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光熱変換測定装置及び光熱変換測定方法
説明

光熱変換測定装置及び光熱変換測定方法

【課題】セルに充填された試料に信号光及び励起光を通過させることによる信号光の位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する場合に,セルに対する信号光や励起光の反射光がノイズとなって測定精度を悪化させることを防止できること。
【解決手段】信号光Psを,セルの第1の外壁2aに対し斜めに入射させて試料1中を第1の光路R1に沿って通過させ,通過した信号光の一部をハーフミラー3で反射し,反射した信号光Psを第2の光路R2に沿って試料1を通過させ,励起光Phを,ハーフミラー3を通して前記第2の外壁2bに対し斜めに入射させ,前記第1の光路R1に沿って信号光Psに対し逆方向に試料1を通過させ,参照光Phを,ハーフミラー3を通して前記第2の光路R2に沿って信号光Psと同じ方向に試料1を通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,容器に充填された試料にビーム状の信号光を通過させ,前記試料における前記信号光の通過部にビーム状の励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する光熱変換測定装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種試料の含有物質等の分析において,分析感度の向上は,試薬の量の低減や試料の濃縮処理の簡素化,分析の効率化及び低コスト化を図る上で重要である。一方,試料に励起光を照射すると,その照射部は励起光を吸収することにより発熱する。これを光熱効果という。また,その光熱効果による発熱量(吸熱量)を測定することを光熱変換測定という。
従来,この光熱変換測定による試料の高感度分析法として,光熱効果により試料に形成される熱レンズ効果を用いた手法(以下,熱レンズ法という)が知られている。
前記熱レンズ法による分析装置(光熱変換分光分析装置)は,例えば,特許文献1に示されている。この熱レンズ法による分析装置では,試料に照射した検出光(信号光)を集光するとともにピンホールに通過させ,そのピンホールを通過後の検出光の光強度を検出することにより,励起光が照射された試料の発熱による屈折率変化を検出光の集光状態の変化として検出するものである。前記熱レンズ法では,励起光の強度を増強する以外に測定感度を向上させる手段がなく,十分な測定感度が得られないことがある。
【0003】
一方,特許文献2には,試料の光熱効果による屈折率変化を,試料を通過(透過)させたビーム状の信号光(測定光)における位相変化として捉え,これをヘテロダイン方式の光干渉法を用いて測定する技術が示されている。
これにより,例えば装置ごとに光検出器(光強度検出手段)の位置や信号光の強度及びその強度分布等が異なっても,測定中に変化さえしなければ,これらに依存することなく安定的に,しかも光学的に高精度かつ高感度で試料の屈折率変化を測定することが可能となる。
さらに,特許文献1及び特許文献2には,周期的に強度変調した励起光を用い,信号光(検出光)を励起光の強度変調周期と同周期成分について測定することにより,S/N比向上を図ることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−356611号公報
【特許文献2】特開2004−301520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,光熱変換測定の対象となる試料が液体やゲル状である場合,セルと称される容器に充填された試料について光熱変換測定が行われる。
しかしながら,特許文献2に示される光熱変換測定装置により,セルに充填された試料を測定した場合,そのセルに対して信号光や励起光が反射し,反射した信号光や励起光がノイズ光となって測定精度を悪化させるという問題点が生じ得た。
例えば,前記セルに対する信号光や励起光の反射光が,信号光及び参照光の干渉光に混入してクロストークと称される干渉光の乱れを生じさせることがある。また,前記セルに対する信号光や励起光の反射光が,信号光の光源や励起光の光源における光の出射口に戻り,これにより光源から出射される信号光や励起光の強度が不安定になることがある。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,容器に充填された試料に信号光及び励起光を通過させることによる前記信号光の位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する場合に,容器に対する信号光や励起光の反射光がノイズとなって測定精度を悪化させることを防止できる光熱変換測定及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係る光熱変換測定装置は,容器に充填された試料にビーム状の信号光を通過させ,前記試料における前記信号光の通過部にビーム状の励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する装置である。
そして,本発明における第1発明に係る光熱変換測定装置は,次の(A1)〜(A5)に示される各構成要素を備えている。
(A1)前記信号光を,前記容器の第1の外壁部に対し斜めに入射させ,その第1の外壁部から前記容器における前記第1の外壁部と表裏の関係にある第2の外壁部に至る第1の光路に沿って前記試料を通過させる信号光投光手段。
(A2)前記第1の光路に沿って前記試料を通過した前記信号光の一部を反射しつつ残りを通過させ,反射した前記信号光を,前記第2の外壁部から前記第1の外壁部に至る光路であって前記第1の光路と重ならない第2の光路に沿って前記試料を通過させるハーフミラー。
(A3)前記励起光を,前記ハーフミラーを通して前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第1の光路に沿う前記信号光に重ねてその信号光に対し逆方向に前記試料を通過させる励起光投光手段。
(A4)前記信号光に対し基準となる参照光を,前記ハーフミラーを通して前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第2の光路に沿う前記信号光に重ねてその信号光と同じ方向に前記試料を通過させる参照光投光手段。
(A5)前記第2の光路に沿って前記試料を通過後の前記信号光と前記参照光との干渉光の光強度に基づいて,前記試料に前記励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化を測定する位相変化測定手段。
なお,前記容器の形状は,直方体又は立方体である場合が典型例であるが,それ以外の形状であっても,光路追跡計算を行うことにより,(A1)〜(A5)に示される内容を満たす前記信号光や前記参照光の前記容器に対する入射方向を設定できる。
【0007】
前記第1発明に係る光熱変換測定装置は,以下のような作用及び効果を奏する。
まず,前記信号光及び前記参照光が,前記容器の前記第1の外壁部及び前記第2の外壁部各々に対して斜めに入射するため,各外壁部に反射した前記信号光及び前記参照光が,干渉光に混入したり,元の光源に戻ったりしない。同様に,前記励起光も,前記第2の外壁部に対して斜めに入射するため,その第2の外壁部に反射した前記励起光が元の光源に戻らない。その結果,干渉光の強度信号にクロストークに起因するノイズが発生したり,光源から出射される前記信号光や前記励起光の強度が不安定になることを防止できる。
さらに,前記参照光が,前記試料中における励起部である前記第1の光路を通過した後の前記検出光に対し,前記第2の光路において重ねられる。そのため,前記第2の光路を通過した後の前記信号光及び前記参照光について,それらを導光するための光学系を個別に設けることなく共用できる。その結果,前記信号光及び前記参照光を導光する光学系を簡素化できる。しかも,前記信号光と前記参照光との間で,前記試料中における励起部(前記第1の光路)以外の光路の条件が揃うため,前記試料の光熱効果による状態変化を高精度で測定できる。
【0008】
一方,本発明における第2発明に係る光熱変換測定装置は,次の(B1)〜(B6)に示される各構成要素を備えている。
(B1)前記信号光を,前記容器の第1の外壁部に対し斜めに入射させ,その第1の外壁部から前記容器における前記第1の外壁部と表裏の関係にある第2の外壁部に至る第1の光路に沿って前記試料を通過させる信号光投光手段。
(B2)前記励起光を,前記第1の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第1の光路に沿う前記信号光に重ねてその信号光と同じ方向に前記試料を通過させる励起光投光手段。
