説明

光硬化型樹脂組成物およびそれを用いた光学部品

【課題】レンズ等の光学部品用の成形材料、光学部品固定用光硬化型接着剤として有用な、光硬化型樹脂組成物およびそれを用いた光学部品を提供する。
【解決手段】下記の(A)および(B)成分のエポキシ樹脂とともに、下記の(C)および(D)成分を含有する光硬化型樹脂組成物である。(A)下記の一般式(1)で表される直鎖型エポキシ樹脂


(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ樹脂(C)1分子中に1個以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物(D)フッ化リン系光重合開始剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的応用を目的とする透明樹脂において、光信号を低損失で伝送する高い透明性を有し、かつ優れた硬化性を有する光硬化型樹脂組成物およびそれを用いた光学部品に関するものであり、詳しくは、レンズ等の光学部品用の成形材料(光学部品用材料)や、光学部品固定用光硬化型接着剤等として好適な光硬化型樹脂組成物およびそれを用いた光学部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学レンズや光記録メディア等の光学部品においては、高密度化、高耐熱化、安価生産等が要求され、これらの要求を満たすべく、例えば、成形用加工型を樹脂材料に押し当て、特定の微細パターンもしくは凹凸形状物を形成する光学的立体造形物(光学部品)の形成方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような光学的立体造形物の形成方法は、寸法安定性の観点から、2種類の方式がある。すなわち、(1)熱可塑性材料を加熱溶融させて加工型をプレス圧接し、冷却することにより特定形状の成形物を得る方式、(2)光で硬化する硬化型樹脂に成形加工型を押し当てた後、成形加工型もしくは基板を通して光照射することによって、特定形状の光学的立体造形物を得る方式である。
【0004】
一般に、上記2種類の方式は、要求される耐熱温度により選択され、例えば、耐熱性が要求されない分野においては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリカーボネート等の透明性の熱可塑性樹脂を用いる、上記(1)の方式が広く用いられる。一方、ハンダリフローやオートクレーブ等の耐熱性が要求される分野においては、エポキシ樹脂を主成分とする光硬化型樹脂の適応が検討され、上記(2)の方式が実用化されつつある。
【0005】
そして、上記(2)の方式による場合、光学的立体造形物の作製において、短時間硬化性を有する材料が用いられ、得られた光学的立体造形物には、高い透明性とともに、優れた機械物性が求められる。
【0006】
また、上記(2)の方式に用いられる光硬化型樹脂組成物には、従来、硬化性、透明性、機械強度、耐熱分解性の点に優れる、アンチモン化合物系の光重合開始剤が多く用いられているが、アンチモン化合物は毒性が高く、環境負荷物質として懸念視されているため、近年では、より環境に優しい非アンチモン系の光重合開始剤を用いた材料が注目されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3926380号公報
【特許文献2】WO2005/116038公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般に、非アンチモン系の光重合開始剤を用いた場合、得られる硬化物の機械物性や熱分解温度は、アンチモン系の光重合開始剤を用いて得られる硬化物に比べ低下するため、満足のいくものが得られないといった問題がある。また、上記特許文献2に開示の光重合開始剤は、このような問題を解決しうる非アンチモン系光重合開始剤として近年開発されたものであるが、透明性(あるいは耐熱変色性)と光硬化性とを両立させることが困難なため、未だ研究の余地がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、環境負荷が少なく、短時間硬化性を有し、その硬化物が、耐熱変色性に優れ、レンズ等の光学部品用の成形材料、光学部品固定用光硬化型接着剤として有用な、光硬化型樹脂組成物およびそれを用いた光学部品の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)および(B)成分のエポキシ樹脂とともに、下記の(C)および(D)成分を含有する光硬化型樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)下記の一般式(1)で表される直鎖型エポキシ樹脂。
【化1】

