説明

光記録媒体の記録方法

【課題】可視情報記録層に記録される可視情報をマルチカラー、さらにはフルカラーで表現できるようにする。
【解決手段】レーザ光38を照射することによって可視情報記録層24の屈折率を変化させることで、干渉する光の波長を変化させ、可視情報記録層24から干渉色を発現させる光記録媒体10の記録方法であって、可視情報記録層24に照射するレーザ光38の波長を変化させることで、可視情報記録層24の屈折率を変化させる。具体的には、それぞれ波長の異なる複数のレーザ光源を用意し、複数のレーザ光源を選択的に切り替えることによって、可視情報記録層24に照射するレーザ光38の波長を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視情報を記録することができる可視情報記録層を有する光記録媒体の記録方法に関し、特に、レーザ光を照射することによって可視情報記録層の屈折率を変化させることで、干渉する光の波長を変化させ、可視情報記録層から干渉色を発現させることができる光記録媒体の記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光により一回限りの情報の記録が可能な光記録媒体(光ディスク)が知られている。この光ディスクとしては、追記型CD(所謂CD−R)、追記型デジタル・ヴァサタイル・ディスク(所謂DVD−R)がある。
【0003】
ところで、光ディスクには、音楽データ等が記録される記録面とは反対側の面に、記録面に記録した音楽データの楽曲タイトルや、記録したデータを識別するためのタイトル等の可視情報(画像)を印刷したラベルを貼付したものが知られている。このような光ディスクは、プリンター等によって円形のラベルシート上にタイトル等を予め印刷し、当該ラベルシートを光ディスクの記録面とは反対側の面に貼付することにより作製される。
【0004】
一方、上記ラベルシートを貼付するシステムとは別に、光ディスクにレーザ光を照射してラベルを形成するシステムが検討されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、光ディスクに可視情報記録層を形成し、この可視情報記録層の材料として色素を使用することが提案されている(例えば特許文献2〜4参照)。
【0006】
さらに、従来では、可視情報記録層が色素を主成分とし、450〜650nmの光波長の範囲内に極大吸収を有し、350〜450nm、600〜700nm、及び750〜850nmのうちの少なくともいずれかの波長帯域のレーザ光に対して0.05以上の吸光度を有する光記録媒体が提案されている(例えば特許文献5参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−66617号公報
【特許文献2】特開2000−113516号公報
【特許文献3】特開2001−283464号公報
【特許文献4】特開2000−173096号公報
【特許文献5】特開2005−219326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の可視情報記録層を有する光記録媒体では、可視情報記録層に記録される可視情報をモノカラーでしか表現できず、例えば市場でのインパクト(顧客吸引力)に欠けるという問題がある。
【0009】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、可視情報記録層に記録される可視情報をマルチカラー、さらにはフルカラーで表現することができ、可視情報の視認性の向上を図ることができると共に、例えば市場での顧客吸引力を向上させることができる光記録媒体の記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光記録媒体の記録方法は、レーザ光を照射することによって可視情報記録層の屈折率を変化させることで、干渉する光の波長を変化させ、前記可視情報記録層から干渉色を発現させる光記録媒体の記録方法であって、
前記可視情報記録層に照射する前記レーザ光の波長を変化させることで、前記可視情報記録層の屈折率を変化させることを特徴とする。
【0011】
これにより、可視情報記録層に記録される可視情報をマルチカラー、さらにはフルカラーで表現することができ、可視情報の視認性の向上を図ることができると共に、例えば市場での顧客吸引力を向上させることができる。
【0012】
そして、本発明において、それぞれ波長の異なる複数のレーザ光源を用意し、
前記複数のレーザ光源を選択的に切り替えることによって、前記可視情報記録層に照射する前記レーザ光の波長を変化させるようにしてもよい。この場合、前記複数のレーザ光源を具備し、制御信号の入力に従って、前記可視情報記録層に照射するレーザ光源を切替制御する光学ヘッドを用いるようにしてもよい。
【0013】
前記干渉色は、前記可視情報記録層の一方の界面からの反射光と、前記可視情報記録層の他方の界面からの反射光との干渉によって発現するようにしてもよい。この場合、前記干渉色は、赤色系、緑色系、青色系のいずれか2つ以上を含むようにしてもよい。
【0014】
なお、前記可視情報記録層は、少なくともフタロシアニン色素を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る光記録媒体の記録方法によれば、可視情報記録層に記録される可視情報をマルチカラー、さらにはフルカラーで表現することができ、可視情報の視認性の向上を図ることができると共に、例えば市場での顧客吸引力を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る光記録媒体の記録方法の実施の形態例を図1〜図16を参照しながら説明する。
【0017】
本実施の形態に係る光記録媒体の記録方法が適用される光記録媒体10の基本的構成は、図1及び図2に示すように、データ記録媒体部12と可視情報記録媒体部14とを有する。データ記録媒体部12は、表面にプリグルーブ40(図2参照)が形成された透明性の第1基板16と、該第1基板16のプリグルーブ40上に形成されたデータ記録層18と、該データ記録層18上に形成された第1反射層20とを有する。可視情報記録媒体部14は、透明性の第2基板22と、該第2基板22上に形成された可視情報記録層24と、該可視情報記録層24上に形成された第2反射層26とを有する。そして、データ記録媒体部12及び可視情報記録媒体部14が、第1反射層20と第2反射層26とが対向するように、接着層28を介して貼り合わされている。
【0018】
データ記録層18は、例えば第1基板16側から照射されたレーザ光38(図2参照)によってデータ(ピット情報)の記録が可能となっている。
【0019】
可視情報記録層24は、例えば第2基板22側から照射されたレーザ光38によって可視情報(画像や文字)が記録できるようになっている。
【0020】
さらに、この光記録媒体10は、第2基板22の表面(可視情報記録層24が形成される側の表面)の一部にプリピット領域30が割り当てられ、該プリピット領域30に1以上のプリピット32、好ましくは複数のプリピット32が形成されている。
【0021】
プリピット32の組み合わせにて示される情報としては、光記録媒体10に関する各種情報が考えられ、例えば、当該光記録媒体10が可視情報記録層24を有する光記録媒体10であるかどうかの識別情報や、可視情報記録層24に可視情報を描画する際のレーザ光38の出力(例えばレーザパワーや波長)に関する情報やスポット径に関する情報、描画すべき可視情報の階調に関する情報等である。従って、プリピット32を検出することによって、当該光記録媒体10が可視情報記録層24を有する光記録媒体であるかを容易に検出することができ、また、可視情報記録層24に可視情報を描画する際に、最適なレーザ出力(最適なレーザパワーや波長)にて描画することができ、しかも、可視情報を高い描画特性をもって記録することができる。なお、プリピット32の組み合わせにて示される情報としては、その他に製造者情報等が挙げられる。
【0022】
