説明

光硬化性樹脂組成物

【課題】 硬化時の体積収縮が小さくて寸法精度に優れ、柔軟性、弾性回復性、力学的特性等に優れる立体造形物や成形品を製造できる光硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】(イ)特定のポリエーテル系ウレタン化アクリル化合物の1種以上からなるウレタン化アクリル化合物或いは前記のポリエーテル系ウレタン化アクリル化合物の1種以上と特定のポリエステル系ウレタン化アクリル化合物よりなるウレタン化アクリル化合物、(ロ)他のラジカル重合性化合物、並びに(ハ)光重合開始剤を含有し、アクリルウレタン化合物(イ):ラジカル重合性化合物(ロ)の重量比が80:20〜10:90である光硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物、該光硬化性樹脂組成物を用いる立体造形物の製造方法および該光硬化性樹脂組成物で用いるウレタン化アクリル化合物に関する。より詳細には、本発明は、光で硬化した際に、体積収縮率が小さくて寸法精度に優れ、しかも柔軟性、弾性回復性および力学的特性に優れる成形品や立体造形物、更にはその他の硬化物を得ることのできる光硬化性樹脂組成物、該光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形法によって造形物を製造する方法、並びに該光硬化性樹脂組成物で用いるウレタン化アクリル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液状の光硬化性樹脂組成物は被覆材、ホトレジスト、歯科用材料などとして広く用いられているが、近年、三次元CADに入力されたデータに基づいて光硬化性樹脂組成物を立体的に光学造形する方法が注目を集めている。
光学的立体造形技術に関しては、液状の光硬化性樹脂に必要量の制御された光エネルギーを供給して薄層状に硬化させ、その上に更に液状光硬化性樹脂を供給した後に制御下に光照射して薄層状に積層硬化させるという工程を繰り返すことによって立体造形物を製造する光学的立体造形法が開示され(特許文献1参照)、そしてその基本的な実用方法が更に提案された(特許文献2参照)。そして、それ以来、光学的立体造形技術に関する多数の提案がなされている(例えば特許文献3〜10を参照)。
【0003】
立体造形物を光学的に製造する際の代表的な方法としては、容器に入れた液状光硬化性樹脂組成物の液面に所望のパターンが得られるようにコンピューターで制御された紫外線レーザーを選択的に照射して所定の厚みに硬化させ、次にその硬化層の上に1層分の液状樹脂組成物を供給して同様に紫外線レーザーを照射して前記と同じように硬化させて連続した硬化層を形成させるという積層操作を繰り返して最終的な形状を有する立体造形物を製造する方法が挙げられ、一般に広く採用されている。そしてこの方法による場合は、造形物の形状がかなり複雑であっても簡単に且つ比較的短時間で目的とする立体造形物を製造することが出来るために近年大きな注目を集めている。
【0004】
被覆材、ホトレジスト、歯科用材料などに用いられる光硬化性樹脂組成物としては、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステルモノマーなどの硬化性樹脂に光重合開始剤を添加したものが広く用いられている。
【0005】
また、光学的立体造形法で用いる光硬化性樹脂組成物としては、光重合性の変性ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、オリゴエステルアクリレート系化合物、エポキシアクリレート系化合物、エポキシ系化合物、ポリイミド系化合物、アミノアルキド系化合物、ビニルエーテル系化合物などの光重合性化合物の1種または2種以上を主成分としこれに光重合開始剤を添加したものが挙げられ、そして最近では各種の改良技術が開示されている(特許文献4、特許文献6、特許文献11〜15等を参照)。
【0006】
光学的立体造形法で用いられる光硬化性樹脂組成物としては、取り扱い性、造形速度、造形精度などの点から、低粘度の液状物であること、硬化時の体積収縮が少ないこと、光硬化して得られる立体造形物の力学的特性が良好であることなどが必要とされている。そして、近年、光学的立体造形物の需要および用途が拡大する傾向にあり、それに伴って用途によっては前記した諸特性と併せて高伸度柔軟性および弾性回復性を有する立体造形物が求められており、例えば、構造物中に含まれる複雑な形状をしたクッション材、真空成形用金型などの用途に用いられる立体造形物では高い柔軟性、高伸度、弾性回復性が必要とされている。
【0007】
柔軟性を有する光学的立体造形物の製法としては、光硬化性樹脂中に塩化ビニル樹脂粉末や可塑剤などからなる熱凝集性のポリマー材料を含有させ、それを光硬化させて光学的立体造形物とした後に熱的に凝集処理する方法が知られている(特許文献14を参照)。
しかしながら、この方法による場合は、光硬化性樹脂中に熱凝集性ポリマーを配合しているために樹脂組成物の粘度が高くなり、取り扱い性や造形精度が低下するという欠点がある。また、可塑剤を用いているために耐引裂抵抗性などの力学的特性に劣っており、しかも立体造形物の表面に可塑剤の移行、滲み出しが生ずるなどの問題があり、充分に満足する結果が得られていない。
また、引張伸度を向上させるためにウレタン基間にカプロラクトン単位を結合させたウレタンアクリレート系樹脂組成物が知られているが(特許文献16を参照)、その硬化物は引張伸度がある程度向上しているものの、柔軟性が未だ充分ではない。
【0008】
【特許文献1】特開昭56−144478号公報
【特許文献2】特開昭60−247515号公報
【特許文献3】特開昭62−35966号公報
【特許文献4】特開平1−204915号公報
【特許文献5】特開平2−113925号公報
【特許文献6】特開平2−145616号公報
【特許文献7】特開平2−153722号公報
【特許文献8】特開平3−15520号公報
【特許文献9】特開平3−21432号公報
【特許文献10】特開平3−41126号公報
【特許文献11】特開平1−213304号公報
【特許文献12】特開平2−28261号公報
【特許文献13】特開平2−75617号公報
【特許文献14】特開平3−104626号公報
【特許文献15】特開平3−114732号公報
【特許文献16】特開昭61−185522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、低粘度の液状を呈していて取り扱い性に優れ、短い硬化時間で硬化でき、光で硬化した際に、体積収縮率が小さくて寸法精度に優れ、しかも柔軟性、弾性回復性および引張強度、引張伸度などの力学的特性に優れる成形品、立体造形物、その他の硬化物を得ることのできる光硬化性樹脂組成物を提供することである。
そして、本発明の目的は、上記の光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形法によって造形物を製造する方法である。
更に、本発明の目的は、上記の光硬化性樹脂組成物で用い得る新規なウレタンアクリル化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく研究を重ねてきた。その結果、本発明者らが合成した特定の化学構造を有する新規なウレタン化アクリル化合物が上記の目的の達成に極めて有効であり、このウレタン化アクリル化合物に他のラジカル重合性化合物および光重合開始剤を加えると粘度が低くて取り扱い性に優れる液状の光硬化性樹脂組成物が得られること、そしてその光硬化性樹脂組成物に光を照射すると短い時間で硬化させることができ、体積収縮率が小さくて所望の形状および寸法を有する柔軟性および弾性回復性に優れ、しかも力学的特性にも優れる立体造形物が良好な寸法精度で得られることを見出した。そして、本発明者らは、前記の光硬化性樹脂組成物は光学的立体造形法だけではなく、光照射による硬化を伴う成形品の製造や他の用途にも有効に使用できることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、(イ)(i)下記の一般式(II);
【0012】
【化6】


