説明

光記録媒体駆動装置、フォーカスオン方法

【課題】フォーカスオン動作の安定化
【解決手段】光記録媒体におけるレーザ光の入射する側から最も近い記録層(L0)及び最も遠い記録層(L3)を除いた記録層(L1又はL2)を目標層としてフォーカスオンを行う場合、球面収差補正部が、目標層(例えばL1)と通過層(例えばL0)の間の所定位置を球面収差補正位置として球面収差補正を実行し、さらにフォーカス制御部が、フォーカスエラー信号に球面収差補正位置と目標層での最適球面収差補正位置との位置差に応じた信号振幅補正を実行したうえで、フォーカスオン制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により信号の記録再生が行われる光記録媒体について記録又は再生を行う光記録媒体駆動装置と、上記光記録媒体に形成される所定の記録層にフォーカスオンする際のフォーカスオン方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−123566号公報
【背景技術】
【0003】
デジタルデータを記録・再生するための技術として、例えばCD(Compact Disc),DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc:登録商標)などの、光ディスク記録媒体(光磁気ディスクを含む)を記録メディアに用いたデータ記録技術がある。光ディスク記録媒体(単に光ディスクとも言う)は、ピットやマークによって信号が記録される円盤にレーザ光を照射し、その反射光の変化で信号が読み取られる記録メディアの総称である。
【0004】
このような光ディスク記録媒体では、記録容量の拡大などを目的として、記録層を多層化するということが行われている。現状においても、例えばDVDなどでは記録層を2層有するディスクが広く普及している。
記録層が多層とされる場合、それぞれの記録層に選択的にフォーカスオンして各記録層での信号読み出しを行うようにされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブルーレイディスクや次世代光ディスクでは、記録層が3層以上となるものも開発されている。
ここで3層以上の光ディスクについてのフォーカスオンについて考える。例えば4層ディスクとして記録層L0,L1,L2,L3を有する光ディスクを想定する。そしてレーザ光の入射面側からみて一番奥から手前に向かって順に記録層L0,L1,L2,L3が設けられているとする。
【0006】
この場合に、奥から2番目の記録層L1を目標層としてフォーカスオンする場合を考える。例えばこの場合、光記録媒体駆動装置の対物レンズを、ディスク表面に近い位置から遠ざけるように移動させながら、例えばフォーカスエラー信号のS字カーブを観測して、適切なタイミングでフォーカスオン制御する。
このとき、対物レンズの移動にともなってレーザ光のフォーカス位置は、記録層L0を通過した記録層L1付近に達する。そして記録層L0、L1の各近辺でフォーカスエラー信号のS字カーブが観測される。従って、フォーカス移動期間に2つめのS字カーブが観測されるタイミングでフォーカスオン制御すれば、目標の記録層L1にフォーカスオンできることとなる。
【0007】
ところでブルーレイディスクのような高密度ディスクの場合、記録層から見たカバー層の厚みの違いによって球面収差が生じることが知られている。特に、記録層を多層有する光ディスクでは、各層においてカバー層の厚さ(記録層からレーザ入射面までの距離)が異なることになるので、球面収差補正を行うことが必須とされる。
球面収差補正が必須とされる場合においては、上述したフォーカスオン時においても何らかの球面収差補正値を設定しておく必要がある。
従来、フォーカスオン時には、フォーカスオンを行う対象となる目標層に合わせた球面収差補正値を設定するものとしていた。
【0008】
しかしながら、球面収差補正値を目標層に合わせた値に設定していると、他の記録層についてのフォーカスエラー信号のS字を適正に検出できないことがある。
図5(a)に例を示す。図5では対物レンズ移動時のフォーカスエラー信号波形を示している。破線th1,th2は、フォーカスオン可能振幅及びS字検出可能の閾値である。太線SAは球面収差設定位置を示している。
図5(a)左に示すように、目標層(L1)の信号状態を良くするために球面収差設定位置SAを目標層に合わせると、通過層(L0)のフォーカスエラー信号バランスが崩れ、振幅も大きく減衰して通過層(L0)の検出が困難となる。また図5(a)右側に示すように、球面収差設定位置SAを通過層(L0)に合わせると目標層(L1)で同様の信号劣化が発生し、フォーカスオンが困難となる。
また例えば図5(b)のように、目標層(L1)でフォーカスエラー信号のバランスが最適となるように、規格上の各記録層の位置から球面収差設定位置SAを設定しても、実際には膜厚誤差(記録層間距離の誤差又は記録層位置誤差)で最適化は困難であり、結局バランスずれが生ずる。また通過層(L0)は信号劣化で記録層検出が困難となる。
特に膜厚バラつきにより実際には通過層、目標層共に数μmは記録層位置のずれが生じている。実際の膜厚が分かっていない状態では、規格上の各記録層の位置から最適な球面収差位置を設定しても、結局バランスずれや振幅変化を起こす状態となりやすい。
【0009】
上記特許文献1には、各記録層の中間位置から所定量シフトした位置に球面収差位置を設定し両記録層でのフォーカスエラー信号のバランスずれを解消することが記載されている。しかし実際上、3層以上の多層ディスクにおいては、層間隔が狭いことや膜厚誤差により、常に適切な球面収差位置とすることは難しく、フォーカスエラー信号のバランスずれが発生しやすい。
【0010】
本発明では、3層以上の多層ディスクでのフォーカスオン時にフォーカスエラー信号波形の歪みが発生して制御が困難となる問題に鑑みて、安定したフォーカスオン動作を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光記録媒体駆動装置は、3層以上の記録層を有する光記録媒体に対して、少なくとも信号読出のために上記光記録媒体に対するレーザ光照射及び反射光検出を行うとともに、少なくともレーザ光のフォーカス機構及び球面収差補正機構を有する光ヘッド部と、上記光ヘッド部で得られる反射光情報から生成されるフォーカスエラー信号に基づいて上記フォーカス機構を駆動し、上記光記録媒体の上記記録層へのフォーカスオン制御を実行するフォーカス制御部と、球面収差補正値に基づいて上記球面収差補正機構を駆動して球面収差補正を実行する球面収差補正部と、制御部とを備える。制御部は、上記光記録媒体における上記レーザ光の入射する側から最も近い記録層及び最も遠い記録層を除いた記録層を目標層とし、上記最も近い記録層又は上記最も遠い記録層をフォーカスオン過程の焦点位置の通過層として、上記目標層へのフォーカスオン制御を行う場合に、上記球面収差補正部に上記目標層と上記通過層の間の所定位置を球面収差補正位置として球面収差補正を実行させ、さらに上記フォーカスエラー信号について、上記球面収差補正位置と上記目標層についての最適球面収差補正位置との位置差に応じた信号振幅補正を実行させたうえで、上記フォーカス制御部による上記フォーカスオン制御を実行させる。
【0012】
また上記制御部は、上記フォーカスオン制御の完了後、定常フォーカスサーボへの移行処理として、上記球面収差補正部に上記目標層についての最適球面収差補正位置への球面収差補正を実行させ、さらに上記フォーカスエラー信号に施した信号振幅補正を終了させる制御を行う。
また上記制御部は、さらに、上記フォーカス制御部に対して、フォーカスループゲインをフォーカスオン用ゲインに変更させたうえで上記フォーカスオン制御を実行させるとともに、上記フォーカスオン制御の完了後の上記定常フォーカスサーボへの移行処理として、フォーカスループゲインを通常ゲインに戻させる制御を行う。
また上記制御部は、上記定常フォーカスサーボへの移行処理の実行期間、フォーカスエラー信号に対するAGC応答を高速応答設定とする制御を行う。
また上記制御部は、上記最も近い記録層又は上記最も遠い記録層を目標層としてフォーカスオン制御を行う場合は、上記球面収差補正部に、上記目標層についての最適球面収差補正位置への球面収差補正を実行させた状態で、上記フォーカス制御部に上記フォーカスオン制御を実行させる。
また、上記球面収差補正部に球面収差補正位置として指示する、上記目標層と上記通過層の間の所定位置は、光記録媒体の規格又は過去の球面収差補正で判定される、上記目標層についての最適球面収差補正位置と上記通過層についての最適球面収差補正位置との間であって、上記目標層と上記通過層とで同等のフォーカスエラー信号が得られる位置とする。