第2基板22の表面中、プリピット領域30の割り当て位置としては、特に制限されない。例えば図3の第1の変形例に係る光記録媒体10aに示すように、プリピット領域30を、可視情報記録層24が形成されている描画領域34よりも内周側にあってもよい。プリピット領域30が内周側にあることで、プリピット32が色素化合物で埋まらないため、プリピット32からの戻り光を検出しやすいという利点がある。ただ、プリピット領域30に可視情報記録層24を形成しないようにするためには、プリピット領域30の最外周と描画領域34の最内周との間に、ある程度のマージンが必要となる。
【0023】
もちろん、描画領域34をできるだけ広く確保するという観点から、図1に示すように、プリピット領域30と描画領域34とが一部重なっていてもよい。すなわち、プリピット32上に可視情報記録層24の少なくとも一部が形成されていてもよい。この場合には、可視情報記録層24の形成位置を比較的自由に設定できることから、製造工程における歩留まりが向上する。
【0024】
図1や図2に示すように、プリピット領域30を第2基板22の内周側に設ける場合は、第2基板22の中心より半径21〜24mmの範囲に設けることが好ましい。
【0025】
上記のようなプリピット32を有する第2基板22は、以下に示すスタンパを使用して製造することができる。スタンパは、上述したプリピット32を形成するための凹凸が設けられている。当該凹凸のうちの凸部の平均高さは150〜400nmであることが好ましい。スタンパを使用することで、上述した光記録媒体10を効率よく製造することができる。
【0026】
スタンパを作製する工程としては、通常のCD−ROMを製造するためのスタンパを作製するのとほぼ同様の工程を採用することができる。具体的には、ガラス原盤上にフォトレジストを成膜し、現像等を行い、ニッケル等の金属をスパッタし、電鋳処理することでスタンパを作製することができる。
【0027】
なお、プリピット領域30の代わりにプリグルーブが形成されたプリグルーブ領域としてもよい。あるいは、プリピット領域30の代わりに凹凸によるバーコードパターンを記録したバーストカッティングエリア(BCA)としてもよい。この場合、該プリグルーブあるいはバーコードパターンによって、当該光記録媒体10が可視情報記録層24を有する光記録媒体10であるかどうかの識別情報や、可視情報記録層24に可視情報を描画する際のレーザ光の出力(例えばレーザパワー)に関する情報やスポット径に関する情報、描画すべき可視情報の階調に関する情報等をもたせることができる。
【0028】
上述した光記録媒体10の構成としては、レーザ光の照射により可視情報の描画が可能な可視情報記録層24を具備した構成であれば特に限定されない。すなわち、読出し専用型、追記型、書換え可能型等のいずれとすることもできる。なかでも、追記型であることが好ましい。また、記録形式としては、相変化型、光磁気型、色素型等、特に制限されない。なかでも、色素型であることが好ましい。
【0029】
特に、図1に示す光記録媒体10は、第1基板16上にデータ記録層18を有し、第2基板22上に可視情報記録層24を有し、これらが貼り合わされた構成であることから、例えばDVD(DVDの他、DVD−RやDVD−RW、HD DVD等を含む)の構成に適用することが好ましい。
【0030】
光記録媒体10の層構成としては、図1に示す層構成のほか、例えば、以下の構成が挙げられる。
【0031】
(1)第1の層構成は、後述するように(図2参照)、第1基板16上に、データ記録層18、第1反射層20、接着層28を順次形成し、接着層28上に、可視情報記録層24を有する第2基板22を貼り合わせる構成である。
【0032】
(2)第2の層構成は、図示しないが、第1基板16上に、データ記録層18、第1反射層20、保護層、接着層28を順次形成し、接着層28上に、可視情報記録層24を有する第2基板22を貼り合わせる構成である。
【0033】
(3)第3の層構成は、図示しないが、第1基板16上に、データ記録層18、第1反射層20、第1保護層、接着層28、第2保護層を順次形成し、該第2保護層上に、可視情報記録層24を有する第2基板22が形成されている構成である。
【0034】
(4)第4の層構成は、図示しないが、第1基板16上に、データ記録層18、第1反射層20、第1保護層、接着層28、第2保護層、第3保護層を順次形成し、該第3保護層上に、可視情報記録層24を有する第2基板22が形成されている構成である。
【0035】
(5)第5の層構成は、第1基板16上に、データ記録層18、第1反射層20、接着層28、第2反射層26を順次形成し、該第2反射層26上に、可視情報記録層24を有する第2基板22が形成されている構成である。この層構成は図1とほぼ同じになる。
【0036】
(6)第6の層構成は、第1基板16上に、データ記録層18、第1反射層20、第1保護層を順次形成し、一方、第2基板22上に可視情報記録層24、第2反射層26、第2保護層を順次形成し、接着層28を介して第1保護層及び第2保護層を貼り合わせる構成である。
【0037】
なお、図2に示す層構成、並びに上記(1)〜(6)の層構成は単なる例示であり、これらの層構成は上述の順番のみでなく、一部を入れ替えてもよい。また、一部(可視情報記録層24を除く)を省略してもかまわない。さらに、各層は1層で構成されても複数層で構成されてもよい。
【0038】
また、光記録媒体10の変形例として、図4及び図5の構成を挙げることができる。なお、図5では、データ記録層18(図1参照)を省略して示す。
【0039】
図4及び図5に示す第2の変形例に係る光記録媒体10bは、上述した光記録媒体10とほぼ同様の構成を有するが、第2基板22の主面の内周側に印刷領域36が形成されている点で異なる。また、プリピット領域30は、描画領域34とは重なっておらず、第2基板22の外周側から内周側に向かって、描画領域34、プリピット領域30、印刷領域36が配置された形態なっている。
【0040】
印刷領域36には、例えば、バーコードが印刷又はスタンプされたカバーシートが貼着されている。カバーシートに印刷又はスタンプされたバーコードによって製品名、メーカー名、レーザーパワー等が認識できるようになっている。印刷領域36を第2基板22の最内周側に形成することで、光記録媒体10bの最内周側が遮蔽され、ユーザの視覚効果を高めることができる。
【0041】
なお、光記録媒体10をCD−Rに適用する場合には、トラックピッチ1.4〜1.8μmのプリグルーブ40(図2参照)が形成された厚さ1.2±0.2mmの円盤状の第1基板16上に、例えば色素化合物を含むデータ記録層18、第1反射層20、第1保護層(図示せず)、接着層28、第2保護層(図示せず)、第2反射層26、例えば色素化合物を含む可視情報記録層24、第2基板22をこの順に有する構成であることが好ましい。また、DVD−Rに適用する場合には以下の二つの態様であることが好ましい。
【0042】
(1)トラックピッチ0.6〜0.9μmのプリグルーブ40が形成された厚さ0.6±0.1mmの円盤状の第1基板16上に、例えば色素化合物を含むデータ記録層18及び光反射層が設けられてなる2つの積層体が、それぞれデータ記録層18が内側となるように接合され、厚さ1.2±0.2mmであり、少なくともいずれかの第1基板16上に可視情報記録層24及び第2基板22を設けてなる光記録媒体。
【0043】
(2)トラックピッチ0.6〜0.9μmのプリグルーブ40が形成された厚さ0.6±0.1mmの円盤状の第1基板16上に、例えば色素化合物を含むデータ記録層18及び光反射層が設けられてなる積層体と、該積層体の円盤状の第1基板16と同じ形状の透明な円盤状保護基板とを、データ記録層18が内側となるように接合され、厚さ1.2±0.2mmであり、少なくともどちらかの基板上に可視情報記録層24及び第2基板22を設けてなる光記録媒体。なお、上記DVD−R型の光記録媒体においては、光反射層の上にはさらに保護層を設けた構成とすることもできる。
【0044】
次に、第1基板16及び第2基板22及び各層について説明する。
【0045】
[第1基板16]
本実施の形態に係る光記録媒体10の第1基板16は、従来の光記録媒体の基板として用いられている各種の材料から任意に選択することができる。
【0046】
第1基板16の材料としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィン及びポリエステル等を挙げることができ、所望によりそれらを併用してもよい。
【0047】
