説明

光硬化型整形外科用固定材

【課題】可視光線により、短時間で必要な強度が得られる光硬化型の整形外科用固定材の提供。
【解決手段】イソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネートと活性水素基を有する(メタ)アクリル酸誘導体によって得られるウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマーと、400〜700nmの光を吸収する光重合開始剤を含む光硬化型樹脂を用意する。この光硬化型樹脂4を基材3に保持させて支持材5とする。この支持材5の内側を緩衝材6で、外側をカバー材2で覆い、整形外科用固定材であるスプリント材1を得る。緩衝材6側を患部に当て、その上から包帯を巻いて可視光を照射しながらモールディングをする。硬化が進むとスプリントが出来て、患部を固定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野、スポーツ分野などにおいて、治療又は保護の目的で患部を固定又は支持するスプリント、キャスト、ステーなどを形成するための整形外科用固定材に関する。特に、人や動物の骨折、捻挫、矯正などの治療や予防に、またスポーツ等において転倒、衝撃などから身体を保護するための整形外科用固定材に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折の治療あるいはその他身体の固定に使用される外科用包帯としては、焼石膏をガーゼなどの繊維基材に保持させたものが古くから使用されている。しかしこの外科用包帯は、重いこと、強度が不足すること、水に弱いこと、X線を通さないなどの欠点があった。
【0003】
この問題を解決する方法として、水硬化型のウレタンプレポリマーをガラス繊維等の織物や編物の基材に含浸させたものが、整形外科用固定材として使用されている。また、こうした水硬化型樹脂を基材に保持させたものを被覆材で包んだスプリント材も、使用されるようになった。
これらの水硬化型樹脂を用いた整形外科用固定材は、水にも強く、強度も大きい。また、この固定材を着けたままでレントゲン撮影も可能なところから、広く受け入れられて来た。
しかし、いずれもバケツに溜めた水等に全体を浸けることによって、水硬化型樹脂に対して水を充分に接触させ、硬化反応が円滑に進むようにする必要がある。従って、水の無いところでは使用できないという不便さがある。また、キャスト材では下巻き材が、スプリント材では肌側のカバー材が、水で濡れるために適用した患部が湿って不快感をもたらすことがある。また、手術直後に固定したい場合は、無菌的に使用できない場合もある。
【0004】
その一方で、光硬化型樹脂をガラス繊維等の織布に含浸させ、これを光によって硬化させようとするものも古くから提案されている。こうした光硬化型樹脂としては、当初、紫外線硬化型の樹脂が提案された(特許文献1)。次いで可視光硬化型の樹脂が提案されている。(特許文献2)
【0005】
こうした種々の提案にも拘わらず、光硬化型樹脂を用いた整形外科固定材は次のような理由から実質的には使用されていない。これらの光硬化型樹脂組成物は、硬化する時に強い光や長時間の照射が必要であり、照射装置も大型のものが必要になる場合があった。また光重合開始剤を比較的多量に使用する必要があった。さらに、これらの樹脂組成物の成分には臭気の強いものや、皮膚刺激性が強くて適当でないものもある。また、貯蔵安定性も十分でなく、強度が十分でないなどの問題もあった。
そして、光硬化におけるラジカル重合の問題点として空気中の酸素による重合阻害があり、硬化物表面に未反応物が残ってベタつきがあることも支障となっている。
【0006】
これまでの可視光硬化型の整形外科用の固定材には、ウレタン(メタ)アクリレートを用いたものがある。これはポリオールとイソシアネートから誘導されるウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを付加して得られるウレタン(メタ)アクリレートである。
また、可視光硬化型の光硬化型樹脂に使用されている光重合開始剤は、カンファキノンを含むものが用いられている。
【0007】
整形外科用固定材は、患部を固定するため、硬化物は強い強度と硬さが必要である。そのために多層に重ねたものを硬化する必要があり、さらに空気中で硬化させる必要がある。また、光硬化型樹脂は、酸素による重合阻害を受けても必要な性能が得られる組成とすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭48−6116号
【特許文献2】特開平4−8367号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記したような欠点が無く、可視光線を当てるだけで、短時間で必要な強度が得られ、不快な臭気も少なくて、使い易く、また製造も容易な光硬化型の整形外科用固定材を得ようとするものである。
そして、出願人は先に、イソシアネート基を2つ有するジイソシアネート化合物とアクリル酸エステルから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、400〜700nmの光を吸収する光重合開始剤を含む光硬化型樹脂を基材に保持させた光硬化型の整形外科用固定材を提供した(WO2006/090605)。
本発明は、出願人が先に提供した上記のものを更に改良し、比較的に短い時間の内に充分な硬化状態が得られるというような特性を有するものにしようとするものである。
【0010】
本発明者らは、上述した問題点を解決するため鋭意研究を行った結果、イソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート(以下、ポリイソシアネートという)と活性水素基を有する(メタ)アクリル酸誘導体によって得られるウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマーと、400〜700nmの光を吸収する光重合開始剤を含む光硬化型樹脂を基材に保持させることによって、上記した所望の光硬化型の整形外科用固定材を得ることができる。
上記ウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマーは、下記式Iで表すことができる。
(化1)

A(―NH―CO―X―Y)p (I)

式I中の、Aはポリイソシアネート残基、XはO,S,NRであり(Rは水素またはC1〜8のアルキル基)、Yは活性水素基を有する(メタ)アクリル酸誘導体残基、pは3以上の整数を示している。
【0011】
上記式Iの化合物として上記式IのYの少なくとも40モル%が、式IIで表される活性水素基であるヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートであるものが好適に使用することができる。
【化2】

(上記式II中、R1〜R6はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す)
【0012】
また、上記光重合開始剤には、下記式IIIで表されるビスアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤を使用することで、良好な光硬化型の整形外科用固定材を得ることができる。
【化3】

(上記式III中、R15は、直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基、シクロアルキル基、直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基又はハロゲン原子が置換していてもよいアリール基を示す。R16およびR17は、同一又は異なって水素原子、直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基または直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルコキシ基を示す。R18およびR19は、同一又は異なって水素原子または直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基を示す。)
【0013】
更に、上記式IIIの光重合開始剤を、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドとすることで、更に好ましい光硬化型の整形外科用固定材を得ることができる。
