説明

光硬化性組成物及びコーティング剤組成物

紫外線により容易に硬化する光硬化性組成物及びその硬化物、ならびにコーティング剤組成物及びそのコーティング膜を提供する。得られる硬化物は、高屈折率で、着色が少なく、透明性に優れる。 本発明は、(A)チイラン環を有するエピスルフィド化合物と(B)一般式(1)(式(1)中、Arはフェニル等であり、Rはアルキル基等であり、Aはアンモニウムイオンであり、Xはボレートアニオン等である。)で表される光塩基発生剤を含む光硬化性組成物、及びこの光硬化組成物に(C)変性シリコーンオイルを添加したコーティング剤組成物、並びにそれらの硬化物、コーティング膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光学用接着剤、光学用コーティング剤、LED用ポッティング剤、光機能性フィルム、光機能性基板、レジスト材料、プリズム、光ファイバー、フィルター、プラスチックレンズ等の光学製品を製造するために有用な光硬化性組成物及びコーティング剤組成物に関するものである。
【背景技術】
プラスチック材料は軽量かつ靭性に富み、また染色が容易であることから、各種光学材料に近年多用されている。光学材料の多くに要求される性能の一つとして、高屈折率があげられる。高屈折率な光学材料については、屈折率1.7以上の光学材料を可能とするエピスルフィド化合物が多数見いだされている(特開平9−71580号公報、特開平9−110979号公報、特開平9−255781号公報)。これまで開示されているこれら化合物の硬化方法のほとんどは熱硬化である。従って、生産性が極めて低く、用途に大きな制約があった。そこで、生産性の高い光硬化型材料が強く望まれていた。
エピスルフィド化合物の光硬化に関しては、WO01/57113号公報、特開平2002−047346号公報、特開平2002−105110号公報、US2003/0022956号公報、特開平2003−026806号公報に記載がある。これらの文献においては開始剤としてラジカル発生剤、酸発生剤、塩基発生剤等が開示されているが、エピスルフィド化合物の重合に対しては塩基触媒が最も活性が高いことから、塩基発生剤の使用が最も望ましいと考えられている。しかしながら、光塩基発生剤に関する研究の歴史は浅く、実用に耐えうる活性を示す塩基発生剤はこれまで見出されていなかった。光塩基発生剤に関する研究については、化学工業、50巻、p592−600(1999)やJ.Polym.Sci.PartA,vol39,p1329−1341(2001)等に記載がある。
従来、エピスルフィド化合物の硬化においては、モールドと呼ぶ型の中に注型し、その後重合硬化させ硬化物を得ていた。しかしながら、従来にない高屈折率を有することから、各種基板、フィルムへのコーティング剤としての適用が強く求められている。ところが、これらの化合物をコーティング剤として適用した場合、総じて各種基板への濡れ性が良好ではなく、安定的に数〜十数μm程度の薄膜を形成することが困難であった。
本発明の課題は、紫外線照射により容易に硬化するエピスルフィド化合物を含有する光硬化性組成物、ならびに紫外線照射により得られる高屈折率硬化物を提供することにあり、更には、紫外線照射により容易に硬化するエピスルフィド化合物を含有するコーティング剤、ならびに紫外線照射により得られる高屈折率コーティング膜を提供することにある。
【発明の開示】
本発明者らは、上記問題を解決すべく検討を行った結果、(A)チイラン環を有するエピスルフィド化合物と(B)一般式(1)で表される光塩基発生剤を含む光硬化性組成物が紫外線照射により容易に硬化し、目的の硬化物が得られることを見出し、本発明の第一発明に至った。

(式(1)中、Arはフェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラシル、ピレニル、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チエニル、チアトレニル、ジベンゾフリル、クロメニル、キサンテニル、チオキサンチル、フェノキサチイニル、ターフェニル、スチルベニルまたはフルオレニルであって、これらの基は非置換であるか、または炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のアルキニル基、炭素数1〜18のハロアルキル基、NO、OH、CN、OR、SR、C(O)R、C(O)ORもしくはハロゲンによりモノ置換またはポリ置換されており(式中R、R、R、R、Rは水素または炭素数1〜18のアルキル基である)、−Aは下記構造式(2)から選ばれるアンモニウムイオンであり(式(2)中、Lは1または0、Rは炭素数1〜5のアルキル基である)、

