説明

光硬化型マニキュア組成物およびマニキュア方法

【課題】所定の硬化速度を維持しながら、密着性や耐久性と、剥離性と、の間のバランスに優れた光硬化型マニキュア組成物およびそれを用いたマニキュア方法を提供する。
【解決手段】下記(A)〜(E)成分を含有する光硬化型マニキュア組成物およびそれを用いてなるマニキュア方法。
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(D)3〜15重量部のポリオール化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型マニキュア組成物およびそれを用いたマニキュア方法に関する。特に、所定の硬化速度(硬化時間)を維持するとともに、密着性や耐久性と、剥離性と、の間のバランスに優れた光硬化型マニキュア組成物およびそれを用いたマニキュア方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、爪に塗布するネイルマニキュアは、ニトロセルロース、またはアクリル樹脂を主成分とし、トルエン、酢酸ブチル、酢酸エチルの溶剤に樹脂を溶解させ、可塑剤を含んだ溶剤型ネイルマニキュアが提案され、上市されている。しかしながら、ネイルマニキュアに溶剤が含まれているということは、使用者が溶剤蒸気を吸う結果となり、保健衛生上好ましいことではない。
また、溶剤型ネイルマニキュアは、揮発成分が飛散するのに、通常、数十分を要することから、ネイルマニキュアの塗布後、乾燥硬化するまでの時間、指先を自由に使うことができないという問題があった。
【0003】
そこで、光硬化型マニキュアは、硬化反応が速く、溶剤を実質的に含まないため、溶剤型マニキュアと比べて、使い勝手が良好であるとともに、安全性や保健衛生等に優れていることから、盛んに開発、提案されている。
このような光硬化型マニキュアとして、重合性不飽和基含有化合物と、光重合開始剤と、を含有してなる光硬化性無溶剤型マニキュアが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、重合性不飽和基を有するオリゴマーとして、エポキシアクリレート、またはウレタンアクリレートと、皮膚毒性指数(PII値:Primary Irritation Index)が3以下である重合性不飽和基含有化合物と、光重合開始剤と、からなる光硬化性無溶剤型マニキュアであって、形成された硬化被膜が0.5〜30%の水膨潤率を有するものである。
すなわち、人体の皮膚刺激性に配慮して皮膚毒性指数(PII値)が3以下の重合性不飽和基含有化合物を用いており、所望により、アクリレートモノマーをさらに含んでなる光硬化性無溶剤型マニキュアである。
【0004】
また、光架橋性組成物の毒性の問題を考慮し、反応性モノマーを含まない光架橋性マニキュア組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、ポリエチレングリコールポリアクリレート、アクリレート基を含むこれらのポリウレタン/ポリ尿素、ポリエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートのエチレン系二重結合化合物と、高分子光重合開始剤と、からなる光架橋性マニキュア組成物である。
【0005】
また、爪に塗布し、人口爪構造において約0.25〜1.5mm(約10〜60ミル)の厚さ、及び約550〜800N/m2の弾性率を有する塗膜が光照射によって形成可能な光硬化性モノマー組成物も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
より具体的には、エチルメタクリレート及びヒドロキシプロピルメタクリレートのモノマー混合物と、多官能エチレン性不飽和モノマーであるトリメチロールプロパントリアクリレートエステルと、からなる光硬化性モノマー組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−161025号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2002−322034号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特表2002−505915号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された光硬化型マニキュア組成物は、マニキュア使用中における密着性や耐久性と、マニキュア使用後における剥離性と、の間のバランスが良好でないという問題が見られた。
すなわち、光硬化型マニキュア組成物からなるマニキュア層に関して、マニキュア使用中における密着性や耐久性を向上させようとすると、マニキュア使用後において、容易に剥離させることが困難になるという問題が見られた。
一方、マニキュア使用後における剥離性を向上させようとすると、マニキュア使用中における密着性や耐久性が著しく低下するという問題が見られた。
さらに言えば、特許文献1〜3に記載された光硬化型マニキュア組成物は、光硬化性の改良のために、アクリレートモノマーを比較的多量に含む場合があって、未だ皮膚刺激性が強いという問題も見られた。
【0008】
そこで、本発明者らは、従来の問題を鋭意検討した結果、所定のウレタンアクリレートオリゴマーと、メタクリレートモノマーと、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートと、ポリオール化合物と、光重合開始剤とを、所定配合比において用いることにより、所定の硬化速度を維持しながらも、マニキュア使用中における密着性や耐久性と、マニキュア使用後における剥離性という相反しやすい特性をそれぞれ満足できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、所定の硬化速度を維持しつつ、マニキュア使用中の密着性や耐久性と、マニキュア使用後の剥離性と、の間のバランスに優れた光硬化型マニキュア組成物およびそれを用いたマニキュア方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、下記(A)〜(E)成分を含有することを特徴とする光硬化型マニキュア組成物が提供され、上述した問題点を解決することができる。
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(D)3〜15重量部のポリオール化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
【0010】
すなわち、所定のウレタンアクリレートオリゴマーと、メタクリレートモノマーと、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートと、ポリオール化合物と、光重合開始剤とを、所定配合比で用いることにより、所定の硬化速度を維持しながらも、マニキュア使用中の密着性や耐久性と、マニキュア使用後の剥離性と、の間のバランスに優れた光硬化型マニキュア組成物を提供することができる。
特に、本発明の光硬化型マニキュア組成物からなるマニキュア層によれば、使用後における剥離の際に、一枚のフィルムとして剥離することができ、極めて剥離処理が容易になるとともに、短時間で剥離処理することができる。
なお、後述する実施例1に示す照射装置を用いて、照射量が300〜400mJ/cm2の範囲において、光硬化型マニキュア組成物を、60秒以内の照射時間で硬化できれば好ましく、40秒以内の照射時間で硬化できればより好ましく、30秒以内の照射時間で硬化できればさらに好ましいと言える。
【0011】
また、本発明の光硬化型マニキュア組成物を構成するにあたり、(A)成分のウレタンアクリレートオリゴマーを第1のオリゴマーとした場合に、当該第1のオリゴマー100重量部に対して、第2のオリゴマーとして、重量平均分子量が10,000〜25,000であるウレタンアクリレートオリゴマーを5〜25重量部の範囲で含むことが好ましい。
このように比較的高分子量のウレタンアクリレートオリゴマーを所定量配合することによって、光硬化型マニキュア組成物の使い勝手性をさらに向上させることができ、あるいは、光硬化させる際の収縮率を低減することができ、さらに優れた密着性や耐久性を得ることができる。
【0012】
また、本発明の光硬化型マニキュア組成物を構成するにあたり、(B)成分のメタクリレートモノマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレートモノマーおよび2−ヒドロキシプロピルメタクリレートモノマー、あるいはいずれか一方のメタクリレートモノマーであることが好ましい。
このようなメタクリレートモノマーを用いることによって、光硬化型マニキュア組成物における皮膚毒性指数(PII値:Primary Irritation Index)をさらに小さな値とすることができる。
【0013】
また、本発明の光硬化型マニキュア組成物を構成するにあたり、(C)成分のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物の重量平均分子量を300〜1,500の範囲内の値とすることが好ましい。
このように(C)成分のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物の重量平均分子量を所定範囲内の値に調整することによって、光硬化型マニキュア組成物の使い勝手性をさらに向上させることができ、あるいは、光硬化させる際の収縮率を低減することができ、さらに優れた密着性や耐久性を得ることができる。
