光触媒脱臭装置
【課題】光触媒シートの全面で効果的に光触媒を励起させて脱臭性能を長期間維持でき長寿命の光触媒脱臭装置を提供する。
【解決手段】通風孔4を設けた基板5,7を平行に配置し、2枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板5にLED4を実装し、2枚の基板間に、光触媒粒子6Bが担持されたガラス繊維織物6A及び当該織物を支持するフレーム6Cから構成される光触媒シート6を配置し、光触媒シートと2枚の基板を筐体8に固定し、光触媒を励起するためのLED光源の発光面と光触媒シートとを平行に配置して、通風孔から送入された空気が光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置1であって、光触媒シートは、ガラス繊維を束ねて、低風速下での通気が可能な所定の開口率を持つように縦横に織って構成し、光触媒粒子は、光触媒シートのガラス繊維間に機械的に接触保持させたことを特徴とする。
【解決手段】通風孔4を設けた基板5,7を平行に配置し、2枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板5にLED4を実装し、2枚の基板間に、光触媒粒子6Bが担持されたガラス繊維織物6A及び当該織物を支持するフレーム6Cから構成される光触媒シート6を配置し、光触媒シートと2枚の基板を筐体8に固定し、光触媒を励起するためのLED光源の発光面と光触媒シートとを平行に配置して、通風孔から送入された空気が光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置1であって、光触媒シートは、ガラス繊維を束ねて、低風速下での通気が可能な所定の開口率を持つように縦横に織って構成し、光触媒粒子は、光触媒シートのガラス繊維間に機械的に接触保持させたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫の庫内のように空気が低風速で流れる容器内で使用し、光触媒を利用して空気中の臭気成分や有機ガス分子を分解することにより脱臭を行う光触媒脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、居住空間や車内などの所謂、準閉鎖空間における空気の清浄化改善の要望が高まっており、食物から発生し、あるいはタバコ副流煙として発生するアンモニアや、建材などから発生するVOC(揮発性有機物質。例えば、アセトアルデヒド)などを除去する脱臭装置が特に望まれている。
【0003】
従来、この種の脱臭装置には、臭気成分を吸着する吸着材料と当該臭気成分を分解する光触媒材料とを多孔質セラミックス表面層や無機基板に練り込み、若しくは担持したものをハニカム状に形成し、当該ハニカム孔に通風しながら光源から励起光を照射することにより空気の浄化を行う光触媒脱臭装置を採用していた。
【0004】
このような従来の光触媒脱臭装置として、特許第2574840号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。従来例の光触媒脱臭装置は、臭気ガスを吸着するための活性炭上に光触媒の粒子を形成したものをハニカム状に加工した光触媒ユニットを採用し、これに光触媒励起源としてランプからの放射光を照射して光触媒の粒子を活性化させ、それに臭気を含む空気を通風させることによって臭気ガスの分解を行うものである。そして光源としては、蛍光管ランプを使用する場合が多かった。
【0005】
しかしながら、従来の光触媒脱臭装置では、吸着剤としての活性炭上に光触媒の粒子が担持されている光触媒ユニットをハニカム構造としていたために、光触媒の触媒性能(脱臭性能)が十分に発揮できないという技術的課題があった。すなわち、ハニカム構造となっているが故に、光触媒ユニットの正面に配置された光触媒励起源のランプから照射された光がハニカム構造の壁に遮られてしまい、ハニカム孔の内部に光照射強度が低い、従って光触媒活性の低い領域が発生することが不可避となり、脱臭性能を十分高くできない問題点があった。また、活性炭はそれ自体が光を伝播しないので、励起光を照射した場合に活性炭と接触している光触媒の粒子の部分は光触媒の粒子自体の影となってしまい、光触媒粒子の表面積を増加させ、光触媒能を向上させようにもその効果が半減されてしまい、事実上、脱臭能力が制約されてしまう問題点があった。
【0006】
そして、第2の課題として圧力損失が経年的に増加するという別の技術的課題もあった。上の技術的課題を解決するために、励起光源を複数配置することにより、ハニカム構造の壁に遮られて発生する影の領域を減らすことは可能である。しかし、そのようにした場合には、複数の光源が空気が流れるときの流路抵抗となってしまい、圧力損失が増大する結果になる。
【0007】
この圧力損失の増加を避けるために、また、ハニカム構造の壁にできる影の領域を減らすために、ハニカムの壁の厚みを小さくすることが考えられる。しかしながら、その場合には形状安定性が低下し、同時に、光触媒担持量が低下して脱臭性能が低下する別の問題を招いてしまうので、ハニカムの壁の厚みを小さくすることは有効な解決策とはならない。
【0008】
従来技術の第3の課題は、励起光源の短寿命であり、環境負荷が大きいことである。光源として蛍光管ランプを使用する場合が多いが、ランプ寿命が短く、例えば耐久消費財などに利用される場合、通常5年から10年の寿命が必要とされるが、かかる長寿命の蛍光管ランプはコストが非常に高く非実用的である。また、製造段階で蛍光管内に水銀の使用が余儀なくされており、昨今の厳しい環境事情を背景に、製品廃棄の段階での環境負荷に対する課題への対応が困難となっている。
【0009】
このような従来技術の課題を解決するため、蛍光管を使用せず、例えば、高電圧放電によってオゾンや紫外線を発生させ、この紫外線により活性化された光触媒モジュールで空気中に含まれる臭気成分や有害物質などの分解を行い、併せて高電圧放電手段により発生させたオゾンをオゾン分解手段で分解するようにした脱臭装置が提案されている(特許公開2003−339839号公報―参考文献2)。
【0010】
しかしながら、アセトアルデヒドのような臭気ガスを分解するためには、酸化電位のより深い(従って、価電子帯の上限電位のより大きな)触媒反応が必要であり、オゾンによる分解では水と炭酸ガスまでに分解する最終的な完全分解は困難であって、酢酸などの中間酸化物が生成され易く、今度は生成された酢酸が光触媒材料を覆ってしまって分解速度を著しく低下させる原因のとなる問題点がある。また、オゾンそのものの有害性から、残留臭気ガス分解後も、オゾン除去のために二酸化マンガン層などのオゾン分解触媒層を設置しており、コスト高の一因になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2574840号公報
【特許文献2】特開2003−339839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、光触媒の励起光源にLEDを採用し、光触媒ユニットにガラス繊維の光触媒シートを採用することで、励起光源からの光が光触媒ユニットの全体に影を作ることなく照射でき、光触媒シートの全面で効果的に光触媒を励起させて脱臭性能を長期間維持でき、同時に、通過する空気の圧力損失を小さくして庫内を循環する冷気の通過を妨げることもなく、さらに長寿命化が図れる光触媒脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、通風孔を設けた基板を平行に配置し、前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板にLEDを実装し、前記2枚の基板間に、光触媒粒子が担持されたガラス繊維織物及び当該織物を支持するフレームから構成される光触媒シートを配置し、前記光触媒シートと前記2枚の基板を筐体に固定し、前記光触媒を励起するためのLED光源の発光面と前記光触媒シートとを平行に配置して、前記通風孔から送入された空気が前記光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置であって、前記光触媒シートは、ガラス繊維を束ねて構成したもと糸を、低風速下での通気が可能な所定の開口率を持つように縦横に織って構成し、前記光触媒粒子は、前記光触媒シートのガラス繊維間に機械的に接触保持させたことを特徴とするものである。
【0014】
上記の本発明の光触媒脱臭装置においては、前記光触媒シートの開口率を30%〜60%とすることができる。
【0015】
また、上記の本発明の光触媒脱臭装置においては、前記光触媒シートのガラス繊維を、SiO2を50%以上の成分比とする素材で成るものとすることができる。
【0016】
また、上記の本発明の光触媒脱臭装置においては、前記光触媒シートのガラス繊維の直径を、10μm以下とすることができる。
【0017】
さらに、上記の本発明の光触媒脱臭装置においては、風速0.2m〜3m/秒の低風速下で使用するものとすることができる。
【0018】