また上記信号振幅補正のために上記フォーカスエラー信号に与えるゲインとして、上記球面収差補正位置と上記目標層についての最適球面収差補正位置との位置差に応じたゲインを示したゲインテーブルを記憶するメモリ部をさらに備え、上記制御部は、上記ゲインテーブルを用いて、上記信号振幅補正の制御を行う。
【0013】
本発明のフォーカスオン方法は、上記光記録媒体における上記レーザ光の入射する側から最も近い記録層及び最も遠い記録層を除いた記録層を目標層とし、上記最も近い記録層又は上記最も遠い記録層をフォーカスオン過程の焦点位置の通過層として、上記目標層へのフォーカスオン制御を行う場合に、上記球面収差補正部が、上記目標層と上記通過層の間の所定位置を球面収差補正位置として球面収差補正を実行し、さらに上記フォーカスエラー信号について上記球面収差補正位置と上記目標層についての球面収差補正位置との位置差に応じた信号振幅補正を実行したうえで、上記フォーカス制御部による上記フォーカスオン制御を実行する。
【0014】
このような本発明では、3層以上の記録層を有する光記録媒体、つまりレーザ光の入射する側から最も近い記録層L0から最も遠い記録層L(n−1)までとしてn個(n≧3)の記録層を有する場合の、それらの記録層L0,L(n−1)以外の記録層へのフォーカスオン制御の場合に特徴を有する。
例えば記録層L0,L1,L2を順に有する3層ディスクにおいて記録層L1にフォーカスオン制御する場合である。
また例えば記録層L0,L1,L2,L3を有する4層ディスクにおいて記録層L1又はL2にフォーカスオン制御を行う場合である。
例えば4層ディスクの記録層L1にフォーカスオン制御を行う場合は、目標層(L1)と通過層(L0)の間の所定位置(目標層と通過層で同等のフォーカスエラー信号振幅が得られる位置)を球面収差補正位置として球面収差補正を実行する。さらにフォーカスエラー信号について、球面収差補正位置と目標層(L1)についての最適球面収差補正位置との位置差に応じた信号振幅補正を実行する。そのうえで、対物レンズ移動を行ってS字カーブ検出を行い、フォーカスオンとするフォーカスオン制御を実行する。
この動作は、目標層と通過層の間の所定位置に球面収差位置を設定しても、フォーカスエラー信号のバランスずれや振幅減衰は完全には防げないことを前提とし、信号減衰量等が推定可能な状態にしてフォーカスエラー信号を補正をするという考え方に基づく。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、3層以上の光記録媒体の各記録層へのフォーカスオン動作が安定化される。特に通過層を経由して到達する中央の記録層へのフォーカスオンについても安定したフォーカスオン制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態のディスクドライブ装置のブロック図である。
【図2】実施の形態で用いる4層ディスクの説明図である。
【図3】実施の形態の球面収差補正機構の説明図である。
【図4】実施の形態のフォーカスサーボ回路のブロック図である。
【図5】実施の形態及び従来のフォーカスオン動作時のS字波形の説明図である。
【図6】実施の形態の記録層L1,L2へのフォーカスオン動作の説明図である。
【図7】実施の形態のフォーカスオン制御のフローチャートである。
【図8】実施の形態の定常サーボ移行処理のフローチャートである。
【図9】実施の形態のゲインテーブルの説明図である。
【図10】実施の形態のゲインテーブルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の光記録媒体駆動装置の実施の形態として、多層光ディスクに対応して記録再生を行うディスクドライブ装置を挙げ、次の順序で説明する。
<1.ディスクドライブ装置の構成>
<2.フォーカスオン動作>
<3.定常サーボ移行処理>
【0018】
<1.ディスクドライブ装置の構成>

図1は、本発明の実施の形態としてのディスクドライブ装置の内部構成について示すブロック図である。
このディスクドライブ装置は、図示する光ディスクDとして、CD、DVD、BD(ブルーレイディスク)のそれぞれに対応可能に構成される。またこれに伴い、光ピックアップ1としては、波長λ=780nm、650nm、405nmのそれぞれ波長の異なるレーザ光を共通の対物レンズを用いて照射するように構成された、いわゆる3波長単眼式のピックアップが採用されている。
【0019】
また、このディスクドライブ装置は、記録層を多層有する多層ディスクにも対応可能に構成される。
ここで一例として、図2には4つの記録層を有する4層BDとしての光ディスクDの断面構造を示す。
4層BDの場合、記録層L0〜L3が順に設けられる。なお以下、記録層L(x)を「L(x)層」とも表記する。
図示するようにレーザ光が入射する側から順にカバー層→L3層→L2層→L1層→L0層→基板の順に各層が形成される。即ちL0層がレーザ光の入射する側から最も遠い記録層になり、L3層が最も近い記録層となっている。
L0層は、カバー層の表面からおよそ100μmの位置に形成される。従って100μmの範囲にL0層からL3層までが積層形成されている。各記録層の層間隔は、10〜25μm程度の範囲内での所定の値に規定されて製造される。L0−L1間、L1−L2間、L2−L3間の層間隔は必ずしも一定の間隔に規定されるわけではない。
【0020】
図1に示すディスクドライブ装置では、このように光ディスクDに形成されるL0層〜L3層に対して選択的にフォーカスオンすることが可能に構成されることで、各記録層に対する情報の記録及び情報の読み出しが可能とされている。
【0021】
図1において、光ディスクDは、ディスクドライブ装置に装填されると図示しないターンテーブルに積載され、記録/再生動作時においてスピンドルモーター2によって一定線速度(CLV)で回転駆動される。なお一定角速度(CAV)で回転駆動される場合もある。
そして再生時には、光ピックアップ(光ヘッド部)1によって光ディスクD上のトラックにピット或いはマークで記録された情報の読出が行われる。
なお、光ディスクDには、再生専用の管理情報として、例えばディスクの物理情報等がエンボスピット又はウォブリンググルーブによって記録されるが、これらの情報の読出も光ピックアップ1により行われる。さらに記録可能型の光ディスクDに対しては、グルーブトラックのウォブリングとして埋め込まれたADIP情報が記録されているが、その読み出しも光ピックアップ1によって行うことができる。
【0022】
光ピックアップ1内には、レーザ光源となるレーザダイオードや、反射光を検出するためのフォトディテクタ、レーザ光の出力端となる対物レンズ、レーザ光を対物レンズを介してディスク記録面に照射し、またその反射光をフォトディテクタに導く光学系等が形成される。この場合のレーザダイオードは、波長780nm、650nmのCD、DVD系のレーザ光を出力するレーザダイオードと、BD系に対応する波長405nmのレーザ光を出力するレーザダイオードとの2つが設けられている。そして3波長単眼式として、これら2つのレーザダイオードから出力される各波長のレーザ光がそれぞれ共通の対物レンズを介して光ディスクDに対し照射されるように構成されている。
【0023】
光ピックアップ1内において、対物レンズは2軸機構によってトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持されている。
また光ピックアップ1全体はスレッド機構3によりディスク半径方向に移動可能とされている。
また光ピックアップ1におけるレーザダイオードはレーザドライバ9からのドライブ信号(ドライブ電流)によってレーザ発光駆動される。
【0024】
また、本実施の形態の場合、光ディスクDとしてはBDにも対応するので、光ピックアップ1内には球面収差を補正するための球面収差補正機構も備えられる。この球面収差補正機構は、図中のSA(球面収差)補正ドライバ14によって駆動され、これによって球面収差が補正される。
なお、球面収差補正機構を含めた光ピックアップ1内の構成については後述する。
【0025】
光ディスクDからの反射光情報は上述したフォトディテクタによって検出され、受光光量に応じた電気信号とされてマトリクス回路4に供給される。
マトリクス回路4には、フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
