説明

光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ、浄水器及び浄水システム

【課題】担体上に固定された光触媒の触媒性能を発揮させるとともに、太陽光が届かない場所においても浄化作用が可能な浄水システムを得る。
【解決手段】光触媒を坦持した多孔質炭化ケイ素構造材10及び多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に配置された紫外線導光体20を有する光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ100を備える浄化部Iと、発光ダイオード(LED)200により発生させた紫外線エネルギを浄化部Iの紫外線導光体20に導入する紫外線発光部IIと、紫外線発光部IIに太陽電池ユニットにより発生させた電力を供給する電源部IIIと、を備えることを特徴とする浄水システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ、浄水器及び浄水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンは、有機物質の分解活性を有する光触媒として、環境浄化の視点から注目されている。例えば、特許文献1には、ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害物質の汚染水を収容し、内部に設けた光触媒により汚染水中に含まれる有害有機物質を分解処理する光触媒反応容器と、光触媒に紫外線を照射する紫外線ランプを有する有害有機物質油含有水の処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−246449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、二酸化チタン等の粉末状の光触媒は、適当な担体上に固定化して使用される。光触媒の固定化方法が種々検討されているが、担体と光触媒との付着性が不十分な場合があり、定着技術に改良の余地が残されている。また、太陽光が届かない場所では、光触媒の性能が充分には発揮されず、浄化作用が得られない場合が多い。さらに、例えば、水処理システムは、電源供給設置の制限等の条件が整わない小さな川、沼等には、汚染が進んでいるにも拘わらず導入が困難な場合がある。
本発明の目的は、担体上に固定された光触媒の触媒性能を発揮させるとともに、太陽光が届かない場所においても浄化作用が可能な浄水システムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして、以下の[1]〜[16]に係る発明が提供される。
[1]光触媒を坦持し、且つ浄化対象の流体が通過可能な多孔質構造を有する多孔質炭化ケイ素構造材と、前記多孔質炭化ケイ素構造材の内部に坦持された前記光触媒に発光ダイオード(LED)による紫外線エネルギが照射可能に配置された紫外線導光体と、を有することを特徴とする光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
[2]前記紫外線導光体は、前記流体の流れる方向に略平行に配置された棒状形状を有し、且つ当該紫外線導光体の周囲は、当該棒状形状の長手方向に沿って前記多孔質炭化ケイ素構造材に取り囲まれていることを特徴とする前項[1]に記載の光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
[3]前記紫外線導光体は、前記流体の流れる方向と略直交するように配置された平板形状を有し、且つ前記多孔質炭化ケイ素構造材により、当該平板形状の表面側及び裏面側から挟まれていることを特徴とする前項[1]又は[2]に記載の光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
[4]前記紫外線導光体は、波長300nmの紫外線の光線透過率が70%以上である紫外線透過性材料から形成されたことを特徴とする前項[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
[5]前記光触媒は、二酸化チタン(TiO)であることを特徴とする前項[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
[6]前記多孔質炭化ケイ素構造材は、ポリウレタンのスポンジ状多孔質構造体の有形骨格に、フェノール樹脂類及びシリコン粉末を含むスラリーを含浸させた後、900℃〜1350℃で炭素化し、さらに1350℃以上の温度で当該シリコンを反応焼結させることにより形成されたことを特徴とする前項[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
【0006】