またさらに、本発明は、通風孔を設けた基板を平行に配置し、前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板にLEDを実装し、前記2枚の基板間に、光触媒粒子が担持されたガラス繊維織物及び当該織物を支持するフレームから構成される光触媒シートを配置し、前記光触媒シートと前記2枚の基板を筐体に固定し、前記光触媒を励起するためのLED光源の発光面と前記光触媒シートとを平行に配置して、前記通風孔から送入された空気が前記光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置であって、前記光触媒シートは、ガラス繊維を整然と束ねた横糸群と、ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群から構成される織物であり、前記光触媒粒子は、前記光触媒シートのガラス繊維間及びガラス繊維上に付着し保持されていることを特徴とするものである。
【0019】
上記の本発明の光触媒脱臭装置においては、前記光触媒シートを構成するガラス繊維は、直径1μm以下の孔を有する多孔質ガラス繊維とすることができる。
【0020】
本発明の光触媒脱臭装置では、LED実装基板上に通風孔を設けたことによって、構造上、励起光源であるLEDを支持すると同時に、空気の流路抵抗を減らす。また、光触媒が担持されたガラス繊維織物及び当該織物を支持するフレームから構成される光触媒シートとLED実装基板と平行に配置したことによって、LED光源からの励起光を最大限に光触媒に吸収させる。
【0021】
さらに、光触媒シートのガラス繊維織物を採用したことにより、LED光源からの励起光がガラス繊維によって影を作り、厚み方向の奥まで届かなくなることを防止し、光触媒シートの全体に対し光量を十分確保し、光触媒を効果的に励起する。
【0022】
またさらに、本発明の光触媒脱臭装置では、ガラス繊維を整然と束ねた横糸群と、ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群とを織物状に織込んだものを光触媒シートとすることにより、光触媒粒子へのガラス密着力が強い。
【0023】
また、一般的に光触媒材料の触媒活性が触媒粒子の粒度の減少と共に高まることが知られているが、ガラス繊維を直径1μm以下の孔を持つ多孔質ガラスとすることにより、触媒活性の高い1μm以下の光触媒粒子を、ガラス繊維に存在する直径1μm以下の孔にトラップし、光触媒粒子のガラス密着力が強められる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光触媒脱臭装置によれば、光触媒の励起光源にLEDを採用し、光触媒ユニットにガラス繊維の光触媒シートを採用することで、励起光源からの光が光触媒ユニットの全体に影を作ることなく照射でき、光触媒シートの全面で効果的に光触媒を励起させて脱臭性能を長期間維持でき、同時に、通過する空気の圧力損失を小さくして庫内を循環する冷気の通過を妨げることもなく、さらに長寿命化が図れる。
【0025】
また、本発明の光触媒脱臭装置によれば、ガラス繊維織物の開口率30%以上60%以下とすることで、30%を切ると光触媒粒子の担持量が増加し脱臭性能は増すものの圧力損失が急激に増大するのを防ぎ、また60%を超えると光触媒担持量が少なくなりすぎて脱臭機能を十分に発揮できなくするのを防ぐことができる。
【0026】
また、本発明の光触媒脱臭装置によれば、光脱臭シートのガラス繊維の組成をSiO2が50%以上の成分とすることで、光の透過性が高まり光がガラス繊維中を十分伝播できるようになり、その結果、微細なガラス繊維間で担持された光触媒の粒子がLED放射光から直接、照射を受けるのと同時に、ガラス繊維中を伝播或いはガラス繊維表面によって反射・散乱された光が光触媒の粒子の裏側まで到達でき、LED励起光を十分に有効活用することができる。
【0027】
また、本発明の光触媒脱臭装置によれば、ガラス繊維の組成をSiO2が50%以上の成分とすることで、シリコンと酸素の二重結合が非常に大きく化学的に安定しているので、例えばバンドギャップが3.2eVのアナタース型TiO2光触媒の粒子が励起光を吸収した時に発生する、強力な酸化還元電位を有する還元電子若しくは酸化正孔による担持材料の劣化への影響を事実上、使用するのに問題のないレベルにすることができる。
【0028】
また、本発明の光触媒脱臭装置によれば、光触媒シートのガラス繊維の直径を10μm以下としたことで、10μmを超えると光触媒の粒子を担持する力が低下し、例えば風速数m/秒の低風速下でもガラス繊維間の隙間から光触媒粒子が脱落してしまうのを防ぎ、長期間にわたり脱臭効果を維持できる。
【0029】
またさらに、本発明の光触媒脱臭装置によれば、ガラス繊維を整然と束ねた横糸群と、ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群とを織物状に織込んだものを光触媒シートとすることによって光触媒シートのガラス繊維への光触媒粒子の密着力を強くでき、例えば風速の高い5m/秒の大型空調機の脱臭装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1〜第3の実施の形態の光触媒脱臭装置を搭載した冷蔵庫の一部破断断面図。
【図2】本発明の第1〜第3の実施の形態の光触媒脱臭装置の一部破断した斜視図。
【図3】本発明の第1〜第3の実施の形態の光触媒脱臭装置の一部省略した断面図。
【図4】本発明の第1〜第3の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シートの正面図。
【図5】本発明の第1、第2の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シート内のガラス繊維織物の拡大図。
【図6】本発明の第1、第2の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シート内のガラス繊維による光触媒粒子の担持状態の顕微鏡写真。
【図7】本発明の第1の実施の形態の光触媒脱臭装置における光触媒シートの開口率と圧力損失・光触媒担持量との関係を示すグラフ。
【図8】本発明の第1の実施の形態の光触媒脱臭装置における光触媒シートのガラス繊維直径と光触媒脱落率との関係を示すグラフ。
【図9】本発明の実施例1の光触媒脱臭装置のアセトアルデヒド分解性能を従来例と対比して示すグラフ。
【図10】本発明の実施例2の光触媒脱臭装置のアンモニア分解性能を従来例と対比して示すグラフ。
【図11】本発明の第3の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シート内のガラス繊維織物の拡大図。
【図12】本発明の第3の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シート内のガラス繊維による光触媒粒子の担持状態の説明図。
【図13】本発明の第3の実施の形態の光触媒脱臭装置における光触媒シートの風速と光触媒脱落率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0032】
[第1の実施の形態]
本発明の1つの実施の形態の光触媒脱臭装置1は、図1に示すように冷蔵庫100の庫内に脱臭のために設置する装置である。冷蔵庫100の庫内では、冷却ファン101にて冷気102は低風速、例えば0.2m/秒〜3m/秒の風速にて庫内を循環する。本実施の形態の光触媒脱臭装置1は、このような低風速下で空気の流れを阻害せず、光触媒により庫内空気を脱臭するために冷気通路103に設置して用いられる。
【0033】
図2〜図4に示すように、本実施の形態の光触媒脱臭装置1は、担持された光触媒の粒子を励起するためのLED3と複数の通風孔4を設け、かつLED3を実装したLED実装基板5、それと略平行に配置された複数の光触媒シート6、LED実装基板5と対向し、略平行に配置された通風孔4を設けた対向基板7、そして、これらの板材の位置を保持し、形状を保持し補強する枠体で成る筐体8から構成されている。本実施の形態にあって、光触媒シート6は3枚、装着されている。
【0034】
筐体8の材料は、紫外線に対する高い耐候性と臭気ガスに耐する変色が少ない観点から、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)でも良いし、さらにはアクリル樹脂であっても特に発臭を抑え重合度を10,000〜15,000程度に高めた材料でも良い。また比較的コストが安価で成型性の良好なABS樹脂(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂)でも良いし、強度向上のためABS樹脂にガラス繊維を混錬させコンパウンドとした強化ABS樹脂でも良い。上記材料は、金型を用い所定の形状になるよう成型される。
【0035】
LED実装基板5は、設置場所の環境に合わせ適切な分布密度で分布するように通風孔4が適数個を設けられたガラスエポキシ基板上に電極パターンをプリントしたもので、かつ、紫外線波長λ=375nm、光量Po=5.8mW、順方向電流30mAのLEDダイ3を実装したものである。