(B3)前記第1の光路に沿って前記試料を通過した前記信号光及び前記励起光を反射し,反射した前記信号光及び前記励起光を,前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第2の外壁部から前記第1の外壁部に至る光路であって前記第1の光路と重ならない第2の光路に沿って前記試料を通過させる光反射手段。
(B4)前記第2の光路に沿って前記試料を通過後の前記信号光及び前記励起光の光路において前記信号光を通過させて前記励起光を反射する光弁別手段。
(B5)前記光弁別手段を経た前記信号光のビームの外縁部分を遮断して残りの部分を通過させる絞り。
(B6)前記絞りを通過後の前記信号光とその信号光に対し基準となる参照光との干渉光の光強度に基づいて,前記試料に前記励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化を測定する位相変化測定手段。
【0009】
前記第2発明に係る光熱変換測定装置は,以下のような作用及び効果を奏する。
まず,前記第1発明と同様に,前記信号光及び前記参照光が,前記容器の前記第1の外壁部及び前記第2の外壁部各々に対して斜めに入射するため,各外壁部に反射した前記信号光及び前記参照光が,干渉光に混入したり,元の光源に戻ったりしない。同様に,前記励起光も,前記第1の外壁部に対して斜めに入射するため,その第2の外壁部に反射した前記励起光が元の光源に戻らない。その結果,干渉光の強度信号にクロストークに起因するノイズが発生したり,光源から出射される前記信号光や前記励起光の強度が不安定になることを防止できる。
ここで,ビーム状の前記信号光及び前記励起光は,その断面における強度が一様ではなく,その光軸部分から遠ざかって外縁に近づくほど強度が急激に低下する。従って,前記試料中における前記信号光及び前記励起光の重なりの状態にばらつきが生じた場合,光熱効果による前記試料の屈折率変化が前記信号光の位相変化に影響する程度が変動し,測定精度が悪化する。その変動が生じると,前記クロストークが生じている状況と同様の状況となる。また,その変動は,前記信号光のビーム径よりも前記励起光のビーム径の方が小さい場合に顕著となる。
これに対し,前記絞りによって,前記信号光のビームの外縁部分を除く残りの中央部分のみが干渉光の干渉成分として用いられることにより,前記信号光及び前記励起光の重なりの状態に多少のばらつきが生じた場合でも,そのばらつきによる前記信号光の位相変化への影響を小さくできる。
【0010】
前述したように,前記試料中における前記信号光及び前記励起光の重なりの状態にばらつきが生じると,それが測定精度の悪化につながる。また,前記絞りが採用されても,前記信号光及び前記励起光の重なりのばらつきが大きい場合には,やはり測定精度の悪化につながる。
そこで,前記第2発明に係る光熱変換測定装置が,さらに,次の(B7)〜(B11)に示される各構成要素を備えればなお好適である。
(B7)前記信号光投光手段及び前記励起光投光手段により光路が重ねられた前記信号光及び前記励起光の一部を前記光弁別手段に向かう主経路からそれとは異なる副経路へ分岐させる第1の光分岐手段。
(B8)前記副経路へ分岐された前記信号光及び前記励起光をさらに2分岐させる第2の光分岐手段。
(B9)前記第2の光分岐手段を経た2つの分岐光各々の断面の像を,前記第2の光分岐手段から各々異なる距離の位置において撮像する2つの撮像手段。
(B10)前記2つの撮像手段により得られた2つの撮像画像各々における前記信号光の断面の像と前記励起光の断面の像との位置ずれ情報を検出する位置ずれ情報検出手段。
(B11)前記位置ずれ情報検出手段の検出結果に応じて前記2つの撮像画像両方における前記信号光の断面の像と前記励起光の断面の像との位置ずれが所定の許容範囲に収まるように前記参照光投光手段における前記励起光の光路を調節する励起光光路調節手段。
これらの構成要素を備えた測定装置においては,前記試料中における前記信号光及び前記励起光の重なり状態のばらつきが小さく抑えられ,その結果,高い測定精度を確保できる。また,測定環境によっては,前記信号光及び前記励起光の重なり状態が測定中においても変動する場合がある。そのような場合には,前記励起光光路調節手段により,測定中も前記位置ずれ情報をフィードバックしつつ前記励起光の光路の自動調節を継続させることが有効である。
【0011】
また,前記第2発明に係る光熱変換測定装置が,次の(B12)に示される各構成要素を備えればなお好適である。
(B12)前記励起光投光手段により前記試料へ導かれる前記励起光の光路にその励起光を通過させるその励起光のビーム径に近似する径の開口が形成され,前記励起光の光源に向かう他の光を遮断するノイズ光遮断部材。
これにより,前記光弁別手段により反射された前記励起光が,その励起光の光源に戻る前に前記ノイズ光遮断部材により遮断され,前記励起光の強度が不安定になることを防止できる。
また,前記第2発明に係る光熱変換測定装置において,前記信号光投光手段及び前記励起光投光手段が,前記信号光及び前記励起光各々を,同じ光学特性の2つの集光レンズ各々を通じて屈折させることによって前記容器の前記第1の外壁に対して同じ位置に同じ角度で入射させることが考えられる。
この場合,前記信号光投光手段が,前記信号光の光路においてその信号光のビームに対して光軸を平行にずらして配置されて前記信号光を屈折させる第1の集光レンズを備える。さらに,前記励起光投光手段が,前記励起光の光路においてその励起光のビームに対して光軸を平行にずらして配置されて前記励起光を屈折させる,前記第1の集光レンズと同じ光学特性の第2の集光レンズを備える。
これにより,相互に平行な又は直交する前記信号光及び前記励起光の各ビームを,ごく簡易な構成によって同じ角度で屈折させ,前記第1の外壁部に対して同じ角度で入射させることができる。
【0012】
前記試料を通過させた前記信号光の位相変化を光干渉法により測定する場合,前記試料を通過後の前記信号光の光路長を長くすることによって測定感度を高めることができる。しかしながら,前記試料が所定の被測定対象物質の溶液である場合に,低濃度の前記試料と高濃度の前記試料との両方について,信号処理系におけるレンジオーバー及び感度不足を回避できることが必要となる。
そこで,前記第2発明に係る光熱変換測定装置が,前記容器を,前記第1の外壁部及び前記第2の外壁部に直交する方向における位置を可変に支持する可動式容器支持手段を具備することが考えられる。
これにより,前記試料における被測定対象物質の濃度の幅が大きい場合であっても,その濃度に応じて前記容器(試料)に到達するまでの前記信号光及び前記励起光の光路長を調節することにより,前記試料中における前記励起光の広がりの大小,即ち,前記試料中における前記信号光と重なる前記励起光の密度の高低を調節できるため,信号処理系におけるレンジオーバー及び感度不足を回避できる。
【0013】
また,本発明は,前記第1発明に係る光熱変換測定装置及び前記第2発明に係る光熱変換測定装置それぞれを用いて測定を行う光熱変換測定方法として捉えることもできる。
即ち,本発明に係る光熱変換測定方法は,容器に充填された試料にビーム状の信号光を通過させ,前記試料における前記信号光の通過部にビーム状の励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する方法である。
そして,本発明における第1発明に係る光熱変換測定方法は,次の(C1)〜(C5)に示される各工程を行う方法である。
(C1)前記信号光を,前記容器の第1の外壁部に対し斜めに入射させ,その第1の外壁部から前記容器における前記第1の外壁部と表裏の関係にある第2の外壁部に至る第1の光路に沿って前記試料を通過させる信号光投光工程。
(C2)前記信号光投光工程と並行して,ハーフミラーにより,前記第1の光路に沿って前記試料を通過した前記信号光の一部を反射しつつ残りを通過させ,反射した前記信号光を,前記第2の外壁部から前記第1の外壁部に至る光路であって前記第1の光路と重ならない第2の光路に沿って前記試料を通過させる信号光反射工程。
(C3)前記信号光投光工程及び前記信号光反射工程と並行して,前記励起光を,前記ハーフミラーを通して前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第1の光路に沿う前記信号光に重ねてその信号光に対し逆方向に前記試料を通過させる励起光投光工程。
(C4)前記信号光投光工程及び前記信号光反射工程と並行して,前記信号光に対し基準となる参照光を,前記ハーフミラーを通して前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第2の光路に沿う前記信号光に重ねてその信号光と同じ方向に前記試料を通過させる参照光投光工程。
(C5)光強度検出手段により,前記第2の光路に沿って前記試料を通過後の前記信号光と前記参照光との干渉光の光強度を検出し,その検出信号に基づいて,位相検波手段により,前記試料に前記励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化を測定する位相変化測定工程。
また,本発明における第2発明に係る光熱変換測定方法は,次の(D1)〜(D6)に示される各工程を行う方法である。
