説明

光硬化性ポリシロキサン組成物、及び、当該組成物により形成された保護膜

【課題】ポリシロキサン、o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物、及び、溶剤、を含有する光硬化性ポリシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】当該ポリシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより計測された400と100000の間の範囲に含まれる分子量に対して累積重量%をプロットすることにより得られた積分分子量分布曲線、から計算した時、当該ポリシロキサンの全重量に対して、10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分を25〜60重量%含有する。分子量が800未満の当該ポリシロキサン中のオリゴマーの含有量は、光硬化性ポリシロキサン組成物の全重量に対して0〜10重量%である。当該光硬化性ポリシロキサン組成物から形成された保護膜、及び、当該保護膜を含んでいる素子もまた、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性ポリシロキサン組成物に関する発明であり、特には、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ等の基板用平坦化膜、層間絶縁膜、保護膜としての光導波路のコア又はクラッド部、の形成のための光硬化性ポリシロキサン組成物に関する発明である。本発明はまた、当該光硬化性ポリシロキサン組成物から形成された保護膜、及び、当該保護膜を含む素子に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年では、半導体、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の分野で、リソグラフィーにおいて微細化を伴うパターンの提供が、ますます要求されている。良好な解像度と高い感度を有するポジ型の感光性材料が、通常用いられている。しかしながら、従来のポリシロキサンを含有するポジ型の感光性材料では、当該ポリシロキサンの疎水性が原因となり、現像剤として希薄アルカリ溶液を用いて微細化を伴うパターンを形成する現像はなされ難い。
【0003】
特開2008-107529号公報(特許文献1)は、高い透明性を伴う硬化膜を形成することができる感光性樹脂組成物を開示している。この開示された感光性樹脂組成物は、(a)オキセタニル基又はコハク酸無水物基を含有するポリシロキサン、(b)キノンジアジド化合物、及び(c)溶剤、を含有する。当該オキセタニル基又はコハク酸無水物基を含有するポリシロキサンは、共重合反応の間に開環反応の後、親水性の構造を形成可能であり、希薄アルカリ現像液中で現像され得るが、当該感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は、ポストベークの後にパターンが容易にリフローしてしまう問題がある。
【0004】
当該技術において、ポストベークの後にリフローを伴わない現像パターンを有する保護膜を形成する、現像剤としての希薄アルカリ溶液中にて用いられ得る感光性樹脂組成物を提供することが、依然として要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-107529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、適切な軟化点、及び、良好な現像特性を有する光硬化性ポリシロキサン組成物であって、当該組成物から得られる保護膜中の現像パターンが、ポストベークの後でリフローしにくい光硬化性ポリシロキサン組成物、を提供することにある。ここで、リフローとは、保護膜の表面部分が溶融して流動し、パターンの形が変わって平坦になることを意味するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、ポリシロキサン、o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物、及び、溶剤、を含有する光硬化性ポリシロキサン組成物、が提供される。当該ポリシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより計測された400と100000の間の範囲に含まれる分子量に対して累積重量%をプロットすることにより得られた積分分子量分布曲線、から計算された当該ポリシロキサンの全重量に対して、10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分を25〜60重量%含有する。分子量が800未満の当該ポリシロキサン中のオリゴマー(シロキサンオリゴマー)の含有量は、当該光硬化性ポリシロキサン組成物の全重量に対して0〜10重量%である。
【0008】
本発明の第二の態様によれば、基板の上に形成されるのに適している保護膜が提供される。当該保護膜は、本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物を基板上に塗布し、次いで、プリベーク、露光、現像、及びポストベークすることにより形成される。
【0009】
本発明の第三の態様によれば、基板、及び、当該基板上に塗布された本発明の保護膜を含む素子、が提供される。
【0010】
本発明の他の特徴と利点は、添付の図面を参照して、以下の発明を実施するための形態において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】分子量に対する累積重量%をプロットすることにより得られる積分分子量分布曲線の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物には、ポリシロキサン、o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物、及び、溶剤、が含まれる。当該ポリシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより計測された400と100000の間の範囲に含まれる分子量に対しての累積重量%をプロットすることにより得られた積分分子量分布曲線、から計算した時、当該ポリシロキサンの全重量に対して、10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分を25〜60重量%含有する。分子量が800未満の当該ポリシロキサン中のオリゴマーの量は、当該光硬化性ポリシロキサン組成物の全重量に対して0〜10重量%である。
【0013】
[ポリシロキサン]
ポリシロキサンの構造は特に限定されない。好ましくは、当該ポリシロキサンは、シランモノマー、シロキサンプレポリマー、又はシランモノマーとシロキサンプレポリマーとの組み合わせを、加水分解および部分縮合に付すことによって、得られる。
【0014】
シランモノマーは、好ましくは、式(I):
【0015】
【化1】

【0016】
によって表される。
【0017】
式中、mは0〜3の整数を意味する。
は、水素原子、置換又は非置換のC〜C10アルキル基、置換又は非置換のC〜C10アルケニル基、或いは、置換又は非置換のC〜C15アリール基を表す。mが2又は3である時、複数のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアナトプロピル基、2−オキセタニルプロピルブトキシプロピル基、3−グルタル酸無水物プロピル基、3−コハク酸無水物プロピル基、2−コハク酸無水物エチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、3−アクリルオキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基などが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
は、水素原子、置換又は非置換のC〜Cアルキル基、置換又は非置換のC〜Cアシル基、或いは、置換又は非置換のC〜C15アリール基を表す。「4−m」が2、3又は4である時、複数のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。アシル基としては、例えば、アセチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基としては、例えば、フェニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
