説明

光硬化型液体インク、光硬化型液体インクの製造方法、現像装置及び画像形成装置

【課題】高安全性であり、地肌汚れや画像ボケを抑制し、充分な定着性を有する光硬化型液体インクの提供。
【解決手段】光硬化性液体が下記一般式(1)で示されるシリコーン化合物を含有する。


上記式(1)中、Rはメチル基或いはフェニル基、l及びmは0〜100の整数、X,X,Xは置換又は無置換の炭素数1〜18のアルキル基、或いはX,X,Xのうち少なくとも1つはβ−フェニル置換アクリルエステル基を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等の電子写真方式を利用する画像形成装置に用いられる液体現像剤(湿式液体トナー)、及びインクジェット法による記録装置に用いられる液体インク(本発明においては、以下これら液体現像剤、液体インクを併せて「液体インク」と称する。)、及びその製造方法並びに液体現像剤を使用する現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地域広告や企業内配付資料、大型ポスターのように或る程度の部数を必要とする印刷物の製造には、版を利用した印刷機が用いられてきた。近年、こうした従来の印刷機に代わり、多様化するニーズに迅速に対応でき、しかも、在庫を圧縮することが可能なオンデマンド印刷機が利用されつつある。そのようなオンデマンド印刷機としては、トナーや液体トナーを用いた電子写真印刷機や高速及び高画質印刷が可能なインクジェットプリンタが期待されている。
【0003】
オンデマンド印刷機は、版を利用した印刷機と同様に、顔料と有機溶剤とを含んだ溶剤系インクや溶剤系液体トナーを使用することが知られている。しかしながら、この技術では、ある程度の部数を印刷した場合に、無視できない量の有機溶剤が揮発することになる。そのため、揮発した有機溶剤による雰囲気汚染の問題があり、廃棄設備や溶剤回収機構を設けなければならない。
【0004】
なお、インクジェットプリンタでは、溶剤系インクは、被印刷面に吐出するまで閉鎖系で取り扱うことができる。それ故、適切な廃棄対策を施すことにより、雰囲気汚染の問題を多少は軽減することができる。しかしながら、版を利用した印刷機で使用するインクとは異なり、インクジェットプリンタで使用するインクは吐出に必要な流動性を有している必要がある。そのため、上述した技術では、インク中の溶媒濃度を充分に高くしなければならず、従って、この技術でも有機溶剤に起因した雰囲気汚染の問題を解決することは本質的に困難である。
また、溶剤系インクを使用した場合、被印刷面が画質に与える影響が大きい。例えば、浸透性の被印刷面では滲みを生じ易く、非浸透性の印刷面では画像の定着が難しい。更に、被印刷面に形成したインク層が乾燥するまでにはある程度に時間が必要である。そのため、広い被印刷面に濃い画像を形成する場合、その流動性に起因してつぶれを生じ易い。即ち、この技術では高品質の印刷物を得ることは、必ずしも容易ではない。
【0005】
一方、液体トナーでは、上記インクジェットプリンタと同様の有機溶剤に起因した雰囲気汚染の問題がある。この問題の解決方法として、シリコーンオイルなどの不揮発性液体中に着色樹脂粒子を分散させたものが知られている。しかし、このような液体トナーは、画像定着時に不揮発性液体の存在により、着色樹脂粒子同士の結合が妨げられ、記録媒体にトナーが定着しない場合がある。このため、画像定着前に複数の除去ローラを用いて不揮発性液体を除去するする必要があり、液体トナーを用いた画像形成装置が複雑化し、高速化の要求に対し、困難になってきている。
【0006】
上述した問題に対して有効な技術として、感光性インク及びそれを用いたプリンタシステムが注目され始めている。この技術は被印刷面に吐出した感光性インクを速やかに光硬化させるものであり、ここで使用される感光性インクとしては、重合性モノマー或いはオリゴマー、光重合開始剤、及び顔料とを含有したもので、この感光性インクに紫外線などの光を照射することにより重合反応により硬化するもので、高速対応が可能である。更に、この技術によれば、光照射によりインク層を非流動化することができるので、比較的高品質の印刷物を得ることができる。
【0007】
例えば、インクジェット方式用液体インクとしては、特許文献1(特開2008−24881号公報)には、特定構造のエチレン性不飽和化合物として、(メタ)アクリル化合物、及びスチレン化合物を中心に多くのエチレン性不飽和化合物を含有する硬化組成物が開示されている。また、特許文献2(特許第3985459号公報)には、硬化性液体として、エチレン性二重結合を2個以上含有する化合物としてアクリレート結合を2個以上有する化合物と、エチレン性二重結合を1個含有する化合物として2−フェノキシエチルアクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが開示されている。
更に、電子写真方式用液体インクとしては、特許文献3(特許第3442406号公報)には、硬化性液体として、特定粘度範囲、及び特定抵抗値範囲を有する硬化性液体ベヒクルが開示され、(メタ)アクリル変性シリコーンが例示されている。更に具体的にはシリコーン部は、特定のジメチルシロキサン単位を有する脂肪族または芳香族シロキサン鎖または環を有すると記載されている。また、特許文献4(特許第4150118号公報)には、硬化性体として、分子中に反応性シリコーン化合物を含有させることが開示され、反応性シリコーン化合物は、分子中にイソシアネート基、Si−H基、ビニル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、メタクリロキシ基などの官能基を分子中に有するシリコーン化合物、特に、実施例中にはメタクリル基を有するシリコーン化合物が記載されている。
【0008】
しかし、これらのインクに使用されている(メタ)アクリル化合物は、光硬化性は高いが、安全性に大きな問題を有している。スチレン系及び(メタ)アクリル系のようなビニル系モノマーは、概して強い反応性を有し、潜在的な危険性があり、皮膚や目に刺激を与え、且つ過敏物質(感作性)となる可能性がありアレルギーを引き起こし、強く且つ不快な臭気を持ち、その全ての結果、用途が制限され、または使用が禁止されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高安全性であること、更に地肌汚れや画像ボケを抑制すると共に、充分な定着性を有する光硬化型液体インク、及びその製造方法、その液体インクを用いる現像装置、画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、光硬化型液体インクについて鋭意検討を行った結果、下記の手法によって上記課題を解決できること見出した。即ち、上記課題を解決するために、本発明に係る光硬化型液体インク、その製造方法、現像装置、画像形成装置は、具体的には下記(1)〜(9)に記載の技術的特徴を有する。
【0011】
[1]少なくとも着色剤と、光によって硬化する硬化性液体とを含有する光硬化型インクにおいて、
前記硬化性液体が下記一般式(1)で示されるシリコーン化合物を含有することを特徴とする光硬化型液体インク。
【0012】
【化1】

【0013】
但し、上記一般式(1)中、Rはメチル基又はフェニル基、l及びmは0〜100の整数、X,X,Xは置換又は無置換の炭素数1〜18のアルキル基、或いは下記置換基Aを表し、X,X,Xうち少なくとも1つは置換基Aである。
(置換基A)
【0014】
【化2】

【0015】
但し、上記置換基A中、Yは単結合又はC1〜C4のアルキレン基を表し、R〜Rは水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルキル基を有するアルコキシ基、或いはフェニル基を表す。
【0016】
[2]前記硬化性液体が下記一般式(2)で示されるシリコーン化合物を含有することを特徴とする上記[1]に記載の光硬化型液体インク。
【0017】
【化3】

【0018】
但し、上記一般式(2)中、lは0〜100の整数、mは1〜99の整数、Bは下記置換基Bを表す。
(置換基B)
【0019】
【化4】

【0020】
[3]前記硬化性液体が下記一般式(3)で示されるシリコーン化合物を含有することを特徴とする上記[1]に記載の光硬化型液体インク。
【0021】
【化5】

【0022】
但し、上記一般式(3)中、lは0〜100の整数、Bは下記置換基Bを表す。
(置換基B)
【0023】
【化6】

【0024】
[4]前記着色剤は、更に酸性基を有する結着樹脂により、表面に酸性基を有する着色樹脂粒子を形成し、該酸性基と反応して、エポキシ基変性シリコーン化合物及び/又はエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物により化学修飾されていることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化型液体インク。
【0025】
[5]前記着色剤の平均粒子径が、0.01〜5μmであることを特徴とする上記[4]に記載の光硬化型液体インク。
【0026】
[6]少なくとも着色剤と、光によって硬化する硬化性液体とを含有する光硬化型液体インクの製造方法において、前記着色剤は、更に酸性基を有する結着樹脂により表面に酸性基を有する着色樹脂粒子を形成し、該着色樹脂粒子を、エポキシ基変性シリコーン化合物及び/又はエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物を含み超音波照射下に、硬化性液体に分散させて該着色樹脂粒子表面を該着色樹脂粒子表面の酸性基と反応してエポキシ基変性シリコーン化合物及び/又はエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物により化学修飾することを特徴とする光硬化型液体インクの製造方法。
【0027】
[7]前記表面に酸性基を有する着色樹脂粒子は、水系溶液中で、該溶液に中和溶解した酸性基を有する樹脂を塩析法により着色樹脂粒子表面に析出させることにより得られることを特徴とする上記[6]に記載の光硬化型液体インクの製造方法。
【0028】
[8]光硬化型液体インクを収容するインク収容部と、該インク収容部から光硬化型液体インクを汲み取って像担持体上に形成された静電潜像に該光硬化型液体インクを供給する液体インク供給手段とを備えた現像装置において、前記光硬化型液体インクは、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化型液体インクであることを特徴とする現像装置。
【0029】
[9]静電潜像が形成される像担持体と、該像担持体上に形成された静電潜像に光硬化型液体インクを供給して液体インク像に現像する現像装置と、該現像装置によって形成された液体インク像を該像担持体上から記録媒体に転写する転写装置と、該転写装置によって転写された液体インク像に光を照射して光硬化型液体インクを硬化させて該液体インク像を該記録媒体上に定着させる定着装置とを備えた画像形成装置において、前記光硬化型液体インクは、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化型液体インクであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0030】
以下の詳細且つ具体的な説明より明らかなように、本発明によれば、硬化性液体が前記一般式(1)示されるシリコーン化合物を含有することによって、高安全性であること、更に地肌汚れや画像ボケを抑制すると共に、充分な定着性を有する光硬化型液体インク、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による一実施形態に係る電子写真方式の画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明による他の実施形態に係る電子写真方式の画像形成装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、下記一般式(1)示されるシリコーン化合物を含有する硬化性液体は、(メタ)アリロキシ基などの官能基を分子中に有するシリコーン化合物に比較して、非常に化学的に安定且つ安全性に優れた化合物であることに着目し、この硬化性液体を着色剤と共に含有する光硬化型液体インクとして使用することを検討した。
【0033】
即ち、少なくとも着色剤と、光によって硬化する硬化性液体とからなり、前記硬化性液体が下記一般式(1)で示されるシリコーン化合物を含有する光硬化型液体インクである。
【0034】
【化7】

【0035】
但し、上記一般式(1)中、Rはメチル基又はフェニル基を表し、l及びmは0〜100の整数であり、X,X,Xは置換又は無置換の炭素数1〜18のアルキル基、或いは下記置換基Aを表し、X,X,Xのうち少なくとも1つは置換基Aである。
(置換基A)
【0036】
【化8】