はボレートアニオン、N,N−ジメチルジチオカルバメートアニオン、N,N−ジメチルカルバメートアニオン、チオシアネートアニオンまたはシアネートアニオンである。)
また、チイラン環を有する化合物が、下記構造式(3)式で表される構造を1個以上有する化合物である場合に、得られる硬化物がより高屈折率であることから、好適な光硬化性組成物となることを見いだした。

さらには、上記組成物に変性シリコーンオイルを添加した組成物は、各種基板に対する濡れ性が良好で、好適なコーティング剤組成物となることを見出し、本発明の第二発明に至った。
【発明を実施するための最良の形態】
(第一発明)
本発明で使用する(B)一般式(1)の光塩基発生剤は、紫外線照射により強い塩基性を示す1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン誘導体、および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネンを発生するため、エピスルフィド化合物の重合に対する活性が極めて高い。
一般式(1)において、Arはフェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラシル、ピレニル、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チエニル、チアトレニル、ジベンゾフリル、クロメニル、キサンテニル、チオキサンチル、フェノキサチイニル、ターフェニル、スチルベニルまたはフルオレニルであって、これらの基は非置換であるか、または炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のアルキニル基、炭素数1〜18のハロアルキル基、NO、OH、CN、OR、SR、C(O)R、C(O)ORもしくはハロゲンによりモノ置換またはポリ置換されているが(式中R、R、R、R、Rは水素または炭素数1〜18のアルキル基である)、Arは無置換のフェニル、ビフェニルまたはナフチルであることが好ましい。
Rは水素またはC1〜C18アルキルであるが、水素であることが好ましい。
−Aは下記構造式(2)から選ばれるアンモニウムイオンであるが(式中、Lは1または0、Rは炭素数1〜5のアルキル基である)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン誘導体の場合、無置換(L=0)であることが好ましい。

また、Xは対アニオンを示し、ボレートアニオン、N,N−ジメチルジチオカルバメートアニオン、N,N−ジメチルカルバメートアニオン、チオシアネートアニオンまたはシアネートアニオンであるが、ボレートアニオンであることが好ましい。ボレートアニオンの具体例としては、テトラフェニルボレート、メチルトリフェニルボレート、エチルトリフェニルボレート、プロピルトリフェニルボレート、ブチルトリフェニルボレート、ペンチルトリフェニルボレート、ヘキシルトリブチルボレートを挙げることができる。
本発明で使用する一般式(1)の光塩基発生剤の好適な具体例としては、表I−1〜表I−4の化合物をあげることができる(表中、Phはフェニル基、Buはn−ブチル基を表す)。また、特に好ましい具体例としては、No.1〜18の化合物をあげることができる。




(B)光塩基発生剤の使用量は、(A)チイラン環を有する化合物100重量部に対して、0.001〜20重量部であり、好ましくは0.005〜10重量部であり、より好ましくは0.01〜5重量部である。
本発明で使用する(A)チイラン環を有する化合物は、開環重合することにより硬化物を生成する。チイラン環を有する化合物は、1分子内に1個以上のチイラン環を有する有機化合物であるが、得られる硬化物の高屈折率を追求した場合、下記構造式(3)式で表される構造を1個以上有する化合物が好ましい。

さらには、表面硬度を考慮すると、(3)式で表される構造を2個以上有する化合物がより好ましい。また、ハンドリングが容易な手頃な粘度の液状となりやすい構造は、(3)式で表される構造を2個以上有する鎖状構造の化合物がさらに好ましい。以上を勘案すると、下記構造式(4)式で表される化合物が最も好ましい結果を与える。

(mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を表す。)
本発明で使用する(A)チイラン環を有する化合物の具体例としては、エチレンスルフィド、プロピレンスルフィド、シクロヘキセンスルフィド、スチレンスルフィド、チオグリシドール、1,1−ビス(エピチオエチル)メタン、テトラキス(β−エピチオプロピル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピル)プロパン、(1,3または1,4)−ビス(エピチオエチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(エピチオエチル)−1,4−ジチアン、4−エピチオエチル−1,2−シクロヘキセンスルフィド、4−エポキシ−1,2−シクロヘキセンスルフィド、メチルチオグリシジルエーテル、ビス(β−エピチオプロピル)エーテル、1,2−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)エタン、テトラキス(β−エピチオプロピルオキシメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルオキシメチル)プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキシル〕スルフィド、2,5−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)−1,4−ジチアン、(1,3または1,4)−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、(1,3または1,4)−ビス(β−エピチオプロピルオキシメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルオキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルオキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルオキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルオキシ)フェニル〕スルフォン、4,4’−ビス(β−エピチオプロピルオキシ)ビフェニル、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)トリスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)スルフィド、テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,9−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)−5−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,7−ジチアノナン、1,10−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,6−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3,6,9−トリチアデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、2,5−ビス(エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,4,6−トリス(エピチオプロピルチオメチル)−1,3,5−ジチアン、(1,3または1,4)−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、(1,3または1,4)−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフォン、4,4’−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル、ビス(β−エピチオプロピル)セレニド、ビス(β−エピチオプロピル)ジセレニド、ビス(β−エピチオプロピル)テルレド、ビス(β−エピチオプロピル)ジテルレド、ビニルフェニルチオグリシジルエーテル、ビニルベンジルチオグリシジルエーテル、チオグリシジルメタクリレート、チオグリシジルアクリレート、アリルチオグリシジルエーテル等があげられ、さらには、以上列記化合物のチイラン環の水素原子の1個以上がメチル基で置換されたチイラン環を有する化合物があげられる。
(A)チイラン環を有する化合物の更に好ましい具体例としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)トリスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)スルフィド等があげられる。
これらの中では、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドが特に好ましい。
本発明では、必要に応じ、チオール基を有する化合物の添加が可能で、着色が少なく、透明性に優れる硬化物が得られる。チオール基を有する化合物は、1分子内に1個または2個以上のチオール基を有する有機化合物であるが、硬度を高める上で2個以上のチオール基を有する化合物が好ましい。
チオール基を有する化合物の好ましい具体例としては、メタンジチオール、メタントリチオール、1,2−ジメルカプトエタン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,2,3−トリメルカプトプロパン、2−メルカプトメチル−1,3−ジメルカプトプロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,4−ビス(メルカプトメチル)−1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、4,8−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,2,7−トリメルカプト−4,6−ジチアヘプタン、1,2,9−トリメルカプト−4,6,8−トリチアノナン、1,2,8,9−テトラメルカプト−4,6−ジチアノナン、1,2,10,11−テトラメルカプト−4,6,8−トリチアウンデカン、1,2,12,13−テトラメルカプト−4,6,8,10−テトラチアトリデカン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、テトラキス(4−メルカプト−2−チアブチル)メタン、テトラキス(7−メルカプト−2,5−ジチアヘプチル)メタン、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−メルカプトメチルフェニル)プロパン、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)エーテル、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)スルフィドなどがあげられる。