(式中、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、eは1または2であって、eが2のときは一方または両方のR2がメチル基であり、A2は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、fは4〜20の整数、そしてgは2または3である)
で表されるウレタン化アクリル化合物;および
下記の一般式(III);
【0013】
【化7】


(式中、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、A3は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、hは4〜20の整数、そしてjは2または3である)
で表されるウレタン化アクリル化合物;
のうちの少なくとも1種から選ばれるウレタン化アクリル化合物;または、
(ii) 前記一般式(II)で表されるウレタン化アクリル化合物および前記一般式(III)で表されるウレタン化アクリル化合物のうちの少なくとも1種から選ばれるウレタン化アクリル化合物と、下記の一般式(I);
【0014】
【化8】


(式中、R1は水素原子またはメチル基、aは1または2であって、aが2のときは一方または両方のR1がメチル基であり、A1は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、bは3〜6の整数、cは3〜14の整数、dは2または3である)
で表されるウレタン化アクリル化合物とからなるウレタン化アクリル化合物;
(ロ) 前記(イ)のウレタン化アクリル化合物以外のラジカル重合性化合物;
並びに、
(ハ) 光重合開始剤;
を含有する光硬化性樹脂組成物であって、前記(イ)のアクリルウレタン化合物:前記(ロ)のラジカル重合性化合物の含有割合が80:20〜10:90(重量比)であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物である。
【0015】
そして、本発明は、上記の光硬化性樹脂組成物からなる光学的立体造形用樹脂組成物である。
さらに、本発明は、上記の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、光学的立体造形法によって立体造形物を製造する方法である。
そして、本発明は、下記の一般式(II);
【0016】
【化9】


(式中、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、eは1または2であって、eが2のときは一方または両方のR2がメチル基であり、A2は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、fは4〜20の整数、そしてgは2または3である)
で表されるウレタン化アクリル化合物;または
下記の一般式(III);
【0017】
【化10】


(式中、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、A3は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、hは4〜20の整数、そしてjは2または3である)
で表されるウレタン化アクリル化合物である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、低粘度の液状を呈していて取り扱い性に優れ、短い硬化時間で硬化できるので、光照射法による各種の成形品や立体造形物などの製造、およびモールド成形法による各種の成形品の製造に有効に使用することができる。
そして、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いた場合には、光で硬化した際に体積収縮率が小さくて、寸法精度に優れる成形品や立体造形物を得ることができ、しかもそれにより得られる成形品や立体造形物などの硬化物は、柔軟性、弾性回復性および引張強度、引張伸度などの力学的特性にも優れているので、それらの特性を活かして種々の用途に有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の光硬化性樹脂組成物で用いる上記の一般式(II)で表されるウレタン化アクリル化合物[以下これを「ウレタン化アクリル化合物(II)」という]および上記の一般式(III)で表されるウレタン化アクリル化合物[以下これを「ウレタン化アクリル化合物(III)」という]について説明する。
【0020】
ウレタン化アクリル化合物(II)において、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、そしてeは1または2であり、eが2のときは2個の基;CH2=C(R2)−COO−CH2−のうちの一方または両方の基R2がメチル基であることが必要である。ウレタン化アクリル化合物(II)においてeが2のときに2個の基;CH2=C(R2)−COO−CH2−の両方の基R2が水素原子であると、合成上極めて有毒な、発癌性、皮膚刺激性のあるグリセリンジアクリレートを経由しなければならず、実質的に使用できず、好ましくない。
【0021】
また、ウレタン化アクリル化合物(II)において、fは4〜20の範囲の整数であることが必要であり、5〜14の範囲の整数であることが好ましく、6〜10の範囲の整数であることがより好ましい。fが20を超えると、ウレタン化アクリル化合物(II)の融点が高くなって、ラジカル重合性化合物(ロ)として低分子量のものを用いても室温下で流動性に優れる光硬化性樹脂組成物が得られにくくなり、しかも光硬化させて得られる硬化物の引張伸度、柔軟性などが低下し、目的とする柔軟性や弾性回復性に優れる立体造形物や成形品などが得られなくなる。また、fが4未満の場合にも、光硬化させて得られる硬化物の引張伸度や柔軟性が低下し、目的とする柔軟性や弾性回復性に優れる立体造形物や成形品などが得られなくなる。
【0022】
さらに、ウレタン化アクリル化合物(II)においてgが2または3であることが必要である。gが2であるウレタン化アクリル化合物(II)を用いた場合には、gが3であるウレタン化アクリル化合物(II)を用いた場合に比べて、本発明の光硬化性樹脂組成物から得られる立体造形物や成形品などの光硬化物の柔軟性や引張伸度が大きなものとなる傾向があるが、いずれの場合にも大きな引張伸度を有していて、柔軟性に優れる立体造形物や成形品などが得られる。
【0023】
また、ウレタン化アクリル化合物(II)において、基A2は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、基A2は炭素原子数が6〜20の非置換または置換された脂肪族、芳香族および/または脂環式の2価または3価の炭化水素基であるのが好ましい。
そして、ウレタン化アクリル化合物(II)は、後記するように、一般式;A2−(NCO)g(A2およびgは前記と同じ)で表されるジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物を用いて好ましく製造することができ、かかる点から、基A2はウレタン化アクリル化合物(I)を製造するのに用いたジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた2価または3価の残基であるのが好ましい。より具体的には、ウレタン化アクリル化合物(II)における基A2の好ましい例としては、イソホロン基、トリレン基、4,4’−ジフェニルメタン基、ナフチレン基、キシリレン基、フェニレン基、3,3’−ジクロロ−4,4’−フェニルメタン基、トルイレン基、ヘキサメチレン基、4,4’−ジシクロヘキシルメタン基、水添化キシリレン基、トリフェニレンメタン基、テトラメチルキシレン基などを挙げることができる。
【0024】
ウレタン化アクリル化合物(II)の製造法は特に限定されず、その製法の如何に拘わらず上記の一般式(II)で表される化合物、およびその化合物を含有する光硬化性樹脂組成物は本発明の範囲に包含されるが、ウレタン化アクリル化合物(II)は好ましくは以下の方法で製造することができる。
【0025】
《ウレタン化アクリル化合物(II)の代表的な製法例》
(1) 下記の一般式(iv):
【0026】
【化11】


(式中、R2およびeは上記と同じ)
で表されるエチレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルまたはグリセリンのジ(メタ)アクリル酸エステル1モルに対して、下記の一般式(v):
【0027】
【化12】


(式中、R3は上記と同じ)
で表されるプロピレンオキサイド[上記の一般式(v)においてR3=CH3]またはエチレンオキサイド[上記の一般式(v)においてR3=H]の少なくとも一方を反応させて、下記の一般式(vi):
【0028】
【化13】