なお、これらの材料はフィルム状として、又は剛性のある第1基板16として使うことができる。上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性及び価格等の点からポリカーボネートが好ましい。
【0048】
第1基板16の厚さは、0.1〜1.2mmとすることが好ましく、0.2〜1.1mmとすることがより好ましい。
【0049】
データ記録層18が設けられる側の第1基板16の表面側(プリグルーブ40が形成された面側)には、平面性の改善、接着力の向上及びデータ記録層18の変質防止の目的で、下塗層が設けられてもよい。
【0050】
[可視情報記録層14]
光記録媒体10は、上述のように、データ記録層18とは別に(好ましくは反対の面側に)、色素化合物を主成分とする可視情報記録層24を有する。ここで、「色素化合物を主成分とする」とは、可視情報記録層24中の全固形分に対する色素化合物の含有量(複数種の色素化合物を使用する場合は、その合計量)が50質量%以上であることをいう。可視情報記録層24中の色素化合物の含有量は、好ましくは80%質量以上、より好ましくは90〜100質量%である。
【0051】
可視情報記録層24の厚さは、0.01〜200μmとすることが好ましく、0.05〜100μmとすることがより好ましく、0.1〜50μmとすることがさらに好ましい。
【0052】
可視情報記録層24とデータ記録層18との厚さの比(可視情報記録層24の厚み/データ記録層18の厚み)は、1/100〜100/1とすることが好ましく、1/10〜10/1とすることがより好ましい。
【0053】
可視情報記録層24には、文字、図形、絵柄等、ユーザが所望する可視情報が記録される。可視情報としては、例えば、ディスクのタイトル、内容情報、内容のサムネール、関連した絵柄、デザイン的な絵柄、著作権情報、記録日時、記録方法、記録フォーマット等が挙げられる。
【0054】
可視情報記録層24は、文字、画像、絵柄等の情報を視認可能に記録できればよく、光記録媒体10においては、400〜850nmの光波長の範囲内に極大吸収を有し、使用するレーザ光38に対して0.05以上(好ましくは0.1以上1.0以下)の吸光度を有する色素を用いることが好ましい。
【0055】
そして、光記録媒体10の可視情報記録層24は、下記一般式(1)で表されるフタロシアニン色素を含有する。
【0056】
一般式(1)
【0057】
【化1】

【0058】
一般式(1)中、Rα1〜Rα8及びRβ1〜Rβ8は各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、Mは、2個の水素原子、金属、金属酸化物、又は、配位子を有する金属を表す。
【0059】
具体的には、前記一般式(1)のRα1〜Rα8及びRβ1〜Rβ8は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、カルボキシル基、スルホ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜14のアリール基、炭素原子数7〜15のアラルキル基、炭素原子数1〜10のヘテロ環基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜14のアリールオキシ基、炭素原子数2〜21のアシル基、炭素原子数1〜20アルキルスルホニル基、炭素原子数6〜20アリールスルホニル基、炭素原子数1〜25のカルバモイル基、炭素原子数0〜32のスルファモイル基、炭素原子数2〜21のアルコキシカルボニル基、炭素原子数7〜15のアリールオキシカルボニル基、炭素原子数2〜21のアシルアミノ基、炭素原子数1〜20のスルホニルアミノ基、又は炭素原子数0〜36のアミノ基であってもよい。
【0060】
一般式(1)において、Rα1〜Rα8のすべてが同時に水素原子ではないことが好ましく、さらに、Rα1及びRα2のいずれか一方、Rα3及びRα4のいずれか一方、Rα5及びRα6のいずれか一方、Rα7及びRα8のいずれか一方の計4つの置換基が同時に水素原子ではないことが好ましく、特にこのとき、Rβ1〜Rβ8のすべてが同時に水素原子であることが好ましい。
【0061】
一般式(1)において、Rα1〜Rα8及びRβ1〜Rβ8の好ましい例としては、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素原子数1乃至16のアルキル基、炭素原子数6乃至10のアリール基、炭素原子数1乃至16のアルコキシ基、炭素原子数6乃至10のアリールオキシ基、炭素原子数1乃至16のアルキルスルホニル基、炭素原子数6乃至14のアリールスルホニル基、炭素原子数2乃至20のスルファモイル基、炭素原子数2乃至17のアルコキシカルボニル基、炭素原子数7乃至11のアリールオキシカルボニル基、炭素原子数2乃至18のアシルアミノ基、炭素原子数1乃至18のスルホニルアミノ基を挙げることができるが、より好ましいものは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素原子数1乃至16のアルコキシ基、炭素原子数6乃至10のアリールオキシ基、炭素原子数1乃至14のアルキルスルホニル基、炭素原子数6乃至14のアリールスルホニル基、炭素原子数2乃至16のスルファモイル基、炭素原子数2乃至13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2乃至14のアシルアミノ基、炭素原子数1乃至14のスルホニルアミノ基であり、さらに好ましくは、Rα1〜Rα8が水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、炭素原子数8乃至16のアルコキシ基、炭素原子数1乃至12のアルキルスルホニル基、炭素原子数1乃至12のスルファモイル基、炭素原子数2乃至12のアシルアミノ基、炭素原子数1乃至12のスルホニルアミノ基、Rβ1〜Rβ8が水素原子又はハロゲン原子であり、特に好ましくは、Rα1〜Rα8の少なくとも1つが、スルホ基、炭素原子数1乃至10のアルキルスルホニル基、炭素原子数1乃至10のスルファモイル基、Rβ1〜Rβ8が水素原子である。
【0062】
一般式(1)において、Rα1〜Rα8及びRβ1〜Rβ8はさらに置換基を有していてもよく、該置換基の例としては、以下に記載のものを挙げることができる。炭素原子数1〜20の鎖状又は環状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基)、炭素原子数6〜18のアリール基(例えば、フェニル基、クロロフェニル基、2,4−ジ−t−アミルフェニル基、1−ナフチル基)、炭素原子数7〜18のアラルキル基(例えば、ベンジル基、アニシル基)、炭素原子数2〜20のアルケニル基(例えば、ビニル基、2−メチルビニル基)、炭素原子数2〜20のアルキニル基(例えば、エチニル基、2−メチルエチニル基、2−フェニルエチニル基)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素原子数2〜20のアシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、サリチロイル基、ピバロイル基)、炭素原子数1〜20のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基、トルオイル基)、炭素原子数1〜20のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、ブチルチオ基、ベンジルチオ基、3−メトキシプロピルチオ基)、炭素原子数6〜20のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基)、炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基)、炭素原子数6〜20のアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、パラトルエンスルホニル基)、炭素原子数1〜17のカルバモイル基(例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基)、炭素原子数1〜16のアミド基(例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基)、炭素原子数2〜10のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基)、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基)、5もしくは6員のヘテロ環基(例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の芳香族ヘテロ環基;ピロリジン環基、ピペリジン環基、モルホリン環基、ピラン環基、チオピラン環基、ジオキサン環基、ジチオラン環基等のヘテロ環基)。