【0037】
但し、上記置換基A中、Yは単結合又はC1〜C4のアルキレン基、R〜Rは水素原子又はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルキル基を有するアルコキシ基、或いはフェニル基を表す。
【0038】
その結果、上記硬化性液体を含有する光硬化型液体インクに光を照射することにより、置換基A中の桂皮酸セグメントの架橋反応により着色剤と共に、上記硬化性液体ごと記録媒体に定着させることができ、記録媒体に滲みや色感の変化のない高品位な画像が達成でき、更に、インクジェット方式では、従来の自然乾燥方法と比較して、画像形成装置の高速化、及び被印刷部の強度を増加させることができ、また、電子写真方式では、従来のように熱でトナーを溶融させて定着させる必要が無く、画像形成装置の高速化、及び低エネルギー消費化することができることを究明した。
【0039】
このように、上記一般式(1)で示されるシリコーン化合物からなる硬化性液体が、(メタ)アクリロキシ基などの官能基を分子中に有する化合物に比較して非常に化学的に安定であるにもかかわらず、優れた硬化性を示す理由は定かではないが、上記シリコーン化合物は、重合反応ではなく置換基A中の桂皮酸セグメントの架橋反応である反応形態の差に起因していると推察される。
【0040】
また、着色剤は、好ましくは表面に酸性基を有する着色樹脂粒子を形成し、更にエポキシ基変性シリコーン化合物及び/又はエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物(即ち、エポキシ基変性シリコーン化合物及びエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物のいずれか一方、又はこれらの併用)で反応処理して着色樹脂粒子表面にシリコーン基が直接結合・被覆されていることにより、分散性・再分散性に優れ、更なる高画質画像を与えることが出来る。
【0041】
なに故、このような効果が齎されるについての詳細な理由は明らかにされていないが、好ましくは表面に酸性基(例えばカルボキシル基)を有する着色樹脂粒子を水系溶媒中で調製したときは、粒子が自己分散性となり、粒子の作成が容易となること、エポキシ基変性シリコーン化合物及びエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物は分散性/分散安定性を改良すること、及び、表面に酸性基を有する着色樹脂粒子はカルボキシル基とエポキシ基との反応で(アルコール性のOH基を有するエステルが形成される)その表面にあたかも”髭”状のものが形成され、この”髭”が硬化性液体(エポキシ基変性シリコーン化合物、エポキシ基を有する長鎖アルキル化合物)と相溶性の高い置換基であることで、硬化性液体中で着色樹脂粒子が「美しく」(極めて均一に)分散し、更に、前記“髭”が着色樹脂粒子と直接結合していることで、分散剤なしで着色樹脂粒子の良好な分散が可能となり、しかも、硬化性インクの液物性の変化(例えば、抵抗値などの物性に対する影響等)を最小限に抑えることができる、ということに起因していると考えられる。
【0042】
前記の表面に酸性基を有する着色樹脂粒子は塩析法で調製することで、非常に簡便な方法で、均質な粒子製造が行われ、更なる高画質画像を与えることが出来る。
【0043】
また、上記本発明による光硬化型液体インクは、前記一般式(1)で示されるシリコーン化合物を含有する硬化性液体中で、表面に酸性基を有する着色樹脂粒子、及びエポキシ基変性シリコーン化合物及びエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物の少なくとも1種を穏和な条件で反応処理する、非常に簡便な方法で製造することが出来るものである。
【0044】
以下、本発明の光硬化型液体インク、及びその製造方法の好適な実施形態について、詳細に説明する。
光硬化型液体インクは、少なくとも着色剤と、光によって硬化する硬化性液体とを含有する。先ず、本発明の硬化性液体として必須成分である下記一般式(1)で示されるシリコーン化合物について説明する。
【0045】
【化9】

【0046】
(但し、上記一般式(1)中、Rはメチル基又はフェニル基を表す。l及びmは0〜100の整数である。X,X,Xは置換又は無置換の炭素数1〜18のアルキル基、或いは、下記置換基Aを表し、X,X,Xのうち少なくとも1つは置換基Aである。)
(置換基A)
【0047】
【化10】

【0048】
(但し、上記置換基A中、Yは単結合又はC1〜C4のアルキレン基、R〜Rは水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルキル基を有するアルコキシ基、或いはフェニル基を表す。)
【0049】
上記式において、X,X,Xの炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基は、置換基Aの反応場の提供、及び一般式(1)で示されるシリコーン化合物の粘性、或いは抵抗値、誘電率等の液物性の調整に使用され、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基としては、下記置換基Cで示されるものが挙げられ、
【0050】
(置換基C)
−CH−CH−Z
(但し、上記置換基Cの一般式中、ZはC1〜C16のアルキル基を示す。)
のC1〜C16のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、及びそれらの位置異性体などが挙げられ、その置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ペプチルオキシ基、オクチルオキシ基、及びそれらの位置異性体などのアルコキシ基が挙げられる。
また、置換基を有するアルキル基としては下記置換基Dで示されるものが挙げられる。
(置換基D)
【0051】
【化11】

【0052】
(但し、上記置換基Dの、Zは単結合又はC1〜C4のアルキレン基、Rはメチル基或いはフェニル基を表し、nは0〜10の整数を示す。)
【0053】
上記置換基AにおけるY、及び置換基DにおけるZの炭素数1〜4のアルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、及びそれらの位置異性体などが挙げられる。
【0054】
本発明の硬化性液体が前記一般式(1)で示されるシリコーン化合物の製造は、一般式(1)中、X,X,Xのうち少なくとも1つは水素原子で示されるメチルハイドロジェンシリコーン化合物と、アルケニル化合物、即ち、置換基A、置換基C又は置換基Dの相当するアルケニル化合物とのヒドロシリル化反応により製造することができる。
(置換基A−アルケニル体の製造)
【0055】
【化12】

【0056】
置換基Aのアルケニル体の製造は、相当するアルコール体(A1)と桂皮酸誘導体(カルボン酸体)(A2)とから、エステル化反応(縮合反応)により製造することができ、エステル化反応は公知の数多くの反応が使用できる。例えば、エステル化反応触媒として、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物1.1モル、トリエチルアミン1.1モル、4−ジメチルアミノピリジン0.1モルの塩化メチレン溶液を作成し、A2(カルボン酸体)1モル、次に、A1(アルコール体)1.1モルを順に添加し、室温下、6時間攪拌反応することで、ほぼ定量的に、目的の置換基Aのアルケニル体を製造することができる。
【0057】
【化13】


A1(アルコール体) A2(カルボン酸体) 置換基A―アルケニル体
【0058】
なお、置換基A−アルケニル体の中で、桂皮酸アリルエステル(Y:単結合、R1=R2=R3=R4=R5=H)は市販されており、その市販品を利用することもできる。
【0059】
置換基Cのアルケニル化合物では、
CH=CH−Z
また、置換基Dのアルケニル化合物では、
【化14】