【0014】
また、本発明の光硬化型マニキュア組成物を構成するにあたり、(D)成分のポリオール化合物が、ポリウレタンポリオールまたはポリエステルポリオールであることが好ましい。
このように、所定のポリオール化合物を用いることによって、所定の硬化速度を効果的に維持しつつも、硬化塗膜の可撓性をさらに向上させることができるばかりか、剥離性をさらに向上させることができる。
【0015】
また、本発明の光硬化型マニキュア組成物を構成するにあたり、皮膚毒性指数(PII値:Primary Irritation Index)を0.1以下の値とすることが好ましい。
このように光硬化型マニキュア組成物における皮膚毒性指数(PII値)を所定値以下に調整することによって、光硬化型マニキュア組成物の安全性を高めることができる。
【0016】
また、本発明の別の態様は、光硬化型マニキュア組成物を用いてなるマニキュア方法であって、下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とするマニキュア方法である。
(1)下記(A)〜(E)成分を含有する光硬化型マニキュア組成物を準備する工程
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(D)3〜15重量部のポリオール化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
(2)光硬化型マニキュア組成物を塗布する工程
(3)塗布した光硬化型マニキュア組成物を光硬化させて、マニキュア層を形成する工程
【0017】
すなわち、マニキュア方法として、所定配合のウレタンアクリレートオリゴマーと、メタクリレートモノマーと、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートと、非反応性のポリオール化合物と、光重合開始剤とを、含んでなる光硬化型マニキュア組成物を用いることにより、所定の硬化速度を維持しながら、マニキュア使用中の密着性や耐久性と、マニキュア使用後の剥離性と、の間のバランスに優れたマニキュアを得ることができる。
【0018】
また、本発明のマニキュア方法を実施するに際して、工程(3)によって第1のマニキュア層を形成した後に、下記工程(4)を含んで、第2のマニキュア層を形成することが好ましい。
(4)下記(A)〜(E)成分および(F)成分を含有するカラー光硬化型マニキュア組成物からなる第2のマニキュア層を、光硬化によって形成する工程
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(D)3〜15重量部のポリオール化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
(F)0.1〜30重量部のカラー充填剤
このように実施することによって、所定の剥離性は維持したまま、装飾性や視覚性に優れるとともに、基材との間の密着性についても優れたカラーマニキュアを得ることができる。
【0019】
また、本発明のマニキュア方法を実施するに際して、工程(3)によって第1のマニキュア層を形成した後に、下記工程(4´)を含んで、第3のマニキュア層を形成することが好ましい。
(4´)下記(A)〜(C)成分、(E)成分、および(F)成分を含有するカラー光硬化型マニキュア組成物からなる第3のマニキュア層を、光硬化によって形成する工程
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
(F)0.1〜30重量部のカラー充填剤
このように、所定の光硬化型マニキュア組成物からなる第3のマニキュア層(カラー層)を形成することによって、より密着性や耐久性に優れるばかりか、装飾性や視覚性に優れた多層マニキュア層を得ることができる。
また、かかる態様の場合、第3のマニキュア層における剥離性は、第1のマニキュア層と比較して低下するものの、下地である第1のマニキュア層の剥離性が良好であるため、第3のマニキュア層と、第1のマニキュア層とを、単一層のようにして、一緒に剥離することができる。
なお、第3のマニキュア層と、第1のマニキュア層との間に、上述した第2のマニキュア層を備えることも好ましい。すなわち、上述した工程(3)によって第1のマニキュア層を形成した後に、工程(4)を実施して第2のマニキュア層を形成し、さらに、工程(4´)を実施して、第3のマニキュア層を形成することも好ましい。
【0020】
また、本発明のマニキュア方法を実施するに際して、工程(3)によって、第1のマニキュア層を形成した後、下記工程(4´´)を含んで、第4のマニキュア層を最表面に形成することが好ましい。
(4´´)下記(A)〜(C)成分、および(E)成分を含有する光硬化型マニキュア組成物からなる第4のマニキュア層を、光硬化によって形成する工程
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
このように、ポリオール化合物を実質的に含まない光硬化型マニキュア組成物からなる第4のマニキュア層(クリア層)を最表面に形成することによって、より密着性や耐久性に優れるばかりか、つややかなクリア層を備えた多層マニキュアとすることができる。
なお、第4のマニキュア層と、第1のマニキュア層との間に、上述した第2のマニキュア層および第3のマニキュア層、あるいはいずれか一方を備えることも好ましい。
すなわち、上述した工程(3)によって第1のマニキュア層を形成した後に、工程(4)を実施して第2のマニキュア層を形成し、さらに、工程(4´)を実施して、第3のマニキュア層を形成し、その上に、工程(4´´)によって、第4のマニキュア層を最表面に形成することも好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光硬化型マニキュア組成物によれば、マニキュア使用中の密着性や耐久性と、マニキュア使用後の剥離性と、の間のバランスに優れた光硬化型マニキュア組成物を提供することができる。
特に、(A)成分100重量部に対して、所定量の(B)成分、所定量の(C)成分、および所定量の(D)成分を含んで光硬化型マニキュア組成物を構成することによって、図1〜図3に示すように、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間および密着力に対して、非予測的な効果を得ることができる。
また、本発明の光硬化型マニキュア組成物からなるマニキュア層によれば、使用後における剥離の際に、単層構造のマニキュア層はもちろんのこと、多層構造のマニキュア層であっても、一枚のフィルムとして剥離することができる。したがって、剥離処理した後の基材に対して、マニキュア層が残留するおそれがなくなり、極めて剥離処理が容易になるとともに、短時間で剥離処理することができるようになった。
また、本発明のマニキュア方法によれば、マニキュア使用中の密着性や耐久性と、マニキュア使用後の剥離性と、の間のバランスに優れた光硬化型マニキュア組成物からなるマニキュア層を効率的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間および密着力に対するメタクリレートモノマーの配合量の影響を説明するために供する図である。
【図2】図2は、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間および密着力に対するカルボン酸変性ポリエステルアクリレートの配合量の影響を説明するために供する図である。
【図3】図3は、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間および密着力に対するポリオール化合物の配合量の影響を説明するために供する図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、単層構造のマニキュア層の形成方法を説明するために供する図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、多層構造のマニキュア層の形成方法を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、下記(A)〜(E)成分を含有することを特徴とする光硬化型マニキュア組成物である。
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(D)3〜15重量部のポリオール化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
以下、第1の実施形態の各構成要件である(A)〜(E)成分等について、詳細に説明する。
【0024】
1.(A)ウレタンアクリレートオリゴマー
(1)種類
(A)成分であるウレタンアクリレートオリゴマーは、重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマーであることを特徴とする。
この理由は、このような重量平均分子量を有するウレタンアクリレートオリゴマーを使用することにより、アクリレートモノマーを用いなくとも、爪に対する密着性を効果的に保持しつつも、硬化速度を向上させて、硬化時間を短縮することができるばかりか、硬化塗膜としての所定の硬さを容易に得ることができるためである。
すなわち、ウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量が500未満の値になると、硬化速度が過度に増大し、爪との密着不良を起こしやすくなって、取り扱いが困難となる場合があるためである。