【0036】
このLED実装基板5は、次のようにして作成している。設置場所の環境に合わせ適切な分布密度で分布するように通風孔4が適数個を設けられたガラスエポキシ基板上に電極パターンをプリントし、LEDダイ3を用意し、マウンターで基板の所定の面に配置した後、低融点リフロー炉で240℃、10秒で基板に融着させる。この融着後の基板上のLEDダイ3の基板電極への結線は、ワイヤーボンダー機にてアノード側とカソード側の2本を30μmの金線で行う。さらに、結線後の基板は、LEDダイのP−Nジャンクション保護のため、シリコン樹脂でLEDダイ3ヘポッディングを行い、LED実装基板5としている。
【0037】
LED実装基板5におけるLEDダイ3の搭載個数は、LED1個あたりの光量Poと、光触媒材料を担持したガラス繊維製の光触媒シート6の面積と、光触媒シート6とLED発光面間距離とから割り出して、複数の光触媒シート6のいずれも、その光触媒シート6上での光照射強度が1mW/cm2以上となるよう設計し、10個〜20個とする。
【0038】
光触媒シート6のガラス繊維織物6Aのガラス繊維間に担持させる光触媒6Bは、アナタース型構造の酸化チタン80体積%とルチル型構造の酸化チタン20体積%とから成る酸化チタンTiO2で構成され、約50m2/gの表面積を有し、結晶子径が20nm(粉体の凝集前の粒子径)の材料を出発原料とした。
【0039】
ここで、アナタース型とルチル型の構成相の相分率と結晶子径は、CuのKα線を用いたX線回折法を用い、アナタース型構造酸化チタンとルチル型構造酸化チタンの反射X線の強度比及び反射X線の強度をデバイーシェラーの式に代入しそれぞれ求めた。表面積はBET法に基づく窒素の単分子吸着特性より割り出した。
【0040】
上記光触媒出発原料は、純水で満たされた超音波洗浄機に投入され、光触媒粒子が純水中で十分に分散していることを確認した上で、ガラス繊維織物6Aを浸漬して当該ガラス繊維織物6Aのガラス繊維間に担持させる。尚、本実施の形態では、純水を使用した場合を説明したが、光触媒材料の粒子の分散性を改良するため、分散材(界面活性剤)を0.1%から数%(光触媒材料に対する重量比)を水に混ぜても良いし、臭気ガス吸着特性を改良するために吸着剤を混ぜても良い。ガラス繊維織物6Aへの光触媒材料の目付け量は、ガラス繊維織物6Aから光触媒粒子の脱落性と脱臭性能の確保の観点から、200〜500g/m2となるよう行う。図5にガラス繊維織物6Aの顕微鏡写真、図6にガラス繊維6Aに対する光触媒である酸化チタンの粒子が担持されている状態の顕微鏡写真を示す。
【0041】
ガラス繊維織物6Aに用いるガラス繊維は、直径が約2〜10μmでSiO2成分が50%以上(より好ましくは60%以上)のものが好適で、ガラス繊維の密度は、縦が20本のもと糸、横の密度が18本のもと糸を使用して縦横に織ってガラス繊維織物としている。
【0042】
このガラス繊維織物6Aについては、開口率を20%から約10%刻みで試験した結果、図7のグラフに示すように、開口率が小さいほど光触媒の単位担持量g/m2は大きいが、開口率が30%以下になると圧力損失が増大し、機械的に担持させているだけの光触媒粒子が脱落して急激に脱臭性能が低下するので、開口率は30%以上が好ましい。また、開口率が60%を超えるようになると、光触媒の絶対的な存在量が激減して効果的な脱臭効果が得られなくなる。
【0043】
上記のプロセスで得られた光触媒粒子を担持したガラス繊維織物6Aは、かかる状態では形状の安定性が欠如しているので、図4に示すように、耐光性の高い樹脂からなるフレーム6Cで周囲を押さえて保形し、光触媒シート6としている。
【0044】
上記構成の光触媒脱臭装置1は、図1に示したように例えば、冷蔵庫100内の空気通路103に設置して使用し、LED3を点灯させて発光させ、その光にてガラス繊維織物6Aに担持されている光触媒粒子6Bを励起させ、空気中に含有される臭気物質を分解して脱臭する。
【0045】
以上のように、本実施の形態の光触媒脱臭装置1によれば、光触媒シート6に採用した光透過性のガラス繊維織物6Aにそのガラス繊維間に光触媒粒子6Bを担持させ、LED3を照射して光触媒6Bを励起させて臭気物質を分解させるものであるので、ガラス繊維の光透過性の故にLED3の光を光触媒シート6の全面、表裏両面に到達させて光触媒に照射して励起させることができ、効果的に脱臭できる。また、光源がLEDであるために交換することなく長期間連続使用できる利点もある。
【0046】
また、光触媒シート6の開口率を30%〜60%とすることで、圧力損失を抑えることができる。また、光触媒シート6のガラス繊維を、SiO2を50%以上の成分比とする素材で成るものとしたことにより、光透過性が良好であり、上記のように光触媒シート6の全面、表裏両面に到達させて光触媒に照射して励起させることができ、効果的に脱臭できる。
【0047】
また、図8のグラフに示すように、光触媒シート6のガラス繊維の直径を10μm以上とすれば光触媒のガラス繊維からの脱落が顕著となり光触媒による分解性能が低下するが、10μm以下とすることでガラス繊維間に光触媒の粒子を密度高く効果的に安定して担持させることができて、大きな光触媒作用が得られるようにできる。
【0048】
さらに、本実施の形態の光触媒脱臭装置は、風速0.2m〜3m/秒の低風速下で使用するものであるが、このような低風速下では、ガラス繊維間に光触媒の粒子を単に機械的に担持させた状態でも粒子を空気の流れによって脱落させることなく使用でき、この面からも長期間連続使用が可能となる。
【0049】
さらに、本実施の形態によれば、ガラス繊維間に光触媒の粒子を機械的に担持させるだけであり、粘着あるいは接着させるための薬剤を用いることなく光触媒シートにガラス繊維に光触媒粒子を担持させることができ、製造コストの低下も図れる利点がある。
【0050】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態の光触媒脱臭装置1について説明する。本実施の形態の光触媒脱臭装置1も、図1に示すように冷蔵庫100の庫内に脱臭のために設置する装置である。また、本実施の形態の構造は、第1の実施の形態と同様であり、図2〜図4に示すものであり、担持された光触媒の粒子を励起するためのLED3と複数の通風孔4を設け、かつLED3を実装したLED実装基板5、それと略平行に配置された複数の光触媒シート6、LED実装基板5と対向し、略平行に配置された通風孔4を設けた対向基板7、そして、これらの板材の位置を保持し、形状を保持し補強する枠体で成る筐体8から構成されている。
【0051】
本実施の形態の場合、LED実装基板5に実装するLED3の波長が第1の実施の形態のものとは異なり、近紫外線の可視光の波長λ=405nm、光量Po=6.2mW、順方向電流30mAのLEDダイを実装している。この得手実装基板5の作成方法は、第1の実施の形態と同様である。
【0052】
本実施の形態の場合にも、LED実装基板5におけるLEDダイ3の搭載個数は、LED1個あたりの光量Poと、光触媒材料を担持したガラス繊維製の光触媒シート6の面積と、光触媒シート6とLED発光面間距離とから割り出して、複数の光触媒シート6のいずれも、その光触媒シート6上での光照射強度が1mW/cm2以上となるよう設計し、10個〜20個とする。
【0053】
光触媒シート6のガラス繊維織物6Aのガラス繊維間に担持させる光触媒6Bは、市販の窒素をドーピングし可視光域(紫色、λ=400〜450nm)で触媒活性が知られている市販の可視光型光触媒材料(平均粒度は約2μm。フィッシャー型サブシーブサイザーによる測定)を出発原料とした。この光触媒粒子をガラス繊維織物6Aのガラス繊維間に担持させる方法は、第1の実施の形態と共通である。
【0054】
ガラス繊維織物6Aに用いるガラス繊維は第1の実施の形態と同様であり、直径が約2〜10μmでSiO2成分が50%以上(より好ましくは60%以上)のものが好適で、ガラス繊維の密度は、縦が20本のもと糸、横の密度が18本のもと糸を使用して縦横に織ってガラス繊維織物としている。
【0055】
このガラス繊維織物6Aの開口率も、第1の実施の形態と同様であり、30%以上が好まく、また60%を超えない範囲とする。
【0056】
上記のプロセスで得られた可視光型光触媒の粒子を担持したガラス繊維織物6Aは、かかる状態では形状の安定性が欠如しているので、第1の実施の形態と同様、図4に示したように、耐光性の高い樹脂からなるフレーム6Cで周囲を押さえて保形し、光触媒シート6とする。
【0057】
上記構成の光触媒脱臭装置1は、図1に示したように空気通路103に設置して使用し、LED3を点灯させて発光させ、その光にてガラス繊維織物6Aに担持されている光触媒粒子6Bを励起させ、空気中に含有される臭気物質を分解して脱臭する。本実施の形態では特に、実施例2で説明するようにアンモニア成分を効果的に脱臭する。
【0058】
本実施の形態の光触媒脱臭装置1によっても、第1の実施の形態と同様の作用、効果が得られる。
