説明

光硬化型インク組成物およびインクジェット記録方法

【課題】本発明は、従来の光硬化型インク組成物と比較して硬化性に優れた光硬化型インク組成物、およびそれを用いたインクジェット記録方法を提供するものである。
【解決手段】本発明に係る光硬化型インク組成物は、少なくとも重合開始剤、重合性化合物および色材を含有する光硬化型インク組成物であって、さらに、増感剤としてシアニン色素を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インク組成物およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線等の光によって硬化する光硬化型インクの開発が進められている。この光硬化型インクは、プラスチック等の水性インクを吸収しない非吸収メディアに対する印刷において、速乾性があり、かつ、インクの滲みを防止した印刷を実現することができる。
【0003】
光硬化型インクは、重合性化合物、重合開始剤および顔料等から構成されており、その組成や重合方法等によって、ラジカル重合系とカチオン重合系に分類することができる。ラジカル重合系の光硬化型インクを硬化させるためには、紫外線等の光を照射することにより、重合開始剤が励起され、ラジカルを発生させて、重合反応を円滑に進める必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
重合反応を円滑に進めるための技術として、350nm〜450nmの波長の光に対する感度を高めるために、極大吸収波長を350nm〜450nmに有する三重項増感色素と、アシルフォスフィン化合物と、ラジカルおよび酸の少なくとも一方と、を含有する感光性組成物が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、長波長領域の光に対する感度を高めるために、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、極大吸収波長が580nmより長波長であるシアニン色素、および少なくとも1個のハロゲン化メチル基を有するs−トリアジン化合物からなる光重合性組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、上記のような光硬化性を有する組成物では光に対する感度が十分とはいえなかった。特に光硬化型インク組成物では、長期に亘り物理的または化学的に安定であって、その硬化物の硬化性に優れていることが要求される。
【特許文献1】特開2006−123542号公報
【特許文献2】特開2001−133968号公報
【特許文献3】特開平2−189548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の光硬化型インク組成物と比較して硬化性に優れた光硬化型インク組成物、およびそれを用いたインクジェット記録方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光硬化型インク組成物は、少なくとも重合開始剤、重合性化合物および色材を含有する光硬化型インク組成物であって、さらに、増感剤としてシアニン色素を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る光硬化型インク組成物において、前記シアニン色素は、下記式(1)に記載の構造を有することができる。
【0010】
【化1】

本発明に係る光硬化型インク組成物において、光硬化型インク組成物中における前記シアニン色素の含有量は、0.01質量%以上1.0質量%以下であることができる。
【0011】
本発明に係る光硬化型インク組成物において、前記重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイドであることができる。
【0012】
本発明に係る光硬化型インク組成物において、前記重合性化合物は、アリル化合物であることができる。
【0013】
本発明に係る光硬化型インク組成物において、前記アリル化合物は、アリルグリコールであることができる。
【0014】
本発明に係る光硬化型インク組成物において、前記色材は、顔料であることができる。
【0015】
本発明に係るインクジェット記録方法は、インクジェット記録装置を用いて、上記の光硬化型インク組成物を記録媒体上に吐出して画像を形成し、光を照射することにより該画像を硬化させることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に好適な実施形態について、詳細に説明する。
【0017】
1.光硬化型インク組成物
本発明に係る光硬化型インク組成物は、少なくとも重合開始剤、重合性化合物および色材を含有する光硬化型インク組成物であって、さらに、増感剤としてシアニン色素を含有することを特徴とする。以下、これらの成分について具体的に説明する。なお、本発明において、「光」とは広義に解し可視光線に限定されず、紫外線、赤外線等を含む概念である。
【0018】
1.1 シアニン色素
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、増感剤としてシアニン色素を含有する。本実施形態における光重合開始系は、主としてシアニン色素が光吸収し、共存する重合開始剤からの開始ラジカル発生を促進するものと考えられる。光硬化型インク組成物に含有されるシアニン色素は、特に限定されないが、例えば米国特許第2986528号公報に記載されている公知の化合物を適宜選択して用いることができる。上記のシアニン色素の中でも、下記式(1)で表されるシアニン色素であることが好ましい。