一方、ウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量が8,000を超えると、硬化速度が低下して、硬化時間が過度に長くなったり、硬化塗膜としての耐久性を効果的に調整したりすることが困難となる場合があるためである。
したがって、ウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量を1,000〜6,000の範囲内の値とすることよりが好ましく、3,000〜5,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0025】
また、ウレタンアクリレートオリゴマーが、ポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマーであることが好ましい。
すなわち、ポリエステル骨格ポリオールと、有機ポリイソシアネート化合物およびヒドロキシアクリレートと、の反応物であることが好ましい。
この理由は、ポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマーであることによって、所定の光硬化反応性が得られる一方、光硬化収縮が比較的少なく、優れた密着性やフレキシブル性が得られやすいためである。
【0026】
ここで、ポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマーを得るためのポリエステル骨格ポリオールの種類については、特に制限されるものではないが、工業的に容易に入手でき、比較的安価であることから、ポリエステル骨格ジオール化合物であることが好ましい。
また、ポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマーを得るための有機ポリイソシアネート化合物の種類としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなど、無黄変型のものが好ましい。
また、ポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマーを得るためのヒドロキシアクリレートとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、カプロラクトン変性−2−ヒドロキシエチルアクリレートなどが好ましい。
【0027】
(2)配合量
また、ウレタンアクリレートオリゴマーの添加量を、(A)〜(E)成分を含む全体量(100重量%)に対して、30〜65重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、爪に対する密着性を効果的に保持しつつも、硬化塗膜としての所定の硬度を容易に得ることができるためである。
すなわち、ウレタンアクリレートオリゴマーの添加量が30重量%未満の値となると、硬化速度が低下し、硬化時間が過度に長くなったり、硬化塗膜としての吸水率および耐久性を効果的に調整したりすることが困難となる場合があるためである。
一方、ウレタンアクリレートオリゴマーの添加量が65重量%を超えた値となると、硬化速度の制御が困難となったり、爪との密着不良を起こしやすくなって、取り扱いが困難となったりする場合があるためである。
したがって、ウレタンアクリレートオリゴマーの添加量を、全体量に対して、35〜60重量%の範囲内の値とすることが好ましく、40〜55重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0028】
(3)ウレタンアクリレートオリゴマー混合物
また、ウレタンアクリレートオリゴマーとして、重量平均分子量が500〜8,000であるポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマーと、これ以外の他のウレタンアクリレートオリゴマーとの混合物を使用することが好ましい。
このような他のウレタンアクリレートオリゴマーとして、後述する重量平均分子量を有するポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー、あるいは、ポリカプロラクトン系ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリカーボネート系ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエーテル系ウレタンアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
特に、他のウレタンアクリレートオリゴマーとして、後述する重量平均分子量(10,000〜25,000)を有するポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマーと、所定重量平均分子量(500〜8,000)であるポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマーと、を混合使用することが好ましい。
この理由は、このように重量平均分子量が異なる複数のポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることによって、硬化時には、所定の硬化速度を効果的に維持しつつ、硬化後には、爪との密着性を向上させることができるためである。
【0029】
また、ポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー以外の、他のウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量を10,000〜25,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる他のウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量が10,000未満の値になると、硬化速度が増大したり、爪との密着不良を起こしやすくなって、取り扱いが困難となったりする場合があるためである。
一方、かかる他のウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量が25,000を超えると、硬化速度が低下し、硬化時間が過度に長くなったり、硬化塗膜としての耐久性を効果的に調整したりすることが困難となる場合があるためである。
したがって、他のウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量を12,000〜20,000の範囲内の値とすることがより好ましく、15,000〜18,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0030】
また、他のウレタンアクリレートオリゴマーの配合比率を、重量平均分子量が500〜8,000であるポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、5〜25重量部の範囲内の値とすることが好ましく、8〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、他のウレタンアクリレートオリゴマーの配合比率が過度に低いと、硬化速度が増大し、爪に対する密着不良が起こしやすくなったり、取り扱いが困難になったりするためである。一方、他のウレタンアクリレートオリゴマーの配合比率が過度に高いと、硬化速度が過度に低下し、硬化塗膜としての耐久性を調整することが困難となる場合があるためである。
【0031】
2.(B)メタクリレートモノマー
(1)種類
また、光硬化型マニキュア組成物の粘度や硬化物の特性を調整するために、(B)成分であるメタクリレートモノマーを所定量配合することを特徴とする。
すなわち、反応性希釈剤として、例えば、アミノ基やヒドロキシル基を含む化合物と、メタクリル酸とのアミド化反応またはエステル化反応により得られるメタクリレートモノマー、カルボキシル基や酸無水物基を有する化合物と、ヒドロキシル基を有するメタクリレートとのエステル化反応により得られるメタクリレートモノマーなどが含まれる。
【0032】
より具体的には、メタクレートモノマーとしては、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、エチルカルビトールメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ノニルフェノキシエチルメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ジシクロペンタジエンメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシアルキルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、トリシクロデカニルオキシエチルメタクリレート等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0033】
この中でも、PII値が0.5以下であって、密着性が良好であることから、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを使用することが好ましい。
特に、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートは、密着性をさらに向上させることができることから、特に好ましいメタクリレートモノマーである。
【0034】
(2)配合量