[7]光触媒を坦持した多孔質炭化ケイ素構造材及び当該多孔質炭化ケイ素構造材の内部に配置された紫外線導光体を備える光触媒坦持炭化ケイ素フィルタと、前記紫外線導光体中に紫外線エネルギを導入可能に配置された発光ダイオード(LED)と、を有することを特徴とする浄水器。
[8]前記発光ダイオード(LED)は、波長400nm未満の紫外線を前記紫外線導光体中に導入可能であることを特徴とする前項[7]に記載の浄水器。
[9]前記多孔質炭化ケイ素構造材は、ポリウレタンのスポンジ状多孔質構造体の有形骨格に、フェノール樹脂類及び平均粒径1μm〜10μm程度のシリコン粉末を含むスラリーを含浸させた後、900℃〜1350℃で炭素化し、さらに1350℃以上の温度で当該シリコンを反応焼結させることにより形成されたことを特徴とする前項[7]又は[8]に記載の浄水器。
[10]前記紫外線導光体は、紫外線透過性アクリル樹脂から形成されることを特徴とする前項[7]乃至[9]のいずれか1項に記載の浄水器。
[11]前記光触媒坦持炭化ケイ素フィルタに浄化対象の汚水を供給する送液ポンプを備えることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の浄水器。
【0007】
[12]光触媒を坦持した多孔質炭化ケイ素構造材及び当該多孔質炭化ケイ素構造材の内部に配置された紫外線導光体を有する光触媒坦持炭化ケイ素フィルタを備える浄化部と、発光ダイオード(LED)により発生させた紫外線エネルギを前記浄化部の前記紫外線導光体に導入する紫外線発光部と、前記紫外線発光部に太陽電池ユニットにより発生させた電力を供給する電源部と、を備えることを特徴とする浄水システム。
[13]前記光触媒坦持炭化ケイ素フィルタの前記多孔質炭化ケイ素構造材は、樹脂及び平均粒径1μm〜10μm程度のシリコン粉末を付着させたスポンジ状多孔質構造体を加熱処理により炭素化し、さらに当該シリコンを反応焼結させることにより炭化ケイ素化して形成されたことを特徴とする前項[12]に記載の浄水システム。
[14]前記光触媒坦持炭化ケイ素フィルタの前記紫外線導光体は、波長300nmの紫外線の光線透過率が70%以上である紫外線透過性アクリル樹脂から形成されたことを特徴とする前項[12]又は[13]に記載の浄水システム。
[15]前記紫外線発光部の前記発光ダイオード(LED)は、波長200nm〜400nmの紫外線を発光することを特徴とする前項[12]乃至[14]のいずれか1項に記載の浄水システム。
[16]前記浄化部に浄化対象の汚水を供給する送液ユニットを備えることを特徴とする前項[12]乃至[15]のいずれか1項に記載の浄水システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紫外線導光体により導入された紫外線エネルギが、担体としての多孔質炭化ケイ素構造材の内部に坦持された光触媒に効率良く照射され、光触媒作用が活性化される。
本発明によれば、多孔質炭化ケイ素構造材と浄化対象物との接触面積が大きくなり、浄化処理効率を向上させる。
本発明によれば、多孔質炭化ケイ素構造材の表面に安定して坦持された光触媒が浄化対象物を効率よく分解処理する。
本発明によれば、光源を光触媒から分離し、紫外線導光体を介して太陽光が当たらない場所に紫外線エネルギを導入できる。
本発明によれば、発光ダイオード(LED)を使用し、光源の長寿命化が得られる。
本発明によれば、太陽電池パネルと蓄電池を組み込み、電源供給設置の制限等の条件が整わない場所における浄化処理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態が適用される光触媒坦持炭化ケイ素フィルタの一例を説明する図である。
【図2】本実施の形態が適用される光触媒坦持炭化ケイ素フィルタの他の例を説明する図である。
【図3】本実施の形態が適用される浄水システムの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0011】
<光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ>
図1は、本実施の形態が適用される光触媒坦持炭化ケイ素フィルタの一例を説明する図である。図1に示すように、光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ100は、光触媒30を坦持した多孔質炭化ケイ素構造材10と、多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に配置された紫外線導光体20と、を備えている。
多孔質炭化ケイ素構造材10は、炭化ケイ素(SiC)を骨格とし、フィルタとして使用する際、浄化対象の流体が通過可能な3次元多孔質構造を有している。炭化ケイ素(SiC)の骨格は、架橋太さの平均が1mm以下、気孔率が85容量%以上である。多孔質炭化ケイ素構造材10の製造方法については後述する。
【0012】