例えば再生データに相当するRF信号(再生データ信号)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、プルイン信号(光量和信号)PIなどを生成する。また、グルーブのウォブリングに係る信号、即ちウォブリングを検出する信号としてプッシュプル信号PPを生成する。
【0026】
マトリクス回路4から出力される再生データ信号(RF信号)はデータ信号処理部5へ、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、プルイン信号PIはサーボ回路11へ、プッシュプル信号PPはウォブル信号処理回路6へそれぞれ供給される。
【0027】
また、RF信号はデータ信号処理部5に対して供給されると共に、分岐して図示するA/D変換器15を介しその振幅値の情報がシステムコントローラ10に対して供給される。システムコントローラ10に供給されるRF信号振幅値の情報は、後述する球面収差補正値の自動調整処理時において、再生信号品質の評価指標(評価値)として用いられることになる。
【0028】
光ディスクDが記録可能型ディスクである場合、光ディスクDにはウォブリンググルーブによってディスクの物理情報などの管理情報やADIP情報などが記録されている。
ウォブル信号処理回路6は、マトリクス回路4からのプッシュプル信号PPから、光ディスクDのウォブリンググルーブによって記録された情報を検出し、これをシステムコントローラ10に対して供給する。
【0029】
データ信号処理部5は、RF信号の2値化処理を行う。
例えばデータ信号処理部5では、RF信号のA/D変換処理、PLLによる再生クロック生成処理、PR(Partial Response)等化処理、ビタビ復号(最尤復号)等を行い、パーシャルレスポンス最尤復号処理(PRML検出方式:Partial Response Maximum Likelihood検出方式)により、2値データ列を得る。
そしてデータ信号処理部5は、光ディスクDから読み出した情報としての2値データ列を、後段のエンコード/デコード部7に供給する。
【0030】
エンコード/デコード部7は、再生時おける再生データの復調と、記録時における記録データの変調処理を行う。即ち、再生時にはデータ復調、デインターリーブ、ECCデコード、アドレスデコード等を行い、また記録時にはECCエンコード、インターリーブ、データ変調等を行う。
【0031】
再生時においては、データ信号処理部5で復号された2値データ列がエンコード/デコード部7に供給される。エンコード/デコード部7では入力される2値データ列に対する復調処理を行い、光ディスクDからの再生データを得る。
例えばランレングスリミテッドコード変調が施されて光ディスクDに記録されたデータに対しての復調処理と、エラー訂正としてのECCデコード処理等を行って、光ディスクDからの再生データを得る。
エンコード/デコード部7で再生データにまでデコードされたデータは、ホストインターフェース8に転送され、システムコントローラ10の指示に基づいてホスト機器100に転送される。ホスト機器100とは、例えばコンピュータ装置やAV(Audio-Visual)システム機器などである。
【0032】
記録時には、ホスト機器100から記録データが転送されてくるが、その記録データはホストインターフェース8を介してエンコード/デコード部7に供給される。
この場合エンコード/デコード部7は、記録データのエンコード処理として、エラー訂正コード付加(ECCエンコード)やインターリーブ、サブコードの付加等を行う。またこれらの処理を施したデータに対して、ランレングスリミテッドコード変調を施す。
【0033】
エンコード/デコード部7で処理された記録データは、ライトストラテジ部16において、記録補償処理として、記録層の特性、レーザ光のスポット形状、記録線速度等に対する最適記録パワーの微調整やパルス波形の調整などが行われた状態のレーザ駆動パルスとされ、レーザドライバ9に供給される。
そしてレーザドライバ9は、記録補償処理したレーザ駆動パルスを光ピックアップ1内のレーザダイオードに与えてレーザ発光駆動を実行させる。これにより光ディスクDに、記録データに応じたマークが形成されることになる。
【0034】
なお、レーザドライバ9は、いわゆるAPC回路(Auto Power Control)を備え、光ピックアップ1内に設けられたレーザパワーのモニタ用ディテクタの出力によりレーザ出力パワーをモニタしながらレーザの出力が温度などによらず一定になるように制御する。
記録時及び再生時のレーザ出力の目標値はシステムコントローラ10から与えられ、記録時及び再生時にはそれぞれレーザ出力レベルが、その目標値になるように制御する。
【0035】
サーボ回路11は、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEから、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボドライブ信号を生成しサーボ動作を実行させる。
即ちフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEに応じてフォーカスドライブ信号FD、トラッキングドライブ信号TDを生成し、光ピックアップ1内の2軸機構のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することになる。これによって光ピックアップ1、マトリクス回路4、サーボ回路11、2軸機構によるトラッキングサーボループ及びフォーカスサーボループが形成される。
またサーボ回路11は、システムコントローラ10からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、ジャンプドライブ信号を出力することで、トラックジャンプ動作を実行させる。
【0036】
またサーボ回路11は、トラッキングエラー信号TEの低域成分として得られるスレッドエラー信号や、システムコントローラ10からのアクセス実行制御などに基づいてスレッドドライブ信号SDを生成し、これによりスレッド機構3を駆動する。スレッド機構3には、図示しないが、光ピックアップ1を保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有し、スレッドドライブ信号に応じてスレッドモータを駆動することで、光ピックアップ1の所要のスライド移動が行なわれる。
【0037】
また、サーボ回路11は、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号FEやプルイン信号PIに基づき、光ディスクDに形成される記録層にフォーカスオンするためのフォーカスオン制御を行う。
また、特に多層ディスクとしての光ディスクDに対応したフォーカス制御として、サーボ回路11は、フォーカスエラー信号FEやプルイン信号PIに基づきフォーカスジャンプ制御も行う。
【0038】
またサーボ回路11は、SA補正ドライバ14に対する球面収差補正値の設定を行うことが可能に構成される。すなわち、サーボ回路11は、システムコントローラ10からの指示に基づく球面収差補正値をSA補正ドライバ14に対して設定することができる。SA補正ドライバ14は、設定された球面収差補正値に応じた駆動信号Sdにより光ピックアップ1内の球面収差補正機構を駆動する。
【0039】
スピンドルサーボ回路12はスピンドルモーター2をCLV回転させる制御を行う。
スピンドルサーボ回路12は、データ信号処理部5にて生成される再生クロックを現在のスピンドルモーター2の回転速度情報として得て、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成する。
なお、光ディスクDが記録可能型ディスクである場合には、ウォブル信号に対するPLL処理で生成されるクロックを現在のスピンドルモーター2の回転速度情報として得ることができるので、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。
そしてスピンドルサーボ回路12は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルドライバ13によりスピンドルモーター2のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路12は、システムコントローラ10からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモーター2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
