説明

光給電式計測方法及びそれに用いる光給電式計測装置

【課題】 装置の大型化を抑え、コストを低減することができる光給電式計測方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 トンネル等の暗視野空間における所定位置に所要のセンサ2を設置し、センサ2を作動して所要の事項を測定する計測方法において、センサ2を測定器本体8に装着するか又は前記センサ2近傍に測定器本体8を取り付け、測定器本体8の測定者に対向する位置にソーラパネル7を設け、ソーラパネル(PVセル)7の出力ー波長特性に近似したスポットライト9の人工光をソーラパネル7に投光して電力を発生させ、測定器本体8に設けた2次電池6に充電すると共に、センサ2を働かせることで所要の事項を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電式計測方法及びそれに用いる計測装置に係り、詳細にはスポットライト等人工光で所要の時に給電して作動させるようにすることで、装置の小型化と簡易化、コストの低減を図った給電式計測方法及びそれに用いる光給電式計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトンネル等の暗視野空間における歪みやクラック等を測定する計測方法、計測装置は、センサと制御装置間をコードで接続するコード配線方式又は無線で通信する方式であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の配線式では、コード配線が大変大がかりとなり、コストも大きかった。
また、無線式では、装置が大型化し、高価になると共に、電力消費も大きく、電池交換も多くしなければならなかった。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、装置の大型化を抑え、コストを低減することができる光給電式計測方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明に係る光給電式計測方法は、トンネル等の暗視野空間における所定位置に所要のセンサを設置し、前記センサを作動して所要の事項を測定する計測方法において、前記センサを測定器本体に装着するか又は前記センサ近傍に測定器本体を取り付け、前記測定器本体の測定者に対向する位置にPVセルを設け、該PVセルの出力ー波長特性に近似したスポットライトの人工光を該PVセルに投光して電力を発生させ、前記測定器本体に設けた2次電池に充電すると共に、前記センサを働かせることで所要の事項を測定することを特徴とする。
測定する事項としては、例えば、変位、傾斜、割れ、ひずみ、圧力等がある。また、スポットライトの投光光線としては、通常の可視光ライトのみでなく、レーザ光や赤外線等を使用することができる。
【0006】
請求項2記載の発明に係る光給電式計測方法は、請求項1記載の発明の構成において、前記PVセルへの投光による初期の発生電力をトリガーとして、測定回路を所要の時間のみ働かせ、通常は休止状態としていることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明に係る光給電式計測方法は、請求項1又は2のいずれかに記載の発明の構成において、前記センサの測定出力を段階毎に発光素子で点灯表示させることを特徴とする。
例えば、安全領域であればグリーンの表示灯を点灯し、注意を喚起する程度であれば燈色の表示灯を点灯し、要注意であれば赤色の表示灯を点灯するようにする。
【0008】
請求項4記載の発明に係る光給電式計測方法は、請求項1記載の発明の構成において、前記測定器本体に記憶装置を設け、設定時間毎に自動的に間欠測定を行い、測定データを記憶し、該測定データを測定者の受信装置に送信するものであることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明に係る光給電式計測装置は、請求項1〜5記載のいずれかに記載の発明の実施に使用する計測装置であって、トンネル等の暗視野空間における所定位置に設置する所要のセンサと、該センサを作動させる電力を人工光の投光で発生するPVセルと、該PVセルが発生した電力で充電する2次電池とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明に係る光給電式計測装置は、請求項5記載の発明の構成において、前記PVセルに人工光を投光するスポットライトを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明に係る光給電式計測装置は、請求項5又は6記載の発明の構成において、前記センサの計測データを段階毎に表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項8記載の発明に係る光給電式計測装置は、請求項5又は6記載の発明の構成において、前記センサの計測データを記憶する記憶装置と、該記憶装置に蓄えた計測データを送信する送信装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、光給電の無線方式で計測するので、配線が不要であり、リード線の抵抗値補正やノイズ対策が不要である。また、誘導雷サージ対策のアレスタも電池交換も不要であり、コストを低減できる。また、回路の調整機構のシンプル化や節電回路を設けることにより装置の一層の小型化、低価格化が図れる。さらに、操作が簡単、明瞭であり、未経験者でもモニタができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、装置の一層の小型化、低価格化が図れる。
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、未経験者でも一層容易にモニタができる。
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、計測の一層の省力化が図れる。
【0015】