【0019】
【化1】

上記式(1)で表されるシアニン色素は、波長が350nm〜400nmの光に対して非常に高い増感能を有するとともに、後述する重合開始剤、重合性化合物および色材と混合しても化学的に安定であるため、保存安定性に優れた光硬化型インク組成物を得ることができる。
【0020】
増感剤として上記式(1)で表されるシアニン色素と、重合開始剤としてアシルフォスフィンオキサイドとを併用することにより、シアニン色素の増感能をより一層高め、特に硬化性に優れた光硬化型インク組成物を得ることができる。
【0021】
光硬化型インク組成物の全質量に対するシアニン色素の含有量は、好ましくは0.01〜1.0質量%であり、より好ましくは0.1〜1.0質量%であり、特に好ましくは0.3〜0.5質量%であり、最も好ましくは0.4質量%である。シアニン色素の含有量が0.01質量%未満の場合、得られた硬化物の硬化性が不良となることがある。一方、シアニン色素の含有量が1.0質量%を超えた場合でも、得られた硬化物の硬化性が不良となることがある。
【0022】
1.2 重合開始剤
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、重合開始剤を含有する。上記のシアニン色素が光を吸収することにより光感度を上昇させ、重合開始剤から開始ラジカル発生を促進させるものと考えられる。
【0023】
重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。さらに具体的には、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルフォスフィンオキサイド、オキシムエステル、チオキサントン、α−ジカルボニル、およびアントラキノンが挙げられる。
【0024】
上記シアニン色素の光増感作用によるラジカル発生効率の観点から、上記具体例のうち、アシルフォスフィンオキサイドであることが特に好ましい。アシルフォスフィンオキサイドとしては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)イソブチルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,6−トリメチルベンゾイル−n−ブチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジブトキシフェニルフォスフィンオキサイド、1,10−ビス[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド]デカン、トリス(2−メチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0025】
また、重合開始剤の具体例としては、Vicure 10、30(Stauffer Chemical社製)、Irgacure 127、184、500、651、2959、907、369、379、754、819、1700、1800、1870、OXE01、Darocur 1173、TPO、ITX(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、QuantacureCTX(Aceto Chemical社製)、Kayacure、DETX−S(日本化薬社製)、ESACURE KIP150(Lamberti社製)の商品名で入手可能なもの等が挙げられる。
【0026】
光硬化型インク組成物の全質量に対する重合開始剤の含有量は、好ましくは1質量%〜20質量%であり、より好ましくは2質量%〜10質量%である。
【0027】
1.3 重合性化合物
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、重合性化合物を含有する。重合性化合物として、アリル化合物、N−ビニル化合物、樹枝状ポリマーおよびその他のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0028】
1.3.1 アリル化合物
本実施形態に係る光硬化型インク組成物に用いられるアリル化合物とは、2−プロペニル構造(−CHCH=CH)構造を有する化合物である。2−プロペニル基は、アリル基とも呼ばれ、IUPAC命名法では慣用名とされている。アリル化合物は、ラジカル重合性を有する。
【0029】
アリル化合物の具体例として、エチレングリコールモノアリルエーテル、アリルグリコール(例えば、日本乳化剤株式会社から入手可能)、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル(以上、例えば、ダイソー株式会社から入手可能)や、ユニオックス、ユニループ、ポリセリン、ユニセーフの商品名であるアリル基を有するポリオキシアルキレン化合物(日油株式会社から入手可能)等が挙げられる。
【0030】
上記に例示したアリル化合物のうち、アリルグリコールを用いることが特に好ましい。重合性化合物としてアリルグリコールを用いることにより、光硬化型インク組成物を低粘度化することができ、インクジェット記録装置に適用するインクとして最適な粘度(25℃において10mPa・s以下)へ調整することが可能となる。
【0031】
1.3.2 N−ビニル化合物
本実施形態に係る光硬化型インク組成物に用いられるN−ビニル化合物とは、ビニル基が窒素に結合した構造(>N−CH=CH)を有する化合物である。N−ビニル化合物は、ラジカル重合性を有する。