以上、好ましいチオール基を有する化合物を例示したが、これらは単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。チオール基を有する化合物を使用する場合の添加量は、(A)チイラン環を有する化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜100重量部であり、より好ましくは1〜50重量部である。
この他、耐候性、耐酸化性、強度、表面硬度、密着性、屈折率、染色性等の各種性能改良を目的として、組成物成分の一部もしくは全部と反応可能な化合物を添加することも可能である。組成物成分の一部もしくは全部と反応可能な化合物としては、エポキシ化合物類、イソ(チオ)シアネート類、カルボン酸類、カルボン酸無水物類、フェノール類、アミン類、ビニル化合物類、アリル化合物類、アクリル化合物類、メタクリル化合物類などが挙げられる。組成物成分の一部もしくは全部と反応可能な化合物を使用する場合の添加量は、チイラン環を有する化合物100重量部に対して、1〜200重量部である。
(B)一般式で(1)で表される光塩基発生剤の中には(A)チイラン環を有する化合物への溶解度が低いものがある。この場合、光塩基発生剤を溶解できる溶媒の添加が可能である。この溶媒は光塩基発生剤を溶解できるものであれば特に制限はないが、光塩基発生剤の溶解力が高い、重合反応を阻害しないものが好ましい。具体例としては、γ−ブチロラクトンのようなラクトン類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルのようなエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミドのようなアミド類、トルエンのような芳香族炭化水素、ヘキサンのような脂肪族炭化水素、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、イソプロピルアルコールのようなアルコール類、ジクロロメタンのようなハロゲン化アルキル類を挙げることができる。溶媒を使用する場合の使用量は、(A)チイラン環を有する化合物100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、1〜20重量部が更に好ましく、1〜10重量部が最も好ましい。
本発明の光硬化性組成物に増感剤を添加し使用することができる。具体例としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、チオキサントン、アントラセン、ペリレン、フェノチアジンなどが挙げられる。増感剤は紫外線に感応して重合硬化作用を促進するものであれば、これら列記化合物に限定されるものではない。増感剤を使用する場合の添加量は、(A)チイラン環を有する化合物100重量部に対して、0.001〜20重量部であり、好ましくは0.005〜10重量部であり、より好ましくは0.01〜5重量部である。
本発明の光硬化性組成物は、フェノール系化合物やホスファイト系化合物などの酸化防止剤、アントラキノン系化合物に代表される油溶性染料などのブルーイング剤、ベンゾフェノン系化合物やベンゾトリアゾール系化合物などの紫外線吸収剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤などの添加剤を加えて、得られる硬化物の実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。
本発明では光硬化性組成物に紫外線を照射することにより硬化を行うが、使用する紫外線源は、紫外線を発生させる装置であれば特に制限はない。具体的には、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ等を挙げることができる。
紫外線の照射は、光塩基発生剤の添加量、硬化触媒量等によっても異なるが、通常、1〜100mW/cm、好ましくは10〜50mW/cmで、1秒間〜1時間、好ましくは10秒間〜10分間照射する。
硬化性組成物に紫外線を照射後、更に加熱処理を行うことにより硬化を促進することができる。紫外線照射後の重合度により、加熱温度ならびに時間を適宜選択できるが、加熱温度は40〜200℃、好ましくは60〜120℃、加熱時間は1分〜3日、好ましくは1分〜12時間である。
紫外線照射による硬化時、本発明の光硬化性組成物が直接大気に接していると、酸素阻害により硬化の進行が妨げられる。従って、硬化反応は空気遮断下に実施する必要がある。空気を遮断する方法としては、透明フィルムで光硬化性組成物を覆う、密閉できる型の中に組成物を注入する、あるいは光硬化性組成物の周りを不活性ガス雰囲気にする等がある。不活性ガス雰囲気で硬化を行う場合、酸素濃度3%以下が好ましく、0.5%以下が更に好ましく、0.3%以下が最も好ましい。
硬化性組成物を重合硬化させる前に、あらかじめ脱気処理およびろ過処理を行うことは、硬化物の高度な透明性を達成する面から好ましい。脱気処理は、通常、0.001〜50Torrの減圧下、1分間〜24時間、0℃〜100℃で行う。ろ過処理は、0.05〜10μm程度の孔径を有するPTFEやPETなどのフィルターを通過させて行う。
(第二発明)
第一発明の光硬化性組成物に対し、(C)変性シリコーンオイル、あるいは更に(D)シランカップリング剤を添加することにより、濡れ性が良好なコーティング剤組成物が得られる。更に、このコーティング剤組成物を硬化したコーティング膜は、高屈折率で、着色が少なく、透明性、均一性、密着性に優れる。コーティング膜の膜厚は薄すぎる場合は基材の保護や目的の性能の発現が十分でなくなり、厚すぎる場合は得られる光学製品が大きく重くなるため、実用的には0.1μm〜1000μm程度であり、好ましくは0.5〜500μm程度であり、更に好ましくは1μm〜100μm程度である。
本発明で使用する(C)変性シリコーンオイルは、下記構造式(5)〜(8)式で表され、添加することにより、光硬化性組成物の濡れ性が良好となり、コーティング剤としての使用が可能となる。

