説明

光線路故障検出装置および光線路故障検出方法、これに用いる光源装置及び受光装置

【課題】伝送装置の故障か光ファイバの故障かを、短時間でかつ簡単に切り分けることが可能な光線路故障検出装置、および光線路故障検出方法、これに用いる光源装置及び受光装置を提供する。
【解決手段】光線路故障検出装置は、送信側の伝送装置10と受信側の伝送装置11との間で、光線路12に信号1,2を伝播させて情報の伝送を行う光通信システムに用いられる。この光線路故障検出装置は、光線路12に伝播させる光信号とは異なる波長のモニタ光3を発生する光源装置13と、モニタ光3を光線路12に結合させるカプラ14と、光線路12を伝播したモニタ光3を光線路12から取り出す光カプラ15と、光線路12から取り出されたモニタ光3を受光する受光装置16と、を備える。受光装置16は、モニタ光3の光強度に基づき光線路12の異常を検出すると、接点出力を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの伝送装置間で、光ファイバからなる光線路を介して情報の伝送を行う光通信システムに用いる光線路故障検出装置および光線路故障検出方法、これに用いる光源装置及び受光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信設備ビル及び複数のビルにそれぞれ伝送装置が設置され、各伝送装置が光ファイバによって接続された光通信システムにおいて、光パルス試験器(OTDR)を用いて、光ファイバ区間の損失、故障位置の探索等を行うための光線路試験システムが知られている(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平9−145538公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載された従来技術では、OTDRを用いているため、サンプリング時間がかかり、リアルタイム性に欠けるという問題があった。
【0004】
また、2つの伝送装置間で光ファイバからなる光線路を介して情報の伝送を行う光通信システムにおいて、2つの伝送装置間での通信が不能になると、伝送装置を管理する上位システムまたは伝送装置から、故障を知らせるアラームが出る。この場合、その通信不能になった原因が伝送装置の故障、例えば光源の劣化等であるのか、光ファイバの故障であるのかを切り分けることができない。そのため、上位システムまたは伝送装置から故障を知らせるアラームが出ると、伝送装置を光ファイバから外して、光ファイバ自体に故障があるか否かを調べる必要があり、手間と時間がかかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、伝送装置の故障か光ファイバの故障かを、短時間でかつ簡単に切り分けることが可能な光線路故障検出装置、および光線路故障検出方法、これに用いる光源装置及び受光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る光線路故障検出装置は、送信側の伝送装置と受信側の伝送装置との間で、光ファイバからなる光線路を介して情報の伝送を行う光通信システムに用いる光線路故障検出装置であって、前記光線路に伝播させる光信号とは異なる波長のモニタ光を発生する光源装置と、前記モニタ光を前記光線路に結合させる光結合手段と、前記光線路を伝播した前記モニタ光を前記光線路から取り出すモニタ光分離手段と、前記光線路から取り出された前記モニタ光を受光する受光装置と、を備え、前記受光装置は、前記モニタ光の光強度に基づき前記光線路の異常を検出すると、異常警報を発することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、光源装置が出力したモニタ光を光カプラを介して光線路に割り込ませる。受光装置はモニタ光を測定することで、光線路(光ファイバ)の断線や損失増加を検出すると、異常を検出した受光装置は異常警報を発する。この異常警報を通じて外部システムと連携を行うことで、伝送装置の故障であるのか、光線路の故障であるのかを切り分けることができる。
【0008】
具体的には、(1)伝送装置の上位システムまたは伝送装置が、送信側の伝送装置と受信側の伝送装置との間での通信不能を知らせる異常警報(アラーム)を発している場合に、受光装置から異常警報がある場合には、光線路に故障があると判定できる。また、(2)上位システムまたは伝送装置が異常警報を発している場合に、受光装置から異常警報が無い場合には、光線路には故障が無く、伝送装置に故障があると判定できる。
【0009】