【0040】
以上のようなサーボ系及び再生系の各種動作はマイクロコンピュータによって形成されたシステムコントローラ10により制御される。
システムコントローラ10は、ホストインタフェース8を介して与えられるホスト機器100からのコマンドに応じて各種処理を実行する。
例えばホスト機器100から書込命令(ライトコマンド)が出されると、システムコントローラ10は、まず書き込むべきアドレスに光ピックアップ1を移動させる。そしてエンコード/デコード部7により、ホスト機器100から転送されてきたユーザデータ(例えばビデオデータ、オーディオデータ、コンピュータユースデータ等)について上述したようにエンコード処理を実行させる。そして上記のようにエンコードされたデータに応じてレーザドライバ9がレーザ発光駆動することで光ディスクDに対する記録が実行される。
また例えば、ホスト機器100から光ディスクDに記録されている或るデータの転送を求めるリードコマンドが供給された場合、システムコントローラ10は、まず指示されたアドレスを目標としてシーク動作制御を行う。即ちサーボ回路11に指令を出し、シークコマンドにより指定されたアドレスをターゲットとする光ピックアップ1のアクセス動作を実行させる。
その後、その指示されたデータ区間のデータをホスト機器100に転送するために必要な動作制御を行う。即ち光ディスクDから読み出される信号(再生データ信号)についてデータ信号処理部5、エンコード/デコード部7における再生処理を実行させ、要求されたデータを転送する。
【0041】
また、記録再生時にはシステムコントローラ10は、球面収差補正値についての自動調整処理を行うが、これについては後述する。
また、後に説明する本実施の形態としてのフォーカスオン動作を実現するための処理動作も行うが、これについても後述する。
【0042】
メモリ部17は、システムコントローラ10が各種処理に用いるパラメータや定数等を記憶する。例えば不揮発性メモリで構成される。
例えば後述するフォーカスオン処理時に用いるゲインテーブルを記憶する領域として、メモリ部17が用いられる。また記録層に対する最適な位置となる球面収差補正を行った場合の球面収差補正値の記憶に用いても良い。
【0043】
なお、この図1の例では、ホスト機器100に接続されるディスクドライブ装置として説明したが、ディスクドライブ装置の例としては他の機器に接続されない形態もあり得る。その場合は、操作部や表示部が設けられたり、データ入出力のインタフェース部位の構成が、図1とは異なるものとなる。つまり、ユーザ操作に応じて記録や再生が行われるとともに、各種データの入出力のための端子部が形成されればよい。
もちろんディスクドライブ装置の構成例としては他にも多様に考えられ、例えば記録機能の無い再生専用装置の形態もあり得る。
【0044】
図3は、図1に示した光ピックアップ1が備える球面収差補正機構の一例について示している。なお、この図3においては光ピックアップ1内の光学系の構成について主に示している。
図3において、半導体レーザ(レーザダイオード)81から出力されるレーザ光は、コリメータレンズ82で平行光とされ、ビームスプリッタ83を透過して、球面収差補正レンズ群としての可動レンズ87、固定レンズ88を介して進行し、対物レンズ84から光ディスクDに照射される。なお球面収差補正レンズ群87,88についてはエキスパンダと呼ばれる。可動レンズ87を駆動することで球面収差補正が行われることから、以下、特に可動レンズ87については球面収差補正レンズ87とも呼ぶ。
【0045】
光ディスクDからの反射光は、対物レンズ84、固定レンズ88、可動レンズ87を通ってビームスプリッタ83で反射され、コリメータレンズ(集光レンズ85)を介してディテクタ86に入射される。
【0046】
このような光学系においては、対物レンズ84が二軸機構91によってフォーカス方向及びトラッキング方向に移動可能に支持されており、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ動作が行われる。
また球面収差補正レンズ87は、レーザ光の波面をデフォーカスする機能を持つ。即ち球面収差補正レンズ87は、図示するようにして駆動信号Sdが供給されるアクチュエータ90によって光軸方向であるJ方向に移動可能とされており、この移動によって、対物レンズ84の物点を調整する。
つまり、アクチュエータ90に対して上記駆動信号Sdにより前後移動を実行させる制御を行うことで、球面収差補正を実行させることができる。
【0047】
なお、図3においては、いわゆるエキスパンダによって球面収差補正を行う場合に対応した構成を例示したが、他にも液晶パネルを用いて球面収差補正を行う構成を採ることもできる。
即ち、半導体レーザ81から対物レンズ84までの光路中において挿入した液晶パネルにおいて、レーザ光を透過させる領域と遮蔽する領域の境界を可変調整することで、レーザ光の径を可変して球面収差補正を行うものである。
この場合には、液晶パネルを駆動する液晶ドライバに対して、透過領域を可変させるように制御を行うことになる。
【0048】
また、球面収差補正機構としては、図3に示したように可動レンズ87、固定レンズ88を設けて可動レンズ87を駆動する構成とする以外にも、これら可動レンズ87、固定レンズ88は省略し、代わりにコリメータレンズ82をJ方向に駆動する構成によっても実現できる。その場合、コリメータレンズ82に対してアクチュエータ90を設け、このアクチュエータ90に対して駆動信号Sdを供給してコリメータレンズ82のJ方向への駆動制御を実行すればよい。
【0049】
図4には、図1に示したサーボ回路11の内部構成を示す。なお図4ではサーボ回路11内における、主にフォーカス制御系の部分についてのみ抽出して示している。
図4において、図1に示したマトリクス回路4からのフォーカスエラー信号FEは、サーボ回路11内におけるAGC(Automatic Gain Control)回路20で振幅レベル調整される。なお本例ではシステムコントローラ10からの制御信号CNTによってAGC回路20の応答性可変制御が可能とされる。
AGC回路20で振幅レベル調整されたフォーカスエラー信号FEは、A/D変換器21によりデジタルデータに変換されて、フォーカスサーボ演算部22に入力される。
フォーカスサーボ演算部22では、デジタルデータとされて入力されるフォーカスエラー信号FEに対して位相補償等のためのフィルタリング、フォーカスエラー信号FEに対するゲイン付加による振幅調整、フォーカスバイアス加算、ループゲイン処理、などの各種所定の演算を行ってフォーカスサーボ信号を生成する。ゲインフォーカスバイアス値、サーボループゲイン等はシステムコントローラ10からの制御信号CNTにより可変設定される。
【0050】
フォーカスサーボ演算部22から出力されるフォーカスサーボ信号は、図示するスイッチSWにおける端子t2に供給される。
スイッチSWは、制御信号CNTに応じて、端子t1に対して端子t2、端子t3、端子t4を択一的に選択可能に構成される。端子t3に対しては固定電圧23が供給され、端子t4にはHold電圧24が供給される。
また、端子t1に対してはD/A変換器25が接続され、図示するようにD/A変換器25の出力がフォーカスドライバ26を介してフォーカスドライブ信号FDとして出力される。
【0051】
サーボ回路11では、スイッチSWの端子切り換え制御を行ってフォーカスオン制御、フォーカスジャンプ制御を実行する。
フォーカスオン制御については、先ずはスイッチSWにおいて端子t3を選択させ、固定電圧23を出力させることで、二軸機構91によって対物レンズ84を光ディスクDに近づく方向、又は光ディスクDから遠ざかる方向に駆動させることができる。そして、その際のフォーカスエラー信号FEについて、所定閾値に基づく条件判定を行い、その結果フォーカスオンすべき状態となったタイミングで端子t2に切り換え、フォーカスサーボの引き込みを行う。これによって目標層へのフォーカスオン制御が行われる。
【0052】
また、フォーカスジャンプ時には、先ず端子t3に切り換えを行い、キック電圧としての固定電圧23を印加した上で、端子t4への切り換えを行いHold電圧24を印加することで、対物レンズ84をジャンプ先の記録層側へと移動させる。なお、Hold電圧24は、CD、DVD、DBでの記録層位置の違いからそれぞれ対物レンズ84のHold位置に対応させた値が計算され、その値に応じた電圧が出力される。