【0014】
また、上記光重合開始剤には、下記式IVで表されるチタノセン系光重合開始剤を用いることができる。
【化4】

(上記式IV中、R21、R22は、それぞれ独立に水素原子、メチル基を、R23は弗素原子、−CF3又は−CF2CH3を表わす。R24、R25、R26およびR27は、それぞれ独立に水素原子、弗素原子、−CF3、−CF2CH3、C1〜C12のアルキル基又はアルコキシ基、6員の炭素環式芳香族基或いは5もしくは6員の複素環式芳香族基を表わす。)
【0015】
更に、上記式IVの光重合開始剤として、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニル)チタニウムを用いることによって、好ましい光硬化型の整形外科用固定材を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記したように、可視光を当てることによって、短時間で、必要な強度を持った光硬化型整形外科用固定材を得ることができる。また、室内の天井からの通常の照明程度の光の下では、2分程度の可使時間(整形外科用固定材を患部に成形可能に適用できる時間)がある。従って、この固定材を患部に適用する場合にも、上記の可使時間を使って的確な固定をすることができる。
また、硬化の際に水を使用しないので、施術時に水による汚れも見られず、水が容易に準備できない災害地、砂漠などのような場所での骨折治療等においても、可視光によって有効に使用することができる。特に、手術後に無菌状態で固定機能を要求されるケースでは、水を使うことによる汚染防止ができるため有効である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例を示す一部切欠き斜視図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す一部切欠き斜視図である。
【図3】本発明の曲げ強度試験についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
上記ウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマーは、イソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネートと活性水素基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の反応によって得られる。
本発明で用いられるポリイソシアネートにおいて芳香族トリイソシアネートとしては、例えば、1,3,5−トリイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタントリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオホスファイト、4,4’−ジフェニルメタントリイソシアネート、ジイソシアナト−メチルベンジル−シクロヘキシル−イソシアネート、トリイソシアナト−メチル−ジフェニルメタン、トリメチロールプロパンと2,4−トルイレンジイソシアネートとのアダクト体などがある。
また、上記したトリイソシアネート化合物の多量体であるポリイソシアネート化合物、このポリイソシアネート化合物と、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリストール等の多価アルコールとを反応させて得られる変性ポリイソシアネート化合物、並びに上記ポリイソシアネート化合物にポリエチレングリコール等のノニオン性の親水基を導入した水分散性変性ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0019】
更に、芳香族ポリイソシアネートとして、例えば、ポリメリックMDI、トリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリレンジイソシアネートの三量体などがある。
【0020】
また、脂肪族トリイソシアネートとして、例えば、ビシクロヘプタントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート(2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアナートカプロエートなど)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチロールプロパンと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとのアダクト体、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタンなどがある。
また、上記トリイソシアネート化合物の多量体であるポリイソシアネート化合物、上記ポリイソシアネート化合物と、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリストール等の多価アルコールとを反応させて得られる変性ポリイソシアネート化合物、並びに上記ポリイソシアネート化合物にポリエチレングリコール等のノニオン性の親水基を導入した水分散性変性ポリイソシアネート化合物などを挙げることができる。
【0021】
そして、脂環式トリイソシアネートとして、例えば、1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、(ビシクロヘプタントリイソシアネート)、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,6−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、3−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2,2,1)−ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタンなどがある。
【0022】
また、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネートなどのアリール脂肪族ジイソシアネートなどのジイソシアネート、または、上記トリイソシアネートなどのイソシアネート基同士を結合して環化二量化したウレトジオン構造を有するポリイソシアネートがある。
更に、上記した各種のジイソシアネートもしくはトリイソシアネートのイソシアネート基同士を結合して環化三量化したイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート、前記した各種のジイソシアネートもしくはトリイソシアネートを水と反応させることにより得られるビュレット構造を有するポリイソシアネート、前記した各種のジイソシアネートもしくはトリイソシアネートを二酸化炭素と反応させることにより得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート、アロファネート構造を有するポリイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
上記したポリイソシアネートは、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。また、こうしたポリイソシアネートとジイソシアネートを組み合わせて用いることができる。
好ましいのは脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートであり、また、これらと脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートの組合せである。併用するジイソシアネートとして特に好ましいのはヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0024】
本発明で用いられる上記活性水素基を有する(メタ)アクリル酸誘導体において、活性水素基としては、イソシアネート基と反応することができるヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基などがあり、(メタ)アクリル酸誘導体としては(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミドなどがある。