【0063】
一般式(1)において、Rα1〜Rα8及びRβ1〜Rβ8の置換基として好ましいものは、炭素原子数1〜16の鎖状又は環状のアルキル基、炭素原子数6〜14のアリール基、炭素原子数7〜15のアラルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数6〜14のアリールオキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数2〜17のアルコキシカルボニル基、炭素原子数1〜10のカルバモイル基、炭素原子数1〜10のアミド基であり、中でも好ましいものは、炭素原子数1〜10の鎖状又は環状のアルキル基、炭素原子数7〜13のアラルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、塩素原子、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、炭素原子数1〜7のカルバモイル基、炭素原子数1〜8のアミド基であり、特に好ましいものは、炭素原子数1〜8の鎖状分岐又は環状のアルキル基、炭素原子数7〜11のアラルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数3〜9のアルコキシカルボニル基、フェニル基及び塩素原子であり、さらに優れて好ましいものは炭素原子数1〜6のアルコキシ基である。
【0064】
一般式(1)において、Mは金属であることが好ましく、なかでも、亜鉛、マグネシウム、銅、ニッケル又はパラジウムが好ましく、さらに銅又はニッケルが好ましく、特に銅が好ましい。
【0065】
フタロシアニン色素の具体例を下記に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
本実施の形態に用いられるフタロシアニン誘導体は、例えば白井−小林共著、(株)アイピーシー発行「フタロシアニン−化学と機能−」(p.1〜62)、C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共著、VCH発行'Phthalocyanines−Properties and Applications'(p.1〜54)等に記載、引用もしくはこれらに類似の方法により合成することができる。
【0073】
可視情報記録層24に記録される可視情報とは、視覚的に認識可能な画像を意味し、文字(列)、絵柄、図形等、あらゆる視認可能な情報を含む。また、文字情報としては、使用可能者指定情報、使用期間指定情報、使用可能回数指定情報、レンタル情報、分解能指定情報、レイヤ指定情報、ユーザ指定情報、著作権者情報、著作権番号情報、製造者情報、製造日情報、販売日情報、販売店又は販売者情報、使用セット番号情報、地域指定情報、言語指定情報、用途指定情報、製品使用者情報、使用番号情報等が挙げられる。
【0074】
可視情報記録層24は、上述した色素化合物を溶剤に溶解して塗布液を調製し、該塗布液を塗布することによって形成することができる。溶剤としては後述するデータ記録層18の塗布液の調製に使用する溶剤と同じ溶剤を使用することができる。その他の添加剤、塗布方法等、後述するデータ記録層18と同様にして行うことができる。
【0075】
そして、この可視情報記録層24は、照射されるレーザ光38の波長に応じて屈折率が変化する特性を有する。ここで、波長の異なるレーザ光38を出射する光学ヘッドとしては、例えば特開2006−59471号公報に記載された光学ヘッドを用いることができる。
【0076】
この光学ヘッドを図6を参照しながら簡単に説明すると、光学ヘッド70は、光記録媒体10に対して、記録用のレーザ光38を集光して照射し、その反射光を検出して電気信号に変換するものである。
【0077】
光学ヘッド70は、第1波長(例えば660nm)の第1レーザ光38A、第2波長(例えば405nm)の第2レーザ光38B、第3波長(例えば785nm)の第3レーザ光38Cのうち、いずれか1つのレーザ光を出射し、光記録媒体10に照射すると共に、これらの反射光を検出する。なお、以下の説明では、第1レーザ光38A〜第3レーザ光38Cを特定しない場合は、単にレーザ光38と記す。
【0078】
光学ヘッド70は、図6に示すように、モジュール72と、コリメータレンズ74と、偏光ビームスプリッタ76と、1/4波長板78と、対物レンズ80と、集光レンズ82と、フォトディテクタ84とを備えている。
【0079】
モジュール72は、図7に示すように、内部が中空とされた例えば金属製のパッケージ86と、該パッケージ86の内部に収納された後述するレーザ素子等とから構成されている。パッケージ86には、透明な出射窓88が設けられており、内部で発光されたレーザ光が、この出射窓88を介して外部へ出射される。
【0080】
また、モジュール72は、図8に示すように、パッケージ86の内部に、レーザ発光部90と、反射ミラー92と、レーザ発光部90を制御する発光制御部93とを備えている。
【0081】
レーザ発光部90は、ヒートシンク94と、第1レーザ光38Aを出射する第1半導体レーザ素子96A、第2レーザ光38Bを出射する第2半導体レーザ素子96B、第3レーザ光38Cを出射する第3半導体レーザ素子96Cと、倍率補正レンズ98とが一体的に接着された構成となっている。
【0082】
ヒートシンク94は、第1半導体レーザ素子96A〜第3半導体レーザ素子96Cを支持するための支持基体としての機能を有するとともに、第1半導体レーザ素子96A〜第3半導体レーザ素子96Cに発生した熱を外部に放熱する機能を有するものである。
【0083】
倍率補正レンズ98は、例えば球形レンズであり、第2半導体レーザ素子96Bとヒートシンク94の主面との間で挟み込むように保持されている。倍率補正レンズ98は、第2半導体レーザ素子96Bから出射された第2レーザ光38Bのビーム径を拡大する機能を有している。このため、第2レーザ光38Bの光路を構成する光学系の倍率が、第1レーザ光38Aや第3レーザ光38Cの光路を構成する光学系の倍率よりも高くなる。
【0084】
モジュール72は、これら第1レーザ光38A〜第3レーザ光38Cのうち、発光制御部93からの制御信号Sc(レーザ光を特定する信号)に対応するレーザ光を出射する。
【0085】
モジュール72から出射された光は、コリメータレンズ74に入射され、平行な光束にされる。
【0086】
コリメータレンズ74を通過したレーザ光は、偏光ビームスプリッタ76に対してP偏光として入射する。偏光ビームスプリッタ76は、P偏光を透過し、S偏光を反射するので、コリメータレンズ74側から入射された光(P偏光)は透過する。偏光ビームスプリッタ76を透過した光は、1/4波長板78を通過して、対物レンズ80に入射される。
【0087】
対物レンズ80は、1/4波長板78を通過して入射されたレーザ光を集光して、光記録媒体10に照射する。また、対物レンズ80は、光記録媒体10から反射された戻り光が入射される。
【0088】
ここで、対物レンズ80は、レンズの中央部分の開口数が0.45及び0.6とされ、レンズの周縁部分の開口数が0.85となるように構成されている。すなわち、対物レンズ80に対して広いビーム径で入射された場合には0.85の開口数で集光し、対物レンズ52に対して狭いビーム径で入射された場合には0.45及び0.6の開口数で集光する。従って、対物レンズ80は、第2レーザ光38Bが入射された場合には0.85の開口数を実現し、第1レーザ光38A又は第3レーザ光38Cが入射された場合には、0.45又は0.6の開口数が実現する。
【0089】