キック電圧の印加開始後、フォーカスエラー信号FEと所定閾値とに基づく条件判定からフォーカスサーボの引き込みがOKとされる状態となったとされた場合は、端子t3を選択してブレーキ電圧としての固定電圧23を出力させる。そしてその後に端子t2を選択することで、ジャンプ先の記録層におけるフォーカスサーボの引き込みが行われる。これによってフォーカスジャンプ動作が行われる。
【0053】
ここで、これまでで説明してきた実施の形態としてのディスクドライブ装置は、光ディスクDとしてBDにも対応可能に構成される。
先にも述べたようにBDについては、高NA化に伴いカバー層の厚みの差に起因した球面収差が生じることから、その補正を行うことが必須となる。本実施の形態のディスクドライブ装置としても、このような球面収差補正を行うために、先の図3に示したような球面収差補正機構(固定レンズ88、可動レンズ87、アクチュエータ90)やSA補正ドライバ14を備えている。
【0054】
球面収差の補正については、SA補正ドライバ14に対し球面収差補正値を設定することで行うものとなるが、このような球面収差補正値については、各記録層において基準となる初期値が予めディスクドライブ装置に対して設定されている。つまり、L0層、L1層、L2層、L3層の各位置で最適とされる球面収差補正値が、各記録層における球面収差補正値の初期値として設定されている。
【0055】
理想的には、各記録層にて対応する初期値を設定して球面収差補正を行うものとすれば、適正に球面収差を補正することができるということになる。しかし実際には、光ディスクDの個体ごとにカバー層の厚み(各記録層からみたレーザ光入射面までの距離)に誤差が生じるため、光ディスクDごとに球面収差補正値を自動調整するといったことが行われている。
【0056】
球面収差補正値の自動調整処理は、所定の記録層に初回にフォーカスオンすべき状態となったことに応じて行われる。例えば、その記録層について予め設定された球面収差補正値の初期値を基準として、その補正値をそれぞれ異なる値に変化させたときに得られた評価値を取得する。そして、最良の評価値が得られるときの初期値からのシフト値を補正シフト値と決定して、その補正シフト値を加味した最適な球面収差補正位置を判定する。
例えばL0層についての初回のフォーカスオン時において、一度フォーカスサーボをオンできたときに、初期値を基準として球面収差補正値の設定を変えながら光ピックアップ1による信号読み出しを実行させる。そのとき得られたRF信号振幅値を評価値としてその値を最良(この場合は最大)とする初期値からのシフト値を補正シフト値として求める。そしてL0層に対する球面収差補正位置の初期値に補正シフト値を加えた位置を、実際に求められたL0層についての最適球面収差補正位置とする。
【0057】
このような手法が採られる場合における、具体的な自動調整処理は次のようになる。
システムコントローラ10は、L0層にてフォーカスサーボをオンできたことに応じ、例えばメモリ部17等に格納されるL0層についての初期値を読み出し、この初期値からそれぞれ値を変化させた球面収差補正値を順次サーボ回路11に指示してSA補正ドライバ14に設定させ、それぞれの球面収差補正値の設定状態でマトリクス回路4にて得られるRF信号の振幅値をA/D変換器15を介して取得する。この結果、RF信号振幅値を最大としたときの初期値からのシフト値を補正シフト値と決定する。決定した補正シフト値(もしくは初期値+補正シフト値による最適球面収差補正位置)は、L0層への記録再生時に用いる最適な球面収差補正値としてメモリ部17に記憶させる。
このような動作を各記録層に対して行った後においては、各記録層での信号読み出し時には、その記録層についての記憶された最適球面収差補正位置をSA補正ドライバ14に設定する。
【0058】
このような自動調整処理が行われることで、球面収差補正値は実測したRF信号振幅値(つまり再生信号品質の評価値)に基づき最適とされる値に設定されるので、個々の光ディスクDのカバー層の厚みに誤差が生じる場合にも、最適とされる球面収差補正状態で記録再生を行うことができる。
【0059】
なお、ここでは評価値を最良としたときの球面収差補正値から補正シフト値を求めるものとしたが、少なくとも評価値が所定以上良好となる球面収差補正値から補正シフト値を求めるものとすれば、光ディスクDのカバー層の厚み誤差を補正することのできるシフト補正値を求めることができる。
【0060】
<2.フォーカスオン動作>

本実施の形態のフォーカスオン動作について説明する。
本実施の形態のディスクドライブ装置は、多層BDとしての光ディスクDに対応して球面収差補正を行うものとされるが、フォーカスオンを行う場合にも、安定したフォーカスサーボの引き込みが可能となるように球面収差補正値を適切とされる値に調整するということが行われている。
【0061】
ここで例えば4層ディスクの場合、内側のL1層、L2層へフォーカスオンするときは、必ずL0層又はL3層を通過して目標層にフォーカスオンする必要があり、通過層の検出と目標層のフォーカスオン両方を安定的に行わなければならない。
図6(a)にL1層へのフォーカスオンの場合を、図6(b)にL2層へのフォーカスオンの場合の動作例を模式的に示している。
L1層へのフォーカスオンの際には、例えば対物レンズ84を最も光ディスクDに近い位置とさせた後、光ディスクDから離れていく方向に駆動する。従ってレーザ光のフォーカス点が図6(a)の矢印FSに示すように、L0層を通過してL1層近辺に達するという動作となる。
このため、フォーカスオン動作としては、対物レンズ移動過程で1つめの記録層(L0層)を検出し、次に2つめの記録層(L1)を検出したタイミングでフォーカスサーボループをオンとすればよい。
【0062】
またL2層へのフォーカスオンの際には、例えば対物レンズ84を最も光ディスクDから遠い位置とさせた後、光ディスクDに近づく方向に駆動する。従ってレーザ光のフォーカス点が図6(b)の矢印FSに示すように、L3層を通過してL2層近辺に達するという動作となる。
このため、フォーカスオン動作としては、対物レンズ移動過程で1つめの記録層(L3層)を検出し、次に2つめの記録層(L2)を検出したタイミングでフォーカスサーボループをオンとすればよい。
【0063】
対物レンズ移動過程での記録層検出には、従来、プルイン信号(光量和信号)が使用されていた。記録層を通過する際に、和信号の振幅レベルが上昇するため、プルイン信号の振幅が所定値以上となったら記録層を検出できるためである。
一方、3層以上のBDでは、記録層の層間隔が狭いため、プルイン信号ではうまく記録層を検出できない事がある。そこでフォーカスエラー信号FEを、記録層の検出及びフォーカスオンに用いるようにしている。
【0064】
そしてフォーカスオン時には、フォーカスオンの目標層に合わせた球面収差補正値を設定するものとしていた。例えば、L1層にフォーカスオンする場合には、L1層についての球面収差補正の初期値を設定した状態でフォーカスオン動作を行うものとしていた。
しかしながら、球面収差補正値を目標層に合わせた値に設定していると、先に図5(a)で説明したように他の記録層についてのフォーカスエラー信号のS字を適正に検出できなくなる可能性がある。
また図5(b)で述べたように、目標層でフォーカスエラー信号FEのバランスずれを改善できる位置に球面収差補正位置を設定しても、実際にはバランスずれが発生し、また通過層ではフォーカスエラー信号FEの減衰が大きく、やはり検出性能が低下する。
さらに目標層と通過層の中間の位置に設定することも、3層以上の多層ディスクでは、バランスずれや振幅変化を起こすことを防止しきれない。
規格上許容される膜厚バラつきにより、実際には通過層、目標層共に数μm程度はずれが生じるため、どちらの層も結局バランスずれや振幅変化を起こしてしまう。
これらのことから、特に3層以上の光ディスクDに対するフォーカスオン動作が不安定となり、その安定化が求められている。
【0065】
通過層の検出と目標層でのフォーカスオンの両方を安定的に行うために、本実施の形態では、フォーカスエラー信号FEのバランスずれや振幅減衰を無理に防ごうとするのではなく、推定可能な制御状態にして補正をする事で安定性を向上させるという考え方を採る。
具体的には、膜厚誤差も含めて初回フォーカスオン時には、フォーカスエラー信号FEのバランスずれ及び振幅減衰が発生する事を前提に、図5(c)のように、通過層と目標層の両層での信号レベルが同等となるであろう2つの層の間の位置に球面収差補正位置SAを設定する。光学系によって各記録層に対する最適な球面収差補正位置SAは異なるので、シミュレーション等で最適な位置を導出する。
フォーカスエラー信号FEのバランスずれ量及び振幅減衰量は、球面収差補正位置と各記録層に対する最適な球面収差補正位置との差異で推定出来る。そこでフォーカスエラー信号について球面収差補正位置と目標層についての最適球面収差補正位置の位置差に応じた信号振幅補正を実行させたうえで、フォーカスオン制御を実行するようにする。