(式中、R2、R3、eおよびfは上記と同じ)
で表されるプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドの付加化合物をつくり;次いで
(2) 上記(1)で得られる一般式(vi)で表されるプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドの付加化合物を、前記した一般式:A2−(NCO)gで表されるジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物と反応させることによって、ウレタン化アクリル化合物(II)を製造する。
【0029】
そして、上記の(1)の反応は、エチレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルまたはグリセリンのジ(メタ)アクリル酸エステルとプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドを、触媒を用いて反応させるのが好ましく、それによって上記した一般式(vi)で表されるプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドの付加化合物を円滑に得ることができる。また、一般式(vi)で表されるプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドの付加化合物は既に知られているので既知のものをそのまま使用してもよい。
【0030】
また、一般式(vi)で表されるプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドの付加化合物に一般式:A2−(NCO)gで表されるジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物を反応させる上記(2)の反応においては、従来既知のウレタン化触媒、例えば有機錫触媒、3級アミン触媒などを用いて、40〜90℃の温度で両者を反応させると、目的とするウレタン化アクリル化合物(II)を円滑に得ることができる。
【0031】
そして、上記(2)の反応において、一般式(vi)で表される付加化合物と反応させる一般式:A2−(NCO)gで表されるジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物の種類は特に制限されず、ウレタン化反応を行い得るジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物のいずれもが使用できる。そのうちでも、ジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物の好ましい例としては、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−フェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのイソシアネート化合物は単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。上記したイソシアネート化合物のうちでも、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましく用いられ、その場合には引張伸度が大きくて柔軟可撓性に優れる光硬化物を、ウレタン化アクリル化合物(II)を含む本発明の光硬化性樹脂組成物から得ることができる。
【0032】
また、ウレタン化アクリル化合物(III)において、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基である。そして、hは4〜20の範囲の整数であることが必要であり、5〜14の範囲の整数であるのが好ましく、6〜10の範囲の整数であるのがより好ましい。hが20を超えると、ウレタン化アクリル(III)の融点が高くなって、ラジカル重合性化合物(ロ)として低分子量のものを用いても室温下で流動性に優れる光硬化性樹脂組成物が得られにくくなり、しかも光硬化させて得られる硬化物の引張伸度、柔軟性などが低下し、目的とする柔軟性や弾性回復性に優れる立体造形物や成形品などが得られなくなる。また、hが4未満の場合にも、光硬化させて得られる硬化物の引張伸度や柔軟性が低下し、目的とする柔軟性や弾性回復性に優れる立体造形物や成形品などが得られなくなる。
【0033】
さらに、ウレタン化アクリル化合物(III)においてjが2または3であることが必要である。jが2であるウレタン化アクリル化合物(III)を用いた場合には、jが3であるウレタン化アクリル化合物(III)を用いた場合に比べて、本発明の光硬化性樹脂組成物から得られる立体造形物や成形品などの光硬化物の柔軟性や引張伸度が大きなものとなる傾向があるが、いずれの場合にも大きな引張伸度を有していて、柔軟性に優れる立体造形物や成形品などが得られる。
【0034】
また、ウレタン化アクリル化合物(III)において、基A3は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、基A3は炭素原子数が6〜20の非置換または置換された脂肪族、芳香族および/または脂環式の2価または3価の炭化水素基であるのが好ましい。
そして、ウレタン化アクリル化合物(III)は、後記するように、一般式;A3−(NCO)j(A3およびjは前記と同じ)で表されるジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物を用いて好ましく製造することができ、かかる点から、基A3はウレタン化アクリル化合物(I)を製造するのに用いたジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた2価または3価の残基であるのが好ましい。より具体的には、ウレタン化アクリル化合物(III)における基A3の好ましい例としては、イソホロン基、トリレン基、4,4’−ジフェニルメタン基、ナフチレン基、キシリレン基、フェニレン基、3,3’−ジクロロ−4,4’−フェニルメタン基、トルイレン基、ヘキサメチレン基、4,4’−ジシクロヘキシルメタン基、水添化キシリレン基、トリフェニレンメタン基、テトラメチルキシレン基などを挙げることができる。
【0035】
ウレタン化アクリル化合物(III)の製造法は特に限定されず、その製法の如何に拘わらず上記の一般式(III)で表される化合物、およびその化合物を含有する光硬化性樹脂組成物は本発明の範囲に包含されるが、ウレタン化アクリル化合物(III)は好ましくは以下の方法で製造することができる。
【0036】
《ウレタン化アクリル化合物(III)の代表的な製法例》
(1) アクリル酸またはメタクリル酸に対して、プロピレンオキサイドおよびエチレンオキサイドの少なくとも一方を反応させて、下記の一般式(vii):
【0037】
【化14】


(式中、R4、R5およびhは上記と同じ)
で表されるアクリル酸またはメタクリル酸のプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイド付加化合物をつくり;次いで
(2) 上記(1)で得られる一般式(vii)で表されるプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイド付加化合物を、前記した一般式:A3−(NCO)jで表されるジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物と反応させることによって、ウレタン化アクリル化合物(III)を製造する。
【0038】
そして、上記の(1)の反応は、アクリル酸および/またはメタクリル酸とプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドを適当な触媒を用いて反応させるのが好ましく、それによって上記した一般式(vii)で表されるプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドの付加化合物を円滑に得ることができる。
【0039】
また、一般式(vii)で表されるプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイド付加化合物に一般式:A3−(NCO)jで表されるジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物を反応させる上記(2)の反応においては、従来既知のウレタン化触媒、例えば有機錫触媒、3級アミン触媒などを用いて、40〜90℃の温度で両者を反応させると、目的とするウレタン化アクリル化合物(III)を円滑に得ることができる。
【0040】
そして、上記(2)の反応において、一般式(vii)で表される付加化合物と反応させる一般式:A3−(NCO)jで表されるジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物の種類は特に制限されず、ウレタン化反応を行い得るジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物のいずれもが使用できる。そのうちでも、ジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物の好ましい例としては、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−フェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのイソシアネート化合物は単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。上記したイソシアネート化合物のうちでも、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましく用いられ、その場合には引張伸度が大きくて柔軟可撓性に優れる光硬化物を、ウレタン化アクリル化合物(III)を含む本発明の光硬化性樹脂組成物から得ることができる。
【0041】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物では、(イ)のウレタン化アクリル化合物として、ウレタン化アクリル化合物(II)およびウレタン化アクリル化合物(III)のうちの少なくとも1種と共に、場合によって上記の一般式(I)で表されるウレタン化アクリル化合物[以下これを「ウレタン化アクリル化合物(I)」という]を用いる。
ウレタン化アクリル化合物(I)において、R1は水素原子またはメチル基、そしてaは1または2であり、aが2のときは2個の基;CH2=C(R1)−COO−CH2−のうちの一方または両方の基R1がメチル基であることが必要である。ウレタン化アクリル化合物(I)においてaが2のときに2個の基;CH2=C(R1)−COO−CH2−の両方の基R1が水素原子であると合成上極めて有毒な、発癌性、皮膚刺激性のあるグリセリンジアクリレートを経由しなければならず、実質的に使用できず、好ましくない。
【0042】
また、ウレタン化アクリル化合物(I)において、bは3〜6の範囲の整数であり、そのうちでもbが5であるのが、ウレタン化アクリル化合物(I)の安定性、製造の容易性などの点から好ましい。
そして、ウレタン化アクリル化合物(I)において、cは3〜14の範囲の整数であることが必要であり、cが3〜10の範囲の整数であるのが好ましく、3〜6の範囲の整数であるのがより好ましい。cが15を超えると、ウレタン化アクリル化合物(I)の融点が高くなって、上記した(ロ)の他のラジカル重合性化合物[以下これを「ラジカル重合性化合物(ロ)」という]として低分子量のものを用いても室温下で流動性に優れる光硬化性樹脂組成物が得られにくくなり、しかも光硬化させて得られる硬化物の引張伸度、柔軟性などが低下し、目的とする柔軟性や弾性回復性に優れる立体造形物や成形品などが得られなくなる。また、cが3未満の場合にも、光硬化させて得られる硬化物の引張伸度や柔軟性が低下し、目的とする柔軟性や弾性回復性に優れる立体造形物や成形品などが得られなくなる。
【0043】
また、ウレタン化アクリル化合物(I)においては、dが2または3であることが必要である。dが2であるウレタン化アクリル化合物(I)を用いた場合には、dが3であるウレタン化アクリル化合物(I)を用いた場合に比べて、本発明の光硬化性樹脂組成物から得られる立体造形物や成形品などの光硬化物の柔軟性や引張伸度が大きなものとなる傾向があるが、いずれの場合にも大きな引張伸度を有していて、柔軟性に優れる立体造形物や成形品などが得られる。
【0044】
また、ウレタン化アクリル化合物(I)において、基A1は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、基A1は炭素原子数が6〜20の非置換または置換された脂肪族、芳香族および/または脂環式の2価または3価の炭化水素基であるのが好ましい。そして、ウレタン化アクリル化合物(I)は、後記するように、一般式;A1−(NCO)d(A1およびdは前記と同じ)で表されるジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物を用いて好ましく製造することができ、かかる点から、基A1はウレタン化アクリル化合物(I)を製造するのに用いたジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた2価または3価の残基であるのが好ましい。より具体的には、ウレタン化アクリル化合物(I)における基A1の好ましい例としては、イソホロン基、トリレン基、4,4’−ジフェニルメタン基、ナフチレン基、キシリレン基、フェニレン基、3,3’−ジクロロ−4,4’−フェニルメタン基、トルイレン基、ヘキサメチレン基、4,4’−ジシクロヘキシルメタン基、水添化キシリレン基、トリフェニレンメタン基、テトラメチルキシレン基などを挙げることができる。
【0045】
ウレタン化アクリル化合物(I)の製造法は特に限定されず、その製法の如何に拘わらず上記の一般式(I)で表される化合物、およびその化合物を含有する光硬化性樹脂組成物は本発明の範囲に包含されるが、ウレタン化アクリル化合物(I)は好ましくは以下の方法で製造することができる。
【0046】
《ウレタン化アクリル化合物(I)の代表的な製法例》
(1) 下記の一般式(i):
【0047】
【化15】