(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ樹脂。
(C)1分子中に1個以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物。
(D)フッ化リン系光重合開始剤。
【0011】
また、本発明は、上記光硬化型樹脂組成物を用いてなる光学部品を第2の要旨とする。
【0012】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、上記一般式(1)で表される直鎖型エポキシ樹脂(A成分)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ樹脂(B成分)とを併用することにより、硬化性の向上を図ることができることを見いだし、さらに、これらのエポキシ樹脂とともに、1分子中に1個以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物(C成分)と、フッ化リン系光重合開始剤(D成分)とを用いると、短時間硬化性と低着色性を併せ持つことができ、しかも機械物性の向上をも図ることができることを突き止めた。そして、光重合開始剤として非アンチモン系のものを使用しているため、毒性が低く、かつ上記各成分からなる樹脂組成物の光硬化物は、良好な硬化性と優れた耐熱変色性とを有し、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明の光硬化型樹脂組成物は、上記一般式(1)で表される直鎖型エポキシ樹脂(A成分)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ樹脂(B成分)とを併用することにより、硬化性の向上を図ることができる。そして、非アンチモン系光重合開始剤を使用のため毒性が低く、かつオキセタン化合物(C成分)を含むことにより、速硬化性の効果と、ガラス転移温度や耐熱温度の上昇などの機械物性の向上効果が得られる。また、オキセタン化合物(C成分)を用いることによって硬化性が促進されるので、変色性に影響を与えるフッ化リン系光重合開始剤(D成分)の量を低減させることができるため、加熱処理後も高い透明性を実現することができる。そのため、環境負荷の低減にもつながり、また、ハンダリフロー時の熱による変色の問題をも解消することができ、信頼性向上につながる。さらに、上記樹脂組成物は、ガラス等の透明基板上で硬化させることができ、上記基板と一体化させることにより、高品質なハイブリッドレンズとして製造することも可能である。したがって、本発明の光硬化型樹脂組成物を、レンズ等の光学部品用の成型材料および光学部品固定用光硬化型接着剤として用いると、信頼性の高い光学製品を得ることができるため有用である。
【0014】
そして、上記光硬化型樹脂組成物を用いてなる本発明の光学部品は、ハンダリフロー時の熱によっても変色が少ないので、ハンダリフローにより一括搭載する際に有利に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
本発明の光学部品用樹脂組成物は、上記特定の直鎖型エポキシ樹脂(A成分)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ樹脂(B成分)と、1分子中に1個以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物(C成分)と、フッ化リン系光重合開始剤(D成分)とを用いて得ることができ、通常、液状の樹脂組成物として用いられる。
【0017】
上記特定の直鎖型エポキシ樹脂(A成分)としては、下記の一般式(1)で表される直鎖型エポキシ樹脂が用いられ、これを使用することにより、硬化時のアウトガスの発生量を低減することができる。
【0018】
【化2】