【0025】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどがある。
【0026】
また、グリシジル基又はエポキシ基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により生成する化合物などが挙げられる。このグリシジル基又はエポキシ基含有化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、2−メチルフェニルグリシジルエーテル、3−メチルフェニルグリシジルエーテル、4−メチルフェニルグリシジルエーテル、2,4−ジメチルフェニルグリシジルエーテル、2,6−ジメチルグリシジルエーテル、2,4,6−トリメチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどがある。
【0027】
これらの活性水素基を有する(メタ)アクリル酸誘導体は単独で又は二種以上を組合わせて使用できる。
好ましいヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートは、グリシジル基又はエポキシ基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により生成する化合物であり、特に好ましいのはフェニルグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加反応物である。
【0028】
アミノ基を有するアクリル酸エステルとしては、例えば、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、5−アミノペンチル(メタ)アクリレート、6−アミノヘキシル(メタ)アクリレート、2−アミノアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−アミノシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−メタクリロイロキシ−2−アミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;2−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、5−メチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、6−メチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルアミノアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−メチルアミノシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−メタクリロイロキシ−2−メチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどがある。
【0029】
メルカプト基を有するアクリル酸エステルとしては、例えば、2−メルカプトエチル(メタ)アクリレート、2−メルカプトプロピル(メタ)アクリレート、3−メルカプトプロピル(メタ)アクリレート、5−メルカプトペンチル(メタ)アクリレート、6−メルカプトヘキシル(メタ)アクリレート、2−メルカプトアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−メルカプトシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−メタクリロイロキシ−2−メルカプトプロピル(メタ)アクリレートなどのメルカプトアルキル(メタ)アクリレートなどがある。
【0030】
ヒドロキシル基を有するアクリルアミドとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリルアミド、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリルアミド、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリルアミド、3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドなどがある。
【0031】
アミノ基を有するアクリルアミドとしては、例えば、2−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、3−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、5−アミノペンチル(メタ)アクリルアミド、6−アミノヘキシル(メタ)アクリルアミド、2−アミノアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−アミノシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、3−メタクリロイロキシ-2-アミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;2−メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、3−メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、5−メチルアミノペンチル(メタ)アクリルアミド、6−メチルアミノヘキシル(メタ)アクリルアミド、4−メチルアミノシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、3−メタクリロイロキシ-2-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドなどがある。
【0032】
メルカプト基を有するアクリルアミドとしては、例えば、2−メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド、2−メルカプトプロピル(メタ)アクリルアミド、3−メルカプトプロピル(メタ)アクリルアミド、5−メルカプトペンチル(メタ)アクリルアミド、6−メルカプトヘキシル(メタ)アクリルアミド、4−メルカプトシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、3−メタクリロイロキシ-2-メルカプトプロピル(メタ)アクリルアミドなどのメルカプトアルキル(メタ)アクリルアミドなどがある。
【0033】
ウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマーは、活性水素基を有する(メタ)アクリル酸誘導体1当量(−NH基は1当量とする)に対して、イソシアネートを0.8〜1.2当量反応させることによって得られる。
【0034】
前記成分の反応方法は特に制限されず、通例、各成分を一括混合して20〜120℃で反応させることによって行うことができる。また、イソシアネートまたは活性水素基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の一方を分割して反応させることもできる。
こうしたウレタン化反応には、公知の金属触媒、アミン系触媒などを使用することができる。
【0035】
好ましいウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマーは、上記式IIのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートが、全ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートの40モル%以上含まれているものである。
【0036】
本光硬化型樹脂には、前記以外のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)と称する。)や、エチレン性不飽和化合物を併用することができる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)は、ポリイソシアネート、ポリオール、およびヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートをウレタン化反応することにより得ることができる。