【0032】
N−ビニル化合物の具体例として、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、およびそれらの誘導体が挙げられ、これらの化合物の中でも特にN−ビニルホルムアミドが好ましい。N−ビニルホルムアミドは、例えば、荒川化学工業株式会社から入手することができる。
【0033】
1.3.3 樹枝状ポリマー
樹枝状ポリマーとしては、以下に示すように大きく6つの構造体に分類できる(「デンドリティック高分子−多分岐構造が広げる高機能化の世界−」青井啓吾/柿本雅明監修、株式会社 エヌ・ティー・エス参照)。
【0034】
I デンドリマー
II リニア−デンドリティックポリマー
III デンドリグラフトポリマー
IV ハイパーブランチポリマー
V スターハイパーブランチポリマー
VI ハイパーグラフトポリマー
この中でも、I〜IIIは分岐度(DB:degree of branching)が1であり、欠陥の無い構造を有しているのに対し、IV〜VIは欠陥を含んでいても良いランダムな分岐構造を有している。特にデンドリマーは、一般的に用いられている直線上の高分子に比べて、反応性の官能基をその最外面に高密度かつ集中的に配置することが可能であり、機能性高分子材料として期待が高い。また、ハイパーブランチポリマー、デンドリクラフトポリマーおよびハイパーグラフトポリマーもデンドリマーほどではないにせよ、その最外面に反応性の官能基を数多く導入することが可能であり、硬化性に優れている。
【0035】
これら樹枝状ポリマーは、従来の直線状高分子や分岐型高分子とは異なり、3次元的に枝分かれ構造を繰り返し、高度に分岐している。そのため、同一分子量の直線状高分子と比較して粘度を低く抑えることが可能である。
【0036】
本発明で使用可能なデンドリマーの合成法には、中心から外に向かって合成するDivergent法と外から中心に向かって行うConvergent法を挙げることができる。
【0037】
本発明において使用可能な、デンドリマー、ハイパーブランチポリマー、デンドリグラフトポリマーおよびハイパーグラフトポリマーは、室温で固体であって、数平均分子量が1,000から100,000の範囲のものが望ましく、特に2,000〜50,000の範囲のものが好ましく使用される。室温で固体でない場合は、形成される画像の維持性が悪くなる。また、分子量が上記の範囲より低い場合には定着画像がもろくなり、また、分子量が上記の範囲より高い場合には、添加量を下げてもインクの粘度が高くなりすぎて飛翔特性の点で実用的ではなくなる。
【0038】
また、本発明において使用可能なデンドリマー、ハイパーブランチポリマー、デンドリグラフトポリマーおよびハイパーグラフトポリマーは、最外面にラジカル重合可能な官能基を有するデンドリマー、ハイパーブランチポリマー、デンドリグラフトポリマーおよびハイパーグラフトポリマーであることが好ましい。最外面にラジカル重合可能な構造とすることにより、重合反応が速やかに進行する。
【0039】
デンドリマー構造を有するポリマーの例としては、アミドアミン系デンドリマー(米国特許第4,507,466号、同4,558,120号、同4,568,737号、同4,587,329号、同4,631,337号、同4,694,064号明細書)、フェニルエーテル系デンドリマー(米国特許第5,041,516号明細書、Journal of American Chemistry 112巻(1990年、7638〜7647頁))等が挙げられる。アミドアミン系デンドリマーについては、末端アミノ基とカルボン酸メチルエステル基をもつデンドリマーが、Aldrich社より「StarburstTM(PAMAM)」として市販されている。また、そのアミドアミン系デンドリマーの末端アミノ基を、種々のアクリル酸誘導体およびメタクリル酸誘導体と反応させ、対応する末端をもったアミドアミン系デンドリマーを合成して、それらを使用することもできる。
【0040】
利用できるアクリル酸誘導体およびメタクリル酸誘導体としては、メチル、エチル、n−ブチル、t−ブチル、シクロへキシル、パルミチル、ステアリル等のアクリル酸あるいはメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アミド、イソプロピルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸アルキルアミド類が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0041】
また、フェニルエーテル系デンドリマーについては、例えば、上記Journal of American Chemistry 112巻(1990年、7638〜7647頁)には種々のものが記載され、例えば、3,5−ジヒドロキシベンジルアルコールを用い、3,5−ジフェノキシベンジルブロミドと反応させて第2世代のベンジルアルコールを合成し、そのOH基をCBrおよびトリフェニルホスフィンを用いてBrに変換した後、同様に3,5−ジヒドロキシベンジルアルコールと反応させて次世代のベンジルアルコールを合成し、以下、上記反応を繰り返して所望のデンドリマーを合成することが記載されている。フェニルエーテル系デンドリマーについても、末端ベンジルエーテル結合の代わりに、末端を種々の化学構造をもつもので置換することができる。例えば、上記Journal of American Chemistry 112巻に記載のデンドリマーの合成に際して、上記ベンジルブロミドの代わりに種々のアルキルハライドを用いれば、相当するアルキル基を有する末端構造を有するフェニルエーテル系デンドリマーが得られる。その他ポリアミン系デンドリマー(Macromol.Symp.77、21(1994))およびその末端基を変性した誘導体を使用することができる。