【0019】
上記一般式(1)において、mは2〜10の整数を示すが、硬化性および流動性の観点から、mは2〜6の整数が好ましい。
【0020】
上記特定の直鎖型エポキシ樹脂(A成分)の含有量(重量割合)は、光硬化型樹脂組成物に含まれる全樹脂成分(A〜C成分の総重量)中の10〜75重量%(以下「%」と略す)の範囲が好ましく、特に好ましくは15〜70%の範囲であり、最も好ましくは20〜65%の範囲である。すなわち、上記特定の直鎖型エポキシ樹脂(A成分)の含有量が上記範囲未満であると、接着力は向上するが、硬化時のアウトガスの発生量が増加する傾向がみられ、逆に上記範囲を超えると、硬化性が悪くなり、作業性が低下する傾向がみられるからである。
【0021】
上記特定の直鎖型エポキシ樹脂(A成分)は、例えば、両末端にビニル基を有する化合物を酸化することによって得ることができる。上記酸化反応は、例えば、過安息香酸等の有機過酸化物による直接酸化や、ヘテロポリ酸を触媒とした過酸化水素や気体酸素による酸化等により行うこともできる。
【0022】
本発明においては、上記特定の直鎖型エポキシ樹脂(A成分)とともに、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ樹脂(B成分)が用いられ、両者を併用することにより、硬化性の向上を図ることができる。上記脂環式エポキシ樹脂(B成分)としては、反応性が高く、透明なものを用いることが好ましく、特に六員環を有する脂環式エポキシ樹脂が構造的に安定で好ましい。上記脂環式エポキシ樹脂(B成分)は、透明性、高粘性、反応性の観点から、具体的には、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が好ましい。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0023】
上記脂環式エポキシ樹脂(B成分)の含有量(重量割合)は、光硬化型樹脂組成物に含まれる全樹脂成分(A〜C成分の総重量)中の20〜85%の範囲が好ましく、特に好ましくは25〜75%の範囲である。すなわち、上記脂環式エポキシ樹脂(B成分)の含有量が、上記範囲から外れると、硬化性の低下や、硬化物の耐着色性が悪化するおそれがあるからである。
【0024】
上記(A)および(B)成分のエポキシ樹脂とともに用いられるオキセタン化合物(C成分)には、先に述べたように、1分子中に1個以上のオキセタニル基を有する化合物が用いられる。このようなオキセタン化合物としては、例えば、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ジ[2−(3−オキセタニル)ブチル]エーテル、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3(4−ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、1,4−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、2,2’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル[4,4’−ビス(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、2,7−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ナフタレン、1,6−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、3(4),8(9)−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]−トリシクロ[5.2.1.2.6]デカン、1,2−ビス{[2−(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]エチルチオ}エタン、4,4’−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メチル]チオジベンゼンチオエーテル、2,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]ノルボルナン、2−エチル−2−[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]−1,3−O−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール、1,4−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−ブタン−1,4−ジオール、2,4,6−O−トリス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]シアヌル酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、硬化促進性や耐着色性等の観点から、3−エチル−3(4−ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼンが好ましく用いられる。
【0025】
上記(C)成分のオキセタン化合物の含有量(重量割合)は、硬化性、接着性の観点から、全樹脂成分(A〜C成分の総重量)中の3〜30%の範囲であることが好ましく、特に好ましくは3〜20%の範囲である。
【0026】