このように、異常を検出した受光装置は異常警報を発するので、この異常警報を通じて外部システムと連携を行うことで、伝送装置の故障であるのか、光線路の故障であるのかを切り分けることができる。従って、伝送装置の故障か光ファイバ(光線路)の故障かを、短時間でかつ簡単に切り分けることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る光線路故障検出装置は、前記受光装置の異常警報が、接点出力、ディスプレイ出力、及びLED等の発光の少なくともいずれか一つにより行われることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、受光装置の異常警報を接点出力により行う場合、この異常警報を通じて外部システムと連携を行うことで、伝送装置の故障であるのか、光線路の故障であるのかを切り分けることができる。また、受光装置の異常警報をディスプレイ出力やLED等の発光により行うことで、受光装置で異常が検出されたことをディスプレイの表示やLED等の点灯により、受光装置の異常警報を容易に視認できる。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る光線路故障検出装置は、前記モニタ光分離手段は、前記光線路から分岐して取り出す光の波長域を、前記モニタ光の波長の長波長側及び短波長側に拡げて設定されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、光源装置の周囲温度の変化によりモニタ光の波長が長波長側或いは短波長側に変動しても、温度の変化によるモニタ光の出力レベルの変動が低減される。これにより、温度の変化によりモニタ光の波長シフトし、その結果、モニタ光の出力レベルが低下して、受光装置で誤って異常を検出し異常警報を発するのを防止することができる。
【0014】
また光源装置の周囲温度の変化によりモニタ光の波長が長波長側或いは短波長側に変動しても、モニタ光が伝送装置に入射することを防止し、その結果、温度の変化によるモニタ光の波長シフトが起こっても、伝送装置間の通信に影響を与えることなく、光線路の故障検出が可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明に係る光線路故障検出装置は、前記光結合手段及び前記モニタ光分離手段は、前記光線路と前記伝送装置間を接続するポート間では前記光信号を低損失で透過し、前記モニタ光は遮断する特性を有し、前記モニタ光を遮断する波長域を、前記モニタ光の波長の長波長側及び短波長側に拡げて設定されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、光源装置の周囲温度の変化によりモニタ光の波長が長波長側或いは短波長側に変動しても、モニタ光が伝送装置に入射することを防止し、その結果、温度の変化によるモニタ光の波長シフトが起こっても、伝送装置間の通信に影響を与えることなく、光線路の故障検出が可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明に係る光線路故障検出装置は、前記受光装置は、前記モニタ光を受光するフォトダイオードと、該フォトダイオードの出力レベルに基づいて接点出力を行う処理回路とを備え、該処理回路は、初期の出力レベルとしてメモリに記憶された基準レベルと現時点の出力レベルである現在レベルとの差分が、前記メモリに記憶されたしきい値以上になると、接点出力を行うことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明に係る光線路故障検出装置は、前記モニタ光分離手段は、前記光線路を伝播する光信号と前記モニタ光とを分波する機能を有するWDM光カプラであることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明に係る光線路故障検出装置は、前記モニタ光分離手段は、光カプラと、前記光線路を伝播する光信号と前記モニタ光とを分波するフィルタ機能を持つフィルタモジュールとを有することを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の光線路故障検出装置に用いる光源装置である。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の光線路故障検出装置に用いる受光装置である。
【0022】
上記課題を解決するために、請求項10に記載の発明に係る光線路故障検出方法は、送信側の伝送装置と受信側の伝送装置との間で、光ファイバからなる光線路を介して情報の伝送を行う光通信システムの光線路故障検出方法であって、前記光線路に伝播させる光信号とは異なる波長のモニタ光を前記光線路に結合させ、前記光線路を伝播した前記モニタ光を前記光線路から取り出し、前記光線路から取り出された前記モニタ光を受光装置で受光し、前記モニタ光の光強度に基づき前記光線路の異常を検出した際に、前記受光装置が発する異常警報と、通信不能時に前記伝送装置またはその上位システムが発する異常警報とを組み合わせて、前記光線路の故障であるか前記伝送装置の故障であるかを切り分けることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、光線路に伝播させる光信号とは異なる波長のモニタ光を光線路に割り込ませる。受光装置はモニタ光を測定することで、光線路(光ファイバ)の断線や損失増加を検出すると、異常警報を発する。この異常警報を通じて外部システムと連携を行うことで、伝送装置の故障であるのか、光線路の故障であるのかを切り分けることができる。