【実施例1】
【0059】
第1の実施の形態の光触媒脱臭装置を用い、光触媒シートの面積50cm2、光触媒には酸化チタン(アナタース型80%、ルチル型20%)を1g担持させ、紫外線発光のLEDによる光の照射強度2mW/cm2とした光触媒脱臭装置を用い、初期濃度5ppmのアルデヒドが存在する冷蔵庫内で脱臭性能試験を行った。図9のグラフに示すように、従来例の光触媒脱臭装置による脱臭性能と比べると、本実施例1の光触媒脱臭装置の方が約10%程度アルデヒドの分解性能が高いことが確認できた。
【実施例2】
【0060】
第2の実施の形態の光触媒脱臭装置を用い、光触媒シートの面積50cm2、光触媒には可視光光触媒を1.5g担持させ、近紫外線発光のLEDによる光の照射強度2.5mW/cm2とした光触媒脱臭装置を用い、初期濃度20ppmのアンモニアが存在する冷蔵庫内で脱臭性能試験を行った。図10のグラフに示すように、従来例の光触媒脱臭装置による脱臭性能と比べると、開始初期でのアンモニア分解性能が従来例よりも約35%程度高く、また時間が経過した後も約9%程度アンモニアの分解性能が高いことが確認できた。
【0061】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態の光触媒脱臭装置1について説明する。本実施の形態の光触媒脱臭装置1も、図1に示すように冷蔵庫100の庫内に脱臭のために設置する装置である。また、本実施の形態の構造は、第1の実施の形態と同様、図2〜図4に示すものであり、担持された光触媒の粒子を励起するためのLED3と複数の通風孔4を設け、かつLED3を実装したLED実装基板5、それと略平行に配置された複数の光触媒シート6、LED実装基板5と対向し、略平行に配置された通風孔4を設けた対向基板7、そして、これらの板材の位置を保持し、形状を保持し補強する枠体で成る筐体8から構成されている。尚、本実施の形態の光触媒脱臭装置1は、例えば風速5m/秒を超えるような大型空調機の脱臭装置にも適用でき、特に用途が限定されるものではない。
【0062】
本実施の形態の場合、LED実装基板5に実装するLED3の波長は第1の実施の形態のものと同様である。これには、第2の実施の形態のものを採用することもできる。
【0063】
本実施の形態の場合、LED実装基板5におけるLEDダイ3の搭載個数も第1の実施の形態と同様に設計する。光触媒シート6のガラス繊維織物6A1のガラス繊維間及びガラス繊維上に担持させる光触媒6Bも第1の実施の形態と同様である。
【0064】
本実施の形態の特徴は、図11の写真に示すガラス繊維織物6Aにあり、直径1μm以下の孔の多孔質ガラス繊維を用い、かつ、この多孔質ガラス繊維を整然と束ねた横糸群6A1と、多孔質ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群6A2から織物を構成している点にある。ガラス繊維は、市販の多孔質ガラス繊維を用いる。当該ガラス繊維を縦糸15〜20本、横糸10〜20本束ね、織物状に加工してガラス繊維織物6Aとしている。ガラス繊維織物6Aの開口率は、第1の実施の形態と同様、30%以上が好まく、また60%を超えない範囲とする。
【0065】
図12に示すように、このガラス繊維織物6Aをエマルジョン溶液中で10分間、超音波を印加した状態で浸漬することによりガラス繊維間及びガラス繊維上に光触媒粒子6Bを担持させている。この光触媒粒子の担持は、例えば、純水に燐酸を加えPH(水素イオン濃度)を2〜7に調整した水溶液に上記光触媒粒子を加えたエマルジョン溶液に、上のガラス繊維織物6Aを10分間浸漬することにより行う。
【0066】
上記のプロセスで得られた可視光型光触媒の粒子を担持したガラス繊維織物6Aは、かかる状態では形状の安定性が欠如しているので、第1の実施の形態と同様、図4に示したように、耐光性の高い樹脂からなるフレーム6Cで周囲を押さえて保形し、光触媒シート6とする。
【0067】
上記構成の光触媒脱臭装置1は、図1に示したように空気通路103に設置して使用し、LED3を点灯させて発光させ、その光にてガラス繊維織物6Aに担持されている光触媒粒子6Bを励起させ、空気中に含有される臭気物質を分解して脱臭する。本実施の形態では特に、実施例2で説明するようにアンモニア成分を効果的に脱臭する。
【0068】
本実施の形態の光触媒脱臭装置1によれば、ガラス繊維を整然と束ねた横糸群6A1と、ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群6A2とを織物状に織込んだガラス繊維織物6Aを光触媒シート6とすることにより、光触媒微粒子6Bへのガラス密着力が格段に向上する。これはガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群6A2の存在により、乱れたガラス繊維が元の直線状の形状に戻ろうとする力が働き、この復元力が光触媒粒子を抑えることに作用すると思われる。また、一般的に光触媒材料の触媒活性が光触媒粒子の粒度の減少と共に高まることが知られているが、ガラス繊維を直径1μm以下の孔を持つ多孔質ガラスとすることにより、図12に示したように触媒活性の高い1μm以下の光触媒粒子6Bをガラス繊維6Aに存在する直径1μm以下の孔6A3にトラップすることができて、長期間脱落することになく担持でき、光触媒能力を長期間にわたり維持できる。このため、本実施の形態の光触媒脱臭装置は、図1に示したような冷蔵庫に使用できるだけでなく、例えば風速の高い5m/秒の大型空調機にも適用が可能である。
【0069】
図13は、本実施の形態の光触媒脱臭装置における光触媒シート6の風速と光触媒脱落率との関係を示すグラフであり、風速5m/秒に至るまで光触媒粒子の脱落率がほとんど見られないことが確認できた。
【0070】
[その他の実施の形態]
第1〜第3の実施の形態の光触媒脱臭装置1では、光触媒シート6を3枚用い、片側のLED実装基板5から光を照射する構成にしたが、これに限られるものでない。例えば、LED実装基板5は2枚用い、光触媒シート6の表裏両側から光を照射する構成にすることができる。また、それらの場合に、光触媒シート6を1枚あるいは2枚だけ用いることもでき、4枚以上用いることも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 光触媒脱臭装置
3 LED
4 通風孔
5 LED実装基板
6 光触媒シート
6A ガラス繊維(織物)
6A1 横糸
6A2 たて糸
6A3 孔
6B 光触媒粒子
6C フレーム
7 基板
8 筐体
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫の庫内のように空気が低風速で流れる容器内で使用し、光触媒を利用して空気中の臭気成分や有機ガス分子を分解することにより脱臭を行う光触媒脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、居住空間や車内などの所謂、準閉鎖空間における空気の清浄化改善の要望が高まっており、食物から発生し、あるいはタバコ副流煙として発生するアンモニアや、建材などから発生するVOC(揮発性有機物質。例えば、アセトアルデヒド)などを除去する脱臭装置が特に望まれている。
【0003】
従来、この種の脱臭装置には、臭気成分を吸着する吸着材料と当該臭気成分を分解する光触媒材料とを多孔質セラミックス表面層や無機基板に練り込み、若しくは担持したものをハニカム状に形成し、当該ハニカム孔に通風しながら光源から励起光を照射することにより空気の浄化を行う光触媒脱臭装置を採用していた。
【0004】
このような従来の光触媒脱臭装置として、特許第2574840号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。従来例の光触媒脱臭装置は、臭気ガスを吸着するための活性炭上に光触媒の粒子を形成したものをハニカム状に加工した光触媒ユニットを採用し、これに光触媒励起源としてランプからの放射光を照射して光触媒の粒子を活性化させ、それに臭気を含む空気を通風させることによって臭気ガスの分解を行うものである。そして光源としては、蛍光管ランプを使用する場合が多かった。
【0005】
しかしながら、従来の光触媒脱臭装置では、吸着剤としての活性炭上に光触媒の粒子が担持されている光触媒ユニットをハニカム構造としていたために、光触媒の触媒性能(脱臭性能)が十分に発揮できないという技術的課題があった。すなわち、ハニカム構造となっているが故に、光触媒ユニットの正面に配置された光触媒励起源のランプから照射された光がハニカム構造の壁に遮られてしまい、ハニカム孔の内部に光照射強度が低い、従って光触媒活性の低い領域が発生することが不可避となり、脱臭性能を十分高くできない問題点があった。また、活性炭はそれ自体が光を伝播しないので、励起光を照射した場合に活性炭と接触している光触媒の粒子の部分は光触媒の粒子自体の影となってしまい、光触媒粒子の表面積を増加させ、光触媒能を向上させようにもその効果が半減されてしまい、事実上、脱臭能力が制約されてしまう問題点があった。
