説明

光硬化性材料の成形方法および成形装置

【課題】金属等の材料で構成された上型と下型とを用い、光硬化性材料の成形体を成形する場合において、光硬化性材料での硬化ムラの発生を無くすことができ、光硬化性材料をもれなく効率良く硬化させることができる光硬化性材料の成形方法を提供する。
【解決手段】紫外線等の光を通さない材料で構成された上型7、下型9のすくなくともいずれかに、光硬化性材料11を供給し、上型7を下型9の近傍にまで近づけて位置決めし、上型7と下型9との外側で光源19A,19Bから出射された光URを、上型7と下型9との間に存在している光硬化性材料11に、進路を変化させて照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性材料の成形方法および成形装置に係り、たとえば、金型を用いて紫外線硬化樹脂等の材料の成形体を得るものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を透過する石英ガラスで構成された下型と上型とを用いて、紫外線硬化樹脂製の成形体を得る成形方法が知られている。
【0003】
上記従来の成形方法では、下型と上型との間に存在している未硬化の紫外線硬化樹脂に、下型、上型の少なくともいずれかを通して紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させ、成形体を得ている。
【0004】
しかし、石英ガラスは高価であり、加工がしにくく、欠けやすいという欠点がある。そこで、石英ガラスに比べて安価であり、加工がしやすく、欠けにくい(靭性を備えた)ニッケル等の金属を用いて構成された下型と上型とを用いた成形方法の採用が考えられる。
【0005】
この成形方法では、下型や上型が紫外線を通さないので、上型と下型との隙間から、下型と上型との間に存在している未硬化の紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂を硬化する(たとえば、特許文献1の図15等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−279774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の成形方法では、下型と上型との間の狭い隙間を通して、単に紫外線硬化樹脂に紫外線を照射しているだけであるので、紫外線硬化樹脂で硬化ムラが発生するおそれがあるという問題がある。
【0008】
この問題は、紫外線硬化樹脂だけでなく、紫外線以外の波長の電磁波で硬化する材料(光硬化性樹脂等の材料)でも同様に発生する問題である。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、安価であり加工がしやすく靭性を備えた金属等の材料で構成された上型と下型とを用い、光硬化性材料の成形体を成形する場合において、光硬化性材料での硬化ムラの発生を無くすことができ、光硬化性材料をもれなく効率良く硬化させることができる光硬化性材料の成形方法および成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、紫外線等の光を通さない材料で構成された上型、紫外線等の光を通さない材料で構成された下型のすくなくともいずれかに、光硬化性材料を供給する光硬化性材料供給工程と、前記上型を前記下型の近傍にまで近づけて位置決めする型移動位置決め工程と、前記上型と前記下型との外側で光源から出射された光を、前記上型と前記下型との間に存在している光硬化性材料に、進路を変化させて照射する光照射工程とを有する光硬化性材料の成形方法である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光硬化性材料の成形方法において、前記光照射工程は、光源の位置を変えるか、光源の姿勢を変えるか、光源から出射された光の収束位置を変えるかの少なくともいずれかの態様で、前記光硬化性材料に光を照射する工程である光硬化性材料の成形方法である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、紫外線等の光を通さない材料で構成された下型が設置される下型設置体と、紫外