【0024】
請求項11に記載の発明に係る光線路故障検出方法は、前記受光装置が異常警報を発し、前記伝送装置が異常警報を発したときに、前記光線路故障の発生を検出し、前記受光装置が異常警報を発せず、前記伝送装置が異常警報を発したときに、前記伝送装置の故障の発生を検出することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、伝送装置の故障であるのか、光線路の故障であるのかを切り分けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、伝送装置の故障か光ファイバの故障かを、短時間でかつ簡単に切り分けることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を具体化した各実施形態に係る光線路故障検出装置を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態の説明において同様の部位には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0028】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る光線路故障検出装置を、図1乃至図4に基づいて説明する。図1は第1実施形態に係る光線路故障検出装置及びこれを用いた光通信システムの概略構成を示すブロック図である。図2(A)及び図2(B)は図1に示す光カプラの拡大図である。図3(A)及び図3(B)は図1に示す受光装置の側面図である。図4は、受光装置内部の電気回路の概略構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示す第1実施形態に係る光線路故障検出装置は、送信側の伝送装置10と受信側の伝送装置11との間で、光ファイバからなる1本の光線路12に、下り信号1と上り信号2を伝播させて一心双方向伝送を行う光通信システムに用いられている。なお、図1は、本発明に係る光線路故障検出装置が適用可能である光通信システムの基本的な構成、つまり、送信側の伝送装置10と受信側の伝送装置11とが1本の光線路12を介して1対1で接続された構成を示している。
【0030】
図1に示す光通信システムでは、伝送装置10から伝送装置11へ波長1.49μmの光信号(下り信号1)を、伝送装置11から伝送装置10へ波長1.31μmの光信号(上り信号2)をそれぞれ光線路12に伝播させることにより、伝送装置10,11間で情報の伝送(一心双方向伝送)を行う。また、この光通信システムでは、例えば、伝送装置10は第1局A内に設けられ、伝送装置10と光線路12で接続された伝送装置11はユーザ宅等の第2局B内に設けられている。
【0031】
図1に示す光線路故障検出装置は、光線路12に伝播させる光信号とは異なる波長のモニタ光3を発生する光源装置13と、モニタ光3を光線路12に結合させる光結合手段としてのカプラ14と、光線路12を伝播したモニタ光3を光線路12から取り出すモニタ光分離手段としての光カプラ15と、光線路12から取り出されたモニタ光3を受光する受光装置16と、を備えている。
【0032】
本実施形態では、第2局B内に、波長が1.55μmのモニタ光3を発生する光源装置13と、光カプラ14とが設けられている。光源装置13は、モニタ光3を出力する半導体レーザダイオード13aを備えている。一方、第1局A内には、光カプラ15と、受光装置16とが設けられている。この受光装置16は、モニタ光3の光強度に基づき光線路12の異常を検出すると、接点出力(例えばHレベル信号の出力)を行うように構成されている。
【0033】
なお、光線路12は、伝送装置11と光カプラ14との間に接続された光線路12aと、光カプラ14と光カプラ15との間に接続された光線路12bと、光カプラ15と伝送装置10との間に接続された光線路12cとから構成されている。
【0034】
光カプラ14として、本例ではWDM光カプラが用いられている。この光カプラ14は、図2(A)に示すように、3つのポートを有し、各ポートにはコネクタ14a,14b,14cがそれぞれ取り付けられている。コネクタ14aは光線路12aの端部に設けたコネクタ(図示省略)に、コネクタ14cは光線路12bの一端に設けたコネクタ(図示省略)にそれぞれコネクタアダプタ(図示省略)を介して接続されている。これにより、下り信号1及び上り信号2が、光カプラ14を介して光線路12を伝播するようになっている。また、コネクタ14bは、一端が光源装置13に接続された光ファイバ4の他端に設けたコネクタ(図示省略)にコネクタアダプタ(図示省略)を介して接続されている。これにより、光源装置13の半導体レーザダイオード13aから出射されるモニタ光3を、WDM光カプラである光カプラ14により光線路12に低損失で割り込ませることができる。