図5(c)のように通過層と目標層の間の位置に球面収差補正位置SAを設定するのみでは、フォーカスエラー信号FEのバランスずれや振幅変化は防止しきれないが、その状態から所定のゲインをフォーカスエラー信号FEに与えて振幅補正をすることで、図5(c)のように、通過層、目標層の検出を安定的に行えるフォーカスエラー信号FEとすることができる。
【0066】
図6(a)において、「dm」は目標層(L1)と通過層(L0)の層間隔を示している。この層間隔dmは、L0層、L1層のカバー厚(各記録層からカバー層表面(レーザ入射面)までの厚み)によって規定される。L0層のカバー厚は例えば100μm、L1層のカバー厚は図のdL1となる。しかしL0層、L1層のカバー厚は光ディスクDの個体毎にばらつく。このため層間隔dmもディスクD毎にばらつく。
図示するSA位置は、通過層(L0)と目標層(L1)の間の位置としての球面収差補正位置である。
このSA位置と、目標層(L1)についての最適な球面収差補正位置との位置差を「dSA」として示している。
本実施の形態においてL1層にフォーカスオンする場合は、球面収差補正位置を図のSA位置に設定し、かつ、位置差dSAに応じたゲインをフォーカスエラー信号FEに与えた状態として、矢印FSに示すサーチ動作を行う。そしてフォーカスエラー信号FEの2つめのS字の検出時点(つまりL1層の検出時点)でフォーカスサーボループをオンとする、フォーカスオン動作を行う。
【0067】
なお、図では目標層(L1)についての最適な球面収差補正位置を、目標層(L1)の位置と一致した状態として位置差dSAを示しているが、目標層の最適な球面収差補正位置は必ずしも規格上の目標層位置と一致しているわけではない。上述した球面収差補正動作で各記録層についての最適な球面収差補正位置が判定されるまでは、ディスクドライブ装置(システムコントローラ10)、各記録層(L0〜L3)についての最適球面収差補正位置は不明である。
そこで、例えばL1層に対する初回のフォーカスオン時には、規格上のL0層位置とL1層位置の間で、両層での信号レベルが同等となると推定される所定位置を、フォーカスオン時のSA位置とし、位置差dSAは、そのSA位置と規格上のL1層位置との差分とする。
L1層によるフォーカスオン後の記録再生動作の際には、上述した球面収差補正動作で、L1層についての最適な球面収差補正位置が判定される。L0層についても同様にL0層への記録再生動作の際に最適な球面収差補正位置は判定される。
そこで、最適球面収差補正位置を判定した後において、L1層にフォーカスオンする場合は、L0層についての最適球面収差補正位置とL1層についての最適球面収差補正位置の中間として、両層での信号レベルが同等となるであろう所定位置に球面収差補正位置(図のSA位置)を設定し、位置差dSAは、そのSA位置と、L1層の最適球面収差補正位置との差分とする。なお、その場合、層間隔dmは、L0層の最適球面収差補正位置とL1層の最適球面収差補正位置の間隔と考えて、その中間位置が図のSA位置となると考えてもよい。
【0068】
また図6(b)において、「dm」は目標層(L2)と通過層(L3)の層間隔を示している。この層間隔dmは、L2層、L3層のカバー厚dL2,dL3によって規定される。この場合も層間隔dmはディスクD毎にばらつく。
図示するSA位置は、通過層(L3)と目標層(L2)の間の或る位置としての球面収差補正位置である。このSA位置と、目標層(L2)についての最適な球面収差補正位置との位置差を「dSA」として示している。
本実施の形態においてL2層にフォーカスオンする場合は、球面収差補正位置を図のSA位置に設定し、かつ、位置差dSAに応じたゲインをフォーカスエラー信号FEに与えた状態として、矢印FSに示すサーチ動作を行う。そしてフォーカスエラー信号FEの2つめのS字の検出時点(つまりL2層の検出時点)でフォーカスサーボループをオンとする、フォーカスオン動作を行う。
【0069】
なお、この場合も通過層(L3)と目標層(L2)についての最適球面収差補正位置は、必ずしも規格上の通過層(L3)と目標層(L2)の位置と一致しない。そこで、例えばL2層に対する初回のフォーカスオン時には、規格上のL3層位置とL2層位置の間の所定位置を、フォーカスオン時のSA位置とし、位置差dSAは、そのSA位置と規格上のL2層位置との差分とする。
そしてL2層(及びL3層)についての最適球面収差補正位置が判定された後において、L2層にフォーカスオンする場合は、L3層についての最適球面収差補正位置とL2層についての最適球面収差補正位置の間の所定位置に球面収差補正位置(図のSA位置)を設定し、位置差dSAは、そのSA位置と、L2層の最適球面収差補正位置との差分とする。
なお、その場合、層間隔dmは、L3層の最適球面収差補正位置とL2層の最適球面収差補正位置の間隔と考えて、その中間位置が図のSA位置となると考えてもよい。
【0070】
フォーカスオン制御例を図7に示す。図7はシステムコントローラ10がサーボ回路11に対して行う制御処理のフローチャートとして示している。
フォーカスオン制御を開始する場合、まずシステムコントローラ10はステップF101で、目標層がL0層、L3層であるか、又はL1層、L2層であるかにより処理を分岐する。即ちレーザ光入射面側から最も近い記録層或いは最も遠い記録層(L0,L3)であるか、又はそれら以外の中央側の記録層(L1,L2)であるかを判定する。
【0071】
L1層又はL2層を目標層とするフォーカスオン動作の場合は、システムコントローラ10はステップF103に進み、球面収差補正位置を通過層と目標層の間で、両層での信号レベルが同等となるであろう位置に設定させる。即ちサーボ回路11を介してSA補正ドライバに、図6(a)(b)で上述したSA位置を指示する。
また、システムコントローラ10はステップF104で、フォーカスエラー信号FEに対するゲイン付加制御を行う。この場合、サーボ回路11内のフォーカスサーボ演算部22に、図6に示した位置差dSAに応じたゲイン値を指示してフォーカスエラー信号FEの振幅レベル補正を実行させることになる。
【0072】
ここで、位置差dSAに応じたゲイン値は、システムコントローラ10は、dSAの値を用いた所定の演算により求めることができる。
或いは、図8又は図9に示すようなゲインテーブルをメモリ部17に格納しておき、このゲインテーブルを用いて、ゲイン値を指示してもよい。
【0073】
図9(a)に示すゲインテーブルは、位置差dSAに応じたフォーカスエラー信号FEの振幅減衰の振る舞いが、目標層と通過層で同じで、かつ絶対位置によらない場合に適用できるテーブル例である。
このゲインテーブルには、位置差dSAに応じた、フォーカスエラー信号FEに与える適切なゲイン値を予めシミュレーションで求めて格納しておく。なお、この場合、図6に示したSA位置は、L1層にフォーカスオンする場合は、L0層についての最適球面収差補正位置とL1層についての最適球面収差補正位置から同等の距離となる中間位置とする。
そして例えば目標層をL1層とする場合について、位置差dSAが・・・6μm、7μm、8μm、9μm、10μm・・・・という各場合に与えるべきゲイン(・・・Gain6、Gain6、Gain7、Gain8、Gain9、Gain10・・・)が記憶される。同様に目標層をL2層とする場合についても、位置差dSAの値に応じて与えるべきゲイン(・・・Gain26、Gain27、Gain28、Gain29、Gain30・・・)が記憶される。
例えば目標層をL1層とする場合であって、層間隔(又は目標層と通過層における各最適球面収差補正位置の間隔)dm=16μmであったとしたら、その中間位置と目標層の最適球面収差補正位置との間隔、つまり位置差dSA=8μmとなる。
その場合、図9(b)に斜線部で示すように、「Gain8」がゲインテーブルから選択されて、フォーカスサーボ演算部22に指示されることとなる。
【0074】
図10(a)に示すゲインテーブルは、目標層と通過層の絶対位置、及びそれぞれに対しての位置差dSAによってフォーカスエラー信号FEの振幅減衰の振る舞いが異なる場合に適切なテーブル例である。
目標層位置(目標層のカバー厚)をベースとして、通過層との層間距離(層間隔dm)によって、フォーカスエラー信号FEの振幅が同等となるSA位置をシミュレーションにて求める。