【0060】
をそれぞれヒドロシリル化反応することにより、置換基C−アルケニル体、置換基D−アルケニル体を製造することができる。ただし、この場合、少なくとも置換基Aに相当するアルケニル化合物の使用は必須である。
【0061】
上記ヒドロシリル化反応は、溶媒の存在下、又は、非存在下において、好ましくは触媒の存在下、室温下、或いは加熱することによって目的の化合物を得ることができ、上記触媒としては、白金触媒が使用できる。反応条件としては、例えば、窒素雰囲気下において溶媒、触媒の存在下室温〜150℃の加熱処理によって合成することができる。更に、反応終了後、低分子量生成物、及び未反応原料を減圧下で留去することが好ましい(ストリッピング処理)。更に、蒸留により精製することが好ましい。
【0062】
白金触媒としては、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒などが挙げられる。これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、及び白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用することができ、2種以上併用してもよい。触媒の使用量には、特に制限はないが、通常、アルケニル基1モルに対して白金触媒を10−1〜10−8モル使用し、10−3〜10−6モルの範囲で使用することが好ましい。触媒量が10−8モルより少ない場合は、ヒドロシリル化反応が充分に進行しないことがある。また、触媒量が多すぎると、原料コストの増大や、触媒残渣の混入により目的物の着色や透明度の低下など問題が発生する。
【0063】
ヒドロシリル化反応で使用される溶媒としては、通常、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、エステル類を使用することができるが、ヘプタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等を使用することが好ましい。
【0064】
本発明の一般式(1)で示されるシリコーン化合物の製造に使用されるメチルハイドロジェンシリコーン化合物は、すでに市販されており、その市販品を利用することが出来る。例えば、両末端タイプとしては、423785(平均分子量:約580、Aldrich社製)、482064(平均分子量:約17500、Aldrich社製)、DMS−H03(分子量:400〜500、Gelest社製)、DMS−H11(分子量:1000〜1100、Gelest社製)、側鎖タイプとしては、482196(平均分子量:約950、Aldrich社製)、482374(平均分子量:約13000、Aldrich社製)、HMS−501(分子量:900〜1200、Gelest社製)、HMS−031(分子量:1900〜2000、Gelest社製)、HMS−071(分子量:1900〜2000、Gelest社製)、HMS−151(分子量:1900〜2000、Gelest社製)、HMS−301(分子量:1900〜2000、Gelest社製)、HMS−991(分子量:1400〜1800、Gelest社製)、SH1107(粘度(25℃):20mm/s、東レダウコーニング社製)、KF−99(粘度(25℃):20mm/s、信越化学工業社製)、KF−9901(粘度(25℃):20mm/s、信越化学工業社製)などが挙げられる。
【0065】
更に、ヒドロシリル化反応では、酸化防止剤の存在下で反応を行うことができる。酸化防止剤としては、ラジカル連鎖禁止剤の機能を有するフェノール系酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、などを用いることができる。同様のラジカル連鎖禁止剤として、アミン系酸化防止剤、例えば、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N,N‘−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジンなどを使用することができる。
【0066】
次に、本発明の光硬化型液体インクの必須成分である着色剤について説明する。
着色剤は、硬化性液体中に、分散剤・分散安定剤等の添加物を用いて分散して使用することができるが、樹脂等により着色樹脂粒子を形成し、硬化性液体中に、必要に応じて分散剤・分散安定剤等の添加物を用いて分散する方が、光硬化型液体インクの均一性が優れていることにより、より好ましい。
【0067】
着色樹脂粒子は、必要に応じて帯電制御剤、ワックスなどの添加剤を含有するものであって、樹脂成分や所望の粒径或いは形状に合わせて従来知られている方法から適宜選択して製造することができる。例えば、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、乳化分散造粒法、コアセルベーション法、シード重合法等の湿式製造法、粉砕法、噴霧乾燥法等の乾式製造法が挙げられるが、均一な球状着色樹脂粒子を高収率で得られる点で、湿式製造法が好ましい。
【0068】
また、着色樹脂粒子はその表面に酸性基を有したものが好ましい。表面に酸性基を有する着色樹脂粒子の作成には、湿式製造法で、しかも連続相に水系溶媒を使用することにより、着色樹脂粒子生成において極性基である酸性基が特異的に粒子表面に形成される点で有利であり、表面に形成された酸性基が、生成した着色樹脂粒子の分散安定化に大きく貢献できること(粒子が自己分散性となること)により好ましい。
【0069】
更に、湿式製造法の中でも、使用可能な樹脂の種類の多さ、分子量調整の容易性、粒径分布のシャープ性等から、乳化分散造粒法、或いはコアセルベーション法により得られる着色樹脂粒子を用いることが望ましい。
【0070】
乳化分散造粒法、或いはコアセルベーション法は、共に使用する樹脂に対する溶解度差を利用して造粒する方法で、従来公知の方法を適宜使用できる。
例えば、乳化分散造粒法は、酸性基を有する樹脂を非水溶性有機溶媒に溶解させてなる樹脂溶液を水系連続相中に乳化分散させてO/W型エマルジョンを形成し、攪拌しながらO/W型エマルジョンより有機溶媒を除去し、樹脂粒子を析出する方法である。また、コアセルベーション法は、酸性基を有する樹脂を水溶性溶剤に溶解し、この樹脂溶液を酸性基を有する樹脂に対して貧溶媒(水系連続相)中に、攪拌しながら、滴下する方法である。この場合、樹脂中又は該樹脂含有の分散液中には、着色剤の他、必要に応じて、分散剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など各種添加剤を均一に溶解、分散するようにしても良い。これらによれば工程が単純化され比較的簡単な操作で樹脂粒子が得られる。従って、生産効率が向上すると共にコストダウンを図ることができる。
【0071】
なお、乳化分散造粒法、或いはコアセルベーション法と同様に、使用する樹脂に対する溶解度差を利用して造粒する方法に、更に工夫された方法として塩析法がある。塩析法は酸性基を有する樹脂を中和により水系溶媒に可溶化した溶液中で、所定の温度で着色剤を分散する。この分散液は、酸性基の塩により着色剤を取り込んだ形で電気二重層の作用により水系溶媒中で安定に分散している。次に、この分散溶液に、電気二重層を破壊、或いは縮小させる電解質を添加することで、中和された樹脂を不安定化させことにより着色剤上に中和された樹脂を析出させ着色樹脂粒子を形成させる方法(塩析法)である。この塩析法は、樹脂溶液から均一系での樹脂の析出であることにより、非常に均一・均質な着色樹脂粒子が得られ、更に、簡便、且つ分散剤或いは分散安定剤の使用を最小とするか、或いは必要が無く、着色粒子に分散剤、或いは分散安定剤の付着の少ない製造方法であることで好適に使用することができる。塩析時の温度は、ガラス転移点(Tg)以下であればいずれの温度でも良いが、[Tg−50]℃以下の温度が更に好ましい。Tg〜[Tg−50]℃の範囲では、塩析条件にもよるが、造粒時に合着が起こり易く、塊状物となる場合ある。
【0072】
上記酸性基を有する樹脂の中和には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニアなどの塩基性化合物が使用される。
【0073】
上記電解質としては、たとえば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウムなどの有機或いは無機の水溶性の塩などを挙げることができる。これらの電解質は、単独でも、或いは、2種以上の物質を混合しても良い。中でも、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムなど、1価のカチオンの硫酸塩が均一な析出を進める上で好ましい。これらの電解質は、攪拌しながら粉体のまま添加しても良いが、より均一性を確保するため、攪拌しながら電解質の水溶液を滴下する方が好ましい。この場合、樹脂中又は該樹脂溶液中には、必要に応じて、分散剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など各種添加剤を均一に溶解、分散するようにしてもよい。
【0074】
上記着色樹脂粒子の粒径分布は、製造される光硬化型液体インク中の表面が修飾された着色樹脂粒子の粒径分布に反映されることから、単分散性の高いものが好ましく、相対標準偏差(CV値)として50%以下であることが好ましい。相対標準偏差(CV値)が50%を超えると上記粒子から製造される光硬化型液体インク中の表面が修飾された着色樹脂粒子の粒径分布が広がり、粒径の不均一性より生じる粒子の特性が著しく損なわれ、例えば、光硬化型液体インクの分散性・分散安定性が損なわれ問題となる。
【0075】
上記相対標準偏差(CV値)は下記式(1)により算定される。
相対標準偏差(CV値(%))=(sd/m)×100 (1)
(上記数式中、sdは粒子径の標準偏差を、mは平均径を示す。)
なお、上記sd、及びmは、粒径アナライザー(FPAR−1000:大塚電子社製)による動的光散乱法により得られる数値である。
【0076】
上記樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン系樹脂等の合成樹脂、ゼラチン、カゼイン、セルロースデンプンなどの天然樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂等で、樹脂中に、酸性基としてカルボキシル基、スルホン酸基、或いはそれらの塩が導入された樹脂であればいずれも適用できる。また、これら樹脂は使用目的に応じて架橋構造を形成したものとしてもよい。上記酸性基を有する樹脂は、酸価が10〜300(mgKOH/g)の範囲内になるように配合されることが更に好ましい。
本発明においては、表面に酸性基を有する着色樹脂粒子の酸価に対して当量値のエポキシ変性シリコーンオイル化合物及び/又はエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物が加えられて、酸性基とエポキシ基の反応がほぼ定量的に行われ、硬化性液体中に拡散していくため、常に新しい酸性基が露出し、反応が進行する。このため、表面に酸性基を有する着色樹脂粒子はその表面に酸性基が統計学的に均一な状態にあると考えられることから、前記酸価は酸性基の量を示すものとみることもできる。
【0077】
酸価が10(mgKOH/g)より以下であると、水系溶媒への親和性が悪化し、結果的に粒子の均一化が損なわれ相対標準偏差値(CV値)が50%を超え場合が生じる。また、酸価が300(mgKOH/g)より以上であると、殆ど特性に向上が見られず、中和にかかるコストが上昇するのみである。従って、酸価としては10〜300(mgKOH/g)なる範囲内では、粒子作成時の分散安定性が向上し、分散剤、或いは分散安定剤の使用量を低減することができ(自己分散型)、結果的に、単分散性が高い粒子が作成でき、更に洗浄回数の低減など操作面、及び環境面でも有利である。このため、上記酸性基を有する単量体は、酸価が10〜300の範囲内になるように配合されることが更に好ましい。
【0078】
上記水系溶媒とは、親水性有機溶媒の水溶液を意味する。また、親水性有機溶媒とは、20℃における水への溶解度が2%以上の有機溶媒を意味する。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、変性エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、3−ペンタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、ピリジン、ジメチルホルムアミド等の窒素原子含有の有機溶媒などが挙げられる。これらの親水性有機溶媒は一種もしくは二種以上の混合物を用いることができる。中でも、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の、低級アルコールがより好ましい。
【0079】
これら親水性有機溶媒と水との混合溶媒により、上記樹脂溶液の分散安定性を制御することができる。
水系溶媒を調整する際の親水性有機溶媒の割合は水系溶媒に対して50重量%以下が好ましい。親水性有機溶媒の割合が50重量%を超えると生成する着色樹脂粒子の合着が起こることがあり、粒子径、及び粒径分布を制御できなくなる場合がある。
【0080】
この場合、粒子径、及び粒径分布は、塩析時の中和された樹脂の析出速度により制御することができる。即ち、析出速度が速い場合は小粒径の、析出速度が遅い場合は大粒径の着色樹脂粒子を形成する傾向が認められた。特に、比較的大粒径の着色樹脂粒子作成の場合は、低攪拌速度、低電解質添加速度が必用となり、生成する着色樹脂粒子の合着が起こる可能性が増し、親水性有機溶媒と水との混合溶媒(水系溶媒)、或いは、分散安定剤などの添加剤等の補助手段が、必要となる場合もある。
【0081】
上記酸性基を有する着色樹脂粒子は、塩析法により、平均粒子径が0.01〜5μmの粒子作成することが好ましい。
製造された着色樹脂粒子の酸価(mgKOH/g)としては3〜200なる範囲内が好ましい。酸価が3以下であると、次工程でのエポキシ基変性シリコーン化合物及び/またはエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物による化学修飾において反応が制限され、着色樹脂粒子表面のシリコーン基、及び/または長鎖アルキル基の機能が充分に発揮されず、良好な分散性・分散安定性が得られず、酸価が200以上であると、殆ど特性の向上が見られず、着色樹脂粒子表面のシリコーン基の機能、及び/または長鎖アルキル基が飽和に達しているものと思われる。
【0082】
次に、上記酸性基を有する着色樹脂粒子の作製に用いる添加剤について説明する。
酸性基を有する着色樹脂粒子を作製する際には、必要に応じて、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤の配合量は、樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部とすることが好適である。界面活性剤としては特に限定されるものではないが、下記のイオン性及び非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。
【0083】
イオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム、等の硫酸エステル、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸塩などが挙げられる。
【0084】
非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリポロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの組み合わせ、ポリエチレングリコールの高級脂肪酸エステル、ポリプロピレンオキシドの高級脂肪酸エステル、アルキルフェノールポリエチレンオキシド、アルキルフェノールポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドアルキルエーテル、ポリプロピレンオキシドアルキルエーテルグリコール、ソルビタンエステルなどが挙げられる。
【0085】
更に、必要に応じて、分散安定剤を添加してもよい。分散安定剤としては、例えば、部分鹸化されたポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスチレン−ポリ(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸−ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩等の高分子分散安定剤、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、ベントナイト等の無機分散安定剤が挙げられる。
【0086】
なお、上記の他、必須成分として着色剤が添加される。着色剤微粒子分散液は、着色剤を水系媒体中、分散することにより調整することができる。着色剤の分散処理は、界面活性剤、或いは分散安定剤が使用でき、これらを単独、或いは適当な組成で混合して使用すればよい。更に、析出法では、中和された酸性基を有する樹脂を着色剤微粒子の分散剤・分散安定剤として好適に使用することができる。
【0087】
着色剤の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモ
ジナイザーや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ダイヤモンドファインミル、ビーズミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0088】
着色剤としては、各種の顔料及び染料を挙げることができる。
有機顔料としては、従来公知の顔料が使用可能で、どのような顔料でも使用することができるが好適な有機顔料としては、例えば、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、銅フタロシアニン、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1,C.I.ピグメント・レッド122,C.I.ピグメント・レッド57:1,C.I.ピグメント・レッド184,C.I.ピグメント・イエロー97,C.I.ピグメント・イエロー12,C.I.ピグメント・イエロー17,C.I.ソルベント・イエロー162,C.I.ピグメント・イエ
ロー180,C.I.ピグメント・イエロー185,C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を挙げることができる。
無機顔料としては、従来公知の顔料が使用可能できる。どのような顔料でも使用することができるが好適な無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、フェライト、マグネタイト等が挙げられる。
これらの着色剤は所望に応じて、単独又は複数を選択併用することが可能である。
【0089】
また、これらの着色剤を予め樹脂によって被覆された、いわゆる加工着色剤(着色樹脂粒子)を使用することができ、具体的には、着色剤と樹脂を二本ロール等で加熱下に混練したカラーチップ(太平化学社製、大成化工社製等)と呼ばれるものや、マイクロリス(チバスペシャリティーケミカルズ社製)、といった市販の加工着色剤を使用することができる。また、加工着色剤は、着色剤を樹脂溶液に分散し、ここに貧溶媒を加えて樹脂を着色剤表面に析出させるコアセルベーション法等、公知のいかなる方法によって得られたものを使用することができる。
【0090】
着色剤の使用量は、着色樹脂粒子(表面に酸性基を有する着色樹脂粒子を含む)に対して2〜50重量%、好ましくは5〜30重量%となるような量が好適である。
また本発明に係わる着色樹脂粒子(表面に酸性基を有する着色樹脂粒子を含む)のガラス転移点(Tg)は特に制限されないが、好ましくは50〜120℃の範囲である。また本発明に係わる樹脂粒子の分子量は特に制限されないが、好ましくは質量平均分子量で2000〜50000である。
【0091】
次に、上記酸性基を有する着色樹脂粒子を製造する方法としては特に限定されず、その製造条件は、使用する着色剤、使用する樹脂、使用する分散剤(或いは分散安定剤)等に応じて設定すればよい。例えば、析出法では、必要に応じて分散剤、或いは分散安定剤が添加された水系媒体中に、上記の着色剤、中和された酸性基を有する樹脂を適宜加えて、分散機によって均一に分散させ、所定の温度に設定し、攪拌しながら、電解質の水溶液を滴下し、更に、同条件で、析出した粒子を硫酸等の酸水溶液により固定化し、酸性基を有する着色樹脂粒子に対して、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行うことにより、着色剤含有の酸性基を有する粒子(酸性基を有する着色樹脂粒子)を製造することができる。
【0092】
次に、表面処理された着色樹脂粒子について説明する。
表面処理された着色樹脂粒子は、上述したような表面に酸性基を有する着色樹脂粒子を、エポキシ基変性シリコーン化合物及び/またはエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物を用いて化学修飾することにより得られる。化学修飾は、主に着色樹脂粒子の表面上の酸性基とエポキシ基の化学反応によるもので、シリコーン基及び/または長鎖アルキル基を着色樹脂粒子の表面にエステル基を介して直接結合させることにより、このシリコーン基及び/または長鎖アルキル基が着色樹脂粒子を被覆し、着色樹脂粒子間の凝集、融着等を生じることなく、着色樹脂粒子が良好な分散性・再分散性、及び長期に亘る分散安定性を達成することができる。前記エポキシ変性シリコーン化合物、及び/またはエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物は、前記表面に酸性基を有する着色樹脂粒子の酸価に対して、1〜5当量添加して化学修飾することが好ましい。
【0093】
一般的に、化学修飾は、表面に酸性基を有する着色樹脂粒子とエポキシ変性シリコーン化合物及び/またはエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物を有機溶媒中で処理することにより製造できる。使用する有機溶媒は、酸性基を有する着色樹脂粒子を溶解することなく、エポキシ基変性シリコーン化合物、及び/またはエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物を溶解、或いは一部溶解できる有機溶媒であれば、いかなる有機溶媒でも使用できるが、ハイドロカーボン、或いはシリコーンオイルなど反応不活性有機溶媒を好適に使用することができる。
【0094】
本発明のエポキシ基変性シリコーン化合物及び/またはエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物について説明する。エポキシ基変性シリコーン化合物は、例えば、下記一般式(4)に示す分子構造を有するものである。
【0095】
【化15】