線等の光を通さない材料で構成された上型が設置され、下型設置体に接近もしくは離反する方向で前記下型設置体に対して相対的に移動位置決め自在である上型設置体と、光源が発した光を、前記光硬化性材料に、進路を変化させて照射する光照射部とを有する成形装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安価であり加工がしやすく靭性を備えた金属等の材料で構成された上型と下型とを用い、光硬化性材料の成形体を成形する場合において、光硬化性材料での硬化ムラの発生を無くすことができ、光硬化性材料をもれなく効率良く硬化させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】成形装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるII−II矢視図である。
【図3】レンズアレイの成形方法(製造方法)を示す図である。
【図4】レンズアレイの成形方法を示す図である。
【図5】レンズアレイの成形方法を示す図である。
【図6】紫外線照射部の変形例を示す図であって、図4(b)におけるVI矢視図である。
【図7】紫外線照射部の変形例を示す図であって、図4(b)におけるVI矢視図である。
【図8】紫外線照射部の変形例を示す図であって、図4(b)に対応した図である。
【図9】紫外線照射部の変形例を示す図であって、図4(b)に対応した図である。
【図10】レンズアレイの成形方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図5(b)は、本発明の実施形態に係る光硬化性材料の成形体1を示す図である。
【0016】
成形体1として様々なもの(レンズアレイもしくはモスアイ構造体等の製品もしくは半製品)を掲げることができるが、この実施形態では、レンズアレイを例に掲げて説明する。
【0017】
レンズアレイ1は、平板状の本体部3と多数の凸部5とを備えて構成され一体成形されている。本体部3は、たとえば、円形もしくは矩形等の平板状に形成されている。本実施形態では、矩形な平板状に形成されているものを例として掲げ説明する。
【0018】
凸部5は、たとえば、球冠状に形成されており、球冠の平面が本体部3の平面(厚さ方向の両端にある平面)に接している。また、凸部5は、本体部3の両面で、図5(b)の横方向と図5(b)の紙面に直交する方向とに並んで設けられている。これにより、多数の凸レンズの集合体であるレンズアレイ1が形成されている。
【0019】
なお、レンズアレイ1では、本体部3(レンズアレイ1)の厚さ方向の両面に、いわゆるドットアンドスペースのパターンが形成されているが、凸部5の形状を変えることで、本体部3の厚さ方向の両面に、いわゆるラインアンドスペースのパターンが形成されていてもよい。つまり、図5(b)に示す形態のものを、図5(b)の紙面に直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、この軌跡であらわされる立体の形状に、レンズアレイがなっていてもよい。
【0020】
また、本体部3の厚さ方向の一方の面にのみ、凸部5が形成されている態様であってもよい。
【0021】
次に、レンズアレイ1の成形方法(製造方法)について説明する。
【0022】
まず、図3(a)で示すように、上型7が下型9から離れている状態で、図3(b)、図4(a)で示すように、未硬化の光硬化性材料(たとえば、紫外線硬化樹脂等の光硬化樹脂;本実施形態では紫外線硬化樹脂を例に掲げて説明する。)11を、下型9に供給する(紫外線硬化樹脂供給工程)。
【0023】
なお、上型7と下型9とは、紫外線等の光を通さない材料(ニッケル等の金属もしくはセラミックス等の材料;本実施形態ではニッケルを例に掲げて説明する。)で構成されている。また、紫外線硬化樹脂供給工程では、下型9に紫外線硬化樹脂11を供給することにしているが、下型9に紫外線硬化樹脂11を供給することに代えてもしくは加えて、上型7に紫外線硬化樹脂11を供給するようにしてもよい。すなわち、上型7、下型9のすくなくともいずれかに、紫外線硬化樹脂11を供給する態様であればよい。
【0024】