【0035】
一方、光カプラ15として、本例では、光線路12を伝播する光信号(下り信号1及び上り信号2)とモニタ光3とを分波する機能、つまり、2つの光ファイバ間のモード結合に波長依存性があることを利用して分波機能を持たせたWDM光カプラが用いられている。この光カプラ15は、図2(B)に示すように、3つのポートを有し、各ポートにはコネクタ15a,15b,15cがそれぞれ取り付けられている。
【0036】
コネクタ15aは光線路12bの他端に設けたコネクタ(図示省略)に、コネクタ15bは光線路12cの端部に設けたコネクタ(図示省略)にそれぞれコネクタアダプタ(図示省略)を介して接続されている。これにより、下り信号1及び上り信号2が、光カプラ15を介して光線路12を伝播するようになっている。また、コネクタ15cは、一端が受光装置16に接続された光ファイバ5の他端に設けたコネクタ(図示省略)にコネクタアダプタ(図示省略)を介して接続されている。これにより、モニタ光3を、WDM光カプラである光カプラ15により光線路12から低損失で取り出すことができる。光カプラ15により光線路12から取り出されたモニタ光3は、光ファイバ5を介して受光装置16に送られる。
【0037】
なお光カプラ14および15は光線路と伝送装置間を接続するポート間では通信光波長(本実施例では1.31μm、1.49μm)を低損失で透過し、モニタ光波長1.55μmは遮断する特性を有する。
【0038】
受光装置16は、図3(A),(B)に示す箱型のケース17内に、モニタ光3を受光するフォトダイオード30と、フォトダイオード30の出力レベルに基づいて接点出力を行う処理回路等の電気回路とを収容した構成を有している。この受光装置16は、例えば、1台で複数台の光源装置(本例では最大6台の光源装置)13に対応できる構成になっている。
【0039】
ケース17の一つの側面には、監視している光線路のチャネル番号を表示するためのLED19と、表示部20と、複数の操作ボタンを有する操作部21とが設けられている。また、ケース17の別の側面には、図2(B)に示すカプラ15のコネクタ15cが挿入される6ch分、つまり6個のコネクタ端子22と、外部入出力端子23と、電源スイッチ24と、電源用端子25と、接点出力端子40と、が設けられている。
【0040】
次に、受光装置16内部の電気的構成を図4に基づいて説明する。
受光装置16は、モニタ光3を受光するフォトダイオード30と、CPU31と、メモリ32と、インターフェース33と、LED19を駆動する駆動回路34と、表示部20を駆動する駆動回路35と、リレースイッチを有する接点出力発生部36と、この接点出力発生部36を駆動する駆動回路37と、入力回路38と、を備える。図4において、符号39は、入出力端子23に接続されるPC(パーソナルコンピュータ)である。
【0041】
この受光装置16では、操作部21(図3参照)を操作することにより、フォトダイオード30の初期の出力レベルを基準レベルとして設定可能であると共に、基準レベルと現時点の出力レベルである現在レベルとの差分と比較されるしきい値を設定可能である。初期の出力レベルは、光線路故障検出装置が図1に示す光通信システムに導入された時点でのフォトダイオード30から出力される光強度である。操作部21の操作により設定された基準レベルとしきい値は、入力回路38からCPU31に送られ、CPU31によりメモリ32にそれぞれ記憶される。
【0042】
CPU31は、メモリ32に記憶された基準レベルと、現時点のフォトダイオード30の出力レベルである現在レベルとの差分を演算し、その差分が、メモリ32に記憶されたしきい値以上になると、駆動回路37を駆動して、接点出力発生部36から接点出力(Hレベル信号の出力)を行わせる。その差分がしきい値より小さいときには、接点出力発生部36から接点出力させないようにする。接点出力発生部36からの接点出力は、出力端子40から外部の上位システムへ出力される。なお、その基準レベルとしきい値は、PC39により設定し、設定された情報を入出力端子23及びインターフェース33を介してCPU31へ供給するようにしてもよい。
【0043】
また、操作部21では、監視する光線路12のチャネル番号を設定可能である。CPUは、操作部21で設定されて入力回路38から入力されるチャネル番号のLED19を駆動回路34により駆動させる。さらに、CPU31のプログラムの書き換えを、PC39で行えるようになっている。
【0044】
このような構成を有する受光装置16において、フォトダイオード30の出力レベルに基づいて接点出力を行う処理回路は、CPU31と、メモリ32と、駆動回路37と、接点出力発生部36とにより構成されている。