mが0である時、シランモノマーは、四官能性シランである。mが1である時、シランモノマーは、三官能性シランである。mが2である時、シランモノマーは、二官能性シランである。mが3である時、単官能性シランである。
【0020】
シランモノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
(1)四官能性シラン
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなど。
【0022】
(2)三官能性シラン
メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロピルシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロピルシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メチルアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メチルアクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)、フェニルトリエトキシシラン(PTES)、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−(5−p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−オキセタニルブトキシプロピルトリフェノキシシラン、東亞合成株式会社製の市販の2−オキセタニルブトキシプロピルトリメトキシシラン(商用名:TMSOX)、東亞合成株式会社製の市販の2−オキセタニルブトキシプロピルトリエトキシシラン(商用名:TESOX)、2−トリメトキシシリルエチルコハク酸無水物、3−トリフェノキシシリルプロピルコハク酸無水物、信越化学工業株式会社製の市販の3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(商用名:X−12−967)、WACKER製の市販の3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物(商用名:GF−20)、3−トリメトキシシリルプロピルグルタル酸無水物(TMSG)、3-トリエトキシシリルプロピルグルタル酸無水物、3-トリフェノキシシリルプロピルグルタル酸無水物など。
【0023】
(3)二官能性シラン:
ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピル−ジ(2−オキセタニルブトキシプロピル)シラン(DIDOS)、ジ(3−オキセタニルペンチル)ジメトキシシラン、ジ−n−ブトキシシリルジプロピルコハク酸無水物、ジメトキシシリルジエチルコハク酸無水物など。
【0024】
(4)単官能性シラン:
トリメチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、3−グリシドキシジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシジメチルエトキシシラン、ジ(2-オキセタニルブトキシペンチル)2-オキセタニルペンチルエトキシシラン、トリ(2-オキセタニルペンチル)メトキシシラン、フェノキシシリルトリプロピルコハク酸無水物、メチルメトキシシリルジエチルコハク酸無水物など。
【0025】
これらのシランモノマーは、単独でも、2種以上の混合物としても使用することができる。
【0026】
シロキサンプレポリマーは、好ましくは、式(II):
【0027】
【化2】

【0028】
によって表される。
【0029】
式中、nは1〜1000、好ましくは3〜300、より好ましくは5〜200の整数を意味する。
【0030】
、R、R、及びRは、それぞれ無関係に、水素原子、置換又は非置換のC〜C10アルキル基、置換又は非置換のC〜C6アルケニル基、或いは置換又は非置換のC〜C15アリール基を表す。nが2〜1000である時、複数のR及びRは、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基などが挙げられるが、これらに限定されない。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アクリルオキシプロピル基、メタクリルオキシプロピル基などが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
及びRは、それぞれ無関係に、水素原子、置換又は非置換のC〜Cアルキル基、置換又は非置換のC〜Cアシル基、或いは、置換又は非置換のC〜C15アリール基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。アシル基としては、例えば、アセチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基としては、例えば、フェニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
シロキサンプレポリマーとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジメトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジエトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラエチル−1,3−ジエトキシジシロキサン、Gelest社製の市販のシラノール末端ポリシロキサン(例えば、DM−S12(分子量:400〜700)、DMS−S15(分子量:1500〜2000)、DMS−S21(分子量:4200)、DMS−S27(分子量:18000)、DMS−S31(分子量:26000)、DMS−S32(分子量:36000)、DMS−S33(分子量:43500)、DMS−S35(分子量:49000)、DMS−S38(分子量:58000)、DMS−S42(分子量:77000)、PDS−9931(分子量:1000−1400)など)など、が挙げられるが、これらに限定されない。上に例示したシロキサンプレポリマーは、単独でも、2種以上の混合物としても、使用することができる。
【0033】
シランモノマー及びシロキサンプレポリマーを組み合わせて使用する時、それらの混合比は特に限定されない。シランモノマー及びシロキサンプレポリマーの、Si原子モル比は、好ましくは、100:0〜50:50である。
【0034】
或いは、ポリシロキサンは、シランモノマー及び/又はシロキサンプレポリマーをシリカ粒子と混合することによって共重合を介して製造することができる。シリカ粒子の平均粒子径には、特に限定はない。シリカ粒子の平均粒子径は、一般に2nm〜250nm、好ましくは5nm〜200nm、より好ましくは10nm〜100nmである。
【0035】
シリカ粒子としては、例えば、触媒化成工業株式会社製の市販の製品、例えば、オスカル(OSCAR)1132(粒子径:12nm、分散媒:メタノール)、オスカル1332(粒子径:12nm、分散媒:n−プロパノール)、オスカル105(粒子径:60nm、分散媒:γ−ブチロラクトン)、オスカル106(粒子径:120nm,分散媒:ジアセトンアルコール)など;扶桑化学工業株式会社製の市販の製品、例えば、クォートロン(Quartron)PL−1−IPA(粒子径:13nm、分散媒:イソプロパノン)、クォートロンPL−1−TOL(粒子径:13nm、分散媒:トルエン)、クォートロンPL−2L−PGME(粒子径:18nm、分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル)、クォートロンPL−2L−MEK(粒子径:18nm、分散媒:メチルエチルケトン)など;日産化学工業株式会社製の市販の製品、例えば、IPA−ST(粒子径:12nm、分散媒:イソプロパノール)、EG−ST(粒子径:12nm,分散媒:エチレングリコール)、IPA−ST−L(粒子径:45nm,分散媒:イソプロパノール)、IPA−ST−ZL(粒子径:100nm,分散媒:イソプロパノール)など、が挙げられる。上記シリカ粒子は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