(式中、R1およびaは上記と同じ)
で表されるエチレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルまたはグリセリンのジ(メタ)アクリル酸エステル1モルに対して、下記の一般式(ii):
【0048】
【化16】


(式中、bは上記と同じ)
で表されるラクトンを反応させて、下記の一般式(iii):
【0049】
【化17】


(式中、R1、a、bおよびcは上記と同じ)
で表されるラクトン付加化合物をつくり;次いで
(2) 上記(1)で得られる一般式(iii)で表されるラクトン付加化合物を、前記した一般式:A1−(NCO)dで表されるジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物と反応させることによって、ウレタン化アクリル化合物(I)を製造する。
【0050】
そして、上記の(1)の反応は、エチレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルまたはグリセリンのジ(メタ)アクリル酸エステルとラクトンを、必要に応じてカチオン触媒、アニオン触媒、有機錫触媒(例えばジブチル錫等)などを用いて、通常、100〜140℃で反応させるのが好ましく、それによって上記した一般式(iii)で表されるラクトン付加化合物を円滑に得ることができる。
【0051】
また、上記一般式(iii)で表されるラクトン付加化合物に上記したジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物を反応させる上記(2)の反応においては、従来既知のウレタン化触媒、例えば有機錫触媒、3級アミン触媒などを用いて、40〜90℃の温度で両者を反応させると、目的とするウレタン化アクリル化合物(I)を円滑に得ることができる。
【0052】
そして、上記(2)の反応で用いる一般式:A1−(NCO)dで表されるジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物は特に制限されず、ウレタン化反応を行い得るジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物のいずれもが使用できる。
そのうちでも、ジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物の好ましい例としては、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−フェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのイソシアネート化合物は単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。上記したイソシアネート化合物のうちでも、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましく用いられ、その場合には引張伸度が大きくて柔軟可撓性に優れる光硬化物を、ウレタン化アクリル化合物(I)を含む本発明の光硬化性樹脂組成物から得ることができる。
【0053】
ウレタン化アクリル化合物(I)、ウレタン化アクリル化合物(II)およびウレタン化アクリル化合物(III)における基R1、R2、R3、R4、R5、A1、A2、A3の種類、a、b,c、d、e、f、g、h、jの数などによってウレタン化アクリル化合物の性状等が異なってくるが、一般に、ウレタン化アクリル化合物(I)、ウレタン化アクリル化合物(II)およびウレタン化アクリル化合物(III)は、いずれも常温では低粘度の液状〜高粘度の液状を呈しており、ラジカル重合性化合物(ロ)として適当なものを選んで組み合わせることによって、取り扱い性に優れる低粘度の光硬化性樹脂組成物を調製することができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、ウレタン化アクリル化合物として、ウレタン化アクリル化合物(I)およびウレタン化アクリル化合物(II)のうちの1種類のみを含有していてもよいし、または2種類を含有していてもよい。また、本発明の光硬化性樹脂組成物は、場合により、ウレタン化アクリル化合物として、ウレタン化アクリル化合物(II)およびウレタン化アクリル化合物(III)のうちの少なくとも1種類と、ウレタン化アクリル化合物(I)を含有していてもよい。
【0054】
そして、本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記したウレタン化アクリル化合物(II)およびウレタン化アクリル化合物(III)のうちの少なくとも1種と共に、またはウレタン化アクリル化合物(II)およびウレタン化アクリル化合物(III)のうちの少なくとも1種およびウレタン化アクリル化合物(I)と共に、ラジカル重合性化合物(ロ)を含有する。ラジカル重合性化合物(ロ)としては、光照射を行った際にウレタン化アクリル化合物と反応して、またラジカル重合性化合物(ロ)同士が反応して硬化物を形成することのできる炭素−炭素間不飽和結合を有するラジカル重合性化合物であればいずれも用いることが可能であるが、アクリル系化合物および/またはアリル系化合物が好ましく用いられる。また、ラジカル重合性化合物(ロ)は単官能性化合物または多官能性化合物のいずれであってもよく、或いは単官能性化合物と多官能性化合物の両方を併用してもよい。さらに、ラジカル重合性化合物(ロ)は低分子量のモノマーであっても、オリゴマーであっても、また場合によってはある程度分子量の大きいものであってもよい。そして、本発明の光硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物(ロ)として1種類のラジカル重合性化合物のみを含有していてもまたは2種以上のラジカル重合性化合物を含有していてもよい。
【0055】
限定されるものではないが、本発明の光硬化性樹脂組成物でラジカル重合性化合物(ロ)として用い得るラジカル重合性化合物の例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)メタアクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類、モルホリン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、N−ビニルカプロラクトン、スチレンなどの単官能性ラジカル重合性化合物;トリメチロープロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレートなどの多官能性ラジカル重合性化合物を挙げることができる。
【0056】
また、上記したラジカル重合性化合物以外にも、光学的立体造形用樹脂組成物などで従来から用いられているエポキシ化合物、ウレタン化アクリル化合物(I)〜ウレタン化アクリル化合物(III)以外のウレタン化アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物、他のエステル(メタ)アクリレートなどのラジカル重合性化合物(ロ)として用いることができる。
【0057】
本発明の光硬化性樹脂組成物では、ラジカル重合性化合物(ロ)として、上記したラジカル重合性化合物のうちの1種または2種以上を用いることができる。そして上記した種々のラジカル重合性化合物のうちでも、本発明の光硬化性樹脂組成物では、モルホリン(メタ)アクリルアミド、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレートがより好ましく用いられ、その場合には、光で硬化した際に、体積収縮率がより小さくて寸法精度により優れ、しかも柔軟性、弾性回復性および力学的特性にもより優れる成形品や立体造形物、更にはその他の硬化物にすることのできる光硬化性樹脂組成物が得られる。
【0058】
そして、本発明の光硬化性樹脂組成物では、{ウレタン化アクリル化合物(イ)の重量}:{ラジカル重合性化合物(ロ)の重量}が80:20〜10:90であることが必要であり、65:35〜25:75であることが好ましく、60:40〜35:65であることがより好ましい。光硬化性樹脂組成物において、ウレタン化アクリル化合物(イ)の割合が、ウレタン化アクリル化合物(イ)とラジカル重合性化合物(ロ)の合計重量に基づいて10重量%未満であると光で硬化した際に柔軟性を有する硬化物が得られなくなり、一方80重量%を超えると光硬化して得られる硬化物の引裂抵抗性が低下し、また弾性回復性が低減して外部から変更応力を加えた際に応力を除いても元の形状に復元せず、しかも光硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて、取り扱い性、成形性、造形性が低下し、特に光学的立体造形法で用いる場合に目的とする立体造形物を円滑に製造できなくなる。
ここで、前記「ウレタン化アクリル化合物(イ)の重量」とは、光硬化性樹脂組成物が、(イ)のウレタン化アクリル化合物として、ウレタン化アクリル化合物(II)およびウレタン化アクリル化合物(III)のうちの1種のみを含有している場合は、ウレタン化アクリル化合物(II)またはウレタン化アクリル化合物(III)の重量をいい、ウレタン化アクリル化合物(II)とウレタン化アクリル化合物(III)の両方を含有している場合は両方の合計重量をいい、ウレタン化アクリル化合物(II)およびウレタン化アクリル化合物(III)のうちの少なくとも1種とウレタン化アクリル化合物(I)を含有している場合は、それらの合計重量をいう。
【0059】
さらに、本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記したウレタン化アクリル化合物(II)およびウレタン化アクリル化合物(III)のうちの少なくとも1種、またはウレタン化アクリル化合物(II)およびウレタン化アクリル化合物(III)の少なくとも1種およびウレタン化アクリル化合物(I)と、ラジカル重合性化合物(ロ)と共に、光重合開始剤を含有している。光重合開始剤としては光硬化性樹脂組成物において従来から用いられている光ラジカル重合開始剤であればいずれも使用でき特に制限されない。限定されるものではないが、本発明の光硬化性樹脂で用い得る光重合開始剤の例としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトノ、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラースケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾールなどを挙げることができる。
【0060】
また、ラジカル重合性化合物(ロ)として、ラジカル重合性の基と共にエポキシ基などのカチオン重合性の基を有する化合物を用いる場合は、上記した光ラジカル重合開始剤と共に光カチオン重合開始剤を併用してもよく、その場合の光カチオン重合開始剤の種類も特に制限されず、従来既知のものを使用することができる。
【0061】
光重合開始剤の使用量は、(イ)のウレタン化アクリル化合物およびラジカル重合性化合物(ロ)の種類、光重合開始剤の種類などに応じて変わり得るが、一般に、(イ)のウレタン化アクリル化合物およびラジカル重合性化合物(ロ)の合計重量に基づいて、0.1〜10重量%であるのが好ましく、1〜5重量%であるのがより好ましい。
【0062】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記した成分以外にも、必要に応じて、レベリング剤、界面活性剤、有機高分子改質剤、有機可塑剤、有機または無機の固体微粒子などを含有していてもよい。前記した有機固体微粒子の例としては架橋ポリスチレン系微粒子、架橋型ポリメタクリレート系微粒子、ポリエチレン系微粒子、ポリプロピレン系微粒子などを挙げることができ、また無機固体微粒子の例としてはガラスビーズ、タルク微粒子、酸化ケイ素微粒子などを挙げることができる。本発明の光硬化性樹脂組成物中に有機固体微粒子および/または無機固体微粒子を含有させる場合は、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシランなどのシラン系カップリング剤で処理したものを用いると、光硬化して得られる硬化物の機械的強度が向上する場合が多く好ましい。シランカップリング剤処理を施したポリエチレン系固体微粒子および/またはポリプロピレン系固体微粒子を含有させる場合は、アクリル酸系化合物を1〜10重量%程度共重合させたポリエチレン系固体微粒子および/またはポリプロピレン系固体微粒子を用いるとシランカップリング剤との親和性が高くなるので好ましい。
【0063】
本発明の光硬化性樹脂組成物の粘度は、用途や使用態様などに応じて調節し得るが、一般に、回転式B型粘度計を用いて測定したときに、常温(25℃)において、その粘度が100〜100000センチポイズ(cp)程度であるのが取り扱い性、成形性、立体造形性などの点から好ましく、300〜50000cp程度であるのがより好ましい。特に、本発明の光硬化性樹脂組成物を光学的立体造形に用いる場合は、上記した常温における粘度を300〜5000cpの範囲にしておくのが、光学的に立体造形物を製造する際の取り扱い性が良好になり、しかも目的とする立体造形物を高い寸法精度で円滑に製造することができる点から望ましい。光硬化性樹脂組成物の粘度の調節は、ウレタン化アクリル化合物(I)〜(III)およびラジカル重合性化合物(ロ)の種類の選択、それらの配合割合の調節などによって行うことができる。
【0064】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光を遮断し得る状態に保存した場合には、通常、10〜40℃の温度で、約6〜18ケ月の長期に亙って、その変性や重合を防止しながら良好な光硬化性能を保ちながら保存することができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、その特性、特に光で硬化した際に、体積収縮率が小さくて寸法精度に優れ、しかも柔軟性、弾性回復性および力学的特性に優れる成形品や立体造形物、更にはその他の硬化物が得られるという特性を活かして種々の用途に使用することができ、例えば、光学的立体造形法のよる立体造形物の製造、流延成形法や注型などによる膜状物や型物などの各種成形品の製造、被覆用、真空成形用金型などに用いることができる。
【0065】
そのうちでも、本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記した光学的立体造形法で用いるのに適しており、その場合には、光硬化時の体積収縮率を小さく保ちながら、寸法精度に優れ且つ柔軟性、弾性回復性および力学的特性に優れる立体造形物を円滑に製造することができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行うに当たっては、従来既知の光学的立体造形方法および装置のいずれもが使用できる。そのうちでも、本発明では、樹脂を硬化させるための光エネルギーとして、Arレーザー、He−Cdレーザー、キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀灯、蛍光灯などからは発生される活性エネルギー光線を用いるのが好ましく、レーザー光線が特に好ましく用いられる。活性エネルギー光線としてレーザー光線を用いた場合には、エネルギーレベルを高めて造形時間を短縮することが可能であり、しかもレーザー光線の良好な集光性を利用して、造形精度の高い立体造形物を得ることができる。
【0066】
上記したように、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行うに当たっては、従来既知の方法や従来既知の光造形システム装置のいずれもが採用でき特に制限されないが、本発明で好ましく用いられる光学的立体造形法の代表例としては、光硬化性樹脂組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように活性エネルギー光線を選択的に照射して硬化層を形成し、次いでその硬化層に未硬化液状の光硬化性樹脂組成物を供給し、同様に活性エネルギー光線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する積層する操作を繰り返すことによって最終的に目的とする立体的造形物を得る方法を挙げることができる。また、それによって得られる立体造形物はそのまま用いても、また場合によっては更に光照射によるポストキュアや熱によるポストキュアなどを行って、その力学的特性や形状安定性などを一層高いものとしてから使用するようにしてもよい。
