説明

光触媒脱臭装置

【課題】定期的にフィルターを取り出し、水洗浄、焼成などにより光触媒能力を再生させる必要がなく、容易に光触媒能力を再生させることができる光触媒脱臭装置を提供する。
【解決手段】本光触媒脱臭装置は、スチーム洗浄室において、スチームノズルにより高温スチームを光触媒フィルターに吹き付けて、光触媒能力を再生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒の酸化作用を利用して臭気を吸着分解する光触媒脱臭装置に係り、特に光触媒能力を再生する再生手段を備えた光触媒脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光触媒フィルターと光源を組み合わせた光触媒脱臭装置は実用化されている。光触媒はその酸化作用により、有機物を酸化分解し、水と二酸化炭素にすることができる。しかしながら、硫黄化合物(例えば、硫化水素)や窒素化合物(例えば、アンモニア)はそれぞれ、硫酸、硝酸となり、触媒表面に付着する。
【0003】
この付着物が触媒毒となり、光触媒フィルターの能力を低下させる。このため、定期的にフィルターを取り出し、水で洗浄、または、焼成することで、光触媒能力を再生させる必要があった。
【0004】
なお、特許文献1には空調ダクト内に光触媒ユニットを設けたものが提案されている。
【特許文献1】特開平11−211209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、定期的にフィルターを取り出し、水洗浄、焼成などにより光触媒能力を再生させる必要がなく、容易に光触媒能力を再生させることができる光触媒脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明に係る光触媒脱臭装置は、ガス流路と、このガス流路内に設けられた光触媒フィルターと、前記ガス流路に近接して設けられ、前記光触媒フィルターを洗浄するスチーム洗浄室と、このスチーム洗浄室に収容され、前記光触媒フィルターに高温スチームを噴射するスチームノズルを備え、前記スチーム洗浄室において、前記スチームノズルにより高温スチームを前記光触媒フィルターに吹き付けて、光触媒能力を再生させることを特徴とする。
【0007】
好適には、前記光触媒フィルターを前記ガス流路と前記スチーム洗浄室間で適宜移動させ、前記光触媒フィルターの洗浄工程と光触媒フィルターによる脱臭工程を連続的に行う。
【0008】
また、好適には、前記光触媒フィルターが汚れやすい部分に窒素を700ppm以上ドープした光触媒フィルターを用いる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る光触媒脱臭装置によれば、定期的にフィルターを取り出し、水洗浄、焼成などにより光触媒能力を再生させる必要がなく、容易に光触媒能力を再生させることができる光触媒脱臭装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態に係る光触媒脱臭装置について添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明の第1実施形態に係る光触媒脱臭装置の概念図である。
【0012】
図1に示すように、本第1実施形態の光触媒脱臭装置1は、被脱臭ガスが流れケーシングで形成されるガス流路2と、このガス流路2に一部が選択的に露出し他部がスチーム洗浄室3に選択的に露出するように、回転タイプの光触媒担持フィルター例えば光触媒担持フィルター4と、この光触媒担持フィルター4に紫外線を照射する紫外線光源群5を備え、さらに、ガス流路2の入口で光触媒担持フィルター4の風上側には塵埃除去フィルター6が設けられている。
【0013】
ガス流路2を形成するケーシングの材料は、紫外線により劣化しない材質、例えば、アルミニウム、ステンレス、防錆加工したトタン板などが挙げられる。
【0014】
スチーム洗浄室3はガス流路2に近接して設けられ、さらに、その内部にはスチームを噴射する複数のスチームノズル3aが設けられており、スチームノズル3aにより、フィルター貫通孔3bを介してスチーム洗浄室3に選択的に露出する光触媒担持フィルター4の他部4bの外周面にスチームを噴射して、貫通させ、光触媒担持フィルター4を洗浄するようになっている。
【0015】
スチーム洗浄時のスチーム温度は100℃以上であるのが好ましく、フィルター洗浄後、フィルターが乾燥しやすく、また、湿度の増加も防ぐことができる。
【0016】
光触媒担持フィルター4は、光触媒としてはアナターゼ型の二酸化チタン微粒子4aと、この二酸化チタン微粒子4aを担持する基材4bからなり、この基材4bは円筒形状をなし、ほぼガス流路2の幅に等しい長さを有し、例えばセラミックスの三次元網目構造(多孔体)からなっている。この基材4bの材質としては、光触媒作用による基材の劣化を防ぐため、炭化ケイ素、ムライト、アルミナ、コージライト、これらの混合物が挙げられる。基材を三次元網目構造にすることにより、表面積が大きく、低圧力損失になる。
【0017】