【0037】
このウレタン化反応に使用するポリイソシアネートとしては、前述のジイソシアネートのほかこれらのカルボジイミド変性またはイソシアヌレート変性ポリイソシアネートなどが挙げられる。これらは単独または2種以上を組合せて用いることができる。
【0038】
上記ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの低分子ポリオール類がある。また、ハイドロキノン、ビスフェノールAなどのポリフェノール類;アニリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのアミン類;低分子ポリオール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルポリオール類がある。更に、低分子ポリオール類とアジピン酸、フタル酸などのジカルボン酸類との脱水縮合反応により得られるポリエステルポリオール類がある。また、γ−ブチルラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン類の開環重合によるポリラクトンポリオール;テトラヒドロフランの開環重合によるポリテトラメチレングリコールがある。ヒマシ油またはそのアルキレンオキサイド付加物;ブタジエン、イソプレンなどのジエン化合物の重合物であって末端にヒドロキシル基を有するポリジエンポリオール類またはその水添物などが挙げられる。これらは単独または2種以上を組合せて用いることができる。
【0039】
上記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、前述のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
上記したウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)は、前記成分を反応させることにより調製することができる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)を構成する各成分の割合は、例えば、ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO基)1当量に対して、ポリオール成分のヒドロキシル基(OH基)0.4〜0.8当量、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート0.2〜0.6当量程度である。
【0041】
また、前記成分の反応方法は、特に制限されない。通常、ポリイソシアネートとポリオール成分を反応させた後、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートをさらに反応させるとよい。
前記成分のウレタン化反応には、公知のウレタン化触媒(金属系触媒、アミン系触媒など)を用いることができる。
【0042】
上記エチレン性不飽和化合物には、単官能性化合物、二官能性化合物および多官能性化合物が含まれる。
【0043】
上記単官能性化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N,N′−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートがある。また、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、クミルフェノール(ポリ)アルキレン(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
上記二官能性化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)付加物のジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0045】
また、多官能性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリット酸、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0046】
これらのエチレン性不飽和化合物は、単独で又は二種以上を組合わせて使用できる。エチレン性不飽和化合物を用いる場合には、臭いや、皮膚刺激性などに留意して選択するとよい。
【0047】
このウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)やエチレン性不飽和化合物の使用量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーやエチレン性不飽和化合物の種類、樹脂組成物の所望する粘度などに応じて、例えば、上記式Iのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部に対して、50重量部以下、好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下の範囲から選択できる。
【0048】
本発明では、400〜700nmの光を吸収する光重合開始剤を用いるが、こうしたものとして、上記した式IIIで表されるビスアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤を使用することができる。
【化5】

(式III中、R15、は直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基、シクロアルキル基、直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基又はハロゲン原子が置換していてもよいアリール基を示す。R16およびR17は、同一又は異なって水素原子、直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基または直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルコキシ基を示す。R18およびR19は、同一又は異なって水素原子または直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基を示す)
【0049】
上記式IIIにおいて前記直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、2,4,4−トリメチルペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、2,4,4−トリメチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル基などが例示できる。
好ましいR15は、分枝鎖状C6-12アルキル基、特に分枝鎖状C6-10アルキル基である。
シクロアルキル基として、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などのC3-10シクロアルキル基があり、特にC5-10シクロアルキル基が挙げられる。
【0050】
前記アリール基には、フェニル、ナフチル基が含まれ、アリール基には直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基又はハロゲン原子が置換していてもよい。このC1-12アルキル基には、前述と同様のアルキル基が含まれ、通例、直鎖状又は分枝鎖状C1-4アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル基など)であることが好ましい。
ハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が含まれる。
【0051】
また、前記直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ基などが例示できる。好ましいアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状C1-4アルコキシ基である。更に、好ましいR15〜R19の置換基の組み合わせ例は次の通りである。