【0067】
その際に立体造形物の構造、形状、サイズなどは特に制限されず、各々の用途に応じて決めることができる。そして、本発明の光学的立体造形法の代表的な応用分野としては、設計の途中で外観デザインを検証するためのモデル、部品の機能性をチェックするためのモデル、鋳型を制作するための樹脂型、金型を制作するためのベースモデル、試作金型用の直接型などの作製などを挙げることができる。より具体的には、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物、金型、母型などのためのモデルや加工用モデルなどの製作を挙げることができ、特にその柔軟性、弾性回復性という特性を活かして、構造物中の複雑な形状をしたクッション材、真空成形用金型などの用途に極めて有効に使用することができる。
【実施例】
【0068】
以下で実施例等によって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例によって何ら限定されない。
【0069】
《合成例1》[ウレタン化アクリル化合物(I)の製造]
(1) 攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積4リットルの四つ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート400gおよびε−カプロラクトン1572gを添加して、撹拌下に温度100〜150℃で8時間反応させて、上記の一般式(iii)で表されるカプロラクトン付加物[一般式(iii)においてR1=水素、a=1、b=5およびc=4の化合物]を製造した。
(2) 上記(1)で用いたのとは別の、攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積4リットルの四つ口フラスコに、上記の(1)で得られたカプロラクトン付加物1976g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.998g、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ0.68gおよびイソホロンジイソシアネート320gを入れて、40〜50℃で30分間反応させた後、温度80〜90℃で更に反応させた。その結果、無色で常温(25℃)で粘稠な液状を呈する生成物が得られた。
(3) 上記の(2)で得られた生成物の化学構造の決定を行ったところ、NMR測定により1.3839ppm、1.6414ppm、1.6539ppm、2.3055ppm、4.0505ppmにラクトンに基づく吸収、さらに0.8〜1.8ppmにマルチレットのイソホロン基に基づく吸収、5.8〜6.5ppmにアクリレート二重結合に基づく吸収がみられた。また、IR測定により1700cm-1、1540cm-1にウレタン結合の特性吸収が認められ、上記の一般式(I)で表されるウレタン化アクリル化合物(I)[一般式(I)においてR1=水素、A1=イソホロン基、a=1、b=5、c=4およびd=2の化合物]であることが確認された。
【0070】
《合成例2》[ウレタン化アクリル化合物(I)の製造]
攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積4リットルの四つ口フラスコに、合成例1の(1)で得られたカプロラクトン付加物1972g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.44g、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ0.67gおよびトリレンジイソシアネート250gを入れて、40〜50℃で30分間反応させた後、温度80〜90℃で更に反応させた。その結果、無色で常温(25℃)で粘稠な液状を呈する生成物が得られた[上記の一般式(I)で表されるウレタン化アクリル化合物(I)においてR1=水素、A1=トリレン基、a=1、b=5、c=4およびd=2の化合物]
【0071】
《合成例3》[ウレタン化アクリル化合物(I)の製造]
(1) 攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積4リットルの四つ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート400gおよびε−カプロラクトン2359gを添加して、撹拌下に温度100〜150℃で8時間反応させて、上記の一般式(iii)で表されるカプロラクトン付加物[一般式(iii)においてR1=水素、a=1、b=5およびc=6の化合物]を製造した。
(2) 上記(1)で用いたのとは別の、攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積4リットルの四つ口フラスコに、上記の(1)で得られたカプロラクトン付加物2819g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.63g、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ0.94gおよびイソホロンジイソシアネート326gを入れて、40〜50℃で30分間反応させた後、温度80〜90℃で更に反応させて、上記の一般式(I)で表されるウレタン化アクリル化合物(I)[一般式(I)においてR1=水素、A1=イソホロン基、a=1、b=5、c=6およびd=2の化合物]を製造した。
【0072】
《合成例4》[ウレタン化アクリル化合物(II)の製造]
攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積4リットルの四つ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレートプロピレンオキサイド付加物[日本油脂株式会社製「ブレンマー10APE−550B」;上記の一般式(vi)で表される化合物においてR2=H、R3=CH3、e=1、f=9の化合物]1492g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.63g、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ0.51gおよびイソホロンジイソシアネート222gを入れて、40〜50℃で30分間反応させた後、温度80〜90℃で更に反応させて、ウレタン化アクリル化合物(II)[一般式(II)においてR2=水素、R3=CH3、A2=イソホロン基、e=1、f=9およびg=2の化合物]を製造した。
【0073】
《合成例5》[ウレタン化アクリル化合物(III)の製造]
攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積4リットルの四つ口フラスコに、アクリル酸プロピレンオキサイド付加物[日本油脂株式会社製「ブレンマーAP−550」;上記の一般式(vii)で表される化合物においてR4=H、R5=CH3、h=10の化合物]1517g、ヒドロキノンモノメチルエーテル1.00g、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ0.52gおよびイソホロンジイソシアネート222gを入れて、40〜50℃で30分間反応させた後、温度80〜90℃で更に反応させて、ウレタン化アクリル化合物(III)[一般式(III)においてR4=水素、R5=CH3、A3=イソホロン基、h=10およびj=2の化合物]を製造した。
【0074】
《合成例6》[ウレタン化アクリル化合物の製造]
(1) 攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積4リットルの四つ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート382gおよびε−カプロラクトン751gを添加して、撹拌下に温度100〜150℃で8時間反応させて、上記の一般式(iii)で表されるカプロラクトン付加物に類似した構造を有する化合物[一般式(iii)においてR1=水素、a=1、b=5およびc=2である化合物]を製造した。
(2) 上記(1)で用いたのとは別の、攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積4リットルの四つ口フラスコに、上記の(1)で得られたカプロラクトン付加物1133g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.28g、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ0.43gおよびイソホロンジイソシアネート305gを入れて、40〜50℃で30分間反応させた後、温度80〜90℃で更に反応させた。その結果、無色で常温(25℃)で粘稠な液状を呈する生成物が得られた[上記の一般式(I)においてR1=水素、A1=イソホロン基、a=1、b=5、c=2およびd=2であって、ウレタン化アクリル化合物(I)〜ウレタン化アクリル化合物(III)のいずれにも包含されないウレタン化アクリル化合物]。
【0075】
《合成例7》[ウレタン化アクリル化合物の製造]
(1) 攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積4リットルの四つ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート116gおよびε−カプロラクトン1710gを添加して、撹拌下に温度100〜150℃で8時間反応させて、上記の一般式(iii)で表されるカプロラクトン付加物に類似した構造を有する化合物[一般式(iii)においてR1=水素、a=1、b=5およびc=15である化合物]を製造した。
(2) 上記(1)で用いたのとは別の、攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積4リットルの四つ口フラスコに、上記の(1)で得られたカプロラクトン付加物1826g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.38g、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ0.58gおよびイソホロンジイソシアネート93gを入れて、40〜50℃で30分間反応させた後、温度80〜90℃で更に反応させた。その結果、無色で常温(25℃)で粘稠な液状を呈する生成物が得られた[上記の一般式(I)においてR1=水素、A1=イソホロン基、a=1、b=5、c=15およびd=2であって、ウレタン化アクリル化合物(I)〜ウレタン化アクリル化合物(III)のいずれにも包含されない化合物]。
【0076】
《参考例1》[光硬化性樹脂組成物の調製]
攪拌機、冷却管および側管付き滴下ロートを備えた内容積5リットルの三つ口フラスコに、合成例1で得られたウレタン化アクリル化合物(I)1300g、モルホリンアクリルアミド(新中村化学株式会社製「NKエステルA−MO」)1200gを仕込み、減圧脱気窒素置換した。次いで、紫外線を遮断した環境下に、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(チバガイギー社製「イルガキュアー651」;光ラジカル重合開始剤)120gを添加し、完全に溶解するまで温度25℃で混合攪拌して(混合撹拌時間約1時間)、無色透明な粘稠液体である、ウレタン化アクリル化合物(I)を含有する光硬化性樹脂組成物(常温における粘度約390cp)を得た。
【0077】
《参考例2》[光硬化性樹脂組成物の調製]
ウレタン化アクリル化合物(I)として合成例2で得られたウレタン化アクリル化合物(I)1300gを用いた以外は参考例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製したところ、ウレタン化アクリル化合物(I)を含有する無色透明な粘稠液体である光硬化性樹脂組成物(常温における粘度約430cp)が得られた。
【0078】
《参考例3》[光硬化性樹脂組成物の調製]
ウレタン化アクリル化合物(I)として合成例3で得られたウレタン化アクリル化合物(I)1300gを用いた以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製したところ、ウレタン化アクリル化合物(I)を含有する無色透明な粘稠液体である光硬化性樹脂組成物(常温における粘度約600cp)が得られた。
【0079】
《実施例1》[光硬化性樹脂組成物の調製]
攪拌機、冷却管および側管付き滴下ロートを備えた内容積5リットルの三つ口フラスコに、合成例4で得られたウレタン化アクリル化合物(II)1300g、参考例1で使用したのと同じモルホリンアクリルアミド1200gを仕込み、減圧脱気窒素置換した。次いで、紫外線を遮断した環境下に、参考例1で使用したのと同じ2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(光ラジカル重合開始剤)120gを添加し、完全に溶解するまで温度25℃で混合攪拌して(混合撹拌時間約1時間)、ウレタン化アクリル化合物(II)を含有する無色透明な粘稠液体である光硬化性樹脂組成物(常温における粘度約430cp)を得た。
【0080】
《実施例2》[光硬化性樹脂組成物の調製]
ウレタン化アクリル化合物(II)の代わりに、合成例5で得られたウレタン化アクリル化合物(III)1300gを用いた以外は実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製したところ、ウレタン化アクリル化合物(III)を含有する無色透明な粘稠液体である光硬化性樹脂組成物(常温における粘度約380cp)が得られた。
【0081】
《比較例1》[光硬化性樹脂組成物の調製]
参考例1で用いたウレタン化アクリル化合物(I)の代わりに、合成例6で得られたウレタン化アクリル化合物1300gを用いた以外は参考例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製したところ、無色透明な粘稠液体である光硬化性樹脂組成物(常温における粘度約400cp)が得られた。
【0082】
《比較例2》[光硬化性樹脂組成物の調製]
参考例1で用いたウレタン化アクリル化合物(I)の代わりに、合成例7で得られたウレタン化アクリル化合物1300gを用いた以外は参考例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製したところ、得られた光硬化性樹脂組成物は濃厚なペースト状であり、流動性が全くなかった。
【0083】
《参考例4》[モールド成形法による光硬化成形品の製造]
(1) JIS 7113に準拠するダンベル試験片形状の型キャビテーを有する透明なシリコン型に、上記の参考例1で調製した、ウレタン化アクリル化合物(I)を含有する光硬化性樹脂組成物を注入した後、30Wの紫外線ランプを用いてシリコン型の全面から15分間紫外線照射して樹脂組成物を硬化させて光硬化したダンベル試験片形状の成形品を製造した。得られた成形品(ダンベル形状試験片)を型から取り出して、JIS K 7113に準拠して、その引っ張り特性(引張強度、引張伸度および引張弾性率)を測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(2) また、上記(1)で得られたダンベル形状試験片の弾性回復性を下記のようにして評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0084】
ダンベル形状試験片の弾性回復性の評価法:
ダンベル形状試験片(モールド成形品または立体造形物)をその長さ方向の中央部分で手で完全に2つ折り状態に折り曲げて10分間そのままの状態に保った後、折り曲げ状態を解放し、その際に元の平坦なダンベル形状に戻った場合を良好(○)、元の平坦なダンベル形状に戻らず折り曲げ状態が残存している場合または折り曲げができなかった場合を不良(×)として評価した。
【0085】
(3) 更に、この実施例6のモールド成形に用いた光硬化性樹脂組成物の光硬化前の比重(d1)と、得られたモールド成形品(ダンベル形状試験片)の比重(d2)をそれぞれ測定して、下記の数式(1)によりその体積収縮率(%)を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。