また、メタクリレートモノマーの添加量を、重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、10〜60重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、所定の硬化速度を効果的に維持しつつも、爪との密着性を向上させることができるばかりか、爪および周囲の皮膚に対する刺激性の低い硬化塗膜を得ることができるためである。
【0035】
すなわち、所定重量平均分子量のウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対するメタクリレートモノマーの添加量が10重量部未満の値となると、硬化速度が増大し、硬化性の制御が困難となったり、爪との密着不良を起こしやすくなって、取り扱いが困難となったりする場合があるためである。
一方、かかるメタクリレートモノマーの添加量が60重量部を超えた値となると、硬化速度が低下し、硬化時間が過度に長くなったり、硬化塗膜としての耐久性を効果的に調整したりすることが困難となる場合があるためである。
したがって、メタクリレートモノマーの添加量を、所定重量平均分子量を有するウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、12〜55重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、15〜50重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、メタクリレートモノマーとして、2−ヒドロキシエチルメタクリレートと、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の混合物を用いた場合は、メタクリレートモノマーの添加量は、かかる混合物の合計添加量を意味する。
【0036】
ここで、図1を参照して、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間および密着力に対するメタクリレートモノマーの配合量の影響を説明する。
すなわち、図1の横軸に、メタクリレートモノマーの配合量(重量部)を採って示してあり、縦軸に、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間(sec)および密着力をそれぞれ採って示してある。
かかる図1に示す光硬化型マニキュア組成物の硬化時間を示す特性曲線Aから理解されるように、メタクリレートモノマーの配合量が多いほど、硬化時間が長くなる傾向がある。例えば、メタクリレートモノマーの配合量が50重量部を超えると、硬化時間は約60sec以上と長くなり、60重量部を超えると、硬化時間は75sec以上と急激に長くなっている。
一方、光硬化型マニキュア組成物の密着力を示す特性曲線Bから、メタクリレートモノマーの配合量によって、最適範囲が存在していることが理解される。具体的に、メタクリレートモノマーの配合量が10重量部を超えると、密着性が向上して4以上の評価点が得られ、20〜50重量部の範囲で最高点(5点)で飽和し、逆に、60重量部を超えると、評価点が2となり、密着性が著しく低下している。
よって、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間(硬化速度)および密着力の間のバランスがより良好となることから、上述したように、メタクリレートモノマーの添加量を、所定重量平均分子量のウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、10〜60重量部の範囲内の値とすることが好ましく、20〜50重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0037】
3.(C)カルボン酸変性ポリエステルアクリレート
(1)種類
また、本発明の光硬化型マニキュア組成物は、(C)成分であるカルボン酸変性ポリエステルアクリレートを所定量含むことを特徴とする。
この理由は、所定の硬化速度を効果的に維持しつつも、可撓性のある硬化塗膜を得ることができるためである。
【0038】
ここで、本発明のカルボン酸変性ポリエステルアクリレートは、例えば多価アルコール、多価カルボン酸、およびアクリル酸から製造されることができ、ポリマー主鎖中にエステル結合を有し、ポリマー末端または側鎖にはカルボキシル基あるいはカルボン基を有するポリマーである。
【0039】
より具体的には、カルボキシル基末端ポリエステルと、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基またはエポキシ基であるヒドロキシル反応基を有するアクリル化合物と、の反応物であり、例えば、エチレングリコールのような2価アルコールと、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびそれらの無水物のようなジカルボン酸または無水物と、から誘導されるカルボキシル基末端ポリエステル化合物と、ヒドロキシル反応基を有するアクリル化合物として、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、またはグリシジルアクリレートと、の反応により得ることができる。
【0040】
また、本発明のカルボン酸変性ポリエステルアクリレートの重量平均分子量が300〜1,500の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるカルボン酸変性ポリエステルアクリレートの重量平均分子量が300未満の値になると、硬化速度が過度に増大し、硬化塗膜の可撓性が低下する場合があるためである。一方、かかるカルボン酸変性ポリエステルアクリレートの重量平均分子量が1,500を超えると、硬化速度が過度に低下し、硬化塗膜としての耐久性を効果的に調整することが困難となる場合があるためである。
したがって、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートの重量平均分子量が500〜1,200の範囲内の値とすることがより好ましく、800〜1,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0041】
(2)配合量
また、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートの添加量を、重量平均分子量が500〜8,000であるポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、8〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートの添加量が8重量部未満の値となると、硬化速度が過度に増大し、爪に対する密着不良が起こしやすくなったり、取り扱いが困難となったりするためである。
一方、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートの添加量が30重量部を超えた値となると、硬化速度が過度に低下し、硬化塗膜としての耐久性を効果的に調整することが困難となる場合があるためである。
したがって、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートの添加量を、重量平均分子量が500〜8,000であるポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、10〜25重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、12〜20重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0042】
ここで、図2を参照して、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間および密着力に対するカルボン酸変性ポリエステルアクリレートの配合量の影響を説明する。
すなわち、図2の横軸に、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートの配合量(重量部)を採って示してあり、縦軸に、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間(sec)および密着力をそれぞれ採って示してある。
かかる図2に示す光硬化型マニキュア組成物の硬化時間を示す特性曲線Aから理解されるように、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートの配合量が多いほど、硬化時間が若干長くなる傾向を有している。より具体的に、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートの配合量が10重量部を超えると、硬化時間は約20secとなり、30重量部を超えると、硬化時間は約30secとなり、さらに40重量部を超えると、硬化時間は約40secと長くなっている。
一方、光硬化型マニキュア組成物の密着力を示す特性曲線Bから理解されるように、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートの配合量が0〜8重量部未満まで、急激に密着性の評価点が向上し、8〜25重量部の範囲での密着性の評価点が飽和し、30重量部を超えた値になると、密着性の評価点が著しく低下している。