R15:C1-12アルキル基(特に分岐鎖状C6-12アルキル基)又はアリール基(特にフェニル基)、R16およびR17:C1-4アルキル基(特にC1-2アルキル基)又はC1-4アルコキシ基(特にC1-2アルコキシ基)、R18およびR19:水素原子又はC1-4アルキル基(特にメチル基)。
【0052】
このビスアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤としては、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどのビス(2,6−ジC1-2アルコキシベンゾイル)−分枝鎖状C6-12アルキルホスフィンオキシドがある。また、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)メチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)エチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)n−ブチルホスフィンオキシドなどのビス(2,4,6−トリC1-2アルキルベンゾイル)C1-6アルキルホスフィンオキシドがある。更に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどのビス(2,4,6−トリC1-2アルキルベンゾイル)アリールホスフィンオキシドなどが挙げられる。これらのビスアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤は、単独又は二種以上を組合わせて使用することができる。好ましくは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドである。
【0053】
更に、400〜700nmの光を吸収する光重合開始剤として、下記の式IVで表されるチタノセン系光重合開始剤、カンファキノンなどを用いることができる。
【化6】

(式IV中、R21、R22は、それぞれ独立に水素原子、メチル基を、R23は弗素原子、−CF3又は−CF2CH3を表わす。R24、R25、R26およびR27は、それぞれ独立に水素原子、弗素原子、−CF3、−CF2CH3、C1〜C12のアルキル基又はアルコキシ基、6員の炭素環式芳香族基或いは5もしくは6員の複素環式芳香族基を表わす。)
【0054】
上記チタノセン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)−ビスフェニルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(2−5−ジメチルピロール−1−イル)フェニル)チタニウムなどが挙げられる。これらのチタノセン系光重合開始剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。好ましいチタノセン系化合物は、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニル)チタニウムである。
【0055】
上記したビスアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、カンファキノンは、他の光重合開始剤(例えば、アセトフェノン系又はプロピオフェノン系光重合開始剤、ベンジル系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤など)と適宜に組み合わせて使用することもできる。
【0056】
上記アセトフェノン又はプロピオフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン又はその誘導体;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンのオリゴマーなどが挙げられる。
【0057】
上記ベンジル系光重合開始剤としては、ベンジル、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
また、ベンゾイン系光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0058】
上記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4′−メトキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0059】
また、上記チオキサントン系光重合開始剤としては、2−又は4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0060】
さらに、他の光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシエステル、3,6−ビス(2−モルホリノイソブチル)−9−ブチルカルバゾールなどが挙げられる。
【0061】
上記した光重合開始剤の使用量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部に対して、又はウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよびウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)、エチレン性不飽和化合物の総量の100重量部に対して、約0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜2重量部である。
【0062】
本発明における光硬化型樹脂においては、所望に応じて光増感剤をさらに配合することができる。
このような光増感剤としては、7−ジエチルアミノ−3−(2−ベンゾチアジル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(2−ベンズイミダゾリル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−ベンゾイルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−チアノイルクマリン、7−ジエチルアミノ−3,3′−カルボニルビスクマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−tert−ブチルジオキシカルボニルメトキシベンゾイル)クマリン、5,7−ジメトキシ−3−(4−tert−ブチルジオキシカルボニルメトキシベンゾイル)クマリンなどのクマリン誘導体がある。また、エオシン、エチルエオシン、エリスロシン、フルオレセイン、ローズベンガルなどのキサンテン系色素;トリアリールメタン系色素;メチン系色素;アゾ系色素;シアニン系色素;チオピリリウム塩;ジフェニルヨードニウム塩;2,6−ジエチル−1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメテン−BF2錯体、1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメテン−BF2錯体の様なピロメテン錯体がある。更に、1−(1−メチルナフト〔1,2−d〕チアゾール−2(1H)−イリデン−4−(2,3,6,7)テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ〔ij〕キノリジン−9−イル)−3−ブテン−2−オン、1−(3−メチルベンゾチアゾール−2(3H)−イリデン−4−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−ブテン−2−オンなどのケトチアゾリン系化合物;2−(p−ジメチルアミノスチリル)−ナフト〔1,2−d〕チアゾール、2−〔4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル〕−ナフト〔1,2−d〕チアゾールなどのスチリルまたはフェニルブタジエニル複素環化合物;2,4−ジフェニル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−((〔2,3,6,7〕テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ〔ij〕キノリジン−9−イル)−1−エテン−2−イル)−1,3,5−トリアゾンなどのトリアジン化合物がある。また、9−フェナンスリル−((〔2,3,6,7〕テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ〔ij〕キノリジン−9−イル)−1−エテン−2−イル)ケトン、2,5−ビス(p−ジメチルアミノシンナミリデン)シクロペンタノンなどのアミノフェニル不飽和ケトン化合物;5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリン、ヘマトポリフィリンなどのポリフィリン類などを挙げることができる。