(Xは各々独立でハロゲン、炭素数1〜36のアルコキシ基または炭素数1〜36のアルキル基、炭素数1〜36の脂肪酸エステル基、総計炭素数1〜36の炭化水素を含んでもよいポリエーテル基などを表す。yおよびzは各々独立で1以上の整数を表す。)
(C)変性シリコーンオイルは、位置構造的には、式(5)の側鎖型、式(6)の側鎖両末端型、式(7)の片末端型および式(8)の両末端型に大別され、化学構造的には、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、(メタ)アクロイル変性、メルカプト変性、フェノール変性および異種官能変性などの反応性型、および、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、フッ素変性および高級脂肪酸含有などの非反応性型に大別される。
本発明では、位置構造的には、式(5)の側鎖型および式(8)の両末端型の変性シリコーンオイルが好ましく、化学構造的には、メルカプト変性、ポリエーテル変性およびエポキシ変性の変性シリコーンオイルが好ましい。より好ましくは、界面活性能を有するポリエーテル変性シリコーンオイルである。
好ましい変性シリコーンオイルの具体例としては、信越化学工業社製のKF−101、KF−102、KF−105、KF−351、KF−352、KF−618、KF−945、KF−2001、KF−2004、X−22−163A、X−22−163B、X−22−167B、X−22−169AS、X−22−2000、X−22−4741、X−22−4741、ビックケミー・ジャパン社製のBYK−307、BYK−325、BYK−333等が挙げられる。
以上の(C)変性シリコーンオイルは単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。(C)変性シリコーンオイルの添加量は、チイラン環を有する化合物100重量部に対して0.005〜4.0重量部であり、好ましくは0.005〜3.0重量部であり、より好ましくは0.1〜2.0重量部である。変性シリコーンオイルの添加量が0.005重量部より少ない場合、コーティング剤組成物の濡れ性が十分でなく、添加量が4重量部より多い場合、コーティング膜の透明性が低下する。
本発明では、必要に応じて、下記構造式(9)式で表される(D)シランカップリング剤の添加が可能で、均一性、密着性に優れるコーティング膜が得られる。