【0006】
そして、第2の課題として圧力損失が経年的に増加するという別の技術的課題もあった。上の技術的課題を解決するために、励起光源を複数配置することにより、ハニカム構造の壁に遮られて発生する影の領域を減らすことは可能である。しかし、そのようにした場合には、複数の光源が空気が流れるときの流路抵抗となってしまい、圧力損失が増大する結果になる。
【0007】
この圧力損失の増加を避けるために、また、ハニカム構造の壁にできる影の領域を減らすために、ハニカムの壁の厚みを小さくすることが考えられる。しかしながら、その場合には形状安定性が低下し、同時に、光触媒担持量が低下して脱臭性能が低下する別の問題を招いてしまうので、ハニカムの壁の厚みを小さくすることは有効な解決策とはならない。
【0008】
従来技術の第3の課題は、励起光源の短寿命であり、環境負荷が大きいことである。光源として蛍光管ランプを使用する場合が多いが、ランプ寿命が短く、例えば耐久消費財などに利用される場合、通常5年から10年の寿命が必要とされるが、かかる長寿命の蛍光管ランプはコストが非常に高く非実用的である。また、製造段階で蛍光管内に水銀の使用が余儀なくされており、昨今の厳しい環境事情を背景に、製品廃棄の段階での環境負荷に対する課題への対応が困難となっている。
【0009】
このような従来技術の課題を解決するため、蛍光管を使用せず、例えば、高電圧放電によってオゾンや紫外線を発生させ、この紫外線により活性化された光触媒モジュールで空気中に含まれる臭気成分や有害物質などの分解を行い、併せて高電圧放電手段により発生させたオゾンをオゾン分解手段で分解するようにした脱臭装置が提案されている(特許公開2003−339839号公報―参考文献2)。
【0010】
しかしながら、アセトアルデヒドのような臭気ガスを分解するためには、酸化電位のより深い(従って、価電子帯の上限電位のより大きな)触媒反応が必要であり、オゾンによる分解では水と炭酸ガスまでに分解する最終的な完全分解は困難であって、酢酸などの中間酸化物が生成され易く、今度は生成された酢酸が光触媒材料を覆ってしまって分解速度を著しく低下させる原因のとなる問題点がある。また、オゾンそのものの有害性から、残留臭気ガス分解後も、オゾン除去のために二酸化マンガン層などのオゾン分解触媒層を設置しており、コスト高の一因になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2574840号公報
【特許文献2】特開2003−339839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、光触媒の励起光源にLEDを採用し、光触媒ユニットにガラス繊維の光触媒シートを採用することで、励起光源からの光が光触媒ユニットの全体に影を作ることなく照射でき、光触媒シートの全面で効果的に光触媒を励起させて脱臭性能を長期間維持でき、同時に、通過する空気の圧力損失を小さくして庫内を循環する冷気の通過を妨げることもなく、さらに長寿命化が図れる光触媒脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、通風孔を設けた基板を平行に配置し、前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板にLEDを実装し、前記2枚の基板間に、光触媒粒子が担持されたガラス繊維織物及び当該織物を支持するフレームから構成される光触媒シートを配置し、前記光触媒シートと前記2枚の基板を筐体に固定し、前記光触媒を励起するためのLED光源の発光面と前記光触媒シートとを平行に配置して、前記通風孔から送入された空気が前記光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置であって、前記光触媒シートは、ガラス繊維を束ねて構成したもと糸を、低風速下での通気が可能な所定の開口率を持つように縦横に織って構成し、前記光触媒粒子は、前記光触媒シートのガラス繊維間に機械的に接触保持させたことを特徴とするものである。
【0014】
上記の本発明の光触媒脱臭装置においては、前記光触媒シートの開口率を30%〜60%とすることができる。
【0015】
また、上記の本発明の光触媒脱臭装置においては、前記光触媒シートのガラス繊維を、SiO2を50%以上の成分比とする素材で成るものとすることができる。
【0016】
また、上記の本発明の光触媒脱臭装置においては、前記光触媒シートのガラス繊維の直径を、10μm以下とすることができる。
【0017】
さらに、上記の本発明の光触媒脱臭装置においては、風速0.2m〜3m/秒の低風速下で使用するものとすることができる。
【0018】
またさらに、本発明は、通風孔を設けた基板を平行に配置し、前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板にLEDを実装し、前記2枚の基板間に、光触媒粒子が担持されたガラス繊維織物及び当該織物を支持するフレームから構成される光触媒シートを配置し、前記光触媒シートと前記2枚の基板を筐体に固定し、前記光触媒を励起するためのLED光源の発光面と前記光触媒シートとを平行に配置して、前記通風孔から送入された空気が前記光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置であって、前記光触媒シートは、ガラス繊維を整然と束ねた横糸群と、ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群から構成される織物であり、前記光触媒粒子は、前記光触媒シートのガラス繊維間及びガラス繊維上に付着し保持されていることを特徴とするものである。
【0019】
上記の本発明の光触媒脱臭装置においては、前記光触媒シートを構成するガラス繊維は、直径1μm以下の孔を有する多孔質ガラス繊維とすることができる。
【0020】
本発明の光触媒脱臭装置では、LED実装基板上に通風孔を設けたことによって、構造上、励起光源であるLEDを支持すると同時に、空気の流路抵抗を減らす。また、光触媒が担持されたガラス繊維織物及び当該織物を支持するフレームから構成される光触媒シートとLED実装基板と平行に配置したことによって、LED光源からの励起光を最大限に光触媒に吸収させる。
【0021】
さらに、光触媒シートのガラス繊維織物を採用したことにより、LED光源からの励起光がガラス繊維によって影を作り、厚み方向の奥まで届かなくなることを防止し、光触媒シートの全体に対し光量を十分確保し、光触媒を効果的に励起する。
【0022】
またさらに、本発明の光触媒脱臭装置では、ガラス繊維を整然と束ねた横糸群と、ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群とを織物状に織込んだものを光触媒シートとすることにより、光触媒粒子へのガラス密着力が強い。
【0023】
また、一般的に光触媒材料の触媒活性が触媒粒子の粒度の減少と共に高まることが知られているが、ガラス繊維を直径1μm以下の孔を持つ多孔質ガラスとすることにより、触媒活性の高い1μm以下の光触媒粒子を、ガラス繊維に存在する直径1μm以下の孔にトラップし、光触媒粒子のガラス密着力が強められる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光触媒脱臭装置によれば、光触媒の励起光源にLEDを採用し、光触媒ユニットにガラス繊維の光触媒シートを採用することで、励起光源からの光が光触媒ユニットの全体に影を作ることなく照射でき、光触媒シートの全面で効果的に光触媒を励起させて脱臭性能を長期間維持でき、同時に、通過する空気の圧力損失を小さくして庫内を循環する冷気の通過を妨げることもなく、さらに長寿命化が図れる。
【0025】
また、本発明の光触媒脱臭装置によれば、ガラス繊維織物の開口率30%以上60%以下とすることで、30%を切ると光触媒粒子の担持量が増加し脱臭性能は増すものの圧力損失が急激に増大するのを防ぎ、また60%を超えると光触媒担持量が少なくなりすぎて脱臭機能を十分に発揮できなくするのを防ぐことができる。
【0026】
また、本発明の光触媒脱臭装置によれば、光脱臭シートのガラス繊維の組成をSiO2が50%以上の成分とすることで、光の透過性が高まり光がガラス繊維中を十分伝播できるようになり、その結果、微細なガラス繊維間で担持された光触媒の粒子がLED放射光から直接、照射を受けるのと同時に、ガラス繊維中を伝播或いはガラス繊維表面によって反射・散乱された光が光触媒の粒子の裏側まで到達でき、LED励起光を十分に有効活用することができる。
【0027】
また、本発明の光触媒脱臭装置によれば、ガラス繊維の組成をSiO2が50%以上の成分とすることで、シリコンと酸素の二重結合が非常に大きく化学的に安定しているので、例えばバンドギャップが3.2eVのアナタース型TiO2光触媒の粒子が励起光を吸収した時に発生する、強力な酸化還元電位を有する還元電子若しくは酸化正孔による担持材料の劣化への影響を事実上、使用するのに問題のないレベルにすることができる。
【0028】