また、光触媒フィルターの汚れやすい部分(外周面)に窒素を700ppm以上にドープした二酸化チタン微粒子を用いるのが好ましい。さらに好ましくは、7000ppm以上ドープしたものである。これを用いることにより、超親水性になり、スチームにより汚れが簡単に落ちる。なお、上記のような窒素ドープ二酸化チタン微粒子は次のような方法で得られる。例えば、二酸化チタン原料微粒子を、N含有ガスを含む還元性ガス雰囲気下、500℃以上620℃以下で熱処理することにより、二酸化チタンにC、H、Sから選ばれた少なくとも1種類およびNがドープされている二酸化チタン微粒子であって、この二酸化チタン微粒子0.2gを10cm四方に均一層とした試料を容積1lのガスバッグ内に入れ、当初イソプロパノールガス濃度を1500ppm±150ppmとし、上記試料に、紫外線が遮光された蛍光灯光を波長420nmにおける強度0.5mW/cmで1時間照射後、生成したアセトンガス濃度が500ppm以上となる二酸化チタン微粒子を得る。あるいは、二酸化チタン原料微粒子を、N含有ガスを含む還元性ガス雰囲気下、500℃以上620℃以下で熱処理することにより、二酸化チタン成分の含有量が80重量%以上の粒子であって、少なくとも窒素および炭素を各50ppm以上含む2種類以上のアニオンがドープされた、波長400nm以上600nm以下の可視光の照射下において、イソプロパノール酸化活性を示す二酸化チタン微粒子を得る。
【0018】
紫外線光源群5は複数の紫外線光源5aからなり、紫外線光源5aが光触媒担持フィルター4を挟むように、すなわち両者を交互に配置することで効率よく光触媒作用が得られる。また、紫外線光源5aと光触媒担持フィルター4の距離は、可能な限り近い方が好ましく、また、強い光強度を得るために紫外線光源5aの本数は多い方が好ましく、圧力損失、コスト面から適正な本数が決定される。光源としては紫外線を発生するものが好ましく、特に市販されていて容易に入手できるブラックライトが好ましい。そのほか冷陰極管、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、LED発光ダイオードなどが挙げられる。
【0019】
また、上記回転タイプの光触媒担持フィルター4は、ガス流路2及びスチーム洗浄室3間を90°間欠回動するようになっており、図1に示す状態において、例えば90°の角度で分割して説明すると、第1領域4wは、風上側に位置し、第2領域4xはスチーム洗浄室3に位置してスチームノズル3aに対向し、第3領域4yは、風下側に位置し、第4領域4zはスチーム洗浄室3に位置している。
【0020】
次に本第1実施形態の光触媒脱臭装置の使用方法について説明する。
【0021】
図1に示すように、送風機を備えたダクトに組み込まれて使用されるが、送風機の作用により、脱臭すべきガスはガス流入口を通り、塵埃除去フィルター6により、塵埃は除去され、紫外線光源群5によって紫外線が照射されている。
【0022】
光触媒担持フィルター4の上流側の第1領域4wを通過する。このとき脱臭すべきガスは、二酸化チタン微粒子4aが紫外線光を吸収することで化学反応を引き起こして、ガス中の臭い成分を分解し、さらに、紫外線光源群5を通過し、次段の下流側の第3領域4yに達し、同様に、ガス中の臭い成分は分解されて、ガス流出口からケーシング2外に流出される。
【0023】
このような脱臭過程が長時間継続され、脱臭に供した第1領域4wには付着物が堆積し触媒毒となり、光触媒フィルターの能力を低下させる。そこで、光触媒担持フィルター4を90°回動させて、第1領域4wをスチーム洗浄室3に露出させて、スチームノズル3aに対向させる。しかる後、スチームノズル3aから100℃以上のスチームを噴射して触媒担持フィルター4の外周面に吹き付けて、貫通させ、フィルター洗浄を効率よく行う。このとき、100℃以上のスチームを用いることで、フィルターが乾燥しやすく、また、湿度の増加も防止できる。
【0024】
上記回動により、予め洗浄されて光触媒能力を再生させた第2領域4xを次段の第3領域4xに替わって、ケーシング2の下流側に露出させ、スチーム洗浄室3の下部に露出していた第4領域4zを上流側の第1領域4wに替わって、ケーシング2の上流側に露出させる。
【0025】
このとき、第4領域4zは下流側に位置したときに、脱臭作用に供されていたが、上流に位置し汚れやすい第1領域4wに比べて汚れの度合が小さいので、洗浄を経ずに第1領域4wに替えることができる。なお、スチーム洗浄室の下部にスチームノズルを配設し、第4領域を第2領域の洗浄時、同時に洗浄するようにすることもできる。例えば、一定使用時間経過後に上記のような洗浄を繰り返すことにより、光触媒フィルターは再生される。
【0026】
上記のように洗浄が必要な光触媒フィルターを洗浄室に移動して、高温スチームを吹き付けを行い、脱臭装置から取り出すことなく、再生でき、メンテナンスフリーで脱臭装置を運用できる。
【0027】
本実施形態の光触媒脱臭装置によれば、定期的に光触媒フィルターを取り出し、水洗浄、焼成などにより光触媒能力を再生させる必要がなく、容易に光触媒能力を再生させることができる光触媒脱臭装置が実現される。
【0028】
また、本発明の第2実施形態に係る光触媒脱臭装置について説明する。
【0029】
本第2実施形態は、第1実施形態が回転タイプの光触媒担持フィルターを用いるのに対して、板型スライドタイプを用いるものである。
【0030】