【0096】
但し、上記式(4)中、R11はエポキシ基、エポキシシクロヘキサン基等のエポキシ基、qは0又は1、R12、及びR13は、独立に単結合、或いは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、炭素数1〜4のアルキレン基、及びそれらの位置異性体、R14は、ジメチルポリシロキサン骨格を有し、末端置換基に炭素数1〜炭素数6の低級アルキル基を有するものが更に好ましく、ジメチルシロキサン単位(重合度)は、1〜50、より好ましくは1〜16である。
【0097】
このエポキシ変性シリコーン化合物はすでに市販されており、その市販品を利用することが出来る。その中でも、好適な具体例としては、(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(東京化成社製)、(3−グリシドキシプロピル)ペンタメチルジシロキサン(アヅマックス社製)等の低分子量エポキシ変性シリコーン、MCR−E11(アヅマックス社製)、MCR−E21(アヅマックス社製)、X−22−173DX(信越化学社製)、FZ−3720(東レダウコーニング社製)、BY16−839(東レダウコーニング社製)、SF8411(東レダウコーニング社製)等の高分子量エポキシ変性シリコーンを挙げることができる。
【0098】
また、エポキシ基を有する長鎖アルキル化合物の好適な具体例としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル化合物、酪酸グリシジルルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ネオデカン酸グリシジルエステル、などの長鎖アルキルカルボン酸エステル化合物などを挙げることができる。
【0099】
次に、表面処理された着色樹脂粒子の製造は、基本的には、着色樹脂粒子中の表面酸性基と、エポキシ変性シリコーン化合物及び/またはエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物中のエポキシ基とが有機溶媒中で衝突することで酸性基のエステル化(反応)が進み、処理(反応)初期では、表面に酸性基を有する着色樹脂粒子は凝集状態にあり、処理(反応)が進むにつれて有機溶媒との相溶性が増加し、処理(反応)後期では凝集状態の殆どが一次粒子分散状態に進行するものと考えられる。
【0100】
従って、本処理は好ましくは攪拌下で行われ、攪拌は、例えば、スリーワンモーターなどの攪拌機により反応液全体が流動する程度に混合すればよい。攪拌翼には平板タービン翼、プロペラ翼、アンカー翼などを用いることが出来る。更に、超音波分散機、機械的ホモジナイザーや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ダイアモンドファインミル、ビーズミル等の媒体型分散機、中でも分散効率の優れる超音波分散機を好適に使用することができる。
更に本処理は必要に応じて加熱下で行うこともでき、室温より80℃、好ましくは室温より50℃である。
【0101】
本発明の光硬化型液体インクについて説明する。
光硬化型液体インクは、少なくとも着色剤と、光によって硬化する硬化性液体とを含有し、該硬化性液体が一般式(1)で示されるシリコーン化合物を含有する。
本発明による光硬化型液体インクの製造は、(i)加工着色剤(表面に酸性基を有する着色樹脂粒子)を硬化性液体中でエポキシ変性シリコーン化合物、及び/またはエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物を用いて化学修飾するする方法、(ii)有機溶媒中で加工着色剤(表面に酸性基を有する着色樹脂粒子)を、エポキシ変性シリコーン化合物、及び/またはエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物を用いて化学修飾することにより得られる着色樹脂粒子を作製後、有機溶媒を除去、或いは濾過により表面処理された着色樹脂粒子単体を分取後、硬化性液体に再度分散する方法があるが、本発明の光硬化型液体インクの製造においては、(i)法である「前記表面処理された着色樹脂粒子作成を硬化性液体中で、1ステップで行う方法」が有効である。これは、表面に酸性基を有する着色樹脂粒子のエポキシ変性シリコーン処理(反応)、及び/またはエポキシ基を有する長鎖アルキル処理(反応)は、結果的にエステル基、及びアルコール性のOH基が生成するのみで、他に添加物(触媒等)の必要もなく、光硬化型インクの液物性に与える影響は非常に少ないことに起因している。
【0102】
更に、本発明の光硬化型液体インク中に、硬化性液体である前記一般式(1)示されるシリコーン化合物中に、粘度、抵抗値、及び誘電率などの液物性調整の目的で必要に応じて非反応性液体を添加することが出来る。
【0103】
この非反応性液体は、高純度石油、或いはシリコーンオイル等で具体的な市販品としては、前記高純度石油では、例えば、アイソパーG,H,L,M(エクソン化学社製)やノルパー12(エクソン化学社製)等が挙げられ、前記シリコーンオイルでは、例えば、SH−200シリーズ(東レ・ダウコーニング社製)、KF−96シリーズ(信越化学社製)、L−45シリーズ(日本ユニカー社製)、及びAKシリーズ(旭化成ワッカーシリコーン社製)等が挙げられる。更に、これらの非反応性液体中、特にシリコーンオイルが好適に使用できる。なお、これら非反応性液体の使用量は、硬化性液体の0〜20重量%で、20重量%を超えると硬化性に問題を招く恐れがあるために好ましくない。
【0104】
本発明の光硬化型液体インクの製造は、表面処理された着色樹脂粒子の含有量としては、光硬化型液体インク全量の0.5〜50重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましい。表面処理された着色樹脂粒子の含有量が0.5重量%未満であると、着色力に乏しく、印刷画像において充分な画像濃度が得られなくなることがある。一方、50重量%を超えると、液体インクの粘度が高くなり、印刷装置における液体インクの搬送性、延伸性、光硬化性に劣るため、良好な印刷画像が得られなくなることがある。
【0105】
また、表面処理された着色樹脂粒子の平均粒子径(重量平均粒径)としては、0.01〜5μmであることが好ましい。5μmより大きな着色樹脂粒子は、画質低下を生じるだけでなく、静置しておくと沈降しやすく、着色樹脂粒子の凝集を招く恐れがある。また、0.01μm以下では、凝集力が増加し、取り扱いが困難となる。また、表面処理されていない着色樹脂粒子が用いられた光硬化型液体インクにおいても、その着色樹脂粒子の平均粒子径(重量平均粒径)としては、0.01〜5μmであることが好ましい。
【0106】
更なる方法として、前述のように、析出法等によって製造された小粒径の着色樹脂粒子を使用せずに、本発明による前記一般式(1)示されるシリコーン化合物を含有する硬化性液体中に、直接、市販の着色剤、或いは前記加工着色剤(着色樹脂粒子)を分散する方法を使用することができる。この場合、必要に応じて分散剤、或いは分散安定剤を添加することができる。
【0107】
分散剤、及び分散安定剤としては、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好適に使用できる。ポリエーテル変性シリコーンオイルの具体的市販品としては、KF−945,KF−6020,KF−352A,KF−353,KF−615A,X−22−4515,KF−6012,KF−6015,KF−6017(以上、信越化学社製)、及びFZ−2154,FZ−2191,FZ−2130,SH−8400,FZ−2123(以上、東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられ、中でもHLB値が2〜10のポリエーテル変性シリコーンオイルが好適に使用することができ、更にKF−945,KF−6020、FZ−2154,FZ−2130などHLB値が4〜7のポリエーテル変性シリコーンオイ
ル好適に使用することができる。
【0108】
本発明の光硬化型液体インクに含まれるその他の成分としては、ワックス、電荷制御剤等が挙げられる。
【0109】
ワックスとしては、特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、パラフィン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリエステル系ワックス、アルコール系ワックス、ウレタン系ワックス等が挙げられる。これらのワックスは、一種単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0110】
電荷制御剤としては、特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ジアルキルスルホコハク酸コバルト、ジアルキルスルホコハク酸マンガン、ジアルキルスルホコハク酸ジルコニウム、ジアルキルスルホコハク酸ニッケル等のスルホコハク酸金属塩;ナフテン酸マンガン、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉄、ナフテン酸ニッケル等のナフテン酸金属塩;オクチル酸マンガン、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸カルシウム、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト等のオクチル酸金属塩;ドデシル酸カルシウム、ドデシル酸マンガン、ドデシル酸ジルコニウム、ドデシル酸マンガン、ドデシル酸マグネシウム等のドデシル酸金属塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸バリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸金属塩;レシチン、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属錯体、アゾ系化合物等の含金属色素、四級アモニウム塩、ニグロシン等のアジン色素等が挙げられる。これらは一種単独で使用しても良く、二種以上を併用しても良い。
【0111】
また、本発明の光硬化型液体インクには、更に、必要に応じて公知の添加剤を加えてもよい。例えば、分散剤、熱安定剤、防腐剤、表面張力調整剤、重合禁止剤、酸化防止剤、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が挙げられる。特に、重合禁止剤は、硬化性液体の官能性不飽和基を持ったモノマー或いはオリゴマーが熱などにより反応しないように添加されるものである。重合禁止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−クレゾール、アントラキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどが挙げられ、中でも2,6−ジ−tert−ブチル−4−クレゾールは光硬化型液体インクの液物性に与える影響は非常に少ないことにより好適に使用される。これらを単独、或いは二種以上併用しても良い。
【0112】
更に、本発明の光硬化型液体インクは、前記一般式(1)示されるシリコーン化合物よりなる硬化性液体の硬化を開始する光重合開始剤も含有することが出来る。光重合開始剤としては、特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができ、この光重合開始剤の好適な具体例は、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフ
ェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、及びp−ジメチルアミノベンゾアート、等がある。
これらはそれぞれ単独で用いても良いし二以上兼用しても良い。光重合開始剤量は、通常は光硬化型液体インク総量に対して0.05重量%〜20重量%、好ましくは0.2重量%〜15重量%の範囲で用いることが好ましい。これら光重合開始剤は像の現像前、または現像後に添加することが出来る。
【0113】
更に光硬化型液体インクの作成方法としては、前記加工着色剤(着色樹脂粒子)を好適に使用することができる。即ち、前記加工着色剤の中で、特にキャリアレジンとして酸性基を有する樹脂を使用している場合、酸性基を有する加工着色剤を、本発明の前記一般式(1)示されるシリコーン化合物よりなる硬化性液体中で、エポキシ基変性シリコーン化合物、及び/またはエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物を用いて化学修飾することにより、着色剤の分散と、キャリアレジンの酸性基とエポキシ基の反応により分散安定剤の作成が同時に進行することにより、非常に優れた光硬化型液体インクを製造することができる。
【0114】
また、本発明のインクジェット用光硬化型液体インクには、更に、必要に応じて公知の添加剤を加えてもよい。例えば、分散剤、熱安定剤、防腐剤、表面張力調整剤、重合禁止剤、酸化防止剤、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が挙げられる。
特に、重合禁止剤は、光硬化型の電気絶縁性液体の官能性不飽和基を持ったモノマー或いはオリゴマーが熱などにより反応しないように添加されるものである。重合禁止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−クレゾール、アントラキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらを単独、或いは二種以上併用しても良い。
更に、ゼータ電位に起因する分散安定の目的で、電子写真方式用光硬化型インクで例示した電荷制御剤を添加しても良い。電荷制御剤は一種単独で使用しても良く、二種以上を併用しても良い。
【0115】
次に本発明による光硬化型液体インクの光硬化方法について説明する。
本発明の光硬化型液体インクによる像の形成後、形成された液体インク像に光照射して液体インク像上の硬化性液体を固化させる。光硬化は、記録媒体に転写前、または転写後に行うことができる。転写前光照射は、形成した液体インク像を転写前に部分的に硬化させ、形成した液体インク像に表面粘着性を与え、記録媒体への転写を促進する(粘着転写法)。更に転写後の光照射により硬化が進行し、液体インク像の記録媒体への接着を大いに促進することが出来る。光硬化は公知の適当な方法により行うことが出来、光重合開始剤を用いる場合、硬化は紫外線のような活性エネルギー線により開始剤が感応性である波長の活性エネルギー線を液体インク像に照射、露光させることによって行う。
【0116】
ここで使用される活性エネルギー線は、電子線、紫外線、可視光線のいずれかであることが好ましく、活性エネルギー線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、300nm〜450nmであることが好ましい。本発明の光硬化型液体インクに適用される硬化系に使用される活性エネルギー線は、露光面照度が、好ましくは10〜2,000mW/cmで照射されることが適当である。活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザーが主に利用されており、特に、紫外線硬化型液体インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。
しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、LED(light emitting diode)(UV−LED)、LD(UV−LD)は、小型、高寿命、高効率であり、光硬化型液体インク用光源として期待されている。
【0117】
一般的に、光硬化型液体インクに求められる特性としては以下のようなものが挙げられる。
【0118】
(硬化性)
液体インクを用いてグラフィックアート、サイン、ディスプレイ、ラベル等の画像を形成する際には、当然のこととして高い生産性が求められる。また、記録媒体上に付与された液体インクはその流動性によって記録媒体上を移動し、流れ、滲み、弾きといった画像品質に不具合を生じることがある。これを低減、防止するためにも光照射によって迅速に硬化し記録媒体上で定着する性質が非常に重要である。
【0119】
(液体特性)
液体インクを記録媒体に付与するにあたり、高速で駆動するためには比較的低粘度で、しかも着色剤、或いは着色樹脂粒子の分散性・分散安定性の優れた液体特性が好ましいとされている。また同時に、近年の高画質化で着色剤、或いは着色樹脂粒子の小粒径化が望まれており、これら低粘度、高分散性、小粒径化など、相反する性質が高度に、且つ複合して満たされることが重要である。
【0120】
(硬化膜特性)
硬化膜に求められる特性には大きく3つに分けられる。1つは硬化膜の強度である。ディスプレイやラベル等に用いられる場合、ユーザーによる擦り、引っ掻き、筆記、また砂塵の影響等により画像にダメージが与えられることがあり、それに対し画像を保つための膜強度が必須となる。またもう1つは記録媒体に対する密着力である。様々な環境に晒されたり、丸め、折り曲げ等の力を受けることによって画像が記録媒体から浮いたり剥がれたりするようなことがあってはならず、そのために硬化膜が記録媒体に対して強く均一に密着することが求められている。更にもう1つは硬化膜のべたつきである。例えば、硬化後の膜が糊状のべたつきを有していると、画像同士のくっつきや汚れの吸着等が起こり、画像としての価値が著しく損なわれかねない。従って、硬化膜のべたつきの少ない皮膜となることも重要な特性である。