また、本発明の光触媒脱臭装置によれば、光触媒シートのガラス繊維の直径を10μm以下としたことで、10μmを超えると光触媒の粒子を担持する力が低下し、例えば風速数m/秒の低風速下でもガラス繊維間の隙間から光触媒粒子が脱落してしまうのを防ぎ、長期間にわたり脱臭効果を維持できる。
【0029】
またさらに、本発明の光触媒脱臭装置によれば、ガラス繊維を整然と束ねた横糸群と、ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群とを織物状に織込んだものを光触媒シートとすることによって光触媒シートのガラス繊維への光触媒粒子の密着力を強くでき、例えば風速の高い5m/秒の大型空調機の脱臭装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1〜第3の実施の形態の光触媒脱臭装置を搭載した冷蔵庫の一部破断断面図。
【図2】本発明の第1〜第3の実施の形態の光触媒脱臭装置の一部破断した斜視図。
【図3】本発明の第1〜第3の実施の形態の光触媒脱臭装置の一部省略した断面図。
【図4】本発明の第1〜第3の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シートの正面図。
【図5】本発明の第1、第2の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シート内のガラス繊維織物の拡大図。
【図6】本発明の第1、第2の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シート内のガラス繊維による光触媒粒子の担持状態の顕微鏡写真。
【図7】本発明の第1の実施の形態の光触媒脱臭装置における光触媒シートの開口率と圧力損失・光触媒担持量との関係を示すグラフ。
【図8】本発明の第1の実施の形態の光触媒脱臭装置における光触媒シートのガラス繊維直径と光触媒脱落率との関係を示すグラフ。
【図9】本発明の実施例1の光触媒脱臭装置のアセトアルデヒド分解性能を従来例と対比して示すグラフ。
【図10】本発明の実施例2の光触媒脱臭装置のアンモニア分解性能を従来例と対比して示すグラフ。
【図11】本発明の第3の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シート内のガラス繊維織物の拡大図。
【図12】本発明の第3の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シート内のガラス繊維による光触媒粒子の担持状態の説明図。
【図13】本発明の第3の実施の形態の光触媒脱臭装置における光触媒シートの風速と光触媒脱落率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0032】
[第1の実施の形態]
本発明の1つの実施の形態の光触媒脱臭装置1は、図1に示すように冷蔵庫100の庫内に脱臭のために設置する装置である。冷蔵庫100の庫内では、冷却ファン101にて冷気102は低風速、例えば0.2m/秒〜3m/秒の風速にて庫内を循環する。本実施の形態の光触媒脱臭装置1は、このような低風速下で空気の流れを阻害せず、光触媒により庫内空気を脱臭するために冷気通路103に設置して用いられる。
【0033】
図2〜図4に示すように、本実施の形態の光触媒脱臭装置1は、担持された光触媒の粒子を励起するためのLED3と複数の通風孔4を設け、かつLED3を実装したLED実装基板5、それと略平行に配置された複数の光触媒シート6、LED実装基板5と対向し、略平行に配置された通風孔4を設けた対向基板7、そして、これらの板材の位置を保持し、形状を保持し補強する枠体で成る筐体8から構成されている。本実施の形態にあって、光触媒シート6は3枚、装着されている。
【0034】
筐体8の材料は、紫外線に対する高い耐候性と臭気ガスに耐する変色が少ない観点から、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)でも良いし、さらにはアクリル樹脂であっても特に発臭を抑え重合度を10,000〜15,000程度に高めた材料でも良い。また比較的コストが安価で成型性の良好なABS樹脂(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂)でも良いし、強度向上のためABS樹脂にガラス繊維を混錬させコンパウンドとした強化ABS樹脂でも良い。上記材料は、金型を用い所定の形状になるよう成型される。
【0035】
LED実装基板5は、設置場所の環境に合わせ適切な分布密度で分布するように通風孔4が適数個を設けられたガラスエポキシ基板上に電極パターンをプリントしたもので、かつ、紫外線波長λ=375nm、光量Po=5.8mW、順方向電流30mAのLEDダイ3を実装したものである。
【0036】
このLED実装基板5は、次のようにして作成している。設置場所の環境に合わせ適切な分布密度で分布するように通風孔4が適数個を設けられたガラスエポキシ基板上に電極パターンをプリントし、LEDダイ3を用意し、マウンターで基板の所定の面に配置した後、低融点リフロー炉で240℃、10秒で基板に融着させる。この融着後の基板上のLEDダイ3の基板電極への結線は、ワイヤーボンダー機にてアノード側とカソード側の2本を30μmの金線で行う。さらに、結線後の基板は、LEDダイのP−Nジャンクション保護のため、シリコン樹脂でLEDダイ3ヘポッディングを行い、LED実装基板5としている。
【0037】
LED実装基板5におけるLEDダイ3の搭載個数は、LED1個あたりの光量Poと、光触媒材料を担持したガラス繊維製の光触媒シート6の面積と、光触媒シート6とLED発光面間距離とから割り出して、複数の光触媒シート6のいずれも、その光触媒シート6上での光照射強度が1mW/cm2以上となるよう設計し、10個〜20個とする。
【0038】
光触媒シート6のガラス繊維織物6Aのガラス繊維間に担持させる光触媒6Bは、アナタース型構造の酸化チタン80体積%とルチル型構造の酸化チタン20体積%とから成る酸化チタンTiO2で構成され、約50m2/gの表面積を有し、結晶子径が20nm(粉体の凝集前の粒子径)の材料を出発原料とした。
【0039】
ここで、アナタース型とルチル型の構成相の相分率と結晶子径は、CuのKα線を用いたX線回折法を用い、アナタース型構造酸化チタンとルチル型構造酸化チタンの反射X線の強度比及び反射X線の強度をデバイーシェラーの式に代入しそれぞれ求めた。表面積はBET法に基づく窒素の単分子吸着特性より割り出した。
【0040】
上記光触媒出発原料は、純水で満たされた超音波洗浄機に投入され、光触媒粒子が純水中で十分に分散していることを確認した上で、ガラス繊維織物6Aを浸漬して当該ガラス繊維織物6Aのガラス繊維間に担持させる。尚、本実施の形態では、純水を使用した場合を説明したが、光触媒材料の粒子の分散性を改良するため、分散材(界面活性剤)を0.1%から数%(光触媒材料に対する重量比)を水に混ぜても良いし、臭気ガス吸着特性を改良するために吸着剤を混ぜても良い。ガラス繊維織物6Aへの光触媒材料の目付け量は、ガラス繊維織物6Aから光触媒粒子の脱落性と脱臭性能の確保の観点から、200〜500g/m2となるよう行う。図5にガラス繊維織物6Aの顕微鏡写真、図6にガラス繊維6Aに対する光触媒である酸化チタンの粒子が担持されている状態の顕微鏡写真を示す。
【0041】
ガラス繊維織物6Aに用いるガラス繊維は、直径が約2〜10μmでSiO2成分が50%以上(より好ましくは60%以上)のものが好適で、ガラス繊維の密度は、縦が20本のもと糸、横の密度が18本のもと糸を使用して縦横に織ってガラス繊維織物としている。
【0042】
このガラス繊維織物6Aについては、開口率を20%から約10%刻みで試験した結果、図7のグラフに示すように、開口率が小さいほど光触媒の単位担持量g/m2は大きいが、開口率が30%以下になると圧力損失が増大し、機械的に担持させているだけの光触媒粒子が脱落して急激に脱臭性能が低下するので、開口率は30%以上が好ましい。また、開口率が60%を超えるようになると、光触媒の絶対的な存在量が激減して効果的な脱臭効果が得られなくなる。
【0043】
上記のプロセスで得られた光触媒粒子を担持したガラス繊維織物6Aは、かかる状態では形状の安定性が欠如しているので、図4に示すように、耐光性の高い樹脂からなるフレーム6Cで周囲を押さえて保形し、光触媒シート6としている。
【0044】
上記構成の光触媒脱臭装置1は、図1に示したように例えば、冷蔵庫100内の空気通路103に設置して使用し、LED3を点灯させて発光させ、その光にてガラス繊維織物6Aに担持されている光触媒粒子6Bを励起させ、空気中に含有される臭気物質を分解して脱臭する。
【0045】
以上のように、本実施の形態の光触媒脱臭装置1によれば、光触媒シート6に採用した光透過性のガラス繊維織物6Aにそのガラス繊維間に光触媒粒子6Bを担持させ、LED3を照射して光触媒6Bを励起させて臭気物質を分解させるものであるので、ガラス繊維の光透過性の故にLED3の光を光触媒シート6の全面、表裏両面に到達させて光触媒に照射して励起させることができ、効果的に脱臭できる。また、光源がLEDであるために交換することなく長期間連続使用できる利点もある。