【0063】
本発明の光硬化型樹脂組成物には、必要に応じて、光開始剤による光重合反応を促進するため、種々の光重合促進剤を添加してもよい。こうした光重合促進剤には、例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステルなどのジアルキルアミノ安息香酸又はその誘導体、トリフェニルホスフィンなどのアリールホスフィン、トリアルキルホスフィンなどのホスフィン系化合物などがある。これらの重合促進剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
重合促進剤の添加量は、ウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマー100重量部に対して、又はウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマーおよびウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)、エチレン性不飽和化合物の総量の100重量部に対して、約0.01〜10重量部程度の範囲から選択するとよい。
【0064】
本発明の光硬化型樹脂には、固定材の用途その他の必要に応じて、種々の添加剤などを添加することができる。こうした添加剤には、重合禁止剤(ハイドロキノン、メトキシハイドロキノンなど)、酸化防止剤、タックフリー化剤(シリコーンオイルなど)、チキソトロピー性付与剤(ひまし油脂肪酸アミド、ジベンジリデンソルビトールなど)、染料、顔料、シランカップリング剤、界面活性剤、着色顔料、有機または無機微粒子などがある。
【0065】
本発明の基材は、整形外科用固定材を形成するために光硬化型樹脂を保持するものである。こうした基材としては、各種の繊維を使用した織物、編物、不織布等が使用できる。その繊維としては、天然繊維(セルロース繊維、蛋白繊維等)、化学繊維(再生繊維、半合成繊維、合成繊維、無機繊維等)が使用でき、例えば、綿、毛、レーヨン、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、その他の繊維がある。通例、基材として、好ましくは引張弾性率が高いものがよく、少なくとも約800Mpa程度以上のものが適している。
この基材には、ガラス繊維、ポリエステル繊維の集合体(糸)を用いてラッセル編み等した編物が、特に好適に使用できる。
【0066】
本発明の光硬化型の整形外科用固定材を硬化する光源としては、上記した光重合開始剤の400〜700nmの吸収波長の光を出す光源であればよい。この光源に、例えば、一般家庭で使用している蛍光灯、ハロゲンランプ、クリプトンランプ、LEDなどの可視光の光源が使用できる。また、場合によってはブラックランプ、高圧水銀灯などの400nm以下の波長を出す光源を使用することもできる。
【0067】
本発明の整形外科用固定材について、その一態様であるスプリント材について図1を参照して以下に説明する。スプリント材1は、最外層(患部と反対側)にカバー材2を設け、その内側には基材3に光硬化型樹脂4を保持させた支持材5を位置させている。さらに、この支持材5の内側(支持材の患部側)に、緩衝材6を設けている。そして、上記カバー材2と緩衝材6によって支持材5を包むようにしている。場合によっては、上記カバー材2により緩衝材6と支持材5の全体を包むようにすることもできる。
【0068】
図示のカバー材2は、支持材5の光硬化型樹脂4を露出させることなく、このカバー材2の上から素手で直接操作しても、光硬化型樹脂4に触れないようにすることができるものである。また、このスプリント材のカバー材2の上から包帯を巻いて患部に固定するときに、未硬化の樹脂が包帯に付着しないようにすることもできる。
【0069】
こうしたカバー材2は、光を透過し、通気できると共に、適度な腰があるものがよい。また、このカバー材2は、光硬化型樹脂4が浸透して表面に出てこず、光硬化型樹脂4と非反応性であることが好ましい。例えば、その開口率としては約10〜60%程度で、好ましくは約30〜50%程度がよく、厚さは、約0.05〜8mm程度であり、好ましくは約1〜4mm程度である。素材としては、ポリフルオロエチレン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系等の合成繊維やレーヨン等の半合成繊維、綿等の天然繊維などを使用した編み物、織物、不織布、シートなどを用いることができる。
上記開口率は、一定範囲内における空隙が占める面積の割合であって、基材の拡大写真を撮り写真を画像認識して機械的に求めることができる。
【0070】
このカバー材2には、未硬化の光硬化型樹脂4が付着し浸透することを防ぐために、フッ素系処理剤で撥油処理を行うようにするとよい。このフッ素系処理剤は、例えば、パーフルオロアルキル基および水酸基を有する化合物とアクリル酸、メタクリル酸等をエステル化反応させて作ったアクリル酸誘導体(パーフルオロモノマー)を主成分とする共重合体で、共重合体成分としてはアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニルなどのモノマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N―メチルアクリルアミドなどの架橋性モノマーを使用したものがある。
また、上記カバー材2にポリフルオロエチレン系等の繊維を使用すれば、特に上記撥油処理を行うことなく撥油性を得ることができることがある。
【0071】
上記カバー材2として、光を透過するフィルムを使用することもできる。材料としては、ポリフルオロエチレン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系等のものが使用できる。これらのフィルムには、小孔を設ければ通気性が得られ好ましいことが多い。
また、これらのフィルムは、上記した編み物、織物、不織布、シートなどと併用してカバー材とすることもできる。
【0072】
上記緩衝材6は、患部側への当りを柔らかくする緩衝性を有しており、硬化時における光硬化型樹脂4の反応熱が患部側へ伝わることを防ぐことができるものがよい。また、患部に対して未硬化の光硬化型樹脂4が浸透し難く、適度の通気性があるものが好ましい。また、こうした緩衝材6には、支持材2の光硬化型樹脂4と非反応性で柔らかく、患部の形状に追随して変形しやすく、成形性の良いものがよい。
例えば、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系等の合成繊維やレーヨン等の半合成繊維、綿等の天然繊維などを使用した厚みのある不織布、立体的な編物や織物などがある。また、ウレタン系、ポリオレフィン系、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等の単体や複合体の均一発泡体、スキン層を有する発泡体、更に前記各材料の積層体、不織布や立体編物・織物と発泡体の組合せ構造体などを用いることができる。
【0073】
この緩衝材6の厚さは、上記作用を有するものであれば比較的薄いものが望ましいが、通常、約1〜17mm程度、好ましくは約2〜15mm程度がよい。1mmより薄いと上記作用が得難くなり、17mmを超えると成形性が悪くなる。
【0074】
上記緩衝材6は複層にすることができる。この場合下層(患部側)は、患部への当りをより和らげ、通気性があり、皮膚への刺激性がなく、抗菌性のあるものが望ましい。下層に通気性のあるものを用いれば、上層(非患部側)に通気性のない若しくは乏しい材料を用いることもできる。図示のものでは、緩衝材6の下層7にポリエステル繊維の不織布を用い、上層8にエチレン・酢酸ビニル共重合体の発泡シートを使用している