上型7(上型7の下面)に紫外線硬化樹脂11を供給する場合には、粘度の高い紫外線硬化樹脂11を用い、上型7に紫外線硬化樹脂11を貼り付けるものとする。紫外線硬化樹脂11の粘度が低い場合であっても、紫外線硬化樹脂11の表面張力により、上型7に紫外線硬化樹脂11を供給することが可能な場合がある。
【0025】
続いて、紫外線硬化樹脂を成形するために、図4(b)で示すように、上型7を下型9の近傍にまで近づけて位置決めする(型移動位置決め工程)。
【0026】
続いて、上型7と下型9との間に存在している紫外線硬化樹脂11を満遍なく硬化させるために、紫外線硬化樹脂11に光(紫外線)URを照射する(紫外線射工程)。
【0027】
紫外線照射工程では、上型7と下型9との外側で光源から出射された紫外線URを、上型7と下型9との間に存在している紫外線硬化樹脂11に照射する。さらに、この照射をするときに、紫外線URの進路を変化させている。この進路の変化の詳細については後述する。
【0028】
続いて、図5(a)で示すように、上型7を硬化した紫外線硬化樹脂11から離し、硬化した紫外線硬化樹脂11を下型9から離す(離型工程)。なお、上型7と下型9には、硬化した紫外線硬化樹脂11が離型しやすように、離型処理が予めされているものとする。さらに、上型7と下型9とから硬化した紫外線硬化樹脂11を離すために、上型7と下型9とにエジェクタピンを設けてあってもよい。
【0029】
ところで、型移動位置決め工程で、上型7が移動位置決めされた状態では、図4(b)で示すように、下型9の上面と上型7の下面とはお互いが僅かに離れているとともに、お互いが平行になって対向している。したがって、下型9の上面に成形パターン(レンズアレイ1の凸部5を形成するための凹部)13が形成されておらず、上型7の上面にも成形パターン(レンズアレイ1の凸部5を形成するための凹部)が存在していないとすれば、下型9と上型7との間の空間17は、矩形な薄い平板状になっている。
【0030】
しかし、実際には、型7,9に成形パターン13,15が形成されているので、空間17の下面には下型9の成形パターン13に応じた凸部が存在しており、空間17の上面には上型7の成形パターン15の応じた凸部が形成されている。なお、当然に理解されるように、成形パターン13,15に対応した凸部が形成されている空間17の形状が、レンズアレイ1の形状になる。
【0031】
ここで、紫外線射工程での紫外線の進路を変化の態様について、例を掲げて説明する。
【0032】
紫外線射工程での紫外線の進路を変化の態様として、光源(紫外線発生源)の位置を変える態様A、光源の姿勢を変える態様B、光源から出射された光の収束位置を変える態様Cを掲げることができる。そして、紫外線射工程では、態様A、態様B、態様Cの少なくともいずれかの態様で、紫外線硬化樹脂11に紫外線URを照射している。
【0033】
態様Aについて詳しく説明する。態様Aで光源の位置を変える場合には、光源での紫外線URの出射方向を変えることなく(光源の姿勢を変えることなく)、光源の位置を変化させて(光源を平行移動して)、光源から出射された紫外線URをそのまま紫外線硬化樹脂11に照射する。
【0034】
この場合、光源として、点光源、線光源、面光源を掲げることができる。また、光源から出射された光は、発散光線束、もしくは、平行光線束となっている。光源としてたとえばLEDが採用されるが、一般的には、光源は高価であるので、点光源が採用されるケースが多く(態様B、態様Cでも同様)、この点光源から出射された紫外線は、発散光線束になっている。
【0035】
態様Aでは、図6(図4(b)でのVI矢視図)で示すように、一対の紫外線発生装置19A、19Bを、位置P1から位置P2に移動(平行移動)しつつ紫外線硬化樹脂11に紫外線URを照射している。
【0036】
次に、態様Bについて詳しく説明する。態様Bで光源の姿勢を変える場合には、光源の位置ほとんどを変えることなく、図9で示すように、光源での紫外線URの出射方向を変化させて(光源を適宜傾け光源から出射される紫外線URの進行方向を変化させて)、光源から出射された紫外線URをそのまま紫外線硬化樹脂11に照射する。
【0037】
この場合も光源として、点光源、線光源、光源を掲げることができる。また、光源から出射された光は、発散光線束、もしくは、平行光線束となっているが、光学系(レンズ等の光学素子)によって、平行光線束になっていることが望ましい。