よって、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間(硬化速度)および密着力の間のバランスがより良好となることから、上述したように、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートの添加量を、所定重量平均分子量のウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、8〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましく、10〜25重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0043】
4.(D)ポリオール化合物
(1)種類
また、本発明の光硬化型マニキュア組成物は、(D)成分として、非反応性であるポリオール化合物を含むことを特徴とする。
この理由は、所定量のポリオール化合物を用いることにより、所定の硬化速度を効果的に維持しつつも、硬化塗膜の可撓性をさらに向上させることができるばかりか、剥離性を容易にすることができるためである。
【0044】
より具体的には、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ゴム類等が挙げられる。
この中でも、極性を有し、メタクリレートモノマーとの適当な溶解性を示すことから、ポリウレタンポリオールおよびポリエステルポリオールが好ましい。
特に、重量平均分子量が250〜10,000であるポリウレタンポリオールおよびポリエステルポリオールは、メタクリレートモノマーとの溶解性が適当であって、硬化速度を効果的に維持しつつも、硬化塗膜の可撓性をさらに向上させることができるばかりか、剥離性を容易にすることができることから、好ましいポリオール化合物である。
なお、本願発明において、ポリウレタンポリオールとは、1分子中にウレタン結合を有するポリオールであって、多価アルコールとポリイソシアネート化合物との重合反応によって得られる化合物等を示す。
また、ポリエステルポリオールとは、多価アルコールと多塩基性カルボン酸との縮合反応や多価アルコールとヒドロキシカルボン酸との縮合反応によって得られる化合物、または、ポリカフロラクトン等を付加重合することによって得られる化合物を示す。
【0045】
(2)配合量
また、ポリオール化合物の添加量を、重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、3〜15重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、ポリオール化合物の添加量が3重量部未満の値となると、硬化塗膜としての可撓性および剥離性が低下しやすくなったり、取り扱いが困難となったりするためである。
一方、ポリオール化合物の添加量が15重量部を超えた値となると、硬化速度が過度に低下し、ブロッキングが起こしやすくなって、硬化塗膜としての耐久性を効果的に調整することが困難となる場合があるためである。
したがって、ポリオール化合物の添加量を、重量平均分子量が500〜8,000であるポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、6〜12重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、8〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
ここで、図3を参照して、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間(sec)および密着力に対するポリオール化合物の配合量の影響を説明する。
すなわち、図3の横軸に、ポリオール化合物(ポリウレタンポリオール)の配合量(重量部)を採って示してあり、縦軸に、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間および密着力をそれぞれ採って示してある。
かかる図3に示す光硬化型マニキュア組成物の硬化時間を示す特性曲線Aから理解されるように、ポリオール化合物の配合量が多い程、硬化時間が長くなる傾向を有している。
より具体的には、ポリオール化合物の配合量が3重量部になると、硬化時間は約20secとなり、10重量部になると、硬化時間は約40secとなり、15重量部になると、硬化時間は約50secとなり、20重量部になると、硬化時間は約70sec以上となっている。
一方、かかる図3に示す光硬化型マニキュア組成物の密着力を示す特性曲線Bから理解されるように、ポリオール化合物の配合量が3重量部を超えると、密着性の評価点が向上し、5〜15重量部程度で、密着性の評価点が飽和し、さらに、20重量部を超えると、密着性の評価点が著しく低下する傾向がある。
よって、光硬化型マニキュア組成物の硬化時間(硬化速度)および密着力の間のバランスがより良好となることから、上述したように、ポリオール化合物の添加量を、所定重量平均分子量のウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、3〜15重量部の範囲内の値とすることが好ましく、5〜13重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0047】
5.(E)光重合開始剤
(1)種類
(E)成分として、所定量の光重合開始剤を含有する。
かかる光重合開始剤は、紫外線により、ラジカルを発生し、そのラジカルがウレタンアクリレートオリゴマーや、メタアクリレートモノマーを重合反応させるものであればよい。
このような光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンジルジメチルケタール系化合物;オリゴ〔2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノン〕、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン系合物; 2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェ二ル)−ブタノン−1等のα−アミノケトン系化合物; ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系化合物;1−〔4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オン等のケトスルフォン系化合物; ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のメタロセン系化合物; 2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン−メソクロライド等のチオキサントン系化合物などが挙げられる。
【0048】
また、上述した光重合開始剤の中でも、フェニル基を有するアシルフォスフィンオキサイド系化合物、ケトスルフォン系化合物、α−ヒドロキシケトン系化合物は紫外線によりラジカルを発生し、そのラジカルが光重合オリゴマーおよび光重合モノマー混合物と効率的に反応することにより硬化反応が促進される。
【0049】
また、チオキサントン系化合物などの水素を引き抜いてラジカルを生成するものは、水素供与体と組合せることによって硬化反応が促進される。
水素供与体としては、例えば、メルカプト化合物およびアミン化合物等が挙げられ、中でもアミン化合物が好ましい。アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノエチルアクリレート、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ペンチル4−ジメチルアミノベンゾエート等が挙げられる。
【0050】
また、光重合開始剤は、少なくとも2種類以上を混合使用することが好ましい。
特に、硬化速度や耐候性が適当であって、硬化塗膜としての耐久性を効果的に調整することができることから、アシルフォスフィンオキサイド系化合物に、α−ヒドロキシケトン系化合物を混合して使用することが好ましい。
なお、顔料等を含有させず、着色顔料を使用しない、無色(クリア)の光硬化型マニキュア組成物として構成する場合には、光硬化塗膜の着色の影響を回避するため、光重合開始剤としてα−ヒドロキシケトン系化合物のみを使用することが好ましい。
【0051】
(2)配合量
また、光重合開始剤の添加量は、重量平均分子量が500〜8,000であるポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましく、3〜28重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、6〜25重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、光重合開始剤の添加量が1重量未満の値となると、硬化速度が過度に低下し、硬化塗膜としての耐久性が低下する場合があるためである。
一方、光重合開始剤の添加量が30重量部を超えた値となると、硬化速度が過度に増大し、爪に対する密着不良を起こしやすくなったり、取り扱いが困難になったりするためである。
【0052】
6.(F)着色剤
また、光硬化型マニキュア組成物を構成するにあたり、(F)成分である着色剤として、無機系着色顔料、有機系着色顔料、有機色素、パール顔料、ラメ色剤等を添加することが好ましい。