以上の構成を有する第1実施形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0045】
光源装置13が出力したモニタ光3を光カプラ14を介して光線路12に割り込ませる。受光装置16はモニタ光3をフォトダイオード30で測定することで、光線路12の断線や損失増加を検出すると、異常を検出した受光装置16は接点出力(Hレベル信号の出力)を行う。この接点出力を通じて外部システムと連携を行うことで、伝送装置10或いは伝送装置11の故障であるのか、光線路12の故障であるのかを切り分けることができる。
【0046】
具体的には、次のようにして伝送装置10,11の故障と、光線路12の故障との切り分けが可能になる。
【0047】
(1)伝送装置10,11の上位システムまたは伝送装置10,11が、伝送装置10,11間での通信不能を知らせるアラーム(異常警報)を発している場合に、上記基準レベルと現在レベルとの差分がしきい値より小さく、受光装置16からの接点出力(異常警報が無い場合には、光線路12に故障は無く、伝送装置10或いは伝送装置11に故障があると判定できる。
【0048】
(2)上位システムまたは伝送装置10,11が、伝送装置10,11間での通信不能を知らせるアラームを発している場合に、上記差分がしきい値以上になり、受光装置16が接点出力(Hレベル信号の出力)を行う(異常警報を発する)場合には、光線路12に故障があると判定できる。
【0049】
(3)上位システムまたは伝送装置10,11が上記アラームを発していない場合で、受光装置16からの接点出力が無い場合には、伝送装置10,伝送装置11及び光線路12のいずれも正常であると判定できる。
【0050】
このように、異常を検出した受光装置16は接点出力を行うので、この接点出力を通じて外部システムと連携を行うことで、伝送装置10或いは伝送装置11の故障であるのか、光線路12の故障であるのかを切り分けることができる。従って、伝送装置の故障か光ファイバ(光線路)の故障かを、短時間でかつ簡単に切り分けることができる。
【0051】
(第2実施形態)
図5は第2実施形態に係る光線路故障検出装置は、第1局A内に設けられた伝送装置10と、ユーザ宅等の複数(本例では6つ)の第2局B〜B内にそれぞれ設けられた伝送装置とが、1本の光線路12〜12をそれぞれ介して1対1で接続された構成を示している。つまり、図5は、一つの第1局からユーザ宅等の複数の第2局B〜Bまで、光ファイバ(光線路12〜12)を1本ずつ引き込むシングルスター構成の光通信システムに光線路故障検出装置を用いた構成を示している。
【0052】
また、本実施形態では、図1に示す上記第1実施形態と同様に、第2局B〜B内に、波長が1.55μmのモニタ光3を発生する光源装置13〜13と、光カプラ14〜14とが設けられている。一方、第1局A内には、光線路12〜12にそれぞれ接続される6つの光カプラ15〜15と、1台の受光装置16とが設けられている。6つの光カプラ15〜15の各コネクタ端子15c(図2(B)参照)は、1台の受光装置16に設けてある6個のコネクタ端子22(図3(B)参照)にそれぞれ接続される。
【0053】
この光線路故障検出装置では、各光源装置13〜13からそれぞれ出力されるモニタ光3は、光カプラ14〜14を介して光線路12〜12に割り込まされて光線路12〜12を伝播し、さらに、光カプラ15〜15で分岐されて、受光装置16へ進む。
【0054】
受光装置16の操作部21(図3(A)参照)により、監視する光線路12〜12のチャネル番号ch1〜ch6を設定可能である。例えば、チャネル番号ch1を設定すると、光カプラ15〜15で分岐されて受光装置16へ進むモニタ光のうち、光線路12から光カプラ15により取り出されたモニタ光がフォトダイオード30に入射する。この場合、伝送装置の故障か光ファイバ(光線路12)の故障かを、上記第1実施形態で説明した光線路12の場合と同様に、短時間でかつ簡単に切り分けることができる。また、チャネル番号ch2を設定すれば、伝送装置の故障か光ファイバ(光線路12)の故障かを、短時間でかつ簡単に切り分けることができる。
【0055】
このように、チャネル番号ch1〜ch6の一つを設定することで、複数の光線路12〜12個々について、伝送装置の故障か光ファイバ(光線路)の故障かを、短時間でかつ簡単に切り分けることができる。
【0056】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記各実施形態では、モニタ光3の波長を1.55μmとしているが、モニタ光3の波長は、光線路に伝播させる光信号とは異なる波長であって、好ましくは光信号と分離し易い波長であれば、1.55μmに限らない。例えば、モニタ光3の波長を1.61μmとした場合にも、上記各実施形態と同様の効果を奏する。さらにモニタ光3の波長は光線路に伝播させる光信号より短波長側であっても、光線路に伝播させる光信号が複数波長を多重化した光信号の場合、それらの波長の中間波長であってもよい。