例えば、図2に示すように、本第2実施形態の光触媒脱臭装置11は、被脱臭ガスが流れケーシングで形成されるガス流路2と、このガス流路2とスチーム洗浄室3の各々スチームノズル3aを備えた上室3r、下室3s間に摺動自在に設けられ、このガス流路2に一部すなわち第1領域41wが選択的に露出し他部すなわち第2領域41xがスチーム洗浄室3に選択的に露出する第1の光触媒担持フィルター41と、この第1の光触媒担持フィルター41に平行に配設され、ガス流路2、スチーム洗浄室3に第1領域42w、第2領域42xが選択的に露出する第2の光触媒担持フィルター42を備え、これら両フィルター41、42を挟むように紫外線光源5aが設けられている。脱臭に供した両フィルター41、42の第1領域41w、第2領域42xが、再生が必要になると、この第1領域41w、第2領域42xをスチーム洗浄室3に露出させ、スチームノズル3aに対向させる。しかる後、スチームノズル3aから100℃以上のスチームを噴射して触媒担持フィルター4の外周面に吹き付けて、貫通させ、フィルター洗浄を効率よく行う。このとき、100℃以上のスチームを用いることで、フィルターが乾燥しやすく、また、湿度の増加も防止できる。一方の第1領域41w、第2領域42xの再生時、光触媒担持フィルター41、42をスライドさせて、他方の第2領域41x、第1領域42wにより脱臭を行う。なお、風下に設置される第2の光触媒担持フィルター42は、第1の光触媒担持フィルター41に比べて汚れの度合が小さいので、このフィルター41と同様の頻度で再生を行う必要はない。
【0031】
他の構成は図1に示す光触媒脱臭装置と異ならないので、同一符号を付して説明は省略する。
【0032】
本第2実施形態の光触媒脱臭装置も、上述した第1実施形態と同様の効果を奏する。
【実施例】
【0033】
試験: 本発明の光触媒脱臭装置(実施例)及び市販品(比較例)を用いて、光触媒フィルターのアンモニア連続脱臭耐久試験を行う。
【0034】
「実施例」: 図2示すように、光触媒フィルターと紫外線ランプをサンドイッチ構造、主な仕様は以下とし、高温(120℃)スチーム洗浄室(洗浄ノズル上下各2本、計4本)を設けた板型スライドタイプの光触媒脱臭装置を作製した。
脱臭工程と洗浄工程のサイクル:1サイクル/日
フィルター寸法:600×300×10mm … 2枚
紫外線ランプ: 10Wブラックライト … 6本
「比較例」: 市販の光触媒脱臭装置。
【0035】
「条件」: 10ppmのアンモニアガスを連続的に導入し、それぞれの脱臭装置で脱臭試験を行う。
なお、比較例は能力が新品時の80%にまで低下したときにフィルターのメンテナンスを行う。ブランクとして、脱臭装置のない場合も測定した。
【0036】
「結果」: 図3に示す。
図3からもわかるように、実施例が10ppmのアンモニアガスを連続的に約75%除去し、約4ヶ月経過後もメンテナンスなしで能力を持続できた。
これに対して、比較例では、稼動後4、5日は約70%の除去率を維持できたが、次第に除去率は低下していき、約1ケ月後には、除去率約55%にまで低下した。除去率55%は新品時の能力の80%であるので、ここでメンテナンスを行った。その結果、除去率は再び70%に向上した。しかしながら、また約1ケ月後に能力が80%にまで減少した。
このように、実施例はメンテナンスなしで、一定の除去率を維持でき、比較例は、除去率を一定に保つために、1ケ月毎にメンテナンスが必要であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光触媒脱臭装置の概念図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る光触媒脱臭装置の概念図。
【図3】本発明の光触媒脱臭装置を用いたアンモニア連続脱臭耐久試験の結果図。
【符号の説明】
【0038】
1 光触媒脱臭装置
2 ガス流路
3 スチーム洗浄室
3a スチームノズル
3b フィルター貫通孔
4 光触媒担持フィルター
4a 二酸化チタン微粒子
4b 基材
5 紫外線光源群
5a 紫外線光源
6 塵埃除去フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路と、このガス流路内に設けられた光触媒フィルターと、前記ガス流路に近接して設けられ、前記光触媒フィルターを洗浄するスチーム洗浄室と、このスチーム洗浄室に収容され、前記光触媒フィルターに高温スチームを噴射するスチームノズルを備え、前記スチーム洗浄室において、前記スチームノズルにより高温スチームを前記光触媒フィルターに吹き付けて、光触媒能力を再生させることを特徴とする光触媒脱臭装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光触媒脱臭装置において、前記光触媒フィルターを前記ガス流路と前記スチーム洗浄室間で適宜移動させ、前記光触媒フィルターの洗浄工程と光触媒フィルターによる脱臭工程を連続的に行うことを特徴とする光触媒脱臭装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光触媒脱臭装置において、前記光触媒フィルターが汚れやすい部分に窒素を700ppm以上ドープした光触媒フィルターを用いることを特徴とする光触媒脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−14409(P2007−14409A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196358(P2005−196358)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000221122)東芝セラミックス株式会社 (294)
【Fターム(参考)】