【0042】
ハイパーブランチポリマーとしては、例えば、ハイパーブランチポリエチレングリコール等が使用できる。ハイパーブランチポリマーは、1分子内に分岐部分に相当する2つ以上の一種の反応点とつなぎ部分に相当する別種のただ1つの反応点とをもち合わせたモノマーを用い、標的ポリマーを1段階で合成することにより得られるものである(非特許文献3(Macromolecules、29巻(1996)、3831−3838頁))。例えば、ハイパーブランチポリマー用モノマーの一例として、3,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体が挙げられる。ハイパーブランチポリマーの製造例を挙げると、1−ブロモ−8−(t−ブチルジフェニルシロキシ)−3,6−ジオキサオクタンと3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチルとから得られた3,5−ビス((8′−(t−ブチルジフェニルシロキシ)−3′,6′−ジオキサオクチル)オキシ)安息香酸メチルの加水分解物である3,5−ビス((8′−ヒドロキシ−3′,6′−ジオキサオクチル)オキシ)安息香酸メチルをジブチル錫ジアセテートと窒素雰囲気下で加熱して、ハイパーブランチポリマーであるポリ[ビス(トリエチレングリコール)ベンゾエート]を合成することができる。
【0043】
3,5−ジヒドロキシ安息香酸を用いた場合、ハイパーブランチポリマー末端基は水酸基となるため、この水酸基に対して、適当なアルキルハライドを用いることにより、種々の末端基を有するハイパーブランチポリマーを合成することができる。
【0044】
デンドリマー構造を有する単分散ポリマーまたはハイパーブランチポリマー等は、主鎖の化学構造とその末端基の化学構造によりその特性が支配されるが、特に末端基や化学構造中の置換基の相違によりその特性が大きく異なるものとなる。特に末端に重合性基を有するものは、その反応性ゆえに、光反応後のゲル化効果が大きく有用である。重合性基を有するデンドリマーは、末端にアミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシル基等の塩基性原子団を有するものの末端に、重合性基を有する化合物で化学修飾して得られる。
【0045】
例えば、アミノ系デンドリマーに活性水素含有(メタ)アクリレート系化合物をマイケル付加させてなる多官能化合物に、例えば、イソシアネート基含有ビニル化合物を付加させて合成する。また、アミノ系デンドリマーに例えば、(メタ)アクリル酸クロライド等を反応させることで末端に重合性基を有するデンドリマーが得られる。このような重合性基を与えるビニル化合物としては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられ、その例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸およびそれらの塩等、後述する種々のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。
【0046】
さらに重合性基としては、カチオン重合性基を有する末端基も挙げられ、エポキシ基、オキセタニル基等のカチオン重合により高分子化の起こる重合性基を有する、例えば、オキシラン、オキセタン類等の環状エーテル化合物類、また、脂環式ポリエポキシド類、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多加アルコールのポリグリシジルエーテル類等の化合物を前記アミノ系デンドリマーと反応させることで導入することができる。例えば、クロロメチルオキシランをアミノ系デンドリマーと反応させ、末端にエポキシタイプのカチオン重合性基を導入できる。そのほか、末端基としては、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、ビニルエーテル類およびN−ビニル化合物類等から選ばれるカチオン重合性基がある。
【0047】
本実施形態に係る光硬化型インク組成物において、上記のデンドリマー、ハイパーブランチポリマー、デンドリグラフトポリマーおよびハイパーグラフトポリマーは1種のみを単独で用いてもよいし、他の種類のデンドリマー、ハイパーブランチポリマー、デンドリグラフトポリマーおよびハイパーグラフトポリマーと併用してもよい。
【0048】
樹枝状ポリマーとして、具体的には、V#1000(以上、大阪有機化学工業株式会社製)を挙げることができる。
【0049】
1.3.4 その他の重合性化合物
その他の重合性化合物として、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類等が挙げられる。なお、本明細書中において、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合には「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合には「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
【0050】
単官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0051】