紫外線導光体20は、多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に坦持された光触媒30に、紫外線エネルギを照射するために、多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に配置されている。後述するように、紫外線導光体20には、光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ100の外部に設けた電源を用い、発光ダイオード(LED)により発生した紫外線エネルギが導入される。
本実施の形態では、紫外線導光体20は、波長300nmの紫外線の光線透過率が70%以上である紫外線透過性材料から形成されることが好ましい。通常、光触媒30は、波長400nm以下の紫外線エネルギの照射により触媒作用を発揮することが知られている。このため、紫外線の光線透過率が高い材料を用いて紫外線導光体20を形成することにより、多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に坦持された光触媒30が効率よく活性化される。紫外線透過性材料としては、例えば、紫外線透過性アクリル樹脂が挙げられる。このようなアクリル樹脂としては、例えば、株式会社クラレ株式会社製メタクリル樹脂パラグラス(登録商標)、住友化学株式会社製スミペックス010等の市販品が挙げられる。
【0013】
光触媒30は、浄化対象としての汚水等の流体中に含まれる有害有機物質等を酸化分解による光触媒反応が可能な金属酸化物が挙げられ、特に限定されるものではない。例えば、二酸化チタン(特に、アナタース型二酸化チタン)、ルチル型二酸化チタン、ブルッカイト型二酸化チタンが挙げられる。さらに、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉛、酸化第二鉄等を含んでいても良い。本実施の形態では、光触媒30としては、アナタース型二酸化チタンを50質量%以上含んでいるものが好ましい。尚、これらの化合物は、複数種を適宜混合して用いてもよい。また、光触媒30は、粉末状、塊状、粒状、平板状、繊維状等の様々な形態のものを用いることができる。本実施の形態では、平均粒径1nm〜100nmの粉末状の二酸化チタンを使用している。
多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に坦持された光触媒30の量は特に限定されない。本実施の形態では、0.01〜99.9%の範囲で調製される。
【0014】
図2は、本実施の形態が適用される光触媒坦持炭化ケイ素フィルタの他の例を説明する図である。図2(a)は、紫外線導光体が流体の流れる方向に略平行に配置された例であり、図2(b)は、紫外線導光体が流体の流れる方向と略直交するように配置された例である。
図2(a)に示す光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ101は、光触媒(図示せず)を坦持し、炭化ケイ素(SiC)を骨格とした3次元多孔質構造を有する多孔質炭化ケイ素構造材12aと、浄化対象となる流体の流れる方向(A)に略平行に配置された複数の紫外線導光体22aを有している。紫外線導光体22aは棒状形状を有している。そして、紫外線導光体22aの周囲が長手方向に沿って多孔質炭化ケイ素構造材12aに取り囲まれるように、多孔質炭化ケイ素構造材12aの内部に配置されている。
【0015】
図2(b)示す光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ102は、光触媒(図示せず)を坦持し、炭化ケイ素(SiC)を骨格とした3次元多孔質構造を有する多孔質炭化ケイ素構造材12bと、浄化対象となる流体の流れる方向(B)と略直交するように配置された複数の紫外線導光体22bを有している。紫外線導光体22bは平板形状を有している。そして、紫外線導光体22bの表面側及び裏面側が多孔質炭化ケイ素構造材12bにより挟まれるように、多孔質炭化ケイ素構造材12bと積層構造を形成している。本実施の形態では、図2(b)に示すように、平板形状の紫外線導光体22bには、浄化対象となる流体が方向(B)に流れるように複数の貫通孔23が設けられている。
【0016】
<光触媒坦持炭化ケイ素フィルタの製造方法>
(多孔質炭化ケイ素構造材10の製造方法)
本実施の形態で使用する多孔質炭化ケイ素構造材10の製造方法の一例を以下に説明する。先ず、スポンジ状多孔質構造体の有形骨格に、炭素源としての樹脂とシリコン粉末を混合したスラリー(Siスラリー)を含浸させた後、約70℃で12時間程度乾燥する。このとき、スラリー液が連続気孔部を塞がない程度にスラリー液を絞ることが好ましい。
スポンジ状多孔質構造体としては、例えば、発泡ポリウレタン等が挙げられる。Siスラリーの樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、有機金属ポリマー等が挙げられる。なお、必要に応じて炭素粉末、黒鉛粉末、カーボンブラック、骨材、酸化防止剤等の添加剤を添加する。