つぎに、上記(A)〜(C)成分とともに用いられるフッ化リン系光重合開始剤(D成分)としては、好ましくは、下記の一般式(2)で表されるアニオン成分と、カチオン成分とからなるオニウム塩が用いられる。なお、一般式(2)において、nは、下記に示すように、1〜6の整数であるが、光硬化性の観点から、好ましくはn=1〜5の整数であり、より好ましくは、n=1〜4の整数である。そして、このようなオニウム塩には、具体的には、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホキソニウム塩等が用いられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、光硬化性の観点から、芳香族スルホニウム塩が好ましい。さらに、耐熱分解性や安定した機械物性を向上させるためには、一般式(2)においてn≠6であるフッ化リン系光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
上記特定の光重合開始剤(D成分)の配合割合は、上記(A)〜(C)成分の総重量(光硬化型樹脂組成物に含まれる全樹脂成分)100重量部(以下、「部」と略す)に対して、0.01〜7部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.1〜5部の範囲である。すなわち、上記特定の光重合開始剤(D成分)の配合割合が上記範囲未満であると、硬化性が悪化する傾向がみられ、逆に上記範囲を超えると、硬化性は向上するが、硬化物の耐着色性が損なわれる可能性があるからである。なお、上記光重合開始剤は、プロピレンカーボネート等の有機溶剤に希釈し、配合してもよい。
【0029】
なお、本発明の光硬化型樹脂組成物には、上記(A)〜(D)成分以外に、必要に応じ、アントラセン,フェナントレン,カルバゾール,ナフタレン等の光増感剤、さらに、シラン系あるいはチタン系の接着付与剤、合成ゴムやシリコーン化合物等の可撓性付与剤、酸化防止剤、消泡剤、無機充填剤等を適宜に配合することができる。
【0030】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、例えば、上記特定の直鎖型エポキシ樹脂(A成分)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ樹脂(B成分)と、1分子中に1個以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物(C成分)と、フッ化リン系光重合開始剤(D成分)と、さらに必要に応じてその他の添加剤を所定の割合で配合し、混合することにより作製することができる。
【0031】
このようにして得られる本発明の光硬化型樹脂組成物の透過率は、25℃雰囲気下で、通常可視光領域(400〜800nm)および赤外領域で95%以上が好ましく、特に好ましくは98%以上である。なお、上記透過率は、分光光度計により測定することができる。
【0032】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして硬化させることができる。すなわち、ガラス等の透明基板上にポッティングし、その上から所望の成型加工型を押し当てることで成型加工型へ光硬化型樹脂組成物を充填させ、そこへ光照射を行うことにより硬化させることができる。さらに必要に応じて、所定の温度で加熱処理を行ってもよく、加熱処理の条件としては、80〜170℃で1時間程度が好ましい。上記光照射には、例えば、装置としてUVランプ等を用いることができ、照射量としては2000〜200000mJ/cm2 が好ましい。すなわち、照射量が2000mJ/cm2 未満では、硬化不充分のために、基板上に所望の硬化物形状が得られない可能性があり、逆に200000mJ/cm2 を超えると、過度の照射による光劣化が生じ、その後の加熱処理等により着色するおそれがあるからである。
【0033】
なお、本発明の光硬化型樹脂組成物は、上記のような成型加工型によらず、シート状に成形することもできる。そして、これに、上記のようにUVランプ等を用いて光照射し、硬化させる。なお、上記光照射は、例えば、光源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ等を用いて、行うことができる。
【0034】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、レンズ等の光学部品用の成形材料(光学部品用材料)や、光学部品固定用光硬化型接着剤等に用いることができる。
【0035】
そして、上記レンズをはじめとする本発明の光学部品(樹脂硬化体)のガラス転移温度は、温度サイクル性および耐熱性の観点より、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。すなわち、ガラス転移温度が上記温度未満の場合、場合によっては、温度サイクルによる熱収縮量が増大し、例えば、反射防止コート材との熱膨張係数のミスマッチにより反射防止コート材の剥離やクラックが発生する等のおそれがあるからである。
【0036】
そして、本発明の光硬化型樹脂組成物およびそれを用いた光学部品は、ハンダリフロー時の熱によっても変色が少ないので、ハンダリフローにより一括搭載する際に有利に用いることができる。
【実施例】
【0037】
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0038】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す各材料を準備した。
【0039】
〔エポキシ樹脂(a)(A成分)〕
前記一般式(1)中、R1 およびR2 がフッ素原子で、m=4で表される直鎖型エポキシ樹脂
【0040】
〔エポキシ樹脂(b)(B成分)〕
下記の化学式(3)で表される脂環式エポキシ樹脂
【0041】
【化4】