二官能(メタ)アクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
三官能の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
四官能の(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
五官能の(メタ)アクリレートとしては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0055】
六官能の(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。さらに、放射線硬化型インク組成物には、上記の(メタ)アクリレートと、単官能もしくは二官能の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドを併用することができる。
【0057】
芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0058】
さらに、光硬化型インク組成物に使用可能な重合性化合物としては、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど)、アリルエステル類(酢酸アリルなど)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン、塩化ビニルなど)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテルなど)、シアン化ビニル((メタ)アクリロニトリルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)等が挙げられる。
【0059】
光硬化型インク組成物は、以上に例示した重合性化合物を、複数含有することができる。上記に例示した重合性化合物のうち、活性水素を有する官能基を有するものは、特にラジカルを発生しやすいため好適に用いられる。活性水素を有する官能基としては、例えばアミノ基、イミノ基、またはアルコール性水酸基が挙げられ、光硬化型インク組成物は、これらの基を有する重合性化合物を含有することがさらに好ましい。
【0060】
光硬化型インク組成物の全質量に対する重合性化合物の含有量は、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは60〜92質量%、特に好ましくは70〜90質量%の範囲である。
【0061】
1.4 色材
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、色材を含有する。色材としては、顔料または染料が挙げられるが、多くの染料は光に対する感度の低下を引き起こすため、顔料であることが好ましい。顔料は、光照射やラジカルとの反応により変色または退色(消色)等の色変化を生じにくい。
【0062】
顔料としては、特に制限はなく、有機顔料、無機顔料が挙げられる。有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む。)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を例示することができる。光硬化型インク組成物に使用する顔料を以下に例示する。
【0063】
黄色系顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180、185、213等が挙げられる。
【0064】
赤色系顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、209、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0065】
青色系顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、60、16、22が挙げられる。
【0066】
黒色系顔料としては、酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックとしては、例えばC.I.ピグメントブラック7が挙げられ、三菱化学株式会社から入手可能なNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等が、コロンビアケミカルカンパニー社から入手可能なRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等が、また、キャボット社から入手可能なRegal400R、同330R、同660R、MogulL、同700、Monarch800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等が、さらに、デグッサ社から入手可能なColorBlackFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、ColorBlackS150、同S160、同S170、Printex35、同U、同V、同140U、SpecialBlack6、同5、同4A、同4等が挙げられる。
【0067】
顔料の平均粒子径は、好ましくは10nm〜200nmの範囲であり、より好ましくは50nm〜150nmの範囲である。
【0068】
光硬化型インク組成物の全質量に対する色材の含有量は、好ましくは0.1質量%〜25質量%であり、より好ましくは0.5質量%〜15質量%である。