(D1)前記信号光を,前記容器の第1の外壁部に対し斜めに入射させ,その第1の外壁部から前記容器における前記第1の外壁部と表裏の関係にある第2の外壁部に至る第1の光路に沿って前記試料を通過させる信号光投光工程。
(D2)前記信号光投光工程と並行して,前記励起光を,前記第1の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第1の光路に沿う前記信号光に重ねてその信号光と同じ方向に前記試料を通過させる励起光投光工程。
(D3)前記信号光投光工程及び前記励起光投光工程と並行して,光反射手段により,前記第1の光路に沿って前記試料を通過した前記信号光及び前記励起光を反射し,反射した前記信号光及び前記励起光を,前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第2の外壁部から前記第1の外壁部に至る光路であって前記第1の光路と重ならない第2の光路に沿って前記試料を通過させる光反射工程。
(D4)所定の光学素子により,前記第2の光路に沿って前記試料を通過後の前記信号光及び前記励起光の光路において前記信号光を通過させて前記励起光を反射する光弁別工程。
(D5)所定の絞りにより,前記光弁別工程を経た前記信号光のビームの外縁部分を遮断して残りの部分を通過させる信号光絞り工程。
(D6)光強度検出手段により,前記絞りを通過後の前記信号光とその信号光に対し基準となる参照光との干渉光の光強度を検出し,その検出信号に基づいて,位相検波手段により,前記試料に前記励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化を測定する位相変化測定工程。
以上に示した本発明に係る光熱変換測定方法においても,前記本発明に係る光熱変換測定装置と同様の作用及び効果がえられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,容器に充填された試料に信号光及び励起光を通過させることによる前記信号光の位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する光熱変換測定において,容器に対する信号光や励起光の反射光がノイズとなって測定精度を悪化させることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光熱変換測定装置X1の概略構成図。
【図2】光熱変換測定装置X1におけるセル部分を拡大した断面図。
【図3】光熱変換測定における測定値のトレンドグラフ。
【図4】本発明の第2実施形態に係る光熱変換測定装置X2の概略構成図。
【図5】光熱変換測定装置X2におけるセル部分を拡大した断面図。
【図6】光熱変換測定装置X2における検出光及び励起光の断面画像の模式図。
【図7】光熱変換測定装置X2における検出光用の絞りを検出光が通過する様子を表す模式図。
【図8】光熱変換測定装置X2に採用可能な可動式セル支持機構の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0017】
本発明の実施形態に係る光熱変換測定装置X1,X2は,セル2に充填された試料1の光熱効果による屈折率変化を,そのセル2及び試料1を通過させたビーム状の信号光Psにおける位相変化として捉え,これをヘテロダイン方式の光干渉法を用いて測定する装置である。前記光熱効果は,前記試料1に前記信号光Psを通過させ,前記試料1における前記信号光Psの通過部である励起部分にビーム状の励起光Phを通過させることにより生じる。
前記セル2は,例えば,6つの外壁面を有する直方体状又は立方体状の透明容器である。前記セル2の材質は,例えば,石英ガラス等である。
前記試料1は,所定の溶媒に測定対象物質が溶解された液体又はゲル状の試料であり,前記セル2内に充填されている。
【0018】
まず,図1及び図2を参照しつつ,本発明の第1実施形態に係る光熱変換測定装置X1について説明する。
図1に示されるように,前記光熱変換測定装置X1は,測定光源10,各種光学機器,光検出器40,ローパスフィルタ回路41及び位相検波器42を備えている。
前記測定光源10は,前記試料1の屈折率変化を検出するための信号光Psと,これに干渉させる基準となる参照光Prとの両方の光源として兼用されるレーザ光源である。
前記測定光源10は,例えば,出力1mWのHe−Neレーザ等である。前記測定光源10から出力されたレーザ光は,二分の一波長板11aで偏波面が調節され,さらに偏光ビームスプリッタ12によって互いに直交する2偏波P1,P2に分光される。
各偏波P1,P2は,音響光学変調器13s,13rによってそれぞれ異なる周波数へ周波数変換がなされ,その一方が信号光Ps,他方が参照光Prとなる。前記信号光Psと前記参照光Prとの間の周波数の差fb,即ち,2つの音響光学変調器13s,13rのシフト周波数の差は,例えば,30MHz程度である。
【0019】
前記信号光Psは,ミラー14sにより変向され,直方体状又は立方体状の前記セル2を形成する6つの外壁の1つである第1の外壁2aに対し斜めに入射する。前記第1の外壁2aに対して斜めに入射した前記信号光Psは,前記第1の外壁2aから前記セル2における前記第1の外壁2aと表裏の関係にある第2の外壁2bに至る第1の光路R1に沿って前記試料1を通過する。
ここで,図2に示されるように,前記第1の外壁2aに対して斜めに入射した前記信号光Psは,前記第1の外壁2aの外側及び内側の各面,即ち,光の伝播媒体の境界面において屈折して前記試料1に入射し,前記第1の光路R1に至る。
なお,前記測定光源10,前記二分の一波長板11a,前記偏光ビームスプリッタ12,信号光用の前記音響光学変調器13s及び前記ミラー14sが,前記信号光投光手段の一例である。
【0020】
また,前記セル2における前記第2の外壁2bの外側の面には,ハーフミラー3が形成されている。
前記ハーフミラー3は,前記第1の光路R1に沿って前記試料1を通過した前記信号光Psの一部を反射しつつ残りを通過させる。前記ハーフミラー3に反射した前記信号光Psは,再び前記試料1に入射し,前記第2の外壁2bから前記第1の外壁部2aに至る第2の光路R2に沿って前記試料1を通過する。前記第1の光路R1は,後述するように,励起光Phが重なって通過する励起部である。前記試料1中における前記第2の光路R2は,前記第1の光路(励起部)と重ならない。
ここで,図2に示されるように,前記第1の光路R1に沿って前記試料1を通過した前記信号光Psは,前記第2の外壁2bの内側の面で屈折し,前記ハーフミラー3で反射した後に,再度,前記第2の外壁2bの内側の面で屈折して前記試料1に再入射して前記第2の光路R2に至る。
また,前記第2の光路R2を通過した前記信号光Psは,前記第1の外壁2aの内側及び外側の各面において屈折し,前記第1の外壁2aから出射する。
以上に示したように,前記信号光Psは,前記第1の外壁2aの外側の面から前記ハーフミラー3に至る往路と,前記ハーフミラー3から前記第1の外壁2aに至る復路とで,材質及び厚みが同じ前記第1の外壁2a,前記試料1及び前記第2の外壁2bを通過する。これにより,前記第1の外壁2aの外側面に対して角度+θの方向から斜めに入射した前記信号光Psは,前記第1の外壁2aの外側面に対して角度−θの方向へ斜めに出射していく。なお,角度+θ及び−θは,前記第1の外壁2aの外側面の法線方向を基準とする角度である。また,角度θは,例えば,45°である。
【0021】
一方,前記信号光Psに対し基準となる前記参照光Prは,ミラー14rにより変向され,前記ハーフミラー3を通して前記セル2の前記第2の外壁2bに対し斜めに入射する。前記第2の外壁2bに対して斜めに入射した前記参照光Prは,前記第2の光路R2に沿って前記試料1を通過する。即ち,前記参照光Prは,前記第2の光路R2に沿う前記信号光Psと重なり,その信号光Psと同じ方向に前記試料1を通過する。
ここで,図2に示されるように,前記第2の外壁2bに対して斜めに入射した前記参照光Prは,前記第2の外壁2bの外側及び内側の各面において屈折して前記試料1に入射し,前記第2の光路R2に至る。さらに,前記第2の光路R2を通過した前記参照光Prは,前記第1の外壁2aの内側及び外側の各面において屈折し,前記第1の外壁2aから前記信号光Psと重なった状態でその信号光Psと同じ方向,即ち,前記第1の外壁2aの外側面に対し角度−θの方向へ出射する。
なお,前記測定光源10,前記二分の一波長板11a,前記偏光ビームスプリッタ12,参照光用の前記音響光学変調器13r及び前記ミラー14rが,前記参照光投光手段の一例である。
【0022】
また,前記光熱変換測定装置X1は,前記試料1に対して励起光Phを投光する機器として,励起光源20と強度変調器21とを備えている。
前記励起光源20は,測定対象である前記試料1を励起するためのビーム状の励起光を出力する単波長のレーザ光源である。
前記励起光源20により出力された前記励起光Phは,前記強度変調器21により予め設定された周波数で強度変調がなされた後に前記試料1が充填された前記セル2へ投光される。
