説明

光記録媒体および光記録媒体用樹脂組成物

【課題】硬化速度が速く靭性に優れ、収縮率も小さいため硬化後の塗膜は傷つきにくく、プラスチック基材へ塗布した後の反り、塗膜ひび割れ及び剥がれなどが生じにくい、ブルーレイディスクに用いられる光透過層(透明カバー層)として有用な硬化性樹脂組成物およびそれを用いた光記録媒体を提供すること。
【解決手段】本発明の光記録媒体は、基体上に、少なくとも光反射層と光透過層とを有し、前記光透過層側から370〜430nmの中心波長を有する光により情報の記録または再生を行う光記録媒体であって、前期光透過層が、多分岐型反応性化合物(A)と重合開始剤(B)とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物により形成され、該光透過層の膜厚が50〜150μmであり、前記多分岐型反応性化合物(A)が2つ以上の反応性基を末端に有するデンドリマー(A1)および/またはハイパーブランチポリマー(A2)からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に、少なくとも光反射層と光透過層とを有し、前記光透過層側からレーザー光により情報の記録又は再生を行う光記録媒体であり、前記光透過層が、低反り性、耐擦傷性、密着性に優れた硬化物が得られる硬化性樹脂組成物から得られる光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
高画質のデジタルハイビジョン放送が始まったことで、フルハイビジョン対応の高画質で大画面の液晶やプラズマテレビが普及されるようになった。しかし、従来の光記録媒体であるDVDは記録容量が小さいので、高品位の動画像を長時間録画することができなかった。これに応えるために、DVDの5倍以上もの記録容量を有する新しい光記録媒体の規格としてブルーレーザーで情報を記録・再生するブルーレイディスクが開発、販売されるようになった。
【0003】
この新規格では、光記録媒体の大容量化のために波長405nmのブルーレーザーの採用や記録・再生光学系対物レンズの開口数(NA)を0.85に大きくして、記録・再生時のレーザービームスポット径をDVDよりも約0.44倍まで小さくし、又、信号が記録されるトラックピッチ(間隔)を約0.43倍に狭くすることで5倍以上もの大記録容量化が実現されている。
【0004】
また大容量化の技術としてもう1つ採用されていることがある。レーザー入射側から見てディスク表面にはキズやホコリからの保護として透明カバー層(光透過層)が施されてある。ディスク表面と信号の記録面との距離(透明カバー層厚み)は、DVDでは約600μmであったが、前述した高NA化を実現するために、ブルーレイディスクでは100μmと薄くなっている。この透明カバー層厚みを薄くすることで、ディスクの反り等による傾きで生じるスポットの歪(ボケ)が抑えられ、信頼性の高い記録・再生が実現されるようになった。
【0005】
透明カバー層の形成方法として主に2つの方法が挙げられる。ポリカーボネート製のシートを紫外線硬化型の接着剤で貼り合わせるシート接着法と紫外線硬化型の樹脂をスピンコートで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させるスピンコート法がある。現在はコストの面からスピンコート法が主流になっている。しかし、紫外線硬化型の樹脂を用いて透明カバー層を構成すると、硬化時に発生する収縮のために光ディスクに反りが発生する。この反りは硬化時の架橋密度を下げることで改善されるが、硬度や耐スクラッチ性(耐磨耗性)が低下するためにディスク表面に傷がつきやすい等の問題点があった。又、硬度以外の問題点として、環境促進試験を実施した際の耐熱・耐湿試験で積層体の反りが増大する問題点があった。
この透明カバー層は、従来から種々の検討がなされている。例えば、以下のようなものが挙げられる。特許文献1には、97μmの内部層を形成した後に3μmの表面層を形成する方法が開示されている。しかし、内部層を形成する紫外線硬化型樹脂の粘度が高く、スピンコートでの塗工性に問題があった。特許文献2には、ディスクの最表面にハードコート層を設け、保護膜(透明カバー層)との2層とすることで表面硬度を上げる方法が開示されている。ハードコート層形成用の組成物にはコロイダルシリカ微粒子を配合することで表面硬度を上げる方法が開示されているが、コロイダルシリカ微粒子は高価なことや2層化による製造工程数の増加によりコストアップとなっている。特許文献3には、紫外線照射して得られる硬化塗膜の環境変化に対する寸法安定性に優れた光情報記録が開示されている。しかし、表面硬度や耐スクラッチ性が十分でないため傷がついたりするため、更なる工夫が必要であった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−157782号公報
【特許文献2】特開2005−158253号公報
【特許文献3】特開2007−213744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、硬化後の塗膜の硬度が高く、傷つきにくい硬化物であり、基板へ塗布した後の積層体の反りやプラスチック基材との密着性に優れており、又、耐熱・耐湿等の環境促進試験で積層体の反りを抑える硬化物を与えることができる硬化性樹脂組成物から得られる光透過層を有する光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記問題点を解決する為に硬化性樹脂組成物を鋭意検討した結果、2つ以上の反応性基を末端に有するデンドリマーおよび/またはハイパーブランチポリマーからなる多分岐型反応性化合物を用いることにより硬化後の塗膜の硬度が高く、傷つきにくい硬化物であり、基板へ塗布した後の積層体の反りやプラスチック基材との密着性に優れており、又、耐熱・耐湿等の環境促進試験で積層体の反りを抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、基体上に、少なくとも光反射層と光透過層とを有し、前記光透過層側から370〜430nmの中心波長を有する光により情報の記録または再生を行う光記録媒体であって、前期光透過層が、多分岐型反応性化合物(A)と重合開始剤(B)とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物により形成され、該光透過層の膜厚が50〜150μmであり、前記多分岐型反応性化合物(A)が2つ以上の反応性基を末端に有するデンドリマー(A1)および