シリカ粒子とシランモノマー及び/又はシロキサンプレポリマーとを混合する際、これらの量に特に限定はない。シリカ粒子のポリシロキサンに対するSi原子モル比は、1%〜50%であるのが好ましい。
【0037】
加水分解及び部分縮合は、当該技術において周知の方法によって行うことができる。例えば、溶剤、水、及び、場合によって触媒、をシランモノマー及び/又はシロキサンプレポリマー及び/又はシリカ粒子の混合物に添加し、次いで、50〜150℃の温度で0.5〜120時間攪拌する。攪拌の間、副産物、例えばアルコール及び水は、必要であれば蒸留によって除去することができる。
【0038】
溶剤に特に限定はない。溶剤は、光硬化性ポリシロキサン組成物に含まれる溶剤と同じであっても異なっていてもよい。溶剤の添加量は、シランモノマー及び/又はシロキサンプレポリマー100gに対して、一般に15g〜1200g、好ましくは20g〜1100g、より好ましくは30g〜1000gである。
【0039】
加水分解のための水の添加量は、混合物中に含まれる加水分解性基1モルに対して、0.5〜2モルである。
【0040】
触媒に特に限定はない。好ましくは、酸触媒又は塩基触媒を使用することができる。酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、シュウ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸、及びそれらの酸無水物、イオン交換樹脂などが挙げられる。塩基触媒としては、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を含むアルコキシシラン、イオン交換樹脂などが挙げられる。
【0041】
触媒の添加量は、シランモノマー及び/又はシロキサンプレポリマー100gに対して、一般に、0.005g〜15g、好ましくは、0.01g〜12g、より好ましくは0.05g〜10gである。
【0042】
貯蔵安定性を考慮すると、副産物(例えば、アルコール又は水)及び触媒が、加水分解及び部分縮合後に生成されるポリシロキサン中に含まれていないことが好ましい。それ故、ポリシロキサンを精製するのが好ましい。精製方法に特に限定はない。好ましくは、ポリシロキサンを疎水性溶剤で希釈し、次いで、水で数回洗浄した有機層をエバポレーターで濃縮してアルコールと水を除去する。さらに、触媒をイオン交換樹脂を用いて除去することもできる。
【0043】
本発明の光硬化性ポリシロキサンに適している、得られるポリシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより計測された400と100000の間の範囲に含まれる分子量に対して累積重量%をプロットすることにより得られた積分分子量分布曲線、から計算した時、当該ポリシロキサンの全重量に対して、25〜60重量%の、10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分を含有する。
【0044】
10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分は、ポリシロキサンの全重量に対して、好ましくは28重量%〜60重量%、より好ましくは30重量%〜60重量%、である。
【0045】
10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分が、ポリシロキサンの全重量に対して25重量%未満であると、光硬化性ポリシロキサン組成物から得られる保護膜における現像パターンがポストベーク後にリフローしやすい。
【0046】
他方、10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分が、ポリシロキサンの全重量に対して60重量%より多いと、現像特性が低下し得る。特に、低濃度の現像液(例えば、0.4重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム)を用いる時、現像プロセスにおいて所望のパターンを形成することができない。
【0047】
さらに、光硬化性ポリシロキサン組成物のガスクロマトグラフィーによる測定において、分子量が800未満の当該ポリシロキサン中のオリゴマーの含有量は、光硬化性ポリシロキサン組成物の全重量に対して、0重量%〜10重量%、好ましくは0.001重量%〜9重量%、より好ましくは0.001重量%〜8重量%である。
【0048】
分子量が800未満の当該ポリシロキサン中のオリゴマーの含有量が、光硬化性ポリシロキサン組成物の全重量に対して、10重量%より多いと、当該光硬化性ポリシロキサン組成物から得られる保護膜中の現像パターンがポストベーク後にリフローしやすい。これは、低分子量のポリシロキサンは比較的低い軟化点を有しており、恐らく高温での処理後にリフローが起こるためである。
【0049】
好ましくは、当該ポリシロキサンは、100〜1500Å/秒のアルカリ溶解速度、より好ましくは、150〜1400Å/秒のアルカリ溶解速度、特に好ましくは、200〜1300Å/秒のアルカリ溶解速度を有する。当該ポリシロキサンが100〜1500Å/秒のアルカリ溶解速度を有する時、現像パターンの形状は、変形なく十分に維持され得、現像性を高めることができる。
【0050】
[o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物]
本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物に適したo−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物に特に限定はない。o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物は、完全にまたは部分的にエステル化された化合物であり得る。o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物は、好ましくは、o−ナフトキノンジアジドスルホン酸又はその塩とヒドロキシル化合物との反応を介して得られる。より好ましくは、o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物は、o−ナフトキノンジアジドスルホン酸又はその塩とポリヒドロキシル化合物との反応を介して得られる。
【0051】
o−ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、例えば、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸、o−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸、o−ナフトキノンジアジド−6−スルホン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。o−ナフトキノンジアジドスルホン酸の塩としては、例えば、o−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
ヒドロキシル化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
(1)ヒドロキシベンゾフェノン化合物
例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4’,2,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6,3’,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,5’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,4,5,3’,5’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
(2)ヒドロキシアリール化合物
例えば、式(III):
【0054】
【化3】