すなわち、好ましい顔料として、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、クナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料の有機系着色顔料等およびチタン系顔料、カーボンブラック系顔料等の無機系着色顔料等が挙げられる。
また、パール顔料としては、魚鱗箔等の天然パールおよび金属酸化物被覆雲母系、酸塩化ビスマス系、塩基性炭酸鉛等の合成パール顔料等が挙げられる。
また、ラメ色剤としては、細かい溝を有する合成樹脂フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムと蒸着金属およびバインダー樹脂、例えばエポキシ樹脂で積層にして細かく裁断したもの等が挙げられる。
また、顔料の添加量は、光硬化速度を阻害させず、本発明の目的を低下させない範囲で決められ、通常、重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、0.1〜30重量部の範囲で使用される。
【0053】
7.(G)添加剤
また、光硬化型マニキュア組成物中に、硬化塗膜の色調整のために、増白剤(ブルーイング剤)を所定量配合することが好ましい。
具体的には、群青、コバルトブルー、酸化燐酸コバルト、キナクリドン系顔料等の一種単独、または二種以上の混合物を、重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して、0.001〜2重量部の範囲で配合することが好ましい。
さらに、光硬化型マニキュア組成物の中に、粘性および塗布適性を調整する目的で、(G)成分として、消泡剤、レベリング剤、顔料湿潤剤、分散剤、流動調整剤、熱重合禁止剤、酸化重合防止剤等の少なくとも一つを添加使用することができる。
【0054】
8.皮膚毒性指数(PII値:Primary Irritation Index)
また、本発明の光硬化型マニキュア組成物は、PII値が0または0.1以下であることを特徴とする。
この理由は、PII値が0または0.1以下にすることにより、爪および周囲の皮膚に対する刺激性を自質的に無くすることができるためである。
なお、測定方法は、実施例にて詳述する。
【0055】
9.吸水率
光硬化型マニキュア組成物の硬化物として、吸水率を、全体量に対して1重量%以下の値とすることを特徴とする。
この理由は、吸水率を所定範囲に調整することによって、硬化塗膜の光沢が低下することなく、耐水性、耐温水性、耐石鹸性等の耐久特性を向上させることができるためである。
すなわち、吸水率が全体量に対して1重量%以上の値となると、耐水性、耐温水性、耐石鹸性等が過度に低下し、硬化塗膜としての耐久性を効果的に調整することが困難となる場合があるためである。
【0056】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、光硬化型マニキュア組成物を用いてなるマニキュア方法であって、下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とするマニキュア方法である。
(1)下記(A)〜(E)成分を含有する光硬化型マニキュア組成物を準備する工程
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(D)3〜15重量部のポリオール化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
(2)光硬化型マニキュア組成物を塗布する工程
(3)塗布した光硬化型マニキュア組成物を光硬化させて、マニキュア層を形成する工程
以下、図4および図5を参照しつつ、本発明の第2の実施形態のマニキュア方法について、詳細に説明する。
【0057】
1.準備工程
図4(a)および図5(a)に示すように、マニキュア層を形成する基材としての指10´の爪10を準備する。
その際、指10´の爪10の表面が汚れているような場合には、事前に、アルコール脱脂等することが好ましい。
また、かかる塗布層を形成する基材は、通常、自爪であるが、ABS、アクリルシート等の合成プラスチック製基材であっても良い。
すなわち、ABSシート等の合成プラスチック製基材を使用して、本発明の光硬化型マニキュア組成物を用いて、ネイルマニキュア層を形成することにより、人工爪やつけ爪として構成することも可能である。
【0058】
一方、第1の実施形態における光硬化型マニキュア組成物を準備する。すなわち、かかる光硬化型マニキュア組成物は、公知の混合方法によって準備することができる。例えば、配合成分につき、プロペラミキサー、プラネタリーミキサー、ボールミル、ジェットミル、三本ローラー、ニーダー等の各種混合装置を用いて均一に混合することにより、光硬化型マニキュア組成物を作成することができる。
【0059】
2.塗布工程
次いで、図4(b)に示すように、光硬化型マニキュア組成物12´を、基材(爪)10の上に塗布する。
ここで、光硬化型マニキュア組成物の基材(爪)に対する塗布方法についても特に制限されるものではないが、例えば、はけ、ブラシ、ヘラ、ローラー、スポイト等を用いることができる。
また、かかる塗布層の厚さは、デザインにもよるが、通常10μm〜5mmの範囲内の値とすることが好ましく、30μm〜3mmの範囲内の値とすることがより好ましく、50μm〜2mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0060】
3.光硬化工程
次いで、図4(c)等に示すように、光硬化型マニキュア組成物12´に対して、照射装置14から、所定量の放射線(紫外線)14aを照射して、光硬化させ、所定のマニキュア層12を、基材(爪)10の上に形成する。
そして、図5(c)や図5(d)に示すように、多層構造からなるマニキュア層20、20´を形成する場合、図5(a)に示す基材10に対して、繰り返し、塗布行程と、光硬化工程を繰り返せば良い。
【0061】
ここで、一つの塗布層からマニキュア層を形成する場合、照射量を300〜800mJ/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
一方、多層構造、例えば、図5(c)に示すように、二つのマニキュア層12、16から多層構造のマニキュア層20´を形成する場合、第1の照射量を300〜800mJ/cm2の範囲内の値とし、第2の照射量を300〜800mJ/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
また、図5(d)に示すように、三つのマニキュア層12、16、18から多層構造のマニキュア層20を形成する場合、第1の照射量を300〜800mJ/cm2の範囲内の値とし、第2の照射量を300〜800mJ/cm2の範囲内の値とし、第3の照射量を300〜800mJ/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
すなわち、塗布層の数にかかわらず、層ごとに、同程度の照射量とすることが好ましい。
【0062】
そして、図5(a)〜(d)に示すように、多層構造のマニキュア層20を形成する場合、例えば、下地層、中間層、保護層の組み合わせや、下地層、装飾層、加飾層の組み合わせから構成することも好ましい。
より具体的には、下地層、中間層、保護層の組み合わせからなる多層構造のマニキュア層20を形成する場合、基材10に対して、クリアな光硬化型マニキュア組成物を塗布した後、紫外線照射によって、第1のマニキュア層として、厚さ100〜1000μmのクリアな下地層12を形成する。
次いで、第1のマニキュア層であるクリアな下地層12の上に、カラー光硬化型マニキュア組成物を塗布した後、さらに、所定量の紫外線照射を行い、第2のマニキュア層である厚さ100〜1000μmのカラー中間層16を形成する。
さらに、第2のマニキュア層であるカラー中間層16の上に、クリアな光硬化型マニキュア組成物を塗布した後、さらに、所定量の紫外線照射を行い、第3のマニキュア層である厚さ100〜1000μmのクリアな保護層18を形成する。
よって、多層構造のマニキュア層20において、下地層12によって、基材10である爪に対する密着性にも優れ、中間層16によって、優れた装飾性が得られ、さらに、保護層18によって、中間層16等の耐久性をさらに高めることができる。
【0063】
3.光硬化工程
また、光硬化工程は、塗布層に、所定波長の放射線を照射して、光硬化型マニキュア組成物を硬化させる工程である。
ここで、一つの塗布層からマニキュア層を形成する場合、照射量を300〜800mJ/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
一方、二つの塗布層からマニキュア層を形成する場合、第1の照射量を300〜800mJ/cm2の範囲内の値とし、第2の照射量を300〜800mJ/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
すなわち、塗布層の数にかかわらず、層ごとに、同程度の照射量とすることが好ましい。
【0064】
4.その他
また、第2の実施形態のマニキュア方法を実施するに際して、工程(3)によって第1のマニキュア層を形成した後に、下記工程(4´)を含んで、ポリオール化合物を含まないカラーマニキュア層である第3のマニキュア層を形成することが好ましい。
(4´)下記(A)〜(C)成分、(E)成分、および(F)成分を含有するカラー光硬化型マニキュア組成物からなる第3のマニキュア層を、光硬化によって形成する工程
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
(F)0.1〜30重量部のカラー充填剤