/またはハイパーブランチポリマー(A2)からなることを特徴とする光記録媒体を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、多分岐型反応性化合物(A)と重合開始剤(B)とを含有する硬化性組成物であり、多分岐型反応性化合物(A)が2つ以上の反応性基を末端に有するデンドリマー(A1)および/またはハイパーブランチポリマー(A2)からなる前記多分岐型反応性化合物(A)であり、さらに反応性官能基が(メタ)アクリロイル基であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体を形成しうる光記録媒体用硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2つ以上の反応性基を末端に有するデンドリマーおよび/またはハイパーブランチポリマーからなる多分岐型反応性化合物は、硬化速度が速く靭性に優れ、収縮率も小さいため硬化後の塗膜は傷つきにくく、プラスチック基材へ塗布した後の反り、塗膜ひび割れ及び剥がれなどが生じにくい。したがって、ブルーレイディスクに用いられる光透過層(透明カバー層)として有用な硬化性樹脂組成物およびそれを用いた光記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
≪光記録媒体用樹脂組成物≫
本発明の樹脂組成物は、2つ以上の反応性基を末端に有するデンドリマーおよび/またはハイパーブランチポリマーからなる多分岐型反応性化合物と重合開始剤とを含有するものである。
≪多分岐型反応性化合物(A)≫
本発明の多分岐型反応性化合物(A)は、2つ以上の反応基を末端に有し、下記式(1)で表されるデンドリマー(A1)および/または下記式(2)で表されるハイパーブランチポリマー(A2)からなる高度に分子骨格が分岐した化合物で、規則性の高いデンドリマーと規則性の低いハイパーブランチポリマーと表したものである。特にデンドリマーは、一般的に用いられている直線状の高分子に比べて、反応性の官能基をその最外面に高密度かつ集中的に配置する事が可能である。又、ハイパーブランチポリマーもデンドリマーほどではないが、最外面に反応性の官能基を数多く導入する事が可能であり、硬化性に優れている。このような多分岐型反応性化合物は、従来の直鎖高分子と大きく異なる点は、(1)有機溶媒に可溶で粘度が低い、(2)非晶性材料である、(3)分子内部が疎で外側になる程、密となるので環境により形状が変化せず球状を保つ、(4)密度が低い、(5)末端基が多数存在する、などが例えば挙げられる。従って、硬化速度が速く靭性に優れ、収縮率も小さいため硬化後の塗膜は傷つきにくく、基材へ塗布した後の反り、塗膜ひび割れ及び剥がれなどが生じにくくなる。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
本発明の多分岐型反応性化合物(A)は、一分子中に1つの反応性基Xと反応性基Xと反応し得る2つ以上の反応性基Yを有する化合物から製造された三次元的に枝分かれを繰り返す構造(以下、分岐繰り返し単位と称する場合がある。)を有する化合物である。コア部を有し、コア部から放射状に規則的な分岐繰り返し単位を有し、かつ分岐繰り返し単位を2以上有する化合物をデンドリマーと称する。本発明のデンドリマーは複数ある末端基中(通常は反応性基Y)一部または全部が他の反応基に置き換わってもよい。本発明では少なくとも2以上の末端基が反応性を有することを必須とする。末端基は好ましくはラジカル重合性の二重結合基であり、より好ましくは(メタ)アクリロイル基である。また末端基の一部は非反応性の置換基に置き換わってもよい。
【0016】
本発明の多分岐型反応性化合物のうち、ハイパーブランチポリマーは上記デンドリマーと同じ繰り返し単位の構成を有するが、コア部は必須ではなく、また分岐繰り返し単位に一部欠部や不規則または不連続な箇所があっても良い。本発明のハイパーブランチポリマーは複数ある末端基中(通常は反応性基Y)一部または全部が他の反応基に置き換わってもよい。本発明では少なくとも2以上の末端基が反応性を有することを必須とする。末端基は好ましくはラジカル重合性の二重結合基であり、より好ましくは(メタ)アクリロイル基である。また末端基の一部は非反応性の置換基に置き換わってもよい。
また、多分岐型反応性化合物は、例えば1分子中に2種類の置換基をもつXY型分子の重縮合反応或いは重付加反応した低い規則性で分岐鎖単位が高度に分岐された化合物の分岐端部に2つ以上の反応性基を有した化合物でもよく、反応性基が(メタ)アクリロイル基が好ましい。また本発明で用いられる多分岐型反応性化合物は、リニア−デンドリティックポリマー、デンドリグラフトポリマー、スターハイパーブランチポリマー、ハイパーグラフトポリマーでも良い。
【0017】
本発明において多分岐型反応性化合物(A)は、樹脂組成物の合計量に対して、好ましくは10質量%以上〜90質量%未満、より好ましくは30質量%以上〜70質量%以下である。多分岐型反応性化合物の配合量が10質量%未満であると、架橋密度が低下するので硬化速度の低下や硬化物の塗膜強度が不充分になることがある。また多分岐型反応性化合物の配合量が90質量以上であると基体に塗布し硬化させて得られた積層体の反りが大きくなる場合や硬化物に割れが生じることがある。
【0018】
本発明の樹脂組成物の粘度は1,000mPa・s〜5,000mPa・sが好ましい。より好ましくは1,000mPa・s〜4,000mPa・sであり、さらに好ましくは1,000mPa・s〜3,000mPa・sである。組成物の粘度が上記範囲内であれば光透過層を均一な厚さで形成することができる。しかし組成物の粘度が上記範囲外となれば、光透過層の中心部の硬化層厚みが薄くなる場合や、端部の硬化層厚みが厚くなる場合がある。ここで、粘度は温度25℃の条件下で、B型粘度計(型式「RB80L」:東機産業(株)製)を用いて算出した値である。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、重合開始剤(B)を必須成分とするものであるが、加熱により重合開始ラジカルを発生する熱重合開始剤;紫外線の照射により重合開始ラジカルを発生する光重合開始剤;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、熱重合促進剤、光増感剤、光重合促進剤などをさらに添加することも好ましい。
【0020】