(R、RおよびRは各々独立でハロゲン、炭素数1〜4のアルコキシ基または炭素数1〜4のアルキル基、Rは単結合または炭素数1〜4のアルキル側鎖を含んでもよい炭素数1〜4のアルキレン結合、R10は炭素数1〜4のアルキル側鎖を含んでもよいビニル基、スチリル基、(メタ)アクロイル基、グリシドキシ基などの含エポキシ基、アミノ基、アミノエチルアミノ基およびフェニルアミノ基などの含アミノ基、メルカプト基、イソシアナト基、ハロゲン基、ウレイド基などの反応性基を表す。)
(D)シランカップリング剤の好ましい具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−スチリルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどがあげられる。
以上、好ましい(D)シランカップリング剤を例示したが、より好ましくは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのエポキシ基またはメルカプト基を有するシランカップリング剤であり、特に好ましくは、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するシランカップリング剤である。
これら(D)シランカップリング剤は単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。(D)シランカップリング剤を使用する場合の添加量は、(A)チイラン環を有する化合物100重量部に対して1〜30重量部であり、更に好ましくは1〜20重量部である。
本発明では、必要に応じて、無機フィラーを添加することが可能で、屈折率と硬度に優れるコーティング膜が得られる。
無機フィラーの好ましい具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化セリウム、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化カドミウム、酸化アンチモンおよびこれらの複合物、これらに重合性官能基を導入したものなどがあげられる。これらフィラーは、透明性を確保する面から粒径は細かいほうが好ましく、具体的には数平均粒径が、50nm以下が好ましい。
以上、無機フィラーを例示したが、これらは単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。無機フィラーを使用する場合の添加量は、(A)チイラン環を有する化合物100重量部に対して、1〜100重量部であり、好ましくは5〜50重量部である。
また、無機フィラーを使用する場合、分散性等を向上させる目的で、通常好適に使用される公知の溶媒類や分散剤等を使用しても構わない。
コーティング剤組成物を塗布する際は、必要に応じて希釈剤などを添加して粘度を調節することも可能である。希釈剤としては、エタノール、アセトン、MEK、酢酸エチル、THF、トルエン、メチレンクロライドなどの汎用の有機溶剤があげられる。塗布に際しては、必要に応じて、ハンドコーター、バーコーター、スピンコーターなどの塗布装置を用いてもよい。
本発明のコーティング剤組成物は、その用途に応じて、各種基板に塗布可能であり、総じて良好な濡れ性を発現する。基板としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、三酢酸セルロース(TAC)および脂環式ポリオレフィンなどのプラスチック基板、ガラス、石英およびセラミックなどの無機材料基板、アルミニウム、ステンレス(SUS)およびニッケルなどの金属基板などがある。尚、耐薬品性の低いプラスチック基板については、シリカ等の無機薄膜で表面を保護することにより使用が可能となる。
本発明の光硬化性組成物及びその硬化物、ならびにコーティング剤組成物及びそのコーティング膜は、光学用接着剤、光学用コーティング剤、LED用ポッティング剤、光機能性フィルム、光機能性基板、レジスト材料、プリズム、光ファイバー、フィルター、プラスチックレンズ等の光学製品の製造に極めて有用である。
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド100重量部(1−フェナシル−(1−アゾニア−4−アザビシクロ[2,2,2]−オクタン)テトラフェニルボレート(PnDbBP4)2重量部、γ−ブチロラクトン3重量部およびシリコーンオイルKF−351(信越化学社製)0.1重量部を混合し均一溶液とした。その後、この溶液を10Torrの減圧下10分間脱気を行い、更に孔径0.5μmのPTFEフィルターでろ過を行った。この溶液をガラス基板上にバーコーター(No.9)を用い塗膜した。
石英窓がついた箱の中にこのガラス基板を設置し、箱に窒素ガスを流した。箱の中の酸素濃度が0.2%以下になったのを確認後、メタルハライドランプ(30mW/cm2、365nm)を用い紫外線を4分間照射した。その後、硬化状況、表面硬度を調べた。なお、硬化物の硬化状況はタック(粘着力)がないものを○、タックがあるものを×とした。タックが○とは、硬化物の表面の粘着力が無く、十分に硬化したことを示す。
また、硬化物の表面硬度は鉛筆硬度計を用いて調べた。結果を表1に示した。
[実施例2〜7]
表1に示した条件に変えた以外は実施例1と全く同様に操作を行った。結果を表1に示した。
[実施例8]
ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド100重量部、1−フェナシル−(1−アゾニア−4−アザビシクロ[2,2,2]−オクタン)テトラフェニルボレート(PnDbBP4)2重量部、γ−ブチロラクトン6重量部およびシリコーンオイルKF−351(信越化学社製)0.1重量部を混合し均一溶液とした。その後、この溶液を10Torrの減圧下10分間脱気を行い、更に孔径0.5μmのPTFEフィルターでろ過を行った。この溶液をガラス基板上に1滴垂らした後、延伸ポリプロピレンフィルムでガラス基板を被い、空気を追い出すように溶液を基板上に広げた。
このフィルム被膜したガラス基板にメタルハライドランプ(30mW/cm2、365nm)を用い紫外線を2分間照射した。その後、フィルムを剥がし硬化状況、表面硬度を調べた。結果を表1に示した。
比較例1
紫外線の照射を大気下で10分間行う以外は、実施例8と全く同様の操作を行った。
結果を表1に示した。
比較例2
ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド100重量部、ローディア社製光酸発生剤:フォトイニシエーター2074(PI−2074)5重量部を混合し均一溶液とした。その後、この溶液を10Torrの減圧下10分間脱気を行い、更に孔径0.5μmのPTFEフィルターでろ過を行った。この溶液をガラス基板上に1滴垂らした後、延伸ポリプロピレンフィルムでガラス基板を被い、空気を追い出すように溶液を基板上に広げた。
このフィルム被膜したガラス基板にメタルハライドランプ(30mW/cm2、365nm)を用い紫外線を2分間照射した。その後、フィルムを剥がし硬化状況、表面硬度を調べた。結果を表1に示した。
比較例3〜5
比較例2で用いた光酸発生剤PI−2074をMPI−103(みどり化学製)、CI−5102(日本曹達製)およびCI−2855(日本曹達製)の各光酸発生剤に変えた以外は比較例2と同様に操作を行った。結果を表1に示した。
なお、各光酸発生剤の構造を以下に示した。
ローディア社製 フォトイニシエーター2074