【0121】
(安定性)
液体インクは、通常のインクと同様に、市場に流通し、貯留され、また装置内に滞留する可能性がある。従って、社会通念上許容できない範囲の短時間において成分が分解したり、増粘、硬化などを起こし性能を損なうことは避けなければならない。もちろん、硬化特性が充分持続することも重要な特性の1つである。また、通常これらの液体インクは分散剤、或いは分散安定剤などの各種添加物と混合されて使用する場合が多いが、その際その添加物と反応して本来の特性が損なわれるようなことがあってはならない。
【0122】
本発明による前記一般式(1)で示されるシリコーン化合物を含有する光硬化型液体インクは、これらの特性を充分に満足できると同時に、従来のメタクリロキシ基などの官能基を分子中に有する化合物に比較して化学的に安定、且つ安全性に優れた化合物である。さらに、該光硬化型液体インクは、地肌汚れや画像ボケのない高解像度の画像を与えることができる。
【0123】
更に、本発明による着色樹脂粒子を塩析法により、比較的単分散性の高い均質な粒子を簡便な方法で製造することができ、粘度、抵抗値、誘電率等の液物性に係わる基本特性の安定性を高め、更に、着色樹脂粒子表面に有するシロキシル基、及び/又は長鎖アルキル基により、分散剤等の添加物の使用最小限に、或いは添加物を必要とせず、着色樹脂粒子の分散性・再分散性に優れ、これら総合的結果として、光硬化型液体インクは、非常に高解像度、及び高安定性となる。また、本発明による光硬化型液体インクは、非常に簡便な方法で製造することができるため、液体インク特性が安定し、良好な品質の印刷像を信頼性高く製造することができる。
【0124】
次に、上記本発明による光硬化型液体インクを使用した電子写真方式の現像装置及び画像形成装置について、図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本発明による一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。図2は、本発明による他の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【0125】
図1には、本発明の一実施例としての画像形成方法で用いる画像形成装置の概略構成を示した。この画像形成装置は図示しない基枠のほぼ中央に潜像担持体である感光体ドラム1(例えば有機感光体:OPC)を配し、感光体ドラム1を紙面垂直の図示しない回転軸線回りに回転可能に装備する。この感光体ドラム1の上方には原稿を載置する原稿載置面(図示せず)が設けられ、原稿載置面の原稿画像は周知の図示しない画像読み取り素子に画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化されて画像処理され、周知の光書き込み部3に送られ、光書き込み部3は光書き込みを感光体ドラム1上に行う。
【0126】
この際、既に帯電チャージャー2により一様に帯電されて光書き込み部3に達した感光体ドラム1の表面には静電潜像が形成される。この静電潜像は、イレーズランプ4によって所定エリアの潜像を除去され、感光体ドラム1の側方に対設された現像装置5に達する。現像装置5は現像液で静電潜像を可視像であるトナー像化し、このトナー像は、転写装置6に達して、図示しない給紙部から送られてきた記録シートである転写紙Pに転写チャージャー8のコロナ放電により転写される。この後、トナー像が転写された転写紙Pは図示しない分離チャージャーにより感光体ドラム1の表面より分離され、図示しない定着部で転写紙上のトナー像が定着された後に基枠外の図示しない排紙トレイへ排出される。なお、転写後において感光体ドラム1の表面に残留している現像液はクリーニング装置9により除去され、除電ランプ10で一様に除電され、次の画像形成行程に進む。
【0127】
次に、図1中の現像装置5、転写装置6及びクリーニング装置9を更に説明する。現像装置5は硬化性液体を含有するキャリア液に着色剤よりなるトナー粒子が分散されてなる液体インクを用いる湿式の現像装置であり、基枠に支持されると共に感光体ドラム1の外周面に向けて開口する容器51と、容器51内に枢支される現像電極としての現像ローラ52及び余剰液除去手段としてのスクイズローラ53と、容器51の内壁に支持され現像ローラ52に下端が摺接する現像ローラスクレーパ55と、容器51の内壁に支持されスクイズローラ53の外周面の液体インクを除去するスクイズローラスクレーパ57と、液体インク供給管系58の供給ノズル54とを装備する。ここで、現像ローラ52及びスクイズローラ53の両回転軸線は図1の紙面垂直方向に配置され、感光体ドラム1の外周面の回動方向に沿って上流側に現像ローラ52が、下流側にスクイズローラ53が順次並列状に配備される。
【0128】
現像ローラ52はその外周面が感光体ドラム1の外周面に間隔Aを介し配設されると共にその外周面が感光体ドラム1の外周面の移動方向aと同方向bに移動するように回転駆動手段80により駆動される。スクイズローラ53はその外周面が感光体ドラム1の外周面に間隔Bを介して配設されると共にその外周面が感光体ドラム1の外周面の移動方向aと逆方向cに移動するように回転駆動手段81により駆動される。現像ローラスクレーパ55はその後端部が摺動アクチュエータ551に支持され、摺動アクチュエータ551は制御手段64に図示しない接続回路を介して連結される。現像ローラスクレーパ55はその下端が現像ローラ52の外周面に摺接する位置と、外周面より離脱する図示しない退却位置とに切換え移動可能に構成されている。各回転駆動手段80,81は各回転伝達系を介し回転源である図示しないモータ側に連結されており、現像ローラ52、スクイズローラ53が所定の回転速度で回転されるように、各回転駆動手段80,81は制御手段64によって駆動制御されている。なお、感光体ドラム1にも回転駆動手段82が装備され、この回転駆動手段82も制御手段64によって駆動制御されている。
【0129】
現像ローラ52外周面であって、感光体ドラム1と反対側面には現像ローラスクレーパ55の下端が摺接し、両者間に楔状部56が形成される。楔状部56はその上方に液体インク供給管系58の供給ノズル54を対向配備する。液体インク供給管系58はポンプ582を装備するパイプ581を介し液体インクタンク583に連結される。液体インクタンク583には容器51から戻る液体インクが収容され、図示しないトナー濃度調整手段によってキャリア液とトナーとの比率が一定の許容域内に保持されるように制御されている。ポンプ582を駆動するポンプモータ68は電源69に駆動スイッチ70を介し接続され、駆動スイッチ70は制御手段64によってオンオフ制御される。
【0130】
現像ローラ52は現像電極を兼ねるもので、誘電体の表皮面の内側に導電体を備え、同導電体はバイアス回路60に接続される。バイアス回路60は現像ローラ52にバイアス電圧スイッチ63を介し第1、第2電源61,62に接続される。第1電源61は液体インク中のトナーを現像ローラ52側に吸引する電圧を印加し、第2電源62は現像液中のトナーを現像ローラ52より離脱させる電圧を印加するように構成され、そのバイアス電圧スイッチ63は制御手段64によって切換え制御される。なお、ここでの電源は第1電源61のみとし、バイアス電圧スイッチ63を排除しても良い。
【0131】
スクイズローラ53は間隔Bを保って感光体ドラム1表面の移動方向と逆方向に回転移動する。これにより感光体面に付着する液体インクの液膜厚さを規制するもので、掻き取られた液体インクはスクイズローラスクレーパ57によって容器51の下部に流下する。このスクイズローラ53は誘電体の表皮の内側に導電体を備え、同導電体はバイアス回路73に接続される。バイアス回路73はスクイズローラ53をバイアス電圧スイッチ67を介し第1、第2電源65,66に切換え接続する。第1電源65は液体インク中のトナーをスクイズローラ53側に吸引する電圧を印加し、第2電源66は液体インク中のトナーをスクイズローラ53より離脱させる電圧を印加するように構成され、そのバイアス電圧スイッチ67は制御手段64によって切換え制御される。
【0132】
感光体ドラム1の外周面に対向し、現像ローラ52対向部より回転方向aにおいて下流側で、スクイズローラ53対向部より上流側に液体インク補給手段90が配備される。この液体インク補給手段90はスクイズローラ53と感光体面とが対向する補給位置Cに補給液としての液体インクを直接供給できる。この液体インク補給手段90は感光体ドラム1表面に対設される補給液ノズル91と、同ノズルと液体インクタンク583を連結可能な補給液供給管系92と、補給液供給管系92上のポンプ93とで構成される。ポンプ93を駆動するポンプモータ94は電源69に駆動スイッチ95を介し接続され、駆動スイッチ95は制御手段64によってオンオフ制御される。
【0133】
転写装置6はベルト状に形成され、その表面が誘電体で覆われた転写部材12と、転写位置の感光体面に転写部材12を介して対向配備される転写チャージャ8とを備える。この転写装置は駆動時において、転写チャージャ8のコロナ放電により、感光体ドラム1のトナー像を転写紙Pに転写する。この時、ベルト状の転写部材12は図示しない駆動手段によって感光体ドラム1の外周面と同速度で移動操作され、供給された転写紙Pを感光体ドラム1の感光体面に接触させつつ同速度で移動させ、転写チャージャ8によって付与された電気力によって感光体面のトナー像を転写紙P上へ転写する。クリーニング装置9は転写処理後に感光体ドラム1に残留する液体インクを除去するもので、感光体ドラム1に対し
接離可能な可動板部材13と可動板部材13を実線で示すクリーニング位置と破線で示す退却位置とに切換えるアクチュエータ71とで構成される。アクチュエータ71はソレノイドであり、その駆動出力は制御手段64の指令を受けた駆動回路72より出力される。
【0134】
記録媒体P上に転写されたカラーの液体インク像は、定着用光照射手段120によって紫外線が照射されて光硬化が行なわれて、記録媒体P上に定着される。
以上のようにして記録媒体P上に着色樹脂粒子を含む着色画像が適切に定着されて着色画像が記録媒体P上から剥離することを確実に防止されるようになっている。
【0135】
次に、図2に基づいて、記録媒体P上にカラー画像を形成する場合について説明する。
図2に示すカラー画像を形成する電子写真方式の画像形成装置200は、矢印A方向に回転する像担持体としてのドラム状の光導電体101と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの光硬化型液体インクを供給する液体インク供給手段40Y、40M、40C,40Bを有する現像装置5と、駆動ローラ115a、支持ローラ115b、115cに張架されて矢印F方向に移送される無端状の中間転写ベルト112とを備えている。
【0136】
現像装置5は、駆動ローラ121と支持ローラ122に張架されて矢印D方向に移送される無端状の搬送ベルト117を備えている。そして、この搬送ベルト117に液体インク供給手段40Y、40M、40C,40Bからイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの光硬化型液体インクが供給され、コロナ放電部113によって供給された光硬化型液体インク中の着色剤よりなるトナー粒子が帯電されて支持ローラ122上で光導電体101に光硬化型液体インクが供給されるようになっている。インク供給手段40Y、40M、40C,40Bは、それぞれ、トナー粒子と前述の一般式(1)で示すシリコーン化合物を含有する硬化性液体とを含有するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック光硬化型液体インクを収容する液体インク容器106Y、106M、106C、106Bを備えている。そして、これらの液体インク容器106Y、106M、106C、106Bから矢印C方向に回転しながら光硬化型液体インクを汲み上げる液体インク供給ローラ107Y、107M、107C、107Bと、液体インク供給ローラ107Y、107M、107C、107Bから所定塗布厚みで供給された光硬化型液体インクを搬送ベルト117の表面に矢印B方向に回転しながら供給する現像ローラ105Y、105M、105C、105Bを備えている。
【0137】
この場合、液体インク供給手段40Y、40M、40C,40Bからのイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの光硬化型液体インクの搬送ベルト117への供給は、それぞれの色に対応した画像情報に応じて書き込み露光部104によって形成された光導電体101上のそれぞれの色に対応する静電潜像に応じて行なわれるようになっている。即ち、イエローの静電潜像が形成された場合には、イエローの液体インク供給手段40Yからイエローの光硬化型液体インクのみが搬送供給ベルト117に供給されて光導電体101の静電潜像に対して供給されてイエローの硬化型液体インクに現像される。このようにして形成されたイエローの硬化型液体インク像は、コロナ放電器114で帯電されて、一次転写ローラ123によって中間転写ベルト112上に転写される。同様に、マゼンタの画像に対する液体インク像を形成する場合には、硬化型液体インク供給手段4Mからマゼンタの光硬化型液体インクが光導電体101に供給されてマゼンタの硬化型液体インク像が形成される。そして、このマゼンタの硬化型液体インク像は、中間転写ベルト112上に転写されたイエローの硬化型液体インク像上に重ねて転写される。以下同様にして中間転写ベルト112上の液体インク像上にシアン及びブラックの硬化型液体インク像が重ねて転写されてカラー画像が形成されるようになっている。
【0138】
このようにして形成された中間転写ベルト112上のカラーの硬化型液体インク像は、転写前光照射手段119によって硬化型液体インク像は部分的に硬化されて表面粘着性が付与される。このようにして表面粘着性が付与された硬化型液体インク像は、レジストローラ109によってタイミングを図って矢印E方向に搬送された転写用紙等の記録媒体P上に、二次転写ローラ124によって転写される。記録媒体P上に転写されたカラーの液体インク像は、定着用光照射手段120によって紫外線が照射されて光硬化が行なわれて、記録媒体P上に定着される。
【0139】
なお、この画像形成装置200においては、搬送ベルト117上や光導電体101に残存した光硬化型液体インクは、それぞれクリーニングローラ118及びクリーニングローラ110、クリーニングブレード111によって除去、クリーニングされて初期の状態に復帰するようになっている。
以上のようにして記録媒体P上に着色剤を含む着色画像が適切に定着されて着色画像が記録媒体P上から剥離することを確実に防止されるようになっている。
【0140】
次に、本発明による上記光硬化型液体インクを記録媒体に飛翔させ記録ドット形成することにより印字を行うインクジェット記録法に適用する場合について説明する。
【0141】
インクを記録媒体に飛翔させ記録ドット形成することにより印字を行うインクジェット記録法は、カラー化が容易で普通紙に直接記録できるノンインパクト記録法として関心を集めており、この方式を用いたプリンターが種々実用化されている。インクジェット記録法としては、オンデマンド(随意噴射)とコンティニアス(連続噴射)の方式がある。更に、コンティニアス型では静電方式(Sweet型、Hertz型)、オンデマンド型ではピエゾ圧電方式、シェアモードピエゾ圧電方式、サーマルインクジェット方式と呼ばれる記録方式等が知られている。オンデマンド型インクジェット記録方法の一つとして、例えば、一ノ瀬進、大庭有二、電子通信学会論文誌Vol.J66−C(No.1),P47(1983)、及び、大野忠義、水口衛、画像電子学会誌Vol.10(no.3),P157(1981)に記載された静電加速型インクジェット、或いはスリットジェットと呼ばれる方式が知られている。
【0142】
本発明による前記一般式(1)示されるシリコーン化合物を含有する硬化性液体を使用した光硬化型液体インクは、ピエゾ圧電方式、シェアモードピエゾ圧電方式に好適に使用することができる。ただし、上記の電子写真方式用光硬化型液体インクと異なるのは、基本的に着色樹脂粒子径がインクジェットヘッドのノズル径より小粒径でなければならない制約条件が加わる点である。具体的には、表面処理された着色樹脂粒子は0.01〜0.5μmであることが好ましいが、0.01〜0.3μmであることがより好ましい。
また、静電加速型インクジェットは、基本的にインクジェットヘッドのノズルがないので、着色樹脂粒子径に制約がないので、電子写真方式用光硬化型インク、及びピエゾ圧電方式、シェアモードピエゾ圧電方式用光硬化型液体インクのいかなる液体インクも使用可能である。
【実施例】
【0143】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、ここでの「部」は重量基準である。
先ず、液体インクの評価に用いる方法と装置を下記に示す。
【0144】
(粒径、及び相対標準偏差(CV値)の測定)