シリコン粉末としては、平均粒径が1μm〜10μm程度の微粉末が特に好ましい。
Siスラリーの分散媒には、メチルアルコール、エチルアルコール等が挙げられる。
【0017】
次に、スラリー液に含浸後乾燥したスポンジ状多孔質構造体を、真空又はアルゴン等の不活性雰囲気下において、900℃〜1350℃程度の温度で炭素化する。これによって炭素化した多孔質構造体が得られる。この多孔質構造体は、フェノール樹脂の炭素化による炭素部分とシリコン粉末が混ざりあった炭素化複合体である。続いて、この炭素化した多孔質構造体は、真空又はアルゴン等の不活性雰囲気下において、1350℃以上の温度で焼成処理し、炭素とシリコンとを反応させ、炭化ケイ素が多孔質構造体の有形骨格部分に形成された多孔質構造焼結体を得る。さらに、この多孔質構造焼結体は、真空又は不活性化雰囲気下で1300℃〜1800℃程度の温度における加熱により、有形骨格上にシリコンを溶融含浸した多孔質炭化ケイ素構造材10が得られる。
なお、本実施の形態では、多孔質炭化ケイ素構造材10の製造において使用するシリコン粉末のシリコン(Si)とフェノール樹脂等の炭素(C)との混合の割合は、シリコン(Si)と炭素(C)との原子比がSi/C=0.05〜4になるように選ぶのが望ましい。
【0018】
(光触媒30の坦持)
本実施の形態において、光触媒30は、通常、以下の手順により多孔質炭化ケイ素構造材10に坦持される。即ち、上述した製造方法により調製された多孔質炭化ケイ素構造材10を、二酸化チタン(TiO)等の光触媒30を含有するスラリー(TiOスラリー)に浸漬し、乾燥後、大気中において100℃〜800℃程度の温度で焼成する。尚、TiOスラリーの分散媒として水を使用する。
本実施の形態では、TiOスラリーには、例えば、ポリビニルアルコールの水溶液中に二酸化チタン(TiO)等を添加、所定の粘度に調整する。ポリビニルアルコールはTiOを多孔質炭化ケイ素構造材10の表面に固定する結着剤としても有用である。
TiOスラリー中の二酸化チタン(TiO)の濃度は特に限定されないが、本実施の形態では、多孔質炭化ケイ素構造材10に坦持した際に、チタン(Ti)と炭素(C)のモル比(Ti/C)が0.1〜2の範囲内になるように調整されている。
【0019】
<浄水システム>
図3は、本実施の形態が適用される浄水システムの一例を説明する図である。
図3に示す浄水システムは、浄化対象としての汚水を光触媒により分解処理し浄化水とする浄水器としての浄化部Iと、浄化部Iに光触媒を活性化させる紫外線エネルギを発光ダイオード(LED)200を用いて供給する紫外線発光部IIと、紫外線発光部IIに太陽電池ユニットにより発生した電気エネルギを供給する電源部IIIと、浄化部Iに浄化対象としての汚水を供給する送液ユニットIVとから構成されている。
【0020】
浄化部Iは、光触媒30を坦持した多孔質炭化ケイ素構造材10と、光触媒30に紫外線エネルギが照射可能に配置された紫外線導光体20とを有する光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ100を備えている。
【0021】
紫外線発光部IIは、発光ダイオード(LED)200を有し、光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ100に内包された紫外線導光体20に波長200nm〜400nmの紫外線エネルギを導入する。本実施の形態では、発光ダイオード(LED)200として、ナイトライド・セミコンダクタ株式会社製NS375L−5RLL(発光波長375nm〜380nm、発光出力8.4mW〜14.0mW)を使用している。
本実施の形態では、発光ダイオード(LED)200から発生する紫外線エネルギは、例えば、光ファイバ又は他の導光板等を介して、光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ100の紫外線導光体20に導入する。この場合、紫外線エネルギ発生の光源を、浄化対象の汚水等の中に入れる必要が無い。
【0022】
電源部IIIは、太陽電池パネル300とバッテリ301を組み合わせた太陽電池ユニットを備えている。太陽電池パネル300により発生した電気エネルギをバッテリ301に蓄え、例えば、夜間又は曇りであっても、紫外線発光部IIに電力を供給する。
【0023】
送液ユニットIVは、送液ポンプ400を有し、浄化部Iの光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ100に、浄化対象となる汚水を供給している。浄化対象が滞留水の場合又は閉鎖された水域では、送液ポンプ400を使用して汚水を流動させる。
【0024】