請求項5、6記載の発明によれば、無線方式であるので、配線が不要であり、リード線の抵抗値補正やノイズ対策が不要である。また、誘導雷サージ対策のアレスタも電池交換も不要であり、コストを低減できる。小型化を図ることができ、従来の装置に比べて、給電のスポットライト、PVセル等を加えればよく、全体のコストを低減できる。
【0016】
請求項7記載の発明によれば、請求項5記載の発明の効果に加えて、未経験者でも一層容易にモニタができ、モニタの費用を低減できる。
【0017】
請求項8記載の発明によれば、請求項5記載の発明の効果に加えて、未経験者でもの一層容易にモニタができ、モニタの費用を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の光給電式計測方法について、それに用いる装置に基づいて詳しく説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明に係る光給電式計測装置の実施の形態1のブロック図、図2はその利用形態を説明するブロック図である。
【0020】
この実施の形態1の光給電式計測装置(以下単に計測装置ともいう)1は、センサ2と、このセンサ2の信号を処理する増幅器本体3と、センサ2の測定値に基づき段階毎に表示する表示ランプ4と、増幅器本体3への電源のON−OFFを制御する電源制御部5と、2次電池6とPVセル(以下ソーラパネルという)7とを備え、これらは測定器本体8に設けられている。さらに、光給電式計測装置1はソーラパネル7にエネルギーを供給するスポットライト9を有して構成されている。
【0021】
センサ2は、変位、傾斜、割れ、圧力、ひずみ、温度、湿度等の所要の事項を測定し、その測定結果の信号を増幅器本体3に出力する。
【0022】
増幅器本体3は、図示していないA/Dコンバータ、増幅器、CPU、メモリ等を備え、表示ランプ4に信号を出力する。A/Dコンバータは、センサ2より送られてくる検出値のアナログ信号をデジタル変換する。つまり、センサ2より得られる検出値は、アナログ量であることから、これをデジタル処理するための前処理としてA/Dコンバータが用いられる。
【0023】
増幅器本体3の増幅器は,センサ2より送られてくる測定値の信号をCPUで処理するために増幅する。増幅器本体3のCPUは、計測装置1の全体の動作を制御するとともに、A/Dコンバータより与えられるデジタル形式の検出値の信号を受け、これを次の操作をするための演算を行う。
【0024】
この実施の形態の増幅器本体3のCPUは、センサ2からの信号を処理し、その測定値により段階毎に異なる表示処理するように信号を次段階の表示ランプ4に送信する。
【0025】
表示ランプ4は増幅器本体3のCPUの信号に基づき、その段階により異なる表示をする。そのため、表示ランプ4は、赤色灯4a、燈色灯4b、緑色灯4cを備え、段階毎に異なる色の表示灯を点灯して表示するようにしている。例えば、CPUが測定値が危険レベルの段階であると判断したときは、表示ランプ4に赤色灯4aを表示するように出力する。また、CPUが測定値は要注意レベルの段階であると判断したときは、表示ランプ4に燈色灯4bを表示するように出力する。また、CPUが測定値は通常レベルの段階にあると判断したときは、表示ランプ4に緑色灯4cを点灯表示するように出力する。
【0026】
電源制御部5は、CPUをON/OFF制御し、センサ2からCPUへの信号の入力を開始し、所定の時間が経過したら処理を終了させる。この電源制御部5は、CPUに含ませて増幅器本体3に含ませてもよい。
【0027】
2次電池6は、ソーラパネル7で発生した電力を蓄えるものであり、化学電池といわれるものでも、キャパシタといわれるものでも、種類を問わない。
【0028】
ソーラパネル7は、PVセルを含み、光エネルギーを電気に変換する装置で、この実施の形態では、可視光線は勿論のこと、光としては赤外線やレーザー光であってもよい。
【0029】
スポットライト9は、ソーラパネル7で電気に変換する光を供給する装置で、通常の可視光ランプの他、赤外線やレーザー光、LED光等電気に変換できる波長の電磁波を発生するものであればよい。
【0030】
次に、光給電式計測方法について、上記のように構成してなる計測装置を用いてトンネル内でクラックを測定する例で説明する。
【0031】
図2に示すように、トンネル10の所定の位置にセンサ(クラックゲージ)2を設置する。センサ2は増幅器本体3と表示ランプ4と電源制御部5と2次電池6とソーラパネル7を備えた測定器本体8に設けられている。ここにおいて、ソーラパネル7は測定者に対向する位置に設けられている。
【0032】
そして、測定者は所要の時がきたら、ソーラパネル7の出力ー波長特性に近似したスポットライト9を所持して、測定装置1のソーラパネル7に対向し、スポットライト9の人工光をソーラパネル7に投光して電力を発生させる。
【0033】
ソーラパネル7において発生した電力は、トリガーとして電源制御部5を作動して増幅器本体3のCPUをONすると共に、2次電池6に蓄えられる。
【0034】
増幅器本体3のCPUがONしてセンサ2を働かせ、クラックを測定する。測定結果の信号は増幅器本体3のA/Dコンバータ、増幅器、CPUでデータ処理をおこない、このデータと予め定められ段階毎に区分された範囲とを判定し、表示ランプ4の表示灯4a、4b、4cのいずれかを点灯させる。
【0035】
以上のように、本願発明によれば、スポットライト給電の無線方式で計測するので、配線が不要であり、リード線の抵抗値補正やノイズ対策が不要である。また、誘導雷サージ対策のアレスタも電池交換も不要であり、コストを低減できる。また、回路のシンプル化や節電回路を設けることにより装置の一層の小型化、低価格化が図れる。さらに、この実施の形態においては、スポットライトをソーラパネルに向けるだけで、クラックの状態が測定され、表示ランプの点灯した表示灯を観察すればよいだけであるから、操作が簡単、明瞭であり、未経験者でもモニタができる。
【0036】
(実施の形態2)
図3は本発明に係る光給電式計測装置の実施の形態2のブロック図である。