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマーなどのアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドなどのベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリドなどのチオキサントン類;などが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光重合開始剤のうち、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルホスフィンオキシド類が好適であり、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが特に好適である。
【0021】
熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、メチルアセトアセテートペルオキシド、アセチルアセテートペルオキシド、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ヘキシルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、スクシン酸ペルオキシド、m−トルオイルベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、α,α’−ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシソブチレート、t−ブチルペルオキシマレート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルペルオキシド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどの有機過酸化物系開始剤;2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン)]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン)]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(4,5、6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]などのアゾ系開始剤;などが挙げられる。これらの熱重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの熱重合開始剤のうち、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ベンゾイルペルオキシドなどの金属石鹸および/またはアミン化合物などの触媒作用により効率的にラジカルを発生させることができる化合物や2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好適である。
【0022】
重合開始剤の配合量は、樹脂組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%である。重合開始剤の配合量が0.05質量%未満であると、組成物が充分に硬化しないことがある。逆に、重合開始剤の配合量が20質量%を超えると、硬化物の物性がさらに向上することはなく、むしろ悪影響を及ぼす上、経済性を損なうことがある。
【0023】
重合開始剤として、光重合開始剤を用いる場合には、光励起により生じた励起状態から光重合開始剤に励起エネルギーを移し、光重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる光増感剤を用いることができる。光増感剤としては、例えば、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどを挙げることができる。これらの光増感剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
光増感剤の配合量は、樹脂組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%の範囲内である。光増感剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0025】
重合開始剤として、光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる光重合促進剤を用いることができる。光重合促進剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−n−ブトキシエチル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどを挙げることができる。これらの光重合促進剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光重合促進剤のうち、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが好適である。
【0026】
光重合促進剤の配合量は、樹脂組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%の範囲内である。光重合促進剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0027】
熱重合開始剤、光重合開始剤、熱重合促進剤、光増感剤、光重合促進剤などを組み合わせて配合する場合、その配合量の合計量は、硬化性樹脂組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量の範囲内である。重合開始剤などの組合せ配合量の合計量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、多分岐型反応性化合物(A)と重合開始剤(B)以外に反応性基を有するオリゴマー及び/又はポリマーを含有していても良い。オリゴマー及び/又はポリマーにある反応性基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーまたはポリマーとしては、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレートのようなアクリロイル基を有するオリゴマーでもよく、また、重合体に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーやポリマーのようなものでもよい。また、特開2008−63400号公報に示すようなアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)のカチオン重合体でもよい。