【0042】
〔オキセタン化合物(a)(C成分)〕
3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン
【0043】
〔オキセタン化合物(b)(C成分)〕
3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン
【0044】
〔オキセタン化合物(c)(C成分)〕
1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン
【0045】
〔オキセタン化合物(d)(C成分)〕
3−エチル−3(4−ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン
【0046】
〔光重合開始剤(a)(D成分)〕
下記の構造式(4)で表される、リン系アニオン成分〔前記一般式(2)中、n=4、X=−CF2 CF3 〕と、カチオン成分とからなるトリアリールスルホニウム塩系光重合開始剤
【0047】
【化5】

【0048】
〔光重合開始剤(b)(D成分)〕
下記の構造式(5)で表される、リン系アニオン成分〔前記一般式(2)中、n=6〕と、カチオン成分とからなるビトリアリールスルホニウム塩系光重合開始剤
【0049】
【化6】

【0050】
〔光重合開始剤(c)(D成分)〕
下記の構造式(6)で表される、リン系アニオン成分〔前記一般式(2)中、n=6〕と、カチオン成分とからなるビススルホニウム塩系光重合開始剤
【0051】
【化7】

【0052】
〔酸化防止剤〕
9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド
【0053】
〔カップリング剤〕
γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン
【0054】
〔実施例1〜10、比較例1〜3〕
上記エポキシ樹脂、オキセタン化合物、酸化防止剤およびカップリング剤を、後記の表1および表2に示す割合で配合した後、必要に応じて加熱溶融し溶融混合した。次いで、上記光重合開始剤を、同じく後記の表1および表2に示す割合で配合し、混合することにより、光硬化型樹脂組成物を調製した。
【0055】
このようにして得られた光硬化型樹脂組成物を用いて、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1および表2に併せて示した。
【0056】
〔硬化性(ゲルタイム)〕
光源に水銀ランプ(浜松ホトニクス社製、LC−8、365nmでの照度が30mW/cm2 になるよう設定)を用いたUVレオメーター(Rheologica社製、10mmφのアルミ製パラレルプレート使用)によるゲルタイムを測定し、硬化性の評価を行った。上記UVレオメーターによるゲルタイムは、上記各光硬化型樹脂組成物の粘弾性を25℃で測定した際の弾性項(G′)の105 Pa到達時間とした。硬化性の評価は、ゲルタイムが800秒以下ものを○、さらに300秒以下であれば◎とした。そして、ゲルタイムが800秒より長いものを×と評価した。
【0057】
〔耐熱変色性(透明性)〕
上記各光硬化型樹脂組成物を、シリコーン離型処理を施したPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、ダイアホイルMRF−50)上に、厚み600μmとなるよう製膜し、これに光照射(光量8000mJ/cm2 )を行い一次硬化させた。その後、150℃で1時間加熱処理し、硬化体を得た。つぎに、この硬化体を3cm角の試験片に切り出し、260℃×10秒間リフロー炉を通した後、この硬化体に対し、カラーコンピューター(スガ試験機社製、SM−T)を用いて、透過モードでイエローインデックス値(Y.I.値)を測定し、透明性の評価を行った。すなわち、Y.I.値が低いものほど変色性が低く、透明性が高いことを示しており、透明性の評価において、Y.I.値が13未満のものを○、さらに10以下であれば◎とした。そして、Y.I.値が13以上のものを×とした。
【0058】
〔耐クラック性〕
変色性評価用サンプルを260℃×10秒間リフロー炉を通す際に、熱処理後の試験片にクラックが発生している場合はΔ、発生しない場合は○とした。また試験片が割れてしまう場合には×とした。
【0059】
〔熱分解温度〕
ガラス転移温度測定用サンブル作成法と同様に硬化体を作製し、作製したサンプルが10mgになるよう切りだしたのち加熱重量変化を確認した。装置には差動型示差熱天秤(リガク社製、TG8120)を使用し、RT(25℃)〜400℃の温度範囲でサンプルの重量減少を測定し、5%重量減少温度を熱分解温度とした。この試験の評価において、熱分解温度が130℃以上をΔ、270℃以上のものを○、さらに300℃以上のものを◎とした。そして、5%重量減少温度が130℃未満のものを×とした。
【0060】
〔ガラス転移温度〕
各樹脂組成物を、シリコーン離型処理を施したPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、ダイアホイルMRA−50)上に、600μmとなるよう製膜し、これに紫外線を照射し(紫外線量8000mJ/cm2 )、1次硬化させた。その後、150℃で1時間加熱キュアし、成形物を得た。そして、この成形物を、幅5mm、長さ25mmの試験片に切り出し、動的粘弾性装置(レオメトリック杜製、RSA−III )を用いて周波数1Hz、RT(25℃)〜260℃の温度範囲で貯蔵弾性率、損失弾性率を測定し、そこから導かれるtanδ曲線を得た。このようにして得られたtanδ曲線のピーク値をガラス転移温度(Tg)とした。そして、この試験の評価において、Tgが70℃以上100℃未満のものを△、100℃以上のものを○、さらに120℃以上のものを◎とした。そして、Tgが70℃未満のものを×とした。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
上記表1および表2の結果より、実施例の樹脂組成物は、いずれも、1分子中に1個以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含まない比較例品に比べ、ゲルタイムが短く速硬化性であり、また、加熱処理後の変色も少ないことから、ハンダリフロー時の熱による変色を抑えることができ、加熱処理後も高い透明性を有することがわかる。特に、実施例1〜7および実施例10の樹脂組成物は、比較例3品に比べ、ガラス転移温度や熱分解温度が高く、しかも耐クラック性に優れることから、安定した機械物性を有することがわかる。そのため、本発明の光硬化型樹脂組成物を、レンズ等の光学部品用の成型材料および光学部品固定用光硬化型接着剤として用いると、硬化性が高いことから成形工程に要する時間の短縮が図れ、耐クラック性、透明性、耐熱性に優れた、信頼性の高い光学製品を得ることができる。
【0064】
これに対し、比較例1品および比較例2品は、実施例の樹脂組成物と比較して、硬化性および耐熱変色性(透明性)に劣る。比較例3品は、耐熱変色性には優れるものの、硬化性が充分でなく、さらに、ガラス転移温度や熱分解温度が低く、機械物性にも劣る。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、硬化性を損なうことなく、硬化後においても高い透明性を有する立体造形物(硬化物)となり得るため、レンズ等の光学部品用の成形材料(光学部品用材料)や、光学部品固定用光硬化型接着剤等の光学用途として有用である。また、本発明の光硬化型樹脂組成物を用いた光学部品は、信頼性が高いため、光学レンズ等の光学部品(光学製品)に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)および(B)成分のエポキシ樹脂とともに、下記の(C)および(D)成分を含有することを特徴とする光硬化型樹脂組成物。
(A)下記の一般式(1)で表される直鎖型エポキシ樹脂。
【化1】

(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ樹脂。
(C)1分子中に1個以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物。
(D)フッ化リン系光重合開始剤。
【請求項2】
上記(D)成分の光重合開始剤が、下記の一般式(2)で表されるアニオン成分と、カチオン成分とからなるオニウム塩である、請求項1記載の光硬化型樹脂組成物。
【化2】

【請求項3】
上記一般式(2)で表されるアニオン成分において、nが1〜5の整数である、請求項2記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
上記(C)成分のオキセタン化合物が、3−エチル−3(4−ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンおよび1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼンからなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光硬化型樹脂組成物を用いてなる光学部品。

【公開番号】特開2011−132487(P2011−132487A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84867(P2010−84867)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】