前記強度変調器21は,例えば,100Hz〜10kHz程度の周波数で前記励起光Phの強度変調を行うチョッパ等である。
前記強度変調器21により強度変調がなされた前記励起光Phは,前記ハーフミラー3を通して前記第2の外壁部2bに対し斜めに入射し,前記試料1中の前記第1の光路R1に沿う前記信号光Psに重なってその信号光Psに対し逆方向に前記試料1を通過する。
即ち,前記励起光源20及び前記強度変調器21が,前記励起光を,前記ハーフミラー3を通して前記第2の外壁部2bに対し斜めに入射させ,前記第1の光路R1に沿う前記信号光Psに重ねてその信号光Psに対し逆方向に前記試料1を通過させる励起光投光手段の一例である。
【0023】
また,前記第1の外壁2aと信号光用の前記ミラー14sとの間には,前記試料1及び前記セル2を通過した前記励起光Phが前記測定光源10側へ進行するのを遮る光学フィルタ15sが設けられている。この光学フィルタ15sは,前記信号光Psは通過させるが,それと光周波数が異なる前記励起光Phを遮る。
同様に,前記ハーフミラー3と参照光用の前記ミラー14rとの間には,前記ハーフミラー3に反射した前記励起光Phが前記測定光源10側へ進行するのを遮る光学フィルタ15rが設けられている。この光学フィルタ15rも,前記参照光Prは通過させるが,それと光周波数が異なる前記励起光Phを遮る。
【0024】
前記第2の光路R2に沿って前記試料1を通過した前記信号光Ps及び前記参照光Prは,両ビームが重なった状態で偏光板31へ向かう。
前記偏光板31では,前記信号光Psと,これと周波数が異なる前記参照光Prとのそれぞれから同じ偏光成分が抽出されて干渉し,それらの干渉光が前記光検出器40により受光される。
前記光検出器40は,前記第2の光路R2に沿って前記試料1を通過後の前記信号光Psと前記参照光Prとの干渉光を受光して光電変換を行い,その干渉光の光強度を検出する。前記光検出器40の検出信号は,前記信号光Psと前記参照光Prとの周波数の差fbを交流成分とするビート信号である。以下,前記光検出器40の検出信号を干渉光ビート信号という。
前記干渉光ビート信号は,前記位相検波器42と前記ローパスフィルタ回路41とに入力される。
前記ローパスフィルタ回路41は,前記干渉光ビート信号から前記励起光Phの強度変調の周波数成分を除去した基準信号を生成する。その基準信号は,前記位相検波器42に入力される。
前記位相検波器42は,前記干渉光ビート信号と前記基準信号とに基づく位相検波を行い,前記試料1に前記励起光Phを通過させることによる前記試料1を通過後の前記信号光Psの位相変化,即ち,前記信号光Psと前記参照光Prとの位相差φの変化を測定する。
より具体的には,前記ローパスフィルタ回路41及び前記位相検波器42は,前記干渉光ビート信号から,前記強度変調器21による前記励起光Phの強度変調周波数と同じ周波数成分を抽出し,抽出した信号から前記位相差φの変化を検出する。
ここで,前記干渉光ビート信号の信号値S1は,次の(1)式で表される。
S1=C1+C2・cos(2π・fb・t+φ) …(1)
(1)式において,C1,C2は前記信号光Ps及び前記参照光Prが経由する各種の光学系や前記試料1の透過率により定まる定数,φは前記信号光Psと前記参照光Prとの光路長差による位相差,fbは前記信号光Psと前記参照光Prとの間の周波数差である。(1)式より,前記干渉光ビート信号の信号値S1の変化,即ち,前記励起光Phを照射しない或いはその光強度が小さいときとその光強度が大きいときとの前記信号値S1の差から,前記位相差φの変化が求まる。従って,前記位相検波器42は,前記干渉光ビート信号における前記励起光Phの強度変調の周波数成分の変動量から,前記位相差φの変化を検出する。
なお,前記ローパスフィルタ回路41及び前記位相検波器42が,前記信号光Psの位相変化を測定する位相変化測定手段の一例である。
【0025】
また,前記試料1の中の前記励起光Phを吸収する所定の含有物質の量に応じて吸熱量(発熱量)が変わり,その発熱量に応じて屈折率が変わり,その屈折率に応じて前記位相差φ(前記試料1中の前記検出光Psの光路長)が変わる。即ち,前記含有物質の量が多いほど,前記励起光Phの変化に対する前記位相差φの変化が大きい。従って,前記位相差φを測定すれば,前記試料1の温度変化により生じる屈折率の変化が求まり,その結果,前記試料1の含有物質の量(濃度)の分析が可能となる。
即ち,当該光熱変換測定装置X1を用いて,予め所定の含有物質の量(濃度)が既知である複数種類のサンプル試料について前記位相差φの変化を測定し,その結果とその含有物質の量との対応づけを不図示の計算機にデータテーブルとして記憶しておく。そして,前記計算機により,測定対象とする前記試料1についての前記位相差φの測定結果を前記データテーブルに基づいて補間処理等を行う等によりその含有物質の量を特定する処理を実行すればよい。
このように,前記試料1の光熱効果による屈折率変化を,前記試料1を通過(透過)させた前記信号光Psにおける前記励起光Phの照射による位相変化を光干渉法を用いて測定すれば,安定的に,しかも光学的に高精度で前記試料1の屈折率変化を測定することが可能となる。
【0026】
前記光熱変換測定装置X1は,以下のような手順で光熱変換測定を行う。
即ち,前記測定光源10から前記ミラー14sに至る光学機器により,前記信号光Psを,前記セル2の前記第1の外壁2aに対し斜めに入射させ,前記第1の光路R1に沿って前記試料1を通過させる(信号光投光工程)。
そのような信号光Psの投光と並行して,前記ハーフミラー3により,前記第1の光路R1に沿って前記試料1を通過した前記信号光Psの一部を反射しつつ残りを通過させ,反射した前記信号光Psを,前記第2の光路R2に沿って前記試料1を通過させる(信号光反射工程)。
さらに,前記信号光Psの投光及びその反射と並行して,前記励起光Phを,前記ハーフミラー3を通して前記第2の外壁2bに対し斜めに入射させ,前記第1の光路R1に沿う前記信号光Psに重ねてその信号光Psに対し逆方向に前記試料1を通過させる(励起光投光工程)。
さらに,前記信号光Psの投光及びその反射と並行して,前記参照光Prを,前記ハーフミラー3を通して前記第2の外壁2bに対し斜めに入射させ,前記第2の光路R2に沿う前記信号光Psに重ねてその信号光Psと同じ方向に前記試料1を通過させる(参照光投光工程)。
そして,光検出器40により,前記第2の光路R2に沿って前記試料1を通過後の前記信号光Psと前記参照光Prとの干渉光の光強度の信号である前記干渉光ビート信号を検出する。さらに,前記ローパスフィルタ回路41及び前記位相検波器42により,前記干渉光ビート信号に基づいて,前記試料1に前記励起光Phを通過させることによる前記試料1を通過後の前記信号光Psの位相変化を測定する(位相変化測定工程)。
【0027】
前記光熱変換測定装置X1は,以下のような特徴を有している。
まず,前記信号光Ps及び前記参照光Prが,前記セル2の前記第1の外壁2a及び前記第2の外壁2b各々に対して斜めに入射するため,各外壁2a,2bに反射した前記信号光Ps及び前記参照光Prが,干渉光に混入したり,前記測定光源10に戻ったりしない。同様に,前記励起光Phも,前記第2の外壁2bに対して斜めに入射するため,その第2の外壁2bに反射した前記励起光Phが前記励起光源20に戻らない。その結果,前記干渉光ビート信号にクロストークに起因するノイズが発生したり,前記測定光源10及び前記励起光源20各々から出射される前記信号光Psや前記励起光Phの強度が不安定になることを防止できる。
図3は,前記試料1を通過後の前記信号光Psの位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する光熱変換測定における測定値のトレンドグラフである。図3におけるグラフ線g1は,前記セル2の外壁に対して前記信号光Psを垂直入射させることによってクロストークが生じているときの前記位相差φの変化の測定値,グラフ線g2は,前記セル2の外壁に対して前記信号光Psを斜めに入射させることによってクロストークを回避した前記光熱変換測定装置X1による前記位相差φの変化の測定値を表す。
図3のグラフからわかるように,前記セル2の外壁に対して前記信号光Psを斜めに入射させることによってクロストークを回避することにより,測定値が非常に安定する。
【0028】
さらに,前記光熱変換測定装置X1においては,前記参照光Prが,前記試料1中における励起部である前記第1の光路R1を通過した後の前記検出光Psに対し,前記第2の光路R2において重ねられる。そのため,前記第2の光路R2を通過した後の前記信号光Ps及び前記参照光Prについて,それらを導光するための光学系を個別に設ける必要がない。その結果,前記信号光Ps及び前記参照光Prを導光する光学系を簡素化できる。しかも,前記信号光Psと前記参照光Prとの間で,前記試料1中における励起部である前記第1の光路R1以外の光路の条件が揃うため,前記試料1の光熱効果による状態変化を高精度で測定できる。
【0029】