樹脂組成物において、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー及び/又はポリマーの配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは10質量%以上90質量%未満、より好ましくは30質量%以上70質量%以下である。オリゴマー及び/又はポリマーの配合量が90質量%を超えるとであると、架橋密度が低下する場合があるので硬化速度の低下や硬化物の塗膜強度が不充分になることがある。
【0029】
また、樹脂組成物として(メタ)アクリル単官能モノマー、(メタ)アクリル多官能モノマー等の重合性単量体を含有してもよい。重合性単量体としては、多分岐型反応性化合物と共硬化可能なものである限り、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、4−クロロスチレン、4−メチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系単量体;フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリルなどのアリルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、イソプロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、等の1官能(メタ)アクリレート化合物;(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、アクリロイルモルホリン、等のアミド化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキシド付加物のモノ・ジ・トリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、p−メンタンー1,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、p−メンタン−2,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、p−メンタン−3,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、ビシクロ[2.2.2]−オクタン−1−メチル−4−イソプロピル−5,6−ジメチロールジ(メタ)アクリレート、等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、などの(メタ)アクリル酸系誘導体;トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル系単量体;トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチロールメラミンのアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテルのアジピン酸エステル、アリルアセタール、メチロールグリオキザールウレインのアリルエーテルなどのアリルエーテル系単量体;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸エステル系単量体;フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなどのフマル酸エステル系単量体;4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、などの1,3−ジオキソラン系単量体;などが挙げられる。これらの重合性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性単量体のうち、(メタ)アクリル系エステル化合物が好適で、さらに脂環構造置換基を有する(メタ)アクリル系エステル化合物が好適である。
【0030】
樹脂組成物において、重合性単量体の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0以上80質量%未満、より好ましくは10質量%以上60質量%以下である。重合性単量体の配合量が80質量%を超えると、硬化収縮率や内部歪が大きくなり、例えばプラスチック基材に塗布し硬化させて得られた積層体の反りが大きくなる場合や硬化物の層にヒビや割れを生じることがある。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、さらに必要に応じて、添加物として、無機充填剤、非反応性樹脂(例えば、アクリル系樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂など)、着色顔料、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃化剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤などを添加することができる。これらの添加物の存在は、特に本発明の効果に影響を及ぼすものではない。これらの添加物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
添加物の配合量は、添加物の種類や使用目的、組成物の用途や使用方法などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、無機充填剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜50質量%の範囲内である。非反応性樹脂、着色顔料、可塑剤または援変化剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜25質量%の範囲内である。重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤または援変助剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.0001〜5質量%、より好ましくは0.001〜3質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%の範囲内である。