対物レンズ80を通過した戻り光は、1/4波長板78を通過して、偏光ビームスプリッタ76に入射される。この場合、1/4波長板78を2回通過し、S偏光として偏光ビームスプリッタ76に入射されるため、偏光ビームスプリッタ76により反射される。
【0090】
偏光ビームスプリッタ76により反射された戻り光は、集光レンズ82を通過してフォトディテクタ84に照射される。
【0091】
フォトディテクタ84は、照射された光を電気信号に変換して、マトリクスアンプ等に出力する。
【0092】
上述の例は、1つの光学ヘッドから第1レーザ光38A〜第3レーザ光38Cのうち、いずれか1つのレーザ光を選択的に出力させるようにしたが、その他、図9及び図10に示すように、3つの光学ヘッド(第1光学ヘッド100A〜第3光学ヘッド100C)を備えるマルチ光学ヘッド102を使用するようにしてもよい。第1光学ヘッド100Aは第1レーザ光38Aを出射し、第2光学ヘッド100Bは第2レーザ光38Bを出射し、第3光学ヘッド100Cは第3レーザ光38Cを出射する。
【0093】
このマルチ光学ヘッド102は、例えば2種類の方式(回転駆動方式及び直動方式)が考えられる。
【0094】
回転駆動方式のマルチ光学ヘッド102Aは、図9に示すように、第1光学ヘッド100A〜第3光学ヘッド100Cが設置された支軸104と、該支軸104を回転駆動するモータ106と、該モータ106の駆動力を支軸104に伝達する減速機構108と、支軸104の回転数を検出する回転数センサ110と、発光制御部93からの制御信号Sc(レーザ光を特定する信号)及び回転数センサ110からの検出信号Spに基づいてモータ106の回転駆動を制御する回転制御部112とを有する。
【0095】
支軸104には、該支軸104を中心にして第1光学ヘッド100A〜第3光学ヘッド100Cが1つの円周に沿うようにして例えば等間隔に設置されている。従って、支軸104が回転することで、光記録媒体10に対してアクセスを行う光学ヘッドが順次変わることになる。
【0096】
回転制御部112は、第1光学ヘッド100A〜第3光学ヘッド100Cのうち、発光制御部93からの制御信号Scに対応する光学ヘッドが所定の位置Pa(光記録媒体10をアクセスする位置)に位置させるように、回転数センサ110からの検出信号Spに基づいてモータ106を駆動制御する。
【0097】
直動方式のマルチ光学ヘッド102Bは、図10に示すように、第1光学ヘッド100A〜第3光学ヘッド100Cが横一列に設置されたラック114と、該ラック114に噛合するピニオン116と、該ピニオン116を回転駆動するモータ106と、該モータ106の駆動力をピニオン116に伝達する減速機構108と、ピニオン116の回転数を検出する回転数センサ110と、発光制御部93からの制御信号Sc(レーザ光を特定する信号)及び回転数センサ110からの検出信号Spに基づいてモータ106の回転駆動を制御する回転制御部112とを有する。
【0098】
ラック114のうち、歯列118と反対側の面には、第1光学ヘッド100A〜第3光学ヘッド100Cが例えば等間隔に設置されている。従って、ピニオン116が回転することで、ラック118が直線方向に沿って移動し、これにより、光記録媒体10に対してアクセスを行う光学ヘッドが順次変わることになる。
【0099】
回転制御部112は、第1光学ヘッド100A〜第3光学ヘッド100Cのうち、発光制御部93からの制御信号Scに対応する光学ヘッドが所定の位置Pa(光記録媒体10をアクセスする位置)に位置させるように、回転数センサ110からの検出信号Spに基づいてモータ106を駆動制御する。
【0100】
そして、本実施の形態では、第1レーザ光38A〜第3レーザ光38Cのうち、第1レーザ光38A及び第2レーザ光38Bを使用し、これら第1レーザ光38Aの照射位置、第2レーザ光38Bの照射位置を変化させることで、第1レーザ光38A及び第2レーザ光38Bが照射された部分の屈折率がそれぞれ変化することになる。
【0101】
通常、図11に示すように、光記録媒体10のレーベル面22a(第2基板22の端面22a)に白色光50が入射すると、可視情報記録層24と第2基板22との第1界面52aからの第1反射光54aと、可視情報記録層24と第2反射層26との第2界面52bからの第2反射光54bとが干渉し、干渉によって強められた波長の光が干渉光56としてレーベル面22aから外部に出射されることになる。第2反射光54bの位相は、可視情報記録層24の膜厚を一定にしたとき、該可視情報記録層24の屈折率nによって決定される。
【0102】
従って、可視情報記録層24にレーザ光38が照射されない第1領域58A(レーザ光38を照射しても可視情報記録層24の屈折率を変化させるほどではない領域を含む)からは、可視情報記録層24本来の屈折率n=n0に基づく干渉光56がレーベル面22aより出射されることになる。干渉光56の波長が、例えば青系の波長であれば、第1領域58Aからレーベル面22aを通して青系の干渉色が発現されることになる。
【0103】
そして、図12Aに示すように、可視情報記録層24の例えば第2領域58Bに、第1波長の第1レーザ光38Aを照射することによって、第2領域58Bの屈折率nがn0からn1に変化したとき、図12Bに示すように、白色光50が入射した際の第2反射光54bの位相が屈折率n=n1によって変化し、それに伴って干渉光56の波長も変化する。干渉光56の波長が、例えば赤系の波長であれば、第2領域58Bに対応する部分からレーベル面22aを通して赤系の干渉色が発現されることになる。
【0104】
同様に、図13Aに示すように、可視情報記録層24の例えば第3領域58Cに、第2波長の第2レーザ光38Bを照射することによって、第3領域58Cの屈折率nがn0からn2に変化したとき、図13Bに示すように、白色光50が入射した際の第2反射光54bの位相が屈折率n=n2によって変化し、それに伴って干渉光56の波長も変化する。干渉光56の波長が、例えば緑系の波長であれば、第3領域58Cに対応する部分からレーベル面22aを通して緑系の干渉色が発現されることになる。
【0105】
これは、可視情報記録層24に照射するレーザ光38の波長を変化させることで、可視情報記録層24に記録される可視情報に、赤、緑、青の三原色(マルチカラー)を表現できることを示している。さらに、この三原色の組み合わせにより、可視情報記録層24にフルカラーで可視情報を表現することも可能である。
【0106】
なお、レーザ光38の照射後における可視情報記録層24の屈折率nについては、色素の分解により屈折率nを変化させてもよいし、また、空隙を形成することで屈折率nを変化させてもよい。また、これらの組み合わせでもよい。この場合、レーザ光38の照射エネルギを変えることにより、色素分解率や空隙の大きさが変わるため、屈折率nを任意に変化させたい場合に有効である。
【0107】
上述の例では、レーザ光38を照射しない場合、第1レーザ光38Aを照射した場合及び第2レーザ光38Bを照射した場合で、青、赤、緑の三原色を表現したが、可視情報記録層24の色素化合物を選択することで、第1レーザ光38Aを照射した場合、第2レーザ光38Bを照射した場合、第3レーザ光38Cを照射した場合で、緑、青、赤の三原色を表現することもできる。
【0108】
[データ記録層18]
データ記録層18は、レーザ光38を照射して情報の記録が可能な層である。データ記録層18は、デジタル情報等の符号情報(コード化情報)が記録される層であり、追記型(色素追記型が好ましい)、相変化型、光磁気型等が挙げられ、特に制限はないが、色素型であることが好ましい。
【0109】
色素型のデータ記録層18に含有される色素の具体例としては、シアニン色素、オキソノール色素、金属錯体系色素、アゾ色素、フタロシアニン色素等が挙げられる。また、特開平4−74690号、特開平8−127174号、同11−53758号、同11−334204号、同11−334205号、同11−334206号、同11−334207号、特開2000−43423号、同2000−108513号及び同2000−158818号等の各公報に記載されている色素が好適に用いられる。
【0110】