【0037】
この実施の形態2の光給電式計測装置(以下単に計測装置ともいう)は、上記実施の形態1とは、その構成に加えて測定データを記憶するメモリと、これを送信する機能と受信する機能を加えて構成している点で相違する。共通する構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
計測装置11は、センサ2と、増幅器本体3と、表示ランプ4と、電源制御部5と、2次電池6と、ソーラパネル7とを備え、設けられている。さらに、測定器本体8に送信する測定データを記憶するメモリ12と記憶したデータを送信する送信部13を設けている。また、計測装置11はソーラパネル7にエネルギーを供給するスポットライト9を有すると共に、測定器本体8の送信部13から送信されたデータを受信して記憶する受信装置14を備えて構成されている。
【0039】
電源制御部5は、この実施の形態では、CPUをON/OFF制御し、センサ2からCPUへの信号の入力開始/処理終了及びON/OFFのインターバル制御をする。
【0040】
増幅器本体3のCPUがインターバルでONしてセンサ2を働かせ、クラックを測定する。測定結果の信号は増幅器本体3のA/Dコンバータ、増幅器、CPUでデータ処理をおこない、このデータはメモリ12に記憶される。この測定、処理は測定者が去った後は2次電池6に蓄えられた電力により行われる。
【0041】
送信部13は、メモリ12に記憶されているデータ送信する。そのタイミングとしては、測定者が来て、ソーラパネル7にエネルギーが供給されたのを電源制御部5が検知して、それを出力したら、最新測定データと共に記憶しているデータを受信装置14に送信する。
【0042】
受信装置14は、送信部13から送信されるデータを受信し、メモリに記憶する。受信装置14は、測定者がスポットライト9と一緒に所持する。
【0043】
この実施の形態においても、測定者はスポットライトをソーラパネルに向けるだけで、クラックの状態が測定され、受信装置14に受信されるから、操作が簡単、明瞭であり、未経験者でもモニタができる。
【0044】
なお、本願発明は上記実施の形態に限られない。例えば、測定装置で測定結果の表示及び測定結果の表示とデータを送信する例で説明したが、測定結果の表示を計測器本体8で行わずにデータは測定者の受信部に送信する送信部のみを備える構成としてもよい。また、受信装置14は、スポットライト9と一体に構成されたものであってもよい。また、光トリガー回路をOFFにし、若干のスリーピング時間待機電流を流し、相互通信をすれば、小型屋外専用機としても、利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る光給電式計測の実施の形態1の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】利用形態を模式的に示すブロック図である。
【図3】本発明に係る光給電式計測の実施の形態2の構成を概略的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0046】
1 光給電式計測装置
2 センサ
3 増幅器本体
4 表示ランプ
5 電源制御部
6 2次電池
7 ソーラパネル(PVセル)
8 計測器本体
9 スポットライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル等の暗視野空間における所定位置に所要のセンサを設置し、前記センサを作動して所要の事項を測定する計測方法において、前記センサを測定器本体に装着するか又は前記センサ近傍に測定器本体を取り付け、前記測定器本体の測定者に対向する位置にPVセルを設け、該PVセルの出力ー波長特性に近似したスポットライトの人工光を該PVセルに投光して電力を発生させ、前記測定器本体に設けた2次電池に充電すると共に、前記センサを働かせることで所要の事項を測定することを特徴とする光給電式計測方法。
【請求項2】
前記PVセルへの投光による初期の発生電力をトリガーとして、測定回路を所要の時間のみ働かせ、通常は休止状態としていることを特徴とする請求項1記載の光給電式計測方法。
【請求項3】
前記センサの測定出力を段階毎に発光素子で点灯表示させることを特徴とする請求項1又は2記載の光給電式計測方法。
【請求項4】
前記測定器本体に記憶装置を設け、設定時間毎に自動的に間欠測定を行い、測定データを記憶し、該測定データを測定者の受信装置に送信するものであることを特徴とする請求項1記載の光給電式計測方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の計測方法に使用する計測装置であって、トンネル等の暗視野空間における所定位置に設置する所要のセンサと、該センサを作動させる電力を人工光の投光で発生するPVセルと、該PVセルが発生した電力で充電する2次電池とを備えることを特徴とする光給電式計測装置。
【請求項6】
前記PVセルに人工光を投光するスポットライトを備えることを特徴とする請求項5記載の光給電式計測装置。
【請求項7】
前記センサの計測データを段階毎に表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項5又は6記載の光給電式計測装置。
【請求項8】
前記センサの計測データを記憶する記憶装置と、該記憶装置に蓄えた計測データを送信する送信装置を備えることを特徴とする請求項5又は6記載の光給電式計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−111670(P2008−111670A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293039(P2006−293039)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(591215487)応用計測工業株式会社 (4)
【出願人】(506362716)有限会社ストレス調査研究所 (2)
【Fターム(参考)】