本実施の形態における浄水システムの浄化対象としては、水に含まれているかび類、細菌類、トリハロメタン等の有機塩素化合物等、排水等に含まれている有機ハロゲン化合物、農薬、有害無機化合物等が挙げられる。一般に、紫外線エネルギの照射により活性化された光触媒30は、例えば、空気中の酸素又は水に溶存している酸素を活性化し、発生したオゾン又は活性酸素と、これらが水と反応して発生したヒドロキシラジカル等は、上述した物質を酸化分解し、脱臭、脱色、殺菌、消毒作用等を示すことが知られている。
【0025】
上述したように、本実施の形態が適用される浄化システムは、装置全体が3つの機構部分(浄化部I、紫外線発光部II、電源部III)により構成されている。各機構部分は、それぞれに別々に設置が可能である。
浄化部Iの光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ100と紫外線発光部IIの発光ダイオード(LED)200とを組み合わせた構成を一個の装置とし、これを汚水等が収容された適当な容器中に配置する浄水器として用いることができる。この場合、発光ダイオード(LED)200に電力を供給する電源部IIIは、浄水器とは別体として設置する。
【0026】
光触媒30の担持体として多孔質構造を有する多孔質炭化ケイ素構造材10は、それ自身がフィルタとしての構造を有し、汚水等の浄化対象の流体と接触しやすい性質を備えている。また、多孔質構造を有することにより、表面積が大きくなる。このため、汚水等に含まれる有機物を多孔質構造の表面で捕捉し分解する処理効率が高いといえる。
【0027】
多孔質炭化ケイ素構造材10は炭化ケイ素により構成され、そのため、光触媒30の坦持体として耐酸化性、耐薬品性に優れる性質を備えている。さらに、担持体自身にも、酸化チタン等の光触媒と比較すると低いながら触媒作用を有すると考えられる。
【0028】
また、本実施の形態において、多孔質炭化ケイ素構造材10の製造に用いる平均粒子径1μm〜10μmのシリコン粉末は、平均粒子径30μm程度のシリコン粉末と比べて、焼成処理における炭素や炭化ケイ素との反応性が高く、そのため、反応温度は低下し、さらに、反応時間が短縮する。
【0029】
本実施の形態によれば、紫外線導光体20を多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に配置し、太陽光が当たらない場所(例えば、透明度の低い水中等)の浄化が可能である。また、紫外線透過性材料を用いて形成した紫外線導光体20により、白然光だけでは不十分な紫外線量を増やし、浄化効率が改善される。
また、紫外線導光体20を介して、多孔質炭化ケイ素構造材10の内部に坦持された光触媒30に紫外線エネルギを照射している。このため、光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ100の外部に紫外線エネルギを発生させる光源を設け、従来のように、光触媒30の近傍に光源を設けていない。
【0030】
本実施の形態では、光触媒30に照射される紫外線エネルギは、発光ダイオード(LED)200により発生される。一般に、発光ダイオード(LED)200は、従来の蛍光灯等の光源と比較して長寿命であり、消費電力は低下する。また、防水効果も大きい。
【0031】
発光ダイオード(LED)200により発生する紫外線エネルギを、例えば、光ファイバや他の導光板を介して紫外線導光体20に導入する構造を採用すれば、紫外線発光部IIにおけるLED光源と光触媒が分離される。このため、紫外線発光部IIを、水中の腐食環境から退避させ、LED光源の耐久性を確保している。
【0032】
また、電源部IIIは、太陽電池パネル300を用い、発光ダイオード(LED)200への電源供給の制約を低減している。さらに、太陽電池パネル300とバッテリ301を組み込み、夜間における装置の運転を可能にしている。
【符号の説明】
【0033】
10,12a,12b…多孔質炭化ケイ素構造材、20,22a,22b…紫外線導光体、23…貫通孔、30…光触媒、100,101,102…光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ、200…発光ダイオード(LED)、300…太陽電池パネル、301…バッテリ、400…送液ポンプ、I…浄化部、II…紫外線発光部、III…電源部、IV…送液ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒を坦持し、且つ浄化対象の流体が通過可能な多孔質構造を有する多孔質炭化ケイ素構造材と、
前記多孔質炭化ケイ素構造材の内部に坦持された前記光触媒に発光ダイオード(LED)による紫外線エネルギが照射可能に配置された紫外線導光体と、
を有することを特徴とする光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
【請求項2】
前記紫外線導光体は、前記流体の流れる方向に略平行に配置された棒状形状を有し、且つ当該紫外線導光体の周囲は、当該棒状形状の長手方向に沿って前記多孔質炭化ケイ素構造材に取り囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