【0069】
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、顔料の分散性を高めるため、分散剤または界面活性剤を含有することができる。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。高分子分散剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミンなどを例示することができる。ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミンの具体例としては、例えば、ディスコール(Discole)N−503、N−506、N−509、N−512、N−515、N−518、N−520(第一工業製薬株式会社製)が挙げられる。
【0070】
1.5 熱ラジカル重合禁止剤
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、熱ラジカル重合禁止剤を含有することもできる。これにより、放射線硬化型インク組成物の保存安定性を向上させることができる。熱ラジカル重合禁止剤としては、IrgastabUV−10(チバ・スペシャルティケミカルズ社から入手可能)等が挙げられる。
【0071】
1.6 その他の添加剤
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、界面活性剤を添加することもできる。例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることが好ましく、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体的には、BYK−347、348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0072】
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、その他の成分として、公知公用の湿潤剤、浸透溶剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤等を添加してもよい。さらに、必要に応じて、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、本実施形態に係る光硬化型インク組成物をインクジェット記録方法で使用する場合には、その粘度は、25℃で10mPa・s以下であることが使用上好ましい。
【0073】
2.インクジェット記録方法
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、インクジェット記録装置を用いて、上記の光硬化型インク組成物を記録媒体上に吐出して画像を形成し、光を照射することにより該画像を硬化させることを特徴とする。
【0074】
本実施形態に係るインクジェット記録方法では、例えばインクジェットプリンタを用いて、上記光硬化型インク組成物を記録媒体上に吐出して画像を形成する。前記インクジェットプリンタは、主にインクジェット式記録ヘッド、本体、トレイ、ヘッド駆動機構、キャリッジおよびキャリッジの側面に搭載された光照射装置を備えている。インクジェット式記録ヘッドは、複数色のインクカートリッジを備えており、フルカラー印刷ができるように構成されている。このインクカートリッジに、本実施形態に係る光硬化型インク組成物を充填し、設置する。また、このインクジェットプリンタは、内部に専用のコントローラボード等を備えており、インクジェット式記録ヘッドのインクの吐出タイミングおよびヘッド駆動機構の走査を制御することができる。なお、ここでいう画像とは、ドット群から形成される印字パターンを示し、テキスト印字、ベタ印字も含める。
【0075】
光の照射には、インクジェットプリンタ内のキャリッジ側面に搭載された光照射装置を適用することができる。照射光源の波長は、特に制限されないが、好ましくは350nm以上、450nm以下である。光の照射量は、好ましくは10mJ/cm以上、20,000mJ/cm以下であり、より好ましくは50mJ/cm以上、15,000mJ/cm以下の範囲で行う。この範囲内における光照射量であれば、十分硬化反応を行うことができる。
【0076】
光の照射は、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ灯のランプを挙げることができる。例えば、Fusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。
【0077】
また、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や紫外線発光半導体レーザ等の紫外線発光半導体素子により、紫外線照射を行うことができる。
【0078】
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、その用途として、金属、ガラス、プラスチック等の非吸収性メディアに対する印刷、カラーフィルター作成およびプリント基板へのマーキング等に好ましく用いることができる。
【0079】
3.実施例
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
3.1 シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック顔料分散液の調製