【0055】
(式中、R、R10、及びR11は、それぞれ無関係に、水素原子又は低級アルキル基を表し;
12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、それぞれ無関係に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルケニル基、又はシクロアルキル基を表し;
18及びR19は、それぞれ無関係に、水素原子、ハロゲン原子、又は低級アルキル基を表し;
x、y、及びzは、それぞれ無関係に、1〜3の整数を表し;
kは、0又は1を表す。)
によって表されるヒドロキシアリール化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
式(III)によって表されるヒドロキシアリール化合物としては、例えば、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−6−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−6−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−6−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−6−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−6−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−6−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
(3)(ヒドロキシフェニル)アルカン化合物
例えば、式(IV):
【0058】
【化4】

【0059】
(式中、R20及びR21は、それぞれ無関係に、水素原子又は低級アルキル基を表し;
x’及びy’は、それぞれ無関係に、1〜3の整数を表す。)
によって表される(ヒドロキシフェニル)アルカン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
式(IV)で表される(ヒドロキシフェニル)アルカン化合物としては、例えば、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
(4)他の芳香族ヒドロキシル化合物
例えば、フェノール、p−メトキシフェノール、ジメトキシフェノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール−1,3−ジメチルエーテル、没食子酸、部分的エステル化若しくは部分的エーテル化没食子酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
ヒドロキシル化合物の好ましい例としては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン及び2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。上に例示したヒドロキシル化合物は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
o−ナフトキノンジアジドスルホン酸又はその塩と、ヒドロキシル化合物との反応は、しばしば、有機溶剤、例えば、ジオキサン、N−ピロリドン、アセトアミドなどの中で、アルカリ、例えば、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリなどの存在下で、行われる。
【0064】
o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物のエステル化度は、50%より高いことが好ましい。すなわち、ヒドロキシル化合物に含まれる、100モル%の全ヒドロキシル基に対して、ヒドロキシル化合物に含まれるヒドロキシル基の50モル%より多くが、o−ナフトキノンジアジドスルホン酸又はその塩でエステル化されることが好ましい。o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物のエステル化度が60%より高いことが、より好ましい。
【0065】
o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物の含有量は、ポリシロキサン100重量部に対して、好ましくは0.5〜80重量部、より好ましくは1〜50重量部、最も好ましくは2〜30重量部である。
【0066】
[溶剤]
本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物において適当な溶剤は特に限定されない。当該溶剤の例としては、好ましくは、アルコール性水酸基含有化合物、カルボニル基含有環状化合物、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
アルコール性水酸基含有化合物としては、例えば、アセトール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール、DAA)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中で、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。これらのアルコール性水酸基含有化合物は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
カルボニル基含有環状化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、炭酸プロピレン、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中で、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、及びシクロヘキサノンが好ましい。これらのカルボニル基含有環状化合物は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
アルコール性水酸基含有化合物とカルボニル基含有環状化合物とを組み合わせて使用する時、それらの重量比に特に限定はない。カルボニル基含有環状化合物に対するアルコール性水酸基含有化合物の重量比(アルコール性水酸基含有化合物/カルボニル基含有環状化合物)は、好ましくは、99/1〜50/50であり、より好ましくは、95/5〜60/40である。カルボニル基含有環状化合物に対するアルコール性水酸基含有化合物の重量比が99/1〜50/50の範囲にあると、ポリシロキサン中の未反応シラノール基について、貯蔵安定性を低下させ得る縮合反応が起こりにくいことに注目するべきである。さらに、o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物と溶剤との相溶性が良好であり、その結果、保護膜が不透明になりにくく、それによって、保護膜の透明性が維持される。
【0070】
光硬化性ポリシロキサン組成物が所望の効果を損なわない限り、上記溶剤以外の追加の溶剤を、本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物に含有させることができる。追加の溶剤としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
(1)エステル
例えば、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシ−1−ブチルアセテートなど。
(2)ケトン
例えば、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトンなど。
(3)エーテル
例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジフェニルエーテルなど。
【0072】
光硬化性ポリシロキサン組成物中の溶剤の含有量に特に限定はない。溶剤の含有量は、ポリシロキサン100重量部に対して、一般に50〜1200重量部、好ましくは80〜1000重量部、より好ましくは100〜800重量部である。
【0073】
[添加剤]