例えばL0層のカバー厚が100μmとし、L0層とL1層の層間隔(又は目標層と通過層における各最適球面収差補正位置の間隔)dmが10〜20μm程度であるとする。このとき目標層となるL1層の位置は、カバー層表面から85μm前後の位置となる。このため、例えば目標層位置として85μm前後で1μm刻みでテーブルを構成する。さらに、層間距離としても1μm刻みでテーブルを構成する。なお、1μm刻みとすることは一例にすぎない。
そしてこれら目標層位置と層間距離の組み合わせで、フォーカスエラー信号FEに与えるべきゲイン値を予めのシミュレーションで求め、ゲインテーブルに設定しておく。
【0075】
例えば層間距離dm=14μmであって、目標層(L1)の位置が85μmであったとしたら、図10(b)に斜線を付して示すように、SA位置は「90μm」の位置が選択され、フォーカスエラー信号FEに与えるゲインとして「GainBC」が選択される。
【0076】
システムコントローラ10は、例えばこのようなゲインテーブルを用いることで、ステップF104でフォーカスサーボ演算部22に指示するゲイン値を決定することができる。
なお図9,図10のゲインテーブルの例において、目標層位置、層間距離等は、現在のディスクDについて未判明の場合は、規格値を参考にした値等を用い、上述の球面収差補正動作等で判明した後は、その実際の値を用いる事で、より適切なゲイン値を導き出せる。
【0077】
図7のステップF103,F104の処理を終えたら、次にシステムコントローラ10はステップF105で、フォーカスループゲインをフォーカスオン用の設定に変更させる。即ちシステムコントローラ10はフォーカスサーボ演算部22にループゲインの上昇を指示する。これによりフォーカスオン時のサーボ応答性を高め、合焦位置へのサーボ引き込みをしやすくする。
そしてシステムコントローラ10はステップF106でフォーカスオン動作制御を行う。
即ちサーボ回路11に、フォーカスオン動作を開始させる。サーボ回路11は図6(a)(b)を用いて説明したように、近接位置から遠ざける方向(L1層目標のとき)、又は遠方位置から近づける方向(L2層目標のとき)に、対物レンズの移動を開始させる。そして対物レンズ移動過程でフォーカスエラー信号FEの監視を行い、目標層(L1又はL2)の検出を行う。目標層が検出されたタイミングでフォーカスサーボループをオンとし、サーボ引き込みを実行させてフォーカスオン状態とする。
以上でL1層又はL2層を目標層とした場合のフォーカスオンまでの処理を終える。
【0078】
一方、L0層又はL3層が目標層である場合、システムコントローラ10はステップF101からF102に進む。そして、球面収差補正位置を、その目標層についての最適球面収差補正位置に設定する。即ち目標層において最も良好なフォーカスエラー信号FEが得られる状態とする。そしてステップF105,F106で上記同様の制御を行う。
即ちこの場合、フォーカスオン動作では、サーボ回路11は、近接位置から遠ざける方向(L0層目標のとき)、又は遠方位置から近づける方向(L3層目標のとき)に、対物レンズの移動を開始させる。そして対物レンズ移動過程でフォーカスエラー信号FEの監視を行い、目標層の検出を行う。この場合、最初のS字カーブが観測されればよい。そして球面収差補正位置は目標層であるL0層又はL3層の対応した最適球面収差補正位置とされているため、目標層において良好なS字カーブが観測される。従ってフォーカスオン動作は安定的に実行される。
【0079】
このような本実施の形態のフォーカスオン制御によれば、L0層、L1層、L2層、L3層のいずれに対するフォーカスオン動作も安定的に実行できる。
特にL1層、L2層を目標層とする場合、通過層と目標層の中間位置にSA位置を設定する事で2つの記録層でのフォーカスエラー信号振幅を同等にできる。その上で、設定したSA位置と目標層についての最適球面収差補正位置との位置差dSAに応じたゲインをフォーカスエラー信号FEに与えることで、通過層及び目標層について安定した検出及びフォーカスオン制御ができるようになる。これによって安定したフォーカスオン動作が実現される。
【0080】
なお、上述のように実際の各記録層の最適球面収差補正位置が不明の時点でのフォーカスオンの際は、規格上の各記録層位置を、最適球面収差補正位置として用いてSA位置や位置差dSAを求めればよい。そして判明後は、実際の最適球面収差補正位置を用いるようにする。これにより、判明前でも或る程度安定したフォーカスオン動作ができ、さらに判明後のフォーカスオン安定性を高めることができる。
【0081】
またL1層、L2層へのフォーカスオンの際にフォーカスエラー信号FEの減衰分の補正のための与えるゲインを適切にする事で、通過層と目標層を判定するための図5に示した閾値th1,th2を、L0層、L3層へのフォーカスオン時と共用して問題ないようにできる。つまりL1層、L2層目標のときに、閾値th1,th2を変更するような処理も不要となる。
【0082】
<3.定常サーボ移行処理>

以上はフォーカスオンまでの処理を説明した。ここではフォーカスオン直後に定常サーボに移行するまでの処理を述べる。
【0083】
図8にフォーカスオン直後のシステムコントローラ10の処理を示す。
システムコントローラ10はステップF111で、目標層がL1層又はL2層であったか、或いはL0層又はL3層であったかにより、定常サーボ移行処理のシーケンスを決定する。
【0084】
目標層がL1層又はL2層であった場合、システムコントローラ10はステップF114〜F118の処理を実行する。
まずステップF114でシステムコントローラ10は、サーボ回路11におけるAGC回路20に対して、高速応答設定でAGC動作をオンとする制御を行う。
そしてシステムコントローラ10はステップF115でフォーカスサーボ演算部22に対して、フォーカスエラー信号FEに与えていたゲインを、段階的に通常設定に戻す制御を行う。
さらにステップF116で、フォーカスサーボ演算部22に対し、フォーカスループゲインを通常設定に戻すように指示する。
またシステムコントローラ10はステップF117で、サーボ回路11を介してSA補正ドライバ14を制御し、球面収差補正位置を目標層についての最適球面収差補正位置とするように設定する。
そして最後にステップF118で、AGC回路20に対して、通常応答設定に戻す制御を行う。
【0085】
このステップF114〜F118の処理の意味は次の通りである。
L1層又はL2層を目標層としてフォーカスオン動作を行う場合、図7で説明したように、球面収差補正位置を中間位置とし、またフォーカスエラー信号FEに対して補正ゲインを与えている。さらに引き込み応答性向上のためサーボループゲインを上昇させている。
このため、定常サーボに移行する処理として、これらを通常の設定に戻す必要がある。
【0086】
まず、フォーカスエラー信号FEに与えていた振幅補正を終了させて通常設定に戻す目的でステップF115が行われる。
上述のように、図7のステップF104で与えるゲインは、通過層と目標層の中間位置を球面収差補正位置としたときに、通過層と目標層で十分なフォーカスエラー信号FEの信号振幅を得るために与えるゲインである。その場合の球面収差補正位置は、通過層と目標層のそれぞれの最適球面収差補正位置から離れているため、フォーカスエラー信号FEに与えられているゲインは比較的大きくなる。これを通常状態に戻すわけであるが、一気に元のゲインに戻すことは、サーボ状態を不安定にするおそれがある。場合によってはフォーカス外れが生じ、再度フォーカスオン動作を行わなければならない。
そこで、フォーカスエラー信号FEに与えるゲインを段階的に低下させていくことが好適となる。
また、ゲインを低下させていく過程でのフォーカスエラー信号FEの振幅レベルを安定させるために、AGC回路20での追従速度(AGC時定数)を、通常時よりも高速にする。これによりゲイン設定変更時の不安定な過渡状態を短くする事ができる。このためステップF114でAGC回路20に対して高速応答設定を行うようにしている。そしてステップF118でAGC回路20の応答設定を通常状態に戻す。
【0087】
ステップF116ではフォーカスループゲインを通常設定に戻す。これはフォーカスオン時にループゲインを上げていたことに対応する処理である。
ステップF117では、現在フォーカスオンしている目標層についての最適球面収差補正位置に球面収差補正を実行させることで、フォーカスオン後のサーボ動作や記録再生動作に適切な球面収差補正状態とするものである。
【0088】
このように定常サーボへの移行処理としては、フォーカスエラー信号FEのゲインの通常化、球面収差補正の最適化、サーボループゲインの通常化を行い、またそれに付随してAGC応答設定の一時的な高速化を行う。