【0038】
次に、態様Cについて詳しく説明する。態様Cで光の収束位置を変える場合には、光源での紫外線URの出射方向を変えることなく、また、光源の位置を変えることなく、図8で示すように、光源から出射された紫外線URの収束位置を変化させて、主にこの収束位置で紫外線硬化樹脂11を硬化させる。
【0039】
この場合も光源として点光源、線光源、光源を掲げることができる。光源から出射された紫外線URは、光学系(レンズ等の光学素子)によって、収束光源束になっているとともに、光学素子の位置を変える等することで(たとえば凸レンズの焦点距離を変えることで)、紫外線URの収束位置が変化するようになっている。また、光源の収束位置の形状が点状になっている場合と、直線等の線状になっている場合とがある。
【0040】
さらに、態様Cの場合には、光源の収束位置を、はじめは、光源から遠くのところにしておき(図8の紫外線UR1参照)、この後徐々に、光源の近くに移動するようにする(図8の紫外線UR2,UR3参照)。これにより、光源から遠くのところに存在している紫外線硬化樹脂11がはじめに硬化し、この硬化している部位が次第に光源の近く側に拡大してくる。
【0041】
態様Cについてさらに説明する。図1で示すように、紫外線発生装置が2台設けられている場合(19A,19B)、一方の紫外線発生装置(図1の左側の紫外線発生装置)19Aは、はじめは、紫外線硬化樹脂11の中心で紫外線が収束するようにし、この後徐々に、紫外線の収束位置が、一方の紫外線発生装置19A側に移動(図1の左側)し、最後に、紫外線発生装置19Aの左端のところで、紫外線が収束するようにする。
【0042】
他方の紫外線発生装置(図1の右側の紫外線発生装置)19Bも、一方の紫外線発生装置19Aと同様に(対称に)、紫外線硬化樹脂11に紫外線の照射するようになっている。すなわち、他方の紫外線発生装置19Bは、はじめは、紫外線硬化樹脂11の中心で紫外線が収束するようにし、この後徐々に、紫外線の収束位置が、他方の紫外線発生装置19B側に移動(図1の右側)し、最後に、紫外線発生装置19Bの右端のところで、紫外線が収束するようにする。
【0043】
なお、紫外線硬化樹脂11は、硬化前は、紫外線を良く透過するようになっている。また、紫外線硬化樹脂11が、硬化後も、紫外線を良く透過するようになっていることが望ましい。特に、態様A、態様Bでは、紫外線硬化樹脂11が、硬化後も、紫外線を良く透過するようになっていることが特に望ましい。一方、態様Cでは、紫外線硬化樹脂11が、硬化後において、紫外線を透過しないものであってもよい。
【0044】
また、紫外線射工程では、上述したように、上記3つの態様A,B,Cのうちの少なくともいずれかの態様で、紫外線硬化樹脂11に紫外線を照射するようにしている。これにより、紫外線硬化樹脂11への紫外線の照射の形態として、態様Aのみを用いた紫外線硬化樹脂11への紫外線の照射、もしくは、態様Bのみを用いた紫外線硬化樹脂11への紫外線の照射、もしくは、態様Cのみを用いた紫外線硬化樹脂11への紫外線の照射、もしくは、態様Aと態様Bとの組み合わせのみを用いた紫外線硬化樹脂11への紫外線の照射、もしくは、態様Aと態様Cとの組み合わせのみを用いた紫外線硬化樹脂11への紫外線の照射、もしくは、態様Bと態様Cとの組み合わせのみを用いた紫外線硬化樹脂11への紫外線の照射、もしくは、態様Aと態様Bと態様Cの組み合わせを用いた紫外線硬化樹脂11への紫外線の照射を掲げることができる。
【0045】
次に、上述した成形方法を実行するための成形装置21について例を掲げて説明する。
【0046】
図1に示すように、成形装置21は、下型設置体23と上型設置体25と紫外線照射部27とを備えて構成されている。
【0047】
下型設置体23は、ベース体29に一体的に設けられており、下型設置体23には、下型9が設置されるようになっている。
【0048】
上型設置体25は、下型設置体23に接近もしくは離反する方向(図1の上下方向)で下型設置体23に対して相対的に移動位置決め自在なようにして、ベース体29に設けられている。また、上型設置体25には、上型7が設置されるようになっている。
【0049】