本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物には、必要に応じて、当該技術で通常使用される添加剤を加えることができる。添加剤としては、増感剤、熱酸発生剤、接着助剤、界面活性剤、溶解促進剤、消泡剤、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
増感剤に特に限定はない。増感剤は、好ましくは、フェノール性水酸基含有化合物である。フェノール性水酸基含有化合物としては、次の(1)〜(5)の化合物またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
(1)トリスフェノール型化合物
例えば、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、など。
【0076】
(2)ビスフェノール型化合物
例えば、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4−トリヒドロキシフェニル−4’−ヒドロキシフェニルメタン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−フルオロ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)プロパン、など。
【0077】
(3)多核分岐化合物
例えば、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル]イソプロピル]−4−[1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、など。
【0078】
(4)縮合型フェノール化合物
例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、など。
【0079】
(5)ポリヒドロキシベンゾフェノン
例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシ−2’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,2’,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6,3’,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,5’− ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’− ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、など。
【0080】
増感剤の含有量は、ポリシロキサン100重量部に対して、好ましくは5〜50重量部、より好ましくは8〜40重量部、最も好ましくは10〜35重量部である。
【0081】
熱酸発生剤としては、例えば、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ベンゾイルオキシフェニルメチルスルホニウム、及びそれらのメタンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、カンファースルホナート、p−トルエンスルホナート、又はそれらの同種のもの、三新化学工業株式会社製の市販の製品(例えば、SI−60、SI−80、SI−100、SI−110、SI−145、SI−150、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−145L、SI−150L、SI−160L、SI−180L)、あるいはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中で、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−アセチルフェニルメチルスルホニウム、2−メチルベンジル−4−ベンゾイルオキシフェニルメチルスルホニウム、並びに、それらのメタンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、カンファースルホナート、及びp−トルエンスルホナートが好ましい。上記熱酸発生剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0082】
熱酸発生剤の含有量は、ポリシロキサン100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜8重量部、最も好ましくは0.05〜5重量部である。
【0083】
接着助剤は、半導体材料を含む基板に対する、本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物の接着性を高めるために使用される。接着助剤としては、例えば、メラミン化合物及びシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。メラミン化合物の市販の製品としては、例えば、三井化学工業株式会社製のCymel−300、Cymel−303、など;及び株式会社三和ケミカル製のMW−30MH、MW−30、MS−11、MS−001、MX−750、MX−706,など、が挙げられるが、これらに限定されない。シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メチルアリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製の市販の製品(例えば、KBM403)、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
接着助剤として使用されるメラミン化合物の含有量は、ポリシロキサン100重量部に対して、好ましくは0〜20重量部、より好ましくは0.5〜18重量部、最も好ましくは1.0〜15重量部である。
【0085】
接着助剤として使用されるシラン化合物の含有量は、ポリシロキサン100重量部に対して、好ましくは0〜2重量部、より好ましくは0.05〜1重量部、最も好ましくは0.1〜0.8重量部である。
【0086】
界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、ポリシロキサン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい界面活性剤の例は、下記(1)〜(6)であるが、これらに限定されない。
【0087】
(1)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、など;
(2)ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、など;
(3)ポリオキシエチレングリコールジエステル、例えば、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、など;
(4)ソルビタン脂肪酸エステル;
(5)脂肪酸変性ポリエステル;及び
(6)第3級アミン変性ポリウレタン
【0088】
界面活性剤の市販の製品としては、例えば、KP(信越化学工業株式会社製)、SF−8427(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、ポリフロー(Polyflow)(共栄社化学株式会社製)、F−Top(株式会社トーケムプロダクツ(現:三菱マテリアル株式会社)製)、メガファック(Megaface)(DIC株式会社製)、フロラード(Fluorade)(住友スリーエム株式会社製)、サーフロン(Surflon)(旭硝子株式会社製)、SINOPOL E8008(中日合成化学社製)、F−475(DIC株式会社製)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
界面活性剤の含有量は、ポリシロキサン100重量部に対して、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜40重量部、最も好ましくは3〜30重量部である。
【0090】