【0046】
また、光触媒シート6の開口率を30%〜60%とすることで、圧力損失を抑えることができる。また、光触媒シート6のガラス繊維を、SiO2を50%以上の成分比とする素材で成るものとしたことにより、光透過性が良好であり、上記のように光触媒シート6の全面、表裏両面に到達させて光触媒に照射して励起させることができ、効果的に脱臭できる。
【0047】
また、図8のグラフに示すように、光触媒シート6のガラス繊維の直径を10μm以上とすれば光触媒のガラス繊維からの脱落が顕著となり光触媒による分解性能が低下するが、10μm以下とすることでガラス繊維間に光触媒の粒子を密度高く効果的に安定して担持させることができて、大きな光触媒作用が得られるようにできる。
【0048】
さらに、本実施の形態の光触媒脱臭装置は、風速0.2m〜3m/秒の低風速下で使用するものであるが、このような低風速下では、ガラス繊維間に光触媒の粒子を単に機械的に担持させた状態でも粒子を空気の流れによって脱落させることなく使用でき、この面からも長期間連続使用が可能となる。
【0049】
さらに、本実施の形態によれば、ガラス繊維間に光触媒の粒子を機械的に担持させるだけであり、粘着あるいは接着させるための薬剤を用いることなく光触媒シートにガラス繊維に光触媒粒子を担持させることができ、製造コストの低下も図れる利点がある。
【0050】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態の光触媒脱臭装置1について説明する。本実施の形態の光触媒脱臭装置1も、図1に示すように冷蔵庫100の庫内に脱臭のために設置する装置である。また、本実施の形態の構造は、第1の実施の形態と同様であり、図2〜図4に示すものであり、担持された光触媒の粒子を励起するためのLED3と複数の通風孔4を設け、かつLED3を実装したLED実装基板5、それと略平行に配置された複数の光触媒シート6、LED実装基板5と対向し、略平行に配置された通風孔4を設けた対向基板7、そして、これらの板材の位置を保持し、形状を保持し補強する枠体で成る筐体8から構成されている。
【0051】
本実施の形態の場合、LED実装基板5に実装するLED3の波長が第1の実施の形態のものとは異なり、近紫外線の可視光の波長λ=405nm、光量Po=6.2mW、順方向電流30mAのLEDダイを実装している。この得手実装基板5の作成方法は、第1の実施の形態と同様である。
【0052】
本実施の形態の場合にも、LED実装基板5におけるLEDダイ3の搭載個数は、LED1個あたりの光量Poと、光触媒材料を担持したガラス繊維製の光触媒シート6の面積と、光触媒シート6とLED発光面間距離とから割り出して、複数の光触媒シート6のいずれも、その光触媒シート6上での光照射強度が1mW/cm2以上となるよう設計し、10個〜20個とする。
【0053】
光触媒シート6のガラス繊維織物6Aのガラス繊維間に担持させる光触媒6Bは、市販の窒素をドーピングし可視光域(紫色、λ=400〜450nm)で触媒活性が知られている市販の可視光型光触媒材料(平均粒度は約2μm。フィッシャー型サブシーブサイザーによる測定)を出発原料とした。この光触媒粒子をガラス繊維織物6Aのガラス繊維間に担持させる方法は、第1の実施の形態と共通である。
【0054】
ガラス繊維織物6Aに用いるガラス繊維は第1の実施の形態と同様であり、直径が約2〜10μmでSiO2成分が50%以上(より好ましくは60%以上)のものが好適で、ガラス繊維の密度は、縦が20本のもと糸、横の密度が18本のもと糸を使用して縦横に織ってガラス繊維織物としている。
【0055】
このガラス繊維織物6Aの開口率も、第1の実施の形態と同様であり、30%以上が好まく、また60%を超えない範囲とする。
【0056】
上記のプロセスで得られた可視光型光触媒の粒子を担持したガラス繊維織物6Aは、かかる状態では形状の安定性が欠如しているので、第1の実施の形態と同様、図4に示したように、耐光性の高い樹脂からなるフレーム6Cで周囲を押さえて保形し、光触媒シート6とする。
【0057】
上記構成の光触媒脱臭装置1は、図1に示したように空気通路103に設置して使用し、LED3を点灯させて発光させ、その光にてガラス繊維織物6Aに担持されている光触媒粒子6Bを励起させ、空気中に含有される臭気物質を分解して脱臭する。本実施の形態では特に、実施例2で説明するようにアンモニア成分を効果的に脱臭する。
【0058】
本実施の形態の光触媒脱臭装置1によっても、第1の実施の形態と同様の作用、効果が得られる。
【実施例1】
【0059】
第1の実施の形態の光触媒脱臭装置を用い、光触媒シートの面積50cm2、光触媒には酸化チタン(アナタース型80%、ルチル型20%)を1g担持させ、紫外線発光のLEDによる光の照射強度2mW/cm2とした光触媒脱臭装置を用い、初期濃度5ppmのアルデヒドが存在する冷蔵庫内で脱臭性能試験を行った。図9のグラフに示すように、従来例の光触媒脱臭装置による脱臭性能と比べると、本実施例1の光触媒脱臭装置の方が約10%程度アルデヒドの分解性能が高いことが確認できた。
【実施例2】
【0060】
第2の実施の形態の光触媒脱臭装置を用い、光触媒シートの面積50cm2、光触媒には可視光光触媒を1.5g担持させ、近紫外線発光のLEDによる光の照射強度2.5mW/cm2とした光触媒脱臭装置を用い、初期濃度20ppmのアンモニアが存在する冷蔵庫内で脱臭性能試験を行った。図10のグラフに示すように、従来例の光触媒脱臭装置による脱臭性能と比べると、開始初期でのアンモニア分解性能が従来例よりも約35%程度高く、また時間が経過した後も約9%程度アンモニアの分解性能が高いことが確認できた。
【0061】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態の光触媒脱臭装置1について説明する。本実施の形態の光触媒脱臭装置1も、図1に示すように冷蔵庫100の庫内に脱臭のために設置する装置である。また、本実施の形態の構造は、第1の実施の形態と同様、図2〜図4に示すものであり、担持された光触媒の粒子を励起するためのLED3と複数の通風孔4を設け、かつLED3を実装したLED実装基板5、それと略平行に配置された複数の光触媒シート6、LED実装基板5と対向し、略平行に配置された通風孔4を設けた対向基板7、そして、これらの板材の位置を保持し、形状を保持し補強する枠体で成る筐体8から構成されている。尚、本実施の形態の光触媒脱臭装置1は、例えば風速5m/秒を超えるような大型空調機の脱臭装置にも適用でき、特に用途が限定されるものではない。
【0062】
本実施の形態の場合、LED実装基板5に実装するLED3の波長は第1の実施の形態のものと同様である。これには、第2の実施の形態のものを採用することもできる。
【0063】
本実施の形態の場合、LED実装基板5におけるLEDダイ3の搭載個数も第1の実施の形態と同様に設計する。光触媒シート6のガラス繊維織物6A1のガラス繊維間及びガラス繊維上に担持させる光触媒6Bも第1の実施の形態と同様である。
【0064】
本実施の形態の特徴は、図11の写真に示すガラス繊維織物6Aにあり、直径1μm以下の孔の多孔質ガラス繊維を用い、かつ、この多孔質ガラス繊維を整然と束ねた横糸群6A1と、多孔質ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群6A2から織物を構成している点にある。ガラス繊維は、市販の多孔質ガラス繊維を用いる。当該ガラス繊維を縦糸15〜20本、横糸10〜20本束ね、織物状に加工してガラス繊維織物6Aとしている。ガラス繊維織物6Aの開口率は、第1の実施の形態と同様、30%以上が好まく、また60%を超えない範囲とする。
【0065】
図12に示すように、このガラス繊維織物6Aをエマルジョン溶液中で10分間、超音波を印加した状態で浸漬することによりガラス繊維間及びガラス繊維上に光触媒粒子6Bを担持させている。この光触媒粒子の担持は、例えば、純水に燐酸を加えPH(水素イオン濃度)を2〜7に調整した水溶液に上記光触媒粒子を加えたエマルジョン溶液に、上のガラス繊維織物6Aを10分間浸漬することにより行う。
【0066】
上記のプロセスで得られた可視光型光触媒の粒子を担持したガラス繊維織物6Aは、かかる状態では形状の安定性が欠如しているので、第1の実施の形態と同様、図4に示したように、耐光性の高い樹脂からなるフレーム6Cで周囲を押さえて保形し、光触媒シート6とする。
【0067】
上記構成の光触媒脱臭装置1は、図1に示したように空気通路103に設置して使用し、LED3を点灯させて発光させ、その光にてガラス繊維織物6Aに担持されている光触媒粒子6Bを励起させ、空気中に含有される臭気物質を分解して脱臭する。本実施の形態では特に、実施例2で説明するようにアンモニア成分を効果的に脱臭する。
【0068】