本発明の樹脂組成物は、金属酸化物からなる微粒子を含有してもよい。金属酸化物からなる微粒子を含有する場合には、硬化後の塗膜の硬度が向上し、より傷つきにくくなるという効果を奏する。
【0033】
微粒子を構成する金属酸化物は、より好ましくは、Si、Ti、Zr、Zn、Sn、In、LaおよびYよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含む。微粒子を構成する金属酸化物は、これらの元素を含む単独の酸化物であってもよいし、これらの元素を含む複合酸化物であってもよい。微粒子を構成する金属酸化物の具体例としては、例えば、SiO、SiO、TiO、ZrO、ZnO、SnO、In、La、Y、SiO−Al、SiO−Zr、SiO−Ti、Al−ZrO、TiO−ZrOなどが挙げられる。これらの金属酸化物からなる微粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの金属酸化物からなる微粒子のうち、SiO、TiO、ZrO、ZnOが好適である。
【0034】
金属酸化物からなる微粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜300nm、より好ましくは1〜50nmである。微粒子の平均粒子径が300nmを超えると、硬化物の透明性が損なわれることがある。なお、微粒子の平均粒子径とは、動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて測定することにより求められる体積平均粒子径を意味する。
【0035】
金属酸化物からなる微粒子の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0〜50質量%である。微粒子の配合量が80質量%を超えると、硬化物が脆くなることがある。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、熱重合開始剤を配合した場合には、加熱により、また、光重合開始剤を配合した場合には、紫外線を照射することにより、硬化させることができる。例えば、加熱による硬化の場合、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などを用いればよい。加熱温度は、基材の種類などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜180℃、さらに好ましくは100〜170℃の範囲内である。加熱時間は、塗布面積などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは1分間〜24時間、より好ましくは10分間〜12時間、さらに好ましくは30分間〜6時間の範囲内である。
【0037】
例えば、紫外線による硬化の場合、波長150〜450nmの範囲内の光を含む光源を用いればよい。このような光源としては、例えば、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、フラッシュ型キセノン灯、カーボンアーク灯などが挙げられる。これらの光源と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などによる熱の併用も可能である。照射積算光量は、好ましくは0.1〜3J/cm、より好ましくは0.2〜2.0J/cm、さらに好ましくは0.3〜1.0J/cmの範囲内である。
≪硬化物≫
本発明の硬化物は、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる。ここで、「硬化物」とは、流動性の無い物質を意味する。
≪積層体≫
本発明で積層体とは、基体上部に上記硬化物層が形成された状態のものを示す。光記録媒体では、積層体の反りがある一定の範囲に有していることが望まれる。本発明は、積層体の反りが、環境促進試験後に増大しないことが好ましい。より好ましくは、環境促進試験後の積層体の反りが緩和され、硬化後の反り量より緩和されることが好ましい。
【0038】
積層体に使用される基体としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルアミド(PEI)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、特許公報2015632、特許公報3178733、特開2001−151814、特開200−70607などに開示されている熱可塑性樹脂、などの樹脂成形物およびフィルム;ポリエチレンコート紙、ポリエチレンテレフタレートコート紙などのコート紙、非コート紙などの紙類;木材;ガラス;ステンレス、鉄、アルミニウム、銅、合金などの金属類;などが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリレート、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、耐熱アクリルが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
<耐スクラッチ性>
積層体(硬化物層/ポリカーボネート板基材)の硬化物表面に対して、耐摩耗試験機(型式IMC−154A型、株式会社井元製作所製)を用いて、所定の荷重の下、スチールウール#0000番を、往復速度30mm/秒、往復距離25mmで10回往復させた後、傷つき度合いを目視により観察し、次の基準で評価した。;○ 荷重200g/cm変化なし(傷が認められない);× 荷重200g/cmで数本以上の傷が認められる
<硬化後の反り量>
直径120mm、厚さ1mmのポリカーボネート板基材に、平均硬化膜厚100μm±5μmの硬化物層が形成された積層体を、温度25℃、相対湿度50%の条件下で水平台に硬化物層を上面側して室温にて24時間放置した後、四隅の水平台からの浮き高さを自社製レーザー式反り角度測定装置によって測定して平均値を算出した。反り判定として、測定した硬化後の反り量を次の基準で評価した。○:1.0°未満、×:1.0°以上
<耐熱試験後の反り量>
直径120mm、厚さ1mmのポリカーボネート板基材に、平均硬化膜厚100μm±5μmの硬化物層が形成された積層体を70℃50%RH96時間置いた後、取り出し、再び積層体の硬化物層を上面側して水平台に温度25℃、相対湿度50%環境下に24時間放置した後、四隅の水平台からの浮き高さを自社製レーザー式反り角度測定装置によって測定して平均値を算出した。