この理由は、このように実施することによって、装飾性や視覚性に優れるとともに、基材との間の密着性についても優れたカラーマニキュアを得ることができるためである。
【0065】
また、工程(3)によって、第1のマニキュア層を形成した後、下記工程(4´´)を含んで、ポリオール化合物を含まないクリアな第4のマニキュア層を最表面に形成することも好ましい。
(4´´)下記(A)〜(C)成分、および(E)成分を含有する光硬化型マニキュア組成物からなる第4のマニキュア層を、光硬化によって形成する工程
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
この理由は、このように実施することによって、より密着性や耐久性に優れるばかりか、つややかなクリア層を最表面に備えた多層のカラーマニキュアが効率的に得られるためである。
【0066】
なお、第4のマニキュア層と、第1のマニキュア層との間に、上述した第2のマニキュア層および第3のマニキュア層、あるいはいずれか一方を備えることも好ましい。
すなわち、上述した工程(3)によって第1のマニキュア層を形成した後に、工程(4)を実施して第2のマニキュア層を形成し、さらに、工程(4´)を実施して、第3のマニキュア層を形成し、その上に、工程(4´´)によって、第4のマニキュア層を最表面に形成することも好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を、実施例に基づいて詳細に説明するが、特に理由なく、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
[実施例1]
1.光硬化型マニキュア組成物の作成
撹拌装置を備えた容器内に、下記(A)〜(E)成分等を、以下の配合割合(重量部基準)となるように収容した後、撹拌装置を用いて、均一になるまで混合し、クリア(透明色)な光硬化型マニキュア組成物(配合例1)とした。
(A1)ポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー:100重量部
(重量平均分子量3,500)
(A2)ポリエステル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー:16重量部
(重量平均分子量18,000)
(B1)2−ヒドロキシエチルメタクリレート :16重量部
(B2)2−ヒドロキシプロピルメタクリレート :32重量部
(C)カルボン酸変性ポリエステルアクリレート :16重量部
(重量平均分子量900)
(D)ポリウレタンポリオール(重量平均分子量320) :8重量部
(E1)光重合開始剤1 :8重量部
(E2)光重合開始剤2 :2重量部
(G)シリコーン系レベリング剤 :2重量部
【0069】
なお、上述した光重合開始剤1および2の詳細は、以下に示す通りである。
(光重合開始剤1)
化学名:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
商品名:Ciba(株)製、ダロキュア1173
(光重合開始剤2)
化学名:ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド
/アシルフォスフィンオキサイド系化合物
商品名:BASF(株)製、ルシリンTPO
【0070】
2.光硬化型マニキュア組成物の評価
次いで、得られた光硬化型マニキュア組成物につき、以下に示す光硬化性等についての評価を行った。
【0071】
(1)光硬化性
基材としての爪に、下記条件にて、光硬化型マニキュア組成物を刷毛にて塗布した後、ネイルマニキュア専用UV装置を使用して、下記硬化条件にて硬化させて、光硬化型マニキュア組成物の光硬化性を評価した。
すなわち、得られた硬化塗膜につき、塗膜同士を30回擦り合わせて、その塗膜の外観変化を、以下の基準に照らして、光硬化型マニキュア組成物の光硬化性を評価した。
【0072】
(塗布条件)
粘度 :約200dPa・s(測定温度:25℃)
刷毛 :マニキュア専用刷毛
硬化皮膜厚さ:約0.1〜1mm
【0073】
(硬化条件)
照射装置:ネイルマニキュア専用UV装置
照射時間:60秒
照射量 :300〜400 mJ/cm2
【0074】
◎:塗膜外観に変化がない。
○:塗膜外観に若干の剥離がみられる。
△:塗膜外観に一部の剥離および一部の白化がみられる。
×:塗膜外観の白化が大きく、全体的に剥離がみられる。
【0075】
(2)密着性
(1)光硬化性と同様の条件で得られた硬化塗膜(マニキュア層)につき、爪による引掻き試験を行うことにより、密着性を評価した。すなわち、得られた硬化塗膜を、爪にて30回引掻いて、その塗膜の外観変化を、以下の基準に照らして密着性を評価した。
◎:塗膜外観に変化がない。
○:塗膜外観に若干の剥離がみられる。
△:塗膜外観に一部の剥離および一部の白化がみられる。
×:塗膜外観の白化が大きく、全体的に剥離がみられる。
【0076】
(3)耐温水性
(1)光硬化性と同様の条件で得られた硬化塗膜(マニキュア層)につき、約25℃の温水で手洗いを行うことにより、耐温水性を評価した。すなわち、爪上で得られた硬化塗膜を、温水(約25℃)により、手洗いを行った後、タオル性素材により拭き取る試験を行うとともに、3日間の継続試験を行い、その塗膜の外観変化を、以下の基準に照らして評価した。
◎:3日以上経過しても、塗膜外観に変化が観察されない。
○:3日以内に、塗膜外観に若干の剥離が観察される。
△:1日以内に、塗膜外観に一部の剥離および一部の白化が観察される。
×:1日以内に、塗膜外観の全体的剥離および白化が観察される。
【0077】
(4)耐石鹸性
(1)光硬化性と同様の条件で得られた硬化塗膜(マニキュア層)につき、石鹸(ハンドソープ)を用いて、手洗いを行うことにより、耐石鹸性の評価を行った。すなわち、得られた硬化塗膜を、石鹸により手洗いを行った後、タオル性素材により拭き取る試験を行うとともに、3日間の継続試験を行い、その塗膜の外観変化を、以下の基準に照らして評価した。
◎:3日以上経過しても、塗膜外観に変化が観察されない。
○:3日以内に、塗膜外観に若干の剥離が観察される。
△:1日以内に、塗膜外観に一部の剥離および一部の白化が観察される。
×:1日以内に、塗膜外観の全体的剥離および白化が観察される。
【0078】
(5)剥離性
(1)光硬化性と同様の条件で得られた硬化塗膜(マニキュア層)につき、水とアセトンを用いて、硬化塗膜の剥離性の評価をした。
すなわち、得られた硬化塗膜を、水およびアセトンの混合液(重量比:50/50)を含んだ布を、硬化塗膜に巻き付けて軽く擦る様にして、剥離性を試験以下の基準に照らして評価した。
◎:15分未満で、硬化塗膜を剥離除去することができる。
○:15〜30分未満で硬化塗膜を剥離除去することができる。
△:30〜45分未満で硬化塗膜を剥離除去することができる。
×:45分以上であれば硬化塗膜を剥離除去できるか、あるいは45分以上であっても剥離除去することができない。
【0079】
(6)吸水率
(1)光硬化性と同様の条件で得られた硬化塗膜(マニキュア層)につき、JIS K−7209に準じて、吸水率の測定を行った。すなわち、ABS基材に対して、上述した硬化条件にて100mm×100mmのベタパッチパターンの印刷品を作成し、50℃、24時間乾燥した後、23℃、24時間水に浸漬した後の吸水率(%)を以下基準に照らして評価した。
◎:吸水率が1%未満である。
○:吸水率が1〜10%未満である。
△:吸水率が10〜20%未満である。
×:吸水率が20%以上である。
【0080】
(7)皮膚毒性指数(PII値:Primary Irritation Index)
また、得られた光硬化型マニキュア組成物につき、皮膚毒性指数(PII値:Primary Irritation Index)の測定を行った。
すなわち、試験動物として日本白色種ウサギの雄3匹を使用し、背部の除毛された健常皮膚部に光硬化型マニキュア組成物0.5mLを2.5×2.5cmのリント布に含浸させ、粘着性伸縮包帯を用いて接触させた。
次いで、貼付除去後、皮膚に残存した光硬化型マニキュア組成物は微温湯を用いてできる限り除き、皮膚反応の判定は貼付除去1、24、48および72時間後に行った。
最後に、貼付除去24および72時間の皮膚反応の評点を基に皮膚毒性指数(PII値:Primary Irritation Index)を算出し、以下の基準に照らして評価した。
◎:評点が0〜0.1であり、無刺激物である。
○:評点が0.2〜2であり、弱い刺激物である。
△:評点が2.1〜5であり、中程度刺激物である。
×:評点が5.1以上であり、強い刺激物である。
【0081】
[実施例2〜3および比較例1〜2]
実施例2〜3および比較例1〜2では、表1に示すように、ウレタンアクリレートオリゴマーの配合比を変えたほかは、実施例1と同様に、光硬化型マニキュア組成物を得るとともに、それを光硬化させて、光硬化性等を評価した。
【0082】
【表1】

【0083】
[実施例4〜5および比較例3〜4]
実施例4〜5および比較例3〜4では、表2に示すように、メタクリレートモノマーの配合比を変えたほかは、実施例1と同様に、光硬化型マニキュア組成物を得るとともに、それを光硬化させて、光硬化性等を評価した。
【0084】
【表2】

【0085】
[実施例6〜7および比較例5〜6]
実施例6〜7および比較例5〜6では、表3に示すように、カルボン酸エステルアクリレート化合物の配合比を変えたほかは、実施例1と同様に、光硬化型マニキュア組成物を得るとともに、それを光硬化させて、光硬化性等を評価した。
【0086】
【表3】

【0087】
[実施例8〜9および比較例7〜8]