紫外線照射部27は、上型7と下型9との外側でベース体29に設けられている。また、紫外線照射部27は、紫外線硬化樹脂11に紫外線を照射するようになっている。そして、紫外線硬化樹脂11を万遍なく硬化して、上型7と下型9とで紫外線硬化樹脂11の成形体(レンズアレイ1)を得るようになっている。紫外線硬化樹脂11は、上型設置体25に設置された上型7と下型設置体23に設置された下型9との間に存在している。また、紫外線照射部27は、光源が発した紫外線を、紫外線硬化樹脂11の進路を変化させて照射するようになっている。
【0050】
また、成形装置21には、下型設置体23に設置された下型9に、未硬化の光硬化樹脂を供給する光硬化樹脂供給装置31が設けられている。
【0051】
成形装置21についてさらに詳しく説明する。
【0052】
成形装置21では、下型設置体23の平面状の上面に下型9が一体的に設置されるようになっている。下型9の設置は、図示しないボルト等の締結具を用いてなされるようになっている。
【0053】
下型設置体23に下型9を設置した状態では、平板状の下型9の下面が下型設置体23の上面に面接触しており、成形パターン13が形成されている下型9の面が上面になっている。
【0054】
上型設置体25は、リニアガイドベアリング等(図示せず)を介してベース体29に設けられており、下型設置体23に対して接近もしくは離反する方向(上下方向)で、サーボモータ等のアクチュエータ(図示せず)により移動位置決め自在になっている。これにより、上型設置体25が下型設置体23に対して相対的に移動位置決め自在になっている。
【0055】
上型設置体25の平面状の下面は、下型設置体23の上面と平行になっており、上下方向から見ると、下型設置体23の上面の全面と、上型設置体25の下面の全面とがお互いに重なっている。
【0056】
上型設置体25には、上型7がたとえばボルト等の締結具を用いて一体的に設置されるようになっている。上型設置体25に上型7が設置されている状態では、上型7の上面が上型設置体25の下面に面接触しており、成形パターン15が形成されている上型7の面が下面になっている。
【0057】
ここで、下型設置体23に下型9が設置され上型設置体25に上型7が設置された状態を上下方向から見ると、下型9の上面の全面と上型7の下面の全面とがお互いに重なっており、下型設置体23の上面や上型設置体25の下面の内側に、下型9と上型7とが存在している。
【0058】
紫外線照射部27(紫外線発生装置19A,19B)は、下型設置体23に設置された下型9や上型設置体25に設置された上型7から離れて、ベース体29に設けられている。
【0059】
そして、紫外線発生装置19A,19Bの光源から出射された紫外線が、この進路を変えて、下型設置体23に設置された下型9と上型設置体25に設置された上型7との間に存在している未硬化の紫外線硬化樹脂11に照射されるようになっている。
【0060】
さらに説明すると、上型7と下型9とは上述したように矩形な平板状に形成されている。紫外線発生装置は、同仕様のものが2台設けられている(参照符号19A,19B)。また紫外線発生装置19A,19Bは、たとえば、線光源(もしくは、幅が狭く細長い面光源)を備えている。
【0061】
一対(2台)の紫外線発生装置のうちの一方の紫外線発生装置19Aは、下型設置体23に設置された下型9から僅かに離れて、下型設置体23に設置された下型9の側方に設けられている。また、一方の紫外線発生装置19Aの線光源の長手方向は、下型の矩形な上面の1辺の延伸方向と平行になっている(図1の紙面に直交する方向)。
【0062】
さらに、紫外線硬化樹脂11を成形するために、上型設置体25に設置されている上型7が、下型設置体23に設置されている下型9の近傍にまで近づいて位置決めされたときに(図4(b)参照)、一方の紫外線発生装置19Aが発した紫外線が、下型9や上型7の一方の側から下型9と上型7との間を通って(下型9と上型7との間の間隙の開口部を通って)下型9と上型7との間に存在している紫外線硬化樹脂11に照射されるようになっている。
【0063】
一対の紫外線発生装置のうちの他方の紫外線発生装置19Bは、下型設置体23の中心面(下型設置体23の中心を含み上型設置体25の移動方向に展開しているとともに、下型9の矩形な上面の1辺と平行になっている平面;下型設置体23の中心を含み前後方向と上下方向とに展開している平面)に対して対称に設けられている。