【請求項3】
前記紫外線導光体は、前記流体の流れる方向と略直交するように配置された平板形状を有し、且つ前記多孔質炭化ケイ素構造材により、当該平板形状の表面側及び裏面側から挟まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
【請求項4】
前記紫外線導光体は、波長300nmの紫外線の光線透過率が70%以上である紫外線透過性材料から形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
【請求項5】
前記光触媒は、二酸化チタン(TiO)であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
【請求項6】
前記多孔質炭化ケイ素構造材は、ポリウレタンのスポンジ状多孔質構造体の有形骨格に、フェノール樹脂類及びシリコン粉末を含むスラリーを含浸させた後、900℃〜1350℃で炭素化し、さらに1350℃以上の温度で当該シリコンを反応焼結させることにより形成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光触媒坦持炭化ケイ素フィルタ。
【請求項7】
光触媒を坦持した多孔質炭化ケイ素構造材及び当該多孔質炭化ケイ素構造材の内部に配置された紫外線導光体を備える光触媒坦持炭化ケイ素フィルタと、
前記紫外線導光体中に紫外線エネルギを導入可能に配置された発光ダイオード(LED)と、
を有することを特徴とする浄水器。
【請求項8】
前記発光ダイオード(LED)は、波長400nm未満の紫外線を前記紫外線導光体中に導入可能であることを特徴とする請求項7に記載の浄水器。
【請求項9】
前記多孔質炭化ケイ素構造材は、ポリウレタンのスポンジ状多孔質構造体の有形骨格に、フェノール樹脂類及び平均粒径1μm〜10μm程度のシリコン粉末を含むスラリーを含浸させた後、900℃〜1350℃で炭素化し、さらに1350℃以上の温度で当該シリコンを反応焼結させることにより形成されたことを特徴とする請求項7又は8に記載の浄水器。
【請求項10】
前記紫外線導光体は、紫外線透過性アクリル樹脂から形成されることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の浄水器。
【請求項11】
前記光触媒坦持炭化ケイ素フィルタに浄化対象の汚水を供給する送液ポンプを備えることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の浄水器。
【請求項12】
光触媒を坦持した多孔質炭化ケイ素構造材及び当該多孔質炭化ケイ素構造材の内部に配置された紫外線導光体を有する光触媒坦持炭化ケイ素フィルタを備える浄化部と、
発光ダイオード(LED)により発生させた紫外線エネルギを前記浄化部の前記紫外線導光体に導入する紫外線発光部と、
前記紫外線発光部に太陽電池ユニットにより発生させた電力を供給する電源部と、
を備えることを特徴とする浄水システム。
【請求項13】
前記光触媒坦持炭化ケイ素フィルタの前記多孔質炭化ケイ素構造材は、樹脂及び平均粒径1μm〜10μm程度のシリコン粉末を付着させたスポンジ状多孔質構造体を加熱処理により炭素化し、さらに当該シリコンを反応焼結させることにより炭化ケイ素化して形成されたことを特徴とする請求項12に記載の浄水システム。
【請求項14】
前記光触媒坦持炭化ケイ素フィルタの前記紫外線導光体は、波長300nmの紫外線の光線透過率が70%以上である紫外線透過性アクリル樹脂から形成されたことを特徴とする請求項12又は13に記載の浄水システム。
【請求項15】
前記紫外線発光部の前記発光ダイオード(LED)は、波長200nm〜400nmの紫外線を発光することを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の浄水システム。
【請求項16】
前記浄化部に浄化対象の汚水を供給する送液ユニットを備えることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の浄水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−86132(P2012−86132A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234120(P2010−234120)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年7月28日 インターネットアドレス「http://www.sgkz.or.jp/project/newtech/85/document_03.html」に発表
【出願人】(508179615)株式会社 シリコンプラス (10)
【Fターム(参考)】