体積収縮率(%)={(d2−d1)/d2}×100 (1)
【0086】
《参考例5》[光学的立体造形法による立体造形物の製造]
上記の参考例1で得られたウレタン化アクリル化合物(I)を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて、超高速光造形システム(帝人製機株式会社製「SOLIFORM500」)を使用して、水冷Arレーザー光(出力500mW;波長333,354,364nm)を照射して、照射エネルギー20〜30mJ/cm2の条件下にスライスピッチ(積層厚み)0.127mm、1層当たりの平均造形時間2分で光造形を行って、JIS 7113に準拠するダンベル試験片形状の立体造形物を製造した。得られた立体造形物をイソプロピルアルコールで洗浄して立体造形物に付着している未硬化の樹脂液を除去した後、3KWの紫外線を10分間照射してポストキュアした。その結果得られた立体造形物(ダンベル形状試験片)の引っ張り特性(引張強度、引張伸度および引張弾性率)をJIS K 7113に準拠して測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
また、上記で得られたポストキュア後のダンベル形状試験片(立体造形物)の弾性回復性を参考例4と同様にして評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
更に、この参考例5の立体造形法に用いた光硬化前の光硬化性樹脂組成物の比重(d1)と、ポストキュア後の立体造形物の比重(d2)をそれぞれ測定して、上記の数式(1)によりその体積収縮率(%)を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0087】
《参考例6》[光学的立体造形法による立体造形物の製造]
上記の参考例2で得られたウレタン化アクリル化合物(I)を含有する光硬化性樹脂組成物を用いた以外は参考例5と同様にして光学的立体造形、未硬化樹脂の洗浄およびポストキュアを行って、立体造形物(ダンベル形状試験片)を製造した。その結果得られたダンベル形状試験片(立体造形物)の引っ張り特性、弾性回復性および体積収縮率を実施例7と同様にして測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0088】
《参考例7》[光学的立体造形法による立体造形物の製造]
上記の参考例3で得られたウレタン化アクリル化合物(I)を含有する光硬化性樹脂組成物を用いた以外は参考例5と同様にして光学的立体造形、未硬化樹脂の洗浄およびポストキュアを行って、立体造形物(ダンベル形状試験片)を製造した。その結果得られたダンベル形状試験片(立体造形物)の引っ張り特性、弾性回復性および体積収縮率を実施例7と同様にして測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0089】
《実施例3》[モールド成形法による光硬化成形品の製造]
上記の実施例1で得られたウレタン化アクリル化合物(II)を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて、参考例4におけるのと同様にしてJIS 7113に準拠するダンベル試験片形状の型キャビテーを有する透明なシリコン型に充填し、実施例6と同様にして光硬化させてダンベル試験片形状のモールド成形品を製造した。その結果得られたダンベル形状試験片(モールド成形品)の引っ張り特性、弾性回復性および体積収縮率を実施例6と同様にして求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0090】
《実施例4》[光学的立体造形法による立体造形物の製造]
上記の実施例1で得られたウレタン化アクリル化合物(II)を含有する光硬化性樹脂組成物を用いた以外は参考例5と同様にして光学的立体造形、未硬化樹脂の洗浄およびポストキュアを行って、立体造形物(ダンベル形状試験片)を製造した。その結果得られたダンベル形状試験片(立体造形物)の引っ張り特性、弾性回復性および体積収縮率を参考例5と同様にして測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0091】
《実施例5》[モールド成形法による光硬化成形品の製造]
上記の実施例3で得られたウレタン化アクリル化合物(III)を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて、参考例4におけるのと同様にしてJIS 7113に準拠するダンベル試験片形状の型キャビテーを有する透明なシリコン型に充填し、参考例4と同様にして光硬化させてダンベル試験片形状のモールド成形品を製造した。その結果得られたダンベル形状試験片(モールド成形品)の引っ張り特性、弾性回復性および体積収縮率を参考例4と同様にして求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0092】
《実施例6》[光学的立体造形法による立体造形物の製造]
上記の実施例2で得られたウレタン化アクリル化合物(III)を含有する光硬化性樹脂組成物を用いた以外は参考例5と同様にして光学的立体造形、未硬化樹脂の洗浄およびポストキュアを行って、立体造形物(ダンベル形状試験片)を製造した。その結果得られたダンベル形状試験片(立体造形物)の引っ張り特性、弾性回復性および体積収縮率を参考例5と同様にして測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0093】
《比較例3》[光学的立体造形法による立体造形物の製造]
上記の比較例1で得られた光硬化性樹脂組成物を用いた以外は参考例5と同様にして光学的立体造形、未硬化樹脂の洗浄およびポストキュアを行って、立体造形物(ダンベル形状試験片)を製造した。その結果得られたダンベル形状試験片(立体造形物)の引っ張り特性、弾性回復性および体積収縮率を参考例5と同様にして測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0094】
《比較例4》[モールド成形法による光硬化成形品の製造]
上記の比較例2で得られた濃厚なペースト状の光硬化性樹脂組成物を用いて、参考例4におけるのと同様にしてJIS 7113に準拠するダンベル試験片形状の型キャビテーを有する透明なシリコン型に充填し、参考例4と同様にして光硬化させてダンベル試験片形状のモールド成形品を製造した。その結果得られたダンベル形状試験片(モールド成形品)の引っ張り特性、弾性回復性および体積収縮率を実施例6と同様にして求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0095】
【表1】