【0057】
・上記第1実施形態では、一心双方向伝送を行う光通信システムに光線路故障検出装置を用いた例について説明したが、送信側の伝送装置10と受信側の伝送装置11との間で、光ファイバからなる2本の光線路の一方に下り信号を、その他方に上り信号をそれぞれ伝播させて双方向伝送(二心双方向伝送)を行う光通信システムに用いた光線路故障検出装置にも本発明は適用可能である。また、本発明は、このような一心双方向伝送を行う光通信システムや、二心双方向伝送を行う光通信システムに限らず、送信側の伝送装置と受信側の伝送装置との間で、光ファイバからなる光線路を介して情報の伝送を行う光通信システムに広く適用可能である。
【0058】
・上記各実施形態において、モニタ光分離手段としての光カプラ15は、光線路12から分岐して取り出す光の波長域を、モニタ光の波長の長波長側及び短波長側に拡げて設定されているのが好ましい。この構成によれば、光源装置の周囲温度の変化によりモニタ光の波長が長波長側或いは短波長側に変動しても、温度の変化によるモニタ光の出力レベルの変動が低減される。これにより、温度の変化によりモニタ光の波長シフトし、その結果、モニタ光の出力レベルが低下して、受光装置で誤って異常を検出し接点出力を行うのを防止することができる。
【0059】
・上記実施形態において、光カプラ14と15はモニタ光波長を遮断する機能を有しているが、この遮断波長がモニタ光の波長の長波長側及び短波長側に拡げて設定されているのが好ましい。この構成によれば、光源装置の周囲温度の変化によりモニタ光の波長が長波長側或いは短波長側に変動しても、光カプラ14,15の光線路と伝送装置間を接続するポート間で、モニタ光波長1.55μmを遮断する特性を損なうことがなく、通信に影響を与えることなく異常検出を可能とすることができる。
【0060】
・上記各実施形態において、WDM光カプラで構成したモニタ光分離手段としての光カプラ15に代えて、光分岐器である光カプラと、光線路12を伝播する光信号とモニタ光とを分波するフィルタ機能を持つフィルタモジュールとを用いても良い。
【0061】
・上記各実施形態では、第2局B内に、光源装置と、モニタ光を光線路に結合させる光カプラとが設けられ、第1局A内に、光線路を伝播したモニタ光を光線路から取り出す光カプラと、受光装置とが設けられているが、本発明はこれに限定されない。第1局A内に、光源装置と、モニタ光を光線路に結合させる光カプラとを設け、第2局B内に、光線路を伝播したモニタ光を光線路から取り出す光カプラと、受光装置とを設けた構成にも本発明は適用可能である。
【0062】
また、上記各実施形態において、第1局A内或いは第2局B内に、モニタ光を出力する光源装置とモニタ光を検出する受光装置の両方を配置する構成の光線路故障検出装置にも本発明は適用可能である。このような構成の光線路故障検出装置として、例えば、次のような2つの構成が考えられる。
【0063】
(1)第1局A内に配置した光源装置からのモニタ光を図1に示す光カプラ14と同様の光カプラで光線路12に割り込ませる。光線路12を伝播したモニタ光を図1に示す光カプラ15と同様の光カプラで光線路12から分岐して取り出し、このモニタ光を、光ファイバからなるループ導波路を伝播させる。このループ導波路を伝播したモニタ光を、光カプラ14と同様の光カプラで光線路12に再び割り込ませて光線路12を第1局A側へ伝播させる。さらに、このモニタ光を光カプラ15と同様の光カプラで光線路12から分岐して取り出し、このモニタ光を受光装置のフォトダイオードで検出する。
【0064】
(2)第1局A内に配置した光源装置からのモニタ光を光カプラ14と同様の光カプラで光線路12に割り込ませる。光線路12を伝播したモニタ光を、光線路12に設けた波長選択フィルタで反射させる。反射したモニタ光は光線路12を第1局A側へ伝播する。その波長選択フィルタは、上り信号と下り信号を透過させ、モニタ光を反射させる特性を有する。光線路12を伝播して第1局A側に戻ったモニタ光を図1に示す光カプラ15と同様の光カプラで光線路12から分岐して取り出し、このモニタ光を受光装置のフォトダイオードで検出する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1実施形態に係る光線路故障検出装置及びこれを用いた光通信システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】(A)及び(B)は図1に示す光カプラの拡大図。
【図3】(A)及び(B)は図1に示す受光装置の側面図。
【図4】受光装置内部の電気回路の概略構成を示すブロック図。