消泡剤としては、例えば、サーフィノール(Surfynol)(登録商標)MD−20、サーフィノールMD−30、エンバイロジェム(EnviroGem)(登録商標)AD01、エンバイロジェムAE01、エンバイロジェムAE02、サーフィノールDF 110D、サーフィノール104E、サーフィノール420、サーフィノールDF 37、サーフィノールDF 58、サーフィノールDF 66、サーフィノールDF 70、及びサーフィノールDF 210(エアプロダクツ社製)、などが挙げられる。
【0091】
消泡剤の含有量は、ポリシロキサン100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは2〜9重量部、最も好ましくは3〜8重量部である。
【0092】
溶解促進剤としては、例えば、N−ヒドロキシジカルボキシイミド、又はフェノール性水酸基含有化合物(例えば、o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物を製造するために使用されるフェノール性水酸基含有化合物)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
溶解促進剤の含有量は、ポリシロキサン100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは2〜15重量部、最も好ましくは3〜10重量部である。
【0094】
本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物は、ポリシロキサン、o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物、及び溶剤を、必要に応じて、増感剤、熱酸発生剤、接着助剤、界面活性剤、消泡剤、溶解促進剤などの添加剤と共に、攪拌器の中で攪拌することによって製造される。
【0095】
光硬化性ポリシロキサン組成物は、スピン・コーティング、スリット・コーティング、又はロール・コーティングによって、基板上に塗布され、次いで、プリベークして溶剤を除去し、プリベークした塗膜を形成する。プリベークの条件は、光硬化性ポリシロキサン組成物の成分の種類及び配合割合によって決まる。しかし、プリベークは、通常、70〜110℃の温度で1〜15分間行われる。プリベークした塗膜を、フォトマスクを介して、紫外線光、例えばg線、h線、i線など、を用いて露光する。紫外線光を提供する装置としては、(超)高圧水銀ランプ、又はメタルハライドランプが挙げられる。露光後の塗膜は、23±2℃の温度の現像液中で15秒〜5分間浸漬して、所望のパターンを形成する。現像剤としては、例えば、アルカリ化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、メチルケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリン、ピロール、ピペリジン、及び1,8−ジアザジシクロ−[5,4,0]−7−ウンデカン、などが挙げられる。
【0096】
現像液は、光硬化性ポリシロキサン組成物の塗膜の露光後に形成された、規定のパターンを現像するために使用される。現像液の濃度が高すぎると、規定のパターンは損傷され得る、又は、当該パターンの解像度が減ぜられ得る。他方、現像液の濃度が低すぎると、現像効果が十分でない可能性があり、当該パターンを形成できないか又は塗膜の露光部分に残部が残る、という結果になり得る。それ故、パターンの形成性は、一般に、現像液の濃度の影響を受ける。本発明は、比較的広い濃度範囲の現像液を用いることができる光硬化性ポリシロキサン組成物を提供する。すなわち、本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物の塗膜の露光後に形成されるパターンは、現像液の濃度の影響を容易に受けない。
【0097】
現像液の濃度は、好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.005〜5重量%、最も好ましくは0.01〜1重量%である。
【0098】
以下の実施例では、現像液として、2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液及び0.4%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液が使用される。2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液は当該技術において通常使用される現像液である。実施例において、通常使用される濃度の現像液(例えば、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)を用いて、さらに、比較的希薄な濃度の現像液(例えば、0.4%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)を用いても、本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物から作製される保護膜において微細パターンを形成することができることが、明らかになるであろう。
【0099】
現像剤は、現像後、水で洗浄することによって除去する。基板上に形成された塗膜は、圧縮空気又は圧縮窒素を用いて乾燥し、次いで、ホットプレート又はオーブンのような加熱装置を用いてポストベークする。ポストベークは、100〜250℃の温度で、ホットプレートを使用する場合には1〜60分間、オーブンを使用する場合には5〜90分間、行われる。上記処理過程後に、本発明の保護膜が基板上で形成される。
【0100】
本発明に適した基板としては、例えば、液晶ディスプレイにおいて通常使用される無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、パイレックス(登録商標)・ガラス、石英ガラス、透明導電膜を付着しているガラスや、固体撮像素子において使用される光電変換基板(例えば、シリコン基板)が挙げられる。
【0101】
基板、及び、当該基板上に塗布された本発明の光硬化性ポリシロキサン組成物から形成された保護膜を含む素子は、ディスプレイ素子、半導体素子、光導波路、などにおいて使用することができる。
【実施例】
【0102】
以下の実施例において、本発明の好適な実施態様を説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0103】
ポリシロキサンの製造
[製造例1]
500mlの三つ口フラスコに、ジメチルジメトキシシラン(DMDMSと記載する。78.0g,0.65モル)、フェニルトリメトキシシラン(PTMSと記載する。63.4g,0.32モル)、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物(GF−20(商用名)と記載する。9.1g,0.03モル)、及びプロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEEと記載する。200g)を加えた。シュウ酸水溶液(0.25gシュウ酸/75gHO)を30分間にわたって加えながら、攪拌を室温で行った。次いで、フラスコ中の混合物を、30℃の温度の油浴において、30分間攪拌した後、油浴の温度を30分以内に120℃に上昇させた。フラスコ中の混合物の温度が100℃に達し、当該混合物をさらに5時間攪拌して重縮合させた。フラスコ中の溶液を室温に冷却した後、アセトン(2000g)を加え、さらに30分間攪拌を続けた。沈殿物を、ろ過により溶液から分離した後、溶剤を留去(devolatilize)し、ポリシロキサン(A−1)を得た。
【0104】
[製造例2]
500mlの三つ口フラスコに、DMDMS(78.0g,0.65モル)、フェニルトリエトキシシラン(PTESと記載する。50.4g,0.21モル)、2−オキセタニルブトキシプロピルトリメトキシシラン(TMSOX(商用名)と記載する。38.9g,0.14モル)、及びPGEE(200g)を加えた。シュウ酸水溶液(0.30gシュウ酸/75gHO)を30分間にわたって加えながら、攪拌を室温で行った。次いで、フラスコ中の混合物を、30℃の温度の油浴において、30分間攪拌した後、油浴の温度を30分以内に120℃に上昇させた。フラスコ中の混合物の温度が105℃に達し、当該混合物をさらに6時間攪拌して重縮合させた。フラスコ中の溶液を室温に冷却した後、エチルベンゼン(1800g)を加え、さらに30分間攪拌を続けた。沈殿物を、ろ過により溶液から分離した後、溶剤を留去し、ポリシロキサン(A−2)を得た。