本実施の形態の光触媒脱臭装置1によれば、ガラス繊維を整然と束ねた横糸群6A1と、ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群6A2とを織物状に織込んだガラス繊維織物6Aを光触媒シート6とすることにより、光触媒微粒子6Bへのガラス密着力が格段に向上する。これはガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群6A2の存在により、乱れたガラス繊維が元の直線状の形状に戻ろうとする力が働き、この復元力が光触媒粒子を抑えることに作用すると思われる。また、一般的に光触媒材料の触媒活性が光触媒粒子の粒度の減少と共に高まることが知られているが、ガラス繊維を直径1μm以下の孔を持つ多孔質ガラスとすることにより、図12に示したように触媒活性の高い1μm以下の光触媒粒子6Bをガラス繊維6Aに存在する直径1μm以下の孔6A3にトラップすることができて、長期間脱落することになく担持でき、光触媒能力を長期間にわたり維持できる。このため、本実施の形態の光触媒脱臭装置は、図1に示したような冷蔵庫に使用できるだけでなく、例えば風速の高い5m/秒の大型空調機にも適用が可能である。
【0069】
図13は、本実施の形態の光触媒脱臭装置における光触媒シート6の風速と光触媒脱落率との関係を示すグラフであり、風速5m/秒に至るまで光触媒粒子の脱落率がほとんど見られないことが確認できた。
【0070】
[その他の実施の形態]
第1〜第3の実施の形態の光触媒脱臭装置1では、光触媒シート6を3枚用い、片側のLED実装基板5から光を照射する構成にしたが、これに限られるものでない。例えば、LED実装基板5は2枚用い、光触媒シート6の表裏両側から光を照射する構成にすることができる。また、それらの場合に、光触媒シート6を1枚あるいは2枚だけ用いることもでき、4枚以上用いることも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 光触媒脱臭装置
3 LED
4 通風孔
5 LED実装基板
6 光触媒シート
6A ガラス繊維(織物)
6A1 横糸
6A2 たて糸
6A3 孔
6B 光触媒粒子
6C フレーム
7 基板
8 筐体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風孔を設けた基板を平行に配置し、前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板にLEDを実装し、前記2枚の基板間に、光触媒粒子が担持されたガラス繊維織物及び当該織物を支持するフレームから構成される光触媒シートを配置し、前記光触媒シートと前記2枚の基板を筐体に固定し、前記光触媒を励起するためのLED光源の発光面と前記光触媒シートとを平行に配置して、前記通風孔から送入された空気が前記光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置であって、
前記光触媒シートは、ガラス繊維を束ねて構成したもと糸を、低風速下での通気が可能な所定の開口率を持つように縦横に織って構成し、
前記光触媒粒子は、前記光触媒シートのガラス繊維間に機械的に接触保持させてあることを特徴とする光触媒脱臭装置。
【請求項2】
前記光触媒シートの開口率は、30%〜60%であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒脱臭装置。
【請求項3】
前記光触媒シートのガラス繊維は、SiO2を50%以上の成分比とする素材で成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒脱臭装置。
【請求項4】
前記光触媒シートのガラス繊維の直径は、10μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒脱臭装置。
【請求項5】
風速0.2m〜3m/秒の低風速下で使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒脱臭装置。
【請求項6】
通風孔を設けた基板を平行に配置し、前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板にLEDを実装し、前記2枚の基板間に、光触媒粒子が担持されたガラス繊維織物及び当該織物を支持するフレームから構成される光触媒シートを配置し、前記光触媒シートと前記2枚の基板を筐体に固定し、前記光触媒を励起するためのLED光源の発光面と前記光触媒シートとを平行に配置して、前記通風孔から送入された空気が前記光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置であって、
前記光触媒シートは、ガラス繊維を整然と束ねた横糸群と、ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群から構成される織物であって、
前記光触媒粒子は、前記光触媒シートのガラス繊維間及びガラス繊維上に付着し保持されていることを特徴とする光触媒脱臭装置。
【請求項7】
前記光触媒シートを構成するガラス繊維は、直径1μm以下の孔を有する多孔質ガラス繊維であることを特徴とする請求項6に記載の光触媒脱臭装置。
【請求項1】
通風孔を設けた基板を平行に配置し、前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板にLEDを実装し、前記2枚の基板間に、光触媒粒子が担持されたガラス繊維織物及び当該織物を支持するフレームから構成される光触媒シートを配置し、前記光触媒シートと前記2枚の基板を筐体に固定し、前記光触媒を励起するためのLED光源の発光面と前記光触媒シートとを平行に配置して、前記通風孔から送入された空気が前記光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置であって、
前記光触媒シートは、ガラス繊維を束ねて構成したもと糸を、低風速下での通気が可能な所定の開口率を持つように縦横に織って構成し、
前記光触媒粒子は、前記光触媒シートのガラス繊維間に機械的に接触保持させてあることを特徴とする光触媒脱臭装置。
【請求項2】
前記光触媒シートの開口率は、30%〜60%であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒脱臭装置。
【請求項3】
前記光触媒シートのガラス繊維は、SiO2を50%以上の成分比とする素材で成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒脱臭装置。
【請求項4】
前記光触媒シートのガラス繊維の直径は、10μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒脱臭装置。
【請求項5】
風速0.2m〜3m/秒の低風速下で使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒脱臭装置。
【請求項6】
通風孔を設けた基板を平行に配置し、前記2枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板にLEDを実装し、前記2枚の基板間に、光触媒粒子が担持されたガラス繊維織物及び当該織物を支持するフレームから構成される光触媒シートを配置し、前記光触媒シートと前記2枚の基板を筐体に固定し、前記光触媒を励起するためのLED光源の発光面と前記光触媒シートとを平行に配置して、前記通風孔から送入された空気が前記光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置であって、
前記光触媒シートは、ガラス繊維を整然と束ねた横糸群と、ガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群から構成される織物であって、
前記光触媒粒子は、前記光触媒シートのガラス繊維間及びガラス繊維上に付着し保持されていることを特徴とする光触媒脱臭装置。
【請求項7】
前記光触媒シートを構成するガラス繊維は、直径1μm以下の孔を有する多孔質ガラス繊維であることを特徴とする請求項6に記載の光触媒脱臭装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図11】
【公開番号】特開2011−136142(P2011−136142A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141863(P2010−141863)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(591244292)株式会社 パールライティング (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(591244292)株式会社 パールライティング (36)
【Fターム(参考)】
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