【0096】
上記の表1の結果から、ウレタン化アクリル化合物(II)またはウレタン化アクリル化合物(III)を含有する実施例1または実施例2の本発明の光硬化性樹脂組成物を用いてモールド成形品または立体造形物を製造している実施例3〜6の場合には、引張伸度が大きくて柔軟性に優れ、しかも弾性回復性に優れ、且つ引張強度にも優れる、品質の良好なモールド成形品または立体造形物が、低い体積収縮率で寸法精度よく得られることがわかる。
【0097】
それに対して、比較例3の場合には、上記の一般式(I)で表されるウレタン化アクリル化合物においてc=2であって、ウレタン化アクリル化合物(I)〜ウレタン化アクリル化合物(III)のいずれにも包含されないウレタン化アクリル化合物を含む比較例1の光硬化性樹脂組成物を使用していることによって、そこで得られる立体造形物は、引張伸度が極めて小さくて柔軟性に欠けており、しかも硬くて脆く、体積収縮率も大きいことがわかる。
【0098】
更に、上記した比較例2および比較例4の結果から、上記の一般式(I)で表されるウレタン化アクリル化合物においてc=15であって、ウレタン化アクリル化合物(I)〜ウレタン化アクリル化合物(III)のいずれにも包含されないウレタン化アクリル化合物を含む比較例2の光硬化性樹脂組成物は、粘度が高くて液状を呈していないために、モールド成形が行いにくく、しかも光学的立体造形法には使用できないこと、その上そのような比較例2の光硬化性樹脂組成物から得られるモールド成形品は引張伸度が極めて小さくて柔軟性がなく、更に引張弾性率が低くて脆いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、低粘度の液状を呈していて取り扱い性に優れ、短い硬化時間で硬化できるので、光照射法による各種の成形品や立体造形物などの製造、およびモールド成形法による各種の成形品の製造に有効に使用でき、しかも本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて得られる成形品や立体造形物等は、体積収縮率が小さくて寸法精度に優れ、柔軟性、弾性回復性および引張強度、引張伸度などの力学的特性にも優れている。
そのため、本発明の光硬化性樹脂組成物は、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物、金型、母型などのためのモデルや加工用モデルなどの製作などのような種々の用途に有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)(i) 下記の一般式(II);
【化1】