【0105】
[製造例3]
500mlの三つ口フラスコに、DMDMS(84.0g,0.70モル)、PTMS(45.5g,0.23モル)、3−トリメトキシシリルプロピルグルタル酸無水物(TMSGと記載する。19.3g,0.07モル)、及びPGEE(200g)を加えた。シュウ酸水溶液(0.35gシュウ酸/75gHO)を30分間にわたって加えながら、攪拌を室温で行った。次いで、フラスコ中の混合物を、30℃の温度の油浴において、30分間攪拌した後、油浴の温度を30分以内に120℃に上昇させた。フラスコ中の混合物の温度が105℃に達し、当該混合物をさらに6時間攪拌して重縮合させた。フラスコ中の溶液を室温に冷却した後、アセトン(1500g)を加え、さらに30分間攪拌を続けた。沈殿物を、ろ過により溶液から分離した後、溶剤を留去し、精製ポリシロキサンを得た。当該精製ポリシロキサンをPGEE(200g)中に攪拌下室温にて溶解し、均一溶液を得た。当該溶液にイソプロピルベンゼン(1500g)を加えた後、さらに30分間攪拌した。沈殿物を、ろ過により溶液から分離した後、溶剤を留去し、ポリシロキサン(A−3)を得た。
【0106】
[製造例4]
500mlの三つ口フラスコに、DMDMS(84.0g,0.70モル)、PTMS(29.7g,0.15モル)、PTES(28.8g,0.12モル)、GF−20(9.2g,0.03モル)、PGEE(100g)、及びジアセトンアルコール(DAAと記載する。100g)を加えた。シュウ酸水溶液(0.40gシュウ酸/75gHO)を30分間にわたって加えながら、攪拌を室温で行った。次いで、フラスコ中の混合物を、30℃の温度の油浴において、30分間攪拌した後、油浴の温度を30分以内に120℃に上昇させた。フラスコ中の混合物の温度が110℃に達し、当該混合物をさらに5時間攪拌して重縮合させた。フラスコ中の溶液を室温に冷却した後、アセトン(1500g)を加え、さらに30分間攪拌を続けた。沈殿物を、ろ過により溶液から分離した後、溶剤を留去し、精製ポリシロキサンを得た。当該精製ポリシロキサンをPGEE(200g)中に攪拌下室温にて溶解し、均一溶液を得た。当該溶液にアセトン(1500g)を加えた後、さらに30分間攪拌した。沈殿物を、ろ過により溶液から分離した後、溶剤を留去し、ポリシロキサン(A−4)を得た。
【0107】
[製造例5]
500mlの三つ口フラスコに、メチルトリメトキシシラン(MTMSと記載する。102.0g,0.75モル)、PTMS(19.8g,0.10モル)、ジイソプロポキシ−ジ(2−オキセタニルブトキシプロピル)シラン(DIDOSと記載する。69.0g,0.15モル)、及びPGEE(200g)を加えた。シュウ酸水溶液(0.40gシュウ酸/75gHO)を30分間にわたって加えながら、攪拌を室温で行った。次いで、フラスコ中の混合物を、30℃の温度の油浴において、30分間攪拌した後、油浴の温度を30分以内に120℃に上昇させた。フラスコ中の混合物の温度が105℃に達し、当該混合物をさらに6時間攪拌して重縮合させた。フラスコ中の溶液を室温に冷却した後、イソプロピルベンゼン(1500g)を加え、さらに30分間攪拌を続けた。沈殿物を、ろ過により溶液から分離した後、溶剤を留去し、精製ポリシロキサンを得た。当該精製ポリシロキサンをPGEE(200g)中に攪拌下室温にて溶解し、均一溶液を得た。当該溶液にアセトン(2000g)を加えた後、さらに30分間攪拌した。沈殿物を、ろ過により溶液から分離した後、溶剤を留去し、ポリシロキサン(A−5)を得た。
【0108】
[製造例6]
500mlの三つ口フラスコに、MTMS(97.9g,0.72モル)、PTMS(31.7g,0.16モル)、GF−20(27.4g,0.09モル)、DMS−S27(540g,0.03モル)、及びPGEE(200g)を加えた。シュウ酸水溶液(0.35gシュウ酸/75gHO)を30分間にわたって加えながら、攪拌を室温で行った。次いで、フラスコ中の混合物を、30℃の温度の油浴において、30分間攪拌した後、油浴の温度を30分以内に120℃に上昇させた。フラスコ中の混合物の温度が110℃に達し、当該混合物をさらに6時間攪拌して重縮合させた。フラスコ中の溶液を室温に冷却した後、エチルベンゼン(2,000g)を加え、さらに30分間攪拌を続けた。沈殿物を、ろ過により溶液から分離した後、溶剤を留去し、精製ポリシロキサンを得た。当該精製ポリシロキサンをPGEE(200g)中に攪拌下室温にて溶解し、均一溶液を得た。当該溶液にエチルベンゼン(1800g)を加えた後、さらに30分間攪拌した。沈殿物を、ろ過により溶液から分離した後、溶剤を留去し、ポリシロキサン(A−6)を得た。
【0109】
[製造例7]
500mlの三つ口フラスコに、MTMS(102.0g,0.75モル)、PTES(36.0g,0.15モル)、TMSOX(25.1g,0.09モル)、DMS−S27(180g,0.01モル)、及びPGEE(200g)を加えた。シュウ酸水溶液(0.45gシュウ酸/75gHO)を30分間にわたって加えながら、攪拌を室温で行った。次いで、フラスコ中の混合物を、30℃の温度の油浴において、30分間攪拌した後、油浴の温度を30分以内に120℃に上昇させた。フラスコ中の混合物の温度が110℃に達し、当該混合物をさらに6時間攪拌して重縮合させた。フラスコ中の溶液を室温に冷却した後、アセトン(1500g)を加え、さらに30分間攪拌を続けた。沈殿物を、ろ過により溶液から分離した後、溶剤を留去し、ポリシロキサン(A−7)を得た。
【0110】
[製造例8]
500mlの三つ口フラスコに、DMDMS(84.0g,0.70モル)、PTMS(47.5g,0.24モル)、GF−20(18.3g,0.06モル)、及びPGEE(200g)を加えた。シュウ酸水溶液(0.35gシュウ酸/75gHO)を30分間にわたって加えながら、攪拌を室温で行った。次いで、フラスコ中の混合物を、30℃の温度の油浴において、30分間攪拌した後、油浴の温度を30分以内に120℃に上昇させた。フラスコ中の混合物の温度が105℃に達し、当該混合物をさらに6時間攪拌して重縮合させた後、溶剤を留去して、ポリシロキサン(A−8)を得た。
【0111】
上記製造例において用いたシランモノマー、シロキサンプレポリマー、溶剤、及び触媒、並びに、反応条件を、表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
光硬化性ポリシロキサン組成物の調製
[実施例1]
製造例3にて得られたポリシロキサン(A−3)100重量部と、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン(TPPAと記載する)とo−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸を反応させることによって得られた、15重量部のo−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物(DPAP200:DKC製、平均エステル化度:67%)を、アセトンアルコール400重量部とN−メチルピロリドン100重量部からなる溶剤混合物に添加した。攪拌型のスターラーを用いる攪拌を、均一な光硬化性ポリシロキサン組成物が得られるまで行った。得られた光硬化性ポリシロキサン組成物は、下記の評価法に従って評価した。当該評価結果を、表2に示す。
【0114】
[実施例2〜8、及び、比較例1〜4]
実施例2〜8、及び、比較例1〜4は、表2に示された化合物とその量を用いて、実施例1の方法と同じ方法で行われた。得られた実施例2〜8、及び、比較例1〜4の光硬化性ポリシロキサン組成物は、下記の評価法に従って評価した。当該評価結果を表2に示す。
【0115】
[評価方法]
1.ポリシロキサンの分子量分布
ポリシロキサンの分子量分布は、下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPCと記載する)によって決定された。図1にて例示したように、積分分子量分布曲線(integral molecular weight distribution curve)を、400と100000の間の範囲に含まれる分子量に対する累積重量%をプロットすることにより得た。10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分の重量%を、当該積分分子量分布曲線から計算した。