次に,図4及び図5を参照しつつ,本発明の第2実施形態に係る光熱変換測定装置X2について説明する。なお,図4及び図5において,図1及び図2に示される構成要素と同じ構成要素については,図1及び図2における符号と同じ符号が付されている。
図4に示されるように,前記光熱変換測定装置X2は,前記光熱変換測定装置X1と同様に,前記測定光源10,前記二分の一波長板11a,前記偏光ビームスプリッタ12,2つの前記音響光学変調器13s,13r,前記偏光板31,前記光検出器40,前記ローパスフィルタ回路41,前記位相検波器42,前記励起光源20及び前記強度変調器21を備えている。これらの機能は,前記光熱変換測定装置X1における機能と同じであるので,ここでは説明を省略する。
【0030】
また,前記光熱変換測定装置X2において,前記音響光学変調器13sから出力される前記信号光Psは,ミラー14sにより変向され,さらに,信号光用の集光レンズ17s及び信号光系の偏光ビームスプリッタ18sを通じて,前記セル2を形成する6つの外壁の1つである前記第1の外壁2aに対し斜めに入射する。前記第1の外壁2aに対して斜めに入射した前記信号光Psは,前記第1の外壁2aからその反対側の前記第2の外壁2bに至る第1の光路R1に沿って前記試料1を通過する。
ここで,図5に示されるように,前記第1の外壁2aに対して斜めに入射した前記信号光Psは,前記第1の外壁2aの外側及び内側の各面,即ち,光の伝播媒体の境界面において屈折して前記試料1に入射し,前記第1の光路R1に至る。さらに,前記第1の光路R1に沿って前記試料1を通過した前記信号光Psは,前記第2の外壁2bの内側及び外側の各面で屈折し,前記第2の外壁2bからその外側面に対し斜め方向へ出射する。
前記信号光用の集光レンズ17sは,前記信号光Psの光路においてその信号光Psのビームに対して光軸を平行にずらして配置されている。これにより,前記信号光用の集光レンズ17sは,前記第1の外壁2aに対して垂直な方向へ向かう前記信号光Psを屈折させることにより,前記信号光Psを前記第1の外壁2aに対して斜めに入射させる。なお,前記信号光用の前記集光レンズ17aが,前記第1の集光レンズの一例である。また,前記測定光源10,前記二分の一波長板11a,前記偏光ビームスプリッタ12,前記音響光学変調器13s,前記ミラー14s,前記信号光用の集光レンズ17s及び前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sが,前記信号光投光手段の一例である。
【0031】
一方,前記強度変調器21により強度変調がなされた前記励起光Phは,ミラー23により変向され,励起光用の集光レンズ24を通過し,さらに前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sで反射した後に前記セル2の前記第1の外壁2aに対して斜めに入射する。前記第1の外壁2aに対し斜めに入射した前記励起光Phは,前記試料1中における前記第1の光路R1に沿う前記信号光Psに重なってその信号光Psと同じ方向に前記試料1を通過する。なお,前記励起光源20,前記強度変調器21,前記ミラー23,前記励起光用の集光レンズ24及び前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sが,前記励起光投光手段の一例である。
ここで,前記励起光用の集光レンズ24と前記信号光用の集光レンズ17sは,焦点距離等の光学特性が同じものである。また,前記励起光用の集光レンズ24及び前記信号光用の集光レンズ17sは,それらの光軸が相互に直交する方向に向けて配置されている。
また,前記ミラー23で反射した前記励起光Phのビームは,前記信号光用の集光レンズ17sに入射する前の前記信号光Psのビームと直交する方向から前記励起光用の集光レンズ24に入射する。また,前記信号光用の集光レンズ17sにおける光軸と前記信号光Psの入射位置とのずれ幅が,前記励起光用の集光レンズ24における光軸と前記励起光Phの入射位置とのずれ幅と等しくなるように,前記信号光用の集光レンズ17s及び前記励起光用の集光レンズ24を含む光学機器が配置されている。
そして,前記信号光Psを投光する前記ミラー14s,前記信号光用の集光レンズ17s及び前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sと,前記励起光Phを投光する前記ミラー23,前記励起光用の集光レンズ24及び前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sとは,前記信号光Ps及び前記励起光Ph各々を,同じ光学特性の2つの集光レンズ17s,24各々を通じて屈折させることによって前記第1の外壁2aに対して同じ位置に同じ角度で入射させる。
なお,前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sは,前記信号光Psを通過させ,前記励起光Phを反射する。
【0032】
光学特性が同じ2つの集光レンズ17s,24を用いて前記信号光Ps及び前記励起光Ph各々を屈折させることにより,相互に直交する前記信号光Ps及び前記励起光Phの各ビームを,ごく簡易な構成によって同じ角度で屈折させ,前記第1の外壁2aに対して同じ角度で入射させることができる。
ここで,図4に示される例は,光軸が直交する2つの集光レンズ17s,24各々に入射する直前の前記信号光Ps及び前記励起光Phが相互に直交している場合の例である。しかしながら,2つの集光レンズ17s,24をそれらの光軸が平行となるように配置し,それら2つの集光レンズ17s,24各々に入射する直前の前記信号光Ps及び前記励起光Phが相互に平行となるように光学機器が配置される例も考えられる。この場合,前記信号光用の集光レンズ17sを通過後の前記信号光Ps又は前記参照光用の集光レンズ24を通過後の前記参照光Prのいずれかを,前記信号光系の変向ビームスプリッタ18sに入射する前にミラー等によって直角に変向させればよい。
【0033】
前記第1の光路R1に沿って前記試料1及び前記セル2を通過した前記信号光Ps及び前記励起光Phは,前記第2の外壁2bに対向配置された前記ハーフミラー3に到達する。
前記ハーフミラー3は,前記第1の光路R1に沿って前記試料1を通過した前記信号光Ps及び前記励起光Phを反射する。前記ハーフミラー3で反射した前記信号光Ps及び前記励起光Phは,前記第2の外壁2bに対し斜めに入射し,前記第2の外壁2bから前記第1の外壁1aに至る第2の光路R2に沿って前記試料1を通過する。前記第2の光路R2は,前記試料1中において前記第1の光路R1と重ならない光路である。なお,前記ハーフミラー3は,前記光反射手段の一例である。
以上に示したように,前記光熱変換測定装置X2においては,前記試料1中における前記第1の光路R1及び前記第2の光路R2の両方が,前記励起光Phにより励起される励起部となる。
【0034】
図5に示されるように,前記信号光Ps及び前記励起光Phの重畳光は,前記ハーフミラー3で反射した後に前記第2の外壁2bの外側面に斜めに入射し,その第2の外壁2bの外側及び内側の各面において屈折し,前記試料1中の前記第2の光路R2に至る。さらに,前記第2の光路R2を通過した前記信号光Ps及び前記励起光Phの重畳光は,前記第1の外壁2aの内側及び外側の各面において屈折し,前記第1の外壁2aの外側の面からその面に対し斜め方向へ出射する。
前記光熱変換測定装置X2においても,前記信号光Psは,前記第1の外壁2aの外側の面から前記ハーフミラー3に至る往路と,前記ハーフミラー3から前記第1の外壁2aに至る復路とで,材質及び厚みが同じ前記第1の外壁2a,前記試料1及び前記第2の外壁2bを通過する。これにより,前記第1の外壁2aの外側面に対して角度+θの方向から斜めに入射した前記信号光Psは,前記第1の外壁2aの外側面に対して角度−θの方向へ斜めに出射していく。
【0035】
一方,前記光熱変換測定装置X2において,前記偏光ビームスプリッタ12により分光された一方の偏波P2は,ミラー14r’で反射されて前記音響光学変調器13sに導かれる。これにより,前記偏波P2は,前記信号光Psに対し基準となる前記参照光Prへ変換される。
前記音響光学変調器13rから出力される前記参照光Prは,ミラー14rにより変向され,参照光用の集光レンズ17r及び参照光系の偏光ビームスプリッタ18rを通じて,参照用の試料1rが充填された参照用のセル2rに入射する。
さらに,前記参照用のセル2r及び前記参照用の試料1rを通過した前記参照光Prは,参照光用のハーフミラー3rで反射し,再度,前記参照用の試料1rを通過する。
前記参照用の試料1r及びそれが充填された前記参照用のセル2rは,測定対象の前記試料1及びそれが充填された前記セル2と同じものである。また,前記参照光系の偏光ビームスプリッタ18r及び前記参照光用のハーフミラー3rは,それぞれ前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18s及び前記ハーフミラー3と同じものである。