・測定装置:粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子社製)試料:1.0重量%水溶液で測定した。
(酸価の測定)
・JIS K0070に従って測定した。
(粘度の測定)
・回転粘度系により測定した25℃における値を示す。
【0145】
合成例I−1
(塩析法による表面に酸性基を有する着色樹脂粒子の作製)
予め、水350.2部、1N−水酸化カリウム9.17部、及びカルボキシル基を有するスチレンアクリル樹脂(UC−3900、Mw=4600、酸価=112mgKOH/g、Tg=60℃:東亞合成社製)50部よりなる10重量%のUC−3900水溶液を用意しその10重量%のUC−3900水溶液240部、フタロシアニンブルー(C.I.ピグメントブルー15:3)10部を、2mmφジルコニアボールにて12時間ボールミル処理し、ボールミル着色剤分散液を作成した。
【0146】
続いて、予め用意しておいた攪拌機、温度計、及び滴下ロートを装着した1000mlのセパラブルフラスコに、上記ボールミル着色分散液よりジルコニアボールを除去した着色剤分散液、及びメタノール27部を投入し、攪拌を行いながら、5℃に冷却し、冷却下で飽和硫酸アンモニウム水溶液107.01部を1時間を要して滴下した。更に同条件で2時間攪拌を行い、その後、0.1N−HSOにて酸性とし、濾過し、水洗処理を2回行い、凍結乾燥処理を行うことにより、表面にカルボキシル基を有する着色樹脂粒子(A)が28.09部得られた。
この粒子の粒度分布測定を行ったところ、平均粒径:1.7μmであり、その相対標準偏差(CV値)は28%であった。酸価は52mgKOH/gであった。
【0147】
合成例I−2
(塩析法による表面に酸性基を有する着色粒子の作製)
予め、水537.68部、1N−水酸化カリウム92.32部、及びカルボキシル基を有するアクリル酸エステル/アクリル酸共重合樹脂(UC−3000、Mw=10000、酸価=74mgKOH/g、Tg=65℃:東亞合成社製)70部よりなる10重量%のUC−3000水溶液を用意し、その10重量%のUC−3000水溶液120部、及びフタロシアニンブルー(C.I.ピグメントブルー15:3)3部を、2mmφジルコニアボールにて12時間ボールミル処理し、ボールミル着色剤分散液を作成した。
【0148】
続いて、予め用意しておいた攪拌機、温度計、及び滴下ロートとを装着した500mlのセパラブルフラスコに、上記ボールミル着色分散液よりジルコニアボールを除去した着色剤分散液、メタノール57部、及び水120部を投入し、攪拌を行いながら、5℃に冷却し、冷却下で飽和硫酸アンモニウム水溶液80.23部を2時間を要して滴下した。更に同条件で2時間攪拌を行い、その後、0.1N−HSOにて酸性とし、濾過し、水洗処理を2回行い、凍結乾燥処理を行うことにより、表面にカルボキシル基を有する着色樹脂粒子(B)が14.35部得られた。
この粒子の粒度分布測定を行ったところ、平均粒径:0.8μmであり、その相対標準偏差(CV値)は32%であった。酸価は38mgKOH/gであった。
【0149】
合成例I−3
(塩析法による表面に酸性基を有する着色粒子の作製)
上記合成例I−1で作成した10重量%のUC−3900水溶液120部、及びフタロシアニンブルー(C.I.ピグメントブルー15:3)3部を2mmφジルコニアボールにて12時間ボールミル処理し、ボールミル着色剤分散液を作成した
【0150】
続いて、予め用意しておいた攪拌機、温度計、及び滴下ロートとを装着した500mlのセパラブルフラスコに、上記ボールミル着色分散液よりジルコニアボールを除去した着色剤分散液、及び水177部を投入し、攪拌を行いながら、5℃に冷却し、冷却下で飽和硫酸アンモニウム水溶液90部を1時間を要して滴下した。更に同条件で2時間攪拌を行い、その後、0.1N−HSOにて酸性とし、濾過し、水洗処理を2回行い、凍結乾燥処理を行うことにより、表面にカルボキシル基を有する着色樹脂粒子(C)が14.76部得られた。
この粒子の粒度分布測定を行ったところ、平均粒径:0.11μmであり、その相対標準偏差(CV値)は25.4%であった。酸価は65mgKOH/gであった。
【0151】
比較合成例I−4
(コアセルベーション方法によるトナー粒子の作成)
温度計と環流冷却器とを装着した容器に、分岐鎖脂肪族炭化水素アイソパーG(エッソ石油社製)800部、トルエン480部、エタノール300部を投入し、更にエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物(デュミランC−2280、武田薬品工業社製)66.7部、フタロシアニンブルー(C.I.ピグメントブルー15:3)13.3部、及びリン酸エステル系界面活性剤(プライサーフAL、第一工業製薬社製)8部を加えて、70℃で3時間加熱下高速攪拌し、フタロシアニンブルーの分散液を作製した。
【0152】
このフタロシアニンブルーの分散液を、弱攪拌下で30℃まで徐冷し、更に、減圧下でトルエン、及びエタノールを留去し、着色樹脂粒子を析出させ、更に、濾過により分取し、減圧乾燥処理を行うことにより着色樹脂粒子(D)が76.4部得られた。
この粒子の粒度分布測定を行ったところ、平均粒径:2.3μmであり、その相対標準偏差(CV値)は320%であった。
【0153】
合成例II−1
(上記一般式(1)で示されるシリコーン化合物の合成)
攪拌機、温度計、環流冷却器、滴下ロート、及び窒素導入管を装着した500mlの容器に、置換基Aのアルケニル化合物である桂皮酸アリルエステル(東京化成社製)116.2部、安定剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT:東京化成社製)0.14部、トルエン50部、及び2%白金/1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(Aldrich社製)1.18部を窒素気流下、攪拌しながらメチルハイドロジェンシリコーン化合物(ポリ(ジメチルシリコーン/メチルヒドロシリコーン(モル比50%)共重合体、分子量:約950、Aldrich社製)100部、及びトルエン50部からなる溶液を30分を要して滴下し、更に、徐々に加温しながら100℃にて4時間反応を行い、放冷後、80℃で10mmHgの減圧下で溶媒、及び原料を留去し(ストリッピング処理)、赤外線吸収スペクトルにてSi−Hの吸収(2155cm−1)の消失を確認し、目的の側鎖ペンダントに桂皮酸エステルセグメントを有するシロキサン化合物(M1)を213.4部(98.7%)得た。
【0154】
合成例II−2
(上記一般式(1)で示されるシリコーン化合物の合成)
合成例II−1において、桂皮酸アリルエステル(東京化成社製)116.2部の代わりに、桂皮酸アリルエステル(東京化成社製)58.1部、及び1−デセン(東京化成社製)43.3部に代えた以外は合成例II−1と同様に反応、処理を行い、目的の側鎖ペンダントに桂皮酸エステルセグメント/デカン(長鎖アルキル基)を有するシロキサン化合物(M2)を197.2部(97.9%)得た。
【0155】
合成例II−3
(上記一般式(1)で示されるシリコーン化合物の合成)
攪拌機、温度計、環流冷却器、滴下ロート、及び窒素導入管を装着した500mlの容器に、置換基Aのアルケニル化合物である桂皮酸アリルエステル(東京化成社製)58.1部、シリコーン基を有するアるケニル化合物であるアリルトリメチルシラン(東京化成社製)35.3部、安定剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT:東京化成社製)0.14部、トルエン50部、及び2%白金/1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(Aldrich社製)1.18部を窒素気流下、攪拌しながらメチルハイドロジェンシリコーン化合物(ポリ(ジメチルシリコーン/メチルヒドロシリコーン(モル比50%)共重合体、分子量:約950、Aldrich社製)10部、及びトルエン50部からなる溶液を30分を要して滴下し、更に、徐々に加温しながら80℃にて6時間反応を行い、放冷後、80℃で10mmHgの減圧下で溶媒、及び原料を留去し(ストリッピング処理)、赤外線吸収スペクトルにてSi−Hの吸収(2155cm−1)の消失を確認し、目的の側鎖ペンダントに桂皮酸エステルセグメント/トリメチルシリルプロピル基を有するシロキサン化合物(M3)を179.0重量部(92.6%)得た。
【0156】
合成例II−4
(上記一般式(1)で示されるシリコーン化合物の合成)
攪拌機、温度計、環流冷却器、滴下ロート、及び窒素導入管を装着した500mlの容器に、置換基Aのアルケニル化合物である桂皮酸アリルエステル(東京化成社製)189.6部、安定剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT:東京化成社製)0.22部、トルエン50部、及び2%白金/1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(Aldrich社製)1.83部を窒素気流下、攪拌しながらメチルハイドロジェンシリコーン化合物1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(Aldrich社製)100部、及びトルエン50部からなる溶液を30分を要して滴下し、更に、徐々に加温しながら100℃にて4時間反応を行い、放冷後、80℃で10mmHgの減圧下で溶媒、及び原料を留去し(ストリッピング処理)、赤外線吸収スペクトルにてSi−Hの吸収(2155cm−1)の消失を確認し、目的の両末端に桂皮酸エステルセグメントを有するシロキサン化合物(M4)を266.8部(95.1%)得た。
【0157】
〔実施例1〕
100mlのビーカーに、合成例I−1で得られた表面にカルボキシル基を有する着色樹脂粒子(A)1部、合成例II−1で得られた側鎖ペンダントに桂皮酸エステルセグメントを有するシロキサン化合物(M1)48.69部、エポキシ変性シリコーンオイル化合物(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(東京化成社製)を着色樹脂粒子(A)の酸価に対して当量値である0.31部を加え、超音波分散機(出力:130W、周波数:20kHz、パルサー方式)で、2時間分散処理し、更に15重量%オクチル酸ジルコニウム(日本化学産業社製)1部を加え、硬化型液体インク(1)を得た。
この硬化型液体インク(1)は、平均粒径:1.7μm、相対偏差値(CV値):28%、であった。また、この分散液を20日間の保存試験をしたところ、平均粒径:1.7μm、で凝集も起こらず、非常に優れた保存安定性を示した。
【0158】
〔実施例2〕
100mlのビーカーに、合成例I−1で得られた表面にカルボキシル基を有する着色樹脂粒子(A)2.5部、合成例II−1で得られた側鎖ペンダントに桂皮酸エステルセグメント/デカン(長鎖アルキル基)を有するシロキサン化合物(M2)46.72部、エポキシ変性シリコーンオイル化合物(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(東京化成社製)を着色樹脂粒子(A)の酸価に対して当量値である0.78部を加え、超音波分散機(出力:130W、周波数:20kHz、パルサー方式)で、2時間分散処理し、更に15重量%オクチル酸ジルコニウム(日本化学産業社製)1部を加え、硬化型液体インク(2)を得た。
この硬化型液体インク(2)は、平均粒径:1.7μm、相対偏差値(CV値):28%、であった。また、この分散液を20日間の保存試験をしたところ、平均粒径:1.7μm、で凝集も起こらず、非常に優れた保存安定性を示した。
【0159】
〔実施例3〕
100mlのビーカーに、合成例I−2で得られた表面にカルボキシル基を有する着色樹脂粒子(B)2.5部、合成例II−2で得られた側鎖ペンダントに桂皮酸エステルセグメント/デカン(長鎖アルキル基)を有するシロキサン化合物(M2)46.72部、エポキシ変性シリコーンオイル化合物(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(東京化成社製)を着色樹脂粒子(A)の酸価に対して当量値である0.57部を加え、超音波分散機(出力:130W、周波数:20kHz、パルサー方式)で、2時間分散処理し、更に15重量%オクチル酸ジルコニウム(日本化学産業社製)1部を加え、硬化型液体インク(3)を得た。
この硬化型液体インク(3)は、平均粒径:0.8μm、相対偏差値(CV値):32%、であった。また、この分散液を20日間の保存試験をしたところ、平均粒径:0.8μm、で凝集も起こらず、非常に優れた保存安定性を示した。
【0160】
〔実施例4〕
100mlのビーカーに、合成例I−2で得られた表面にカルボキシル基を有する着色樹脂粒子(B)2.5部、合成例II−3で得られた側鎖ペンダントに桂皮酸エステルセグメント/トリメチルシリル基を有するシロキサン化合物(M3)46.72部、エポキシ変性シリコーンオイル化合物(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(東京化成社製)を着色樹脂粒子(A)の酸価に対して当量値である0.57部を加え、超音波分散機(出力:130W、周波数:20kHz、パルサー方式)で、2時間分散処理し、更に15重量%オクチル酸ジルコニウム(日本化学産業社製)1部を加え、硬化型液体インク(4)を得た。
この硬化型液体インク(4)は、平均粒径:0.8μm、相対偏差値(CV値):32%、であった。また、この分散液を20日間の保存試験をしたところ、平均粒径:0.8μm、で凝集も起こらず、非常に優れた保存安定性を示した。
【0161】
〔実施例5〕
100mlのビーカーに、合成例I−2で得られた表面にカルボキシル基を有する着色樹脂粒子(B)2.5部、合成例II−4で得られた両末端に桂皮酸エステルセグメントを有するシロキサン化合物(M4)46.72部、エポキシ変性シリコーンオイル化合物(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(東京化成社製)を着色樹脂粒子(A)の酸価に対して当量値である0.57部を加え、超音波分散機(出力:130W、周波数:20kHz、パルサー方式)で、2時間分散処理し、更に15重量%オクチル酸ジルコニウム(日本化学産業社製)1部を加え、硬化型液体インク(5)を得た。
この硬化型液体インク(5)は、平均粒径:0.8μm、相対偏差値(CV値):32%、であった。また、この分散液を20日間の保存試験をしたところ、平均粒径:0.8μm、で凝集も起こらず、非常に優れた保存安定性を示した。
【0162】
〔比較例1〕
(非硬化型電気絶縁性液体を使用した液体現像剤の作成)
100mlのビーカーに、比較合成例I−4で得られた着色粒子(D)2.5部、電気絶縁性液体である非硬化型のジメチルシロキサン(SH200、粘度:20mPa・s、東レ・ダウコーニング社製)47.5部を加え、超音波分散機(出力:130W、周波数:20kHz、パルサー方式)で、2時間処理し、更に15重量%オクチル酸ジルコニウム(日本化学産業社製)10部を加え、液体現像剤(6)を得たが、分散不良のため、更にポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学社製、KF−945)5.0部添加し、再度、超音波分散し、液体インク(7)を得た。
この液体インク(7)は、平均粒径:2.5μm、相対偏差値(CV値):280%であった。また、この分散液を20日間の保存試験をしたところ、凝集し、再分散したが、分散不良であった。
【0163】
〔比較例2〕
100mlのビーカーに、比較合成例I−4で得られた着色粒子(D)1部、合成例II−1で得られた側鎖ペンダントに桂皮酸エステルセグメントを有するシロキサン化合物(M1)48.69部を加え、、超音波分散機(出力:130W、周波数:20kHz、パルサー方式)で、2時間分散処理し、更に15重量%オクチル酸ジルコニウム(日本化学産業社製)1部を加え、硬化型液体インク(8)を得たが、分散不良のため、更にポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学社製、KF−945)5.0部添加し、再度、超音波分散し、液体インク(9)を得たが、分散不良のため、測定不可であった。液体現像装置による画像だしが不可能であるため、画像評価は中止した。
【0164】
〔評価試験1〕
(電子写真方式液体現像装置による画像出し、UV硬化硬化後の画像評価、及び定着性の評価)
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、及び実施例5で得られた液体現像剤それぞれに、光重合開始剤イルガキュアー907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)5.0重量%を添加し、図1の概略図で示す液体現像装置により、現像、画像出しを行った後、更に、高圧水銀ランプにて照射面の照度が200mWでUV照射を行った。UV照射後の画像を目視により解像力の評価、及び地肌濃度の測定、及び定着性を目視により評価した。比較例1は、図1概略図で示す液体現像装置により、現像、画像出しを行った後、加熱ローラーによる熱定着を行い、画像を目視により解像力の評価、及び地肌濃度の測定、及び定着性を目視により評価した。評価結果は、併せて表1に示す。
【0165】
【表1】