データ記録層18は、色素等の記録物質を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を第1基板16上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成することができる。塗布液中の記録物質の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
【0111】
データ記録層18は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、溶剤塗布法等の方法によって形成することができる。中でも、溶剤塗布法を用いることが好ましい。この場合、前記色素等の他、さらに所望によりクエンチャ、結合剤等を溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を第1基板16の表面に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより、データ記録層18を形成することができる。
【0112】
前記溶剤塗布の塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。データ記録層18は単層でも重層でもよい。データ記録層18の層厚は一般に10〜500nmの範囲にあり、好ましくは15〜300nmの範囲にあり、より好ましくは20〜150nmの範囲にある。
【0113】
データ記録層18には、該データ記録層18の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。褪色防止剤としては、一般的に、一重項酸素クエンチャが用いられる。一重項酸素クエンチャとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
【0114】
相変化型のデータ記録層18を構成する材料の具体例としては、Sb−Te合金、Ge−Sb−Te合金、Pd−Ge−Sb−Te合金、Nb−Ge−Sb−Te合金、Pd−Nb−Ge−Sb−Te合金、Pt−Ge−Sb−Te合金、Co−Ge−Sb−Te合金、In−Sb−Te合金、Ag−In−Sb−Te合金、Ag−V−In−Sb−Te合金、Ag−Ge−In−Sb−Te合金等が挙げられる。
【0115】
相変化型のデータ記録層18の層厚は、10〜50nmとすることが好ましく、15〜30nmとすることがより好ましい。相変化型のデータ記録層18は、スパッタ法、真空蒸着法等の気相薄膜堆積法等によって形成することができる。
【0116】
[第2基板22]
第2基板22(保護基板)は、上述の第1基板16と同じ材質のものを使用することができる。
【0117】
[第1反射層20、第2反射層26]
情報の再生時における反射率の向上の目的で、データ記録層18に隣接して第1反射層20が設けられることがある。また、可視情報記録層24への可視情報の書き込み時におけるレーザ光38のフォーカシングを良好とする目的で、可視情報記録層24に隣接して第2反射層26が設けられることがある。
【0118】
第1反射層20及び第2反射層26の材料である光反射性物質はレーザ光38に対する反射率が高い物質であり、その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属及び半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは2種以上の組合せで、又は合金として用いてもよい。第1反射層20及び第2反射層26は、例えば、上記光反射性物質を蒸着、スパッタリング又はイオンプレーティングすることにより、データ記録層18及び可視情報記録層24の上に形成することができる。第1反射層20及び第2反射層26の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲にあり、50〜200nmの範囲にあることが好ましい。
【0119】
[接着層28]
接着層28は、データ記録媒体部12と可視情報記録媒体部14との密着性を向上させるために形成される層である。
【0120】
接着層28を構成する材料としては、光硬化性樹脂が好ましく、なかでも光記録媒体10の反りを防止するため、硬化収縮率の小さいものが好ましい。このような光硬化性樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製の「SD−640」、「SD−347」等のUV硬化性樹脂(UV硬化性接着剤)を挙げることができる。また、接着層28の厚さは、弾力性を持たせるため、1〜1000μmの範囲が好ましく、5〜500μmの範囲がより好ましく、10〜100μmの範囲が特に好ましい。
【0121】
[保護層]
第1反射層20やデータ記録層18を物理的及び化学的に保護する目的、並びに第2反射層26や可視情報記録層24を物理的及び化学的に保護する目的でそれぞれ保護層が設けられることがある。
【0122】
なお、DVD−R型の光記録媒体の製造の場合と同様の形態、すなわち2枚の基板(一方が第1基板16の場合を含む)を2つのデータ記録層18を内側にして貼り合わせる構成をとる場合は、必ずしも保護層の形成は必要ではない。
【0123】
保護層に用いられる材料の例としては、ZnS、ZnS−SiO2、SiO、SiO2、MgF2、SnO2、Si34等の無機物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等の有機物質を挙げることができる。
【0124】
また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の場合には、これらを適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を塗布し、乾燥することによっても形成することができる。UV硬化性樹脂の場合には、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによっても形成することができる。これらの塗布液中には、さらに帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよい。保護層の層厚は、一般には0.1μm〜1mmの範囲にある。
【0125】
また、光記録媒体10は、レーザ光38により再生可能な情報が記録された記録部(ピット)を有する、いわゆる再生専用型の光記録媒体に適用することができるのは既述の通りである。
【0126】
[可視情報記録方法]
本実施の形態に係る可視情報記録方法は、上述した光記録媒体10の可視情報記録層24への可視情報記録方法であって、可視情報記録層24への可視情報の記録に、第1レーザ光38A〜第3レーザ光38C(あるいは第1レーザ光38A及び第2レーザ光38B)を用いる。なお、データ記録層18の記録に用いるレーザ光38としては、第1レーザ光38A〜第3レーザ光38Cのうち、いずれか1つのレーザ光である。例えば光記録媒体がCD−R対応の光ディスクであれば第3レーザ光38Cが用いられ、DVD−R対応の光ディスクであれば第1レーザ光38Aが用いられ、HD−DVDやブルーレイディスク対応の光ディスクであれば第2レーザ光38Bが用いられる。
【0127】
本実施の形態の可視情報記録方法は、光記録媒体10の可視情報記録層24への可視情報の記録が可能な記録装置を用いて行う。
【0128】
ここで、具体的に、本実施の形態に係る可視情報記録方法について説明する。この記録方法は、光記録媒体10の半径方向に遥動し且つ略同一の軌跡に複数回照射されるレーザ光38を用いて可視情報を可視情報記録層24に記録するものである。この場合、照射する位置に応じてレーザ光の種類を変えて行う。例えば、青色の干渉色を発現させたい第1領域58Aに対してはレーザ光38の照射を行わず、赤色の干渉色を発現させたい第2領域58Bに対しては第1レーザ光38Aを照射し、緑色の干渉色を発現させたい第3領域58Cに対しては第2レーザ光38Bを照射する。
【0129】
また、可視情報記録層24への可視情報の記録に際し、記録装置は、光記録媒体10とレーザピックアップとを、光記録媒体10の面に沿って相対移動させ、該相対移動に同期してレーザ光38を、画像形成しようとする文字、絵等の画像データに応じて変調して可視情報記録層24に向けて照射して可視情報を記録することができる。このような構成は、例えば、特開2002−203321号公報等に記載されている。