実施例8〜9および比較例7〜8は、表4に示すように、ポリオール化合物の配合比を変えたほかは、実施例1と同様に、光硬化型マニキュア組成物を得るとともに、それを光硬化させて、光硬化性等を評価した。
【0088】
【表4】

【0089】
[実施例10〜13]
実施例10〜13では、表5に示すように、カラー充填剤を配合するとともに、その配合比を変えたほかは、実施例1と同様に、光硬化型マニキュア組成物を得るとともに、それを光硬化させて、光硬化性等を評価した。
なお、カラー充填剤を配合した配合比においては、光重合開始剤1および2を使用することが好ましい。
【0090】
【表5】

【0091】
[実施例14〜19]
実施例14〜19では、表6に示すように、複数の光硬化型マニキュア組成物を用いて、ネイルマニキュアを作成し、皮膚毒性指数評価を除いて、実施例1と同様に評価した。
すなわち、第1工程として、基材としての爪に、実施例1または2の光硬化型マニキュア組成物(クリア1または2)を厚さ100〜1000μmとなるように塗布した後、上述した照射条件にて光硬化させ、第1層としてのマニキュア層を形成した。
次いで、第2工程として、第1層としてのマニキュア層の上に、実施例10または11のカラー光硬化型マニキュア組成物(赤色1または2)を厚さ100〜1000μmとなるように塗布した後、上述した照射条件にて光硬化させ、第2層としてのカラーマニキュア層を形成した。
次いで、第3工程として、第2層としてのカラーマニキュア層の上に、実施例10または11のカラー光硬化型マニキュア組成物(赤色1または2)を厚さ100〜1000μmとなるように塗布した後、上述した照射条件にて光硬化させ、第3層としてのカラーマニキュア層を形成した。
最後に、第4工程として、第3層としてのカラーマニキュア層の上に、仕上げの艶だしのために、実施例1、または実施例8の改良光硬化型マニキュア組成物(クリア1またはクリア3)を厚さ100〜1000μmとなるように塗布した後、上述した照射条件にて光硬化させ、第4層としてのマニキュア層を最表面に形成し、多層構造のネイルマニキュアとして、皮膚毒性指数評価を除いて、実施例1と同様に評価した。
なお、クリア3は、実施例8の光硬化型マニキュア組成物から、ポリウレタンポリオールを除くとともに、A2のウレタンアクリレートオリゴマーの配合量を、16重量部から20重量部に増加させた以外は同一である。
【0092】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の光硬化型マニキュア組成物によれば、所定のウレタンアクリレートオリゴマーと、メタクリレートモノマーと、カルボン酸変性ポリエステルアクリレートと、ポリオール化合物と、光重合開始剤とを、所定比で配合することにより、所定の硬化速度を維持しながら、マニキュア使用中における密着性や耐久性と、使用後における剥離性という相反しやすい特性をそれぞれ満足できるようになった。
特に、使用後における剥離の際に、単層構造のマニキュア層はもちろんのこと、多層構造のマニキュア層であっても、単層のフィルムのように剥離できることから、極めて剥離処理が容易になるとともに、短時間で剥離処理することができるようになった。
また、所定構成からなる光硬化型マニキュア組成物の皮膚毒性指数(PII値:Primary Irritation Index)は0または0.1以下であった。
すなわち、爪および周囲の皮膚に対する刺激性の低い光硬化型マニキュア組成物を提供することができるとともに、それを使用して形成されたネイルマニキュアからは、密着性、耐温水性、および耐石鹸性等の耐久性に優れた物性を得ることができるようになった。
したがって、本発明の光硬化型マニキュア組成物およびそれを用いたマニキュア方法は、自然爪のみならず、人工爪やつけ爪においても好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0094】
10:基材(爪)
10´:指
12:第1のマニキュア層(下地層)
12´:光硬化型マニキュア組成物の塗布層
14:光照射装置
14a:放射線(紫外線)
16:第2のマニキュア層(中間層)
18:第3のマニキュア層(保護層)
20:多層構造(3層)のマニキュア層
20´:多層構造(2層)のマニキュア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(E)成分を含有することを特徴とする光硬化型マニキュア組成物。
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(D)3〜15重量部のポリオール化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
【請求項2】
前記(A)成分のウレタンアクリレートオリゴマーを第1のオリゴマーとした場合に、
当該第1のオリゴマー100重量部に対して、第2のオリゴマーとして、重量平均分子量が10,000〜25,000であるウレタンアクリレートオリゴマーを5〜25重量部の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の光硬化型マニキュア組成物。
【請求項3】
前記(B)成分のメタクリレートモノマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレートモノマーおよび2−ヒドロキシプロピルメタクリレートモノマー、あるいはいずれか一方のメタクリレートモノマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の光硬化型マニキュア組成物。
【請求項4】
前記(C)成分のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物の重量平均分子量を300〜1,500の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光硬化型マニキュア組成物。
【請求項5】
前記(D)成分のポリオール化合物が、ポリウレタンポリオールまたはポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化型マニキュア組成物。
【請求項6】
皮膚毒性指数(PII値:Primary Irritation Index)を0.1以下の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光硬化型マニキュア組成物。
【請求項7】
光硬化型マニキュア組成物を用いてなるマニキュア方法であって、下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とするマニキュア方法。
(1)下記(A)〜(E)成分を含有する光硬化型マニキュア組成物を準備する工程
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(D)3〜15重量部のポリオール化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
(2)前記光硬化型マニキュア組成物を塗布する工程
(3)塗布した光硬化型マニキュア組成物を光硬化させて、マニキュア層を形成する工程
【請求項8】
前記工程(3)によって、前記第1のマニキュア層を形成した後、下記工程(4)を含んで、第2のマニキュア層を形成することを特徴とする請求項7に記載のマニキュア方法。
(4)下記(A)〜(E)成分および(F)成分を含有するカラー光硬化型マニキュア組成物からなる第2のマニキュア層を、光硬化によって形成する工程
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(D)3〜15重量部のポリオール化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
(F)0.1〜30重量部のカラー充填剤
【請求項9】
前記工程(3)によって、前記第1のマニキュア層を形成した後、下記工程(4´)を含んで、第3のマニキュア層を形成することを特徴とする請求項7に記載のマニキュア方法。
(4´)下記(A)〜(C)成分、(E)成分、および(F)成分を含有するカラー光硬化型マニキュア組成物からなる第3のマニキュア層を、光硬化によって形成する工程
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤
(F)0.1〜30重量部のカラー充填剤
【請求項10】
前記工程(3)によって、前記第1のマニキュア層を形成した後、下記工程(4´´)を含んで、第4のマニキュア層を最表面に形成することを特徴とする請求項7に記載のマニキュア方法。
(4´´)下記(A)〜(C)成分、および(E)成分を含有する光硬化型マニキュア組成物からなる第4のマニキュア層を、光硬化によって形成する工程
(A)重量平均分子量が500〜8,000であるウレタンアクリレートオリゴマー100重量部
(B)10〜60重量部のメタクリレートモノマー
(C)8〜30重量部のカルボン酸変性ポリエステルアクリレート化合物
(E)1〜30重量部の光重合開始剤

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−20956(P2011−20956A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167453(P2009−167453)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(392008024)十条ケミカル株式会社 (10)
【Fターム(参考)】