【0075】
用途に応じて、定型状にしたものやロール状にしたスプリント材は、光不透過性の包装材に入れて保存することができる。ロール状などの大きなものでは、使用する際に包装材から所定量を取り出して切断し、残った部分は再度包装材に戻して封止することで、次回も同様にして使用することができ、長期の保存が可能である。
【0076】
このスプリント材1を使用するときには、光不透過性の包装材等からスプリント材1を取り出し、このスプリント材1の緩衝材6側を直接患部に当て、外側から手で触りながら形を整える。そして、その上から包帯等で巻いて固定し、可視光線を照射しながらモールディングをする。照射された可視光線によって、支持材5の光硬化型樹脂4の硬化反応が始まる。そして次第に硬化が進み、全体が硬化すれば、スプリントが出来上がる。このスプリントは、患部を固定することができ、必要に応じて随時これを取り外すこともできる。
【0077】
図2に示すものは、緩衝材6の下層7と上層8を同じ大きさとし、他は図1と同様に形成したものであって、図1のものと同様にして使用することができる。
【0078】
本発明の整形外科用固定材の別の態様であるキャスト材について以下に説明する。キャスト材は、上記したような材料で帯状に形成した基材に光硬化型樹脂を塗布し、ロール状に巻き取り、光不透過性の包装材に保存する。
使用時には、ゴム手袋などの保護手袋を嵌めて、光不透過性の包装材から取り出す。患部に予め皮膚の保護材を巻き、その上にロール状の光硬化型固定材を巻戻しながら、患部に巻きつけた後、光を照射して硬化させる。
上記患部に巻きつけた後、硬化する前に、薄い不織布等で光硬化型固定材の上を覆うようにすると、素手で患部に適合させるように固定材を整形することが可能になる。また、この不織布は、硬化後も固定材表面を覆っていて、柔らかな感触のキャストを得ることができる。またスムースに巻回できるように、基材と基材との間にセパレータを設けることもできる。
【0079】
本発明の整形外科用固定材の更に別の態様として、身体に取付けて使用する各種装具類のステー材としても適用することができる。すなわち、足関節装具、膝関節装具、腰痛帯、上肢の装具その他の種々の装具について、装具に強度を与えるための固定材、支持材、保護材として使用することができる。例えば、上記のような装具において、柔軟な本体の内部に、固定、支持、保護のためにステー材を設置する。
こうした装具も、上記と同様に光不透過性の包装材に入れて保管しておくことができる。使用時には、上記装具を包装材から取り出し、使用部位に適用し、外方から光を照射して支持体を硬化させる。
【0080】
また、上記したステー材は、表面をカバー材で覆って、光不透過性の包装材に保管しておくことができる。このステー材を使用する時、包装材から取り出して光を照射して硬化させ、その後で装具に設けられたポケットなどに挿入する。こうしてステー材と組み合わせた装具を、患部に当てるようにして適用することができる。
この場合、上記ステー材を装具に出し入れ可能にできる。患者の症状、要望等に応じて、適当大きさ、強さ等を持ったステー材と装具を組み合わせ、症状に応じた装具の作成が一層容易となる。
【実施例】
【0081】
実施例及び比較例を作製する為に材料及び器具として以下のものを用意した。
1.材料
(1)エポキシエステルM−600A〔フェニルグリシジルエーテルアクリレート〕(PGEA;共栄社化学(株)製)
(2)3−フェノキシ−2−ヒドロキシメタクリレート〔フェニルグリシジルエーテルメタクリレート〕(PGEMA;ハンプフォード・リサーチ・インク(Hampford Research INC)製)
(3)ライトエステルHOA〔2−ヒドロキシエチルアクリレート〕(HEA;共栄社化学(株)製)
(4)ライトエステルHO〔2−ヒドロキシエチルメタクリレート〕(HEMA;共栄社化学(株)製)
(5)ライトエステルHOP−A〔2−ヒドロキシプロピルアクリレート〕(HPA;共栄社化学(株)製)
(6)N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA;(株)興人製)
(7)2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアナートカプロエート(LTI;協和発酵工業(株)製)
(8)1,6,11−ウンデカントリイソシアネート(UTI)
(9)ジブチルチンジラウレート(和光純薬工業(株)製)
(10)p−メトキシフェノール(MEHQ;和光純薬工業(株)製)
(11)テスラック2325〔PGEA/HEMA(1/1モル混合物)とヘキサメチレンジイソシアネートからのウレタンアクリレートオリゴマー;日立化成ポリマー株式会社製〕
(12)イルガキュア784〔ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム〕(Irgacure 784;チバジャパン(株)製)
(13)イルガキュア819〔ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド〕(Irgacure 819;チバジャパン(株)製)
(14)エポキシエステル3000A〔ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物〕(共栄社化学株式会社製)
(15)ライトエステル3EG〔トリエチレングリコールジメタクリレート〕(共栄社化学株式会社製)
(16)エポキシエステル3002M〔エポライト3002メタクリル酸付加物〕(共栄社化学株式会社製)
(17)NKオリゴUA‐5201〔ポリエーテルポリオール系無黄変ウレタンアクリレート、分子量は約1000〕(新中村化学工業株式会社製)
(18)NKオリゴUA‐160TM〔ポリテトラメチレングリコール系無黄変ウレタンアクリレート、分子量は約1600〕(新中村化学工業株式会社製)
【0082】
2.光源
蛍光灯,27W 東芝株式会社製 ユーラインフラットT FML27EX-D(3波長昼光色)
【0083】
〔光硬化型樹脂の製造法〕
光硬化型樹脂に当り、先ず、オリゴマーを作った。
(オリゴマーの合成例1)
表1に示すように、PGEA 429.7部(重量部・以下同じ)とHEA 224.5部、MEHQ 0.2部を攪拌羽根、温度計を付したフラスコに採り、攪拌しながら60℃に加熱し、MEHQを溶解した。ジブチルチンジラウレート0.1部を加え、続いてLTI 344.5部を加え、攪拌しながら75〜85℃で5時間反応してウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマーを得た。
(オリゴマーの合成例2〜6)
上記合成例1と同様にして、表1に示す活性水素基を有するアクリル酸誘導体とポリイソシアネートを反応させて、合成例2〜6のウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマーを得た。
【0084】
(実施例1〜8)
実施例1〜7は、表2に示す合成例1〜6のオリゴマーを攪拌羽根、温度計を付したフラスコに採り、フラスコを遮光して、攪拌しながら60℃に加温し、表2に示すIragacure784又はIragacure819を加え、溶解して実施例1〜7の光硬化型樹脂を得た。
実施例8は、表2に示すように合成例1のオリゴマーと他のオリゴマー(テスラック2325)を混合し、以下実施例1〜7に準じて実施例8の光硬化型樹脂を得た。
(比較例1〜5)
表3に示す材料を加え、溶解して反応させ比較例1〜5の光硬化型樹脂を得た。
【0085】
〔光硬化型固定材の作製〕
全実施例及び比較例共に、光硬化型樹脂をロールコーター方式により270±30g/mの割合で基材に塗布した。
光硬化型樹脂を塗布したものは、一定の長さに切って6層に重ね、緩衝材の上に置いて、更に下記のカバー材をかけてから緩衝材と熱融着し、光不透過性袋に封入してスプリント材を作製した。
【0086】
上記基材には、ガラス繊維を経糸14本/2.54cm(1inch)、緯糸11本/2.54cm、目付け270g/m、厚さ1.02mmで、幅100mmにラッシェル編みしたテープ状基材を用いた。
緩衝材には、2層構造の不織布で、一つの層がポリエステル不織布(内側=芯材側)で、もう一つの層がレーヨンとポリエステルの混紡不織布(外側=肌側)で構成され、厚さ3.2mm、目付け300g/mのニードルパンチの2層式不織布を用いた。