【0166】
<インクジェット方式画像形成方式への応用>
〔実施例6〕
100mlのビーカーに、合成例I−3で得られた表面にカルボキシル基を有する着色樹脂粒子(C)2.5部、合成例II−4で得られた両末端に桂皮酸エステルセグメントを有するシロキサン化合物(M4)46.72部、エポキシ変性シリコーンオイル化合物(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(東京化成社製)を着色樹脂粒子(A)の酸価に対して当量値である0.97部を加え、超音波分散機(出力:130W、周波数:20kHz、パルサー方式)で、2時間分散処理し、硬化型液体インク(6)を得た。
この硬化型液体インク(6)は、平均粒径:0.11μm、相対偏差値(CV値):25%、であった。また、この分散液を20日間の保存試験をしたところ、平均粒径:0.12μm、で凝集も起こらず、非常に優れた保存安定性を示した。
【0167】
〔実施例7〕
200mlのビーカーに、加工着色剤であるマイクロリスBlue4G−WA(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)10部、合成例II−4で得られた両末端に桂皮酸エステルセグメントを有するシロキサン化合物(M4)96.5部、及びエポキシ変性シリコーンオイル(MCR−E11;アヅマックス社製)を着色粒子(A)の酸価に対して当量値である0.97部を加え、超音波分散機(出力:130W、周波数:20kHz、パルサー方式)で、2時間処理し、液体現像剤(VII)を得た。
この液体現像剤(VII)は、平均粒径:0.15μm、相対偏差値(CV値):35%、であった。また、この分散液を20日間の保存試験をしたところ、平均粒径:0.17μm、で凝集も起こらず、非常に優れた保存安定性を示した。
【0168】
〔評価試験2〕
(インクジェット方式液体現像装置による画像評価、UV硬化・定着性の評価)
実施例6、及び実施例7で得られた液体現像剤に、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)5.0重量%を添加し、インクジェットプリンターIPSIO GX5000(リコー社製)で画像出しを行った後、目視により解像力の評価、及び地肌濃度の測定を行った。更に、高圧水銀ランプにて照射面の照度が200mWでUV照射を行った。UV照射後の画像の定着性を目視により評価した。その結果、良好な解像度、及び良好な定着(硬化)を示した。
【符号の説明】
【0169】
1 感光体ドラム
2 帯電チャージャー
3 光書込み装置
5 現像装置
6 転写装置
9 クリーニング装置
40Y、40M、40C、40B 液体インク供給手段
100、200 画像形成装置
101 光導電体
102 コロナ帯電器
104 書き込み露光部
105 現像ローラ
106 液体インク容器
107 液体インク供給ローラ
108 転写ローラ
109 レジストローラ
110 クリーニングローラ
111 クリーニングブレード
112 中間転写ベルト
113,114 コロナ帯電器
115a 駆動ローラ
115b、115c 支持ローラ
117 搬送ベルト
118 クリーニングローラ
119 紫外線照射手段
120 定着用紫外線照射手段
121 駆動ローラ
122 支持ローラ
123 一次転写ローラ
124 二次転写ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0170】
【特許文献1】特開2008−24881号公報
【特許文献2】特許第3985459号公報
【特許文献3】特許第3442406号公報
【特許文献4】特許第4150118号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤と、光によって硬化する硬化性液体とを含有する光硬化型インクにおいて、
前記硬化性液体が下記一般式(1)で示されるシリコーン化合物を含有することを特徴とする光硬化型液体インク。
【化1】