そして,前記ミラー14r,前記参照光用の集光レンズ18r,前記参照光系の偏光ビームスプリッタ18r及び前記参照光用のハーフミラー3は,前記参照光Prを,前記参照用のセル2r及び前記参照用の試料1rに対し,前記セル2及び前記試料1における前記信号光Psの往復通過の光路と等価の光路で往復通過させる。
これにより,前記信号光Psと前記参照光Prとの間で,前記試料1中における励起部である前記第1の光路R1以外の光路の条件が揃う。
【0036】
前記第2の光路R2に沿って前記試料1を通過した前記信号光Ps及び前記参照光Prは,両ビームが重なった状態で前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sへ戻る。
前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sは,前記第2の光路R2に沿って前記試料1を通過後の前記信号光Ps及び前記励起光Phの光路において,前記信号光Psを通過させて前記励起光Phを反射する。なお,前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sが,前記光弁別手段の一例である。
また,前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sを通過した前記信号光Psは,前記信号光用の集光レンズ17sを通過して信号光用の絞り34に至る。
前記信号光用の絞り34sは,前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sを経た前記信号光Psのビームの外縁部分を遮断して残りの部分を通過させる光学素子である。
【0037】
図7は前記検出光の絞り34sを前記検出光Psが通過する様子を表す模式図である。
ビーム状の前記信号光Ps及び前記励起光Phは,その断面における強度が一様ではなく,その光軸部分から遠ざかって外縁に近づくほど強度が急激に低下する。従って,前記試料1中における前記信号光Ps及び前記励起光Phの重なりの状態にばらつきが生じた場合,光熱効果による前記試料1の屈折率変化が前記信号光Psの位相変化に影響する程度が変動し,測定精度が悪化する。その変動は,前記信号光Psのビーム径よりも前記励起光Phのビーム径の方が小さい場合に顕著となる。
これに対し,前記信号光用の絞り34sによって,前記信号光Psのビームの外縁部分を除く残りの中央部分のみが干渉光の干渉成分として用いられる。これにより,前記信号光Ps及び前記励起光Phの重なりの状態に多少のばらつきが生じた場合でも,そのばらつきによる前記信号光Psの位相変化への影響を小さくできる。
また,前記参照光用の集光レンズ17rを通過後の前記参照光Prの光路にも,前記信号光用の絞り34sと同じ参照光用の絞り34rが設けられている。この参照光用の絞り34rは,干渉させる前記信号光Psと前記参照光Prとの条件を揃えるためのものである。
【0038】
前記信号光用の絞り34sを通過した前記信号光Psは,ミラー32で反射して光統合用の偏光ビームスプリッタ33を通過する。一方,前記参照光用の絞り34rを通過した前記参照光Prは,前記光統合用の偏光ビームスプリッタ33で反射する。
前記光統合用の偏光ビームスプリッタ33を経た前記信号光Ps及び前記参照光Prは,両ビームが重なった状態で前記偏光板31へ向かう。
前記偏光板31では,前記信号光Psと前記参照光Prとのそれぞれから同じ偏光成分が抽出されて干渉し,それらの干渉光が前記光検出器40により受光される。これにより,前記信号光Psと前記参照光Prとの周波数の差fbを交流成分とする前記干渉光ビート信号が,前記光検出器40により検出される。
また,前記位相検波器42により,前記干渉光ビート信号と,前記ローパスフィルタ回路41から出力される前記基準信号とに基づく位相検波がなされ,前記信号光Psと前記参照光Prとの位相差φの変化が測定される。
【0039】
前記光熱変換測定装置X2は,以下のような手順で光熱変換測定を行う。
即ち,前記測定光源10から前記ミラー14sに至る光学機器により,前記信号光Psを,前記セル2の前記第1の外壁2aに対し斜めに入射させ,前記第1の光路R1に沿って前記試料1を通過させる(信号光投光工程)。
そのような信号光Psの投光と並行して,前記励起光源20から前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sに至る光学機器により,前記励起光Phを,前記第1の外壁2bに対し斜めに入射させ,前記第1の光路に沿う前記信号光Psに重ねてその信号光Psと同じ方向に前記試料1を通過させる(励起光投光工程)。
さらに,前記信号光Ps及び前記励起光Phの投光と並行して,前記ハーフミラー3により,前記第1の光路R1に沿って前記試料1を通過した前記信号光Ps及び前記励起光Phの重畳光を反射し,反射した前記重畳光を,前記第2の外壁2bに対し斜めに入射させ,前記第2の光路R1に沿って前記試料1を通過させる(光反射工程)。同時に,前記ミラー14r,前記参照光用の集光レンズ17r及び前記参照光用のハーフミラー3rにより,前記参照用のセル2r及び前記参照用の試料1rに対して前記参照光Prを往復通過させる。
さらに,前記信号光Ps及び前記励起光Phの投光と並行して,前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sにより,前記第2の光路R2に沿って前記試料1を通過後の前記信号光Ps及び前記励起光Phの光路において前記信号光Psを通過させて前記励起光Phを反射する(光弁別工程)。
さらに,前記信号光用の絞り34sにより,前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sを経た前記信号光Psのビームの外縁部分を遮断して残りの部分を通過させる(信号光絞り工程)。同時に,前記参照光用の絞り34rにより,前記参照光系の偏光ビームスプリッタ18rを経た前記参照光Prのビームの外縁部分を遮断して残りの部分を通過させる(参照光絞り工程)。
そして,前記光検出器40により,2つの絞り34s,34r各々を通過後の前記信号光Psと前記参照光Prとの干渉光の光強度の信号である前記干渉光ビート信号を検出する。さらに,前記ローパスフィルタ41及び前記位相検波器42により,前記干渉光ビート信号に基づいて,前記試料1に前記励起光Phを通過させることによる前記試料1を通過後の前記信号光Psの位相変化を測定する(位相変化測定工程)。
【0040】
ところで,前記光熱変換測定装置X2における前記ハーフミラー3は,光路が重ねられた前記信号光Ps及び前記励起光Phの一部を,それらを弁別する前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sに向かう主経路から,それとは異なる副経路へ分岐させる光分岐手段としても機能する。ここで,前記主経路は,前記ハーフミラー3に反射した前記信号光Ps及び前記励起光Phが前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sに向かう経路である。一方,前記副経路は,前記ハーフミラー3の裏側(前記セル2に対して反対側)へ向かう経路である。なお,前記ハーフミラー3が,前記第1の光分岐手段の一例である。
また,前記ハーフミラー3の裏側には,前記副経路へ分岐された前記信号光Ps及び前記励起光Phをさらに2分岐させる無偏光のビームスプリッタ50が設けられている。なお,このビームスプリッタ50が,前記第2の光分岐手段の一例である。
【0041】
また,前記ビームスプリッタ50による分岐光の各光路には,前記ビームスプリッタ50を経た2つの分岐光各々の断面の像(照射スポットの像)を,前記ビームスプリッタ50から各々異なる距離の位置において撮像する2つのカメラ51,52が設けられている。
また,前記光熱変換測定装置X2には,2つの前記カメラ51,52各々の撮像画像についての画像処理を行う演算装置53が設けられている。
さらに,前記光熱変換測定装置X2には,前記励起光Phの進行方向を定める前記ミラー23を,その位置及び向きを可変に支持するミラー可動支持機構54を備えている。
前記演算装置53は,2つの前記カメラ51,52により得られた2つの撮像画像各々における前記信号光Psの断面の像(スポット像)と,前記励起光Phの断面の像(スポット像)との位置ずれ情報を検出する画像処理を行う。なお,前記演算装置53が,前記位置ずれ情報検出手段の一例である。
【0042】
図6は,2つの前記カメラ51,52により撮像される前記検出光Ps及び前記励起光Phの断面画像の模式図である。
前記演算装置53は,2つの撮像画像各々について,前記検出光Psの断面の像と,前記励起光Phの断面の像とを個別に抽出する。例えば,前記演算装置53は,前記検出光Ps及び前記励起光Phそれぞれに色に対応した像を抽出することにより,前記検出光Ps及び前記励起光Ph各々の断面の像を個別に抽出する。或いは,前記演算装置53は,前記強度変調器21から前記励起光Phの強度変調のタイミングに同期したクロック信号を入力し,そのクロック信号に同期して2つの前記カメラ51,52から撮像画像を取り込むことにより,前記検出光Ps及び前記励起光Ph各々の断面の像を個別に抽出する。この場合,前記演算装置53は,前記励起光Phが遮断されているときの撮像画像から所定輝度以上の像を前記検出光Psの断面の像として抽出する。また,前記演算装置53は,前記励起光Phが遮断されるときと前記試料1に照射されるときとで輝度が一定以上変化する画像領域を前記励起光Phの断面の像として抽出する。