フォーカスエラー信号FEのゲインの通常化、球面収差補正の最適化、サーボループゲインの通常化の順序は、特に図8の順序に限定はされないが、できるだけサーボ安定性を考慮した順序で行うことがよい。
その意味で、図8のように、信号状態が最適でない時間を可能な限り短くするため、まずフォーカスエラー信号FEのゲインの通常化を行い、その後にサーボループゲインの通常化を行う。そしてフォーカスサーボ系を安定させた状態で、比較的時間を要する球面収差補正の最適化を行うようにするとよい。そしてこれら3つの処理の期間に、フォーカスエラー信号FEの振幅の変動に対する安定化のため、AGC回路20を高速応答としておくことが好適である。
【0089】
次にフォーカスオン動作の目標層がL0層又はL3層であった場合について述べる。この場合、上記図7のフォーカスオン動作の際に、特にフォーカスエラー信号FEに対するゲイン制御は行っていない。さらに、球面収差補正位置は、目標層についての最適球面収差補正位置としている。このため、フォーカスオン直後にフォーカスエラー信号FEのゲインの通常化及び球面収差補正位置の最適化の処理は不要である。
そこでこの場合システムコントローラ10は、ステップF112で通常応答設定でAGC回路20をオンとさせる。そしてステップF113でフォーカスサーボ演算部22にサーボループゲインを通常状態に戻す指示をする。
以上で定常サーボへの移行処理が完了する。
【0090】
本実施の形態では以上のように定常サーボへの移行処理が行われることで、図7のようなフォーカスオン動作を実行した後(特にL1層又はL2層に対するフォーカスオン動作後)でも、安定して定常サーボ状態へ移行できる。
【0091】
以上、実施の形態について説明してきたが、本発明の光記録媒体駆動装置の構成例や処理例は他にも各種変形例が考えられる。
実施の形態では、ブルーレイ方式の光ディスクに対応可能なディスクドライブ装置で本発明の記録装置を実現する例を述べたが、他の光記録媒体に対する記録装置にも本発明は適用できる。
例えば3層以上の記録層を有する次世代光ディスクに対応する光記録媒体駆動装置として適用できる。
またディスクメディアではなく、光カード等の他の形態の光記録媒体に対してレーザ照射を行って情報記録再生を行う光記録媒体駆動装置としても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 光ピックアップ、2 スピンドルモーター、3 スレッド機構、4 マトリクス回路、5 データ信号処理部、6 ウォブル信号処理回路、7 エンコード/デコード部、8 ホストインタフェース、9 レーザドライバ、10 システムコントローラ、11 サーボ回路、12 スピンドルサーボ回路、13 スピンドルドライバ、14 SA補正ドライバ、15 A/D変換器、20 AGC回路、22 フォーカスサーボ演算部、SW スイッチ、26 フォーカスドライバ、84 対物レンズ、87 球面収差補正レンズ、91 二軸機構、100 ホスト機器、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の記録層を有する光記録媒体に対して、少なくとも信号読出のために上記光記録媒体に対するレーザ光照射及び反射光検出を行うとともに、少なくともレーザ光のフォーカス機構及び球面収差補正機構を有する光ヘッド部と、
上記光ヘッド部で得られる反射光情報から生成されるフォーカスエラー信号に基づいて上記フォーカス機構を駆動し、上記光記録媒体の上記記録層へのフォーカスオン制御を実行するフォーカス制御部と、
球面収差補正値に基づいて上記球面収差補正機構を駆動して球面収差補正を実行する球面収差補正部と、
上記光記録媒体における上記レーザ光の入射する側から最も近い記録層及び最も遠い記録層を除いた記録層を目標層とし、上記最も近い記録層又は上記最も遠い記録層をフォーカスオン過程の焦点位置の通過層として、上記目標層へのフォーカスオン制御を行う場合に、上記球面収差補正部に上記目標層と上記通過層の間の所定位置を球面収差補正位置として球面収差補正を実行させ、さらに上記フォーカスエラー信号について、上記球面収差補正位置と上記目標層についての最適球面収差補正位置との位置差に応じた信号振幅補正を実行させたうえで、上記フォーカス制御部による上記フォーカスオン制御を実行させる制御部と、
を備えた光記録媒体駆動装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記フォーカスオン制御の完了後、定常フォーカスサーボへの移行処理として、上記球面収差補正部に上記目標層についての最適球面収差補正位置への球面収差補正を実行させ、さらに上記フォーカスエラー信号に施した信号振幅補正を終了させる制御を行う請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項3】
上記制御部は、さらに、上記フォーカス制御部に対して、フォーカスループゲインをフォーカスオン用ゲインに変更させたうえで上記フォーカスオン制御を実行させるとともに、上記フォーカスオン制御の完了後の上記定常フォーカスサーボへの移行処理として、フォーカスループゲインを通常ゲインに戻させる制御を行う請求項2に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記定常フォーカスサーボへの移行処理の実行期間、フォーカスエラー信号に対するAGC応答を高速応答設定とする制御を行う請求項3に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項5】
上記制御部は、上記最も近い記録層又は上記最も遠い記録層を目標層としてフォーカスオン制御を行う場合は、上記球面収差補正部に、上記目標層についての最適球面収差補正位置への球面収差補正を実行させた状態で、上記フォーカス制御部に上記フォーカスオン制御を実行させる請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項6】
上記球面収差補正部に球面収差補正位置として指示する、上記目標層と上記通過層の間の所定位置は、光記録媒体の規格又は過去の球面収差補正で判定される、上記目標層についての最適球面収差補正位置と上記通過層についての最適球面収差補正位置との間であって、上記目標層と上記通過層とで同等のフォーカスエラー信号が得られる位置である請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項7】
上記信号振幅補正のために上記フォーカスエラー信号に与えるゲインとして、上記球面収差補正位置と上記目標層についての最適球面収差補正位置との位置差に応じたゲインを示したゲインテーブルを記憶するメモリ部をさらに備え、
上記制御部は、上記ゲインテーブルを用いて、上記信号振幅補正の制御を行う請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項8】
3層以上の記録層を有する光記録媒体に対して、少なくとも信号読出のために上記光記録媒体に対するレーザ光照射及び反射光検出を行うとともに、少なくともレーザ光のフォーカス機構及び球面収差補正機構を有する光ヘッド部と、
上記光ヘッド部で得られる反射光情報から生成されるフォーカスエラー信号に基づいて上記フォーカス機構を駆動し、上記光記録媒体の上記記録層へのフォーカスオン制御を実行するフォーカス制御部と、
球面収差補正値に基づいて上記球面収差補正機構を駆動して球面収差補正を実行する球面収差補正部と、
を備えた光記録媒体駆動装置のフォーカスオン方法であって、
上記光記録媒体における上記レーザ光の入射する側から最も近い記録層及び最も遠い記録層を除いた記録層を目標層とし、上記最も近い記録層又は上記最も遠い記録層をフォーカスオン過程の焦点位置の通過層として、上記目標層へのフォーカスオン制御を行う場合に、上記球面収差補正部が、上記目標層と上記通過層の間の所定位置を球面収差補正位置として球面収差補正を実行し、さらに上記フォーカスエラー信号について上記球面収差補正位置と上記目標層についての最適球面収差補正位置との位置差に応じた信号振幅補正を実行したうえで、上記フォーカス制御部による上記フォーカスオン制御を実行するフォーカスオン方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−9103(P2012−9103A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143367(P2010−143367)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】