但し、上記式(1)中、Rはメチル基或いはフェニル基、l及びmは0〜100の整数、X,X,Xは置換又は無置換の炭素数1〜18のアルキル基、或いは下記置換基Aで示される基を表し、X,X,Xうち少なくとも1つは置換基Aである。
(置換基A)
【化2】


但し、上記置換基A中、Yは単結合又はC1〜C4のアルキレン基を表し、R〜Rは水素原子、ハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルキル基を有するアルコキシ基、或いはフェニル基を表す。
【請求項2】
前記硬化性液体が下記一般式(2)で示されるシリコーン化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の光硬化型液体インク。
【化3】


但し、上記式(2)中、lは0〜100の整数、mは1〜99の整数、Bは下記置換基Bを表す。
(置換基B)
【化4】

【請求項3】
前記硬化性液体が下記一般式(3)で示されるシリコーン化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の光硬化型液体インク。
【化5】


但し、上記式(3)中、lは0〜100の整数、Bは下記置換基Bを表す。
(置換基B)
【化6】

【請求項4】
前記着色剤は、更に酸性基を有する結着樹脂により表面に酸性基を有する着色樹脂粒子を形成し、該酸性基と反応して、エポキシ基変性シリコーン化合物及び/又はエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物により化学修飾されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化型液体インク。
【請求項5】
前記着色樹脂粒子の平均粒子径が0.01〜5μmであることを特徴とする請求項4に記載の光硬化型液体インク。
【請求項6】
少なくとも着色剤と、光によって硬化する硬化性液体とを含有する光硬化型液体インクの製造方法において、前記着色剤は、更に酸性基を有する結着樹脂により表面に酸性基を有する着色樹脂粒子を形成し、該着色樹脂粒子を、エポキシ基変性シリコーン化合物及び/又はエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物を含み超音波照射下に、硬化性液体に分散させて、該着色樹脂粒子表面を該着色樹脂粒子表面の酸性基と反応してエポキシ基変性シリコーン化合物及び/又はエポキシ基を有する長鎖アルキル化合物により化学修飾することを特徴とする光硬化型液体インクの製造方法。
【請求項7】
前記表面に酸性基を有する着色樹脂粒子は、水系溶液中で、該溶液に中和溶解した酸性基を有する樹脂を塩析法により着色樹脂粒子表面に析出させることにより得られることを特徴とする請求項6に記載の光硬化型液体インクの製造方法。
【請求項8】
光硬化型液体インクを収容するインク収容部と、該インク収容部から光硬化型液体インクを汲み取って像担持体上に形成された静電潜像に該光硬化型液体インクを供給する液体インク供給手段とを備えた現像装置において、前記光硬化型液体インクは、請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化型液体インクであることを特徴とする現像装置。
【請求項9】
静電潜像が形成される像担持体と、該像担持体上に形成された静電潜像に光硬化型液体インクを供給して液体インク像に現像する現像装置と、該現像装置によって形成された液体インク像を該像担持体上から記録媒体に転写する転写装置と、該転写装置によって転写された液体インク像に光を照射して光硬化型液体インクを硬化させて該液体インク像を該記録媒体上に定着させる定着装置とを備えた画像形成装置において、前記光硬化型液体インクは、請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化型液体インクであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−178948(P2011−178948A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46449(P2010−46449)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】