実施例1〜8および比較例1〜4に用いる顔料分散液は、下記に示す方法によって調製した。着色剤としてC.I.ピグメントブラック−7を15部、分散剤としてディスコールN−509(大日精化工業社製)を3.5部に、モノマーとしてのアリルグリコール(日本乳化剤社製)を加えて全体を100部とし、混合撹拌して混合物とした。この混合物を、サンドミル(安川製作所社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータで分離し、アリルグリコール溶媒のブラック顔料分散液を得た。
【0081】
着色剤および分散剤の添加量を適宜調整し、それぞれの色に対応する顔料分散液、すなわちシアン顔料分散液(C.I.ピグメントブルー15:3)、マゼンタ顔料分散液(C.I.ピグメントヴァイオレット−19)、イエロー顔料分散液(C.I.ピグメントイエロー213)を調製した。
【0082】
3.2 光硬化型インク組成物の調製
表1〜表4に記載の組成(単位は、「質量%」である。)に基づき、重合性化合物、重合開始剤、光ラジカル重合禁止剤、シアニン色素等を混合かつ完全に溶解してインク組成物を調製し、上記顔料分散液を撹拌しながらインク組成物のインク溶媒中に徐々に滴下した。滴下終了後、常温で1時間混合撹拌して、実施例ないし比較例に使用するインク組成物とした。その後、5μmのメンブランフィルターでそれぞれのインク組成物をろ過し、所望のインク組成物とした。表1〜表4に実施例ないし比較例のインク組成を示す。
【0083】
なお、重合性化合物としてアリルグリコール(日本乳化剤社製)およびV#1000(大阪有機化学工業社製)を、重合開始剤としてIrgacure819(チバ・スペシャルティケミカルズ社製、アシルフォスフィンオキサイド)を、光ラジカル重合禁止剤としてIrgastabUV10(チバ・スペシャルティケミカルズ社から入手可能)を、シアニン色素として376nmに極大吸収波長をもつNK−8928((株)林原生物化学研究所社製)をそれぞれ使用した。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

3.3 硬化性試験
インクジェットプリンタPX−G5000(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、上記光硬化型インクをそれぞれのノズルに充填した。常温・常圧下でインク滴を着弾させてPETフィルム上にベタパターンを印刷した。そして、キャリッジの横に搭載した照射強度60mW/cmの紫外線照射装置から、365nm、380nm、395nmの3波長の紫外線を照射した。積算光量が400mJ/cmとなるような硬化条件で硬化処理を行い、下記指標に基づき評価を行った。結果を表1〜表4に併せて示す。
【0088】
硬化性評価の指標は、下記のとおりである。
AA:完全に硬化している。
A :表面のタック性がある。
B :表面に未硬化部分が存在する。
【0089】
硬化性評価の指標が、AAまたはAの場合、実使用上問題のないレベルであると判断する。
【0090】
実施例1〜8および比較例1〜4の結果より、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクの種類に拘わらず、NK−8928(シアニン色素)を添加することで硬化性が良好となることが判明した。また、NK−8928の添加量が1.0質量%の場合に比べ、0.4質量%の場合の方が良好な硬化性となることが判明した。これにより、光硬化インク組成物において、シアニン色素の添加量の最適値が存在することが判明した。
【0091】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも重合開始剤、重合性化合物および色材を含有する光硬化型インク組成物であって、
さらに、増感剤としてシアニン色素を含有する、光硬化型インク組成物。
【請求項2】
請求項1において、
前記シアニン色素は、下記式(1)に記載の構造を有する、光硬化型インク組成物。
【化1】

【請求項3】
請求項1または請求項2において、
光硬化型インク組成物中における前記シアニン色素の含有量は、0.01質量%以上1.0質量%以下である、光硬化型インク組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイドである、光硬化型インク組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記重合性化合物は、アリル化合物である、光硬化型インク組成物。
【請求項6】
請求項5において、
前記アリル化合物は、アリルグリコールである、光硬化型インク組成物。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記色材は、顔料である、光硬化型インク組成物。
【請求項8】
インクジェット記録装置を用いて、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の光硬化型インク組成物を記録媒体上に吐出して画像を形成し、光を照射することにより該画像を硬化させる、インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2010−43154(P2010−43154A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206741(P2008−206741)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】