みどり化学社製 MPI−103

日本曹達社製 CI−5102および2855


[実施例9〜12]
表2に示した条件に変えた以外は実施例1と全く同様に操作を行った。結果を表2に示した。
[実施例13]
ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド95重量部、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド5重量部、1−(4’−フェニル)フェナシル−(1−アゾニア−4−アザビシクロ[2.2.2]オクタン)テトラフェニルボレート(PhPnDbBP4)0.1重量部を混合し均一溶液とした。その後、この溶液を10Torrの減圧下10分間脱気を行い、更に孔径0.5μmのPTFEフィルターでろ過を行った。
2枚のスライドガラス間に内径4mm、厚さ1.5mmのバイトン製(4Dフッ素ゴム)Oリングを挟み、次いでスライドガラスの両端をクリップで留め、硬化用のモールドとした。その後、注射器を使って上記溶液をOリング内に注入した。このモールドに、大気下、メタルハライドランプ(30mW/cm2、365nm)を用い紫外線を5分間照射した。
Oリング内の溶液は十分に硬化しており、更に透明で、無着色であった。一方、Oリングからはみ出て、大気にさらされていた溶液は液体のままであった。

[実施例14]
ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド100重量部、5−(4’−フェニル)フェナシル−(5−アゾニア−1−アザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)テトラフェニルボレート(PhPnDBNBP4)1重量部およびシリコーンオイルKF−351(信越化学社製)0.1重量部を混合し均一溶液とした。その後、この溶液を10Torrの減圧下10分間脱気を行い、更に孔径0.5μmのPTFEフィルターでろ過を行った。この溶液をPET(ポリエチレンテレフタレート)基板上にバーコーター(No.3)を用い塗膜した。塗膜の厚さは約8μmであった。
石英窓がついた箱の中にこのガラス基板を設置し、箱に窒素ガスを流した。箱の中の酸素濃度が0.2%以下になったのを確認後、メタルハライドランプ(30mW/cm2、365nm)を用い紫外線を15秒間照射した。組成物の濡れ性、得られた硬化物の着色、透明性、均一性の評価を行い、コーティング剤としての性能評価を実施した。結果を表3に示した。
尚、濡れ性、着色、透明性、均一性は以下のように評価し、B以上を合格とした。
濡れ性は、塗膜後の膜の保持時間を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:1時間以上はじかない
B:1時間以内にはじく
C:10分以内にはじく
着色は、コーティングされた基板を白紙上に置き、目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:着色が見えない
B:黄色が薄く見える
C:はっきり黄色く見える
透明性は、暗室内で蛍光灯下、コーティングされた基板を黒紙上に置き、目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:透明である
B:くもりが薄く見える
C:完全に不透明である
均一性は、コーティング膜の表面状態を、目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:平坦な塗膜面が保たれている
B:概ね平坦な塗膜面が保たれている
C:塗膜面に凸凹が目立つ
[実施例 15〜17、比較例6〜8]
変性シリコーンオイルKF−351(信越化学工業社製)の添加量を表3に示す量に変える以外は実施例14を繰り返した。結果を表3に示した。