そして,前記演算装置53は,例えば,前記検出光Ps及び前記励起光Phの断面の像各々の重心位置の二次元方向のずれの方向及び大きさの情報を,前記位置ずれ情報として検出する。
【0043】
さらに,前記演算装置53は,前記位置ずれ情報の検出結果に応じて,2つの撮像画像両方において,前記信号光Psの断面の像と前記励起光Phの断面の像との位置ずれが所定の許容範囲に収まるように,前記ミラー可動支持機構54を制御する。より具体的には,前記演算装置53は,2つの撮像画像両方において,前記位置ずれ情報における前記励起光Phの像のX軸方向及びY軸方向のずれ幅が小さくなる方向に,前記ミラー23の位置及び向きを自動調節する。なお,前記演算装置53及び前記ミラー可動支持機構54が,前記励起光光路調節手段の一例である。
これにより,前記試料1中における前記信号光Ps及び前記励起光Phの重なり状態のばらつきが小さく抑えられ,その結果,高い測定精度を確保できる。また,測定環境によっては,前記信号光Ps及び前記励起光Phの重なり状態が測定中においても変動する場合がある。そのような場合には,前記演算装置53及び前記ミラー可動支持機構54により,測定中も前記位置ずれ情報をフィードバックしつつ前記励起光Phの光路の自動調節を継続させることが有効である。
【0044】
また,前記光熱変換測定装置X2には,前記励起光源20の光出射口の前方に,前記励起光光源20から前記試料1へ導かれる前記励起光Phの光路においてその励起光Phを通過させるピンホール22aが形成されたノイズ光遮断板22が設けられている。前記ノイズ光遮断板22は,前記励起光Phのビーム径に近似する径の前記ピンホール22aが形成され,そのピンホール22aに前記励起光Phを通過させるとともに,前記励起光源20に向かう他の光を遮断する。
これにより,前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sにより反射された前記励起光Phが,前記励起光源20に戻る前に前記ノイズ光遮断板22により遮断され,前記励起光源20による前記励起光Phの出射強度が不安定になることを防止できる。
【0045】
前記光熱変換測定装置X2においては,前記光熱変換測定装置X1と同様に,前記信号光Ps及び前記参照光Prが,前記セル2の前記第1の外壁2a及び前記第2の外壁2b各々に対して斜めに入射する。これにより,各外壁2a,2bに反射した前記信号光Ps及び前記参照光Prが,干渉光に混入したり,前記測定光源10に戻ったりしない。
また,前記励起光Phも,前記第1の外壁2aに対して斜めに入射すること,及び前記ノイズ光遮断板22の存在により,前記第2の外壁2bに反射した前記励起光Phが前記励起光源20に戻らない。その結果,干渉光の強度信号にクロストークに起因するノイズが発生したり,各光源10,20から出射される前記信号光Psや前記励起光Phの強度が不安定になることを防止できる。
また,ビーム状の前記信号光Ps及び前記励起光Phは,その光軸部分から遠ざかって外縁に近づくほど強度が急激に低下する。従って,前記試料1中における前記信号光Ps及び前記励起光Phの重なりの状態にばらつきが生じた場合,光熱効果による前記試料1の屈折率変化が前記信号光Psの位相変化に影響する程度が変動し,測定精度が悪化する。その変動が生じると,前記クロストークが生じている状況と同様の状況となる。また,その変動は,前記信号光Psのビーム径よりも前記励起光Phのビーム径の方が小さい場合に顕著となる。
これに対し,前記光熱変換測定装置X2では,前記信号光用の絞り34sによって,前記信号光Psのビームの外縁部分を除く残りの中央部分のみが干渉光の干渉成分として用いられる。これにより,前記信号光Ps及び前記励起光Phの重なりの状態に多少のばらつきが生じた場合でも,そのばらつきによる前記位相差φの変化への影響を小さくできる。
【0046】
ところで,前記試料1を通過させた前記信号光Psの位相変化を光干渉法により測定する場合,前記試料1を通過後の前記信号光Psの光路長を長くすることによって測定感度を高めることができる。しかしながら,前記試料1が所定の被測定対象物質の溶液である場合に,低濃度の前記試料1と高濃度の前記試料1との両方について,信号処理系におけるレンジオーバー及び感度不足を回避できることが必要となる。
そこで,前記光熱変換測定装置X2が,例えば図8に示されるような可動式セル支持機構60を備えればなお好適である。
前記可動式セル支持機構60は,前記セル2を支持し,前記第1の外壁2a及び前記第2の外壁2bに直交する方向における前記セル2の位置を可変に移動及び位置決めする機構である。例えば,前記可動式セル支持機構60は,前記セル2を支持する支持部と,その支持部を直線方向に移動させて位置決めするアクチュエータとを備えている。
これにより,前記試料1における被測定対象物質の濃度の幅が大きい場合であっても,その濃度に応じて前記セル2(前記試料1)に到達するまでの前記信号光Ps及び前記励起光Phの光路長を調節することにより,信号処理系におけるレンジオーバー及び感度不足を回避できる。例えば,前記セル2(前記試料1)に到達するまでの前記信号光Ps及び前記励起光Phの光路長が長くなるよう調節すれば,前記試料1中における前記励起光Phの広がり(断面積)が大きくなり,前記試料1中における前記信号光Psと重なる前記励起光Phの密度を低くできるため,前記光検出器40の検出強度を小さく調節できる。
なお,図7に示される前記可動式セル支持機構60は,前記セル2の支持位置をモータ等の駆動源により移動させて位置決めする機構である。しかしながら,前記可動式セル支持機構60は,例えば,前記セル2の支持部を,前記第1の外壁2a及び前記第2の外壁2bに直交する方向における複数の位置のいずれかにビス止め等により位置決め可能な手動式の位置調節機構を備えた支持機構であることも考えられる。
【0047】
図4に示した前記光熱変換測定装置X2では,前記参照光Prを,前記信号光Psと同じ条件で前記セル2及び前記試料1と同じ前記参照用のセル2r及び前記参照用の試料1rに往復通過させた。しかしながら,前記光熱変換測定装置X2において,前記参照光Prを,前記参照用のセル2r及び前記参照用の試料1rに通過させずに,前記信号光Psと干渉させることも考えられる。
また,図4に示した前記光熱変換測定装置X2では,前記ハーフミラー3により,前記信号光Ps及び前記励起光Phの重畳光を分岐させた。しかしながら,前記光熱変換測定装置X2において,前記信号光系の偏光ビームスプリッタ18sから出てその信号光系の偏光ビームスプリッタ18sに戻るまでの前記重畳光の光路における他の位置において,無偏光のビームスプリッタによって前記重畳光を前記主経路と前記副経路とに分岐させ,前記副経路への分岐光について前記重畳光における前記信号光Psと前記励起光Phとの重ね合わせの状態を調節することも考えられる。この場合,前記ハーフミラー3及び前記参照用のハーフミラー3rは,全反射ミラーに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は,容器に充填された試料に信号光を通過させ,その試料における前記信号光の通過部に励起光を通過させることによる信号光の位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する装置及びその測定方法への利用が可能である。
【符号の説明】
【0049】
X1,X2:光熱変換測定装置
1 :試料
1r :参照用の試料
2 :セル
2r :参照用のセル
3 :ハーフミラー
3r :参照用のハーフミラー
10 :測定光源
11a:二分の一波長板
12 :偏光ビームスプリッタ
13s,13r:音響光学変調器
17s:信号光用の集光レンズ
17r:参照光用の集光レンズ
18s:信号光系の偏光ビームスプリッタ
18r:参照光系の偏光ビームスプリッタ
20 :励起光源
21 :強度変調器
22 :ノイズ光遮断板
22a:ピンホール
24 :励起光用の集光レンズ
31 :偏光板
33 :光統合用の偏光ビームスプリッタ
40 :光検出器
41 :ローパスフィルタ回路
42 :位相検波器
50 :ビームスプリッタ
51,52:カメラ
53 :演算装置
54 :ミラー可動支持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に充填された試料にビーム状の信号光を通過させ,前記試料における前記信号光の通過部にビーム状の励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する光熱変換測定装置であって,
前記信号光を,前記容器の第1の外壁部に対し斜めに入射させ,該第1の外壁部から前記容器における前記第1の外壁部と表裏の関係にある第2の外壁部に至る第1の光路に沿って前記試料を通過させる信号光投光手段と,