【0130】
通常のデジタルデータ記録では、略楕円形状の軌跡でレーザ光38を1回照射することが通常である。一般に、色素記録層にピットを形成する際は光ディスクドライブ(記録装置)で認識するのに十分な反射率及び変調度が得られるピットを形成することが重要視されるため、色素記録層用の色素としては、上記の1回のレーザ光38の照射により十分な反射率及び変調度が得られる色素が選択される。
【0131】
それに対し、近年、新たな画像形成方法として、上記特開2002−203321号公報等に記載のシステムが提案された。このシステムでは、レーザ光38を略同一の軌跡に複数回照射することにより、色素を含む可視情報記録層24に画像等の可視情報を記録する。また、通常の光ディスクでは半径方向でピットを形成する位置は特定されているため、レーザ光38が光記録媒体10の半径方向に遥動することはあり得ないのに対し、上記システムでは、レーザ光38が光記録媒体10の半径方向に遥動し、且つ、略同一の軌跡に複数回照射されることにより、可視情報が形成される。本実施の形態において使用される色素は、いずれも上記システムに好適であり、前述の記録方式によりコントラストが高く鮮明で、且つ、耐光性に優れた可視情報を形成することができる。
【0132】
上述した可視情報の記録方法の詳細を、図14及び図15を参照しながら説明する。
【0133】
図14は、画像形成のために照射されるレーザ光38の軌跡を示す。
【0134】
先ず、レーザ光源を、図14に示すように、光記録媒体10の内周側で、且つ、最初の画像形成箇所が存在する半径位置で位置決めし、次いで、周方向位置θを検出し、該半径位置について画像データにより指示される周方向の各画像形成位置でレーザパワーを所定の高出力(可視情報記録層24の可視光特性が変化する値で、例えば1mW以上の値)に切り換える。これにより、該高出力のレーザ光38が照射された箇所で可視情報記録層24の可視光特性(屈折率等)が変化して、画像形成が行われる。
【0135】
このとき、レーザ光38の特性は、可視情報記録層24に発現させる色に応じた発色情報に基づいて制御される。発色情報は、光記録媒体10のプリピット領域30に形成されているプリピット32やBCAに記録された情報を検出することによって取得される。発色情報としては、レーザ光の照射の有無、照射すべきレーザ光38の波長等が挙げられる。
【0136】
なお、レーザ光38のレーザパワーとしては、1〜100mWの範囲が好ましく、3〜50mWの範囲がより好ましく、5〜20mWの範囲がさらに好ましい。また、レーザ光38として350〜850nmの範囲の発振波長を有する半導体レーザを用いることができる。
【0137】
その後、光記録媒体10を1回転して周方向の基準位置に戻ったら、送りモータ等によりレーザ光源を所定ピッチΔr分だけ外周方向へ移送し、その半径位置について画像データにより指示される周方向の各画像形成位置でレーザパワーを所定の高出力に切り換えて画像形成を行う。以後、この動作を繰り返して、1周ごとに所定ピッチΔrで順次外周方向に移動して画像形成を行う。
【0138】
図14は、この画像形成動作による光記録媒体10の表面(レーベル面22a)上でのレーザ光38の軌跡を示す。太線で描いた部分46でレーザパワーが高出力に切り換えられて画像形成が行われる。この太線で描いた部分46でのレーザ光38の軌跡の拡大図が図15である。図15に示すように、レーザ光38を、光記録媒体10の半径方向に遥動させ、且つ、略同一の軌跡に複数回照射することにより画像が形成される。ここでのレーザ光38の遥動幅及び略同一の軌跡におけるレーザ光38の照射回数は、記録装置ごとに設定されている。
【0139】
上述した画像形成方法では、画像形成箇所がない半径位置については走査せずに、次の画像形成箇所がある半径位置まで一度に移動して画像形成を行う。ピッチΔrが大きいと、本来は径方向につながって形成されるべき画像であっても、すき間が生じて画像形成されてしまう。ピッチΔrを小さくすれば、すき間を目立たなくすることができるが、レーベル面全体に画像を形成するのに要する周回数が増え、画像形成に時間がかかってしまう。
【0140】
特開2002−203321号公報に記載の装置を用いれば、画像形成時に振動信号発生回路から発生される振動信号(正弦波、三角波等)でトラッキングアクチュエータを駆動して、対物レンズをディスク径方向に振動させるようにしている。従って、レーザ光38がディスク径方向に振動して、ピッチΔrが比較的大きくてもすき間のない(又は、すき間が小さい)画像形成を行うことができる。振動信号の周波数は、例えば数kHz程度に設定することができる。また、ピッチΔrは、例えば50〜100μm程度に設定することができる。
【0141】
以上の画像形成方法の詳細については、特開2002−203321号公報を参照することができる。
【0142】
そして、本実施の形態では、光記録媒体10のプリピット領域30に形成されているプリピット32やBCAに記録された情報を検出することによって、三原色に合わせた3種類の発色情報(赤系、緑系、青系の発色情報)を取得する。発色情報は、上述したように、レーザ光の照射の有無、照射すべきレーザ光38の波長等が挙げられる。
【0143】
3種類の発色情報のうち、青系の発色情報は、例えばレーザ光38の照射:なしを示す区別情報等である。赤系の発色情報は、例えばレーザ光38の照射:ありの区別情報、レーザ光38の波長=第1波長等を示す情報である。緑系の発色情報は、レーザ光38の照射:ありの区別情報、レーザ光38の波長=第2波長を示す情報等である。
【0144】
そして、上述した記録方法に従って、図11に示すように、可視情報記録層24のうち、青系で発色すべき領域(第1領域58A)に対してレーザ光38を照射しない。図12Aに示すように、可視情報記録層24のうち、赤系で発色すべき領域(第2領域58B)に対して第1レーザ光38Aを照射して、第2領域58Bの屈折率nをn1に変化させる。同様に、図13Aに示すように、可視情報記録層24のうち、緑系で発色すべき領域(第3領域58C)に対して第2レーザ光38Bを照射して、第3領域58Cの屈折率nをn2に変化させる。
【0145】
一方、データ記録層18にデータを記録する記録装置は、レーザ光38を射出するレーザピックアップと、光記録媒体10を回転させる回転機構とを少なくとも有し、データ記録層18への記録再生を、回転させた状態の光記録媒体10のデータ記録層18に向けてレーザピックアップからレーザ光38を照射して行うことができる。このような記録装置の構成自体は周知である。データ記録層18へのデータ(ピット情報)の記録については、すでに周知であるため、その説明を省略する。
【0146】
なお、データ記録層18が相変化型の場合については以下の通りである。すなわち、相変化型の場合は、上述した材質から構成され、レーザ光38の照射によって結晶相と非晶相との相変化を繰り返すことができる。データ記録時は、集中したレーザ光38のパルスを短時間照射し、相変化記録層を部分的に溶融する。溶融した部分は熱拡散により急冷され、固化し、非晶状態の記録マークが形成される。また、消去時には、記録マーク部分にレーザ光38を照射し、データ記録層18の融点以下、結晶化温度以上の温度に加熱し、且つ、除冷することによって、非晶状態の記録マークを結晶化し、もとの未記録状態に戻す。
【実施例1】
【0147】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0148】
(光記録媒体10の作製)
射出成形にて、ポリカーボネート樹脂から、スパイラル状(螺旋状)のプリグルーブ40を有する厚さ0.6mm、直径120mmの第1基板16を成形した。
【0149】
その後、下記一般式で表される色素を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールに濃度1.5g/100ccで溶解してデータ記録層18を形成するための色素塗布液を調製した。この塗布液をスピンコート法により第1基板16のプリグルーブ40が形成された面上に塗布し、データ記録層18を形成した。
【0150】
【化2】

【0151】
その後、データ記録層18上にAg(銀)をスパッタして膜厚120nmの第1反射層20を形成し、データ記録媒体部12を作製した。