【0064】
そして、紫外線硬化樹脂11を成形するために、上型設置体25に設置されている上型7が、下型設置体23に設置されている下型9の近傍にまで近づいて位置決めされたときに(図4(b)参照)、他方の紫外線発生装置19Bの発した紫外線が、下型9や上型7の他方の側から下型9と上型7との間を通って(下型9と上型7との間の間隙の開口部を通って)下型9と上型7との間に存在している紫外線硬化樹脂11に照射されるようになっている。
【0065】
また、一方の紫外線発生装置19Aは、図示しない回動装置(首振り装置)を介して、ベース体29に支持されている。そして、紫外線硬化樹脂11に紫外線URを照射するとき、図9で示すように、一方の紫外線発生装置19Aの姿勢が変化し(首振りをし)、紫外線URの進行方向が変わるようになっている。
【0066】
他方の紫外線発生装置19Bも、一方の紫外線発生装置19Aと同様にして、ベース体29に支持されており紫外線URの進行方向を変えているが、他方の紫外線発生装置19Bをベース体29に固定し、他方の紫外線発生装置19Bが発した紫外線URの進行方向が変化しないようになっていてもよい。
【0067】
紫外線硬化樹脂供給部(紫外線硬化樹脂供給装置)31は、下型9に未硬化の紫外線硬化樹脂11を一定量供給する装置であり、図示しない移動位置決め装置でベース体29に支持されている。そして、下型9に紫外線硬化樹脂11を供給する位置P3と、退避位置P4との間を移動するようになっている。
【0068】
また、紫外線硬化樹脂供給装置31で、下型9の上に未硬化の紫外線硬化樹脂11を供給しただけでは、供給された紫外線硬化樹脂11が、下型9の上面全体に容易には広がらない自体が発生する場合がある。
【0069】
そこで、スピンコートやバーコートで、紫外線硬化樹脂11を下型9の上面全体に膜状に広げる方式が採用される場合がある。スピンコートの場合には、ベアリングを介して下型設置体23をベース体29に設け、下型設置体23が回転するようになっているものとする。
【0070】
次に成形装置21の動作について説明する。
【0071】
成形装置21は、図示しない制御装置の制御の下、次に示す動作をする。
【0072】
まず、初期状態として、図1、図3(a)で示すように、上型7が設置されている上型設置体25が上昇しており、下型設置体23に下型9が設置されており、紫外線硬化樹脂供給装置31は退避位置P4に位置している。
【0073】
また、初期状態では、紫外線硬化樹脂供給装置31は紫外線硬化樹脂11の供給を停止しており、紫外線発生装置19A,19Bは、紫外線を発生していない。
【0074】
上記初期状態において、オペレータが、成形装置21をスタートさせると、紫外線硬化樹脂供給装置31が供給位置P3まで移動し、下型9の上に未硬化の紫外線硬化樹脂11を一定量供給し、この供給後、紫外線硬化樹脂供給装置31が退避位置P4まで移動する(図3(b)、図4(a)参照)。
【0075】
続いて、上型7が未硬化の紫外線硬化樹脂11に接し未硬化の紫外線硬化樹脂11が膜状になるまで(上型7と下型9との距離が所定の僅かな距離になるまで)、上型設置体25が下降する(図4(b)参照)。
【0076】
続いて、紫外線発生装置19A,19Bから紫外線URを硬化前の紫外線硬化樹脂11に照射し、紫外線硬化樹脂11を硬化する(図4(b)参照)。なお、紫外線硬化樹脂11に向けて照射された紫外線URは、たとえば、図9で示すように、下型9や上型7の成形パターン13,15のところ(下型9や上型7の内面)で反射して拡散し、紫外線硬化樹脂11を均一に硬化するのである。この場合、下型9や上型7の内面が鏡面なっていることが望ましい。
【0077】
続いて、図5(a)等で示すように、上型設置体25を上昇する。これにより、上型7が硬化した紫外線硬化樹脂11から離れる。
【0078】
続いて、たとえば、オペレータが、硬化した紫外線硬化樹脂11を下型9から取り出し、上記初期状態に戻る。下型9から取り出された硬化した紫外線硬化樹脂11が、レンズアレイ1になり(図5(b)参照)、製品もしくは半製品として使用される。
【0079】