前記第1の光路に沿って前記試料を通過した前記信号光の一部を反射しつつ残りを通過させ,反射した前記信号光を,前記第2の外壁部から前記第1の外壁部に至る光路であって前記第1の光路と重ならない第2の光路に沿って前記試料を通過させるハーフミラーと,
前記励起光を,前記ハーフミラーを通して前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第1の光路に沿う前記信号光に重ねて該信号光に対し逆方向に前記試料を通過させる励起光投光手段と,
前記信号光に対し基準となる参照光を,前記ハーフミラーを通して前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第2の光路に沿う前記信号光に重ねて該信号光と同じ方向に前記試料を通過させる参照光投光手段と,
前記第2の光路に沿って前記試料を通過後の前記信号光と前記参照光との干渉光の光強度に基づいて,前記試料に前記励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化を測定する位相変化測定手段と,
を具備してなることを特徴とする光熱変換測定装置。
【請求項2】
容器に充填された試料にビーム状の信号光を通過させ,前記試料における前記信号光の通過部にビーム状の励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する光熱変換測定装置であって,
前記信号光を,前記容器の第1の外壁部に対し斜めに入射させ,該第1の外壁部から前記容器における前記第1の外壁部と表裏の関係にある第2の外壁部に至る第1の光路に沿って前記試料を通過させる信号光投光手段と,
前記励起光を,前記第1の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第1の光路に沿う前記信号光に重ねて該信号光と同じ方向に前記試料を通過させる励起光投光手段と,
前記第1の光路に沿って前記試料を通過した前記信号光及び前記励起光を反射し,反射した前記信号光及び前記励起光を,前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第2の外壁部から前記第1の外壁部に至る光路であって前記第1の光路と重ならない第2の光路に沿って前記試料を通過させる光反射手段と,
前記第2の光路に沿って前記試料を通過後の前記信号光及び前記励起光の光路において前記信号光を通過させて前記励起光を反射する光弁別手段と,
前記光弁別手段を経た前記信号光のビームの外縁部分を遮断して残りの部分を通過させる絞りと,
前記絞りを通過後の前記信号光と該信号光に対し基準となる参照光との干渉光の光強度に基づいて,前記試料に前記励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化を測定する位相変化測定手段と,
を具備してなることを特徴とする光熱変換測定装置。
【請求項3】
前記信号光投光手段及び前記励起光投光手段により光路が重ねられた前記信号光及び前記励起光の一部を前記光弁別手段に向かう主経路からそれとは異なる副経路へ分岐させる第1の光分岐手段と,
前記副経路へ分岐された前記信号光及び前記励起光をさらに2分岐させる第2の光分岐手段と,
前記第2の光分岐手段を経た2つの分岐光各々の断面の像を,前記第2の光分岐手段から各々異なる距離の位置において撮像する2つの撮像手段と,
前記2つの撮像手段により得られた2つの撮像画像各々における前記信号光の断面の像と前記励起光の断面の像との位置ずれ情報を検出する位置ずれ情報検出手段と,
前記位置ずれ情報検出手段の検出結果に応じて前記2つの撮像画像両方における前記信号光の断面の像と前記励起光の断面の像との位置ずれが所定の許容範囲に収まるように前記参照光投光手段における前記励起光の光路を調節する励起光光路調節手段と,
を具備してなる請求項2に記載の光熱変換測定装置。
【請求項4】
前記励起光投光手段により前記試料へ導かれる前記励起光の光路に該励起光を通過させる該励起光のビーム径に近似する径の開口が形成され,前記励起光の光源に向かう他の光を遮断するノイズ光遮断部材を具備してなる請求項3に記載の光熱変換測定装置。
【請求項5】
前記信号光投光手段及び前記励起光投光手段が,前記信号光及び前記励起光各々を,同じ光学特性の2つの集光レンズ各々を通じて屈折させることによって前記容器の前記第1の外壁に対して同じ位置に同じ角度で入射させてなる請求項2〜4のいずれかに記載の光熱変換測定装置。
【請求項6】
前記容器を,前記第1の外壁部及び前記第2の外壁部に直交する方向における位置を可変に支持する可動式容器支持手段を具備してなる請求項2〜5のいずれかに記載の光熱変換測定装置。
【請求項7】
容器に充填された試料にビーム状の信号光を通過させ,前記試料における前記信号光の通過部にビーム状の励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する光熱変換測定方法であって,
前記信号光を,前記容器の第1の外壁部に対し斜めに入射させ,該第1の外壁部から前記容器における前記第1の外壁部と表裏の関係にある第2の外壁部に至る第1の光路に沿って前記試料を通過させる信号光投光工程と,
前記信号光投光工程と並行して,ハーフミラーにより,前記第1の光路に沿って前記試料を通過した前記信号光の一部を反射しつつ残りを通過させ,反射した前記信号光を,前記第2の外壁部から前記第1の外壁部に至る光路であって前記第1の光路と重ならない第2の光路に沿って前記試料を通過させる信号光反射工程と,
前記信号光投光工程及び前記信号光反射工程と並行して,前記励起光を,前記ハーフミラーを通して前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第1の光路に沿う前記信号光に重ねて該信号光に対し逆方向に前記試料を通過させる励起光投光工程と,
前記信号光投光工程及び前記信号光反射工程と並行して,前記信号光に対し基準となる参照光を,前記ハーフミラーを通して前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第2の光路に沿う前記信号光に重ねて該信号光と同じ方向に前記試料を通過させる参照光投光工程と,
光強度検出手段により,前記第2の光路に沿って前記試料を通過後の前記信号光と前記参照光との干渉光の光強度を検出し,その検出信号に基づいて,位相検波手段により,前記試料に前記励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化を測定する位相変化測定工程と,
を有してなることを特徴とする光熱変換測定方法。
【請求項8】
容器に充填された試料にビーム状の信号光を通過させ,前記試料における前記信号光の通過部にビーム状の励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化をヘテロダイン方式の光干渉法により測定する光熱変換測定方法であって,
前記信号光を,前記容器の第1の外壁部に対し斜めに入射させ,該第1の外壁部から前記容器における前記第1の外壁部と表裏の関係にある第2の外壁部に至る第1の光路に沿って前記試料を通過させる信号光投光工程と,
前記信号光投光工程と並行して,前記励起光を,前記第1の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第1の光路に沿う前記信号光に重ねて該信号光と同じ方向に前記試料を通過させる励起光投光工程と,
前記信号光投光工程及び前記励起光投光工程と並行して,光反射手段により,前記第1の光路に沿って前記試料を通過した前記信号光及び前記励起光を反射し,反射した前記信号光及び前記励起光を,前記第2の外壁部に対し斜めに入射させ,前記第2の外壁部から前記第1の外壁部に至る光路であって前記第1の光路と重ならない第2の光路に沿って前記試料を通過させる光反射工程と,
所定の光学素子により,前記第2の光路に沿って前記試料を通過後の前記信号光及び前記励起光の光路において前記信号光を通過させて前記励起光を反射する光弁別工程と,
所定の絞りにより,前記光弁別工程を経た前記信号光のビームの外縁部分を遮断して残りの部分を通過させる信号光絞り工程と,
光強度検出手段により,前記絞りを通過後の前記信号光と該信号光に対し基準となる参照光との干渉光の光強度を検出し,その検出信号に基づいて,位相検波手段により,前記試料に前記励起光を通過させることによる前記試料を通過後の前記信号光の位相変化を測定する位相変化測定工程と,
を有してなることを特徴とする光熱変換測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−266315(P2010−266315A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117441(P2009−117441)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】