【0152】
次に、射出成形にて、ポリカーボネート樹脂から、半径21mmから半径24mmの領域に、スパイラル状のプリピット(深さ:250nm、半径方向の半値幅300nm、トラックピッチ:1.6μm)を有し、半径24mmより外周が鏡面である、直径120mmの第2基板22を作製した。
【0153】
その後、表1にあるフタロシアニン色素No.I−1と、下記シアニン色素とを6:4の比率で、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールに濃度2.5g/100ccで溶解して可視情報記録層形成用の塗布液を調製した。この塗布液をスピンコート法により第2基板上に塗布し、膜厚220nmの可視情報記録層24(屈折率n=n0=1.1)を形成した。
【0154】
【化3】

【0155】
その後、可視情報記録層24上にAg(銀)をスパッタして膜厚80nmの第2反射層26を形成し、可視情報記録媒体部14を形成した。
【0156】
次いで、データ記録媒体部12の第1反射層20上に紫外線硬化接着剤(大日本インキ化学工業株式会社製のダイキュアクリアSD6830)を塗布し、可視情報記録媒体部14の第2反射層26と貼り合わせた後、可視情報記録媒体部14側からフラッシュキセノンランプを照射することで、接着剤を硬化させ、データ記録媒体部12及び可視情報記録媒体部14とが貼り合せられた1枚の光記録媒体10として完成させた。
【0157】
(光記録媒体10への描画)
そして、上述のようにして作製された光記録媒体10のレーベル面22a側から、可視情報記録層24の第2領域58B(図12A参照)に対して、以下の条件で、第1レーザ光38Aを照射した。
【0158】
【表7】

【0159】
同様に、光記録媒体10のレーベル面22a側から、可視情報記録層24の第3領域58C(図13A参照)に対して、以下の条件で、第2レーザ光38Bを照射した。
【0160】
【表8】

【0161】
その結果、レーザ光38が照射されていない第1領域58Aの屈折率nはn0(=1.1)、第1レーザ光38Aが照射された第2領域58Bの屈折率nはn1(=1.5)、第2レーザ光38Bが照射された第3領域58Cの屈折率nはn2(=1.3)であった。
【0162】
上述したようにレーザ光38を照射した後における第1領域58A〜第3領域58Cからの光の波長を、シミュレーションにて求めた。具体的には、第2基板22と可視情報記録層24との第1界面52aで反射する光(第1反射光54a)と、可視情報記録層24と第2反射層26との第2界面52bで反射する光(第2反射光54b)とが干渉により強め合う波長と、弱め合う波長とを算出した。その結果を図16に示す。
【0163】
干渉により強め合う波長は、第2高調波の波長と、第2高調波の1/2の波長と、第2高調波の1/3の波長を示し、干渉により弱め合う波長は、第4高調波の波長と、第4高調波の1/2の波長と、第4高調波の1/3の波長を示す。
【0164】
そして、干渉光として認識されるのは、干渉により強め合う波長である。このうち、第1領域58Aの強め合う波長のうち、第2高調波の波長は、青系の光の波長484nmであり、第2領域58Aの強め合う波長のうち、第2高調波の波長は、赤系の光の波長660nmであり、第3領域58Bの強め合う波長のうち、第2高調波の波長は、緑系の光の波長572nmであった。
【0165】
このことから、可視情報記録層24に照射するレーザ光38の波長を変化させることで、可視情報記録層24に記録される可視情報に、赤、緑、青の三原色(マルチカラー)を表現できることがわかる。さらに、この三原色の組み合わせにより、可視情報記録層にフルカラーで可視情報を表現することも可能である。
【0166】
なお、本発明に係る光記録媒体は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本実施の形態に係る光記録媒体の記録方法が適用される光記録媒体の構成を一部省略して示す断面図である。
【図2】光記録媒体の具体的構成例を一部省略して示す断面図である。
【図3】第1の変形例に係る光記録媒体を示す平面図である。
【図4】第2の変形例に係る光記録媒体を示す平面図である。
【図5】第2の変形例に係る光記録媒体を一部省略して示す断面図である。
【図6】使用される光学ヘッドの一例を示す構成図である。
【図7】光学ヘッドのモジュールを示す外観図である。
【図8】モジュールの内部構成の一例を示す説明図である。
【図9】回転駆動方式のマルチ光学ヘッドの一例を示す構成図である。
【図10】直動方式のマルチ光学ヘッドの一例を示す構成図である。
【図11】白色光による可視情報記録層からの干渉光の原理を、レーザ光を照射しない第1領域から青系の干渉光が発現する例と共に示す説明図である。
【図12】図12Aは可視情報記録層の第2領域に第1レーザ光を連続照射して屈折率nをn1に変化させた場合を示す説明図であり、図12Bは屈折率nがn1に変化した第2領域から赤系の干渉光が発現する例を示す説明図である。
【図13】図13Aは可視情報記録層の第3領域に第2レーザ光を連続照射して屈折率nをn2に変化させた場合を示す説明図であり、図13Bは屈折率nがn2に変化した第3領域から緑系の干渉光が発現する例を示す説明図である。
【図14】画像形成のために照射されるレーザ光の軌跡を示す説明図である。
【図15】図14において太線で描いた部分でのレーザ光の軌跡を示す拡大図である。
【図16】レーザ光を照射した後における第1領域〜第3領域からの光の波長を、シミュレーションにて求めた結果を示す表図である。
【符号の説明】
【0168】
10、10a、10b…光記録媒体 14…可視情報記録媒体部
22…第2基板 24…可視情報記録層
26…第2反射層 38…レーザ光
38A…第1レーザ光 38B…第2レーザ光
38C…第3レーザ光 50…白色光
52a…第1界面 52b…第2界面
54a…第1反射光 54b…第2反射光
56…干渉光 58A〜58C…第1領域〜第3領域
70…光学ヘッド
100A〜100C…第1光学ヘッド〜第3光学ヘッド
102…マルチ光学ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射することによって可視情報記録層の屈折率を変化させることで、干渉する光の波長を変化させ、前記可視情報記録層から干渉色を発現させる光記録媒体の記録方法であって、
前記可視情報記録層に照射する前記レーザ光の波長を変化させることで、前記可視情報記録層の屈折率を変化させることを特徴とする光記録媒体の記録方法。
【請求項2】
請求項1記載の光記録媒体の記録方法において、
それぞれ波長の異なる複数のレーザ光源を用意し、
前記複数のレーザ光源を選択的に切り替えることによって、前記可視情報記録層に照射する前記レーザ光の波長を変化させることを特徴とする光記録媒体の記録方法。
【請求項3】
請求項2記載の光記録媒体の記録方法において、
前記複数のレーザ光源を具備し、制御信号の入力に従って、前記可視情報記録層に照射するレーザ光源を切替制御する光学ヘッドを用いることを特徴とする光記録媒体の記録方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光記録媒体の記録方法において、
前記干渉色は、前記可視情報記録層の一方の界面からの反射光と、前記可視情報記録層の他方の界面からの反射光との干渉によって発現することを特徴とする光記録媒体の記録方法。
【請求項5】
請求項4記載の光記録媒体の記録方法において、
前記干渉色は、赤色系、緑色系、青色系のいずれか2つ以上を含むことを特徴とする光記録媒体の記録方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光記録媒体の記録方法において、
前記可視情報記録層は、少なくともフタロシアニン色素を含むことを特徴とする光記録媒体の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−187622(P2009−187622A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26298(P2008−26298)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】