芯材の、緩衝材と反対側は、先ずポリプロピレンの孔開きフィルム(厚さ20μm、孔径0.5mm、孔ピッチが縦、横それぞれ1.5mm)で被覆し、更にその上にポリプロピレン/ポリエチレンコンジュゲート繊維を用いたサーマルボンド不織布(厚さ200μm、目付け25g/m)を重ねて被覆し、緩衝材と熱溶着してカバー材とした。
【0087】
[試験]
上記実施例及び比較例における光硬化型樹脂の物性、光硬化型固定材について下記試験を行い、評価をした。
硬化には光源として、上記した27W蛍光灯を用いた。
【0088】
(臭気)
光硬化型樹脂を基材に塗布した後の臭気を、官能検査で評価した。
(可使時間)
室温23℃、湿度65%RHに調整した測定室で、光硬化型固定材を光不透過性袋より取り出し、上記硬化用の光源よりも強い40W蛍光灯2灯を点灯した直下1.5m(照度は約650ルックス)に置いた。そして、10秒毎に硬化程度をチェックし、成型可能か否かを判断した。
(曲げ強度)
室温23℃、湿度65%RHに調整した測定室で、光硬化型固定材のスプリント材を光不透過性袋から取り出し、約10cm長さに切って、上記27W蛍光灯を用い、硬化試験片表面の照度を6000ルックスに調整し、1分間照射した。そして、光照射開始から10分後の曲げ強度を測定した。照度はアズワン製LM−332を用いて測定した。
測定はオートグラフAG-D((株)島津製作所製・コンピューター計測制御式精密万能試験機)にて、3点曲げ試験冶具を用いてJIS K7171に準じて曲げ試験を行った。3点曲げ試験冶具は、図3に示すように、支点間距離を50mmとし、長さ120mmの支持部11がある。この支持部11の上に検体13を置き、長さ110mmの圧子12で荷重をかけた。試験速度は100mm/minで行った。
【0089】
〔測定結果〕
各実施例及び比較例の物性及び評価に関する各測定結果を、表2、表3に示す。
(臭気)
比較例1〜3の光硬化型樹脂においては、酸臭が感じられ、特に比較例2では、その臭いが強い。
実施例及び他の比較例においては臭いが殆ど感じられず、良好であった。
【0090】
(可使時間について)
各実施例において、可使時間は2分であり、比較例においてもほぼ同等であった。
【0091】
(曲げ強度について)
従来から使用されている水硬化型のスプリント材としては、約10分後の時点での強度(初期強度)が少なくとも約150N以上に達していないと実用的でないし、また、24時間後の強度としては患部を固定するためには500N以上が必要であると考えられている。
光硬化型のスプリント材の場合、光照射中に殆ど硬化が完了し、その後時間経過による強度上昇は殆ど見られない。表2の各実施例のものでは10分で700N以上あるから、水硬化型のスプリント材での24時間後の必要強度を満たしており、十分な硬化性を有していることが判る。
これに対して、表3の比較例ではいずれも135N以下であり、必要とされる強度以下であって強度が十分ではない。また、上記のように比較例1〜3は臭気があり、この点でも本用途には適していない。
【0092】
〔総合評価〕
上記したように、実施例のものは、光硬化型樹脂に臭気が殆ど感じられず、固定材として比較的早く硬化するが、必要な可使時間を取ることができる。また、光硬化型固定材の使用時における発熱温度も何れも40℃以下であって、使用上の不都合は見られない。そして、スプリント材における曲げ強度において充分な強度が得られており、固定材として良好に使用することができる。
一方、比較例のものは、上記曲げ強度において強度が弱く、充分な強度を得ることが出来ない。また、光硬化型樹脂に臭気があるものもあって、使用に適していない。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【符号の説明】
【0096】
1 スプリント材
2 カバー材
3 基材
4 光硬化性樹脂
5 支持材
6 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネートと活性水素基を有する(メタ)アクリル酸誘導体によって得られるウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマーと、400〜700nmの光を吸収する光重合開始剤を含む光硬化型樹脂を基材に保持させた光硬化型整形外科用固定材。
【請求項2】
イソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート及びイソシアネート基を2つ有するジイソシアネートと活性水素基を有する(メタ)アクリル酸誘導体によって得られるウレタン系(メタ)アクリル酸誘導体オリゴマーと、400〜700nmの光を吸収する光重合開始剤を含む光硬化型樹脂を基材に保持させた光硬化型整形外科用固定材。
【請求項3】
上記活性水素基を有する(メタ)アクリル酸誘導体は、その活性水素基がヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基のいずれかであり、その(メタ)アクリル酸誘導体は、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリル酸アミドである請求項1または2に記載の光硬化型整形外科用固定材。
【請求項4】
上記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが式IIで表されるヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートからヒドロキシル基を除いた残基である請求項3に記載の光硬化型整形外科用固定材。
【化1】

(式II中R1〜R6はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す)
【請求項5】
光重合開始剤が下記式IIIで表されるビスアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤である請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化型整形外科用固定材。
【化2】

(式III中、R15は直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基、シクロアルキル基、直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基又はハロゲン原子が置換していてもよいアリール基を示す。R16およびR17は同一又は異なって水素原子、直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基または直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルコキシ基を示す。R18およびR19は同一又は異なって水素原子または直鎖状又は分枝鎖状C1-12アルキル基を示す。)
【請求項6】
光重合開始剤がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドである請求項5に記載の光硬化型整形外科用固定材。
【請求項7】
光重合開始剤が下記式IVで表されるチタノセン系光重合開始剤である請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化型整形外科用固定材。
【化3】

(式IV中、R21、R22はそれぞれ独立に水素原子、メチル基を、R23は弗素原子、−CF3又は−CF2CH3を表わす。R24、R25、R26およびR27はそれぞれ独立に水素原子、弗素原子、−CF3、−CF2CH3、C1〜C12のアルキル基又はアルコキシ基、6員の炭素環式芳香族基或いは5もしくは6員の複素環式芳香族基を表わす。)
【請求項8】
光重合開始剤がビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニル)チタニウムである請求項7に記載の光硬化型整形外科用固定材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−273875(P2009−273875A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54650(P2009−54650)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】