【図5】第2実施形態に係る光線路故障検出装置及びこれを用いた光通信システムの概略構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0066】
A…第1局、B,B〜B…第2局
1…下り信号、2…上り信号、3…モニタ光
10,11…伝送装置、
12,12〜12…光線路
13,13〜13…光源装置
14,14〜14…光カプラ
15,15〜15…光カプラ
16…受光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側の伝送装置と受信側の伝送装置との間で、光ファイバからなる光線路を介して情報の伝送を行う光通信システムに用いる光線路故障検出装置であって、
前記光線路に伝播させる光信号とは異なる波長のモニタ光を発生する光源装置と、
前記モニタ光を前記光線路に結合させる光結合手段と、
前記光線路を伝播した前記モニタ光を前記光線路から取り出すモニタ光分離手段と、
前記光線路から取り出された前記モニタ光を受光する受光装置と、を備え、
前記受光装置は、前記モニタ光の光強度に基づき前記光線路の異常を検出すると、異常警報を発することを特徴とする光線路故障検出装置。
【請求項2】
前記受光装置の異常警報が、接点出力、ディスプレイ出力、及びLED等の発光の少なくともいずれか一つにより行われることを特徴とする請求項1に記載の光線路故障検出装置。
【請求項3】
前記モニタ光分離手段は、前記光線路から分岐して取り出す光の波長域を、前記モニタ光の波長の長波長側及び短波長側に拡げて設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光線路故障検出装置。
【請求項4】
前記光結合手段及び前記モニタ光分離手段は、前記光線路と前記伝送装置間を接続するポート間では前記光信号を低損失で透過し、前記モニタ光は遮断する特性を有し、前記モニタ光を遮断する波長域を、前記モニタ光の波長の長波長側及び短波長側に拡げて設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の光線路故障検出装置。
【請求項5】
前記受光装置は、前記モニタ光を受光するフォトダイオードと、該フォトダイオードの出力レベルに基づいて接点出力を行う処理回路とを備え、該処理回路は、初期の出力レベルとしてメモリに記憶された基準レベルと現時点の出力レベルである現在レベルとの差分が、前記メモリに記憶されたしきい値以上になると、接点出力を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の光線路故障検出装置。
【請求項6】
前記モニタ光分離手段は、前記光線路を伝播する光信号と前記モニタ光とを分波する機能を有するWDM光カプラであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の光線路故障検出装置。
【請求項7】
前記モニタ光分離手段は、光カプラと、前記光線路を伝播する光信号と前記モニタ光とを分波するフィルタ機能を持つフィルタモジュールとを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の光線路故障検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つに記載の光線路故障検出装置に用いる光源装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一つに記載の光線路故障検出装置に用いる受光装置。
【請求項10】
送信側の伝送装置と受信側の伝送装置との間で、光ファイバからなる光線路を介して情報の伝送を行う光通信システムの光線路故障検出方法であって、
前記光線路に伝播させる光信号とは異なる波長のモニタ光を前記光線路に結合させ、
前記光線路を伝播した前記モニタ光を前記光線路から取り出し、
前記光線路から取り出された前記モニタ光を受光装置で受光し、
前記モニタ光の光強度に基づき前記光線路の異常を検出した際に、前記受光装置が発する異常警報と、通信不能時に前記伝送装置またはその上位システムが発する異常警報とを組み合わせて、前記光線路の故障であるか前記伝送装置の故障であるかを切り分けることを特徴とする光線路故障検出方法。
【請求項11】
前記受光装置が異常警報を発し、前記伝送装置が異常警報発したときに、前記光線路故障の発生を検出し、前記受光装置が異常警報を発せず、前記伝送装置が異常警報を発したときに、前記伝送装置の故障の発生を検出することを特徴とする請求項9に記載の光線路故障検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−103526(P2009−103526A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274292(P2007−274292)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】