(式中、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、eは1または2であって、eが2のときは一方または両方のR2がメチル基であり、A2は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、fは4〜20の整数、そしてgは2または3である)
で表されるウレタン化アクリル化合物;および
下記の一般式(III);
【化2】


(式中、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、A3は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、hは4〜20の整数、そしてjは2または3である)
で表されるウレタン化アクリル化合物;
のうちの少なくとも1種から選ばれるウレタン化アクリル化合物;または、
(ii) 前記一般式(II)で表されるウレタン化アクリル化合物および前記一般式(III)で表されるウレタン化アクリル化合物のうちの少なくとも1種から選ばれるウレタン化アクリル化合物と、下記の一般式(I);
【化3】


(式中、R1は水素原子またはメチル基、aは1または2であって、aが2のときは一方または両方のR1がメチル基であり、A1は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、bは3〜6の整数、cは3〜14の整数、dは2または3である)
で表されるウレタン化アクリル化合物とからなるウレタン化アクリル化合物;
(ロ) 前記(イ)のウレタン化アクリル化合物以外のラジカル重合性化合物;
並びに、
(ハ) 光重合開始剤;
を含有する光硬化性樹脂組成物であって、前記(イ)のアクリルウレタン化合物:前記(ロ)のラジカル重合性化合物の含有割合が80:20〜10:90(重量比)であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(イ)のアクリルウレタン化合物および(ロ)のラジカル重合性化合物の合計重量に基づいて、光重合開始剤の割合が0.1〜10重量%である請求項1の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
光学的立体造形用樹脂組成物である請求項1または2の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3の光硬化性樹脂組成物を用いて、光学的立体造形法によって立体造形物を製造する方法。
【請求項5】
下記の一般式(II);
【化4】


(式中、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、eは1または2であって、eが2のときは一方または両方のR2がメチル基であり、A2は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、fは4〜20の整数、そしてgは2または3である)
で表されるウレタン化アクリル化合物;または
下記の一般式(III);
【化5】


(式中、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、A3は2価または3価の非置換または置換された炭化水素基であり、hは4〜20の整数、そしてjは2または3である)
で表されるウレタン化アクリル化合物。

【公開番号】特開2006−28499(P2006−28499A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182087(P2005−182087)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【分割の表示】特願平8−146790の分割
【原出願日】平成8年5月16日(1996.5.16)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【出願人】(000190895)新中村化学工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】