、その位置座標を求め、予め決められた位置座標と比較し、それぞれの座標の差異から全体の位置ズレと寸法(倍率)ズレと角度ズレを算出した。その結果に基づいて、ビットマップ露光データの座標変換を行った。レーザーユニットを搭載したレーザーヘッドアッセンブリにより、光熱変換シート1のPET支持体側から波長830nmの半導体レーザー光を、光熱変換層の表面で7μm±1μmのビーム径(半値径)となるように集光し、主走査方向aに走査させながら、変換した露光データ信号に応じてON/OFF変調して照射すると共に、1走査毎に主走査方向に略直交する副走査方向bに0.5μmのピッチで移動し、積層物の正孔輸送層上に発光層を転写した。作業完了後、真空吸着を解除した。続いて、積層物上に載せた光熱変換シート1及び有機電界発光素材シートを剥離して、発光層を形成した。
【0072】
次に、発光層上に、下記構造式で表されるBAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium (III))を厚みが39nmとなるように蒸着し、次いで、下記構造式で表されるBCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)を厚みが1nmとなるように蒸着し、総厚みが40nmの電子輸送層を形成した。
【化6】

【化7】

【0073】
前記電子輸送層上に、LiFを蒸着して、厚み1nmの電子注入層を形成した。
次に、前記電子注入層上にアルミニウム(Al)を厚みが1.5nmになるように蒸着した。次いで、Agを厚みが20nmとなるように蒸着して、総厚みが21.5nmの半透過電極を形成した。
次に、発光表示部に対して、SiONを蒸着して厚みが3μmの封止層を形成し、有機電界発光表示部を形成した。以上により、実施例1の有機電界発光装置を作製した。
【0074】
(実施例2〜6及び比較例1〜2)
−有機電界発光装置の作製−
実施例1において、光熱変換シート1を表1に示した光熱変換シート2〜8に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜2の有機電界発光装置を作製した。
【0075】
次に、作製した各有機電界発光装置について、以下のようにして、初期の光熱変換シートの表面粗さRa、1回転写後の光熱変換シートの表面粗さRa及び画像の欠陥、5回転写後の光熱変換シートの表面粗さRa及び画像の欠陥を評価した。結果を表1に示す。
【0076】
<表面粗さRa>
各光熱変換シートについて、保護層側の表面粗さRaを触針式表面形状測定器(DEKTAK150、アルバック株式会社製)で測定した。
【0077】
<画像の欠陥>
画像の欠陥は、作製した各有機電界発光装置の発光面積と設計上の面積との比率〔(発光面積/設計上の面積)×100〕を求め、比率が95%以上であるものを○、比率が95%より小さく50%以上であるものを△、比率が50%より小さいものを×とした。
【0078】
【表1−1】

【表1−2】

【0079】
表1の結果から、実施例1〜6では、1回転写後の光熱変換シートの表面粗さRaの上昇がなく、5回繰り返し転写後の光熱変換シートの表面粗さRaの上昇が小さいことから、光熱変換シートの繰り返し利用ができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の光熱変換シート及び該光熱変換シートを用いた有機電界発光装置の製造方法は、例えば大面積で信頼性の高い有機電界発光ディスプレイなどを効率よく製造することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 基材
2 光熱変換層
3 保護層
4 支持体
5 有機電界発光素材層
6 基板
7 光熱変換シート
8 有機電界発光素材シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電界発光装置をレーザー熱転写法により製造するのに用いられる光熱変換シートであって、
基材と、該基材上に光熱変換層と、該光熱変換層上に保護層とを有してなり、
前記光熱変換層が、光熱変換材料を含有することを特徴とする光熱変換シート。
【請求項2】
保護層が、無機材料のスパッタ法による層又は蒸着層である請求項1に記載の光熱変換シート。
【請求項3】
無機材料が、SiO、Al及びITO(Indium Tin Oxide)から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の光熱変換シート。
【請求項4】
保護層の厚みが、10nm〜100nmである請求項1から3のいずれかに記載の光熱変換シート。
【請求項5】
光熱変換層と保護層の間に、密着層を有する請求項1から4のいずれかに記載の光熱変換シート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の光熱変換シートと、支持体上に有機電界発光素材層を有する有機電界発光素材シートと、基板とをこの順に積層して積層体を形成する積層工程と、
前記積層体の光熱変換層に光を照射して前記基板上に前記有機電界発光素材層を転写する転写工程と、を含むことを特徴とする有機電界発光装置の製造方法。
【請求項7】
有機電界発光素材層が、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、バリア層及びカラーフィルタ層から選択される少なくともいずれかである請求項6に記載の有機電界発光装置の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2C】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2011−113936(P2011−113936A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272192(P2009−272192)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】