【0116】
GPCの測定条件
機器: 717 plus (Waters製)
カラム: 79911GP-501, 79911GP-502, 79911GP-503及び 79911GP-504 (Agilent Technologies製)
検出器: 2414 RI Detector (Waters製)
移動相: テトラヒドロフラン
流速: 1.0 ml/分
注入量: 100 μl
測定温度: 40 ℃
測定時間: 60分
標準物質: ポリスチレン
【0117】
2.ポリシロキサン中のオリゴマーの含有量の解析
実施例1〜8、及び比較例1〜4において得られた光硬化性ポリシロキサン組成物を、それぞれアセトン中に溶解し、水素炎イオン化型検出器(FID)が装備されたガスクロマトグラフ(Hewlett Packard社製; Model No. 5890A)により解析した。結果は、重量%で記録した。
【0118】
3.アルカリ溶解速度
ポリシロキサンを100mm x 100mmのガラス基板上にスピンコートし、110℃で2分間プリベークし、膜厚8μmの塗膜を形成した。塗膜の2つの試料を、それぞれ、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液と0.4%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液に、23℃で30秒間浸漬した。現像後における塗膜の膜厚(δd)を、光学膜厚測定システムを用いて測定した。アルカリ溶解速度は、次式を用いて算出した。
【0119】
アルカリ溶解速度(Å/秒) = [(80000)-(δd)]/30
【0120】
4.ポストベーク後に形成されたパターンの観察
光硬化性ポリシロキサン組成物を、100mm x 100mmのガラス基板上にスピンコートし、110℃で2分間プリベークし、塗膜を形成した。当該塗膜に、露光装置(Model No. AG500-4N, M & R Nano Technology社製)を用いて紫外線照射処理(90mJ/cm2)をフォトマスクを介して施した。当該紫外線照射後、塗膜の2つの試料を、それぞれ、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液と0.4%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液に、23℃で1分間浸漬し、次いで水でリンスした。その後、オーブン中にて230℃で60分間ポストベークした。各々の試料の現像パターンを、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、当該現像パターン中にリフローが現れているか否かを調べた。
【0121】
○:リフローは現れなかった。
△:軽微なリフローが現れた。
×:深刻なリフローが現れた。
【0122】
【表2−1】

【表2−2】

【0123】
表2(表2−1及び表2−2)に示したように、実施例1〜8の光硬化性ポリシロキサン組成物中に含まれるポリシロキサンはいずれも、10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分を、当該ポリシロキサンの全重量に対して、25重量%〜60重量%(すなわち、それぞれ29,37,45,54,25,31,59及び33重量%)含有し、また、分子量が800未満の当該ポリシロキサン中のオリゴマーを、当該光硬化性ポリシロキサン組成物の全重量に対して、せいぜい10重量%含有する。当該光硬化性ポリシロキサン組成物は、2.38%、さらに0.4%の現像液に適しており、ポストベーク後に形成される硬化膜は、リフローのない良好な形状パターンを有する。
【0124】
しかしながら、比較例1の光硬化性ポリシロキサン組成物に含まれるポリシロキサンは、10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分を、18重量%(すなわち、規定された範囲である25重量%〜60重量%よりも少ない)含有し、また、分子量が800未満の当該ポリシロキサン中のオリゴマーを、12重量%(すなわち、規定された範囲である0重量%〜10重量%よりも多い)含有する。比較例2と3の光硬化性ポリシロキサン組成物に含まれるポリシロキサンは、10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分を、それぞれ、23重量%と62重量%(すなわち、規定された範囲である25重量%〜60重量%の範囲外)含有する。比較例4の光硬化性ポリシロキサン組成物に含まれるポリシロキサンは、分子量が800未満の当該ポリシロキサン中のオリゴマーを、14重量%(すなわち、規定された範囲である0重量%〜10重量%よりも多い)含有する。比較例1〜4において、ポストベーク後に形成される現像パターンはいずれも、深刻なリフローの問題を抱えている。
【0125】
上述したとおり、本願発明は、適切な軟化点と好適な現像特性を有する光硬化性ポリシロキサン組成物、及び、当該光硬化性ポリシロキサン組成物からプリベーク、露光、現像及びポストベークを経て作製された保護膜を提供する。本願発明の組成物から得られる当該保護膜における現像パターンは、ポストベーク後にリフローしにくい。
【0126】
本発明は、最も実用的で好適な実施態様であると考えられるものに関して記載されているが、この発明は、開示された実施態様に限定されるものではなく、最も広い解釈と均等の精神と範囲の中に含まれる、様々なアレンジメントを包含することが意図されていることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサン、
o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物、及び
溶剤
を含有する光硬化性ポリシロキサン組成物であって、当該ポリシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより計測された400と100000の間の範囲に含まれる分子量に対して累積重量%をプロットすることにより得られた積分分子量分布曲線、から計算した時、当該ポリシロキサンの全重量に対して、10000〜80000の範囲の分子量を有するポリシロキサン画分を25〜60重量%含有し、かつ、分子量が800未満の当該ポリシロキサン中のオリゴマーの含有量は、光硬化性ポリシロキサン組成物の全重量に対して0〜10重量%であること、を特徴とする光硬化性ポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記ポリシロキサンは、100〜1500Å/秒のアルカリ溶解速度を有していることを特徴とする、請求項1記載の光硬化性ポリシロキサン組成物。
【請求項3】
前記ポリシロキサン100重量部に対して、前記o−ナフトキノンジアジドスルホナート化合物の含有量が0.5〜80重量部、前記溶媒の含有量が50〜1200重量部であることを特徴とする、請求項1記載の光硬化性ポリシロキサン組成物。
【請求項4】
分子量が800未満の前記ポリシロキサン中のオリゴマーの含有量は、前記光硬化性ポリシロキサン組成物の全重量に対して0.001〜9重量%であることを特徴とする、請求項1記載の光硬化性ポリシロキサン組成物。
【請求項5】
分子量が800未満の前記ポリシロキサン中のオリゴマーの含有量は、前記光硬化性ポリシロキサン組成物の全重量に対して0.001〜8重量%であることを特徴とする、請求項1記載の光硬化性ポリシロキサン組成物。
【請求項6】
基板上に形成されるのに適している保護膜であって、請求項1に記載の光硬化性ポリシロキサン組成物を基板上に塗布することにより形成される保護膜。
【請求項7】
基板、及び、当該基板上に塗布された請求項6に記載の保護膜を含む素子。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−123391(P2012−123391A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−275031(P2011−275031)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(594006345)奇美實業股▲分▼有限公司 (19)
【Fターム(参考)】