≪実施例1≫
多分岐型反応性化合物としてハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート(アクリレート官能基数8、サートマージャパン株式会社製、品番:CN−2300)50質量部、
オリゴマーとして軟質ウレタンアクリレート(アクリレート官能基数2、日本合成化学工業株式会社製、品番:UV−6640B)30質量部、
重合性単量体としてビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジアクリレート(共栄社化学株式会社製、品番:ライトアクリレートBP−4EA)10質量部、および
1,6ヘキサンジオールジアクリレート(サートマー・ジャパン株式会社製、品番:SR238F)10質量部、
光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、品番:イルガキュア184)2質量部
を混合・攪拌して、紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。
【0040】
次に、直径120mm、厚さ1mmのポリカーボネート板基材上に、スピンコーターを用いて、上記硬化性樹脂組成物を厚さ100μmで塗布した。このPCシートに塗布した樹脂層をパルスUV照射装置(キセノン・フラッシュランプ型式RC−801;キセノン株式会社製)を用いて紫外線硬化させた(積算光量360mJ/cm)。得られたPCシート上の硬化物を評価し結果を表1に示した。
【0041】
実施例1と同様の装置を用い、表1に示す組成物混合比率にて積層体を得た。評価結果について表1に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
なお、表中の略称は下記の通りである。
【0044】
多分岐型反応性化合物
・CN−2300
(ハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート、アクリレート官能基数8、サートマージャパン株式会社製)
・CN−2301
(ハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート、アクリレート官能基数9、サートマージャパン株式会社製)
・CN−2302
(ハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート、アクリレート官能基数16、サートマージャパン株式会社製)
・ビスコート#1000、ビスコート#1020
(デンドリマー型アクリレート、大阪有機化学工業株式会社製)
オリゴマー又はポリマー
・UV−6640B、UV−6100B
(軟質ウレタンアクリレート、アクリレート官能基数2、日本合成化学工業株式会社製)
・UV−7000B
(中硬質ウレタンアクリレート、アクリレート官能基数2〜3、日本合成化学工業株式会社製)
・UV−7640B
(硬質ウレタンアクリレート、アクリレート官能基数6〜7、日本合成化学工業株式会社製)
重合性単量体
・BP−4EA
(ビスフェノールAのエチレンオキシド4EO付加物のジアクリレート
商品名「ライトアクリレートBP−4EA」、共栄社化学株式会社製)
・BP−10EA
(ビスフェノールAのエチレンオキシド10EO付加物のジアクリレート
商品名「SR602」、サートマー・ジャパン株式会社製)
・16HXDA
(1,6ヘキサンジオールジアクリレート
商品名「SR238F」、サートマー・ジャパン株式会社製)
・VEEA
(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、株式会社日本触媒製)
・IB−XA
(イソボルニルアクリレート
商品名「ライトアクリレートIB−XA」、共栄社化学株式会社製)
・PETA
(ペンタエリスリトールトリアクリレート
商品名「ライトアクリレートPE−3A」、共栄社化学株式会社製)
添加剤
・チヌビン479
(2−(2ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、
チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)
光重合開始剤
・Irg184:
(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名「イルガキュア184」
、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
・Esacure One
(オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、商品名「エサキュアONE」、ランベルティ社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、少なくとも光反射層と光透過層とを有し、前記光透過層側から370〜430nmの中心波長を有する光により情報の記録または再生を行う光記録媒体であって、前期光透過層が、多分岐型反応性化合物(A)と重合開始剤(B)とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物により形成され、該光透過層の膜厚が50〜150μmであり、前記多分岐型反応性化合物(A)が2つ以上の反応性基を末端に有するデンドリマー(A1)および/またはハイパーブランチポリマー(A2)からなることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
多分岐型反応性化合物(A)と重合開始剤(B)とを含有する硬化性樹脂組成物であり、前記多分岐型反応性化合物(A)が2つ以上の反応性基を末端に有するデンドリマー(A1)および/またはハイパーブランチポリマー(A2)からなる前記多分岐型反応性化合物(A)であり、さらに反応性官能基が(メタ)アクリロイル基であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体を形成しうる光記録媒体用硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−272025(P2009−272025A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124426(P2008−124426)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】