[実施例 18〜23]
変性シリコーンオイルの種類を表4のものに変える以外は実施例14を繰り返した。結果を表4に示した。尚、型番の頭文字がKF、X−22のものは信越化学工業社製変性シリコーンオイル、型番の頭文字がBYKのものはビックケミー・ジャパン社製変性シリコーンオイルである。
[実施例 24〜30]
変性シリコーンオイルの種類ならびに量、及び基板の種類を表5のものに変える以外は実施例14を繰り返した。ステンレスはSUS304を使用した。また、Zeonor(日本ゼオン社製)、ARTON(JSR社製)は脂環式ポリオレフィン樹脂、PMMAはポリメチルメタクリレート樹脂、TACは三酢酸セルロース樹脂である。
[実施例31]
ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド100重量部、5−(4’−フェニル)フェナシル−(5−アゾニア−1−アザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)テトラフェニルボレート(PhPnDBNBP4)1重量部、シリコーンオイルBYK−325(ビックケミー・ジャパン社製)0.5重量部、およびγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803、信越化学工業社製)10重量部を加えよく混合し均一とした。その後、この溶液を10Torrの減圧下10分間脱気を行い、更に孔径0.5μmのPTFEフィルターでろ過を行った。この溶液をガラス基板上にバーコーター(No.3)を用い塗膜した。塗膜の厚さは約8μmであった。
石英窓がついた箱の中にこのガラス基板を設置し、箱に窒素ガスを流した。箱の中の酸素濃度が0.2%以下になったのを確認後、メタルハライドランプ(30mW/cm2、365nm)を用い紫外線を15秒間照射した。組成物の濡れ性、得られた硬化物の着色、透明性、均一性および密着性の評価を行い、コーティング剤としての性能評価を実施した。結果を表6に示した。
尚、密着性は、コーティングされた基板を80℃の温水に3時間浸漬した後、目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:塗膜が基板からはがれていない
×:塗膜が基板からはがれている
[実施例32、比較例9]
シランカップリング剤を表6のものに変える以外は実施例31を繰り返した。尚、KBM−403(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)は信越化学工業社製シランカップリング剤である。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)チイラン環を有するエピスルフィド化合物と(B)一般式(1)で表される光塩基発生剤を含むことを特徴とする光硬化性組成物。

(式(1)中、Arはフェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラシル、ピレニル、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チエニル、チアトレニル、ジベンゾフリル、クロメニル、キサンテニル、チオキサンチル、フェノキサチイニル、ターフェニル、スチルベニルまたはフルオレニルであって、これらの基は非置換であるか、または炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のアルキニル基、炭素数1〜18のハロアルキル基、NO、OH、CN、OR、SR、C(O)R、C(O)ORもしくはハロゲンによりモノ置換またはポリ置換されており(式中R、R、R、R、Rは水素または炭素数1〜18のアルキル基である)、−Aは下記構造式(2)から選ばれるアンモニウムイオンであり(式(2)中、Lは1または0、Rは炭素数1〜5のアルキル基である)、

はボレートアニオン、N,N−ジメチルジチオカルバメートアニオン、N,N−ジメチルカルバメートアニオン、チオシアネートアニオンまたはシアネートアニオンである。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、Arが無置換のフェニル、ビフェニルまたはナフチルである請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)において、対アニオンXがボレートアニオンである請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記(A)化合物が、下記構造式(3)で表される構造を1個または2個以上有する化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性組成物。

【請求項5】
前記(A)化合物が下記一般式(4)である請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性組成物。

(式(4)中、mは0から4の整数であり、nは0から2の整数である。)
【請求項6】
前記一般式(4)において、nが0、またはnが1でmが0である請求項5に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)の光塩基発生剤を溶解できる溶媒を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の光硬化性組成物を、紫外線の照射により硬化させることを特徴とする硬化方法ならびに得られる硬化物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の光硬化性組成物に紫外線を照射する際、空気遮断下で紫外線照射を行うことを特徴とする硬化方法ならびに得られる硬化物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の光硬化性組成物に、更に(C)変性シリコーンオイルを添加したコーティング剤組成物。
【請求項11】
更に、(D)シランカップリング剤を添加した、請求項10に記載のコーティング剤組成物。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のコーティング剤組成物を、紫外線の照射により硬化させることを特徴とする硬化方法ならびに得られるコーティング膜。
【請求項13】
請求項10又は11に記載のコーティング剤組成物に紫外線を照射する際、空気遮断下で紫外線照射を行うことを特徴とする硬化方法ならびに得られるコーティング膜。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のコーティング膜が表面に形成された光学製品。

【国際公開番号】WO2005/014696
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513003(P2005−513003)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011520
【国際出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】