成形装置21によれば、下型9と上型7とがニッケルで構成されているので、下型9と上型7とを石英ガラスで構成した場合に比べ、下型9と上型7とが安価であり加工がしやすく靭性を備えて欠け難くなっている。
【0080】
また、下型9と上型7とがニッケルで構成されているので、紫外線が上型7と下型9とを透過しないが、上型7と下型9との隙間を通して紫外線硬化樹脂11に照射しているので、下型9と上型7との間に存在している紫外線硬化樹脂11を硬化させることができる。
【0081】
さらに、紫外線の進路を変化させているので、紫外線を紫外線硬化樹脂11の全体に均一に照射することができる。そして、紫外線硬化樹脂11での硬化ムラや硬化もれを発生させることなく、紫外線硬化樹脂11を効率良く硬化させることができる。
【0082】
ところで、下型9や上型7の成形パターンは、レンズアレイ1にドットアンドスペース状の凸部5を形成するために、図2(a)で示すように格子状なっているが、レンズアレイ1にラインアンドスペース状の凸部5を形成する場合には、図2(b)で示すように、下型9や上型7の成形パターンが、縦縞状になっていてもよい。
【0083】
また、図6で示す場合と同様に、上型7と下型9との側方に紫外線発生装置19A,19Bを設け、紫外線発生装置19A,19Bを移動させる場合には、図7で示すように、上型7や下型9の縦方向(図7の上下方向)の寸法が上型7や下型9の横方向(図7の左右方向)の寸法より大きくなっていることが望ましい。これにより、紫外線硬化樹脂を一層容易に硬化させることができる。
【0084】
さらに、図6や図7において、図6や図7の紙面に直交する軸を回動中心にして、紫外線発生装置19A,19Bが回動(首振り)するようにしてもよい。
【0085】
さらに、図4に示す状態で、未硬化の紫外線硬化樹脂11が下型9からこぼれ出てしまうことを防止するために、図10で示すように、こぼれ防止板33を設けてもよい。こぼれ防止板33は、紫外線が透過するガラス等の材料で構成され矩形な平板状に形成されている。
【0086】
こぼれ防止板33は、4枚設けられており、たとえば、下型9に一体的に設けられており、それぞれが下型9の上面の4辺から上方に突出している。
【符号の説明】
【0087】
1 レンズアレイ(成形体)
7 上型
9 下型
11 紫外線硬化樹脂(光硬化性材料)
23 下型設置体
21 成形装置
25 上型設置体
29 紫外線照射部(光照射部)
19A、19B 紫外線発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線等の光を通さない材料で構成された上型、紫外線等の光を通さない材料で構成された下型のすくなくともいずれかに、光硬化性材料を供給する光硬化性材料供給工程と、
前記上型を前記下型の近傍にまで近づけて位置決めする型移動位置決め工程と、
前記上型と前記下型との外側で光源から出射された光を、前記上型と前記下型との間に存在している光硬化性材料に、進路を変化させて照射する光照射工程と、
を有することを特徴とする光硬化性材料の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光硬化性材料の成形方法において、
前記光照射工程は、光源の位置を変えるか、光源の姿勢を変えるか、光源から出射された光の収束位置を変えるかの少なくともいずれかの態様で、前記光硬化性材料に光を照射する工程であることを特徴とする光硬化性材料の成形方法。
【請求項3】
紫外線等の光を通さない材料で構成された下型が設置される下型設置体と、
紫外線等の光を通さない材料で構成された上型が設置され、下型設置体に接近もしくは離反する方向で前記下型設置体に対して相対的に移動位置決め自在である上型設置体と、
光源が発した光を、前記光硬化性材料に、進路を変化させて照射する光照射部と、
を有することを特徴とする成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−176591(P2012−176591A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41862(P2011−41862)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】